特許第6815823号(P6815823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815823
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】ライニング用帯状部材
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/32 20060101AFI20210107BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   B29C63/32
   F16L1/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-207026(P2016-207026)
(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公開番号】特開2018-65351(P2018-65351A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 達郎
(72)【発明者】
【氏名】菅原 宏
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佳郎
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−014959(JP,A)
【文献】 特開2009−150164(JP,A)
【文献】 特開2015−006744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00−63/48
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路の内面に設けられるライニング用帯状部材であって、
帯状の本体と、
前記帯状部材が伸張または収縮しうるよう、前記本体に設けられた凹溝状の伸縮部と、
前記伸縮部を挟み込む挟持部材とを備え、
前記伸縮部は前記本体の裏側に突出して設けられ、前記挟持部材は前記伸縮部の裏側に設けられて前記伸縮部を跨ぐ凹溝部を備えることを特徴とするライニング用帯状部材。
【請求項2】
流路の内面に設けられるライニング用帯状部材であって、
帯状の本体と、
前記帯状部材が伸張または収縮しうるよう、前記本体に設けられた凹溝状の伸縮部と、
前記伸縮部を挟み込む挟持部材とを備え、
前記挟持部材は、金属系材料からなり、前記伸縮部を跨ぐ凹溝部を備えることを特徴とするライニング用帯状部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のライニング用帯状部材であって、
前記挟持部材は、前記伸縮部を閉じていることを特徴とするライニング用帯状部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路の更生に用いられるライニング用帯状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
螺旋状に巻回した長尺の帯状部材の側縁部同士を接合して管状体を形成し、この管状体によって、老朽化した既設の流路を更生することが広く行われている。帯状部材としては、幅方向の一方の側縁部に形成された突条部と、他方の側縁部に形成されて前記突条部が嵌め合わされる凹溝部とを有する構成のものがある。帯状部材からなる管状体は、流路内面との間に裏込め材が充填されて一体化される。管状体の内周面は、帯状部材の平坦な基板部が螺旋状に連なって略円筒状に形成される。
【0003】
従来、このような帯状部材として、幅方向に伸縮可能な丸波形状の伸縮部を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。図8に示すように、この種の帯状部材60は、帯板状の基板601と、基板601が波形状に曲げられてなる伸縮部602とを備えている。帯状部材60の幅方向の両端部には、互いに嵌め合わされる突条603および凹条604が設けられている。伸縮部602は、帯状部材60の幅方向に伸縮しうる。帯状部材60に伸縮部602が設けられていることによって、帯状部材に外力が作用したとき、伸縮部602が幅方向に伸張し、螺旋管の破損の発生を防いだり、流路の湾曲部の形状に追従させて螺旋管を形成したりするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−34165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
