【文献】
          上利泰幸ほか,ハニカム類似構造をもつ窒化ホウ素/フェノール樹脂複合材料の熱伝導率,ネットワークポリマー,日本,合成樹脂工業協会,2011年  1月10日,Vol.32,pp.10-18
        
        【文献】
          YIN, J. et al.,Ultralight Three-Dimensional Boron Nitride Foam with Ultralow Permittivity and Superelasticity,Nano Letters,米国,ACS Publications,2013年  6月25日,Vol.13,pp.3232-3236
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
  本願発明に係る窒化ホウ素構造体は、窒化ホウ素材料から構成されるハニカム状多孔質構造を有する。
 
【0021】
  本発明では、上記の構成が備えられているので、放熱性を高めることができる。連続的な熱伝導ネットワークが形成されているので、放熱性をかなり高めることができる。
 
【0022】
  本発明に係る窒化ホウ素構造体はハニカム状多孔質構造を有するので、高い放熱性を達成することができる。
 
【0023】
  本発明に係る樹脂材料は、(A)樹脂と、(C)窒化ホウ素構造体とを含む。本発明に係る熱硬化性材料は、(A2)熱硬化性化合物と、(B)熱硬化剤と、(C)窒化ホウ素構造体とを含む。(C)窒化ホウ素構造体は、窒化ホウ素材料から構成されるハニカム状多孔質構造を有する。
 
【0024】
  本発明に係る樹脂材料及び熱硬化性材料では、上記の組成が採用されているので、窒化ホウ素構造体による熱伝導ネットワークが形成できるため、放熱性をかなり高めることができる。更に、(A)樹脂と、(C)窒化ホウ素構造体とを併用すること、並びに(A2)熱硬化性化合物と、(B)熱硬化剤と、(C)窒化ホウ素構造体とを併用することで、これらを併用していない場合と比べて、放熱性が効果的に高くなる。
 
【0025】
  上記のような効果が得られるのは、上記窒化ホウ素構造体が、窒化ホウ素材料から構成されるハニカム状多孔質構造を有することにより、連続的な熱伝導ネットワークが形成されるためと考えられる。
 
【0026】
  上記樹脂材料及び上記熱硬化性材料では、(C)窒化ホウ素構造体内に、(A)樹脂又は(A2)熱硬化性化合物が含まれることが好ましい。上記樹脂材料及び上記熱硬化性材料では、(C)窒化ホウ素構造体の孔内及び内部に、(A)樹脂又は(A2)熱硬化性化合物が含まれることが好ましい。上記熱硬化性材料では、(C)窒化ホウ素構造体内に、(B)熱硬化剤が含まれることが好ましい。上記熱硬化性材料では、(C)窒化ホウ素構造体の孔内及び内部に、(B)熱硬化剤が含まれることが好ましい。例えば、繊維状の窒化ホウ素を用いた場合に、繊維間に、(A)樹脂又は(A2)熱硬化性化合物を含ませることができる。
 
【0027】
  放熱性を効果的に高める観点からは、(C)窒化ホウ素構造体は、(D)窒化ホウ素材料ではないフィラー(単に、(D)フィラーと記載することがある)を含むことが好ましい。本発明では、(C)窒化ホウ素構造体と(D)フィラーとが存在することで、熱伝導ネットワークをより密に構成することができるため、放熱性を効果的に高めることができる。
 
【0028】
  (D)フィラーを用いる場合に、(C)窒化ホウ素構造体の間に(D)フィラーを配置することができ、更に、(D)フィラーを(C)窒化ホウ素構造体を介して他の(D)フィラーに間接的に接するようにすることができる。結果として、放熱性及び機械的強度を効果的に高めることができる。(D)フィラーを用いる場合に、(C)窒化ホウ素構造体内に(D)フィラーを配置してもよい。
 
【0030】
  ((C)窒化ホウ素構造体)
  (C)窒化ホウ素構造体は、窒化ホウ素材料から構成されるハニカム状多孔質構造を有することが好ましい。ここで、ハニカム状多孔質構造とは、側壁で囲まれた複数の空間(孔)が分布した構造である。ハニカム状多孔質構造とは、側壁で囲まれた複数の空間(孔)が厚み方向に分布した構造であることが好ましい。複数の空間をまたがるように側壁は連続していることが好ましい。例えば、隣り合う3以上の孔の側壁が連続していることが好ましく、隣り合う4以上の孔の側壁が連続していることがより好ましく、隣り合う5以上の孔の側壁が連続していることが更に好ましい。
 
【0031】
  上記孔の断面形状としては、特に限定されないが、不定形、多角形及び円形、並びにこれらの形状の一部の形状等が挙げられる。上記孔の断面形状は、円形又は円形の一部であることが好ましい。上記孔の平均孔径は、特に限定されないが、好ましくは5μm以上、好ましくは50μm以下である。上記平均孔径は、複数の孔の孔径を平均することで求められる。上記孔径は、1つの孔における最大径である。
 
