(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステータおよびロータを有するモータ部と、前記ロータの内径側に配置され、ロータの回転を出力する駆動源出力軸とを備え、前記モータ部は、回転制御のための位置検出構造とを有する電動アクチュエータ用回転駆動源であって、
前記位置検出構造は、内周面側にN・S極が交互に周方向に沿って配設される着磁部を有する回転側のパルサーリングと、このパルサーリングの着磁部に径方向に近接対峙する固定側の検出用センサとを備え、前記位置検出構造のパルサーリングは、その内径面に前記着磁部が設けられる支持環を備え、これにより、前記パルサーリングの着磁部をロータに近接させ、かつ、この支持環の最終出力軸側を、ステータの一方の軸方向端部の内径側に配置させることによって、この支持環の最終出力軸側がステータの一方の軸方向端部にオーバーラップするとともに、前記着磁部が設けられた支持環の反最終出力軸部側が、ステータの一方の軸方向端部よりも反最終出力軸部側に突出していることを特徴とする電動アクチュエータ用回転駆動源。
前記パルサーリングは、短円筒形状の本体部を有する支持環と、この支持環の本体部の内径面に設けられる前記着磁部とからなり、パルサーリングの支持環の内径側に、前記検出用センサとしてのホールセンサが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の電動アクチュエータ用回転駆動源。
少なくとも支持環の軸方向半分部位がステータのコイルの一方の軸方向端部に軸方向でオーバーラップしていることを特徴とする請求項2に記載の電動アクチュエータ用回転駆動源。
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した回転駆動源の駆動源出力軸に減速機を接続し、減速機の出力側に最終出力軸を接続したことを特徴とする電動アクチュエータ。
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した回転駆動源の駆動源出力軸に減速機を接続し、減速機の出力側に運動変換機構を接続したことを特徴とする電動アクチュエータ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる、電動アクチュエータ用回転駆動源および当該回転駆動源を備える電動アクチュエータの実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0016】
図1は、電動アクチュエータの第1の実施形態として、回転運動型の電動アクチュエータを示す縦断面図である。
図2は、
図1中のB−B線断面図であり、
図3は
図1中のC−C線断面図である。この回転運動型の電動アクチュエータは、例えばロボットアームの駆動や、自動車等の車両における電動パワーステアリング等に使用することができる。
【0017】
図1に示すように、本発明にかかる電動アクチュエータは、回転駆動源1と、回転駆動源1の軸方向一方側に配置され、かつ回転駆動源1の出力側に接続された減速機2と、減速機2の出力側に接続された最終出力軸3とを主要な構成要素とする。以上の各構成要素のうち、先ず回転駆動源1の構造を説明する。
【0018】
回転駆動源1は、モータ部5と、駆動源出力軸6と、トルクリミッタ7とを具備する。このうち、モータ部5は、
図1および
図2に示すように、ケーシング8に固定されたステータ51と、ステータ51の半径方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータ52とを備える電動モータで構成される。本実施形態では、電動モータの一例として、ラジアルギャップ型を例示している。
【0019】
ステータ51は、軸方向に積層した複数の電磁鋼板で形成されたステータコア51aと、ステータコア51aに装着された絶縁材料からなるボビン51bと、ボビン51bに巻回されたステータコイル51cとを有する。
【0020】