帯状部材における伸縮部の変形は、製管過程では、例えば既設管の流路湾曲部で変形が必要な箇所にだけ生じることが望ましいが、製管作業時に作用する外力その他の要因で、必要箇所以外でも生じてしまうことが懸念された。前記従来の帯状部材の場合には、波形状の伸縮部が、形成された管状体の内周面に溝として現れることから、路内通水がその溝によって阻害されるおそれもあった。
【0006】
そのため、製管前段階での帯状部材としては、帯状部材の伸縮部を収縮させるとともに、管状体となされたとき内周側から見て伸縮部の溝が閉じられた状態であることが望まれる。しかし、合成樹脂系材料の押出成形により形成されることが一般的である帯状部材において、そのように伸縮部を収縮させるとともに溝を閉じた状態にて成形し、製管作業に備えることは極めて困難であった。
【0007】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、流路の更生に用いられるライニング材として、良好な通水性を確保し得て、必要箇所での伸張が可能とされたライニング用帯状部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、流路の内面に設けられるライニング用帯状部材であって、帯状の本体と、前記帯状部材が伸張または収縮しうるよう、前記本体に設けられた凹溝状の伸縮部と、前記伸縮部を挟み込む挟持部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
この特定事項により、前記伸縮部は挟持部材に挟まれているので、ライニング用帯状部材が流路の内面に設けられたとき、ライニング後の流路の内周面に伸縮部による溝を生じにくくすることができる。そのため、良好な通水性を確保することが可能となる。
【0010】
前記ライニング用帯状部材の具体的な構成として次のものが挙げられる。すなわち、前記挟持部材は、金属系材料からなり、前記伸縮部を跨ぐ凹溝部を備えることが好ましい。また、前記伸縮部は前記本体の裏側に突出して設けられ、前記挟持部材は前記伸縮部の裏側に設けられて前記伸縮部を跨ぐ凹溝部を備えるように構成されてもよい。
【0011】
これにより、挟持部材は、前記伸縮部を跨ぐようにして挟み込むので、外力の作用で伸縮部が変形するのに対応して前記挟持部材も変形しうるように構成することができる。
【0012】
また、前記ライニング用帯状部材において、前記挟持部材は、前記伸縮部を閉じていることが好ましい。
【0013】
これにより、ライニング用帯状部材を用いて流路をライニングするとき、伸縮部は閉じられた状態であり、必要箇所では伸縮部を伸張させることが可能となって、所望の形態のライニングを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ライニング用帯状部材として、帯状の本体と、前記帯状部材が伸張または収縮しうるよう、前記本体に設けられた凹溝状の伸縮部と、前記伸縮部を挟み込む挟持部材とを備えさせた構成としている。このため、当該ライニング用帯状部材によりライニングされた流路に良好な通水性をもたせることができるとともに、必要箇所では伸縮部を伸張させて、既設の流路形状に対応した所望の形態でライニング用帯状部材を配設することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るライニング用帯状部材の断面図である。
図2】前記ライニング用帯状部材の一部分を示す斜視図である。
図3】前記ライニング用帯状部材の使用状態の一例を示す断面図である。
図4】前記ライニング用帯状部材における本体部を示す断面図である。
図5】前記ライニング用帯状部材における本体部の伸縮部の収縮状態を示す断面図である。
図6】前記ライニング用帯状部材により形成された管状体が流路に配設された状態を示す説明図である。
図7】本発明の他の実施の形態に係るライニング用帯状部材の断面図である。
図8】従来のライニング用帯状部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係るライニング用帯状部材について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1図5は、本発明の一実施形態に係るライニング用帯状部材1を示している。ライニング用帯状部材1(以下、単に帯状部材1という。)は、長尺帯状の部材であって、幅方向の側縁部が接合されて管状体となされるものである。既設の流路のライニング手法としては、帯状部材1を螺旋状に巻回しながら、隣り合った側縁部同士を接合して管状に形成する場合もあれば、流路の内面に沿って多数本の帯状部材1を管軸方向に直線状に配設し、隣接する帯状部材を相互に接合して流路の内面を被覆する場合などもある。ライニング対象とされる流路には、下水や農業用水の暗渠だけでなく、流路上面が開放された開渠も含まれ、本発明に係る帯状部材1によって多様な流路のライニングが可能とされる。