【0032】
  ハニカム状多孔質構造では、孔が均一に分布していることが好ましい。ハニカム状多孔質構造では、孔が規則性を有するように分布していることが好ましい。ハニカム状多孔質構造を有する窒化ホウ素構造体では、孔が分布していることで、絶縁破壊が起こるまでの経路長を一定以上確保することができるため、絶縁破壊特性を高めることができる。また、連続的な熱伝導ネットワークが形成されているので、放熱性をかなり高めることができる。
 
【0033】
  ハニカム状多孔質構造を有する窒化ホウ素構造体の製造方法は、特に限定されないが、フィラーの自己凝集性を利用する方法、結露法、エマルジョン粒子や多孔質メンブレン等の鋳型を利用する方法、溶液キャスト法、並びに樹脂の相分離を利用し、得られた膜を積層する方法等が挙げられる。
 
【0034】
  特に、結露法は、手法が簡便であることから、ハニカム状多孔質構造の形成に適している。
 
【0035】
  結露法では、ポリマーを疎水性有機溶媒に溶解させた疎水性ポリマー溶液を、基材上に塗布する。有機溶媒を蒸散させると同時に、塗布膜の表面を加湿雰囲気下に晒す。塗布膜上に結露した水滴により自己組織的に形成される水滴集積体が規則的な配列を形成する現象を利用して、該水滴集積体を鋳型として、塗布膜中の有機溶媒と水滴とを蒸発させる。それを繰り返し行うことによって、結果として、厚み方向にハニカム状多孔質構造が形成される。例えば、両親媒性ポリマー等で表面を被覆した無機フィラーを疎水性有機溶媒に分散させたスラリーを基材等に塗布し、高湿度下で静置し、それを繰り返し行い積層させることにより、厚み方向にハニカム状多孔質構造が得られる。この場合に、有機溶媒の蒸発潜熱によって、空気中の水分が有機溶媒の表面に結露し、規則的に配列された水滴を鋳型にして無機フィラーが水滴表面に自己凝集することで、ハニカム状多孔質構造が形成される。
 
【0036】
  結露法によりハニカム状多孔質構造を形成させる場合、上記窒化ホウ素材料は、両親媒性ポリマー等で表面が被覆されていることが好ましい。両親媒性ポリマーで表面を被覆する方法としては、特に限定されないが、プラズマ処理等の適当な方法によって窒化ホウ素材料の表面にカルボキシル基を導入して水中に分散させ、そこにアミノ基を有するヒドロキシポリエチレングリコール等の両親媒性ポリマーを添加して混合する方法等が挙げられる。
 
【0037】
  窒化ホウ素材料:
  上記窒化ホウ素材料としては、窒化ホウ素フィラー及び窒化ホウ素ナノチューブ等が挙げられる。(A)樹脂及び(A2)熱硬化性化合物を容易に含浸させることができるので、上記窒化ホウ素材料は、繊維状の窒化ホウ素を含むことが好ましい。なお、窒化ホウ素ナノチューブは、繊維状の窒化ホウ素に相当する。上記窒化ホウ素フィラー及び窒化ホウ素ナノチューブの材質は、窒化ホウ素である。上記窒化ホウ素材料は、窒化ホウ素ナノチューブであることが好ましい。上記窒化ホウ素材料として、窒化ホウ素ナノチューブと、窒化ホウ素フィラーとを組み合わせてもよい。
 
【0038】
  上記窒化ホウ素フィラーの形状は、球状であってもよく、鱗片状等の球状以外の形状であってもよい。上記窒化ホウ素フィラーは、ナノ粒子であってもよい。
 
【0039】
  放熱性を効果的に高める観点から、上記窒化ホウ素フィラーの平均粒子径は、好ましくは5nm以上、好ましくは300nm以下である。
 
【0040】
  上記平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる。
 
【0041】
  上記窒化ホウ素フィラーのアスペクト比(長径/短径)は、好ましくは1以上である。上記窒化ホウ素フィラーのアスペクト比の上限は特に限定されない。上記窒化ホウ素フィラーのアスペクト比は100以下であってもよい。
 
【0042】
  上記アスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求めることができる。例えばTEM(透過型電子顕微鏡)による測定を行い、得られた画像から直接、上記窒化ホウ素フィラーのアスペクト比を算出することが可能である。上記アスペクト比は、電子顕微鏡の画像中の任意の50個の算術平均により求めることが好ましい。
 
【0043】
  上記窒化ホウ素ナノチューブは、ナノチューブである。上記窒化ホウ素ナノチューブの材質は、窒化ホウ素である。上記窒化ホウ素ナノチューブの形状は、チューブ状である。理想的な形状としては、6角網目の面がチューブ軸に平行に管を形成し、単管又は多重管になっている形状である。
 
【0044】
  上記窒化ホウ素ナノチューブの平均直径は好ましくは2nm以上、より好ましくは6nm以上、更に好ましくは10nm以上、特に好ましくは30nm以上、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下、特に好ましくは100nm以下、最も好ましくは50nm以下である。
 
