特許第6815860号(P6815860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6815860廃炭素繊維強化プラスチックの処理装置及び処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815860
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】廃炭素繊維強化プラスチックの処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20210107BHJP
   B07B 9/00 20060101ALI20210107BHJP
   B07B 7/08 20060101ALI20210107BHJP
   C04B 7/44 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   B09B3/00 303F
   B09B3/00 303L
   B07B9/00 AZAB
   B07B7/08
   C04B7/44
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-253023(P2016-253023)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-103115(P2018-103115A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】中村 充志
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−131463(JP,A)
【文献】 特開2010−126410(JP,A)
【文献】 特開2006−089298(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/078066(WO,A1)
【文献】 特開2014−193788(JP,A)
【文献】 特開2016−132588(JP,A)
【文献】 特許第6036920(JP,B1)
【文献】 特開2016−147437(JP,A)
【文献】 特開2002−59114(JP,A)
【文献】 特開2005−279502(JP,A)
【文献】 特開2005−279501(JP,A)
【文献】 特開2006−347822(JP,A)
【文献】 特開2016−64938(JP,A)
【文献】 特開2001−200276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00− 5/00
B09C 1/00− 1/10
B07B 1/00− 15/00
C04B 2/00− 32/02
40/00− 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃炭素繊維強化プラスチックをセメント焼成装置に供給する供給装置と、
該セメント焼成装置から排出又は抽気された炭素繊維含有ダストを含むガスを前記排出又は抽気された箇所と同温度か、該箇所より高温である前記セメント焼成装置に戻す循環ルートとを備えることを特徴とする廃炭素繊維強化プラスチックの処理装置。
【請求項2】
前記循環ルートは、前記セメント焼成装置のプレヒータの炭素繊維含有ダストを含む排ガスを前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする請求項1に記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理装置。
【請求項3】
前記循環ルートは、前記セメント焼成装置のセメントキルン窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路からの炭素繊維含有ダストを含む抽気ガスを前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする請求項1に記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理装置。
【請求項4】
前記循環ルートは、前記セメント焼成装置から排出又は抽気されたガスから集塵する集塵装置を備え、該集塵装置から排出されたダストを前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理装置。
【請求項5】