ロータ52は、環状のロータコア52aと、ロータコア52aの外周に取り付けられた複数のマグネット52bと、ロータコア52aの内周に固定された環状のロータインナ52cとで構成される。ロータコア52aは、例えば軸方向に積層した複数の電磁鋼板で形成される。ロータインナ52cの軸方向長さはロータコア52aの軸方向長さよりも長く、ロータコア52aの軸方向両側にロータインナ52cが突出している。ロータインナ52cの軸方向両端部の外周面には、ロータコア52aの軸方向両側に配置した軸受53,54が固定されており、この軸受53,54によってロータインナ52cがケーシング8に対して回転自在に支持されている。軸受53,54としては、ラジアル荷重とスラスト荷重の双方を支持できる転がり軸受、例えば深溝玉軸受を使用することができる。
【0021】
ロータインナ52cの内周面には、内径寸法を他所よりも大きくした環状凹部521が形成される。この環状凹部521は、
図1に示すように、例えばロータインナ52cの軸方向他方側(減速機2側とは反対側)の端部に形成される。環状凹部521の内周面には、軸方向に延びる雌セレーション522が形成されている。
【0022】
図1に示すように、駆動源出力軸6は、両端を開口した中空の円筒状に形成される。このように駆動源出力軸6を中空にすることで、回転駆動源1は中空モータとしての構造を有することになる。駆動源出力軸6の外周面は、ロータインナ52cの内周面(環状凹部521を除く)に対して隙間嵌めで嵌合されている。そのため、駆動源出力軸6は、ロータインナ52cから独立して回転することができる。駆動源出力軸6の軸方向他方側の端部の外周面には、軸方向に延びる雄セレーション6aが形成されている。
【0023】
ロータインナ52cの環状凹部521の内周面と、これに対向する駆動源出力軸6の外周面との間に、環状隙間が形成される。本実施形態では、この環状隙間にトルクリミッタ7が配置されている。
【0024】
トルクリミッタ7は、モータ部5から出力された回転動力を駆動源出力軸6に伝達する一方で、過負荷が作用した時にトルク伝達を遮断し、モータ部5と駆動源出力軸6との相対回転を許容するものである。この機能を有する限り任意の構成のトルクリミッタ7を使用することができる。本実施形態では、トルクリミッタ7の一例として、摩擦式クラッチの一種である多板クラッチを使用した場合を例示している。
【0025】
図4は、
図1中の領域Xを拡大して示す断面図である。
図4に示すように、トルクリミッタ7としての多板クラッチは、軸方向に離間して配置された一対の第1摩擦板71,71と、一対の第1摩擦板71,71の間に配置された第2摩擦板72と、第1摩擦板71と第2摩擦板72を圧接させた波形ばね等の弾性部材73と、押圧板74とを備える。押圧板74は、ロータインナ52cの内周面の環状溝に嵌合された止め輪75により軸方向で位置決めされ、所定の押圧力(軸方向荷重)を弾性部材73に付与する。
【0026】
ロータインナ52cに設けられた環状凹部521の内周面には、軸方向に延びる雌セレーション522が形成されており、この雌セレーション522に第1摩擦板71および押圧板74が嵌合されている。また、駆動源出力軸6の外周面には、軸方向に延びる雄セレーション6aが形成されており、この雄セレーション6aに第2摩擦板72が嵌合されている。そして、弾性部材73の付勢力により、第1摩擦板71と第2摩擦板72間に摩擦力が発生する。
【0027】
モータ部5と駆動源出力軸6の間に作用するトルクが両摩擦板71,72間に作用する摩擦力以下であるときは、両摩擦板71,72が一体回転するため、モータ部5の回転動力が両摩擦板71,72を介して駆動源出力軸6に伝達される。これにより、駆動源出力軸6に接続される減速機2、さらにはこの減速機2の出力側に接続される最終出力軸3が駆動される。一方、モータ部5と駆動源出力軸6の間に作用するトルクが両摩擦板71,72間に作用する摩擦力を上回ると、一方の摩擦板が他方の摩擦板に対して滑るため、モータ部5と駆動源出力軸6との間でのトルク伝達が遮断される。これにより、駆動源出力軸6とロータインナ52cの相対回転が許容される。
【0028】
ケーシング8は、組み立ての都合上、軸方向の一箇所もしくは複数箇所で分割される。本実施形態では、ケーシング8を、有底円筒状の底部81と、両端を開口した筒部82と、蓋部83とに分割している。筒部82の軸方向一方側に蓋部83が配置され、筒部82の軸方向他方側に底部81が配置される。底部81、筒部82、および蓋部83は、ボルト等の締結手段を用いて一体化される。ロータインナ52cを支持する軸受53,54のうち、軸方向一方側の軸受53は筒部82の内周面に固定され、軸方向他方側の軸受54は底部81の内周面に固定される。なお、底部81は、円筒状の胴部81aと、この胴部81aの反最終出力軸側の開口部を塞ぐ蓋部81bとからなる。
