特許第6815756号(P6815756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815756
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】枕木
(51)【国際特許分類】
   E01B 19/00 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
   E01B19/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-114810(P2016-114810)
(22)【出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-218821(P2017-218821A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100195305
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 恵
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 充輝
(72)【発明者】
【氏名】本居 孝治
(72)【発明者】
【氏名】足立 剛一
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−144922(JP,A)
【文献】 特開2012−241493(JP,A)
【文献】 特開2009−041254(JP,A)
【文献】 特開2010−047212(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0156055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の線路に配置される枕木であって、
直方体形状の枕木本体と、
前記枕木本体の上面に配置される防護部材と、
前記枕木本体と前記防護部材とを着脱自在に連結する、少なくとも1つの連結部材と、
を備え、
前記枕木本体は、当該枕木本体の上面と下面とを貫通する第1貫通孔を備えており、
前記連結部材は、前記枕木本体の下面から前記第1貫通孔に挿通され、前記枕木本体の上面から突出する本体部と、当該本体部にネジ止めされるネジ部とを備え、
前記連結部材の本体部は、前記枕木本体の下面側に係合するように構成され、
前記防護部材は、当該防護部材の上面と下面とを貫通する第2貫通孔を備えており、
前記防護部材の下面の第2貫通孔から挿入された前記連結部材の本体部と、前記防護部材の上面から挿入されたネジ部と、をネジ止めすることで、前記防護部材と前記枕木本体とが固定される、枕木。
【請求項2】
前記防護部材の上面の少なくとも一部に、水平方向に延びる平坦部が形成され、当該平坦部に前記貫通孔が形成されている、請求項に記載の枕木。
【請求項3】
前記防護部材は、前記列車の進行方向に向かって上方へ傾斜する傾斜部を有し、当該傾斜部に凹凸が形成されている、請求項1または2に記載の枕木。
【請求項4】
前記傾斜部は、階段状に形成されている、請求項に記載の枕木。
【請求項5】
前記防護部材は、前記列車の進行方向に向かって上方へ傾斜する傾斜部を有し、
前記傾斜部は、複数の突出部を有している、請求項に記載の枕木。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の、少なくとも1つの枕木と、
前記枕木の枕木本体の上面の両端部に配置される一対のレールと、
前記枕木よりも、前記列車の進行方向前方に配置されるレール駆動装置と、
を備えている、複線線路。
【請求項7】
第1方向に進行する列車用に用いられ、請求項1からのいずれかに記載の枕木と同一構成の、少なくとも1つの第1枕木と、
前記第1方向とは反対方向の第2方向に進行する列車用に用いられ、請求項1から7のいずれかに記載の枕木と同一構成の、少なくとも1つの第2枕木と、
前記各枕木の枕木本体の上面の両端部に配置される一対のレールと、
前記第1枕木と第2枕木との間に配置されるレール駆動装置と、