前記循環ルートは、前記セメント焼成装置から排出又は抽気されたガスに含まれる炭素繊維含有ダストを分級する分級装置を備え、該分級装置から排出された粗粉を前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理装置。
【請求項6】
前記循環ルートは、前記集塵装置から排出されたダスト又は前記分級装置から排出された粗粉を炭素繊維含有量が多いダストと炭素繊維含有量が少ないダストとに分離する分離装置を備え、該分離装置から排出された炭素繊維含有量が多いダストを前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする請求項4又は5に記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理装置。
【請求項7】
前記集塵装置は、前記セメント焼成装置から排出又は抽気されたガスに含まれるダストを炭素繊維含有量が多いダストと炭素繊維含有量が少ないダストとに分離し、
前記循環ルートは、該集塵装置から排出された炭素繊維含有量が多いダストを前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする請求項3に記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理装置。
【請求項8】
廃炭素繊維強化プラスチックをセメント焼成装置に供給し、
該セメント焼成装置から排出又は抽気された炭素繊維含有ダストを含むガスを、循環ルートを経由して前記排出又は抽気された箇所と同温度か、該箇所より高温である前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする廃炭素繊維強化プラスチックの処理方法。
【請求項9】
前記セメント焼成装置のプレヒータの炭素繊維含有ダストを含む排ガスを前記循環ルートを経由して前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする請求項8に記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理方法。
【請求項10】
前記セメント焼成装置のセメントキルン窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路からの炭素繊維含有ダストを含む抽気ガスを前記循環ルートを経由して前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする請求項8に記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理方法。
【請求項11】
前記セメント焼成装置から排出又は抽気されたガスから集塵し、該集塵により得られたダストを前記循環ルートを経由して前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする請求項8、9又は10に記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理方法。
【請求項12】
前記セメント焼成装置から排出又は抽気されたガスに含まれる炭素繊維含有ダストを分級し、該分級により得られた粗粉を前記循環ルートを経由して前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理方法。
【請求項13】
前記分級により得られた平均粒径が2mm以上の粗粉を前記循環ルートを経由して前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする請求項12に記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理方法。
【請求項14】
前記集塵により得られたダスト又は前記分級により得られた粗粉を炭素繊維含有量が多いダストと炭素繊維含有量が少ないダストとに分離し、該分離により得られた炭素繊維含有量が多いダストを前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする請求項11、12又は13に記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理方法。
【請求項15】
前記分離により得られた炭素繊維含有量が多いダストを石炭と混合し、該混合物を前記循環ルートを経由して前記セメント焼成装置に燃料として戻すことを特徴とする請求項14に記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理方法。
