特許第6815718号(P6815718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815718
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】有害物質処理材及びフッ素の不溶化方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20210107BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20210107BHJP
   B09C 1/02 20060101ALI20210107BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20210107BHJP
   C01F 5/06 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   C09K3/00 SZAB
   B09B3/00 301E
   B09B3/00 304K
   C01F5/06
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-83533(P2015-83533)
(22)【出願日】2015年4月15日
(65)【公開番号】特開2016-204422(P2016-204422A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年1月18日
【審判番号】不服2019-15524(P2019-15524/J1)
【審判請求日】2019年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】592048970
【氏名又は名称】日鉄セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】大石 徹
【合議体】
【審判長】 門前 浩一
【審判官】 古妻 泰一
【審判官】 蔵野 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−131517(JP,A)
【文献】 特開2008−255171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/00
B09B1/00-5/00
B09C1/00-1/10
C01F1/00-17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸マグネシウム鉱物を焼成して得られ、酸化マグネシウムの結晶中に炭酸塩の一部が分解されずに残存する酸化マグネシウムからなる焼成物であって、酸化マグネシウムの含量が50〜95wt%であり、示差熱分析において230℃と360℃の間で脱離する結晶水を1〜2wt%含有し、600℃以下で炭酸ガスを脱離する炭酸塩をCO2に換算して2〜8wt%含有し、且つ示差熱分析において560℃と624℃の間に発熱ピークを示す酸化マグネシウムからなる焼成物を、その粉末の通過割合が90%となる篩径が50〜500メッシュとなるように粉砕して得られる酸化マグネシウム粉末からなることを特徴とするフッ素を含む土壌の処理材。
【請求項2】
示差熱分析において200〜600℃の間で減量を示す成分の合計が、3〜10wt%である請求項1に記載の土壌の処理材。
【請求項3】
前記篩径が、100〜400メッシュであり、比表面積が、1000〜10000cm2/gである請求項1又は2に記載の土壌の処理材。
【請求項4】
炭酸マグネシウム鉱物を焼成して、酸化マグネシウムの結晶中に炭酸塩の一部が分解されずに残存し、酸化マグネシウムの含量が50〜95wt%であり、示差熱分析において230℃と360℃の間で脱離する結晶水を1〜2wt%含有し、600℃以下で炭酸ガスを脱離する炭酸塩をCO2に換算して2〜8wt%含有し、且つ示差熱分析において560℃と624℃の間に発熱ピークを示す酸化マグネシウムからなる焼成物を得ること、この酸化マグネシウムからなる焼成物を粉砕してその粉末の通過割合が90%となる篩径が50〜500メッシュとなる酸化マグネシウムからなる焼成物の粉末を得ること、この酸化マグネシウム粉末を有害物質の処理材とすることを特徴とするフッ素を含む土壌の処理材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の土壌の処理材をフッ素含有汚染土壌に添加、混合してフッ素の吸着又は固化を行うことを特徴とする不溶化方法。
【請求項6】