を備えている、単線線路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕木、及びこれを有する線路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、寒冷地の線路に敷設される枕木として、特許文献1のような枕木が提案されている。この枕木は、上枕木と下枕木とを備え、両者の間に電熱線を挟んでいる。そのため、電熱線を通電して発熱させると、枕木近傍の積雪を溶かすことができ、列車の運行に支障を来すのを防止することができる。
【0003】
ところで、上述の融雪用枕木を用いると、枕木近傍の積雪を溶かすことは可能であるが、寒冷地では、巻き上げた氷雪が走行する列車の底面に付着し、低温度により塊状になることがある。その場合、列車の高速運転中に、その氷雪が列車から離脱すると、線路のレール間に配置されたレール駆動シャフトや信号用配線等のレール駆動装置に衝突するおそれがある。そして、その衝突によって、レール駆動装置が破壊されることがあり、運行上大きな問題となっている。
【0004】
これに対して、特許文献2では、次のような枕木が開示されている。この枕木は、直方体状の枕木本体と、この枕木本体の上面に固定され傾斜面を有する防護部材と、を備えている。そして、防護部材の傾斜面には、凹凸が形成されている。また、枕木本体と防護部材とは、接着剤または釘などで固定されている。この枕木を、列車の進行方向において、レール駆動装置よりも後方側に配置すると、列車の底面から離脱した氷雪が、レール駆動装置に到達する前に、傾斜面に衝突して粉砕される。これにより、レール駆動装置が氷雪により破壊されるのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3586299号公報
【特許文献2】特開2009−41254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような枕木では、次のような問題があった。まず、上記枕木において、防護部材は、氷雪が繰り返し衝突することにより、亀裂が生じたり、衝撃によって防護部材と枕木本体との間に隙間が生じたりするなどの不具合が発生することがある。ところが、枕木本体と防護部材とは接着剤や釘で固定されているため、防護部材を取り外すことができず、交換が困難であった。また枕木本体よりも防護部材に氷雪が衝突することが多く、防護部材にだけ不具合が生じていた。
【0007】
そこで、枕木ごと交換することも考えられるが、既設の線路のレールがジャッキアップできない場合、例えば、枕木がコンクリートで固められていたり、夜間の列車の通過により破線できない場合には、枕木ごとの交換ができない。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、防護部材の交換を容易に行うことができる、枕木を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、列車の線路に配置される枕木であって、直方体形状の枕木本体と、前記枕木本体の上面に配置される防護部材と、前記枕木本体と前記防護部材とを着脱自在に連結する、少なくとも1つの連結部材と、を備えている。
【0009】
この構成によれば、連結部材によって、防護部材と枕木本体とが着脱自在に固定されているため、防護部材が損傷したときに、防護部材を枕木本体から取り外し、交換することができる。なお、防護部材が損傷したときには、枕木ごと交換することも考えられるが、レールのジャッキアップが不可能な場合など、枕木ごとの交換ができない場合には、防護部材を枕木本体から取り外せる本発明の枕木は、特に有利である。
【0010】
上記枕木において、連結部材は、種々の構成が可能であるが、例えば、以下のようにすることができる。
【0011】
例えば、前記連結部材を、前記枕木本体の上面から突出するように設け、前記防護部材の下面に、前記連結部材を受け入れる受け穴を形成し、前記防護部材が、前記受け穴に挿入された前記連結部材によって、前記枕木本体に固定されるように構成することができる。
【0012】
このようにすると、防護部材が、枕木本体から突出する連結部材によって支えられるため、水平方向から飛来する氷雪による耐衝撃性能を向上することができる。したがって、防護部材が枕木本体から浮き上がるなどの不具合を防止することができる。
【0013】