【請求項16】
前記炭素繊維含有ダストを含むガス、前記集塵により得られたダスト、前記分級により得られた粗粉、前記分級により得られた平均粒径が2mm以上の粗粉、前記炭素繊維含有量が多いダスト又は前記混合物を前記セメント焼成装置の800℃以上の領域に戻すことを特徴とする請求項8乃至15のいずれかに記載の廃炭素繊維強化プラスチックの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃炭素繊維強化プラスチックをセメント焼成装置で処理する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化プラスチック(以下「CFRP」という。)とは、炭素繊維を織ってシート状にし、このシート状物に樹脂を含浸させた後、加熱して成形したものである。また、炭素繊維とは、アクリル繊維やピッチ等の原料を高温で炭化して得られた繊維であって、質量比で90%以上が炭素で構成されるような繊維をいう。CFRPは自動車等に有効に利用されているが、自動車等を廃棄する際には自動車等に使用されていたCFRPが廃棄物として生じることになる。CFRPは燃焼性が悪いため、廃棄物となったCFRP(以下「廃CFRP」という。)を燃焼処理するのは困難性を伴う。
【0003】
そこで、特許文献1には、廃CFRPをセメント焼成装置に供給して廃CFRP中の樹脂を燃焼させ、このセメント焼成装置の排ガスから集塵して廃CFRPに含まれていた炭素繊維を回収することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−147437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の方法では、廃CFRP中の樹脂を燃焼させて処理することができるものの、廃CFRP中の炭素繊維を回収し、回収した炭素繊維を別途処理するため手間及びコストがかかる。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、廃CFRP中の樹脂及び炭素繊維の両方を簡易な方法かつ低コストで処理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、廃CFRPの処理装置であって、廃CFRPをセメント焼成装置に供給する供給装置と、該セメント焼成装置から排出又は抽気された炭素繊維含有ダストを含むガスを前記排出又は抽気された箇所と同温度か、該箇所より高温である前記セメント焼成装置に戻す循環ルートとを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、セメント焼成装置に廃CFRPを供給して廃CFRPに含まれる樹脂を燃焼させると共に、廃CFRP中の炭素繊維を含むガスを循環ルート経由でセメント焼成装置に戻して炭素繊維を燃焼させることで、廃CFRP中の樹脂及び炭素繊維の両方を完全に燃焼させることができる。
【0009】
上記廃CFRPの処理装置において、前記循環ルートは、前記セメント焼成装置のプレヒータの炭素繊維含有ダストを含む排ガスや、前記セメント焼成装置のセメントキルン窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路からの炭素繊維含有ダストを含む抽気ガスを前記セメント焼成装置に戻すことができる。
【0010】
また、前記循環ルートは、前記セメント焼成装置から排出又は抽気されたガスから集塵する集塵装置を備え、該集塵装置から排出されたダストを前記セメント焼成装置に戻すことができる。さらに、このルートは、前記セメント焼成装置から排出又は抽気されたガスに含まれる炭素繊維含有ダストを分級する分級装置を備え、該分級装置から排出された粗粉を前記セメント焼成装置に戻すこともできる。
【0011】
また、前記循環ルートは、前記集塵装置から排出されたダスト又は前記分級装置から排出された粗粉を炭素繊維含有量が多いダストと炭素繊維含有量が少ないダストとに分離する分離装置を備え、該分離装置から排出された炭素繊維含有量が多いダストを前記セメント焼成装置に戻すことができる。
【0012】
前記集塵装置は、前記セメント焼成装置から排出又は抽気されたガスに含まれるダストを炭素繊維含有量が多いダストと炭素繊維含有量が少ないダストとに分離し、前記循環ルートは、該集塵装置から排出された炭素繊維含有量が多いダストを前記セメント焼成装置に戻すことができる。
