(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状のコア本体、および該コア本体の内周面から径方向内側に向かって突出し巻線が巻回されるティースを有し、前記コア本体が前記ティースごとに周方向に分割可能なステータと、
少なくとも前記ティースの径方向内側端が露出するように前記ステータの周囲を覆う第1樹脂ハウジングと、
を備え、
前記第1樹脂ハウジングには、径方向外側の外周面に、軸方向に延在するリブ部が形成されており、該リブ部に沿う直線上に、樹脂材料の注入後に形成される注入痕が配置されており、
前記第1樹脂ハウジングの前記外周面であって、且つ前記リブ部とは異なる位置に、軸方向に延在する樹脂流路部が形成されている
ことを特徴とするモータ。
筒状のコア本体、および該コア本体の内周面から径方向内側に向かって突出し巻線が巻回されるティースを有し、前記コア本体が前記ティースごとに周方向に分割可能なステータを有するモータの製造方法であって、
金型内に前記ステータをセットした後、前記ステータの径方向外側から樹脂を注入し、少なくとも前記ティースの径方向内側端が露出するように前記ステータの周囲を覆う第1樹脂ハウジングを形成する第1ハウジング形成工程を有し、
前記第1ハウジング形成工程において、前記第1樹脂ハウジングの外周面に、軸方向に延在するリブ部を形成し、該リブ部となる位置に沿った直線上に前記金型の樹脂注入口が配置されていると共に、前記第1樹脂ハウジングの外周面であって、且つ前記リブ部とは異なる位置に、軸方向に延在する樹脂流路部が形成される
ことを特徴とするモータの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の特許文献1のように、例えば樹脂ハウジングの底部の径方向中央に樹脂注入口を1箇所設定した場合、ステータのコア本体の部位においては、軸方向に樹脂が流れ込む。さらに、コア本体の内周面側および外周面側の両部位に、同時に樹脂が流れ込むことになる。そして、場合によっては、コア本体の内周面側から外周面側に向かって樹脂圧がかかる可能性がある。
【0008】
このような成型方法において、ステータのコア本体が分割コアにより構成されている場合、コア本体の内周面側から外周面側に向かってかかる樹脂圧によって、分割コア同士の結合部位の結合力が僅かに弱くなってしまう可能性があった。このように、分割コアの結合力が僅かに弱い状態となってしまうと、コア本体の径方向内側(スロット開口部側)の真円度が低下したり、分割コア同士の間に隙間が形成されたままインサート成型されてしまったりして、モータ性能が低下してしまう可能性があった。
また、例えば、樹脂ハウジングに外部コネクタを接続可能なコネクタ部を一体成型しようとした場合、樹脂の流動性が悪化する可能性があった。さらに、樹脂ハウジング全体で肉厚の異なる箇所ができやすく、樹脂成型時にヒケが発生しやすくなってしまう可能性があった。このため、精度よく樹脂ハウジングを形成できない可能性があった。
【0009】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ステータをインサート成型した場合であっても、モータ性能の低下を防止できたり、樹脂ハウジングを高精度に成型できたりするモータおよびモータの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係るモータは、筒状のコア本体、および該コア本体の内周面から径方向内側に向かって突出し巻線が巻回されるティースを有し、前記コア本体が前記ティースごとに周方向に分割可能なステータと、少なくとも前記ティースの径方向内側端が露出するように前記ステータの周囲を覆う第1樹脂ハウジングと、を備え、前記第1樹脂ハウジング
には、径方向外側の外周面に
、軸方向に延在するリブ部が形成されており、該リブ部に沿う直線上に、樹脂材料の注入後に形成される注入痕
が配置されており、前記第1樹脂ハウジングの前記外周面であって、且つ前記リブ部とは異なる位置に、軸方向に延在する樹脂流路部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
このように、第1樹脂ハウジングは、径方向外側の外周面に樹脂材料の注入後に形成される注入痕を有している。すなわち、金型にステータをセットした後、このステータのコア本体の径方向外側から樹脂を注入すると、第1樹脂ハウジングの径方向外側の外周面に注入痕が形成される。