フッ素含有汚染土壌に、前記土壌の処理材と共に、pH調整剤を添加・混合することを特徴とする請求項5に記載の不溶化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水、汚泥、土壌等に含まれるフッ素、又はフッ素とその他の有害物質を不溶化するために適した酸化マグネシウム粉末、及びそれを使用した廃水、汚泥、土壌等に含まれるフッ素、その他の汚染物質の不溶化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フッ素化合物は、金属や半導体、ガラス等の表面処理剤として使用されているが、フッ素は有害なため水質の規制値として環境基準(0.8mg/L以下)及び排水基準(8mg/L)が規定されている。フッ素含有廃水はカルシウム化合物によりフッ化カルシウムとして固定化する方法が知られているが、フッ化カルシウムは微量ながら水に溶解するため、フッ素濃度が十分には低下せず、吸着や凝集等の後処理が必要となる。また、同様にマグネシウム化合物によりフッ化マグネシウムを固定する方法も知られているが、フッ化マグネシウムの水に対する溶解度はフッ化カルシウムのそれよりも大きいため、さらに利用が限られている。ここで、有害物質としてのフッ素は、通常フッ素化合物として存在するので、フッ素化合物又はフッ素イオンのようなフッ素含有イオンを意味する。また、有害物質としてのフッ素を含む廃水、土壌等としては、鉱山廃水やトンネル工事等で発生する天然土壌もあり、これらのフッ素除去も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-334526号公報
【特許文献2】特開2007-136424号公報
【特許文献3】特開2005-342578号公報
【特許文献4】特開2012-240017号公報
【0004】
特許文献1は、700〜1000℃で焼成され、粉末度4000cm2/g以上に調整した酸化マグネシウムを、汚染土壌等に添加・混合することにより、汚染土壌等を固化して、汚染物質の不溶化することを開示する。ここで対象とする汚染物質には、鉛、ヒ素等の重金属の他、シアンやフッ素が含まれ、その実施例ではフッ素含有土壌を酸化マグネシウムで処理するとフッ素の溶出量が0.08mg/L未満に減少することが示されている。
【0005】
特許文献2は、フッ素イオンを含有するpH4.0以下の排水に、水酸化マグネシウムを700〜1000℃で焼成して得られ、かつBET表面積が40〜200m2/gである酸化マグネシウムを添加し、10〜25℃の温度で処理し、凝集剤を加えて固液分離することによりフッ素イオンを除去する方法を開示する。そして、除去機構については、排水に酸化マグネシウムを添加すると水和反応により水酸化マグネシウムが生成し、この反応時にフッ素イオンを吸着除去されると推測している。更に、この酸化マグネシウムは水酸化マグネシウムを700〜1,000℃で焼成して得られたものであることが重要であるとしている。なお、凝集剤は固液分離のために使用され、フッ素イオンを吸着除去に直接関与するものではないと理解される。
【0006】
特許文献3は、BET比表面積が10m2/g以上、粒度が10μm〜10mmに調製された酸化マグネシウム系フッ素吸着剤を開示する。このフッ素吸着剤は、合成水酸化マグネシウム、合成塩基性炭酸マグネシウム、合成マグネサイト、天然ブルーサイト、又は天然マグネサイトを350〜1000℃で焼成して得られるとしているが、具体的には合成塩基性炭酸マグネシウム粉末、天然ブルーサイト粗粉体又は合成水酸化マグネシウム粉末を500〜900℃程度の温度で焼成したものを開示するだけである。
【0007】
特許文献4は、活性多孔質珪酸カルシウム粒に、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等のマグネシウム化合物を担持した有害物質処理材を開示する。この処理材は、水中の砒素や鉛等の重金属の他、リン酸、フッ素などを効率的に除去できるとしているが、有効成分は多孔質珪酸カルシウム粒と酸化マグネシウム等の反応物であると考えられる。
【0008】
上記のように酸化マグネシウムがフッ素の除去に有用であることは知られているが、フッ素除去の詳細なメカニズムは不明で、酸化マグネシウムの粒径、比表面積等が関係するとする文献もあるが、それだけで定まるものでもない。
【0009】
特許文献2が開示するように、水酸化マグネシウムを焼成して得られた酸化マグネシウムがフッ素の除去に有効であることは正しいとしても、炭酸マグネシウム鉱物を焼成して得られる酸化マグネシウムは、それより性能が大きく劣るものとなり、使用しにくいものとなっていた。水酸化マグネシウムは、海水からのにがり等から合成されるため、マグネサイト等の天然に得られる鉱物に比べれば高価であり、炭酸マグネシウム鉱物を焼成して得られる酸化マグネシウムの使用が可能となれば極めて有利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
