特許第6815854号(P6815854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 現代自動車株式会社の特許一覧

特許6815854回生制動の協調制御時における制動力の制御方法
<>
  • 特許6815854-回生制動の協調制御時における制動力の制御方法 図000002
  • 特許6815854-回生制動の協調制御時における制動力の制御方法 図000003
  • 特許6815854-回生制動の協調制御時における制動力の制御方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815854
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】回生制動の協調制御時における制動力の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20210107BHJP
   B60T 8/1761 20060101ALI20210107BHJP
   B60L 7/24 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   B60T8/17 C
   B60T8/1761
   B60T8/17 B
   B60L7/24 D
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-235170(P2016-235170)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-52477(P2018-52477A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年6月27日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0122827
(32)【優先日】2016年9月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ガブ、ベ
(72)【発明者】
【氏名】シム、サン、ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジェ、イル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン、ピル
【審査官】 的場 眞夢
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0167527(US,A1)
【文献】 特開2003−284202(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/048660(WO,A1)
【文献】 特開2014−196033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
B60T 7/12−8/1769
8/32−8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
惰行走行中に制動するとき、基準減速度まで前輪と後輪のうち1つ以上に対する回生制動力が発生するように前輪と後輪の制動力を配分し、後輪の制動力を後輪の制限制動力まで配分する第1段階と、
前記基準減速度以上では所定の制動力の配分比により前輪と後輪の制動力を配分する第2段階と、
を含み、
前記基準減速度は、同時に発生する惰行回生制動力と後輪の回生制動力を合算した後輪の総制動力と前輪の総制動力が一定の比率で発生する時点の減速度であることを特徴とする回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項2】
前記第1段階では、制動初期に後輪の回生制動力だけ増加するように制御され、前記後輪の回生制動力と惰行回生制動力で構成された後輪の制動力が後輪の制限制動力まで増加するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項3】
前記第1段階では、後輪の制動力が後輪の制限制動力に到達すると、後輪の制動力は後輪の制限制動力により維持されるように制御されると共に、前記基準減速度まで前輪の制動力が増加するように制御されることを特徴とする請求項2に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項4】
前記第1段階では、前輪に配分される制動力は、先ず前輪の回生制動力だけ前輪の最大回生制動力まで増加するように制御された後、前記基準減速度まで前輪の摩擦制動力が増加するように制御されることを特徴とする請求項3に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項5】
前記第1段階では、後輪の制動力は惰行回生制動力により維持されるように制御され、前記基準減速度まで前輪の制動力だけ増加するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項6】
前記第1段階では、前輪に配分される制動力は、先ず前輪の回生制動力だけ増加するように制御された後、前輪の摩擦制動力を増加するように制御されることを特徴とする請求項5に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項7】
前記第1段階の後輪の制限制動力は、惰行回生制動力と同じ値を有することを特徴とする請求項5に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項8】