ここで、コア本体の径方向外側から樹脂を注入するので、コア本体には、外周面側から内周面側に向かって樹脂圧がかかる。つまり、分割されたコア本体(以下、分割コアという)は、樹脂圧によって互いに密接する方向に向かって力が作用する。このため、分割コア同士の結合部位の結合力が弱くなって、分割コア同士の間に隙間が形成されてしまうことを防止できる。この結果、コア本体の径方向内側(スロット開口部側)の真円度が高まり、モータ性能が低下してしまうことを防止できる。また、ティースの径方向内側端が露出するよう第1樹脂ハウジングを成型することで、完成したモータへの通電時に、ステータの径方向内側とロータとの間に介在物がなくなるため、ステータ側からロータ側への磁束の通りが良好となる。
また、コア本体の径方向外側から樹脂を注入する場合であっても、リブ部を介してコア本体の軸方向端部に樹脂を回り込み易くすることができる。このため、第1樹脂ハウジングを、より高精度に形成し易くすることができる。
さらに、樹脂成型時に樹脂が樹脂流路部を通じてモータの軸方向端部に回り込み易くなる。このため、第1樹脂ハウジングをより高精度に形成し易くすることができる。
【0012】
本発明に係るモータは、前記第1樹脂ハウジングを覆うように形成され、拡張部品を取り付け可能な拡張部品取付部を有する第2樹脂ハウジングを備えたことを特徴とする。
【0013】
このように、第1樹脂ハウジングと第2樹脂ハウジングとの2層構造とすることにより、一度に形成する樹脂ハウジング(第1樹脂ハウジング、第2樹脂ハウジング)の肉厚を薄肉化できる。このため、拡張部品取付部を形成しても湯流れの悪化を抑制できる。また、各樹脂ハウジングの肉厚を全体として均一化しやすくなり、樹脂成型時のヒケを防止できる。このため、樹脂ハウジング全体を高精度に形成できる。
【0014】
本発明に係るモータは、筒状のコア本体、および該コア本体の内周面から径方向内側に向かって突出し巻線が巻回されるティースを有するステータと、少なくとも前記ティースの径方向内側端が露出するように前記ステータの周囲を覆う第1樹脂ハウジングと、該第1樹脂ハウジングを覆うように形成され、拡張部品を取り付け可能な拡張部品取付部を有する第2樹脂ハウジングと、を備え
、前記第1樹脂ハウジングには、径方向外側の外周面に、軸方向に延在するリブ部が形成されており、該リブ部に沿う直線上に、樹脂材料の注入後に形成される注入痕が配置されており、前記第1樹脂ハウジングの前記外周面であって、且つ前記リブ部とは異なる位置に、軸方向に延在する樹脂流路部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
このように、第1樹脂ハウジングと第2樹脂ハウジングとの2層構造とすることにより、一度に形成する樹脂ハウジング(第1樹脂ハウジング、第2樹脂ハウジング)の肉厚を薄肉化できる。このため、拡張部品取付部を形成しても湯流れの悪化を抑制できる。また、各樹脂ハウジングの肉厚を全体として均一化しやすくなり、樹脂成型時のヒケを防止できる。よって、樹脂ハウジング全体を高精度に形成できる。また、ティースの径方向内側端が露出するよう第1樹脂ハウジングを成型することで、第2樹脂ハウジングの成型時に基準面としてティースの径方向内側端を使用することができる。さらに、完成したモータへの通電時に、ステータの径方向内側とロータとの間に介在物がなくなるため、ステータ側からロータ側への磁束の通りが良好となる。
また、樹脂の流れを、コア本体の外周面側から内周面側へと決められた流れとすることができる。このため、例えば、樹脂圧により巻線にかかる負荷の方向を一方向に限定することができ、巻線の位置を保持し易くなる。よって、第1樹脂ハウジングを形成し易くなり、樹脂ハウジング全体を高精度に形成できる。
さらに、コア本体の径方向外側から樹脂を注入する場合であっても、リブ部を介してコア本体の軸方向端部に樹脂を回り込み易くすることができる。このため、第1樹脂ハウジングを、より高精度に形成し易くすることができる。
また、樹脂成型時に樹脂が樹脂流路部を通じてモータの軸方向端部に回り込み易くなる。このため、第1樹脂ハウジングをより高精度に形成し易くすることができる。
【0022】