炭酸マグネシウム鉱物を焼成して得られる酸化マグネシウムは、脱硫用等に多量に使用されているが、それがフッ素の除去にも使用できれば有利である。そこで、各種の脱硫用の酸化マグネシウムについて、フッ素の除去性能について検討したところ、ある種の処理をした特定の酸化マグネシウムだけが、優れたフッ素の除去性能を示すことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、炭酸マグネシウム鉱物を焼成して得られ、酸化マグネシウムの結晶中に炭酸塩の一部が分解されずに残存する酸化マグネシウムからなる焼成物であって、酸化マグネシウムの含量が50〜95wt%であり、示差熱分析において230℃と360℃の間で脱離する結晶水を1〜2wt%含有し、600℃以下で炭酸ガスを脱離する炭酸塩をCO2に換算して2〜8wt%含有し、且つ示差熱分析において560℃と624℃の間に発熱ピークを示す酸化マグネシウムからなる焼成物を、その粉末の通過割合が90%となる篩径が50〜500メッシュとなるように粉砕して得られる酸化マグネシウム粉末からなることを特徴とするフッ素を含む土壌の処理材(有害物質の処理材ともいう。)である。
【0012】
また、本発明は上記の有害物質の処理材を、フッ素を含有する廃水若しくは汚泥、又は汚染土壌に添加、混合してフッ素分の不溶化を行うことを特徴とする不溶化方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有害物質の処理材は、自然界に多量に存在する炭酸マグネシウム鉱物から得られるのであるにも関わらず、フッ素の除去性能が高い。また、酸化マグネシウムを主成分とするため、フッ素以外の重金属等の有害物質の処理能力も優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の処理材のTG-DTA曲線である。
図2】比較の処理材のTG-DTA曲線である。
図3】本発明の処理材の1回反射ATR法による赤外吸収スペクトルである。
図4】比較の処理材の1回反射ATR法による赤外吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で使用する炭酸マグネシウム鉱物としては、マグネサイトを主成分とするマグネシウム鉱石が代表的であるが、これに限らない。炭酸マグネシウム鉱物における酸化マグネシウムの含有量は乾燥状態で35wt%以上であることが望ましいが、高純度品である必要はなく、50〜95wt%の範囲であることがよい。
【0016】
一般にマグネサイト鉱石を800℃程度で焼成して得られる酸化マグネシウムは、軽焼マグネシアとして知られており、ボイラー等の排煙脱硫装置の中和剤として使用されているが、本発明で使用する酸化マグネシウムは、焼成条件を調整して、焼成物の結晶構造中に炭酸塩の一部を分解させずに残存させることが重要である。酸化マグネシウム中の炭酸マグネシウムの残存はX線回折で確認でき、2θ;32.6°付近に炭酸マグネシウムの結晶に基づくピークが観察される。また、結晶水の一部も残存させることが重要である。
【0017】
炭酸マグネシウム鉱物焼成物中の結晶水及び炭酸塩の残存量は、定量的にはTG-DTA測定によって求めることができる。昇温速度10℃/分程度で昇温すると約230℃で結晶水の脱離が始まり、約360℃で脱離が完了する。その後、約450℃〜約600℃の間で吸熱と重量減少が観測される。この重量減少は主に炭酸マグネシウムの脱炭酸反応によるもので、重量減少成分の主成分は炭酸ガスである。そして、600℃以下、好ましくは450℃〜600℃において脱離する炭酸ガスによる重量減少率を2〜8wt%、好ましくは2〜5wt%の範囲とする。これは、炭酸マグネシウム鉱物の焼成条件を調整することにより行う。すなわち、通常の軽焼マグネシア等の酸化マグネシウム製造の焼成条件より、温度を低くするか、焼成時間を短くすることにより、炭酸塩の一部を残存させる。なお、約600℃〜約650℃で観測される吸熱と重量減少は、炭酸マグネシウム鉱物中に不純物として含まれる炭酸カルシウム成分の脱炭酸反応によるものであるが、その量によってフッ素除去の性能が大きく変化することはないので、その制御は必須ではない。
【0018】
200℃以上、好ましくは230〜400℃で脱離する結晶水は1wt%以上含有するが、好ましくは1〜2wt%である。そして、結晶水と上記600℃以下で脱離する炭酸ガスの合計は3〜10wt%の範囲がよく、好ましくは4〜6wt%である。なお、焼成して得られる酸化マグネシウムは、結晶水の他に付着水を有する場合があるが、これは結晶水より低温で脱離する水分であり、明確な吸熱ピークを示さない。本発明でいう結晶水は上記温度範囲で脱離するものであり、320℃付近に吸熱ピークを示す。
【0019】
