【実施例1】
【0034】
はじめに、本発明の実施に係るビームプロファイラーを用いた微細加工装置の概略構成を
図6に示す。本実施例においては、レーザ光源としてパルス発振する波長が248nmのエキシマレーザ8を用いた。パルスレーザ光源としては、このほかにNd:YAGレーザの3倍派、4倍派などの高分解能の加工を可能とする短波長レーザ等を用いることもできるが、被加工対象物41の材質により適切な選定を必要とする。さらに、スキャン加工など、加工の態様によっては、連続波やこれをシャッター操作等によりパルス化したレーザ、モードロックレーザを用いることもできる。
【0035】
エキシマレーザ8から出射したビームは、ビーム整形用の光学系を介しマスク1に入射する。マスク1には被加工対象物41に縮小投影するパターン及び調整用光学部材42に縮小投影する焦点位置調整用のパターンが描画されている。本実施例においては、合成石英板にアルミメッキを施したものを用いた。また、マスク1はその位置調整のため、及び前記2パターンの切り替え用として、
図6中に示すXYZ軸及びθ軸(YZ平面)に沿って移動するマスク用ステージの上に設置した。
【0036】
縮小結像光学系の各光学部材の位置決定は、一般的な手法であるところの、被加工対象物に対しその位置(Z軸)を段階的に変えて行うフォーカルスキャン加工により行った。そこでは、実際の加工形状を顕微鏡下において観察し、本実施例における縮小結像光学系の設計値である縮小倍率(5倍)、分解能(1μm)及び像側テレセントリック等の仕様を満たすよう各光学部材の位置調整を行った。そして、この一連の加工、観察及び光学系調整を繰り返すことでその最適化を図った。
【0037】
縮小結像光学系のフォーカルスキャン加工による各種調整のあとは、その各光学部材の位置関係を維持した上で、本発明に係る共焦点ビームプロファイラー用の各光学部材及び撮像機器61を設置し、その撮像面の位置を調整し、決定した。以下、その詳細を「(1)共焦点位置調整段階」及び「(2)テレセントリシティーの記録段階」に分けて説明し、その後「(3)実加工段階」として実際の加工への利用態様を説明する。
【0038】
なお、以降、マスク1を透過したレーザビームのパルスエネルギーを便宜上「1」として説明する。
【0039】
(1)共焦点位置調整段階
共焦点位置調整段階において用いるマスクパターンは
図7の左下に示す調整用十字パターン12であり、これはアルミメッキが施されていない、すなわちレーザビームが通過する領域のパターンである。その線幅はいずれの箇所においても10μmであり、十字線の各長さは250μmである。本実施例において用いる後述の対物レンズ3による縮小投影サイズは、それぞれ、2μm、50μmとなる。
【0040】
マスク1の調整用十字パターン12を通過したレーザビームは、非全反射ミラー2により反射され対物レンズ3に入射する。ここで非全反射ミラー2は、波長248nmのレーザ光が45°で入射した場合、そのパルスエネルギーの99%を反射し、残り1%を透過する反射特性を持つ。すなわち、対物レンズ3へ反射されるパルスエネルギーは0.99である。
【0041】
対物レンズ3は、倍率を5倍、NAを0.13とする248nm用の反射防止膜付き対物レンズ(コヒレント社製P−lens 5x/18−248)である。前記非全反射ミラー2からの入射光を調整用光学部材42へ縮小投影する。また、対物レンズ3は光軸上(Z軸)上の位置を微調整するために対物レンズ用ステージ上に設置されている。その透過率は90%であり、これを透過したパルスエネルギーは、0.89である。
【0042】
調整用光学部材42の表面位置(Z軸)は、前述のフォーカルスキャン等により、被加工対象物41の被照射面の位置(Z軸)と同一となるよう予め調整済みである。なお、本実施例における調整用光学部材42には、厚さが2mmの平行平面板であり材質は合成石英のものを用いた。
【0043】
なお、この調整用光学部材42においては、その最初の被照射面(第一反射面)に照射されたエネルギーのうち約5%をZ軸方向に反射し、その底面(第二反射面)においても同様の5%を反射する。すなわち、第一反射面で反射されるエネルギーは0.045、第二反射面で反射され対物レンズ3に戻るエネルギーは、0.040である。