本発明に係るモータは、前記巻線は、前記ステータの軸方向端部で該ステータに沿って引き回されると共に前記ティース間に跨るように配線される渡り線を有し、前記ステータの前記軸方向端部に、前記渡り線を上から押さえて変位を規制する環状の渡り線規制部を設け、前記第1樹脂ハウジングは、前記ステータおよび前記渡り線規制部を覆うように形成されていることを特徴とする。
【0023】
ここで、巻線が渡り線を有している場合、樹脂圧によって渡り線が変位してしまい、渡り線を所定の位置にインサート成型できない可能性があった。このため、渡り線規制部によって渡り線を上から押えることにより、樹脂成型時の渡り線の変位を防止でき、渡り線を所定の位置にインサート成型できる。よって、樹脂ハウジング全体を高精度に形成できる。
【0024】
本発明に係るモータの製造方法は、筒状のコア本体、および該コア本体の内周面から径方向内側に向かって突出し巻線が巻回されるティースを有し、前記コア本体が前記ティースごとに周方向に分割可能なステータを有するモータの製造方法であって、金型内に前記ステータをセットした後、前記ステータの径方向外側から樹脂を注入し、少なくとも前記ティースの径方向内側端が露出するように前記ステータの周囲を覆う第1樹脂ハウジングを形成する第1ハウジング形成工程を有し
、前記第1ハウジング形成工程において、前記第1樹脂ハウジングの外周面に、軸方向に延在するリブ部を形成し、該リブ部となる位置に沿った直線上に前記金型の樹脂注入口が配置されていると共に、前記第1樹脂ハウジングの外周面であって、且つ前記リブ部とは異なる位置に、軸方向に延在する樹脂流路部が形成されることを特徴とする。
【0025】
このように、コア本体の径方向外側から樹脂を注入するので、コア本体には、外周面側から内周面側に向かって樹脂圧がかかる。つまり、分割されたコア本体(以下、分割コアという)は、樹脂圧によって互いに密接する方向に向かって力が作用する。このため、分割コアがばらけてしまい、分割コア同士の間に隙間が形成されてしまうことを防止できる。この結果、モータ性能が低下してしまうことを防止できる。また、ティースの径方向内側端が露出するよう第1樹脂ハウジングを成型することで、完成したモータへの通電時に、ステータの径方向内側とロータとの間に介在物がなくなるため、ステータ側からロータ側への磁束の通りが良好となる。
また、樹脂の流れを、コア本体の外周面側から内周面側へと決められた流れとすることができる。このため、例えば、樹脂圧により巻線にかかる負荷の方向を一方向に限定することができ、巻線の位置を保持し易くなる。よって、第1樹脂ハウジングを形成し易くなり、樹脂ハウジング全体を高精度に形成できる。
さらに、樹脂成型時に樹脂が樹脂流路部を通じてモータの軸方向端部に回り込み易くなる。このため、第1樹脂ハウジングをより高精度に形成し易くすることができる。
【0026】
本発明に係るモータの製造方法は、前記第1ハウジング形成工程の後、前記第1樹脂ハウジングを覆うように第2樹脂ハウジングを形成する第2ハウジング形成工程を有し、前記第2樹脂ハウジングは、拡張部品を取り付け可能な拡張部品取付部を有していることを特徴とする。
【0027】
このような製造方法とすることで、第1樹脂ハウジングと第2樹脂ハウジングとの2層構造とすることにより、一度に形成する樹脂ハウジング(第1樹脂ハウジング、第2樹脂ハウジング)の肉厚を薄肉化できる。このため、拡張部品取付部を形成しても湯流れの悪化を抑制できる。また、各樹脂ハウジングの肉厚を全体として均一化しやすくなり、樹脂成型時のヒケを防止できる。よって、樹脂ハウジング全体を高精度に形成できる。
【0028】
本発明に係るモータの製造方法は、筒状のコア本体、および該コア本体の内周面から径方向内側に向かって突出し巻線が巻回されるティースを有するステータを有するモータの製造方法であって、金型内に前記ステータをセットした後、少なくとも前記ティースの径方向内側端が露出するように前記ステータの周囲を覆う第1樹脂ハウジングを形成する第1ハウジング形成工程と、前記第1ハウジング形成工程の後、前記第1樹脂ハウジングを覆うように第2樹脂ハウジングを形成する第2ハウジング形成工程を有し、前記第2樹脂ハウジングは、拡張部品を取り付け可能な拡張部品取付部を有し