炭酸マグネシウム鉱物の焼成温度は500℃以上、好ましくは600〜900℃で、上記量の炭酸塩及び結晶水が残存する時間で焼成する。通常、焼成時間は1〜10時間の範囲である。得られる酸化マグネシウムのBET比表面積は、粉砕して粉末とした状態で、500cm2/g以上、好ましくは1000〜10000cm2/gの範囲とすることがよく、そのためには上記温度範囲とすることが有効である。しかし、過剰に比表面積を大きくすることは高度の粉砕が必要となるなどするので、1000〜6000cm2/gの範囲で十分である。
【0020】
焼成された酸化マグネシウムは、粉砕して粉末として本発明の処理材とする。粉末の粒径は90wt%通過割合となる篩径が50〜500メッシュとなる範囲であり、好ましくは100〜400メッシュ、より好ましくは200〜350メッシュ(目開き;約0.077〜0.048mm)の範囲である。
【0021】
本発明の処理材は、有害物質として少なくともフッ素を含む廃水、汚泥又は土壌(以下、廃水等ともいう。)の処理に適する。また、フッ素以外に、鉛、ヒ素等の重金属を有害物質として含む廃水等に適用すれば、pH等の処理条件にもよるがこれらの除去も同時に可能とすることができる。
【0022】
廃水等に本発明の処理材を使用する場合、酸化マグネシウムは水分に触れて水酸化マグネシウムとなるため、廃水等が酸性物質を含まないか、少量である場合は、全体をアルカリ性として、重金属イオンを水酸化物として沈殿させ、フッ素イオンをフッ化マグネシウムとして沈殿させる。しかし、フッ化マグネシウムは少量溶解するので、フッ素イオンが少量である場合は沈殿が生じないことがあり、沈殿が生じたとしても少量は溶解する。本発明の処理材は、炭酸マグネシウムと酸化マグネシウムを含むが、この他に少量の炭酸マグネシウムと酸化マグネシウムの中間物が存在し、この中間物が水和して部分水酸化物となる際、少量溶解するフッ素を取り込むことにより、溶出するフッ素(フッ素イオン、フッ素含有イオン又はフッ素化合物)を顕著に減少させると考えられる。なお、本発明の処理材は、水には完全には溶解させずに、懸濁状態、又は被処理物が土壌等の固体の場合は粉末状態で使用することが好ましい。したがって、廃水等が酸性物質を多量に含む場合は、炭酸カルシウム等のpH調整材を添加、混合することが有効である。
【0023】
フッ素含有廃水としては、フッ素イオンを含む廃水だけでなく、河川水や地下水等であってもよい。フッ素含有汚泥としては、廃水処理で発生する汚泥や、泥地や湿地の汚泥がある。フッ素含有土壌としては、フッ素化合物を含む土壌があり、土壌が水分を十分に含まない場合は、これに本発明の処理材を混合した後、水分を加えて水酸化物を生成させて全体をアルカリ性とすることがよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0025】
実施例1
産出鉱山が互いに異なり、マグネシウム分を酸化マグネシウムとして45.7〜46.2重量%を含有するマグネサイト鉱石(4種類)を20mm以下に破砕したものを原鉱として使用し、石炭乾留ガスを燃料とした縦型焼成炉(シャフト炉)を用いて約800℃で4時間焼成した後、24時間放冷し、これをレイモンドミルを用いて粉砕して、フッ素を含む有害物質を処理するための処理材(A1〜A4)を製造した。
【0026】
実施例2
実施例1のA4で用いたマグネサイト鉱石と同銘柄の鉱石を20mm以下に破砕したものを原鉱として使用し、焼成時間を6時間とした以外は実施例1と同じ設備・条件を用いて、フッ素を含む有害物質を処理するための処理材(A5)を製造した。
【0027】
処理材の分析値及び特性を表1に示す。
ここで、結晶水(%)は、示差熱分析装置にて昇温速度10℃/分程度の条件で昇温した場合の200℃〜360℃間での脱水による減量から算出したものである。CO2(%)は示差熱分析装置にて昇温速度10℃/分程度の条件で昇温した場合の450℃〜600℃間での脱炭酸による減量から算出したものである。強熱減量の測定条件は、960℃、1時間である。また、粉末度は90%以上が通過するメッシュ数である。
【0028】
【表1】
【0029】
比較例1
市販の酸化マグネシウム試薬(軽質)(H1)、及びメーカーが異なる市販の2種類の排煙脱硫用軽焼マグネシア(H2〜H3)を処理材とした。
【0030】
比較例2
実施例1のA4で用いたマグネサイト鉱石と同銘柄の鉱石を20mm以下に破砕したものを原鉱として使用し、焼成時間を8時間とした以外は実施例1と同じ設備・条件を用いて、比較の処理材(H4)を製造した。比較の処理材(H1〜H4)の分析値及び特性を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
図1に処理材A1のTG-DTA曲線を示す。図2に処理材H2のTG-DTA曲線を示す。昇温速度は10℃/分である。図1は、A、B及びCで示すように320.4℃、560℃及び624℃に吸熱ピークを示すが、これらはそれぞれ結晶水の脱離、炭酸マグネシウムからの脱炭酸及び炭酸カルシウムからの脱炭酸によるものと推定される。