【0013】
また、本発明は、廃CFRPの処理方法であって、廃CFRPをセメント焼成装置に供給し、該セメント焼成装置から排出又は抽気された炭素繊維含有ダストを含むガスを、循環ルートを経由して前記排出又は抽気された箇所と同温度か、該箇所より高温である前記セメント焼成装置に戻すことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、セメント焼成装置に廃CFRPを供給して廃CFRPに含まれる樹脂を燃焼させると共に、廃CFRP中の炭素繊維を含むガスを循環ルート経由でセメント焼成装置に戻して炭素繊維を燃焼させることで、廃CFRP中の樹脂及び炭素繊維の両方を完全に燃焼させることができる。
【0015】
また、上記廃CFRPの処理方法において、前記セメント焼成装置のプレヒータの炭素繊維含有ダストを含む排ガスや、前記セメント焼成装置のセメントキルン窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路からの炭素繊維含有ダストを含む抽気ガスを前記循環ルートを経由して前記セメント焼成装置に戻すことができる。
【0016】
さらに、前記セメント焼成装置から排出又は抽気されたガスから集塵し、該集塵により得られたダストを前記循環ルートを経由して前記セメント焼成装置に戻すことができる。また、前記セメント焼成装置から排出又は抽気されたガスに含まれる炭素繊維含有ダストを分級し、該分級により得られた粗粉を前記循環ルートを経由して前記セメント焼成装置に戻すこともできる。
【0017】
前記分級により得られた平均粒径が2mm以上の粗粉を前記循環ルートを経由して前記セメント焼成装置に戻すことができる。
【0018】
さらに、前記集塵により得られたダスト又は前記分級により得られた粗粉を炭素繊維含有量が多いダストと炭素繊維含有量が少ないダストとに分離し、該分離により得られた炭素繊維含有量が多いダストを前記セメント焼成装置に戻すことができる。
【0019】
前記分離により得られた炭素繊維含有量が多いダストを石炭と混合し、該混合物を前記循環ルートを経由して前記セメント焼成装置に燃料として戻すことができる。
【0020】
前記炭素繊維含有ダストを含むガス、前記集塵により得られたダスト、前記分級により得られた粗粉、前記分級により得られた平均粒径が2mm以上の粗粉、前記炭素繊維含有量が多いダスト又は前記混合物を前記セメント焼成装置の800℃以上の領域に戻すことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、廃CFRP中の樹脂及び炭素繊維の両方を簡易な方法かつ低コストで処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る廃CFRPの処理装置の第1の実施形態を示す全体構成図である。
図2】本発明に係る廃CFRPの処理装置の第2の実施形態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る廃CFRPの処理装置を備えたセメント製造装置の第1の実施形態を示し、このセメント製造装置1は、セメント焼成装置2と、セメント焼成装置2から排出されたガスに含まれる炭素繊維含有ダストをセメント焼成装置2に戻す循環ルート(詳細後述)とを備えている。ここで、炭素繊維含有ダストとは、セメント焼成装置2に供給される廃CFRP中の炭素繊維を含むダストをいう。廃CFRPには、CFRP製造時の端材、釣竿やゴルフクラブ、ラケット等の廃棄物、自動車シュレッダーダスト等が含まれる。
【0025】
セメント焼成装置2は、セメントキルン2aと、仮焼炉2bと、プレヒータ2c等で構成される一般的なものである。セメント焼成装置2には、プレヒータ2cの排ガスG1の熱を利用する廃熱ボイラ3と、廃熱ボイラ3の排ガスG2を誘引する誘引ファン4と、誘引ファン4によって誘引された排ガスG2の調温及び調湿を行う調湿塔5と、調湿塔5の排ガスG3が導入される原料乾燥機6と、原料乾燥機6の排ガスG4から粗粉C1を回収するサイクロン7と、サイクロン7の排ガスG5を集塵するバグフィルタ8と、バグフィルタ8の排ガスG6を誘引する誘引ファン9と、誘引ファン9によって誘引された排ガスG6を大気に放出する煙突10とが付設される。本発明においては、炭素繊維による荷電障害が生じるので電気集塵機を使用せず、微粉を含む全てのダストをフィルタ方式の集塵機を用いて集塵し、この集塵機にはバグフィルタを用いるのが好適である。
【0026】