、前記第1ハウジング形成工程において、前記ステータの径方向外側から樹脂を注入して前記第1樹脂ハウジングの外周面に、軸方向に延在するリブ部を形成し、該リブ部となる位置に沿った直線上に前記金型の樹脂注入口が配置されていると共に、前記第1樹脂ハウジングの外周面であって、且つ前記リブ部とは異なる位置に、軸方向に延在する樹脂流路部が形成されることを特徴とする。
【0029】
このように、第1樹脂ハウジングと第2樹脂ハウジングとの2層構造とすることにより、一度に形成する樹脂ハウジング(第1樹脂ハウジング、第2樹脂ハウジング)の肉厚を薄肉化できる。このため、拡張部品取付部を形成しても湯流れの悪化を抑制できる。また、各樹脂ハウジングの肉厚を全体として均一化しやすくなり、樹脂成型時のヒケを防止できる。よって、樹脂ハウジング全体を高精度に形成できる。また、ティースの径方向内側端が露出するよう第1樹脂ハウジングを成型することで、第2樹脂ハウジングの成型時に基準面としてティースの径方向内側端を使用することができる。さらに、完成したモータへの通電時に、ステータの径方向内側とロータとの間に介在物がなくなるため、ステータ側からロータ側への磁束の通りが良好となる。
また、樹脂の流れを、コア本体の外周面側から内周面側へと決められた流れとすることができる。このため、例えば、樹脂圧により巻線にかかる負荷の方向を一方向に限定することができ、巻線の位置を保持し易くなる。よって、第1樹脂ハウジングを形成し易くなり、樹脂ハウジング全体を高精度に形成できる。
さらに、コア本体の径方向外側から樹脂を注入する場合であっても、リブ部を介してコア本体の軸方向端部に樹脂を回り込み易くすることができる。このため、第1樹脂ハウジングを、より高精度に形成し易くすることができる。
また、樹脂成型時に樹脂が樹脂流路部を通じてモータの軸方向端部に回り込み易くなる。このため、第1樹脂ハウジングをより高精度に形成し易くすることができる。
【0036】
本発明に係るモータの製造方法は、前記巻線は、前記ステータの軸方向端部で該ステータに沿って引き回されると共に前記ティース間に跨るように配線される渡り線を有し、前記ステータの前記軸方向端部に、前記渡り線を上から押さえて変位を規制する環状の渡り線規制部を設け、前記第1ハウジング形成工程において、前記ステータおよび前記渡り線規制部を覆うように前記第1樹脂ハウジングを形成することを特徴とする。
【0037】
このように、渡り線規制部によって渡り線を上から押えることにより、樹脂成型時の渡り線の変位を防止でき、渡り線を所定の位置にインサート成型できる。このため、樹脂ハウジング全体を高精度に形成できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、コア本体の径方向外側から樹脂を注入するので、コア本体には、外周面側から内周面側に向かって樹脂圧を作用させることができる。つまり、分割されたコア本体(以下、分割コアという)は、樹脂圧によって互いに密接する方向に向かって力が作用する。このため、分割コア同士の結合部位の結合力が弱くなった分割コア同士の間に隙間が形成されたままステータがインサート成型されてしまうことを防止できる。この結果、コア本体の径方向内側(スロット開口部側)の真円度が高まり、モータ性能が低下してしまうことを防止できる。
【0039】
また、第1樹脂ハウジングと第2樹脂ハウジングとの2層構造とすることにより、一度に形成する樹脂ハウジング(第1樹脂ハウジング、第2樹脂ハウジング)の肉厚を薄肉化できる。このため、拡張部品取付部を形成しても湯流れの悪化を抑制できる。また、各樹脂ハウジングの肉厚を全体として均一化しやすくなり、樹脂成型時のヒケを防止できる。よって、樹脂ハウジング全体を高精度に形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0042】
(第1実施形態)
(電動ポンプ)
図1は、電動ポンプ1の斜視図である。
同図に示すように、電動ポンプ1は、例えば自動車に搭載されたミッション(何れも不図示)を駆動させるために、このミッションにオイルを供給するためのものである。電動ポンプ1は、モータ部2と、モータ部2に連結されモータ部2と同軸上に配置されたポンプ部3と、モータ部2の駆動制御を行う制御部4と、が一体化されている。
なお、以下の説明では、モータ部2の回転軸81の軸方向を単に軸方向と称し、軸方向に直交し、回転軸81の径方向となる方向を単に径方向と称し、回転軸81の回転方向を単に周方向と称して説明する。
【0043】