【0044】
調整用光学部材42における第一反射面からの反射光(第一反射光)と第二反射面からの反射光(第二反射光)は、共に対物レンズ3をZ軸方向に伝搬し、再び非全反射ミラー2に到達する。前述の透過特性(反射特性)により1%が非全反射ミラー2を透過し、さらに共焦点位置補正板71(透過率95%)及びバンドパスフィルタ72(透過率95%)を介して撮像機器61の撮像面に入射する。そのパルスエネルギーは、第一反射光が0.00036、第二反射光が0.00033である。
【0045】
共焦点位置補正板71には、前記非全反射ミラー2と同一の厚さ、同一の材質である合成石英の平行平面板を用いた。なお、この共焦点位置補正板72を用いない場合、マスク1の十字パターン12のうち、
図5におけるX軸方向の線の結像状態により焦点であると認識できるZ位置(
図8A及び8B参照。)と、同じくY軸方向の線の結像状態により焦点であると認識できるZ位置(
図8C及び8D参照)とに差異が生じる。なお、これら
図8A〜8Dは、調整用光学部材42として、光軸上に戻る第二反射光を生じないウェッジ板を用い、第二反射面からの反射光による二重撮像を回避した場合のものである。
【0046】
これら
図8A〜8Dから明らかなとおり、十字パターンの像におけるX軸方向の線の強度及びシャープネスが最大となるように撮像機器61の撮像面位置を調整すると、Y軸方向の線の強度は下がり、そのシャープネスも損なわれた画像となってしまう。逆にY軸方向の線の強度及びシャープネスが最大となるように調整すると、X軸方向の線の強度は下がり、そのシャープネスも損なわれる結果となる。この場合、正しい結像位置を特定するにあたり、X軸の画像で調整すべきかY軸の画像で調整すべきか、にわかには判断できない。
【0047】
そこで、共焦点位置補正板71を非全反射ミラー2に対しXY平面上90度回転した状態で挿入することで
図9に示すとおり十字パターン12のXYいずれの軸線においても等しい強度とシャープネスをもって観察され、撮像機器61の撮像面の位置を、被加工対象物41(調整用光学部材42)の結像面と
共役となる位置に正しく調整可能となる。
【0048】
また、非全反射ミラー2、調整用光学部材42及び被加工対象物41に紫外光である波長248nmのレーザビームが照射された場合、これに励起され蛍光を発する場合がある。特に、非全反射ミラー2において発生した蛍光成分はその強度は高く、且つ撮像面に近い面において発光した蛍光強度が遠い面のそれと比べて強い。そうすると、撮像面に入射される強度がX軸方向において分布をもつ。
【0049】
さらに、調整用光学部材42や被加工対象物41からの蛍光成分については、そのほとんどが非全反射ミラー2を透過するため、当該蛍光成分に強度分布がある場合、その影響を無視できない場合がある。これを防止するために、本実施例においては248nmを中心波長とするバンドパスフィルタ72を撮像機器61の直前に設置した。バンドパスのFWHMは20nmのものを用いた。
【0050】
以上により、調整用光学部材42の被照射面(表面)に対し1/5に縮小投影された調整用十字パターン12のマスクイメージを、本発明に係る共焦点ビームプロファイラーにより、同時に、共焦点にて観察できるよう各光学部材を配置し、その位置を調整した。
【0051】
(2)テレセントリシティーの記録段階
既に、前述のフォーカルスキャン加工による縮小結像光学系の調整段階において、被加工対象物41に形成した加工形状の顕微鏡観察を通し、テレセントリシティーを考慮した調整は済んでいる。そこで、今後、実際の加工において、又は光学系の経時的変化等により、縮小結像光学系の持つテレセントリシティーが乱れた場合に備え、その調整された状態を本発明に係る共焦点ビームプロファイラーにより記録しておく。具体的には、テレセントリシティーの調整された前記縮小結像光学系において、平行平面板である調整用光学部材42の表面からの第一反射光の像と裏面からの第二反射光の像を同時に二重撮像し、これを参照画像として記録する。
