【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0025】
実施例1
産出鉱山が互いに異なり、マグネシウム分を酸化マグネシウムとして45.7〜46.2重量%を含有するマグネサイト鉱石(4種類)を20mm以下に破砕したものを原鉱として使用し、石炭乾留ガスを燃料とした縦型焼成炉(シャフト炉)を用いて約800℃で4時間焼成した後、24時間放冷し、これをレイモンドミルを用いて粉砕して、フッ素を含む有害物質を処理するための処理材(A1〜A4)を製造した。
【0026】
実施例2
実施例1のA4で用いたマグネサイト鉱石と同銘柄の鉱石を20mm以下に破砕したものを原鉱として使用し、焼成時間を6時間とした以外は実施例1と同じ設備・条件を用いて、フッ素を含む有害物質を処理するための処理材(A5)を製造した。
【0027】
処理材の分析値及び特性を表1に示す。
ここで、結晶水(%)は、示差熱分析装置にて昇温速度10℃/分程度の条件で昇温した場合の200℃〜360℃間での脱水による減量から算出したものである。CO
2(%)は示差熱分析装置にて昇温速度10℃/分程度の条件で昇温した場合の450℃〜600℃間での脱炭酸による減量から算出したものである。強熱減量の測定条件は、960℃、1時間である。また、粉末度は90%以上が通過するメッシュ数である。
【0028】
【表1】
【0029】
比較例1
市販の酸化マグネシウム試薬(軽質)(H1)、及びメーカーが異なる市販の2種類の排煙脱硫用軽焼マグネシア(H2〜H3)を処理材とした。
【0030】
比較例2
実施例1のA4で用いたマグネサイト鉱石と同銘柄の鉱石を20mm以下に破砕したものを原鉱として使用し、焼成時間を8時間とした以外は実施例1と同じ設備・条件を用いて、比較の処理材(H4)を製造した。比較の処理材(H1〜H4)の分析値及び特性を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
図1に処理材A1のTG-DTA曲線を示す。
図2に処理材H2のTG-DTA曲線を示す。昇温速度は10℃/分である。
図1は、A、B及びCで示すように320.4℃、560℃及び624℃に吸熱ピークを示すが、これらはそれぞれ結晶水の脱離、炭酸マグネシウムからの脱炭酸及び炭酸カルシウムからの脱炭酸によるものと推定される。
一方、
図2はA及びCで示すように303.7℃に、小さな吸熱ピークを示し、これは結晶水の脱離と推定され、また炭酸カルシウムからの脱炭酸によるものと推定される重量減少が認められる。
【0033】
図3に処理材A4のフーリエ変換赤外分光光度計を用いて1回反射ATR法による赤外吸収スペクトルを示す。
図4に処理材H4の赤外吸収スペクトルを示す。
図3は結晶水に由来するヒドロキシル基(3700cm
-1付近)と炭酸塩(1430cm
-1付近)と推察される吸収ピークが検出された。一方、
図4は1440cm
-1付近に、小さな炭酸塩の吸収ピークを示すだけである。
【0034】
実施例3
フッ素含有廃水として、フッ素含有岩石の浸出水(フッ素濃度212mg/L)を使用した(廃水1)。この廃水1000ml中に、処理材A1〜A5のいずれかを100g添加し、25℃で15分間攪拌し静置した。24時間後、溶液を5Aのろ紙でろ過し、ろ液中のフッ素濃度を公定法により測定した。結果を表3に示す。
処理材A1〜A5を加えた場合は、いずれの場合も、フッ素溶出量は基準値(0.8mg/L)以下になった。
【0035】
比較例3
実施例3で使用したと同じフッ素含有廃水(廃水1)を使用し、この廃水1000ml中に、比較の処理材H1〜H4のいずれかを100g添加し、25℃で15分間攪拌し静置した。24時間後、溶液を5Aのろ紙でろ過し、ろ液中のフッ素濃度を公定法により測定した。結果を表3に示す。
比較の処理材の添加では、いずれもフッ素溶出量基準値を達成できなかった。
【0036】
【表3】
【0037】
実施例4
フッ素含有廃水として、フッ素含有岩石の浸出水(フッ素濃度85mg/L)を使用した(廃水2)。この廃水100ml中に、処理材A1〜A5をそれぞれ1g添加し、25℃で6h攪拌し、接触させた。24時間後、溶液を5Aのろ紙でろ過し、ろ液中のフッ素濃度を公定法により測定した。結果を表4に示す。
処理材A1〜A5を加えた場合は、いずれもフッ素溶出量基準値以下になった。
【0038】
比較例4
実施例4で使用したと同じ、フッ素含有廃水(廃水2)を使用し、この廃水100ml中に、処理材H2〜H4をそれぞれ1g添加し、25℃で6h攪拌し、接触させた。24時間後、溶液を5Aのろ紙でろ過し、ろ液中のフッ素濃度を公定法により測定した。結果を表5に示す。
比較の処理材の添加では、フッ素溶出量基準値を達成できなかった。
【0039】
【表4】
【0040】
実施例5
フッ素含有廃水として、フッ素含有土壌の浸出水(フッ素濃度1.1mg/L)中に市販のフッ素標準液を添加・調整して、フッ素濃度10.6mg/Lの人工廃水を作成して使用した(廃水3)。この廃水400ml中に、処理材A1を0.05g〜1.0g添加し、25℃で6h攪拌し、接触させた。その後、溶液を5Aのろ紙でろ過し、ろ液中のフッ素濃度を公定法により測定した。結果を表5に示す。
処理材A1のフッ素吸着量は、フッ素溶出量基準値(0.8 mg/L)の半分程度のフッ素濃度においても、6mg/g以上の値を示した。
【0041】
【表5】
【0042】
実施例6
フッ素含有土壌として、トンネル掘削ずりを使用し、試料をジョークラッシャーにて粉砕し、2mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌1)。
この汚染土壌中に処理材A1を、3%〜5%(wt%)まで3水準で添加し、適宜加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表6に示す。なお、比較のため、処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