モータ部2は、樹脂により形成されたモータケース50と、モータケース50にインサート成型されたステータ40(
図3参照)と、モータケース50に回転自在に支持されているロータ80と、を備えている。モータ部2は、ブラシを介さずに制御部4からの電力をステータ40に供給する、いわゆるブラシレスモータである。なお、モータケース50、およびステータ40の詳細については、後述する。
【0044】
ロータ80は、回転軸81と、回転軸81に外嵌固定されたロータコア82と、を備えている。ロータコア82の外周面には、複数の永久磁石(不図示)が周方向に等間隔で埋設されている。これら永久磁石とステータ40との間で磁気的な吸引力や反発力が生じ、ロータ80が回転する。このようなロータ80の回転軸81の一端が、ポンプ部3に連結されている。
【0045】
ポンプ部3は、モータ部2上に配置され、オイルを吸入、吐出するためのものである。ポンプ部3は、例えば各々アルミダイキャストにより形成されるポンプケース94およびブラケット93を有している。
ポンプケース94は、平坦なブロック状に形成されたもので、モータケース50の軸方向一端面にモータケース50と重なるように配置されている。そして、ポンプケース94内に、例えばトロコイド式のポンプ(不図示)が収納されている。このポンプが、モータ部2のロータ80に連結されている。
【0046】
一方、ブラケット93は、ポンプケース94のモータケース50とは反対側の一面に、ポンプケース94と重なるように配置されている。ブラケット93も、平坦なブロック状に形成されている。このブラケット93のポンプケース94とは反対側の一面が、不図示のミッションに取り付けられる。ブラケット93の外周部には、ミッションに電動ポンプ1を固定するためのボルト座113がブラケット93の面方向に沿って突出形成されている。このボルト座113には、不図示のボルトを挿通可能な貫通孔114が形成されている。また、ブラケット93には、ポンプケース94に設けられたポンプに連通する不図示の油路が形成されている。この油路を介し、不図示のポンプとミッション側の油路とが連結される。
【0047】
制御部4は、モータケース50の後述する基板収納部52に収納される不図示の基板を備えている。基板には、ステータ40に供給する電流を制御するFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等の複数のスイッチング素子等が実装されている。
【0048】
(モータケース)
図2は、ステータ40がインサート成型されたモータケース50の斜視図である。
図3は、
図2のA−A線に沿う断面図である。
図2、
図3に示すように、モータケース50は、ステータ40が埋設されている略有底筒状のケース本体51と、ケース本体51の外周面51aに一体成型され制御部4を構成する基板収納部52と、からなる。基板収納部52は、軸方向の平面視が略長方形状となるように形成され、ポンプケース94側の面に開口部52aを有する箱状のものである。
【0049】
また、基板収納部52の一側には、コネクタハウジング54が一体成型されている。このコネクタハウジング54には、外部機器から延びるコネクタ(何れも不図示)が嵌着される。外部機器は、不図示の基板を介してステータ40に電力を供給したり、制御信号を出力したりする。
【0050】
コネクタハウジング54内には、コネクタ端子55の一端55aが突出されている。コネクタ端子55の他端55bは、基板収納部52の底面52bから突出している。コネクタ端子55の他端55bは、不図示の基板に電気的に接続される。
また、基板収納部52の底面52bには、ステータ40の後述する巻線5と不図示の基板とを電気的に接続するための結線端子56の一端56aが突出されている。結線端子56の他端56b(
図6参照)は、基板収納部52に埋設され、巻線5に接続される。
【0051】
一方、ケース本体51は、開口部51bが基板収納部52の開口部52aと同じ方向を向くように形成されている。また、ケース本体51は、開口部51b側の端面51cが基板収納部52の開口部52aの周縁とほぼ同一面上となるように形成されている。さらに、ケース本体51の外周面51aには、開口部51b側に2つのボルト座57が一体成型されている。
【0052】