あるいは、次のように構成することもできる。前記連結部材は、前記枕木本体の上面から突出する本体部と、当該本体部にネジ止めされるネジ部とを備え、前記防護部材は、当該防護部材の上面と下面とを貫通する貫通孔を備えており、前記防護部材の下面の貫通孔から挿入された前記連結部材の本体部と、前記防護部材の上面から挿入されたネジ部と、をネジ止めすることで、前記防護部材と前記枕木本体とが固定されるものとすることができる。
【0014】
また、上記各枕木においては、前記防護部材の上面の少なくとも一部に、水平方向に延びる平坦部をし、当該平坦部に前記貫通孔を形成することができる。
【0015】
この構成によれば、例えば、防護部材をネジ止めにより固定している場合には、防護部材の上面からネジの取り外しを行うことになるが、この場合、防護部材の上面が平坦であれば、ネジの取り外しを容易に行うことができる。
【0016】
上記各枕木において、前記防護部材は、前記列車の進行方向に向かって上方へ傾斜する傾斜部を有し、当該傾斜部に凹凸が形成されているものとすることができる。
【0017】
上記傾斜部に形成される凹凸は、種々の構成にすることができる。例えば、前記傾斜部を階段状に形成することで、凹凸を形成することができる。
【0018】
あるいは、前記傾斜部に、複数の突出部を設けることで、凹凸を形成することができる。
【0019】
本発明に係る複線線路は、上述したいずれかの枕木と、前記枕木の枕木本体の上面の両端部に配置される一対のレールと、前記枕木よりも、前記列車の進行方向前方に配置されるレール駆動装置と、を備えている。
【0020】
本発明に係る単線線路は、第1方向に進行する列車用に用いられ、上述したいずれかの枕木と同一構成の第1枕木と、前記第1方向とは反対方向の第2方向に進行する列車用に用いられ、上述したいずれかの枕木と同一構成の第2枕木と、前記各枕木の枕木本体の上面の両端部に配置される一対のレールと、前記第1枕木と第2枕木との間に配置されるレール駆動装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、防護部材の交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る枕木の一実施形態を示す斜視図である。
図2】枕木本体の斜視図である。
図3】防護部材の斜視図である。
図4図3の断面図である。
図5】連結部材の斜視図である。
図6】枕木本体への連結部材の取付を示す断面図である。
図7】枕木の組み立てを説明する断面図である。
図8】複線線路の平面図である。
図9】単線線路の平面図である。
図10】防護部材の作用を示す側面図である。
図11図1の枕木の他の例を示す斜視図である。
図12】防護部材の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る枕木の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、この枕木の斜視図である。なお、以下では、線路のレールが延びる方向を前後方向または列車の進行方向、それと直交する方向を横方向または幅方向と称することとする。
【0024】
<1.枕木の構造>
まず、本実施形態に係る枕木10の構造について説明する。図1に示すように、枕木10は、レールが配置される直方体状に枕木本体1と、この枕木本体1の上面に配置される防護部材2と、これら枕木本体1と防護部材2とを連結する複数の連結部材3と、を備えている。以下、これらを詳細に説明する。
【0025】
<1−1.枕木本体>
図2は枕木本体の斜視図である。図2に示すように、枕木本体1は、上面11、下面12、前面13、後面14、及び一対の側面15を有する直方体状に形成されている。そして、この枕木本体1の上面11からは複数の連結部材3の一部が突出している。これら連結部材3は、枕木本体1の横方向に所定間隔(例えば、100mm以上)をおいて複数配置されている。
【0026】
枕木本体1は、種々の材料で形成することができるが、木材、金属、コンクリートのほか、例えば、ガラス長繊維で補強された硬質ウレタン樹脂発泡体で形成することができる。このような、硬質ウレタン樹脂発泡体としては、比重が0.74程度で強度が大きなものが好ましい。また、枕木本体1の横方向の長さLは、例えば、約2600mmに形成することができ、前後方向の長さDは、例えば、約240mmに形成することができる。
【0027】
<1−2.防護部材>