前記第1段階で、制動初期の後輪の制動力は惰行回生制動力により維持されるように制御され、前記基準減速度よりも小さい値を有する第1減速度まで前輪の回生制動力だけ増加するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項9】
前記第1減速度から第2減速度までは後輪の制動力だけ増加するように制御され、前記第2減速度は前記第1減速度よりも大きく、かつ前記基準減速度よりも小さい値を持つことを特徴とする請求項8に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項10】
前記第1減速度から前記第2減速度まで前輪に配分される制動力は、前輪の回生制動力だけ配分されて前輪の最大回生制動力により維持されることを特徴とする請求項9に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項11】
前記第2減速度から前記基準減速度まで、前輪の回生制動力は前輪の最大回生制動力により維持され、前輪の摩擦制動力だけ増加するように制御されることを特徴とする請求項10に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項12】
前記第1減速度から前記第2減速度まで後輪に配分される制動力は、後輪の回生制動力だけ増加するように制御され、前記後輪の回生制動力と惰行回生制動力で構成された後輪の制動力が後輪の制限制動力まで増加するように制御されることを特徴とする請求項9に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項13】
前記第2減速度で後輪の制動力が後輪の制限制動力に到達すると、前記基準減速度まで後輪の制動力は後輪の制限制動力により維持されることを特徴とする請求項12に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項14】
前記第2段階では、後輪に配分される制動力は、後輪の回生制動力を後輪の最大回生制動力まで増加させた後、後輪の回生制動力は、後輪の最大回生制動力により維持され、後輪の摩擦制動力だけ増加するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項15】
前記第2段階では、前輪に配分される制動力は、前輪の回生制動力が前輪の最大回生制動力により維持され、前輪の摩擦制動力だけ増加するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【請求項16】
前記第2段階では、前輪の制動力が「T*C/(C+C)+T*C/(C+C)」の値で配分され、後輪の制動力が「T*C/(C+C)−T*C/(C+C)+T」の値で配分されることを特徴とする(式中、Tは運転者の要求制動力、Tは惰行回生制動力、C/(C+C)は配分線2の制動力の配分比による前輪の制動力の比率、C/(C+C)は配分線2の制動力の配分比による後輪の制動力の比率である)請求項1に記載の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生制動の協調制御時における制動力の制御方法に関するもので、より詳細には、後輪で回生制動を実施できる環境車両での回生制動の協調制御時における惰行走行によって発生した回生制動力を考慮して前輪と後輪の制動力を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、前輪と後輪の両方ともで回生制動を実施する環境車両(ハイブリット自動車、電気車、燃料電池自動車など)での回生制動の協調制御は、既存の前輪だけで回生制動を実施した車両とは異なる。
【0003】
前輪の回生制動だけ実施する環境車両は、前輪に駆動モーターが配置され、駆動モーターでバッテリーを充電してエネルギーを回収するときに回生制動力が発生するようになり、前輪にだけこの制動力が作用する。この際、前輪の回生制動力によって前輪の全体制動力が大きくなっても車両にスピンが発生する可能性は低いため、エネルギーを最大に回収するために回生制動力の発生量をできるだけ大きくすることができる。そして、油圧制動力(摩擦制動力)の協調制御のためのシステムも前輪の回生制動力だけ考慮して構成される。
【0004】
ところで、前輪と後輪の両方ともで回生制動を実施できる環境車両は、後輪にも回生制動力が印加されるため、エネルギーを多く回収するために後輪の回生制動力を増加させる場合、後輪が前輪よりも先にロック(lock)されて車両にスピンが発生する可能性が大きくなるため、前輪を回生制動する車両のように回生制動力を大きくすることに限界があった。
【0005】
また、アクセルペダル及びブレーキペダルのオフ時(すなわち、非加速及び非制動の惰行走行時)に発生する回生制動力が存在する場合、車両にはアクセルペダル及びブレーキペダルのオフ時の回生制動力とブレーキ制御機で制御する回生制動力及び摩擦制動力の3つの制動力が同時に作用するようになる。
【0006】
以下、惰行走行によって発生する回生制動力を惰行回生制動力という。
【0007】
