特許第6815790号(P6815790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6815790積層用樹脂組成物、それを用いた熱収縮性積層フィルム、ラベル及び容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815790
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】積層用樹脂組成物、それを用いた熱収縮性積層フィルム、ラベル及び容器
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20210107BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20210107BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20210107BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20210107BHJP
   G09F 3/04 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   C08L53/02
   B32B27/36
   B32B27/28
   C08L9/00
   G09F3/04 C
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-163252(P2016-163252)
(22)【出願日】2016年8月24日
(65)【公開番号】特開2018-30937(P2018-30937A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 享一
(72)【発明者】
【氏名】秋山 一広
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−185105(JP,A)
【文献】 特開2007−056145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/02
B32B 27/28
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(1)90〜30質量部と成分(2)10〜70質量部を含有し、前記成分(1)と前記成分(2)の総和100質量部に対して、さらに成分(3)を2〜25質量部を含有する積層用樹脂組成物であって、
前記成分(1)が、ビニル芳香族炭化水素を主成分とする重合体ブロックと、分子鎖末端アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基及び水酸基より選ばれる官能基を少なくとも1個有する共役ジエンを主成分とする改質重合体ブロックと、からなり、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率が92/8〜40/60のブロック共重合体であり、
前記成分(2)が、ビニル芳香族炭化水素を主成分とする重合体ブロックと、共役ジエンを主成分とする重合体ブロックと、からなり、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率が95/5〜50/50のブロック共重合体であり
前記成分(3)が、分子鎖末端にアミノ基、イソシアネート基、エポキシ基及び水酸基より選ばれる官能基を少なくとも1個有する改質共役ジエン重合体である積層用樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステル系樹脂20質量部と請求項1に記載の積層用樹脂組成物80質量部からなる樹脂組成物を用いて、0.5mmの厚さに作製したシートの、JIS K 7136に準拠して測定したヘーズが20%未満である積層用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の積層用樹脂組成物からなる中間層の表裏面に、ポリエステル系樹脂からなる層を積層した、熱収縮性積層フィルム。
【請求項4】
請求項に記載の熱収縮性積層フィルムを用いたラベル。
【請求項5】
請求項記載のラベルを用いた容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系樹脂と積層するための積層用樹脂組成物及びそれを用いてなる熱収縮性積層フィルム、そのフィルムを用いて作製されたラベルならびにラベルを装着した容器に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の缶や樹脂製ボトルにはスチレン系樹脂を用いた熱収縮性フィルムが装着される場合があり、それらは缶やボトルへの収縮仕上がり性に優れるため美観性が良い。しかし印刷溶剤に対する耐薬品性やマルチパック包装などにおける耐熱性に不足があり、それらを改善するためにポリエステル系樹脂を用いた熱収縮性積層フィルムが使用されている。しかしポリエステル系樹脂単独のフィルムは熱収縮時に収縮むらが生じる問題があり、外観不良が問題となっている。
【0003】
そこで、ポリエステル系樹脂を表裏層に用い、中心層をスチレン系樹脂とするタイプの熱収縮性積層フィルムが市販されている。このフィルムは表裏層に用いられるポリエステル系樹脂の耐薬品性、耐熱性、中心層のスチレン系樹脂により収縮時の形態適合性が良いという両者の特徴を持ち合わせる。しかし、両樹脂は接着性が良くないため、両者の間に接着剤層をもちいる3種5層の熱収縮フィルムが一般的である(特許文献1)。この方法では、接着剤を用いることによるコストアップと、3種の材料を取り扱う設備を増設するためのコストアップが負担となる。
【0004】
そのため、使用材料種を減らすべく、特定の粘弾性挙動を示すスチレン系樹脂を用いた2種3層フィルムの事例(特許文献2)や反応性官能基を有するスチレン系樹脂を用いた事例(特許文献3)、特定の収縮特性をもつスチレン系樹脂を用いた事例(特許文献4)などがある。
【0005】
しかし、前述の事例では層間接着力の不足や、反応性の樹脂を用いるためゲルが発生するなどの懸念があり、改良が必要と考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−315416号公報
【特許文献2】特開2006−159905号公報
【特許文献3】特開2009−185105号公報
【特許文献4】特開2011−121253号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ポリエステル系樹脂と積層するための積層用樹脂組成物及びそれを用いてなる熱収縮性積層フィルム、そのフィルムを用いて作製されたラベルならびにラベルを装着した容器に関する。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特定の積層用樹脂組成物を中間層に用いることで、層間での接着性に優れ、ヘーズが低いことを特徴とし、表裏層にポリエステル系樹脂を用いることで、耐薬品性、耐熱性に優れながら、収縮仕上がり性も良好な熱収縮性積層フィルム、ラベル及び容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