【0045】
  平均直径とは、単管の場合には平均外径を示し、多重管の場合には最も外側に位置する管の平均外径を意味する。
 
【0046】
  上記窒化ホウ素ナノチューブの平均長さは、好ましくは1μm以上、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。
 
【0047】
  窒化ホウ素ナノチューブの直径や長さは、合成手法、合成時の温度や時間等を変更することで適宜変えることができる。例えばアーク放電法では小直径、化学気相成長法では大直径のナノチューブが得られる。
 
【0048】
  上記窒化ホウ素ナノチューブのアスペクト比は好ましくは2以上である。上記窒化ホウ素ナノチューブのアスペクト比の上限は特に限定されない。上記窒化ホウ素ナノチューブのアスペクト比は100000以下であってもよい。
 
【0049】
  上記平均直径、上記平均長さ及び上記アスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求めることができる。例えばTEM(透過型電子顕微鏡)による測定を行い、得られた画像から直接、上記窒化ホウ素ナノチューブの直径、長さを測定することが可能である。また熱硬化性材料及び樹脂材料中の上記窒化ホウ素ナノチューブの形態は、例えば軸と平行に切断した繊維断面のTEM(透過型電子顕微鏡)測定により把握することができる。上記平均直径、上記平均長さ及び上記アスペクト比は、電子顕微鏡の画像中の任意の50個の算術平均により求めることが好ましい。
 
【0050】
  上記窒化ホウ素ナノチューブは、アーク放電法、レーザー加熱法及び化学気相成長法等を用いて合成できる。また、ホウ化ニッケルを触媒として使用し、ボラジンを原料として合成する方法も知られている。また、カーボンナノチューブを鋳型として利用して、酸化ホウ素と窒素を反応させて合成する方法も知られている。上記窒化ホウ素ナノチューブは、これらの合成方法により得られるものに限定されない。上記窒化ホウ素ナノチューブは、強酸処理又は化学修飾された窒化ホウ素ナノチューブであってもよい。
 
【0051】
  また、樹脂成分と窒化ホウ素ナノチューブとの濡れ性及び耐湿性の改善、並びに界面における熱抵抗を低減させるために、窒化ホウ素ナノチューブは、表面に共役系ポリマーを有することも好ましい。
 
【0052】
  上記共役系ポリマーは、二重結合と単結合とが交互に連なっている分子である。上記窒化ホウ素ナノチューブは、窒化ホウ素ナノチューブ本体と、上記窒化ホウ素ナノチューブ本体の表面上に配置された共役高分子とを有することが好ましい。上記共役系ポリマーと上記窒化ホウ素ナノチューブ本体との相互作用は強い。また、後述する(A2)熱硬化性化合物がフェノキシ樹脂を含む場合に、上記共役系ポリマーとフェノキシ樹脂との相互作用を強くすることができる。
 
【0053】
  上記共役系ポリマーとしては、例えば、ポリフェニレンビニレンポリマー、ポリチオフェンポリマー、ポリフェニレンポリマー、ポリピロールポリマー、ポリアニリンポリマー、及びポリアセチレンポリマー等が挙げられる。ポリフェニレンビニレンポリマー、又はポリチオフェンポリマーが好ましい。
 
【0054】
  窒化ホウ素ナノチューブ本体を上記共役系ポリマーで被覆する方法として、特に限定はされないが、1)窒化ホウ素ナノチューブ本体を、溶融している共役系ポリマーに添加して、無溶媒で混合する方法、並びに、2)窒化ホウ素ナノチューブ本体と共役系ポリマーとを、共役系ポリマーを溶解する溶媒中で分散混合する方法等が挙げられる。上記2)の方法においては、窒化ホウ素ナノチューブ本体を分散させる方法としては、超音波による分散方法、及び各種の攪拌方法等が挙げられる。上記攪拌方法としては、ホモジナイザーによる攪拌方法、アトライターによる攪拌方法、及びボールミルによる攪拌方法等が挙げられる。
 
【0055】
  上記樹脂材料100体積%中及び上記熱硬化性材料100体積%中、(C)窒化ホウ素構造体の含有量は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。(C)窒化ホウ素構造体の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、放熱性が効果的に高くなる。
 
【0056】
  ((A)樹脂)
  上記樹脂材料、(A)樹脂及び上記熱硬化性材料は、熱可塑性成分又は熱硬化性成分を含むことが好ましい。上記樹脂材料、(A)樹脂及び上記熱硬化性材料は、(A1)熱可塑性化合物又は(A2)熱硬化性化合物を含むことが好ましい。上記樹脂材料、(A)樹脂及び上記熱硬化性材料は、(A1)熱可塑性化合物を含んでいてもよく、(A2)熱硬化性化合物を含んでいてもよい。(A)樹脂は、(A2)熱硬化性化合物を含むことが好ましい。上記(A)樹脂は、(A2)熱硬化性化合物と(B)熱硬化剤とを含むことが好ましい。
 
【0057】
  上記樹脂材料100重量%中及び上記熱硬化性材料100重量%中、(A)樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、好ましくは90重量%以下である。
 