この際、ブレーキ制御機で惰行回生制動力を含まずに前輪と後輪の制動力を配分すると、実際には惰行回生制動力が含まれることによって、後輪の制動力が大きくなって前輪よりも後輪のロック(lock)が先に発生する可能性が高まるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、後輪または前輪と後輪の両方ともで回生制動を実施できる環境車両において、後輪の惰行回生制動力を含む車両全体の制動力の配分を考慮して前輪と後輪の制動力を制御することによって、後輪が前輪よりも先にロックされることを防止して車両制動の安定性を向上すると共に後輪の回生制動力を最大に使用できるようにする回生制動の協調制御時における制動力の制御方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、惰行走行中に制動するとき、基準減速度まで前輪と後輪のうち1つ以上に対する回生制動力が発生するように前輪と後輪の制動力を配分し、後輪の制動力を後輪の制限制動力まで配分する第1段階と、前記基準減速度以上では所定の制動力の配分比により前輪と後輪の制動力を配分する第2段階と、を含むことを特徴とする回生制動の協調制御時における制動力の制御方法を提供する。
【0010】
本発明の一実施例によれば、前記第1段階では、制動初期に後輪の回生制動力だけ増加するように制御され、前記後輪の回生制動力と惰行回生制動力で構成された後輪の制動力が後輪の制限制動力まで増加するように制御される。そして、後輪の制動力が後輪の制限制動力に到達すると、後輪の制動力は後輪の制限制動力により維持されるように制御されると共に、前記基準減速度まで前輪の制動力が増加するように制御される。また、前輪に配分される制動力は、先ず前輪の回生制動力だけ前輪の最大回生制動力まで増加するように制御された後、前記基準減速度まで前輪の摩擦制動力が増加するように制御される。
【0011】
本発明の他の実施例によれば、前記第1段階では、後輪の制限制動力が惰行回生制動力と同じ値を有するため、後輪の制動力は惰行回生制動力により維持されるように制御され、前記基準減速度まで前輪の制動力だけ増加するように制御される。この際、前輪に配分される制動力は、先ず前輪の回生制動力だけ前輪の最大回生制動力まで増加するように制御された後、前輪の摩擦制動力を増加するように制御される。
【0012】
本発明のまた他の実施例によれば、前記第1段階で、制動初期の後輪の制動力は惰行回生制動力により維持されるように制御され、前記基準減速度よりも小さい値を有する第1減速度まで前輪の回生制動力だけ増加するように制御される。そして、前記第1減速度から第2減速度までは後輪の制動力だけ増加するように制御され、前記第2減速度は前記第1減速度よりも大きく、かつ前記基準減速度よりも小さい値を持つ。また、前記第1減速度から前記第2減速度まで前輪に配分される制動力は、前輪の回生制動力だけ配分されて前輪の最大回生制動力により維持されるように制御される。また、前記第2減速度から前記基準減速度まで、前輪の回生制動力は前輪の最大回生制動力により維持され、前記基準減速度まで前輪の摩擦制動力だけ増加するように制御される。また、前記第1減速度から前記第2減速度まで後輪に配分される制動力は、後輪の回生制動力だけ増加するように制御され、前記後輪の回生制動力と惰行回生制動力で構成された後輪の制動力が後輪の制限制動力まで増加するように制御される。さらに、前記第2減速度で後輪の制動力が後輪の制限制動力に到達すると、第2減速度から前記基準減速度まで後輪の制動力は後輪の制限制動力により維持されるように制御される。
【0013】
また、本発明の実施例によれば、前記第2段階では、前輪の制動力が「T*C/(C+C)+T*C/(C+C)」の値で配分されて、後輪の制動力が「T*C/(C+C)−T*C/(C+C)+T」の値で配分されるが、ここで、Tはブレーキペダルの操作による運転者の要求制動力、Tは惰行回生制動力、C/(C+C)は制動システムにより所定の諸元によって決定される配分線2の制動力の配分比による前輪の制動力の比率、C/(C+C)は制動システムにより所定の諸元によって決定される配分線2の制動力の配分比による後輪の制動力の比率である。
【0014】
また、前記第2段階では、後輪に配分される制動力は、後輪の回生制動力を後輪の最大回生制動力まで増加させた後、後輪の回生制動力は、後輪の最大回生制動力により維持され、後輪の摩擦制動力だけ増加するように制御され、前輪に配分される制動力は、前輪の回生制動力が前輪の最大回生制動力により維持され、前輪の摩擦制動力だけ増加するように制御される。
【発明の効果】
【0015】
本発明による回生制動の協調制御時における制動力の制御方法によれば、後輪または前輪と後輪の両方ともで回生制動を実施する環境車両で、前輪と後輪の制動力を配分することにおいて、惰行回生制動力を含む車両全体の制動力の配分を考慮して前輪と後輪の制動力を制御することによって、後輪が前輪よりも先にロックされることを防止して車両制動の安定性を確保すると共に、後輪の回生制動力を最大に使用できるようにして回生制動によるエネルギーの回収量を増大させて燃費の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例による制動力の制御方法を示す概念図である。
図2】本発明の他の実施例による制動力の制御方法を示す概念図である。
図3】本発明のまた他の実施例による制動力の制御方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、後輪で回生制動を実施する環境車両または前輪と後輪の両方ともで回生制動を実施する環境車両(ハイブリット自動車、電気車、燃料電池自動車など)の制動安定性及び性能、そして燃費の向上を図ることができる、新たな形態の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法に関する。
【0018】