【0029】
次に、電動アクチュエータの主要構成要素である減速機2の構成を説明する。本実施形態では、減速機2として、トラクションドライブ式の遊星減速機を使用している。この遊星減速機2は、太陽ローラ21と、外側リング22と、複数の遊星ローラ23と、キャリア24とを具備している。太陽ローラ21として、本実施形態では、駆動源出力軸6の軸方向一方側の端部を使用している。また、遊星ローラ23として、転がり軸受25(例えば深溝玉軸受)の外輪を使用している。各転がり軸受25の内輪は中空軸26に圧入固定され、各中空軸25はキャリア24によって自転可能に支持されている。キャリア24は、その外周面に固定した転がり軸受27(例えば深溝玉軸受)により、ケーシング8の蓋部83に対して回転自在に支持されている。
【0030】
図5は、
図1中の領域Yを拡大して示す断面図である。
図5に示すように、外側リング22は、断面U字状の本体部22aと、本体部22aの軸方向両側に突出するフランジ部22bとを一体に有する。ケーシング8の筒部82と蓋部83を結合する前の状態では、図中に実線で示すように、筒部82の内周に収容された外側リング22は、軸方向一方側のフランジ部22bを筒部82の端面よりも突出させている。その後、蓋部83を筒部82の端面に当接するまで押し込んでボルト等を用いて両者を結合すると、蓋部83に押圧された外側リング22が二点鎖線で示すように弾性変形し、本体部22aが内径側に膨らむ(
図4は、弾性変形の程度を誇張して描いている)。この外側リング22の弾性変形により、外側リング22と遊星ローラ23の接触部、さらには遊星ローラ23と太陽ローラ21の接触部にトラクション(予圧)が付与される。
【0031】
外側リング22のうち、軸方向他方側のフランジ部22bと筒部82の間には、リング状の調整部材28が配置される。蓋部83の組み付け前の状態で、筒部82の端面からの外側リング22のフランジ部22bの突出量tが規定範囲内となる適正厚さの調整部材28を選択して使用することで(マッチング)、外側リング22の変形程度を均一化して、減速機2の内部に付与するトラクションを均一化することができる。
【0032】
減速機2の出力側となるキャリア24の内周面には、最終出力軸3が圧入等の手段で固定される。最終出力軸3の軸方向他方側の端部は、転がり軸受31により駆動源出力軸6に対して回転自在に支持される。
【0033】
以上に説明した第一実施形態の電動アクチュエータでは、モータ部5と駆動源出力軸6との間のトルク伝達経路中にトルクリミッタ7が配置されている。通常時は、モータ部5で生じたトルクがトルクリミッタ7、駆動源出力軸6、および減速機2を介して最終出力軸3に伝達される。これにより、最終出力軸3に接続された駆動対象が回転駆動される。これに対し、例えば駆動対象が障害物と衝突等して、最終出力軸3の回転がロックされた場合でも、ロータインナ52cと駆動源出力軸6との間に滑りが生じてトルク伝達経路が遮断されるため、モータ部5が慣性によりそのまま回り続けようとしている状況下でも減速機2に過大な負荷が作用することを防止することができる。従って、減速機2の破損を防止することができる。これとは逆に、何らかの理由でモータ側の回転トルクが極端に大きくなった場合にも、減速機2等への過大負荷の作用を防止することができる。
【0034】
また、本発明では、トルクリミッタ7がロータ52の内周面(ロータインナ52cの内周面)と、これに対向する駆動源出力軸6の外周面との間に配置されている。そのため、モータ部5の軸方向隣接位置にトルクリミッタ7を配置する場合に比べ、回転駆動源1、さらには電動アクチュエータの軸方向寸法を小さくすることができる。以上の効果を効果的に得るため、トルクリミッタ7(止め輪75も含む)は、ロータインナ52cを支持する二つの軸受53,54の間に配置するのが好ましい。より詳細には、両軸受53,54の各外端面P(相手側の軸受の端面と対向しない端面)の間にトルクリミッタ7を配置するのが好ましい。
【0035】
ところで、この電動アクチュエータのモータ部は、回転制御のための位置検出構造150を反最終出力軸側に有する。位置検出構造150は、
図6に示すように、パルサーリング151(151A)と、位置検出センサ152としてのホールセンサ(この場合、ホールIC152A)とを備えたものである。ここで、ホールセンサとは、例えば、磁界の向きを検出しそれに応じたパルス信号を出力する半導体である。また、ホールICとは、ホール素子と信号変換回路を1つのパッケージに組み込んだ磁気センサであり、ホール素子とは、ホール効果を利用して磁界を検出する素子である。