【0058】
  ((A1)熱可塑性化合物)
  上記樹脂材料は、(A1)熱可塑性化合物を含んでいてもよい。
 
【0059】
  (A1)熱可塑性化合物としては、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂及びポリアミド樹脂等が挙げられる。(A1)熱可塑性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
 
【0060】
  上記樹脂材料100重量%中、(A1)熱可塑性化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、好ましくは90重量%以下である。
 
【0061】
  ((A2)熱硬化性化合物)
  上記樹脂材料及び上記熱硬化性材料は、(A2)熱硬化性化合物を含んでいてもよい。なお、上記熱硬化性材料が(A2)熱硬化性化合物を含む場合に、(A2)熱硬化性化合物は樹脂でなくてもよい。
 
【0062】
  (A2)熱硬化性化合物は、加熱により硬化可能な化合物である。(A2)熱硬化性化合物としては、スチレン化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。(A2)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
 
【0063】
  (A2)熱硬化性化合物として、(A2−1)10000未満の分子量を有する熱硬化性化合物(単に、(A2−1)熱硬化性化合物と記載することがある)を用いてもよく、(A2−2)10000以上の分子量を有する熱硬化性化合物(単に、(A2−2)熱硬化性化合物と記載することがある)を用いてもよく、(A2−1)熱硬化性化合物と、(A2−2)熱硬化性化合物との双方を用いてもよい。
 
【0064】
  樹脂材料及び熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、(C)窒化ホウ素構造体、及び(D)フィラーを除く成分100重量%中、(A2)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下、最も好ましくは50重量%以下である。(A2)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、硬化物の接着性及び耐熱性がより一層高くなる。(A2)熱硬化性化合物の含有量が上記上限以下であると、樹脂材料及び熱硬化性材料の作製時の塗工性が高くなる。
 
【0065】
  樹脂材料及び熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、(C)窒化ホウ素構造体、及び(D)フィラーを除く成分は、(D)フィラーを含み、かつ樹脂材料及び熱硬化性材料が溶剤を含まない場合には、(C)窒化ホウ素構造体、及び(D)フィラーを除く成分であり、樹脂材料及び熱硬化性材料が(D)フィラーを含み、かつ溶剤を含む場合には、溶剤、(C)窒化ホウ素構造体及び(D)フィラーを除く成分である。樹脂材料及び熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、(C)窒化ホウ素構造体、及び(D)フィラーを除く成分は、(D)フィラーを含まず、かつ樹脂材料及び熱硬化性材料が溶剤を含まない場合には、(C)窒化ホウ素構造体を除く成分であり、樹脂材料及び熱硬化性材料が(D)フィラーを含まず、かつ溶剤を含む場合には、溶剤、及び(C)窒化ホウ素構造体を除く成分である。
 
【0066】
  (A2−1)10000未満の分子量を有する熱硬化性化合物:
  (A2−1)熱硬化性化合物としては、環状エーテル基を有する熱硬化性化合物が挙げられる。上記環状エーテル基としては、エポキシ基及びオキセタニル基等が挙げられる。上記環状エーテル基を有する熱硬化性化合物は、エポキシ基又はオキセタニル基を有する熱硬化性化合物であることが好ましい。(A2−1)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
 
【0067】
  (A2−1)熱硬化性化合物は、(A2−1a)エポキシ基を有する熱硬化性化合物(単に、(A2−1a)熱硬化性化合物と記載することがある)を含んでいてもよく、(A2−1b)オキセタニル基を有する熱硬化性化合物(単に、(A2−1b)熱硬化性化合物と記載することがある)を含んでいてもよい。
 
【0068】
  硬化物の耐熱性及び耐湿性をより一層高める観点からは、(A2−1)熱硬化性化合物は芳香族骨格を有することが好ましい。
 
【0069】
  上記芳香族骨格としては特に限定されず、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性をより一層高める観点からは、ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。
 
【0070】
  (A2−1a)熱硬化性化合物としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマー、ナフタレン骨格を有するエポキシモノマー、アダマンタン骨格を有するエポキシモノマー、フルオレン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー、バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマー、キサンテン骨格を有するエポキシモノマー、アントラセン骨格を有するエポキシモノマー、及びピレン骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。これらの水素添加物又は変性物を用いてもよい。(A2−1a)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
 
【0071】
  上記ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型又はビスフェノールS型のビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。
 
【0072】
  上記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマーとしては、ジシクロペンタジエンジオキシド、及びジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシモノマー等が挙げられる。
 
【0073】
  上記ナフタレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、及び1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
 
【0074】
  上記アダマンタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン、及び2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
 
【0075】
  上記フルオレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。
 
【0076】
  上記ビフェニル骨格を有するエポキシモノマーとしては、4,4’−ジグリシジルビフェニル、及び4,4’−ジグリシジル−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等が挙げられる。
 
【0077】
  上記バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,1’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、及び1,2’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン等が挙げられる。
 