本発明による回生制動の協調制御時における制動力の制御方法は、後輪または前輪と後輪の両方ともで回生制動を実施する環境車両で、前輪と後輪の制動力を独立的に制御できるブレーキシステムを基盤として、惰行走行時に発生する回生制動(coast regen)による制動力を含む車両全体の制動力を考慮する制動力の制御方法であって、制動安定性を確保すると共に回生制動によるエネルギーの回収率を最大化して燃費を向上することができる。
【0019】
このような本発明の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法を実現するためのブレーキシステムは、前輪と後輪の摩擦制動力を独立的に制御でき、回生制動力と摩擦制動力を連動させて制御し、ブレーキペダルの操作と制動力の発生が独立している(independent)システム(例えば、ペダルシミュレーターなどを用いて具体化)であって、摩擦制動力と回生制動力を制御するためのブレーキ制御機を含んで構成される。
【0020】
また、前記ブレーキシステムは、回生制動発生量(惰行走行時に発生する回生制動力の発生量)の情報が得られるように構成される。例えば、前記ブレーキシステムは、所定の回生制動発生量の情報を格納しているか、または回生制動発生量の情報を受信できるシステムをさらに含むように構成することができる。
【0021】
本明細書では、このようなブレーキシステムと共に、回生制動発生量を制御する車両制御機を基盤として、前輪と後輪の回生制動力及び摩擦制動力を適切に分配する制動力の配分方式を含む本発明の回生制動の協調制御時における制動力の制御方法を説明する。
【0022】
さらに、本明細書では、添付している図面の制動線図をもって本発明による回生制動の協調制御時における制動力の制御方法の実施例を説明するが、特許請求の範囲に記載された発明は、これら実施例によって制限的に解釈してはいけなく、本発明の要旨が含まれている様々な実施例を含むように解釈しなければならない。
【0023】
また、前記ブレーキシステムは、前輪よりも後輪のロック(lock)が先に発生するようになることを抑制する範囲内で、回生制動力を極大化させるように設定された制動線図により前輪と後輪の制動力を配分する。
【0024】
したがって、本発明の好ましい実施例によれば、惰行走行中に制動するとき、前輪と後輪のうち1つ以上に対する回生制動力が発生するように前輪と後輪の制動力を配分するが、基準減速度を設定し、設定した基準減速度以下の制動領域までは、すなわち車両の減速度が基準減速度に到達するまでは、前輪よりも後輪が先にロックされることを低減できるように後輪の制動力を後輪の制限制動力まで配分し、前記基準減速度以上の制動領域では所定の制動力の配分比により前輪と後輪の制動力を配分する。
【0025】
以下、図面を参照して本発明による回生制動の協調制御時における制動力の制御方法を詳細に説明する。
【0026】
図1から図3は上述したブレーキシステムを用いた本発明の相異なる実施例に対する制動線図であって、回生制動を含む車両単位の全体制動力の配分を示し、前輪と後輪の制動力の配分関係を具体的に示している。
【0027】
通常的なブレーキ制御機では、惰行走行によって発生する回生制動力を考慮せず、図1から図3の配分線1(制動力Tを基準点とする通常の制動力の配分線)を基準として前輪と後輪の制動力の配分を行う。
【0028】
本発明によるブレーキ制御機では、後輪で回生制動を行う車両または前輪と後輪の両方ともで回生制動を行う車両で、摩擦制動力と回生制動力の協調制御による制動力の制御時、追加的に惰行走行中に発生した回生制動力を考慮して車両全体の制動力を制御するが、本発明の実施例によれば、図1から図3の実際の制動配分線1及び配分線2により前輪と後輪の制動力の配分を行って車両全体の制動力を制御する。
【0029】
前記配分線2は、惰行回生制動力(惰行走行によって発生した回生制動力)を含む車両全体の制動力に対する制動力を配分するための制動線図であって、車両の全体制動力を既存の配分線1と同じ傾きで前輪と後輪の制動力を配分する線図である。
【0030】
前記配分線2の制動力の配分比は、制動力を発生するためのブレーキユニットの設計的な要素を考慮して車両ごとに適切に設定されることができる。
【0031】
そして、前記実際の制動配分線は、基準減速度(S)を基点として、基準減速度以上の制動領域では配分線2と同じ制動力の配分比を有し、基準減速度(S)以下の制動領域では配分線2と異なる制動力の配分比を有する制動線図であって、惰行走行によって後輪に配分される回生制動力を考慮して、前記基準減速度(S)以下の制動領域では、配分線2よりも後輪の制動力の比率を高く設定する。
【0032】
具体的には、前記実際の制動配分線は、惰行走行によって発生する回生制動力を含む車両全体の制動力を配分するための制動線図であって、基準減速度(S)以上の制動領域では配分線2と同じ制動力の配分比を持つが、基準減速度(S)以下の制動領域では配分線2の制動力の配分比よりも相対的に後輪の制動力の比率を高め、かつ一定範囲内に制限をおくことによって、後輪の制動力が大きくなって後輪が前輪よりも先にロックされる場合を低減することで、制動安定性を向上すると共に、後輪の回生制動力をできるだけ多く使用して燃費を向上させることができる。
【0033】
また、前記基準減速度(S)は、実際の制動配分線と配分線2が交差する地点の減速度値であって、惰行回生制動力が後輪に配分されることを考慮して、前輪よりも後輪のロック(lock)が先に発生することを低減して制動安定性を向上すると共に後輪の回生制動力をできるだけ多く使用できるように設定される。
【0034】