また、セメント製造装置1は、CFRPを含む廃棄物Wを窯尻に供給する供給装置11と、原料乾燥機6にセメント原料R1を供給する供給装置12と、原料乾燥機6で乾燥されたセメント原料R2を粉砕する原料ミル13と、原料ミル13から排出されたセメント原料R3を貯留する原料サイロ14と、サイクロン7から排出された粗粉C1を炭素繊維含有量が多いダストD1と炭素繊維含有量が少ないダストD2とに分離する分離装置15とを備える。CFRPを含む廃棄物Wの供給箇所は問わないが、800℃以上の箇所に供給すると燃焼速度が速いので好ましく、窯尻以外には、仮焼炉や、窯前が挙げられる。
【0027】
サイクロン7は、原料乾燥機6の排ガスG4中の炭素繊維の大部分を含む粗粉C1を回収するために備えられる。これにより、後段のバグフィルタ8で炭素繊維が滞留してバグフィルタ8の集塵効率が低下したり、フィルタが劣化するのを防止することができる。尚、サイクロン7を設けずに原料乾燥機6の排ガスG4を直接バグフィルタ8に供給してもよい。また、サイクロン7以外の分級装置を備えることもできる。
【0028】
バグフィルタ8は、廃棄物W中のCFRPに含まれていた炭素繊維を含むダストを回収するために備えられる。バグフィルタ8内の上部には針状や綿状の炭素繊維が滞留するおそれがあるため、これを吸引するための吸引口をバグフィルタ8の上部に設けるのが好ましい。この場合、この吸引口から炭素繊維を静電気で吸着して回収する装置を設けたり、上部にのみ振動を与える装置を設けたりして、定期的にバグフィルタ8から炭素繊維を吸引することもできる。また、掻き出し機構を設けたりして機械的に回収することもできる。これらにより、バグフィルタ8で炭素繊維が滞留してバグフィルタ8の集塵効率が低下したり、フィルタが劣化するのを回避することができる。
【0029】
原料ミル13は、原料乾燥機6から排出されたセメント原料R2を粉砕するために備えられる。尚、原料ミル13では、セメント原料R2と共に、分離装置15から排出された炭素繊維含有量が多いダストD1を粉砕してもよい。
【0030】
分離装置15としては分級装置、静電分離装置、比重差選別装置、脱塩装置等を用いることができる。分級装置としては篩やサイクロンを用いることができ、比重差選別装置としてはエアテーブル、風力選別機を用いることができる。さらに、脱塩装置としては、装置内部で気泡を発生させながら処理対象物を水洗し、処理対象物の表面付近に含まれる炭素繊維を回収するものを用いることができる。尚、使用する分離装置15の種類は、分離装置15の処理対象物に含まれる炭素繊維の形状や粒径、この処理対象物の塩素濃度等に応じて適宜決定する。
【0031】
例えば、分離装置15の処理対象である粗粉C1は綿状であるため、分離装置15に篩を用いることで粗粉C1から効率よく炭素繊維含有量が多いダストD1を回収することができる。また、粗粉C1が針状である場合には、分離装置15として、気流を用いた分離装置であるサイクロンやエアテーブルを用いることもできる。さらに、粗粉C1の塩素濃度が高い場合には、上述した脱塩装置を用いるのが好ましい。
【0032】
また、分離装置15は、サイクロン7から排出される粗粉C1以外にも、バグフィルタ8から排出される微粉F1を処理することもできる。
【0033】
ここで、廃CFRP中の炭素繊維は、セメント焼成装置2から排出又は抽気されたガスに含まれるダスト全体において、粒径が大きく導電性が強いという性質を有する。この点に鑑みると、分離装置15として分級装置を用いた場合、分離装置15から排出される粗粉と微粉のうち粗粉に炭素繊維が多く含まれるため、この粗粉を炭素繊維含有量が多いダストD1として扱う。一方、分離装置15に静電分離装置を用いた場合は、分離装置15から排出される導体と不導体のうち導体に炭素繊維が多く含まれるため、この導体を炭素繊維含有量が多いダストD1として扱う。
【0034】
さらに、分離装置15として比重差選別装置を用いた場合は、分離装置15で処理するダストの種類に応じて、分離装置15から排出される高比重物と低比重物とのいずれを炭素繊維含有量が多いダストD1として扱うかを決定する。セメント焼成装置2から排出されるガスに含まれるダストにおいて、比重の大きさは、廃CFRPに含まれていた炭素繊維<粗粉C1<微粉F1となる。従って、これに基づき、炭素繊維含有量が多いダストD1が高比重物であるか低比重物であるかを判断する。
【0035】