図3は防護部材の斜視図、図4図3の断面図である。防護部材2は、枕木本体1の上面の中央付近に配置され、側面視で台形状に形成されている。すなわち、上面21、下面22、前面23、後面24、及び一対の側面25を備えている。上面21と下面22の前端縁は前後方向にほぼ同じ位置にあり、前面23は、上面21及び下面22と直交している。上面21の前後方向の長さは、下面22よりも長いため、後面24は前方にいくにしたがって上方に延びる傾斜部24を構成している。そして、この傾斜部24は階段状に形成されている。
【0028】
また、図4に示すように、防護部材2には、上面21と下面22とを結ぶ複数の貫通孔26を有している。これら貫通孔26は、横方向に沿って所定間隔(例えば、100mm以上)をおいて配置されている。各貫通孔26は、防護部材2の下面22から延びる円柱状の小径部261と、この小径部261の上端と連通し、防護部材2の上面21に開放する円柱状の大径部262と、で構成されている。小径部261と大径部262との軸心は同一直線状にある。大径部262の内径は、小径部261よりも大きいため、その連結部分において段263が形成される。そして、これら貫通孔26には、連結部材3が挿通される。
【0029】
防護部材2の高さTは、例えば、30〜130mmであることが好ましい。これは、高さTが30mm未満であると、走行中の列車から離脱した氷雪が防護部材2の上面21を滑り、氷雪の衝撃力が直に枕木本体1の表面に加わってしまうため、枕木を損傷させるおそれがあることによる。また、氷雪が水平方向に近い角度で防護部材2に飛来した場合、氷雪が防護部材2上を滑って、列車の底面に再び戻ってしまい、この底面を損傷させるおそれもある。一方、高さTが130mmを超えると、防護部材2の上面21がレールよりも高く形成されてしまい、列車の車両間に設置してあるモータや、列車の底面の配管に接触するおそれがある。
【0030】
なお、具体的な防護部材2の寸法としては、例えば、横方向の長さPが約1000mm、高さTが約120mmとすることができる。
【0031】
防護部材2を構成する材料は特には限定されないが、例えば、真比重が1.2〜1.8(好ましくは約1.5)の枕木本体1の研削粉と、ウレタン樹脂とを含有した材料とすることができる。このとき、研削粉とウレタン樹脂の含有比率は特には限定されないが、例えば、枕木本体1の研削粉を70%と、ウレタン樹脂を30%含んだものとすることができる。
【0032】
<1−3.連結部材>
図5は連結部材の斜視図である。図5に示すように、連結部材3は、本体部31と、この本体部31にねじ込まれるボルト(ネジ部)32を有している。また、本体部31は、矩形状の基台部311と、この基台部311から上方に突出する軸部312と、を有している。軸部312は円筒状に形成されており、内部に雌ネジが形成されている。また、ボルト32は、円形のフランジ部321と、このフランジ部321から突出する雄ネジ部322とを備えており、この雄ネジ部322が軸部312の雌ネジにねじ込まれる。そして、本体部31のうち、基台部311は枕木本体1に埋め込まれ、軸部312が上方に向かって延び、枕木本体1の上面11から突出している。
【0033】
連結部材3を構成する材料は特には限定されないが、例えば、金属材料で形成することができる。
【0034】
連結部材3の本体部31は、例えば、次のように枕木本体1に取り付けることができる。まず、図6(a)に示すように、枕木本体1の下面12に本体部31の基台部311が挿入可能な凹部16を形成し、この凹部16の上面から、枕木本体1の上面11まで貫通する軸穴17を形成する。凹部16の深さは、基台部311の高さよりも大きく、枕木本体1の厚みの半分より小さい。また、軸穴17には、本体部31の軸部312が挿通される。そして、図6(b)に示すように、枕木本体1の凹部16に、軸部312を上に向けて本体部31を挿入し、軸部312を軸穴17に挿通させる。これにより、軸部312は、枕木本体1の上面11から突出する。続いて、基台部311の上面と、凹部16の上面とを接着剤で仮止めした後、凹部16にエポキシ系樹脂などの接着剤8を流し込む。これにより、図6(c)に示すように、基台部311と凹部16の開口との間が樹脂接着剤で埋められるとともに、本体部31が枕木本体1に固定される。
【0035】
<2.枕木の組立て>