具体的に、前記基準減速度(S)は、同時に発生する惰行回生制動力と後輪の回生制動力を合算した後輪の総制動力と前輪の総制動力が一定の比率で発生する時点の減速度である。
【0035】
図1を参照して本発明の好ましい実施例を説明すると、運転者が走行中にアクセルペダルを解除して惰行走行する場合、ブレーキ制御機の上位制御機となる車両制御機によって発生する回生制動(すなわち、惰行走行によって行われる回生制動)による車両減速度は制動力がTに到達するまでその大きさ値(減速度の大きさ値)が増加して発生し、この際、ブレーキ制御機では前輪と後輪の摩擦制動力及び回生制動力に対する制御をしない。
【0036】
前記車両制御機では、アクセルペダルのオフ信号及びブレーキペダルのオフ信号が検出される惰行走行時の回生制動によって発生する制動力Tを決定する。
【0037】
ここで、惰行走行によって発生する回生制動力(後輪に回生制動力として発生)Tと、基準減速度(S)以下の制動領域で後輪の制動力を制限するための後輪制限(limit)制動力Tの値は状況によって変更されることができる。
【0038】
前記後輪の制限制動力(T)は、前輪よりも後輪のロック(lock)が先に発生する状況を抑制するために、後輪の最大回生制動力よりも小さい値に設定される。
【0039】
そして、惰行回生制動力の決定は車両制御機でなく、ブレーキ制御機で行うことも可能である。
【0040】
運転者がアクセルペダルを解除し、惰行走行する途中でブレーキペダルを踏むと、ブレーキ制御機では実際の制動配分線により前輪と後輪の制動力を配分する。
【0041】
この際、実際の制動配分線の制動力の配分比により、図1の「1」区間では後輪の回生制動力だけ増加し、「2」区間では後輪の回生制動力は変動せず、前輪の制動力だけ増加し、「3」区間では前輪と後輪の制動力が同時に増加する。
【0042】
具体的には、前記「1」区間で後輪の回生制動力は、後輪の制限制動力まで増加するように制御され、前記「2」区間で後輪の回生制動力は後輪の制限制動力に維持され、前輪の制動力を増加させて運転者の要求制動力(T)を満足するように前輪に配分される制動力が制御される。
【0043】
すなわち、制動初期の「1」区間で後輪の回生制動力だけ後輪の制限制動力まで増加させ、その後、前輪の制動力が発生するように前輪と後輪の制動力の配分が行われるが、この際、後輪の回生制動力は後輪の制限制動力で維持するように制御されると共に前輪の制動力が増加するように制御されることで、運転者の要求制動力(T)を満足することができる。そして、前輪に配分される制動力は、前輪の回生制動力が前輪の最大回生制動力まで増加するように制御された後、前輪の摩擦制動力が増加するように制御される。
【0044】
前記「1」区間で後輪の制動力は、後輪の回生制動力と惰行走行によって一定の値で発生した回生制動力だけで構成されるため、後輪の回生制動力が増加するように配分されることによって後輪の制限制動力まで到達するようになる。
【0045】
このようにブレーキ制御機は、実際の制動配分線により配分された前輪と後輪のそれぞれの制動力の範囲内で制動によるエネルギーの回収量を極大化するために、回生制動力を最大に使用するように制動力を配分する。
【0046】
一方、ブレーキ制御機を基準として回生制動力を最大に使用するための制動力の配分を察し見ると、言い換えれば車両全体の制動力のうち、惰行走行による制動力を除いて前輪と後輪の回生制動力を最大に使用するための制動力の配分を察し見ると、図1で「1」区間が終わる減速度時点の制動力はT−Tになり、「2」区間が終わる減速度時点の制動力はT−Tになる。
【0047】
具体的には、「1」区間が終わる時点で車両の全体制動力はTで、この際、惰行回生制動力(惰行走行による後輪の回生制動力)がTであり、運転者の制動要求による後輪の回生制動力がT−Tであり、それに伴って惰行回生制動力Tと運転者の制動要求による後輪の回生制動力T−Tを合算した値により車両全体の制動力が決定される。
【0048】
そして、「2」区間が終わる時点で車両の全体制動力はTで、この際、惰行回生制動力がTであり、運転者の制動要求による後輪の回生制動力がT−Tで、運転者の制動要求による前輪の回生制動力がT−Tで、運転者の制動要求による前輪の摩擦制動力がT−Tであり、それによって、惰行回生制動力Tと運転者の制動要求による前輪と後輪の制動力T−Tを合算した値により車両全体の制動力が決定される。
【0049】
したがって、「1」区間が終わる時点の運転者の要求制動力(T)はT−Tになり、「2」区間が終わる時点の運転者の要求制動力(T)はT−Tになる。
【0050】
ここで、ブレーキ制御機によって決定される前輪と後輪の摩擦制動力及び回生制動力を基準として、言い換えれば惰行走行によって発生する回生制動力Tを除くように制動力Tを基準点として前輪と後輪の制動力及び摩擦制動力と回生制動力の配分を各区間別に説明すれば次の通りである。
【0051】
(「1」区間:T≦T−T
図1に示した「1」、「2」、「3」区間は、惰行走行中に運転者がブレーキペダルを踏む制動状況で制動力の配分が行われる区間であって、「1」区間が始まる時点は、運転者がアクセルペダルを解除し、走行中にブレーキペダルを踏んで制動を始める時点であり、「1」区間が終わる時点まで後輪の制動力(正確には後輪の回生制動力)が運転者の要求制動力(T)を満たすように増加する。
【0052】
したがって、この際、前輪の制動力は「0」であり、後輪の制動力はTとなる。
【0053】
ここで、後輪の回生制動力は、後輪に先にロック(LOCK)が発生することを抑制するための後輪の制限制動力(後輪の制動力制限値)を考慮して増加するように制御される。