【0010】
〔1〕成分(1)90〜30質量部と(2)10〜70質量部を含有する積層用樹脂組成物であって、
前記成分(1)が、ビニル芳香族炭化水素を主成分とする重合体ブロックと、分子鎖末端がアミノ基、イソシアネート基、エポキシ基及び水酸基より選ばれる官能基を少なくとも1個有する共役ジエンを主成分とする改質重合体ブロックと、からなる、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率が92/8〜40/60のブロック共重合体であり、
前記成分(2)が、ビニル芳香族炭化水素を主成分とする重合体ブロックと、共役ジエンを主成分とする重合体ブロックと、からなる、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率が95/5〜50/50のブロック共重合体。
〔2〕前記成分(1)と前記成分(2)の総和100質量部に対して、さらに成分(3)を2〜25質量部を含有する積層用樹脂組成物であって、
前記成分(3)が、分子鎖末端にアミノ基、イソシアネート基、エポキシ基及び水酸基より選ばれる官能基を、少なくとも1個有する改質共役ジエン重合体である〔1〕に記載の積層用樹脂組成物。
〔3〕ポリエステル系樹脂20質量部と、〔1〕または〔2〕に記載の積層用樹脂組成物80質量部からなる樹脂組成物を用いて、0.5mmの厚さに作製したシートの、JIS K 7136に準拠して測定したヘーズが20%未満である積層用樹脂組成物。
〔4〕〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の積層用樹脂組成物からなる中間層の表裏面に、ポリエステル系樹脂からなる層を積層した、熱収縮性積層フィルム。
〔5〕〔4〕に記載の熱収縮性積層フィルムを用いたラベル。
〔6〕〔5〕に記載のラベルを用いた容器。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層用樹脂組成物を中間層に用いることで、層間での接着性に優れ、ヘーズが低いことを特徴とし、表裏層にポリエステル系樹脂を用いることで、耐薬品性、耐熱性に優れながら、収縮仕上がり性も良好な熱収縮フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の積層用樹脂組成物の詳細を説明する。
《積層用樹脂組成物》
本発明の積層用樹脂組成物は、成分(1)と成分(2)を含有し、必要に応じて、さらに成分(3)を含有する積層用樹脂組成物である。
【0013】
本発明の積層用樹脂組成物の成分(1)は90〜30質量部であり、成分(2)は10〜70質量部である。より好ましくは、成分(1)は70〜33質量部であり、成分(2)は30〜67質量部である。成分(1)が30質量部より少ないとポリエステル系樹脂との接着性が劣る場合があり、成分(1)が90質量部を超過すると弾性率が低下する場合がある。
【0014】
成分(3)は、好ましくは、成分(1)と成分(2)の総和100質量部に対して、2〜25質量部が好ましく、より好ましくは4〜20質量部である。成分(3)が25質量部を超過すると十分な剛性が得られず、2質量部未満ではポリエステル系樹脂との接着性が劣る。
【0015】
本発明における積層用樹脂組成物には、必要に応じ種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、各種酸化防止剤、成形加工助剤、耐光性向上剤、軟化剤、可塑剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油、フィラー、調色剤、難燃剤、滑剤、ラジカル捕捉剤などがある。
【0016】
前記の酸化防止剤としては、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤、トリスノニルフェニルフォスファイト等の燐系酸化防止剤等が挙げられる。加工助剤、耐光性向上剤、軟化剤、可塑剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油、フィラー、顔料、難燃剤等は、一般的な公知のものが挙げられる。また、滑剤としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸、脂肪酸グリセリンエステル、脂肪酸アマイド、炭化水素系ワックス等が挙げられる。
【0017】
本発明に用いる積層用樹脂組成物は、成分(1)と成分(2)、必要に応じて成分(3)を混合することによって得られ、その混合方法は特に規定はないが、例えばヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー等でドライブレンドしてもよく、更に押出機で溶融してペレット化してもよい。あるいは、各重合体の製造時、重合反応途中、重合体の後処理等の段階で、添加してもよい。
【0018】
[成分(1)]
本発明の成分(1)のビニル芳香族炭化水素を主成分とする重合体ブロックは、前記ビニル芳香族炭化水素を50質量%以上含有する。また、共役ジエンを主成分とする重合体ブロックは、前記共役ジエンを50質量%以上含有する。
【0019】
成分(1)に用いられるビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等を挙げることができるが、特に一般的にはスチレンが挙げられる。
【0020】
成分(1)に用いられる共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられるが、特に一般的なものとしては、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
【0021】
成分(1)の数平均分子量は40,000〜300,000が好ましく、特に好ましくは60,000〜300,000である。数平均分子量が40,000未満では、積層用樹脂組成物の十分な剛性と耐衝撃性が得られない。一方で、積層用樹脂組成物の数平均分子量が300,000を越えると成形加工性が低下する。なお、本発明における積層用樹脂組成物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、GPCと略称する。)を用いて以下の条件で測定した。
装置名:SYSTEM−21 Shodex(昭和電工社製)
カラム:PL gel MIXED−Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(Polymer Laboratories製)を用い、溶離時間と溶出量との関係を分子量と変換して求めた。
【0022】