次に、枕木の組み立てについて説明する。まず、連結部材3の本体部31が埋め込まれた枕木本体1を準備し、その上面11に防護部材2を取り付ける。すなわち、図7(a)に示すように、防護部材2の小径部261に、枕木本体1から突出する連結部材3の軸部312を挿入する。そして、防護部材2の下面22と枕木本体1の上面11とが接した状態では、軸部312の上端は、防護部材2の大径部262の下端よりもやや低い位置にある。そして、図7(b)に示すように、ボルト32の雄ネジを、防護部材2の上方から貫通孔26に挿入し、雄ネジ部322を連結部材3の軸部312の雌ネジにねじ込む。これにより、ボルト32のフランジ部321が貫通孔26の段263に係合し、防護部材2は枕木本体1の上面11に固定される。なお、軸部312の長さは、その上端が防護部材2の高さTの半分より上に位置するようにしておくのが、強度の面で好ましい。
【0036】
<3.枕木の利用>
続いて、本実施形態に係る枕木の利用について説明する。以下では、本実施形態に係る枕木を防護用枕木と称し、通常の枕木と区別することとする。上記のように、この防護用枕木10の枕木本体1の両端には、一対のレール4が配置され、これらレール4の間に、防護部材2が配置される。また、この防護用枕木10は、線路におけるレール駆動装置5の近くに配置される。レール駆動装置5とは、例えば、レール駆動シャフトや信号用配線を含むものである。具体的には、図8に示すように、列車の進行方向において、レール駆動装置5の後方側に、傾斜部24を後方側に向けて防護用枕木10が配置される。このとき、防護用枕木10は、レール駆動装置5のすぐ後ろ側に配置することもできるが、レール駆動装置5と防護用枕木10との間に、1以上の通常の枕木500を配置することもできる。また、防護用枕木10を複数配置することもできる。
【0037】
単線線路では、線路上を両方の方向に列車が進行するため、図9に示すように、この防護用枕木(第1枕木及び第2枕木)10は、レール駆動装置5を挟んで、線路の延びる方向の両側に配置することができる。このとき、各防護用枕木10は、傾斜部24をレール駆動装置5とは反対側に向けて配置される。また、レール駆動装置5を挟んで、列車の進行方向の前方、及び後方にそれぞれ、複数の防護用枕木10を配置することもできる。
【0038】
そして、このように配置された防護用枕木10は、次のような役割を果たす。冬季には、列車の底面に氷雪が巻き上げて塊状に付着する場合があり、この氷雪が列車の底面から下方に突出した状態で、列車が走行することがある。この場合、図10に示すように、氷雪は、列車の高速走行中に、防護部材2の傾斜部24に衝突する。このとき、傾斜部24は階段状に凹凸が形成されているため、衝突した氷雪はこの凹凸によって、レール駆動装置5に到達する前に粉砕される。したがって、レール駆動装置5が氷雪により破壊されるのを防止することができる。また、傾斜部24に凹凸が形成されることで、衝突した氷雪の衝撃を分散することができ、防護部材2に過度な負荷がかかるのを防止することもできる。
【0039】
なお、単線線路の場合には、図9のように、防護用枕木10が配置されているため、列車がいずれの方向に走行しても、氷雪は、いずれかの防護用枕木の防護部材2に衝突して除去される。
【0040】
<4.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、連結部材3によって、防護部材2と枕木本体1とが着脱自在に固定されているため、防護部材2が損傷したときに、ボルト32を取り外した後、防護部材2を枕木本体1から取り外し、簡単に交換することができる。なお、防護部材2が損傷したときには、枕木ごと交換することも考えられるが、レールのジャッキアップが不可能な場合など、枕木ごとの交換ができない場合には、防護部材2を枕木本体1から取り外せる本発明の枕木は、特に有利である。
【0041】
また、防護部材2は、枕木本体1から突出する連結部材3の軸部312によって支えられているため、水平方向から衝突する氷雪に対する耐衝撃性能を向上することができる。すなわち、例えば、防護部材2が枕木本体1から浮き上がって、枕木本体1との間に隙間が形成されるのを防止することができる。
【0042】
さらに、防護部材2の上面21は水平方向に延びるように平坦に形成され、この平坦面に貫通孔26が形成されているため、防護部材2の上面21側からボルト32を挿入しやすくすることができる。