また、分離装置15として分級装置を用いる場合、これらの装置に供給されるダストの種類に応じて適宜分離装置15の分級点を調整する。分離装置15にサイクロン7から排出された粗粉C1が供給される場合、分離装置15における分級点を200μm以上500μm以下とし、分離装置15にバグフィルタ8から排出された微粉F1が供給される場合、分離装置15における分級点を50μm以上100μm以下とするのが好ましい。
【0036】
また、分離装置15は省略することができる。この場合、サイクロン7の分級点を200μm以上500μm以下とすることで、分離装置15を備える場合と同様、セメント焼成装置2に炭素繊維含有量が多いダストを戻すことができる。
【0037】
次に、上記構成を有するセメント製造装置1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0038】
まず、セメント原料R1を供給装置12で原料乾燥機6に供給して乾燥させ、セメント原料R2を原料ミル13に供給して粉砕する。原料ミル13で粉砕されたセメント原料R3を石炭灰CAと共に原料サイロ14で混合貯留し、これらを取り出してセメント焼成装置2のプレヒータ2cにセメント原料R4として供給する。
【0039】
セメント焼成装置2のプレヒータ2cに供給したセメント原料R4を、プレヒータ2c、仮焼炉2bを経由してセメントキルン2aで焼成する。さらに、セメント原料R4が焼成されて生じたクリンカを、セメントキルン2aからクリンカクーラ(不図示)に排出して冷却する。
【0040】
一方、CFRPを含む廃棄物Wを供給装置11で窯尻に投入する。セメント原料R4が焼成されたセメントキルン2aの排ガスを、仮焼炉2b及びプレヒータ2cを経由してプレヒータ2cの最上段サイクロンからセメント焼成装置2の系外へ排出する。さらに、排ガスG1を廃熱ボイラ3に導入して熱回収し、熱回収後の排ガスG2を調湿塔5に導入して排ガスG2の調温及び調湿を行い、調湿塔5の排ガスG3を原料乾燥機6に導入してセメント原料R1等の乾燥に用いる。また、原料乾燥機6の排ガスG4をサイクロン7に導入して排ガスG4から粗粉C1を回収し、サイクロン7の排ガスG5をバグフィルタ8に導入して排ガスG5から微粉F1を回収する。微粉F1は原料サイロ14に投入する。微粉F1が回収されたバグフィルタ8の排ガスG6は煙突10から大気に放出する。
【0041】
サイクロン7から回収した粗粉C1を分離装置15で炭素繊維含有量が多いダストD1と炭素繊維含有量が少ないダストD2とに分離し、ダストD2を原料サイロ14に供給して貯留する。さらに、原料サイロ14内の混合物をセメント原料R4としてセメント焼成装置2に供給する。ダストD1は、セメント焼成装置2の窯尻に投入する。尚、ダストD1は、セメント焼成装置2以外の加熱装置で炭素繊維を燃焼させてから原燃料に混ぜて用いてもよい。
【0042】
以上のように、上記実施の形態では、セメント焼成装置2にCFRPを含む廃棄物Wを供給して廃CFRPに含まれる樹脂を燃焼させると共に、廃CFRP中の炭素繊維を循環ルート経由でセメント焼成装置2に戻して燃焼させることで、廃CFRP中の樹脂及び炭素繊維の両方を完全に燃焼させることができる。
【0043】
次に、本発明に係る廃CFRPの処理装置を備えたセメント製造装置の第2の実施形態について図2を参照しながら説明する。このセメント製造装置20には、塩素バイパスシステム21が付設されている。図2では、セメント製造装置20の排ガス処理系と原料系の図示を省略する。
【0044】
塩素バイパスシステム21は、セメントキルン2aの窯尻からプレヒータ2cの最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気するプローブ22と、プローブ22からの抽気ガスG7から第1の粗粉C2を回収するサイクロン23と、サイクロン23の排ガスG8から第2の粗粉C3を回収するサイクロン24と、サイクロン24の排ガスG9を集塵するバグフィルタ25と、バグフィルタ25の排ガスG10をセメント焼成装置2に戻す誘引ファン26と、サイクロン23から排出された第1の粗粉C2を炭素繊維含有量が多いダストD3と炭素繊維含有量が少ないダストD4とに分離する分離装置27とを備える。
【0045】
分離装置27としては、図1に示す分離装置15と同様に、篩やサイクロン等の分級装置、静電分離装置、エアテーブル等の比重差選別装置や、装置内部で気泡を発生させながら処理対象物を水洗し、処理対象物の表面付近に含まれる炭素繊維を回収する脱塩装置等を用いることができる。尚、使用する分離装置27の種類は、処理対象物に含まれる炭素繊維の形状や粒径、塩素濃度等に応じて適宜決定する。
【0046】