【0018】
例示の形態に示す帯状部材1は、合成樹脂系材料からなる本体部11と、金属製板状材を折り曲げたものからなる挟持部材12とを備えている。なお、図6に示すように、帯状部材1を用いて管状体10が形成される場合において、管状体10の内側に向けられる側を帯状部材1の表側とし、管状体10の外側に向けられて流路100の内壁に面する側を帯状部材1の裏側として以下説明する。
【0019】
図1に示す帯状部材1の本体部11は、幅方向の両側縁に長手方向に沿って接合部2を備えている。接合部2としては多様な形態とされることが可能であるが、例えば、接合部2として、一方の側縁部に第1掛結部21が備えられ、他方の側縁部に第2掛結部22が備えられて構成されている。
【0020】
第1掛結部21は、帯状部材1における表側に開口する2条の溝部を有する。これに対応して、第2掛結部22は、帯状部材1における裏側に開口する2条の溝部を有し、第1掛結部21に嵌め込み可能とされている。この場合、第1掛結部21および第2掛結部22の溝部内には、それぞれ鉤型の断面形状の突条が、帯状部材1の厚み方向に2段に連なって設けられている。
【0021】
図4に示すように、本体部11において、第1掛結部21と第2掛結部22との間には、平板状の平板部3、伸縮部4、および複数条のリブ5が設けられている。リブ5は、平板部3の裏側に、長手方向に沿って連続的に立設され、断面略T字形または略L字形に形成されている。
【0022】
伸縮部4は、平板部3に一体に形成されるとともに、平板部3に対して幅方向に連続して設けられている。伸縮部4は、第1掛結部21に隣接して設けられてなる。この伸縮部4は、本体部11の裏側に突出する凹溝状に設けられている。
【0023】
例示の形態では、伸縮部4は、断面形状が逆U字状に近似される襞状体とされ、2条の畝状部41を有している。すなわち、伸縮部4は、2つの山と、それらの間の1つの谷とを備える形状に形成されている。これにより、伸縮部4は、断面形状が略M字形となるように形成されている。伸縮部4のこのような山や谷の数は特に限定されるものではなく、伸張量に応じて設定される。
【0024】
図4に示すように、伸縮部4は、平板部3よりも薄肉状であり、幅方向に伸張変形および収縮変形しうるように形成されている。また、伸縮部4には、畝上部41の凹溝を閉じるように作用する鍔42が平板部3の延長上に対向して備えられている。鍔42の表側は平坦状となされ、鍔42の裏側は畝上部41の形状に沿う曲面状となされている。
【0025】
伸縮部4の2条の畝状部41は、本体部11の表側から見ると2条の溝となっている。これらの溝の幅がそれぞれ拡張し、伸縮部4が伸張されたり(図4参照)、逆に溝が閉じられて伸縮部4が収縮されたりする(図5参照)。
【0026】
本体部11における伸縮部4の裏側方向への突出量は、特に限定されない。図示するように、伸縮部4は、リブ5より突出して設けられても、リブ5と同等の突出量で設けられてもよい。伸縮部4は、例示した形状に限定されず、断面略U字形、略V字形など、多様な形状の襞状に曲げられて本体部11の裏側に突出した構成であればどのような形状であってもよい。また、伸縮部4は、第2掛結部22に隣接して設けられてもよい。
【0027】
本体部11は、これらの各部を備えて一体成形されている。例えば、本体部11は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂を単独または適宜混合したものを材料として、押出成形などの加工手段によって形成されている。平板部3にあっては、必要に応じて、その表面や内部がガラス繊維等で補強されてもよい。
【0028】
図1に示すように、本体部11の伸縮部4の裏面側には、挟持部材12が装着されている。挟持部材12は、例えば圧延鋼材などの高い剛性を有し、本体部11に比べて弾性変形域が小さく、塑性変形域が大きい金属製板状材からなる。挟持部材12を構成する材料としては、このほか、例えば一般的な鉄やステンレス等であってもよい。挟持部材12は、伸縮部4の裏側を跨ぐように屈曲した形状を有している。
【0029】