成分(1)は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率が、92/8〜40/60であり、好ましくは80/20〜60/40である。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率が92/8を超過すると熱収縮性が悪くなり、40/60未満では強度が低下することがある。
【0023】
本発明に用いられる成分(1)の構造は、前記の用件が満たせば許されるが、好ましい例としては下記のような一般式を有するものが挙げられる。
(1)a−b−c−Y
(2)a−b−a−c−Y
(3)a−b−c−b−Y
(4)a−b−c−b−c−Y
(5)a−c−b−c−b−Y
(6)(a−c−b)n−x−Y
(7)(a−c−b−c−b)n−x−Y
(但し、一般式中aはビニル芳香族炭化水素の重合鎖、bはビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合鎖、cは共役ジエンの重合鎖を示す。xは重合鎖のカップリング剤、Yは分子鎖末端官能基を示す。またnは2〜4の整数を示す。)
【0024】
前記一般式は化学構造、即ち実質的にビニル芳香族炭化水素からなるブロック状の重合鎖a、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合鎖b、実質的に共役ジエンからなるブロック状の重合鎖cの配列順を示す。一般式中にa、bあるいはcが複数存在しても、分子量、共役ジエンの質量割合、共重合鎖のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの分布状態などはそれぞれ独立していて、同一である必要はない。
【0025】
また、前記構造式中xは多官能カップリング剤の残基、または開始剤として用いられる多官能有機リチウム化合物の残基であり,nは2〜4の整数である。本発明において用いられる多官能カップリング剤としては、四塩化珪素、エポキシ化大豆油等が挙げられる。多官能有機リチウム化合物としては、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が挙げられる。
【0026】
次に、本発明の成分(1)の製造方法について説明する。有機溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンのモノマーを重合することにより製造できる。有機溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいは、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が使用できる。
【0027】
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのような単官能有機リチウム化合物、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムのような多官能有機リチウム化合物等が使用できる。
【0028】
本発明に用いられるビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンは、前記したものを使用することができ、それぞれ1種又は2種以上を選んで重合に用いることができる。そして、前記有機リチウム化合物を開始剤とするリビングアニオン重合では、重合反応に供したビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンはほぼ全量が重合体に転化する。
【0029】
本発明において成分(1)の数平均分子量は、モノマーの全添加量に対する開始剤の添加量により制御できる。
【0030】
また成分(1)の芳香族ビニル炭化水素と共役ジエンからなるブロックは、テーパードブロック構造やランダムブロック構造を問わず、どのような構造を取っていてもよい。テーパードブロック構造は、芳香族ビニル炭化水素と共役ジエンを同時に添加し、反応させることで製造できる。ランダムブロック構造は芳香族ビニル炭化水素と共役ジエンを一定に比率に保ちながら添加し、反応させることで製造できる。
【0031】
ランダム化剤としては主としてテトラヒドロフラン(THF)が用いられるが、その他のエーテル類やアミン類、チオエーテル類、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウム又はナトリウムのアルコキシド等も使用できる。適当なエーテル類としてはTHFの他にジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。アミン類としては第三級アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンの他、環状アミン等も使用できる。その他にトリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸カリウム又はナトリウム、カリウム又はナトリウムブトキシド等もランダム化剤として用いることができる。
【0032】
ランダム化剤の添加量としては、全仕込みモノマー100質量部に対し、0.001〜10質量部が好ましい。添加時期は重合反応の開始前でも良いし、共重合鎖の重合前でも良い。また必要に応じ追加添加することもできる。
【0033】
本発明で使用する成分(1)は、以下の改質剤で改質することにより、共役ジエンブロック末端に、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基及び水酸基より選ばれる官能基を少なくとも1個有する。
【0034】
共役ジエンブロックの分子鎖末端がアミノ基を有するために使用される改質剤としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−ジメチルアミノプロピルクロリド、3−ジメチルアミノプロピルブロミド、4−ジメチルアミノブチルクロリド、4−ジメチルアミノブチルブロミド、5−ジメチルアミノペンチルクロリド、5−ジメチルアミノペンチルブロミド、6−ジメチルアミノヘキシルクロリド、6−ジメチルアミノヘキシルブロミド等が好適に用いられる。
【0035】
以後同様に、共役ジエンブロックの分子鎖末端が、イソシアネートを有するためには、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ジイソシアン酸イソホロン、イソシアン酸3,3’ −ジメチルビフェニル−4,4’−ジイル、4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニル、1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4’ −ジイソシアン酸トリレン、トリレン−2,6−ジイソシアネート等が好適に用いられる。
【0036】
共役ジエンブロックの分子鎖末端にエポキシを有するためには、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化ひまし油、エポキシ化ポリブタジエン及びエポキシ化ポリイソプレン等が好適に用いられる。