【0036】
パルサーリング151Aは、
図7(a)(b)に示すように、支持環153(153A)と、着磁部(磁気エンコーダ)154(154A)とからなる。すなわち、支持環153(153A)は、短円筒形状の本体部153aと、この本体部153aの反最終出力軸側の開口部に設けられる平板リング状の内鍔部153bとからなり、この支持環153Aの本体部153aの内周面に着磁部(磁気エンコーダ)154(154A)が形成される。この場合の支持環153(153A)は、内鍔部側の小径部155と、反内鍔部側の大径部156と、この小径部155と大径部156とを連結するテーパ部157とからなり、大径部156の内周面に着磁部(磁気エンコーダ)154Aが設けられる。
【0037】
支持環153Aは、強磁性体の鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)や防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)をプレス加工等にて形成されたものである。また、着磁部(磁気エンコーダ)154Aは、ゴム等からなるエラストマにフェライト等からなる強磁性粉を混入させ、周方向交互に磁極N・Sが周方向に所定の等間隔(等ピッチ)となるように着磁したものである。
【0038】
このパルサーリング151(151A)は、
図1、
図2、及び
図6に示すように、反最終出力軸側の軸受54が収納状となるロータ52の周方向切欠部158に、支持環153Aの小径部155が嵌入乃至圧入される。このため、パルサーリング151(151A)は、ロータ52と一体に回転する。
【0039】
また、底部81の蓋部81bには、回路基板160が付設され、この回路基板160に周方向に沿って、所定の等ピッチで配設される3個のホールIC152Aが接続されている。このホールIC152Aは、パルサーリング151Aの着磁部(磁気エンコーダ)154に近接対峙する。
【0040】
このため、この位置検出構造150では、ロータ52の磁極の位置を回転センサ(検出用センサ)で検出し、この検出された位置に基づき、制御機能を有するコントローラ部(図示省略)において、ステータコア51aのコイル51cが巻かれた部位(ティース部)が最適なタイミングで励磁させるように制御しながら、ロータ52とステータコア51aとの間に生じる磁力の吸引・反発力によって、駆動力を発生させるものである。
【0041】
この位置検出構造150のパルサーリング151(151A)が、ステータ51のコイル51cの一方の軸方向端部の内径側において軸方向でオーバーラップすることになる。すなわち、パルサーリング151(151A)の支持環153(153A)の内径側に、前記検出用センサとしての3個のホールIC152Aが周方向に沿って所定ピッチで配設されており、少なくとも支持環の軸方向半分部位(この場合、支持環153の小径部155)がステータのコイルの一方の軸方向端部に軸方向でオーバーラップしていることになる。
【0042】
このように、この第1の実施形態では、パルサーリング151(151A)の着磁部154(154A)とこれに近接対峙するホールIC152Aとを径方向に沿って配置することができる。このため、着磁部154(154A)とこれに近接対峙するホールIC152Aとを軸方向に沿って配設する場合よりも、位置検出構造150を設けたことによる軸方向長さが大となることを防止することができ、確実に軸方向長さの短縮化を図ることができ、しかも、位置検出構造150を安定して配置することができる。
【0043】
図8及び
図9に、本発明の第2の実施形態として、直線運動型の電動アクチュエータの断面図を示す。この直線運動型の電動アクチュエータは、例えば自動車等の車両に装備される電動ブレーキ等に使用することができる。この第2の実施形態の電動アクチュエータでは、モータ部5から減速機2に至るまでの構成は、第一実施形態と共通する。第2の実施形態は、最終出力軸3に代えて運動変換機構9を使用した点が第一実施形態と異なる。
【0044】