【0078】
  上記キサンテン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−2,7−ビス−オキシラニルメトキシ−9−フェニル−9H−キサンテン等が挙げられる。
 
【0079】
  (A2−1b)熱硬化性化合物の具体例としては、例えば、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、及びオキセタン変性フェノールノボラック等が挙げられる。(A2−1b)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
 
【0080】
  硬化物の耐熱性をより一層良好にする観点からは、(A2−1)熱硬化性化合物は、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
 
【0081】
  硬化物の耐熱性をより一層良好にする観点からは、(A2−1)熱硬化性化合物100重量%中、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、100重量%以下である。(A2−1)熱硬化性化合物100重量%中、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物の含有量は10重量%以上、100重量%以下であってもよい。また、(A2−1)熱硬化性化合物の全体が、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物であってもよい。
 
【0082】
  (A2−1)熱硬化性化合物の分子量は、10000未満である。(A2−1)熱硬化性化合物の分子量は、好ましくは200以上、好ましくは1200以下、より好ましくは600以下、更に好ましくは550以下である。(A2−1)熱硬化性化合物の分子量が上記下限以上であると、硬化物の表面の粘着性が低くなり、硬化性組成物の取扱性がより一層高くなる。(A2−1)熱硬化性化合物の分子量が上記上限以下であると、硬化物の接着性がより一層高くなる。更に、硬化物が固くかつ脆くなり難く、硬化物の接着性がより一層高くなる。
 
【0083】
  なお、本明細書において、(A2−1)熱硬化性化合物における分子量とは、(A2−1)熱硬化性化合物が重合体ではない場合、及び(A2−1)熱硬化性化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味し、(A2−1)熱硬化性化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
 
【0084】
  熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、(C)窒化ホウ素構造体、及び(D)フィラーを除く成分100重量%中、(A2−1)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下、最も好ましくは50重量%以下である。(A2−1)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、硬化物の接着性及び耐熱性がより一層高くなる。(A2−1)熱硬化性化合物の含有量が上記上限以下であると、熱硬化性材料の作製時の塗工性が高くなる。
 
【0085】
  (A2−2)10000以上の分子量を有する熱硬化性化合物:
  (A2−2)熱硬化性化合物は、分子量が10000以上である熱硬化性化合物である。(A2−2)熱硬化性化合物の分子量は10000以上であるので、(A2−2)熱硬化性化合物は一般にポリマーであり、上記分子量は、一般に重量平均分子量を意味する。
 
【0086】
  硬化物の耐熱性及び耐湿性をより一層高める観点からは、(A2−2)熱硬化性化合物は、芳香族骨格を有することが好ましい。(A2−2)熱硬化性化合物がポリマーであり、(A2−2)熱硬化性化合物が芳香族骨格を有する場合には、(A2−2)熱硬化性化合物は、芳香族骨格をポリマー全体のいずれかの部分に有していればよく、主鎖骨格内に有していてもよく、側鎖中に有していてもよい。硬化物の耐熱性をより一層高くし、かつ硬化物の耐湿性をより一層高くする観点からは、(A2−2)熱硬化性化合物は、芳香族骨格を主鎖骨格内に有することが好ましい。(A2−2)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
 
【0087】
  上記芳香族骨格としては特に限定されず、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。この場合には、硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性がより一層高くなる。
 
【0088】
  (A2−2)熱硬化性化合物としては特に限定されず、スチレン樹脂、フェノキシ樹脂、オキセタン樹脂、エポキシ樹脂、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
 
【0089】
  硬化物の酸化劣化を抑え、硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性をより一層高め、更に硬化物の吸水率をより一層低くする観点からは、(A2−2)熱硬化性化合物は、スチレン樹脂、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂であることが好ましく、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂であることがより好ましく、フェノキシ樹脂であることが更に好ましい。特に、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。また、フェノキシ樹脂の使用により、硬化物の弾性率がより一層低くなり、かつ硬化物の耐冷熱サイクル特性がより一層高くなる。なお、(A2−2)熱硬化性化合物は、エポキシ基等の環状エーテル基を有していなくてもよい。
 
【0090】
  上記スチレン樹脂として、具体的には、スチレン系モノマーの単独重合体、及びスチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体等が使用可能である。スチレン−メタクリル酸グリシジルの構造を有するスチレン重合体が好ましい。
 
【0091】
  上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン及び3,4−ジクロロスチレン等が挙げられる。
 
【0092】
  上記フェノキシ樹脂は、具体的には、例えばエピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
 
【0093】
  上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格又はジシクロペンタジエン骨格を有することが好ましい。上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格又はビフェニル骨格を有することがより好ましく、フルオレン骨格及びビフェニル骨格の内の少なくとも1種の骨格を有することが更に好ましい。これらの好ましい骨格を有するフェノキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性が更に一層高くなる。
 
【0094】
  上記エポキシ樹脂は、上記フェノキシ樹脂以外のエポキシ樹脂である。上記エポキシ樹脂としては、スチレン骨格含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
 