【0054】
(「2」区間:T−T<T≦T−T
「1」区間が終わる時点で「2」区間が始まり、「2」区間で後輪の制動力は「1」区間が終わる時点での後輪の回生制動力(T−T)により維持され、前輪の制動力は運転者の要求制動力(T)を満足するように増加するようになる。
【0055】
前記運転者の要求制動力(T)は、ブレーキペダルの踏量に比例して決定され、制動力Tを基準点とする。
【0056】
したがって、この際、前輪の制動力はT−(T−T)になり、後輪の制動力はT−Tになる。
【0057】
ここで、回生制動力を極大化するために、全体制動力がTとなるまでは運転者の要求制動力(T)を満足するように前輪の回生制動力だけ増加させ、その後、前輪の摩擦制動力を増加させて運転者の要求制動力(T)を満足する前輪の制動力の配分を行う。
【0058】
(「3」区間:T>T−T
「3」区間では前輪の制動力だけでなく後輪の制動力が同時に増加して実際の制動配分線及び配分線2の制動力の配分比による前輪と後輪の制動力が配分される。
【0059】
図1に示すように、車両減速度が基準減速度(S)に到達した以後からは、前輪の摩擦制動力の増加と共に、後輪の回生制動力が再び増加し始め、後輪の回生制動力が後輪の最大回生制動力(T−T)に到達すると、後輪の摩擦制動力が発生するように制動力の配分が行われる。
【0060】
言い換えれば、後輪の回生制動力と惰行回生制動力の和がTに到達すると、後輪の回生制動力の発生を制限すると共に後輪の摩擦制動力が増加して運転者の要求制動力(T)を満足するように制動力の配分が制御される。
【0061】
このような「3」区間で、前輪に配分される制動力は下記一般式(1)の値により制御され、後輪に配分される制動力は下記一般式(2)の値により制御される。
前輪の制動力=T*C/(C+C)+T*C/(C+C) (1)
後輪の制動力=T*C/(C+C)−T*C/(C+C) (2)
【0062】
ここで、Tは運転者の要求制動力、Tは惰行回生制動力、Cは前輪の制動力ファクター(FACTOR)、Cは後輪の制動力ファクター、C/(C+C)は配分線2の制動力の配分比による前輪の制動力の比率、C/(C+C)は配分線2の制動力の配分比による後輪の制動力の比率である。
【0063】
前記前輪の制動力ファクター(C)及び後輪の制動力ファクター(C)は、それぞれ前輪の制動力を発生するためのブレーキユニットと後輪の制動力を発生するためのブレーキユニットの設計的な要素を考慮して車両ごとに適切に設定されることができる。
【0064】
そして、前記一般式(2)の値により制御される後輪の制動力は、惰行走行によって発生した回生制動力を含む車両全体の制動力に対して後輪に配分される制動力である。
【0065】
結果的に、車両全体の制動力という側面で前輪と後輪の制動力の配分を説明すると、制動初期に後輪の回生制動力だけ増加するように制御され、前記後輪の回生制動力と惰行走行によって発生した回生制動力で構成された後輪の制動力が後輪の制限制動力まで増加するように配分される。
【0066】
そして、後輪の制動力が後輪の制限制動力に到達すると、後輪の制動力は、後輪の制限制動力により維持されるように制御されると共に、基準減速度(S)まで前輪の制動力が増加するように制御される。
【0067】
このように前輪に配分される制動力は、先ず前輪の回生制動力だけ前輪の最大回生制動力まで増加するように制御され、前輪の回生制動力が前輪の最大回生制動力に到達した後に基準減速度(S)まで前輪の摩擦制動力が増加するように制御される。
【0068】
そして、基準減速度(S)以上の制動領域では、実際の制動配分線の制動力の配分比により前輪と後輪の制動力の配分が行われるが、前輪に配分される制動力がT*C/(C+C)+T*C/(C+C)の値により制御され、後輪に配分される制動力がT*C/(C+C)−T*C/(C+C)+Tの値により制御される。
【0069】
この際、後輪に配分される制動力は、後輪の回生制動力を後輪の最大回生制動力まで増加させた後、後輪の回生制動力は後輪の最大回生制動力で維持され、後輪の摩擦制動力が増加するように制御される。
【0070】
そして、前輪に配分される制動力は、前輪の回生制動力が前輪の最大回生制動力により維持され、前輪の摩擦制動力が増加するように制御される。
【0071】
一方、前輪と後輪の制動力の配分時に回生制動力が制限または禁止される場合には次のように2種類に分けて制動力の配分が行われる。
【0072】
第1に、運転者の要求制動力(T)≦後輪の最大回生制動力(T−T)の場合は、後輪の摩擦制動力には「0」が配分され、前輪の摩擦制動力には運転者の要求制動力(T)で、惰行走行によって発生する回生制動力(T)を差し引いた値(T−T)が配分される。
【0073】
結果的に、車両全体の制動力は、惰行走行によって発生する回生制動力と前輪の摩擦制動力の和となる。
【0074】
第2に、運転者の要求制動力(T)>後輪の最大回生制動力(T−T)の場合は、後輪の摩擦制動力と前輪の摩擦制動力は次のように配分される。
後輪の摩擦制動力=[T−(T−T)]*C/(C+C
前輪の摩擦制動力=T−T+[T−(T−T)]*C/(C+C
【0075】
次に、図2を参照して本発明の他の実施例による制動力の配分方式を説明する。
【0076】
回生制動によるエネルギーの回収率の低下を引き起こしても車両制動の安定性を確保しようとする場合、図2に示した制動線図のように前輪と後輪の制動力及び摩擦制動力と回生制動力の配分を制御することができる。
【0077】
運転者がアクセルペダルを解除して惰行走行する場合、惰行回生制動力が車両制御機によって制御されて発生するようになる。