例えば、分離装置27の処理対象である第1の粗粉C2は綿状であるため、分離装置27に篩を用いることで第1の粗粉C2から効率よく炭素繊維含有量が多いダストD3を回収することができる。また、第1の粗粉C2が針状である場合には、分離装置27として、気流を用いた分離装置であるサイクロンやエアテーブルを用いることもできる。さらに、第1の粗粉C2の塩素濃度が高い場合には、上述した脱塩装置を用いるのが好ましい。
【0047】
また、分離装置27は、サイクロン23から排出される第1の粗粉C2以外にも、サイクロン24から排出される第2の粗粉C3や、バグフィルタ25から排出される微粉F2を処理することもできる。
【0048】
ここで、廃CFRP中の炭素繊維は、セメント焼成装置2から排出又は抽気されたガスに含まれるダスト全体において、粒径が大きく導電性が強いという性質を有する。この点に鑑みると、分離装置27として分級装置を用いた場合、分離装置27から排出される粗粉と微粉のうち粗粉に炭素繊維が多く含まれるため、この粗粉を炭素繊維含有量が多いダストD3として扱う。一方、分離装置27に静電分離装置を用いた場合は、分離装置27から排出される導体と不導体のうち導体に炭素繊維が多く含まれるため、この導体を炭素繊維含有量が多いダストD3として扱う。
【0049】
さらに、分離装置27として比重差選別装置を用いた場合は、分離装置27で処理するダストの種類に応じて、分離装置27から排出される高比重物と低比重物とのいずれを炭素繊維含有量が多いダストD3として扱うかを決定する。セメント焼成装置2から抽気されるガスに含まれるダストにおいて、比重の大きさは、微粉F2<廃CFRPに含まれていた炭素繊維<第1の粗粉C2、第2の粗粉C3となる。従って、これに基づき、炭素繊維含有量が多いダストD3が高比重物であるか低比重物であるかを判断する。
【0050】
また、分離装置27として分級装置を用いる場合、これらの装置に供給されるダストの種類に応じて適宜分離装置27の分級点を調整する。分離装置27にサイクロン23、24から排出された第1の粗粉C2、第2の粗粉C3が供給される場合、分離装置27における分級点を200μm以上500μm以下とし、分離装置27にバグフィルタ25から排出された微粉F2が供給される場合、分離装置27における分級点を50μm以上100μm以下とするのが好ましい。
【0051】
また、分離装置27は省略することができる。この場合、サイクロン23の分級点を200μm以上500μm以下とすることで、分離装置27を備える場合と同様、セメント焼成装置2に炭素繊維含有量が多いダストを戻すことができる。
【0052】
また、サイクロン23は、抽気ガスG7中の炭素繊維の大部分を含む第1の粗粉C2を回収するために備えられる。これにより、後段のバグフィルタ25で炭素繊維が滞留してバグフィルタ25の集塵効率低下やフィルタ劣化を招くのを防止することができる。尚、サイクロン23を設けずに抽気ガスG7をサイクロン24に直接供給してもよく、さらにサイクロン24も設けずに、抽気ガスG7をバグフィルタ25に直接供給してもよい。上記の分離は必ずしも完全に行う必要はなく、炭素繊維含有量を多くすることができればよく、炭素繊維やセメント原料のダストがいずれに含まれても、最終的には炭素繊維は系内で燃焼し、セメント原料のダストはセメントクリンカとなる。
【0053】
次に、上記構成を有するセメント製造装置20の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0054】
CFRPを含む廃棄物Wを供給装置11で窯尻に投入する。プローブ22でセメント焼成装置2内の燃焼ガスの一部を抽気し、抽気ガスG7からサイクロン23で第1の粗粉C2を回収すると共に、サイクロン24でサイクロン23の排ガスG8から第2の粗粉C3を回収する。また、サイクロン24の排ガスG9をバグフィルタ25で集塵して微粉F2を回収する。バグフィルタ25の排ガスG10は誘引ファン26で誘引してセメント焼成装置2に戻す。
【0055】
さらに、サイクロン23で回収した第1の粗粉C2を分離装置27で炭素繊維含有量が多いダストD3と炭素繊維含有量が少ないダストD4とに分離し、ダストD3をセメント焼成装置2に使用される石炭と共に燃料とする。尚、ダストD4は、セメント焼成装置2の窯尻に投入するなどセメント原燃料に混ぜて用いてもよい。
【0056】