【0095】
  (A2−2)熱硬化性化合物の分子量は10000以上である。(A2−2)熱硬化性化合物の分子量は、好ましくは30000以上、より好ましくは40000以上、好ましくは1000000以下、より好ましくは250000以下である。(A2−2)熱硬化性化合物の分子量が上記下限以上であると、硬化物が熱劣化し難い。(A2−2)熱硬化性化合物の分子量が上記上限以下であると、(A2−2)熱硬化性化合物と他の成分との相溶性が高くなる。この結果、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
 
【0096】
  樹脂材料及び熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、(C)窒化ホウ素構造体、及び(D)フィラーを除く成分100重量%中、(A2−2)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。(A2−2)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、樹脂材料及び熱硬化性材料の取扱性が良好になる。(A2−2)熱硬化性化合物の含有量が上記上限以下であると、(C)窒化ホウ素構造体への含浸が容易になる。
 
【0097】
  ((B)熱硬化剤)
  (B)熱硬化剤は特に限定されない。(B)熱硬化剤として、(A2)熱硬化性化合物を硬化させることができる適宜の熱硬化剤を用いることができる。また、本明細書において、(B)熱硬化剤には、硬化触媒が含まれる。(B)熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
 
【0098】
  硬化物の耐熱性をより一層高める観点からは、(B)熱硬化剤は、芳香族骨格又は脂環式骨格を有することが好ましい。(B)熱硬化剤は、アミン硬化剤(アミン化合物)、イミダゾール硬化剤、フェノール硬化剤(フェノール化合物)又は酸無水物硬化剤(酸無水物)を含むことが好ましく、アミン硬化剤を含むことがより好ましい。上記酸無水物硬化剤は、芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物を含むか、又は、脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物を含むことが好ましい。
 
【0099】
  上記アミン硬化剤としては、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。硬化物の接着性をより一層高める観点からは、上記アミン硬化剤は、ジシアンジアミド又はイミダゾール化合物であることがより一層好ましい。硬化性組成物の貯蔵安定性をより一層高める観点からは、(B)熱硬化剤は、融点が180℃以上である硬化剤を含むことが好ましく、融点が180℃以上であるアミン硬化剤を含むことがより好ましい。
 
【0100】
  上記イミダゾール硬化剤としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
 
【0101】
  上記フェノール硬化剤としては、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、及びポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。硬化物の柔軟性及び硬化物の難燃性をより一層高める観点からは、メラミン骨格を有するフェノール樹脂、トリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。
 
【0102】
  上記フェノール硬化剤の市販品としては、MEH−8005、MEH−8010及びMEH−8015(以上いずれも明和化成社製)、YLH903(三菱化学社製)、LA−7052、LA−7054、LA−7751、LA−1356及びLA−3018−50P(以上いずれもDIC社製)、並びにPS6313及びPS6492(以上いずれも群栄化学社製)等が挙げられる。
 
【0103】
  上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、例えば、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、フェニルエチニルフタル酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及びトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
 
【0104】
  上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、SMAレジンEF30、SMAレジンEF40、SMAレジンEF60及びSMAレジンEF80(以上いずれもサートマー・ジャパン社製)、ODPA−M及びPEPA(以上いずれもマナック社製)、リカシッドMTA−10、リカシッドMTA−15、リカシッドTMTA、リカシッドTMEG−100、リカシッドTMEG−200、リカシッドTMEG−300、リカシッドTMEG−500、リカシッドTMEG−S、リカシッドTH、リカシッドHT−1A、リカシッドHH、リカシッドMH−700、リカシッドMT−500、リカシッドDSDA及びリカシッドTDA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにEPICLON  B4400、EPICLON  B650、及びEPICLON  B570(以上いずれもDIC社製)等が挙げられる。
 
【0105】
  上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物は、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物、又はテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られる脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物であることが好ましい。これらの硬化剤の使用により、硬化物の柔軟性、並びに硬化物の耐湿性及び接着性がより一層高くなる。
 
【0106】
  上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、メチルナジック酸無水物、ジシクロペンタジエン骨格を有する酸無水物又は該酸無水物の変性物等も挙げられる。
 
【0107】
  上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、リカシッドHNA及びリカシッドHNA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにエピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H及びエピキュアYH309(以上いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
 
【0108】
  (B)熱硬化剤は、メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸であることも好ましい。メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸の使用により、硬化物の耐水性が高くなる。
 
【0109】
  樹脂材料及び熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、(C)窒化ホウ素構造体、及び(D)フィラーを除く成分100重量%中、(B)熱硬化剤の含有量は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。(B)熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、熱硬化性材料を充分に硬化させることが容易である。(B)熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化に関与しない余剰な(B)熱硬化剤が発生し難くなる。このため、硬化物の耐熱性及び接着性がより一層高くなる。
 