ボルト座57は、モータケース50を不図示の外部機器に固定するためのものである。2つのボルト座57は、ケース本体51の径方向中心を挟んで対向するように配置されている。そして、ボルト座57は、ケース本体51の外周面51aから径方向外側に向かって突出形成されている。ボルト座57には、不図示のボルトを挿通可能な貫通孔が軸方向に沿って形成されており、ここにカラー58が装着される。カラー58は、例えば炭素鋼等により形成されている。
【0053】
ここで、ポンプケース94にも、ケース本体51のボルト座57に対応する位置に貫通孔(不図示)が形成されており、さらに、ブラケット93には、ケース本体51のボルト座57に対応する位置に雌ネジ部(不図示)が刻設されている。そして、ケース本体51のボルト座57側からボルト59(
図1参照)を挿入し、このボルトがポンプケース94の貫通孔を介してブラケット93の雌ネジ部に螺入される。これにより、モータケース50、ポンプ本体92、およびブラケット93が一体的に締結固定される。
【0054】
(ステータ)
図4は、ステータ40の斜視図である。
同図に示すように、ステータ40は略円筒状に形成されており、ステータ40の軸方向とケース本体51の軸方向とが一致した状態でケース本体51内に埋設されている。
ステータ40のコア本体11は、略円筒状のバックヨーク31を有している。また、コア本体11は、バックヨーク31から径方向内側に向かって突出形成された複数のティース32と、このティース32の周囲を被覆するように装着された絶縁性のインシュレータ33と、このインシュレータ33の上からティース32に巻回される巻線5と、を備えている。そして、それぞれのティース32に巻線5を巻回することにより、複数のコイル6が形成される。
【0055】
本実施形態のステータ40では、ティース32が6つ設けられており、3相(U相、V相、W相)構造になっている。各相のティース32は、U相、V相、W相の順に周方向に並んで配置されている。すなわち、2つのティース32を間に挟んで両側に位置するティース32同士が同相のティース32となる。
【0056】
(分割コア)
ここで、コア本体11のバックヨーク31は、周方向に分割可能な分割コア方式が採用されている。すなわち、コア本体11のバックヨーク31は、周方向に複数に分割された分割コア10を環状に連結して構成されている。
【0057】
図5は、分割コア10の斜視図である。
同図に示すように、分割コア10は、例えば金属板を複数積層してなるものであって、周方向に延びる分割バックヨーク30を有している。分割バックヨーク30は、分割コア10を環状に連結したときにバックヨーク31の環状の磁路を形成する部分である。分割バックヨーク30は、断面略円弧状に形成されている。
【0058】
分割バックヨーク30の周方向の両端部は、他の分割バックヨーク30に圧入によって連結される連結部12a,12bになっている。一方の連結部12aは凸形状を有し、他方の連結部12bは連結部12aを受け入れ可能な凹形状を有している。
なお、
図4に示すように、連結部12a,12bを介して各分割コア10を連結した状態(バックヨーク31を形成した状態)では、バックヨーク31の外周面31aには、連結部12a,12bが形成されている箇所に、これら連結部12a,12bによって軸方向に沿う凹部31bが形成される。
【0059】
また、分割バックヨーク30の内周面には、周方向略中央からティース32が径方向内側(ロータの回転中心側)に向かって突出形成されている。つまり、各分割コア10は、それぞれティース32を1つ備えている。
ティース32は、軸方向に直交する断面が略T字状に形成されており、径方向内側端に周方向両側に沿って延びる鍔部14を有している。そして、ティース32の分割バックヨーク30と鍔部14との間に、インシュレータ33の上から巻線5が巻回されている。
【0060】
インシュレータ33は、第1インシュレータ16と、第2インシュレータ17と、からなる。第1インシュレータ16および第2インシュレータ17は、それぞれティース32を分割コア10の軸方向の両端部10a,10bから挟み込むように装着されている。各インシュレータ16,17は、鍔部14および分割バックヨーク30の連結部12a,12bを露出させつつティース32を被覆するインシュレータ本体16a,17aを有している。
【0061】
インシュレータ本体16a,17aには、分割コア10の両端部10a,10bに対応する箇所に、軸方向に沿って立設する外壁部18aおよび内壁部18bが一体成型されている。