以上のように、上記実施の形態においても、上記第1の実施形態と同様に、セメント焼成装置2にCFRPを含む廃棄物Wを供給して廃CFRPに含まれる樹脂を燃焼させると共に、廃CFRP中の炭素繊維を循環ルート経由でセメント焼成装置2に戻して燃焼させることで、廃CFRP中の樹脂及び炭素繊維の両方を完全に燃焼させることができる。
【0057】
尚、図1に示す第1の実施形態において、セメント焼成装置2から排出されたガスに含まれる炭素繊維をセメント焼成装置2に戻す循環ルートとして、セメント焼成装置2のプレヒータ2c、廃電ボイラ3、誘引ファン4、調湿塔5、原料乾燥機6、サイクロン7、分離装置15、原料サイロ14、セメント焼成装置2のプレヒータ2cの順に炭素繊維が供給されるルートについて説明し、これとは別に、図2に示す第2の実施形態において、セメント焼成装置2に付設されたプローブ22、サイクロン23、分離装置27、セメント焼成装置2のセメントキルン2aの順に炭素繊維が供給されるルートについて説明したが、これら両方の循環ルートを1つのセメント製造装置に設けてもよい。
【0058】
また、セメント焼成装置2から排出又は抽気されたガスに含まれる炭素繊維をセメント焼成装置2に戻すことが可能なルートであれば、上記2つの循環ルート以外でもよい。例えば、バグフィルタ8、25で回収された微粉F1、F2をセメント焼成装置2に戻す循環ルートや、サイクロン24で回収された第2の粗粉C3をセメント焼成装置2に戻す循環ルートを設けることもできる。
【0059】
また、セメント焼成装置2から排出又は抽気されたガスに含まれる炭素繊維は集塵機でダストとして回収されたが、集塵機を用いることなく炭素繊維を含有したダストを含むガス自体の一部を抽気し、このガスを抽気された箇所と同温度か、該箇所より高温であるセメント焼成装置2内に戻して炭素繊維を燃焼させてもよい。
【0060】
また、セメント焼成装置2から排出又は抽気された炭素繊維含有ダストを含むガス、あるいは炭素繊維含有ダストは、セメント焼成装置2のセメントキルン2aの窯前や窯尻、仮焼炉2b、プレヒータ2c等のいずれの場所にも戻すことができる。例えば、炭素繊維含有ダストを窯尻、仮焼炉等の900℃以上の高温領域に、さらには窯前等の1200℃以上の高温領域に戻して炭素繊維を効果的に燃焼させてもよい。また、分離装置15、27により炭素繊維含有量を高めたダストD1、D3は石炭等の燃料に混合、あるいは単独で粉砕して使用すると、炭素繊維を効果的に燃焼処理され、かつ燃焼としても有効活用できる。
【0061】
また、得られた炭素繊維含有量が多いダストD1、D3は全てをセメント焼成装置2の一箇所に戻すのでなく、一部をより高温の箇所に供給するなどしてより効果的に炭素繊維を燃焼処理させてもよい。
【0062】
尚、セメント焼成装置2に供給する廃CFRPの粒径及び形状に制約はない。本発明では粒径の大きな廃CFRPを燃焼処理することができるため、廃CFRPを細かくする必要がなく、粉砕が困難な廃CFRPを容易に処理することできる。従って、本発明では、これまでセメント焼成装置において燃焼が困難とされた平均粒径が2mmを超えるもの、より好ましくは3mmを超えるものに好適に使用できる。但し、セメント原料をセメントキルン2aの窯尻や仮焼炉2bに供給する場合には、原料ミル13等で粒径を100mm以下にする必要がある。
【0063】
また、廃棄物Wが水銀を含んでいる場合、排ガスG1や抽気ガスG7に廃棄物W由来の水銀が含まれ、この水銀が粗粉C1、第1の粗粉C2、第2の粗粉C3や微粉F1、F2に付着することになる。この場合、水銀が付着した粗粉C1等をセメント焼成装置2に戻す前に水銀回収装置で粗粉C1等から水銀を除去する必要があるが、この水銀回収装置として加熱式のものを用いることで、粗粉C1等から水銀を除去すると共に粗粉C1等に含まれる炭素繊維を部分的に燃焼させることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 セメント製造装置
2 セメント焼成装置
2a セメントキルン
2b 仮焼炉
2c プレヒータ
3 廃熱ボイラ
4 誘引ファン
5 調湿塔
6 原料乾燥機
7 サイクロン
8 バグフィルタ
9 誘引ファン
10 煙突
11、12 供給装置
13 原料ミル
14 原料サイロ
15 分離装置
20 セメント製造装置
21 塩素バイパスシステム
22 プローブ
23 サイクロン
24 サイクロン
25 バグフィルタ
26 誘引ファン
27 分離装置
C1 粗粉
C2 第1の粗粉
C3 第2の粗粉
CA 石炭灰
D1〜D4 ダスト
F1、F2 微粉
G1〜G6、G8〜G10 排ガス
G7 抽気ガス
R1〜R4 セメント原料
W (CFRPを含む)廃棄物
図1
図2