例示の形態では、挟持部材12は、金属製板状材が折曲されて幅方向の略中央部が盛り上げられ、本体部11の裏側に突出する凸部71を備えている。帯状部材1の表側から見れば、挟持部材12の凸部71は、表側に開放された凹溝を有する形態とされている。また、かかる凸部71は、裏側方向に、伸縮部4よりも突出するとともに、複数のリブ5よりも突出する形状とされている。この場合、凸部71は、帯状部材1の裏側から表側方向に窄まった略溝型に形成されている。
【0030】
挟持部材12は、凸部71の両側に連続させて、押圧部72が備えられている。押圧部72は、伸縮部4の外側面に密着する部分であり、凸部71の両側縁から延設されている。2つの押圧部72は、伸縮部4を差し挟んで対向する位置関係にある。挟持部材12における凸部71および押圧部72は、帯状部材1の表側から見て挟持部材12の凹溝部を構成している。
【0031】
挟持部材12には、押圧部72に連続させて、凹部73が備えられている。凹部73は、凸部71の幅方向の両側に設けられ、帯状部材1の裏側方向に開放され、表側から裏側に次第に拡がった略溝型に形成されている。一方の凹部73の端縁は、第1掛結部21の外側に係止し、他方の凹部73の端縁は、リブ5の端部に係止される。これらの凹部73は、本体部11の平板部3の裏側面に沿って配設される。押圧部72同士の離間距離は、これらの凹部73によって構成される挟持部材12の開口幅よりも狭く形成されている。これにより、挟持部材12は伸縮部4に対して嵌め込みやすいものとされている。
【0032】
挟持部材12は、長尺部材である必要はなく、図2に示すように、本体部11に対して短尺で形成されて、本体部11の長手方向に間隔をおいて複数箇所に配設されている。例えば、帯状部材1における本体部11の幅が6〜10cmである場合に、挟持部材12は幅が3〜6cm、長さが10〜20cmの大きさにて形成される。
【0033】
このように、本体部11に挟持部材12が配設されることで、帯状部材1の断面形状が図1に示されるように保持されることが好ましい。そのため、帯状部材1の断面形状が保持される形態であれば、本体部11の長手方向に複数の挟持部材12が連続して配設されても、あるいは長尺の挟持部材12が配設されても、どのように挟持部材12が設けられてもよい。また、帯状部材1の本体部11と等しい長さの挟持部材12が設けられてもよい。
【0034】
これらの各部を備えた挟持部材12は、合成樹脂系材料からなる本体部11に比べて弾性変形域が小さく、塑性変形域が大きい。そのため、本体部11と挟持部材12とに同程度の変形量(ひずみ)を与えた場合、本体部11では弾性変形をさせ、挟持部材12では塑性変形をさせることが可能となる。また、挟持部材12は、凸部71、押圧部72、および凹部73を備えた構造であることにより、外力の作用で幅方向に変形し得る。
【0035】
図4に示すように、帯状部材1の本体部11は、伸縮部4の凹溝が開いた状態となるように押し出し成形される。帯状部材1の製造過程で、本体部11の裏側に複数のローラ体やガイド部材を配置し、伸縮部4の2条の畝状部41をともに外方から幅方向に押圧する。これにより、図5に示すように、畝状部41は押し潰されて、畝状部41の溝がほぼ閉じられた状態となる。このように伸縮部4を収縮させたまま、本体部11に対して裏側から挟持部材12を装着する。装着後も、畝上部41の溝、さらにはこの溝の開口縁が、鍔42によってほぼ閉じられた状態となる。
【0036】
なお、帯状部材1の本体部11と挟持部材12とを一体化させる手法は、上述の製造過程によらずともよい。
【0037】
図1および図2に示すように、挟持部材12の押圧部72は伸縮部4の外側面に密着し、伸縮部4を挟み込むものとなる。帯状部材1において、本体部11の伸縮部4を、あらかじめ収縮した(溝が閉じられた)状態に保持した後、挟持部材12を嵌め込むようにしても、また、伸縮部4の裏側に挟持部材12を配置した後、両者を嵌め合わせることによって伸縮部4の溝を閉じるようにしてもよい。あるいは、挟持部材12の開口幅を拡げた状態で成形し、伸縮部4に跨ぐように配置した後、挟持部材12の押圧部72を外方から押圧し、伸縮部4の溝を閉じてもよい。伸縮部4の両側に延びる平板部3は、伸縮部4が収縮することで鍔42同士が近接し、閉じた状態となる。
【0038】
流路(既設管路)のライニングを、帯状部材1を用いて行う場合に、図6に示すように、帯状部材1を螺旋状に巻回して管状体(螺旋管)10を形成し、流路100の内面を管状体で覆う工法が採用されることがある。このような場合、流路100の直線部では帯状部材1が均等間隔で巻回され、本体部11の伸縮部4は挟持部材12に保持されて収縮状態となっている。したがって、流路100に配置される管状体10の内面はほぼ平滑となり、良好な通水を実現することが可能とされる。
【0039】