運動変換機構9は、例えばボールねじ91で構成される。ボールねじ91は、ボールねじナット92、ボールねじ軸93、多数のボール94、および循環部材としてのこま(図示省略)を主な構成要素とする。ボールねじナット92の内周面に螺旋状溝が形成され、ボールねじ軸93の外周面に螺旋状溝が形成されている。両螺旋状溝の間にボール94が装填される。ボールねじナット92の外周面には、減速機2の出力側となるキャリア24が圧入等の手段で固定されている。
【0045】
中空をなす駆動源出力軸6の内径側には、ケーシング8の底部81に固定された中空筒状のガイド部材95が配置される。ガイド部材95の内周には、軸方向に延びる図示しないガイド溝が形成されている。詳細な図示は省略するが、ボールねじ軸93の軸方向他端部に設けた孔93aにピンを圧入する等してボールねじ軸93に半径方向に突出する突起を設け、この突起をガイド部材95のガイド溝に嵌合させることにより、ボールねじ軸93の回り止めを行うことができる。
【0046】
第2実施形態に於けるケーシング8は、底部81,筒部82,蓋部83,および加圧部84で構成される。底部81および筒部82の構成や機能は、第一実施形態で説明した底部81および筒部82と共通している。加圧部84は、筒部82と蓋部83の間に挟まれている。第一実施形態と同様に、底部81、筒部82,蓋部83,および加圧部84をボルト部材86で一体に結合することで、加圧部84の端面が筒部82の端面に圧接し、加圧部84に押圧された外側リング22が内径側に弾性変形する。そのため、トラクションドライブ式の遊星減速機2にトラクションが付与される。
【0047】
ボールねじナット92は、その外周面に固定した複列の転がり軸受96(例えば複列深溝玉軸受)により、ケーシング8の蓋部83に対して回転自在に支持される。この転がり軸受96により、ボールねじ軸93に作用するアキシャル荷重を支持することが可能となる。また、ボールねじナット92を両持ち構造にして、ボールねじナット92の傾きを防止することができる。
【0048】
この第2の実施形態では、モータ部5のトルクが、トルクリミッタ7、駆動源出力軸6、減速機2を介してボールねじナット92に伝達される。従って、モータ部5を正逆方向に駆動することで、ボールねじナット92を正逆方向に回転させて、ボールねじ軸93を軸方向に進退移動(直線運動)させることができる。
【0049】
この第2の実施形態でも第一実施形態と同様に、モータ部5よりも下流側のトルク伝達経路にトルクリミッタ7を配置しているため、ボールねじ軸93が障害物と当接する等してその伸長が規制されるような状況になっても、ロータインナ52cと駆動源出力軸6の間で滑りを生じさせてトルク伝達経路を遮断することができる。従って、減速機2やボールねじ91に過大な負荷が作用することを防止し、減速機2やボールねじ91の破損を防止することができる。
【0050】
また、トルクリミッタ7が、モータ部5のロータ52(ロータインナ52c)の内周面と、これに対向する駆動源出力軸6の外周面との間の隙間に配置されているため、モータ部5の軸方向隣接位置にトルクリミッタ7を配置する場合に比べ、電動アクチュエータの軸方向寸法を小さくして電動アクチュエータの小型化を図ることができる。
【0051】
この第2の実施形態においても、電動アクチュエータのモータ部は、
図10〜
図13に示すように、パルサーリング151(151B)と、位置検出センサ152としてのホールIC152Aとを有する位置検出構造150を備える。
【0052】
このパルサーリング151(151B)は、前記
図7(a)(b)に示したパルサーリング151(151A)と同様、
図14(a)(b)に示すように、支持環153(153B)と着磁部(磁気エンコーダ)154(154B)とからなる。すなわち、支持環153(153B)は、短円筒形状の本体部153aと、この本体部153aの反最終出力軸側の開口部に設けられる平板リング状の内鍔部153bとからなり、支持環153の本体部153aの内周面に着磁部(磁気エンコーダ)154(154B)が形成される。この場合の本体部153aは、外周面及び内周面は段差部を有さないストレートの円筒面である。本体部153aの反内鍔部側の内周面に着磁部(磁気エンコーダ)154Bが設けられる。
【0053】
この場合の支持環153Bの材質としては、前記支持環153Aと同様とされ、着磁部(磁気エンコーダ)154Bの材質も、着磁部(磁気エンコーダ)154Bの材質と同様とされ、周方向交互に磁極N・Sが周方向に所定の等間隔(等ピッチ)となるように着磁したものである。
【0054】
このパルサーリング151Bも、
図8、