【0078】
この際、惰行回生制動力Tの値は走行状況によって変更されることができる。
【0079】
このように惰行走行中に運転者がブレーキペダルを踏むと、前記Tを基準点とする減速度軸を基準としてブレーキ制御機では次のように前輪と後輪の制動力を配分する。
【0080】
先ず、ブレーキ制御機は、「1」区間では図2に示された実際の制動配分線の制動力の配分比により前輪と後輪の制動力を配分し、「2」区間では配分線2の制動力の配分比により前輪と後輪の制動力を配分する。
【0081】
前記「1」区間と「2」区間は、基準減速度(S)を基点として分けられ、前記配分線2は「2」区間で実際の制動配分線の制動力の配分比と同じ値の制動力の配分比を持つ。
【0082】
具体的に、前記「1」区間で後輪の制動力は惰行走行によって発生する回生制動力Tで一定に維持され、前輪の制動力だけ運転者の要求制動力(T)を満足するように車両減速度が基準減速度(S)に到達するまで増加する。この際、前輪の回生制動力は、前輪の最大回生制動力まで増加するように制御された後、前輪の摩擦制動力が増加するように制御される。
【0083】
また、前記「1」区間では回生制動力の使用量の増大よりは制動安定性のために制動力の配分を優先することにより、回生制動力Tを除いては別途の後輪の制動力が配分されることはない。
【0084】
すなわち、前記「1」区間で後輪の制限制動力は、惰行走行によって発生した回生制動力Tと同じ値を持つ。
【0085】
前記「2」区間では、前輪と後輪の制動力が両方とも増加するように制御されるが、この際、後輪の制動力は、後輪の回生制動力が後輪の最大回生制動力まで増加するようにし、その後、後輪の回生制動力は、後輪の最大回生制動力により維持され、後輪の摩擦制動力だけ増加するように制御される。
【0086】
そして、前輪の制動力は、前輪の回生制動力が前輪の最大回生制動力により維持され、前輪の摩擦制動力だけ増加するように制御される。
【0087】
このような前輪と後輪の制動力及び摩擦制動力と回生制動力の配分を各区間別に説明すると次の通りである。
【0088】
車両減速度が基準減速度(S)に到達するまでの区間となる「1」区間のように、運転者の要求制動力(T)がT−T以下の場合、惰行回生制動力Tを含んでいない後輪の制動力には「0」が配分され、前輪の制動力には運転者の要求制動力(T)が配分される。
【0089】
ここで、前記運転者の要求制動力(T)は、ブレーキペダルの踏量に比例して発生し、制動力Tを基準点とする。
【0090】
この際、惰行回生制動力Tを含む車両全体の制動力に対する配分を考慮すると、前記「1」区間で後輪の制動力は惰行回生制動力(T)となり、前輪の制動力は運転者の要求制動力(T)となる。
【0091】
そして、車両減速度が基準減速度(S)に到達した以後の区間となる「2」区間のように、運転者の要求制動力(T)がT−Tを超える場合、前輪の制動力と後輪の制動力はそれぞれ以下のように配分される。
前輪の制動力=T*C/(C+C)+T*C/(C+C
後輪の制動力=T*C/(C+C)−T*C/(C+C
【0092】
ここで、Tは運転者の要求制動力、Tは回生制動による回生制動力、Cは前輪の制動力ファクター(FACTOR)、Cは後輪の制動力ファクター、C/(C+C)は配分線2の制動力の配分比による前輪の制動力の比率、C/(C+C)は配分線2の制動力の配分比による後輪の制動力の比率である。
【0093】
この際、車両全体の制動力という側面で、後輪に配分される制動力は惰行回生制動力Tを含むT*C/(C+C)−T*C/(C+C)+Tの値により制御される。
【0094】
次に、図3を参照して本発明のまた他の実施例による制動力の配分方式を説明する。
【0095】
後輪の回生制動力を可能な範囲内で最大に発生させてエネルギーの回収率を増大すると共に、前輪よりも後輪が先にロックされることを防止するために、後輪の制動力を制限することによって制動安定性を補完しようとする場合、図3に示した制動線図のように前輪と後輪の制動力及び摩擦制動力と回生制動力の配分を制御することができる。
【0096】
上述した図1に示した制動線図によって制動力を配分する場合にも上記効果を得ることができる。
【0097】
特に、図3に示した制動線図によれば、前輪の回生制動力を後輪の回生制動力よりも先に発生させ、前輪よりも後輪が先にロックされることを防止することで、車両制動の安定性を確保する。
【0098】
運転者がアクセルペダルを解除して惰行走行する場合、惰行回生制動力(T)が車両制御機によって制御されて発生する。
【0099】
この際、惰行走行によって後輪に配分される回生制動力Tと後輪の制動力を制限するための後輪の制限制動力Tの値は走行状況によって変更されることができる。
【0100】
このように惰行走行中に運転者がブレーキペダルを踏むと、前記Tを基準点(あるいは開始点)としてブレーキ制御機では次のように前輪と後輪の制動力を配分する。
【0101】
先ず、ブレーキ制御機は、基準減速度(S)以下の「1」、「2」、「3」区間では図3に示された実際の制動配分線の制動力の配分比により前輪と後輪の制動力を配分し、基準減速度(S)以後の「4」区間では配分線2の制動力の配分比により前輪と後輪の制動力を配分する。
【0102】
前記「1」、「2」、「3」区間と「4」区間は、基準減速度(S)を基点として分けられ、「4」区間で前記配分線2は実際の制動配分線の制動力の配分比と同じ値の制動力の配分比を持つ。
【0103】