外壁部18aは、ティース32の根元部に対応する位置に配置され、周方向に沿って延在するように断面弧状に形成されている。外壁部18aには、2つのスリット19a,19b(第1スリット19a、第2スリット19b)が周方向に等間隔で形成されている。これらスリット19a,19bは、ティース32に巻回された巻線5を径方向外側に引き出すためのものである。また、外壁部18aの周方向略中央には、後述の浮き防止リング7と係合する係合爪33aが、径方向外側に向かって突出形成されている。
【0062】
一方、内壁部18bは、鍔部14の径方向内側の端面に対応する部位に配置され、周方向に沿って延在するように断面弧状に形成されている。すなわち、内壁部18bの周方向の長さよりも外壁部18aの周方向の長さが長く設定されている。内壁部18bの周方向中央の大部分には、凹部20が形成されている。この凹部20の深さは、外壁部18aのスリット19a,19bの深さよりも浅く設定されている。
【0063】
このような構成のもと、各分割コア10に巻線5が連続して巻回される。このため、各分割コア10(各ティース32)間に巻線5が跨ることにより、渡り線62(
図4参照)が形成される。そして、
図4に示すように、この後に各分割コア10を連結してステータ40を形成する。この際、渡り線62は、第1インシュレータ16の外壁部18aの外周面に沿わせて配線される。
【0064】
(浮き防止リング)
ステータ40の渡り線62が配線されている側(
図4における軸方向上側)には、第1インシュレータ16上に、浮き防止リング7が設けられている。浮き防止リング7は、渡り線62のバタつきを押さえると共に、渡り線62の第1インシュレータ16からの浮き上がりを防止するためのものである。浮き防止リング7は、樹脂により形成されている。
【0065】
浮き防止リング7は、第1インシュレータ16における外壁部18aの周囲を取り囲むようにリング状に形成されている。浮き防止リング7の外径は、バックヨーク31の外径とほぼ同一に設定されている。すなわち、第1インシュレータ16上に配線された渡り線62は、軸方向上側から浮き防止リング7によって覆われる。これにより、渡り線62の浮き上がりが防止される。
【0066】
さらに、浮き防止リング7の内周面には、隣接する各分割コア10の間に対応する位置に、渡り線押え73が一体成型されている。渡り線押え73は、隣接する各分割コア10の間に位置する渡り線62の浮き上がり(変位)を規制するためのものである。
渡り線押え73は、浮き防止リング7から径方向内側に突出するように形成されている。また、渡り線押え73は、軸方向でステータ40の端部に向かうに従って先細りとなるように三角状に形成されている。そして、軸方向に対して傾斜する一辺73aにより、渡り線62が押えられている。このため、渡り線62は、径方向内側で、且つ軸方向で浮き防止リング7とは反対側(
図4における軸方向下側)に押圧されながら渡り線押え73によって変位を規制される。
【0067】
また、浮き防止リング7には、第1インシュレータ16の外壁部18aに突出形成されている係合爪33aに対応する位置に、係合凹部7aが形成されている。この係合凹部7aは、係合爪33aと係合可能になっている。これにより、第1インシュレータ16上に浮き防止リング7がスナップフィット固定される。
【0068】
また、浮き防止リング7の一側には、略直方体状の結線ベース部75が一体成型されている。結線ベース部75には、3相に対応するように結線端子56が埋設されている。結線端子56は、断面略L字状に形成されており、一端56a側が軸方向に沿うように、他端56b側が径方向に沿うように配置されている。そして、結線端子56の一端56aが、基板収納部52の底面52b(
図2参照)から突出している。
【0069】
ここで、
図3に示すように、ステータ40は、プリモールドされてからモータケース50のケース本体51内にインサート成型される。すなわち、モータケース50は、後述のステータ40をプリモールドしてなる第1樹脂ハウジング(プリモールド体)121と、第1樹脂ハウジング121を覆うように形成される第2樹脂ハウジング122と、により構成されている。換言すれば、モータケース50のケース本体51は、第1樹脂ハウジング121と、この第1樹脂ハウジング122を覆う第2樹脂ハウジング122と、の2層構造になっている。そして、ケース本体51の第2樹脂ハウジング122に、同じく第2樹脂ハウジング122としての基板収納部52が一体成型されている。以下、第1樹脂ハウジング121について、詳述する。