【0037】
共役ジエンブロックの分子鎖末端に水酸基を有するためには、アルデヒド、ケトン及び単官能エポキシ等が好適に用いられる。
【0038】
アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、ペンタナール、ヘプタナール、ヘキサナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ベンズアルデヒド等が用いられる。
【0039】
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサンオン、イソホロン等が用いられる。
【0040】
単官能エポキシとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンテンオキシド、ヘキセンオキシド、ヘプテンオキシド、オクテンオキシド、ノネンオキシド、デセンオキシド、スチレンオキシド等が用いられる。
【0041】
このようにして得られた成分(1)は、水、アルコール、二酸化炭素などの重合停止剤を、活性末端を不活性化させるのに充分な量を添加することにより、不活性化される。得られたブロック共重合体溶液より共重合体を回収する方法としては、メタノール等の貧溶媒により析出させる方法、加熱ロール等により溶媒を蒸発させて析出させる方法(ドラムドライヤー法)、濃縮器により溶液を濃縮した後にベント式押出機で溶媒を除去する方法、溶液を水に分散させ、水蒸気を吹き込んで溶媒を加熱除去して共重合体を回収する方法(スチームストリッピング法)等、任意の方法が採用できる。
【0042】
[成分(2)]
成分(2)のビニル芳香族炭化水素を主成分とする重合体ブロックは、前記ビニル芳香族炭化水素を50質量%以上含有し、共役ジエンを主成分とする改質重合体ブロックは、前記共役ジエンを50質量%以上含有する。
【0043】
成分(2)の製造に用いられるビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等を挙げることができるが、一般的にはスチレンが挙げられる。
【0044】
成分(2)の製造に用いられる共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられるが、一般的なものとしては、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
【0045】
成分(2)の数平均分子量は40,000〜300,000が好ましく、特に好ましくは60,000〜300,000である。数平均分子量が40,000未満では、積層用樹脂組成物の十分な剛性と耐衝撃性が得られない。一方で、積層用樹脂組成物の数平均分子量が300,000を越えると成形加工性が低下する。なお、本発明における積層用樹脂組成物の数平均分子量は、GPCを用いて成分(1)と同様の方法で求めた。
【0046】
成分(2)は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率が、95/5〜40/60であり、好ましくは92/8〜45/55である。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率が95/5を超過すると熱収縮性が悪くなり、40/60未満では強度が低下することがある。
【0047】
本発明に用いられる成分(2)の構造は、前記の用件が満たせば許されるが、好ましい例としては下記のような一般式を有するものが挙げられる。
(1)a−b−a
(2)a−c−a
(3)a−b−c−a
(4)a−b−c−b−a
(5)a−b−a−b−a
(6)a−c−b−c−b
(7)(a−c−b)n−x
(8)(a−c−b−a)n−x
(9)(a−c−b−c−b)n−x
(但し、一般式中aはビニル芳香族炭化水素の重合鎖、bはビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合鎖、cは共役ジエンの重合鎖を示す。xは重合鎖のカップリング剤を示す。またnは2〜4の整数を示す。)
【0048】
前記一般式は化学構造、即ち実質的にビニル芳香族炭化水素からなるブロック状の重合鎖a、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合鎖b、実質的に共役ジエンからなるブロック状の重合鎖cの配列順を示す。一般式中にa、bあるいはcが複数存在しても、分子量、共役ジエンの質量割合、共重合鎖のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの分布状態などはそれぞれ独立していて、同一である必要はない。
【0049】
また、前記構造式中xは多官能カップリング剤の残基、または開始剤として用いられる多官能有機リチウム化合物の残基であり,nは2〜4の整数である。本発明において用いられる多官能カップリング剤としては、四塩化珪素、エポキシ化大豆油等が挙げられる。多官能有機リチウム化合物としては、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が挙げられる。
【0050】
次に、本発明の積層用樹脂組成物を構成する成分(2)の製造方法について説明する。有機溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンのモノマーを重合することにより製造できる。有機溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいは、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が使用できる。
【0051】
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのような単官能有機リチウム化合物、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムのような多官能有機リチウム化合物等が使用できる。
【0052】
本発明に用いられるビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンは、前記したものを使用することができ、それぞれ1種又は2種以上を選んで重合に用いることができる。そして、前記有機リチウム化合物を開始剤とするリビングアニオン重合では、重合反応に供したビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンはほぼ全量が重合体に転化する。
【0053】
本発明において成分(2)の数平均分子量は、モノマーの全添加量に対する開始剤の添加量により制御できる。
【0054】
また成分(2)の芳香族ビニル炭化水素と共役ジエンからなるブロックは、テーパードブロック構造やランダムブロック構造を問わず、どのような構造を取っていてもよい。テーパードブロック構造は、芳香族ビニル炭化水素と共役ジエンを同時に添加し、反応させることで製造できる。ランダムブロック構造は芳香族ビニル炭化水素と共役ジエンを一定に比率に保ちながら添加し、反応させることで製造できる。