図9、及び
図11等に示すように、反最終出力軸側の軸受54が収納状となるロータ52の周方向切欠部158に、支持環153Bの内鍔部側が嵌入乃至圧入される。このため、パルサーリング151(151B)は、ロータと一体に回転する。
【0055】
この場合も、底部81の蓋部81bには、回路基板160が付設され、この回路基板160に周方向に沿って、所定の等ピッチで配設される3個のホールIC152Aが接続されている。このホールIC152Aは、パルサーリング151の着磁部(磁気エンコーダ)154に近接対峙する。
【0056】
従って、パルサーリング151Bが、ステータ51のコイル51cの一方の軸方向端部の内径側において軸方向でオーバーラップすることになる。すなわち、パルサーリング151Bの支持環153Bの内径側に、前記検出用センサとしての3個のホールIC152Aが周方向に沿って所定ピッチで配設されており、少なくとも支持環153Bの軸方向半分部位がステータ51のコイル51cの一方の軸方向端部に軸方向でオーバーラップしていることになる。
【0057】
このため、前記第1の実施形態と同様、パルサーリング151Bの着磁部154Bとこれに近接対峙する検出用センサ(ホールIC152A)とを径方向に沿って配置することができる。このため、着磁部154B部とこれに近接対峙する検出用センサ(ホールIC152A)と軸方向に沿って配設する場合よりも、位置検出構造150を設けたことによる軸方向長さが大となることを防止することができ、確実に軸方向長さの短縮化を図ることができ、しかも、位置検出構造150を安定して配置することができる。
【0058】
さらに、この第2の実施形態では、駆動源出力軸(中空出力軸)6の内周面に形成される内部スペースを有効利用して、ボールねじ91のねじ軸93が収容され、全体の軸方向寸法も小型化されている。さらに、上記内部スペースを有効利用して、ねじ軸93の軸方向他方側に回り止め機構Mが設けられている。
【0059】
ねじ軸93の回り止め機構Mは、ガイド部材95と、ねじ軸93の半径方向に貫通する孔に嵌め込まれたピン96とこのピン96に回転自在に外嵌されたガイドカラー97とからなる。ガイド部材95はケーシング8の底部81に固定され、ガイド部材95の円筒部95aは、中空出力軸6の内周面とねじ軸93の外周面との間に配置されている。円筒部95aの内側にガイド溝95bが設けられ、ガイドカラー97が嵌め込まれている。ガイドカラー95は、PPS等の樹脂材料からなり、滑らかな回転を可能にする。これにより、ナット92が回転すると、ねじ軸93が
図8、
図9の左右方向にスムーズに進退する。
【0060】
本実施形態では、ガイドカラー97の外周面を円筒状とし、ガイドカラー97が案内されるガイド溝95bの案内面を、平行な2つ面から構成したものを例示したが、これに限られず、V字状に角度を付けた2つの面からなる案内面や、円筒状の案内面とし、ガイドカラー97の外周面をそれぞれの案内面に対応する形状にしてもよい。
【0061】
また、ガイドカラー95が樹脂材料からなるものを例示したが、これに限られず、金属製としてもよい。さらに、ガイドカラー97を省略し、ピン96が直接ガイド溝95bに係合する構造にしてもよい。
【0062】
以上説明したように、モータ部5と運動変換機構9が同軸上に配置された直動式電動アクチュエータにおいて、中空のロータインナ52cとナット92を軸方向に重ならない位置に配置すると共に、ねじ軸93の回り止め機構Mを中空のロータインナ52cの半径方向内側に設けた構成により、直動式電動アクチュエータの小型化、特に半径方向寸法の小型化を図り、搭載性を向上させることができる。
【0063】
特に第2の実施形態のような直線運動型の電動アクチュエータでは、ボールねじ軸93が進退移動するスペースが必要となるため、モータ部5とトルクリミッタ7とを軸方向隣接位置に配置した場合には、進退移動するボールねじ軸93とトルクリミッタ7とが干渉するおそれがある。これを回避するには、ボールねじ軸93をモータ部5およびトルクリミッタ7の軸心に対して偏芯させて配置せざるを得ず、電動アクチュエータが大型化する。
【0064】
これに対し、第2の実施形態では、トルクリミッタ7を、ロータインナ52cと駆動源出力軸6に対して半径方向で重畳させる形で配置することに加えて、中空の駆動源出力軸6を用いて回転駆動源1を中空構造とし、駆動源出力軸6の内径側にボールねじ軸93を収容するスペースを設けている。従って、ボールねじ軸93をモータ部5、さらにはトルクリミッタ7と同軸に配置することができ、そのために直線運動型の電動アクチュエータを小型化することができる。