溶出試験は、環境省告示18号の検液作成方法により固相試料から溶出液を作成し、JIS K 0102によりフッ素の濃度を測定した。pHは溶出液においてJISK 0102(ガラス電極法)準拠により測定した。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は3.40mg/Lであり、それに比べて、処理材を加えた場合は、すべての配合率でフッ素溶出量基準値以下になった。
【0043】
【表6】
【0044】
実施例7
フッ素含有土壌として、トンネル掘削ずりを使用し、試料をジョークラッシャーにて粉砕し、2mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌2)。
この汚染土壌中に処理材A1を、2%〜4%まで3水準で添加し、適宜加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表7に示す。なお、比較のため、処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は0.98mg/Lであり、それに比べて、処理材を加えた場合は、すべての配合率でフッ素の検出限界値以下になった。
【0045】
【表7】
【0046】
実施例8
フッ素含有土壌として、トンネル掘削ずりを使用し、試料をジョークラッシャーにて粉砕し、2mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌3)。
この汚染土壌中に処理材A1又はA2を、0.5%〜3%まで6水準で添加し、適宜加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表8に示す。なお、比較のため、処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は2.1mg/L、pHは8.4であった。処理材A1又はA2を加えた場合は、すべての配合率でフッ素溶出量基準値以下になった。
【0047】
【表8】
【0048】
実施例9
フッ素含有土壌として、トンネル掘削ずりを使用し、試料をジョークラッシャーにて粉砕し、2mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌4)。
この汚染土壌中に処理材A1又はA2を、0.5%〜3%まで6水準で添加し、適宜加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表9に示す。なお、比較のため,処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は1.8mg/Lであり、それに比べて、処理材を加えた場合は、すべての配合率でフッ素溶出量基準値以下になった。
【0049】
【表9】
【0050】
実施例10
フッ素含有土壌として、工場跡地のフッ素汚染土壌を使用し、試料を20mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌5)。
この汚染土壌中に処理材A2を、7%〜15%まで3水準で添加し、乾燥重量比7%で加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生7日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表10に示す。なお、比較のため、処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は7.4mg/Lであり、それに比べて、処理材を加えた場合は、すべての配合率でフッ素溶出量基準値以下になった。
【0051】
【表10】
【0052】
実施例11
フッ素含有土壌として、工場跡地のフッ素汚染土壌を使用し、試料を20mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌6)。
この汚染土壌中に処理材A2を、5%で添加し、乾燥重量比7%で加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表11に示す。なお、比較のため、処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は5.5mg/Lであり、それに比べて、処理材を加えた場合は、すべての配合率でフッ素溶出量基準値以下になった。
【0053】
比較例5
実施例11で使用したと同じ、フッ素汚染土壌(汚染土壌6)を使用し、この汚染土壌中に処理材H1を、5%で添加し、乾燥重量比7%で加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表11に示す。
比較の処理材の添加では、フッ素溶出量基準値を達成できなかった。
【0054】
【表11】
【0055】
実施例12
フッ素含有土壌として、工場跡地のフッ素汚染土壌を使用し、試料を20mmの篩を通過させたものを均一に混合した(汚染土壌7)。
この汚染土壌中に処理材A2を、5%で添加し、乾燥重量比7%で加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表12に示す。なお、比較のため、処理材を添加しない以外は、同様にして溶出試験を行った。
処理材を添加しない場合のフッ素溶出量は2.8mg/Lであり、それに比べて、処理材を加えた場合は、フッ素溶出量基準値以下になった。
【0056】
比較例6
実施例12で使用したと同じ、フッ素汚染土壌(汚染土壌7)を使用し、この汚染土壌中に処理材H1を、5%で添加し、乾燥重量比13%で加水し混合機で10分間混合した。得られた不溶化土壌について、養生1日にて公定法に基づいた溶出試験を行った結果を表12に示す。
比較処理材の添加では、フッ素溶出量基準値を達成できなかった。
【0057】
【表12】