【0055】
ランダム化剤としては主としてテトラヒドロフラン(THF)が用いられるが、その他のエーテル類やアミン類、チオエーテル類、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウム又はナトリウムのアルコキシド等も使用できる。適当なエーテル類としてはTHFの他にジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。アミン類としては第三級アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンの他、環状アミン等も使用できる。その他にトリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸カリウム又はナトリウム、カリウム又はナトリウムブトキシド等もランダム化剤として用いることができる。
【0056】
ランダム化剤の添加量としては、全仕込みモノマー100質量部に対し、0.001〜10質量部が好ましい。添加時期は重合反応の開始前でも良いし、共重合の重合前でも良い。また必要に応じ追加添加することもできる。
【0057】
このようにして得られた成分(2)は、水、アルコール、二酸化炭素などの重合停止剤を、活性末端を不活性化させるのに充分な量を添加することにより、不活性化される。得られたブロック共重合体溶液より共重合体を回収する方法としては、メタノール等の貧溶媒により析出させる方法、加熱ロール等により溶媒を蒸発させて析出させる方法(ドラムドライヤー法)、濃縮器により溶液を濃縮した後にベント式押出機で溶媒を除去する方法、溶液を水に分散させ、水蒸気を吹き込んで溶媒を加熱除去して共重合体を回収する方法(スチームストリッピング法)等、任意の方法が採用できる。
【0058】
[成分(3)]
成分(3)は、分子鎖末端にアミノ基、イソシアネート基、エポキシ基及び水酸基より選ばれる官能基を少なくとも1個有する改質共役ジエン共重合体である。
【0059】
成分(3)の製造に用いられる共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられるが、特に一般的なものとしては、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
【0060】
本発明で使用する成分(3)は、以下の改質剤で改質することにより、共役ジエンブロック末端に、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基及び水酸基より選ばれる官能基を少なくとも1個有する。
【0061】
共役ジエンブロックの分子鎖末端がアミノ基を有するために使用される改質剤としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−ジメチルアミノプロピルクロリド、3−ジメチルアミノプロピルブロミド、4−ジメチルアミノブチルクロリド、4−ジメチルアミノブチルブロミド、5−ジメチルアミノペンチルクロリド、5−ジメチルアミノペンチルブロミド、6−ジメチルアミノヘキシルクロリド、6−ジメチルアミノヘキシルブロミド等が好適に用いられる。
【0062】
以後同様に、共役ジエンブロックの分子鎖末端が、イソシアネートを有するためには、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ジイソシアン酸イソホロン、イソシアン酸3,3’ −ジメチルビフェニル−4,4’−ジイル、4,4’−ジイソシアン酸メチレンジフェニル、1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4’ −ジイソシアン酸トリレン、トリレン−2,6−ジイソシアネート等が好適に用いられる。
【0063】
共役ジエンブロックの分子鎖末端にエポキシを有するためには、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化ひまし油、エポキシ化ポリブタジエン及びエポキシ化ポリイソプレン等が好適に用いられる。
【0064】
共役ジエンブロックの分子鎖末端に水酸基を有するためには、アルデヒド、ケトン及び単官能エポキシ等が好適に用いられる。
【0065】
アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、ペンタナール、ヘプタナール、ヘキサナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ベンズアルデヒド等が用いられる。
【0066】
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサンオン、イソホロン等が用いられる。
【0067】
単官能エポキシとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンテンオキシド、ヘキセンオキシド、ヘプテンオキシド、オクテンオキシド、ノネンオキシド、デセンオキシド、スチレンオキシド等が用いられる。
【0068】
成分(3)の数平均分子量は2,000〜30,000が好ましく、特に好ましくは5,000〜25,000である。数平均分子量が2,000未満では接着性が得られず、30,000を超過すると相溶性が低下する。
【0069】
次に、本発明の積層用樹脂組成物を構成する成分(3)の製造について説明する。積層用樹脂組成物は、有機溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンのモノマーを重合することにより製造できる。有機溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいは、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などが使用できる。
【0070】
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのような単官能有機リチウム化合物、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムのような多官能有機リチウム化合物等が使用できる。
【0071】
本発明において積層用樹脂組成物の分子量は、モノマーの全添加量に対する開始剤の添加量により制御できる。
【0072】
ランダム化剤としては主としてテトラヒドロフラン(THF)が用いられるが、その他のエーテル類やアミン類、チオエーテル類、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウム又はナトリウムのアルコキシド等も使用できる。適当なエーテル類としてはTHFの他にジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。アミン類としては第三級アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンの他、環状アミン等も使用できる。その他にトリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸カリウム又はナトリウム、カリウム又はナトリウムブトキシド等もランダム化剤として用いることができる。