一方、図2はA及びCで示すように303.7℃に、小さな吸熱ピークを示し、これは結晶水の脱離と推定され、また炭酸カルシウムからの脱炭酸によるものと推定される重量減少が認められる。
【0033】
図3に処理材A4のフーリエ変換赤外分光光度計を用いて1回反射ATR法による赤外吸収スペクトルを示す。図4に処理材H4の赤外吸収スペクトルを示す。図3は結晶水に由来するヒドロキシル基(3700cm-1付近)と炭酸塩(1430cm-1付近)と推察される吸収ピークが検出された。一方、図4は1440cm-1付近に、小さな炭酸塩の吸収ピークを示すだけである。
【0034】
実施例3
フッ素含有廃水として、フッ素含有岩石の浸出水(フッ素濃度212mg/L)を使用した(廃水1)。この廃水1000ml中に、処理材A1〜A5のいずれかを100g添加し、25℃で15分間攪拌し静置した。24時間後、溶液を5Aのろ紙でろ過し、ろ液中のフッ素濃度を公定法により測定した。結果を表3に示す。
処理材A1〜A5を加えた場合は、いずれの場合も、フッ素溶出量は基準値(0.8mg/L)以下になった。
【0035】
比較例3
実施例3で使用したと同じフッ素含有廃水(廃水1)を使用し、この廃水1000ml中に、比較の処理材H1〜H4のいずれかを100g添加し、25℃で15分間攪拌し静置した。24時間後、溶液を5Aのろ紙でろ過し、ろ液中のフッ素濃度を公定法により測定した。結果を表3に示す。
比較の処理材の添加では、いずれもフッ素溶出量基準値を達成できなかった。
【0036】
【表3】
【0037】
実施例4
フッ素含有廃水として、フッ素含有岩石の浸出水(フッ素濃度85mg/L)を使用した(廃水2)。この廃水100ml中に、処理材A1〜A5をそれぞれ1g添加し、25℃で6h攪拌し、接触させた。24時間後、溶液を5Aのろ紙でろ過し、ろ液中のフッ素濃度を公定法により測定した。結果を表4に示す。
処理材A1〜A5を加えた場合は、いずれもフッ素溶出量基準値以下になった。
【0038】
比較例4
実施例4で使用したと同じ、フッ素含有廃水(廃水2)を使用し、この廃水100ml中に、処理材H2〜H4をそれぞれ1g添加し、25℃で6h攪拌し、接触させた。24時間後、溶液を5Aのろ紙でろ過し、ろ液中のフッ素濃度を公定法により測定した。結果を表5に示す。
比較の処理材の添加では、フッ素溶出量基準値を達成できなかった。
【0039】
【表4】
【0040】
実施例5
フッ素含有廃水として、フッ素含有土壌の浸出水(フッ素濃度1.1mg/L)中に市販のフッ素標準液を添加・調整して、フッ素濃度10.6mg/Lの人工廃水を作成して使用した(廃水3)。この廃水400ml中に、処理材A1を0.05g〜1.0g添加し、25℃で6h攪拌し、接触させた。その後、溶液を5Aのろ紙でろ過し、ろ液中のフッ素濃度を公定法により測定した。結果を表5に示す。
処理材A1のフッ素吸着量は、フッ素溶出量基準値(0.8 mg/L)の半分程度のフッ素濃度においても、6mg/g以上の値を示した。
【0041】
【表5】
【0042】
実施例6
フッ素含有土壌として、トンネル掘削ずりを使用し、試料をジョークラッシャーにて粉砕し、2mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌1)。
この汚染土壌中に処理材A1を、3%〜5%(wt%)まで3水準で添加し、適宜加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表6に示す。なお、比較のため、処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
溶出試験は、環境省告示18号の検液作成方法により固相試料から溶出液を作成し、JIS K 0102によりフッ素の濃度を測定した。pHは溶出液においてJISK 0102(ガラス電極法)準拠により測定した。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は3.40mg/Lであり、それに比べて、処理材を加えた場合は、すべての配合率でフッ素溶出量基準値以下になった。
【0043】
【表6】
【0044】
実施例7
フッ素含有土壌として、トンネル掘削ずりを使用し、試料をジョークラッシャーにて粉砕し、2mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌2)。
この汚染土壌中に処理材A1を、2%〜4%まで3水準で添加し、適宜加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表7に示す。なお、比較のため、処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は0.98mg/Lであり、それに比べて、処理材を加えた場合は、すべての配合率でフッ素の検出限界値以下になった。