【0043】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組み合わせ可能である。
【0044】
<5−1>
上記実施形態では、防護部材2の傾斜部24を階段状に形成することで、傾斜部24に凹凸を形成しているが、凹凸の形成方法はこれに限定されない。例えば、図11に示すように、傾斜部24に、複数の突部28を形成することができる。各突部28は、三角錐形状、四角錐形状などの多角錐形状や円錐形状にすることもできる。このような形状にすると、鋭い頂点部によって、飛来してくる氷雪を効率よく粉砕することができる。
【0045】
あるいは、突部28を、不定形のでこぼこ状の石つぶて(砂利)によって形成することができる。この突部28の先端形状は鋭利状のものでも、あるいは、丸みを帯びた形状のものでもよい。
【0046】
なお、突部28の数量については、特には限定されないが、例えば、10〜40個程度が好ましい。突部28の数が少ないと、氷雪が傾斜部24における突部28以外の部分に衝突する可能性があるので効率よく粉砕することが出来ないおそれがある。一方、突部28の数が多すぎると、各突部28が小さくなってしまい、効率よく粉砕できないおそれがある。また、突部28は平面視縦横方向に整然と形成されることが好ましく、これによって氷雪がどの部位に衝突しても均等に砕くことができる。
【0047】
また、突部28の材質も特には限定されないが、例えば、防護部材2と同じように、固体充填材を含むウレタン樹脂から成る素材で形成されてもよい。この場合、枕木本体1の研削粉を含むウレタン樹脂接着剤で防護部材に接着することができる。あるいは、突部28を、表面に防食加工した鉄等の金属から形成してもよく、この場合は、ねじ、釘、接着剤等で、防護部材2に固定することができる。また、突部28は、鉄道用バラスト(石つぶて)をポリエステル樹脂とチョップガラスを混合した樹脂で形成してもよい。さらには、固体充填材を多く含んだ熱硬化性樹脂成型体や金属製や石を埋め込んだものもよい。このように、突部28は、できる限り、圧縮や衝撃に対して強い材料で形成することが望ましい。
【0048】
<5−2>
上記実施形態では、防護部材2を、枕木本体1の左右方向の中央に配置しているが、レール駆動装置5が敷設されている位置に合わせて、防護部材2の横方向の位置を適宜ずらすことができる。あるいは、防護部材2を、レール4の間の全体に亘る範囲に形成してもよい。
【0049】
<5−3>
傾斜部24の構成も特には限定されない。すなわち、防護部材2には、列車の進行方向の後方側に傾斜部24が形成されていればよいため、例えば、図12に示すようにすることができる。すなわち、傾斜部24を湾曲させたり(図12(a)、図12(b))、上面を省いた三角形状にしたり(図12(c))、あるいは上面を列車の進行方向に向かって下方に傾斜させてもよい(図12(d))。また、上面に傾斜部を設けることもできる(図12(e))。
【0050】
<5−4>
連結部材3の構成も特には限定されない。例えば、本体部31を軸部312のみで形成し、枕木本体1の上面11から突出させてもよい。また、防護部材2と枕木本体1との連結方法は、上記実施形態には限定されない。例えば、上記実施形態では、連結部材3の軸部312を枕木本体1から突出させ、防護部材2の上面21の貫通孔26からボルト32を挿入して軸部312を防護部材2に固定しているが、軸部312が防護部材2に固定できるのであれば、その方法は特には限定されない。例えば、ボルト32を防護部材2の側面15から挿入して固定することもできる。
【0051】
<5−5>
上記実施形態では、防護部材2に、列車の進行方向に向かって上方へ傾斜する傾斜部24を形成し、この傾斜部24に凹凸を形成しているが、防護部材2の構成は特には限定されず、例えば、氷雪を粉砕できたり、レール駆動装置に到達しないように方向を変えることができるのであれば、傾斜部24や凹凸を設けない構成にすることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 :枕木本体
2 :防護部材
24 :傾斜部
26 :貫通孔
28 :突出部
3 :連結部材
31 :本体部
32 :ボルト(ネジ部)
10 :枕木
31 :本体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12