【0065】
また、
図1に示す第1の実施形態(回転運動型)の電動アクチュエータと、
図8と
図9に示す第2の実施形態(直線運動型)の電動アクチュエータを対比すると、回転駆動源1および減速機2は実質的に共通した構成を有する。そのため、回転駆動源1および減速機2を両タイプの電動アクチュエータで共用化することができる。すなわち、第一実施形態の電動アクチュエータにおいて、最終出力軸3を使用せずに、ボールねじ91を使用して、ボールねじ軸93を駆動源出力軸6の内周に配置することにより、第2の実施形態の電動アクチュエータを得ることができる。このように回転駆動源1および減速機2を共用化することで、電動アクチュエータの低コスト化を図ることができる。また、回転運動型と直線運動型の電動アクチュエータをシリーズ化し、商品展開力を強化することもできる。
【0066】
図8及び
図9に示す直動式電動アクチュエータは、モータ部5と運動変換機構9が同軸上に配置されているが、中空ロータインナ52cと中空出力軸6に対してボールねじ91のナット92が半径方向に重畳する構造ではないので、中空ロータインナ52cの内径D1、さらには中空出力軸6の内径D2をボールねじ91のナット92の外径D3より小さくすることができる。これにより、小型の電動モータ29を使用することができ、直動式電動アクチュエータの小型化、特に半径方向寸法を小型化することができる。
【0067】
以上の実施形態の説明では、減速機2としてトラクションドライブ式の遊星減速機を例示している。これはバックラッシが少なく、低騒音であることに鑑みて採用したものである。減速機2の構成は任意であり、上記の利点に対する必要性が乏しい場合には、減速機2として、ギヤを用いた遊星ギヤ減速機を使用することもできる。もちろん遊星減速機以外の構成を有する減速機も使用することができる。
【0068】
また、トラクションドライブ式の遊星減速機2にトラクションを与える手法として、蓋部83の取り付け時に外側リング22を内径側に変形させる場合を説明したが、トラクションを付与する機構は任意に採用することができる。例えば外側リング22をケーシング8の内周面に所定の締め代で圧入することにより、外側リング22を内径側に縮径させて減速機2にトラクションを付与することもできる。
【0069】
また、以上の実施形態では、ロータインナ52cの軸方向他方側の端部の内周面にトルクリミッタ7を配置する場合を説明したが、トルクリミッタ7の配設位置は特に限定されず、ロータインナ52cの内周面と駆動源出力軸6の外周面との間の隙間内で任意の位置に配置することができる。例えばロータインナ52cの軸方向一方側の端部の内周面にトルクリミッタ7を配置することもできる。
【0070】
また、以上の説明では、モータ部5としてラジアルギャップ型の電動モータを例示したが、任意の構成のモータを採用することができる。例えば、ケーシングに固定されたステータと、ステータの軸方向内側に隙間をもって対向するように配置されたロータとを備えるアキシャルギャップ型の電動モータであってもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、前記実施形態では、位置検出構造150のパルサーリング151を、ステータ51のコイル51cの一方(
図1では、反最終出力軸側、
図8及び
図9では反運動変換機構側)の軸方向端部の内径側において軸方向でオーバーラップさせたものであったが、位置検出構造150のパルサーリング151を、ステータ51のコイル51cの他方(
図1では、最終出力軸側、
図8及び
図9では運動変換機構側)の軸方向端部の内径側において軸方向でオーバーラップさせるようにしてもよい。
【0072】
また、各実施形態では、パルサーリング151の全体をステータ51のコイル51cにオーバーラップさせていないが、パルサーリング151の全体をオーバーラップさせるようにしてもよい。なお、検出用センサを構成するホールICの数としては3個に限るものではない。また、第1の実施形態の電動アクチュエータの位置検出構造を、第2の実施形態の電動アクチュエータの位置検出構造に置き換えても、第2の実施形態の電動アクチュエータの位置検出構造を、第1の実施形態の電動アクチュエータの位置検出構造に置き換えてもよい。