【0073】
ランダム化剤の添加量としては、全仕込みモノマー100質量部に対し、0.001〜10質量部が好ましい。添加時期は重合反応の開始前でも良いし、共重合の重合前でも良い。また必要に応じ追加添加することもできる。
【0074】
《シート》
本発明の積層用樹脂組成物及びポリエステル系樹脂から構成される積層シートは、前記のブロック共重合体樹脂組成物を中間層として、ポリエステル系樹脂を表裏層として、各々押出機で溶融し、フィードブロック等で積層化することによって得られるが、あらかじめ基材層の単層シートを準備した後に、表裏層にポリエステル系シートを熱により積層させてもよい。
【0075】
本発明の積層シートの層比については特に制限はないが、中間層の厚みが全体の厚みの60%以上90%未満であることが、良好な耐油性と剥離強度を得るために好ましい。
【0076】
なお、本発明の積層シートをTダイ式シート押出機による共押しで製造する場合、押出温度は180〜260℃が好ましい。押出温度が180℃未満ではポリエステル樹脂の可塑化が不十分となる。一方、押出温度が260℃を越える場合は、ブロック共重合体樹脂組成物の熱劣化を助長し外観が悪化する。
【0077】
本発明に用いるポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を主体とした重縮合物であり、多価カルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、グルタル酸などが挙げられる。これらの多価カルボン酸成分は1種または2種以上を使用できる。また、多価アルコール成分としては、例えばジエチレングリコール、エチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらの多価アルコール成分は1種または2種以上を使用できる。
【0078】
好ましい多価カルボン酸としてはテレフタル酸が、好ましい多価アルコール成分としてはジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられ、これらが重縮合された非晶性ポリエチレンテレフタレートが好適に使用できる。
【0079】
これらのポリエステル系樹脂には、フィルムを製造する際に、本発明の目的を阻害しない範囲で滑剤、安定剤、ブロッキング防止剤などの各種添加剤を必要に応じて混合することができる。
【0080】
本発明の積層シートには、接着性や透明性を阻害しない範囲でポリエステル系樹脂を含んでいてもよい。範囲としては積層用樹脂組成物とポリエステル系樹脂の配合比が100/0〜60/40、好ましくは100/0〜70/30、さらに好ましくは、100/0〜90/10である。
【0081】
本発明における積層用樹脂組成物80質量部と前記ポリエステル系樹脂20質量部を用いて、0.5mmの厚さで作製した積層シートのJIS K 7136に準拠して測定したヘーズが20%未満であれば、積層用樹脂組成物とポリエステル系樹脂の樹脂組成物の透明性は高いものとなる。
【0082】
《熱収縮性積層フィルム》
本発明の熱収縮性積層フィルムは、前記の積層用体樹脂組成物を中間層として、ポリエステル系樹脂を表裏層として、各々押出機で溶融し、フィードブロック等で多層化した後に一軸、二軸あるいは多軸に延伸することによって得られる。一軸延伸の例としては、押し出されたシートをテンターで押し出し方向と直交する方向に延伸する方法、押し出されたチューブ状フィルムを円周方向に延伸する方法、押し出されたシートをロールで押し出し方向に延伸する方法等が挙げられる。二軸延伸の例としては、押し出されたシートをロールで押し出し方向に延伸した後、テンター等で押し出し方向と直交する方向に延伸する方法、押し出されたチューブ状フィルムを押し出し方向及び円周方向に同時又は別々に延伸する方法等が挙げられる。
【0083】
なお、本発明の熱収縮性積層フィルムを製造する場合、延伸温度は60〜140℃が好ましい。延伸温度が60℃未満では延伸時にフィルムが破断する場合がある。一方、延伸温度が140℃を超過する場合は、フィルムの良好な収縮特性が得られない場合がある。特に好ましい延伸温度は、フィルムを構成する組成物のガラス転移温度(Tg)に対して、Tg+5℃〜Tg+20℃の範囲である。多層フィルムの場合は、Tgが最も低い層の重合体組成物のTgに対して、Tg+5℃〜Tg+20℃の範囲が特に好ましい。なお、ガラス転移温度(Tg)は、フィルムを構成する組成物の損失弾性率のピークの温度から求めたものである。延伸倍率は、特に制限はないが、1.5〜8倍が好ましい。1.5倍未満では熱収縮性が不足してしまい、また、8倍を越える場合は延伸が難しいため好ましくない。これらのフィルムを熱収縮性積層ラベルや包装材料として使用する場合、熱収縮率は90℃10秒間で30%以上であることが好ましい。熱収縮率が30%未満では収縮時に高温が必要となるため、被覆される物品に悪影響を与えてしまうおそれがある。好ましい熱収縮率は同温度で40%以上である。
【0084】
《ラベル》
本発明の熱収縮性積層フィルムを用いたラベルは、公知の方法により作製することができ、例えば延伸フィルムを印刷し、延伸した方向を円周方向にして溶剤シールすることにより作製することができる。
【0085】
《容器》
本発明のラベルに用いられる容器は、特に限定されないが、ぶりき製、TFS製、アルミニウム製等の金属缶容器(3ピース缶及び2ピース缶、または蓋付のボトル缶等)、ガラス製の容器または樹脂製の容器等が好ましく用いられる。
【実施例】
【0086】
以下に実施例をもって本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
《積層用樹脂組成物成分の製造方法》
成分(1)−1
以下により、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率55/45で、分子鎖末端に水酸基を有する改質ブロック共重合体を得た。
1)有機溶媒としてシクロヘキサン427kgとテトラヒドロフラン70gを反応容器中に仕込み40℃を保持した。
2)開始剤としてn−ブチルリチウム10質量%シクロヘキサン溶液3370mlを一括で反応容器中に仕込んだ。
3)この中にスチレンを41.1kg一括添加し、反応液の温度が40℃まで低下するまで冷却しながら反応させた。
4)スチレンが完全に消費されたのち、1,3−ブタジエンを76.3kg一括添加したのち、すぐにスチレン68.9kg添加し、反応液の温度が70℃に下がるまで冷却しながら反応させた。その後70℃で15分保持し反応させた。
5)1,3−ブタジエン13.7kgを一括添加し、反応液の温度を70℃に保ったまま1時間反応させた。