【0052】
なお、本実施例において用いた対物レンズ3の焦点深度(20μm)が、調整用光学部材42の厚みと比べ極めて短いことから、第一反射光と第二反射光を同じシャープネスで撮像することはできない。しかし、前記参照画像と対比することにより、実加工段階等におけるテレセントリシティーの確認として寄与することになる。
【0053】
本段階において記録されるべき二重撮像の様子を、模擬的ではあるが
図10Aに示す。ここでは、調整用光学部材42の表面からの反射光による像を第一反射光の像13と、同じく裏面からの反射光による像を第二反射光の像14とした。
【0054】
また、仮にテレセントリシティーが乱れているとしたら観察されるであろう画像の例を
図10Bに示す。この図に示すように、第一反射光の像13と第二反射光の像14とを焦点深度による違いを考慮してもなお十字パターンの像の大きさが異なるときは、テレンセントリシティーの調整が不十分又はこれが乱れたことを意味する。
【0055】
さらに、十字パターン像の中心にずれが生じている場合、そのズレを示すシグマ(σ)は、縮小結像光学系の光軸、ひいてはビームプロファイラーへ入射する反射光の光軸の調整が不十分、又はこれが乱れたことを意味する。
【0056】
(3)実加工段階
次に、マスク1を移動又は切り替え、調整用十字パターン12から実際の加工用マスクパターン11を用いた縮小結像光学系に変更する。そして、所定の加工プログラムにより被加工対象物41への1ショットスキャン加工を行った。
【0057】
本実施例に係る共焦点ビームプロファイラーは、1ショットごとに被加工対象物上の被照射面からの反射光をリアルタイムにモニターする。なお、他の実施例として、例えば数ショットずつのスキャン加工の場合、各ショットにより加工深度が対物レンズ3の焦点深度を超えて増加し(被照射面のZ軸位置がマイナス側へ変動し)、また、その加工面が粗面化することも想定されるため、リアルタイムモニターに用いる反射光は、被加工対象物41に照射される最初のショットによる反射光とすることが望ましい。
【0058】
さて、加工時間が増加するにつれて、マスク1や対物レンズ3その他の光学部品が蓄熱しその光学特性が変化する場合がある。これにより、前述の段階(1)及び(2)において確認した焦点位置が、被加工対象物41の被照射面において維持されない状態になることがある。また、被加工対象物41のZ軸方向の厚みの分布異常や加工ステージの非直進性に起因し、同様の焦点位置異常が生じる場合がある。
【0059】
そこで、本実施例に係る共焦点ビームプロファイラーにより、これらの焦点位置異常を画像解析によりリアルタイムにてモニターし、予め定めた許容範囲からその結像位置が逸脱した場合、対物レンズ3用のZ軸ステージ又は被加工対象物41を載置するZ軸ステージにフィードバックをかけ、結像状態を前記許容範囲に戻す。
【0060】
具体的には、
図11Aに示すように、被加工対象物41からの反射光を撮像機器61の撮像面で受光し、その横モード分布の境界におけるエッジ(立ち上がり:Ascent、立ち下がり:Descent)の鋭さを解析する。本実施例においては、その鋭さを、当該エッジ部におけるレーザビームのクロスセクションがその最大値に対し30%から65%に変化するのに要するエッジ幅(Asc−Length又はDesc−Length)により確認した。
【0061】
図11Bに詳細を示すとおり、立ち下りにおけるエッジ幅は0.004mmである。そしてこのエッジ幅が0.008mm未満にあるものを前記許容範囲(上限)として設定し、加工の最中にエッジ幅がこの範囲から外れた場合には(上限値を超えた場合には)、次の被加工対象物41の加工に移る前に、焦点位置の再調整を行うこととした。再調整は、Z軸ステージの移動量とエッジ幅の変化量との関係を予め導き、これに従って行った。
【0062】
また、一の被加工対象物41の加工の最中において、例えば、その厚み分布異常に起因して上記の許容範囲を逸脱した場合、進行中の加工プロセスを一旦中止し、焦点位置の調整を行うようプログラミングすることも可能である。