例えば流路100が曲がり管路の暗渠である場合には、管状体10を構成する帯状部材1は、曲がり管路の外側よりも内側で密に配置されることとなる。このような場合に、曲がり管路の内側では、帯状部材1における伸縮部4が挟持部材12に保持された状態で維持される。一方、曲がり管路の外側では、図3に示すように、伸縮部4が伸張し、本体部11の幅を拡張させて配置されることとなる。これにより、曲がり管路の内側よりも外側の帯状部材1の方が幅方向に伸張するので、曲がり管路に対応した曲がり形状の管状体10を形成することができる。
【0040】
帯状部材1におけるこのような変形は、例えば、本体部11に対して幅方向の引張力を加えることで実現される。あるいは、挟持部材12に対して、2つの凹部73を幅方向に引き離すような力を加えて変形させてもよい。このとき、与えられた変形量が予め定められた規定量以内であると、伸縮部4の変形は弾性変形となる。伸縮部4には挟持部材12が装着されているので、規定量を超えた変形とはなり難く、隣接して配置された帯状部材1の伸縮部4に分散して変形が生じることとなる。
【0041】
したがって、伸縮部4において弾性変形域を超えた変形を生じる可能性が極めて低くなり、白化等の性質の低下を生じる可能性も低減する。一方、挟持部材12に生じる変形は、塑性変形によるものとなる。そのため、伸縮部4において生じた変形は、変形を生じさせた力を除いた後も挟持部材12によって維持される。
【0042】
なお、図1に示す形態では、挟持部材12の凹部73の端縁部が、本体部11の接合部2またはリブ5に係止されることによって、挟持部材12が本体部11に対して固定されている。本発明において、挟持部材12を本体部11に対して固定する方法は、これに限定されるものではなく、例えば、挟持部材12の凹部73や押圧部72を本体部11に接着固定するものであってもよい。
【0043】
図7は、本発明の他の実施の形態に係る帯状部材1を示す。この形態に係る帯状部材1は、本体部11が前記形態と同様であるのに対し、挟持部材12が凸部71および押圧部72を備えて形成されている。また、挟持部材12は前記形態よりも凸部71における突出量が小さく形成されている。
【0044】
具体的には、挟持部材12の凸部71は、金属製板状材が折曲されて、帯状部材1の表側方向に窄まった略溝型に形成されている。凸部71の両端縁部には、押圧部72が延設されている。これにより、挟持部材12は、伸縮部4の裏側を跨ぐように配設され、2条の畝状部41を押し潰した状態で固定されている。挟持部材12は、凹部73または押圧部72と、伸縮部4の外側面とが密着する部分において接着固定されている。
【0045】
この形態にあっても、挟持部材12は、本体部11に比べて弾性変形域が小さく、塑性変形域が大きい材料からなることが好ましい。また、挟持部材12は、本体部11に比べて剛性の高いものとされている。
【0046】
図7に示す状態から、帯状部材1に対して幅方向の引張力が作用すると、伸縮部4が伸張変形するとともに、挟持部材12が同様に変形する。これにより、この形態に係る帯状部材1にあっても、既設の流路の形状に追従した変形をし得るものとなる。
【0047】
以上のように構成される帯状部材1では、ライニング対象の流路の形状に追従させて、必要箇所では伸張しうる伸縮部4を備えさせることができる。そのため、この帯状部材1を用いて形成された管状体は、内周面に伸縮部4による溝が多くは存在せず、通水性を良好に確保することができる。また、挟持部材12は、外力を加えるだけで塑性変形させることが可能であるので、変形させるために加熱等の作業を必要とせず、流路内での作業性を高めることができる。
【0048】
なお、帯状部材1を用いて形成される管状体には、前述のとおり螺旋管だけに限定されるものではなく、ライニング対象の流路の内面に沿って多数本の帯状部材1を管軸方向に配設し、相互に接合して内面をライニングしてもよい。この場合、帯状部材1の長手方向と交差する方向に延びるよう、挟持部材12と伸縮部4とが設けられればよい。挟持部材12は伸縮部4に埋め込まれていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、流路のライニングのための部材として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 ライニング用帯状部材(帯状部材)
11 本体部(本体)
12 挟持部材
2 接合部
21 第1掛結部
22 第2掛結部
3 平板部
4 伸縮部
41 畝状部
42 鍔
5 リブ
71 凸部
72 押圧部
73 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8