6)シクロヘキサン1Lに、改質剤として1,2−ブチレンオキシド219gを溶解させ、全量を反応液に添加し、反応液を70℃に維持しながら30分反応させた。
7)反応液に水250gを添加し反応を停止させた。
8)反応液を反応容器から抜出した。
【0088】
成分(1)−2
以下により、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率55/45で、分子鎖末端にエポキシ基を有する改質ブロック共重合体を得た。
1)〜5)、7)、8)は同様に行った。
6)シクロヘキサン1Lに、改質剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを701g溶解させ、全量を反応液に添加し、反応液を70℃に維持しながら30分反応させた。
【0089】
成分(1)−3
以下により、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率55/45で、分子鎖末端にアミノ基を有する改質ブロック共重合体を得た。
1)〜5)、7)、8)は同様に行った。
6)シクロヘキサン1Lに、改質剤として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン338gを溶解させ、全量を反応液に添加し、反応液を70℃に維持しながら30分反応させた。
【0090】
成分(1)−4
以下により、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率55/45で、分子鎖末端にエポキシ基を有する改質ブロック共重合体を得た。
1)〜5)、7)、8)は同様に行った。
6)シクロヘキサン1Lに、改質剤として日本曹達株式会社製JP−100(エポキシ化ポリブタジエン)3564gを溶解させ、全量を反応液に添加し、反応液を70℃に維持しながら30分反応させた。
【0091】
成分(1)−5
以下により、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率55/45で、分子鎖末端にイソシアネート基を有する改質ブロック共重合体を得た。
1)〜5)、7)、8)は同様に行った。
6)シクロヘキサン1Lに、改質剤としてイソシアン酸イソホロン660gを溶解させ、全量を反応液に添加し、反応液を70℃に維持しながら30分反応させた。
【0092】
成分(1)−6
以下により、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率55/45で、分子鎖末端に水酸基を有する改質ブロック共重合体を得た。
1)〜5)、7)、8)は同様に行った。
6)シクロヘキサン1Lに、改質剤としてスチレンオキシド429gを溶解させ、全量を反応液に添加し、反応液を70℃に維持しながら30分反応させた。
【0093】
成分(1)−7
以下により、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率86/14で、分子鎖末端に水酸基を有する改質ブロック共重合体を得た。
1)有機溶媒としてシクロヘキサン427kgとテトラヒドロフラン70gを反応容器中に仕込み40℃を保持した。
2)開始剤としてn−ブチルリチウム10質量%シクロヘキサン溶液1170mlを一括で反応容器中に仕込んだ。
3)この中にスチレンを40.4kg一括添加し、反応液の温度を80℃まで上昇させながら反応させた。
4)スチレンが完全に消費されたのち、反応液の温度が80℃になるよう調整しながら、1,3−ブタジエンを17.0kgとスチレン96.6kgを一定比率に保ちながら60分間かけて分添し、反応させた。その後60℃まで冷却した。
5)スチレンを40.4kg一括添加し、反応液の温度を80℃に上昇させて反応させた。
6)1,3−ブタジエンを5.6kg一括添加し、30分間反応させた。その後、反応液の温度を70℃に冷却した。
7)シクロヘキサン1Lに、改質剤として1,2−ブチレンオキシドを72gを溶解させ、全量を反応液に添加し、反応液を70℃に保ちながら30分間反応させた。
8)反応液にメタノール10mlを添加し反応を停止させた。
9)反応液を反応容器から抜出した。
【0094】
成分(2)−1
以下により、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率85/15であるブロック共重合体を得た。
1)有機溶媒としてシクロヘキサン467kgとテトラヒドロフラン70gを反応容器中に仕込み40℃を保持した。
2)開始剤としてn−ブチルリチウム10質量%シクロヘキサン溶液1900mlを一括で反応容器中に仕込んだ。
3)この中にスチレンを68.0kg一括添加し、反応液の温度が40℃まで低下するまで冷却しながら反応させた。
4)スチレンが完全に消費されたのち、1,3−ブタジエンを24.0kg一括添加し、反応液の温度が80℃になるよう調整しながら30分反応させた。その後40℃まで冷却した。
5)1,3−ブタジエンを6.0kg一括添加したのち、すぐにスチレン102.0kg添加し、反応液の温度が70℃に下がるまで冷却しながら反応させた。その後70℃で15分保持し反応させた。
6)反応液に水270gを添加し反応を停止させた。
7)反応液を反応容器から抜出した。
【0095】
成分(2)−2
以下により、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率55/45であるブロック共重合体を得た。
1)有機溶媒としてシクロヘキサン427kgとテトラヒドロフラン70gを反応容器中に仕込み40℃を保持した。
2)開始剤としてn−ブチルリチウム10質量%シクロヘキサン溶液3670mlを一括で反応容器中に仕込んだ。
3)この中にスチレンを41.1kg一括添加し、反応液の温度が40℃まで低下するまで冷却しながら反応させた。
4)スチレンが完全に消費されたのち、1,3−ブタジエンを90.0kg一括添加したのち、すぐにスチレン68.9kg添加し、反応液の温度が70℃に下がるまで冷却しながら反応させた。その後70℃で1時間保持し反応させた。
5)反応液に水250gを添加し反応を停止させた。
6)反応液を反応容器から抜出した。
【0096】
成分(2)−3
以下により、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率62/38であるブロック共重合体を得た。
1)有機溶媒としてシクロヘキサン427kgとテトラヒドロフラン70.0gを反応容器中に仕込み40℃を保持した。
2)開始剤としてn−ブチルリチウム10質量%シクロヘキサン溶液2400mlを一括で反応容器中に仕込んだ。
3)この中にスチレンを40.0kg一括添加し、反応液の温度を80℃まで上昇させながら反応させた。
4)スチレンが完全に消費されたのち、反応液の温度が80℃になるよう調整しながら、1,3−ブタジエンを8.0kgとスチレン36.0kgを一定比率に保ちながら30分間かけて分添し、反応させた。その後55℃まで冷却した。