【0110】
  ((D)フィラー)
  (D)フィラーは、窒化ホウ素材料ではなく、(D)フィラーの材質は、窒化ホウ素ではない。
 
【0111】
  絶縁破壊特性を効果的に高める観点から、(D)フィラーは絶縁性を有することが好ましい。(D)フィラーは、有機フィラーであってもよく、無機フィラーであってもよい。放熱性を効果的に高める観点からは、(D)フィラーは、無機フィラーであることが好ましい。放熱性を効果的に高める観点から、(D)フィラーは、10W/m・K以上の熱伝導率を有することが好ましい。(D)フィラーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、絶縁性とは、フィラーの体積抵抗率が10
6Ω・cm以上であることを意味する。
 
【0112】
  硬化物の放熱性をより一層高める観点からは、(D)フィラーの熱伝導率は好ましくは10W/m・K以上、より好ましくは15W/m・K以上、更に好ましくは20W/m・K以上である。(D)フィラーの熱伝導率の上限は特に限定されない。熱伝導率が300W/m・K程度である無機フィラーは広く知られており、また熱伝導率が200W/m・K程度である無機フィラーは容易に入手できる。
 
【0113】
  (D)フィラーの材質は、アルミナ、合成マグネサイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛又は酸化マグネシウムであることが好ましく、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛又は酸化マグネシウムであることがより好ましい。これらの好ましいフィラーの使用により、硬化物の放熱性がより一層高くなる。
 
【0114】
  (D)フィラーのアスペクト比は5未満であってもよく、4以下であってもよく、3以下であってもよく、2以下であってもよい。(D)フィラーは、球状粒子、又は、独立した絶縁性フィラーが凝集した球状粒子であることが好ましい。(D)フィラーが球状粒子、又は、凝集した球状粒子であることで、放熱性を効果的に高めることができる。球状粒子のアスペクト比は、2以下である。
 
【0115】
  (D)フィラーの材質の新モース硬度は、好ましくは12以下、より好ましくは9以下である。(D)フィラーの材質の新モース硬度が9以下であると、硬化物の加工性がより一層高くなる。
 
【0116】
  硬化物の加工性をより一層高める観点からは、(D)フィラーの材質は、合成マグネサイト、結晶シリカ、酸化亜鉛、又は酸化マグネシウムであることが好ましい。これらの無機フィラーの材質の新モース硬度は9以下である。
 
【0117】
  放熱性を効果的に高める観点からは、(D)フィラーの平均粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下である。平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、ハニカム状多孔質構造を有する窒化ホウ素構造体が容易に作製できる。
 
【0118】
  上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
 
【0119】
  樹脂材料及び熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤を除く成分100体積%中、(D)フィラーの含有量は、好ましくは25体積%以上、より好ましくは30体積%以上、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。(D)フィラーの含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の放熱性が効果的に高くなる。
 
【0120】
  (他の成分)
  上記樹脂材料及び熱硬化性材料は、上述した成分の他に、分散剤、キレート剤、酸化防止剤等の熱硬化性材料及び熱硬化性シートに一般に用いられる他の成分を含んでいてもよい。
 
【0121】
  (樹脂材料、熱硬化性材料及び積層体の他の詳細)
  上記樹脂材料は、樹脂シートであってもよい。上記熱硬化性材料は、熱硬化性シートであってもよい。
 
【0122】
  本発明に係る熱硬化性材料を硬化させることで、硬化物を得ることができる。上記硬化物は、上記熱硬化性材料の硬化物である。
 
【0123】
  本発明に係る積層体は、金属体と、上記熱硬化性材料の硬化物とを備える。上記硬化物においては、上記窒化ホウ素構造体は、単層構造ではなく多層構造を有することが好ましい。上記窒化ホウ素構造体は、3層以上の多層構造体であることが好ましい。
 
【0124】
  多層構造を有する硬化物を作製する方法は、特に限定されないが、上記結露法を繰り返すことで窒化ホウ素構造体を多層化した後に樹脂成分を含浸及び硬化させる方法、単層の窒化ホウ素構造体を含む熱硬化性材料を熱圧着硬化により多層化する方法等が挙げられる。
 
【0125】
  図1は、本発明の一実施形態に係る窒化ホウ素構造体を用いた熱硬化性材料の硬化物を模式的に示す断面図である。なお、
図1では、図示の便宜上、実際の大きさ及び厚みとは異なっている。
 
【0126】
  図1に示す硬化物1は、硬化物部11と、窒化ホウ素構造体及び硬化物12とを備える。窒化ホウ素構造体の孔内及び内部に、硬化物が配置されている。
 
【0127】
  硬化物部11は、熱硬化性化合物及び熱硬化剤を含む熱硬化性成分が硬化した部分であり、熱硬化性成分を硬化させることにより得られる。本実施形態では、硬化物1は、金属体21の表面上に配置されている。
 
【0128】
  上記窒化ホウ素構造体は、窒化ホウ素材料から構成されている。上記窒化ホウ素構造体は、例えば、結露法等によって作製される。
 
【0129】
  上記樹脂材料、上記熱硬化性材料及び上記硬化物は、放熱性等が高いことが求められる様々な用途に用いることができる。上記硬化物は、例えば、電子機器において、発熱部品と放熱部品との間に配置されて用いられる。
 