【0045】
【表7】
【0046】
実施例8
フッ素含有土壌として、トンネル掘削ずりを使用し、試料をジョークラッシャーにて粉砕し、2mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌3)。
この汚染土壌中に処理材A1又はA2を、0.5%〜3%まで6水準で添加し、適宜加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表8に示す。なお、比較のため、処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は2.1mg/L、pHは8.4であった。処理材A1又はA2を加えた場合は、すべての配合率でフッ素溶出量基準値以下になった。
【0047】
【表8】
【0048】
実施例9
フッ素含有土壌として、トンネル掘削ずりを使用し、試料をジョークラッシャーにて粉砕し、2mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌4)。
この汚染土壌中に処理材A1又はA2を、0.5%〜3%まで6水準で添加し、適宜加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表9に示す。なお、比較のため,処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は1.8mg/Lであり、それに比べて、処理材を加えた場合は、すべての配合率でフッ素溶出量基準値以下になった。
【0049】
【表9】
【0050】
実施例10
フッ素含有土壌として、工場跡地のフッ素汚染土壌を使用し、試料を20mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌5)。
この汚染土壌中に処理材A2を、7%〜15%まで3水準で添加し、乾燥重量比7%で加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生7日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表10に示す。なお、比較のため、処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は7.4mg/Lであり、それに比べて、処理材を加えた場合は、すべての配合率でフッ素溶出量基準値以下になった。
【0051】
【表10】
【0052】
実施例11
フッ素含有土壌として、工場跡地のフッ素汚染土壌を使用し、試料を20mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌6)。
この汚染土壌中に処理材A2を、5%で添加し、乾燥重量比7%で加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表11に示す。なお、比較のため、処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は5.5mg/Lであり、それに比べて、処理材を加えた場合は、すべての配合率でフッ素溶出量基準値以下になった。
【0053】
比較例5
実施例11で使用したと同じ、フッ素汚染土壌(汚染土壌6)を使用し、この汚染土壌中に処理材H1を、5%で添加し、乾燥重量比7%で加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表11に示す。
比較の処理材の添加では、フッ素溶出量基準値を達成できなかった。
【0054】
【表11】
【0055】
実施例12
フッ素含有土壌として、工場跡地のフッ素汚染土壌を使用し、試料を20mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌7)。
この汚染土壌中に処理材A2を、5%で添加し、乾燥重量比7%で加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表12に示す。なお、比較のため、処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は2.8mg/Lであり、それに比べて、処理材を加えた場合は、フッ素溶出量基準値以下になった。
【0056】
比較例6
実施例12で使用したと同じ、フッ素汚染土壌(汚染土壌7)を使用し、この汚染土壌中に処理材H1を、5%で添加し、乾燥重量比13%で加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表12に示す。
比較処理材の添加では、フッ素溶出量基準値を達成できなかった。
【0057】
【表12】
図1
図2
図3
図4