5)1,3−ブタジエンを68.0kg一括添加したのち、反応液の温度を65℃まで昇温しながら反応させた。その後反応液の温度を70℃で20分保持し反応させた。次に反応液の温度を40℃まで冷却した。
6)スチレンを48.0kg一括添加し、反応液の温度を40℃に保ちながら反応させた。
7)反応液に水300gを添加し反応を停止させた。
8)反応液を反応容器から抜出した。
【0097】
成分(2)−4
以下により、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比率91/9であるブロック共重合体を得た。
1)有機溶媒としてシクロヘキサン467kgとテトラヒドロフラン70gを反応容器中に仕込み40℃を保持した。
2)開始剤としてn−ブチルリチウム10質量%シクロヘキサン溶液1170mlを一括で反応容器中に仕込んだ。
3)この中にスチレンを40.0kg一括添加し、反応液の温度を80℃まで上昇させながら反応させた。
4)スチレンが完全に消費されたのち、反応液の温度が80℃になるよう調整しながら、1,3−ブタジエンを18.0kgとスチレン102.0kgを一定比率に保ちながら60分間かけて分添し、反応させた。その後60℃まで冷却した。
5)スチレンを40.0kg一括添加し、反応液の温度を40℃で維持しながら反応させた。
6)反応液に水170gを添加し反応を停止させた。
7)反応液を反応容器から抜出した。
【0098】
成分(3)
以下により、分子鎖末端に水酸基を有する共役ジエン重合体を得た。
1)有機溶媒としてシクロヘキサン427gとテトラヒドロフラン70gを反応容器中に仕込み40℃を保持した。
2)開始剤としてn−ブチルリチウム10質量%シクロヘキサン溶液24000mlを一括で反応容器中に仕込んだ。
3)この中に1,3−ブタジエン200kgを一括添加し、反応液の温度を10℃毎に80℃まで昇温し、温度を保ったまま1時間反応させた。その後、反応液の温度を70℃まで冷却した。
4)シクロヘキサン1Lに、改質剤として1,2−ブチレンオキシド1690gを溶解させ、全量を反応液に添加し、反応液を70℃に維持しながら30分反応させた。
5)反応液に水3000gを添加し反応を停止させた。
6)反応液を反応容器から抜出した
【0099】
(実施例1)
成分(1)−1と成分(2)−1の反応液を質量比33/67になるよう混合し、メタノール中に滴下し、減圧乾燥しメタノールを除去することで粉末状樹脂を得た。その後東洋精機製作所製ラボプラストミルμで二軸押出ユニット2D15Wを使用して210℃、30回転/分で溶融混練押出し、ペレット状の積層用樹脂組成物を得た。
【0100】
(実施例2〜15、比較例1〜4)
成分の比率を表に示す比率で混合した他は、実施例1と同様に操作を行った。
【0101】
【表1】
【0102】
積層用樹脂組成物フィルムは、前述樹脂組成物を210℃、圧力50kgf/cmで9分間熱プレス成形して得た。
【0103】
《評価方法》
[接着性評価]
接着性評価には、上記の様にプレス成形した積層用樹脂組成物フィルムと被接着物にポリエステル系樹脂(Eastman社製GN001)を熱プレス成型にてフィルムとしたものを用い、ヒートシール試験機(自作、圧着面長さ8mm×幅18mm長方形、圧着面温度160℃、圧着圧0.16MPa、圧着時間10秒)で積層用樹脂組成物フィルムと熱圧着した点(圧着点)を1点としサンプルに供した。
【0104】
島津製作所製小型卓上試験機EZ−Sを用い、23±1℃条件下でポリエステルフィルムと積層用樹脂組成物フィルムの未圧着部分をそれぞれチャックし、長さ方向にクロスヘッド速度100mm/min.で180°ピールさせた時の平均応力を用いた。測定点数は1試料につき10圧着点とした。1.0N/18mm以上のものを良好、それ未満のものは不良と判断する。
【0105】
[ヘーズ]
実施例1〜15、比較例1〜5の積層用樹脂組成物のペレットを80質量部、ポリエステル系樹脂(Eastman社製GN001)を20質量部混合し、ラボプラストミルμで二軸押出ユニットを使用して210℃、30回転/分で溶融混練押出し、得られたペレットを210℃で熱プレス成型し、厚さ0.5mmで調製したシートをサンプルとした。測定はJIS K 7136に記載の方法に準じた。
【0106】
[収縮仕上がり性]
収縮仕上がり性は、フィルム被覆容器の収縮仕上がり性を観察することによって、確認した。熱収縮性積層フィルム、ラベルの製造及びフィルム被覆容器の順に製造方法を下記に記す。
《熱収縮性積層フィルムの製造》
実施例1〜15、比較例1〜3の積層用樹脂組成物を中間層とし、表裏層をポリエステル系樹脂(Eastman社製GN001)として、表層/中間層/裏層=1/8/1の厚さ比率となるように共押し出しにて積層シート(TD方向長さ180mm)を作成後、テンターによりTD方向に5倍延伸して延伸フィルム(TD方向長さ900mm)を作製した。サンプルはTD方向端部より450mmを中心に切り出し、両側50mmは使用しないようにした。
【0107】
比較例4
成分(1)〜(3)を使用せず、ポリエステル系樹脂(Eastman社製GN001)の単層シート(TD方向長さ180mm)を作成後、テンターによりTD方向に5倍延伸して単層ポリエステル延伸フィルム(TD方向長さ900mm)を作製した。サンプルはTD方向端部より450mmを中心に切り出し、両側50mmは使用しないようにした。
【0108】
《ラベルの製造》
得られた熱収縮性積層フィルムをMD方向(100mm)、TD方向(360mm)に切り出し、TD方向を円周方向にしてフィルム端部をテトラヒドロフランにてシール(15mm)することにより、熱収縮性積層ラベルを得た。
【0109】
《フィルム被覆容器の製造》
円筒部の直径が66mmのアルミ製ボトル缶(蓋付)にこの熱収縮性積層ラベルを巻きつけ、90℃で10秒加熱し、フィルム被覆容器を作成した。
【0110】
その被覆容器の収縮仕上がり性について、次の評価基準で目視評価した。
良:シワが発生しないもの。
不良:シワが発生したもの。
【0111】
《総合評価》
実施例1〜8及び12は成分(1)を90〜30を含有しているため、成分(1)が30質量部より少ない比較例1〜3と比較して接着性が高く、成分(1)の含有率が90である実施例8では、10N/15mmを超過する接着性であった。実施例9〜11及び13〜15は、成分(3)を成分(1)と成分(2)の総和100質量部に対して4〜25質量部含有しているため、成分(3)を含有していない実施例1、12と比較して接着性が高い。実施例13〜15では、成分(3)の質量部が多いほど接着性が高い。比較例1〜3は、成分(1)が30質量部より少ないためヘーズが高いのに対して、実施例1〜15は成分(1)を90〜30質量部含有しているためヘーズが低い。比較例4の単層ポリエステル延伸フィルムの収縮仕上がり性が不良であるのに対して、実施例1〜15の成分(1)、(2)を含有する積層用樹脂組成物を用いた積層延伸フィルムは仕上がり性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の積層用樹脂組成物は、各種容器を包装する熱収縮性積層フィルム、ラベル及び容器に好適に適用される。