【0130】
  以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は以下の実施例に限定されない。
 
【0131】
  (実施例1)
  (窒化ホウ素構造体の作製)
  窒化ホウ素ナノチューブの被覆:
  平均直径が50nm、平均長さが100μmである窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を用意した。この窒化ホウ素ナノチューブをステンレス容器に入れて、メタンと酸素を充填した後、300Wの出力でプラズマ処理を5分間行い、表面にカルボキシル基が導入されたBNNTを得た。得られたBNNTを水中に超音波分散させ、両親媒性ポリマーであるアミノ基を有するヒドロキシルポリエチレングリコールを添加した。2時間静置させた後、水洗し、乾燥し、両親媒性ポリマーにより表面が被覆されたBNNTを得た。
 
【0132】
  窒化ホウ素構造体の作製:
  上記両親媒性ポリマーにより表面が被覆されたBNNTをクロロホルムに分散させた分散液(BNNT濃度:2mg/ml)を用いて、離型PETシート上に深さが50μmである金型を置き、上記分散液を塗布した。湿度80%の環境下でクロロホルムを蒸発させて、窒化ホウ素構造体を作製した。
 
【0133】
  得られた窒化ホウ素構造体に対して、上記の作業を2回繰り返し、3層構造の窒化ホウ素構造体を得た。
 
【0134】
  得られた窒化ホウ素構造体の断面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡(SEM)により観察すると、ハニカム状多孔質構造の形成が確認された。窒化ホウ素構造体における孔の孔径は3〜30μm程度、高さは60μm程度であった。
 
【0135】
  (熱硬化性シートの作製)
  マトリックス樹脂の作製:
  熱可塑性化合物としてビスフェノールA型フェノキシ樹脂50重量部と、熱硬化性化合物としてビスフェノールA型エポキシ化合物30重量部と、硬化剤として脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製「MH−700」)及びジシアンジアミドを合計で15重量部と、添加剤としてエポキシシランカップリング剤5重量部とを配合して、マトリックス樹脂を作製した。
 
【0136】
  熱硬化性シートの作製:
  上記マトリックス樹脂を上記窒化ホウ素構造体に含浸させ、厚みが20μmとなるように塗工した。その後、90℃のオーブン内で30分間乾燥することで、厚みが20μmの熱硬化性シート(シート状の熱硬化性材料)を得た。含浸させたマトリックス樹脂の体積量から、得られた熱硬化性シートに占める窒化ホウ素構造体の含有量は25体積%であった。
 
【0137】
  (放熱銅基板の作製)
  上記熱硬化性シートを3枚重ねて、厚みが100μmの銅基板で挟み、5MPa、200℃で1時間熱圧着硬化させ、放熱銅基板を得た。
 
【0138】
  (実施例2)
  実施例1の両親媒性ポリマーにより表面が被覆されたBNNTを用意した。
 
【0139】
  上記両親媒性ポリマーにより表面が被覆されたBNNTをクロロホルムに分散させた分散液(BNNT濃度:2mg/ml)を用いて、離型PETシート上に深さが50μmである金型を置き、上記分散液を塗布した。湿度80%の環境下でクロロホルムを蒸発させて、窒化ホウ素構造体を作製した。この窒化ホウ素構造体を3つ作製した。
 
【0140】
  得られた1つの窒化ホウ素構造体に対して、残りの窒化ホウ素構造体をPETシートを剥離して積層し、3層構造の窒化ホウ素構造体を得た。
 
【0141】
  得られた窒化ホウ素構造体の断面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡(SEM)により観察すると、ハニカム状多孔質構造の形成が確認された。窒化ホウ素構造体における孔の孔径は3〜30μm程度、高さは60μm程度であった。
 
【0142】
  得られた窒化ホウ素構造体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、熱硬化性シート(シート状の熱硬化性材料)及び放熱銅基板を得た。
 
【0143】
  (比較例1)
  熱硬化性シートの作製の際、マトリックス樹脂を窒化ホウ素構造体に含浸させる代わりに、マトリックス樹脂とBNNTを配合比(単位は体積%)が40:60となるように添加し、ホモディスパー型攪拌機で混練して、ペースト(熱硬化性材料)を作製し、離型PETシート上に厚みが60μmとなるように塗工したこと以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性シート(シート状の熱硬化性材料)を得た。
 
【0144】
  更に、放熱銅基板の作製の際、上記厚みが60μmの熱硬化性シートを1枚使用したこと以外は、実施例1と同様にして、放熱銅基板を得た。
 
【0145】
  (評価)
  熱伝導率の測定:
  放熱銅基板の熱伝導率を、京都電子工業社製熱伝導率計「迅速熱伝導率計QTM−500」を用いて測定した。また、比較例1の放熱銅基板の熱伝導率を同様にして測定した。比較例1の熱伝導率を1.0として、その他の実施例の熱伝導率を比較した。各実施例における熱伝導率の比較例1における熱伝導率に対する比(熱伝導率比)を求めた。