具体的には、制動初期の「1」区間で後輪の制動力は、車両減速度が第1減速度(S1)に到達するまで惰行回生制動力Tで維持され、前輪の制動力だけ運転者の要求制動力(T)を満足するように増加する。この際、前輪の制動力は、前輪の回生制動力だけ増加するように配分され、前輪の摩擦制動力は配分されない。
【0104】
このように制動が始まる「1」区間で前輪の回生制動力を後輪の回生制動力よりも先に発生させることによって、前輪よりも後輪が先にロックされることを防止して車両制動の安定性を確保することができる。
【0105】
車両減速度が第1減速度(S1)以上で、かつ第2減速度(S2)未満である前記「2」区間では、後輪の制動力が増加するように制御されるが、この際、後輪に配分される制動力は、後輪の回生制動力だけ第2減速度(S2)まで増加するように制御され、後輪の摩擦制動力は配分されない。そして、前輪に配分される制動力は、前輪の回生制動力だけ発生して「1」区間で最大に増加した前輪の最大回生制動力により維持されるように制御され、前輪の摩擦制動力は配分されない。
【0106】
この際、後輪の制動力は、前記第2減速度(S2)まで増加した後輪の回生制動力(T−T)と惰行回生制動力(T)を合算した値(T)となる。
【0107】
すなわち、前記「2」区間で後輪の制動力は、後輪の制限制動力Tまで増加するように制御される。
【0108】
車両減速度が第2減速度(S2)以上で、かつ基準減速度(S)未満である前記「3」区間では、後輪の制動力は、後輪の制限制動力Tの値で維持されるように制御され、基準減速度(S)まで運転者の要求制動力Tを満足するように前輪の制動力だけ増加するように制御される。この際、前輪の制動力は、前輪の摩擦制動力だけ第2減速度(S2)から基準減速度(S)まで増加するように制御され、前輪の回生制動力は、「2」区間に続いて前輪の最大回生制動力により維持されるように制御される。
【0109】
ここで、第2減速度(S2)は、基準減速度(S)よりも小さい値を有する減速度値で、第1減速度(S1)は、第2減速度(S2)よりも小さい値を有する減速度値である。
【0110】
そして、車両減速度が基準減速度(S)以上の前記「4」区間では、前輪と後輪の制動力が同時に増加するように制御される。具体的には、後輪に配分される制動力は、後輪の回生制動力が後輪の最大回生制動力まで増加するように制御され、後輪の回生制動力が後輪の最大回生制動力に到達すると、後輪の摩擦制動力が増加するように制御されて配分線2及び実際の制動配分線の制動力の配分比を満足する。そして、前輪に配分される制動力は、前輪の回生制動力が前輪の最大回生制動力により維持されるように制御され、「3」区間に続き前輪の摩擦制動力だけ増加するように制御されて配分線2及び実際の制動配分線の制動力の配分比を満足する。
【0111】
この際、惰行回生制動力Tを含む車両全体の制動力に対する配分を考慮すると、前記「4」区間で後輪の制動力は、配分線2及び実際の制動配分線の制動力の配分比により配分された後輪の回生制動力と後輪の摩擦制動力及び前記Tを全て合算した値となる。
【0112】
具体的には、前記「4」区間で前輪の制動力は「T*C/(C+C)+T*C/(C+C)」の値に配分され、後輪の制動力は「T*C/(C+C)−T*C/(C+C)+T」の値に配分される。
【0113】
さらに、摩擦制動力と回生制動力の配分は、回生制動によるエネルギーの回収量を極大化するために前輪と後輪の回生制動力をそれぞれ最大値まで配分し、それから摩擦制動力を配分することで、運転者の要求制動力(T)を満足する制動力の配分が行われる。
【0114】
本発明では、後輪で回生制動を実施する環境車両または前輪と後輪の両方ともで回生制動を実施する環境車両において、前輪と後輪の制動力を配分する場合、惰行走行によって発生する回生制動力を含む車両全体の制動力の配分を考慮して前輪と後輪の制動力を制御することで、後輪が前輪よりも先にロックされることを低減させて車両制動の安定性を向上すると共に後輪の回生制動力を最大に使用するようにして燃費を向上させることができる。
【0115】
一方、実際車両で発生する回生制動力は車速により変われるために、上述した実施例のようにブレーキ制御機によって決定される回生制動力と差があることがある。
【0116】
したがって、走行中の車両で実際に発生可能な回生制動力、すなわち、回生制動許容量は、後輪の制動力と後輪の回生制動の最大トルクマップによって決定される後輪の回生制動の最大トルク(すなわち、後輪の回生制動力の最大値)のうち、さらに小さい値が後輪の回生制動許容量となり、前輪の制動力と前輪の回生制動の最大トルクマップによって決定される前輪の回生制動の最大トルク(すなわち、前輪の回生制動力の最大値)のうち、さらに小さい値が前輪の回生制動許容量となる。
【0117】
この場合、車両で実際に発生する回生制動力(すなわち、回生制動許容量)がブレーキ制御機によって配分された前輪の制動力及び/または後輪の制動力よりも小さい場合、足りない制動力はそれぞれ前輪の摩擦制動力と後輪の摩擦制動力が補充するように制御される。
【0118】
前記後輪の回生制動の最大トルクマップ及び前輪の回生制動の最大トルクマップは、車速に基づいてそれぞれ後輪の回生制動の最大トルク及び前輪の回生制動の最大トルクを決定するように構築されたもので、言い換えれば、それぞれ車速による後輪/前輪の回生制動の最大トルクを決定できるように構成されてブレーキ制御機に格納される。
【0119】
以上、本発明の実施例に対して詳細に説明したが、本発明の権利範囲は上述した実施例に限定されることはなく、次の特許請求の範囲で定義する本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良も本発明の権利範囲に属する。
図1
図2
図3