【0070】
(第1樹脂ハウジング)
図6は、第1樹脂ハウジング121によってプリモールドされたステータ40の斜視図である。
図3、
図6に示すように、第1樹脂ハウジング121は、各分割コア10の内外周を覆うハウジング本体123と、第1インシュレータ16および浮き防止リング7を覆う第1端部ハウジング124と、第2インシュレータ17を覆う第2端部ハウジング125と、が一体成型されたものである。
ハウジング本体123は、ステータ40の外周面に形成される凹部31b(
図4参照)を覆うと共に、ティース32の鍔部14のうち、内周面を露出させるように、各分割コア10間に樹脂が充填されて形成される。
【0071】
第1端部ハウジング124は、第1インシュレータ16および浮き防止リング7を覆う第1端部本体127と、結線ベース部75を覆うベース被覆部128と、が一体成型されたものである。第1端部本体127は、第1インシュレータ16内に収納されている巻線5間の隙間にも充填されている。また、第1端部本体127の内周面127aの内径は、ハウジング本体123の内周面123aの内径と同一に設定されている。これにより、ハウジング本体123の内周面123aと第1端部本体127の内周面127aとが面一になる。
【0072】
一方、第1端部本体127の外周面127bは、ステータ40のバックヨーク31よりも拡径形成されている。さらに、第1端部本体127は、軸方向でベース被覆部128と同一高さとなるように、バックヨーク31の外周面31aのうち第1インシュレータ16側(
図3、
図6における上側)を覆うように形成されている。また、第1端部本体127は、軸方向外側(
図3、
図6における上側)に向かうに従って先細りとなるように、外周面127bが傾斜している。
【0073】
ベース被覆部128は、結線端子56の一端56aを露出させるように形成されている。また、ベース被覆部128には、結線端子56の一端56aが突出されている側とは反対側の一面128aに、溝部126が3箇所形成されている。各溝部126は、各結線端子56の他端56bに対応する位置に配置されており、これら溝部126を介してベース被覆部128から各結線端子56の他端56bが露出されている。また、ベース被覆部128の一面128aと、この一面128a側の第1端部本体127の端部127cは、面一になっている。
【0074】
一方、第2端部ハウジング125は、第2インシュレータ17内に収納されている巻線5間の隙間に樹脂を充填させつつ、第2インシュレータ17を覆うように形成されている。また、第2端部ハウジング125の内周面125aの内径は、ハウジング本体123の内周面123aの内径と同一に設定されている。これにより、第2端部ハウジング125の内周面125aとハウジング本体123の内周面123aとが面一になる。さらに、第2端部ハウジング125の外周面125bの外径は、ハウジング本体123の外周面123bの外径と同一に設定されている。これにより、第2端部ハウジング125の外周面125bとハウジング本体123の外周面123bとが面一になる。
【0075】
また、第1樹脂ハウジング121には、第1端部ハウジング124と第2端部ハウジング125との間に跨るように、リブ部129が2箇所ほぼ120度の角度で形成されている。より具体的には、各リブ部129は、第1端部ハウジング124を構成する第1端部本体127の端部127cから第2端部ハウジング125における外周面125bの軸方向外側端よりもやや手前に至る間に形成されている。そして、リブ部129は、径方向外側の側面129aが、第1端部ハウジング124から第2端部ハウジング125側の先端に向かうに従って先細りとなるように傾斜されている。また、各リブ部129は、軸方向に沿って延出形成されており、ステータ40の外周面に形成される複数の凹部31b(
図4参照)の一つと径方向で対向する位置に配置されている。
【0076】
また、第1樹脂ハウジング121には、第1端部ハウジング124と第2端部ハウジング125との間に跨るように、且つ各リブ部129からほぼ120度の角度の位置にリブ部129と同等形状の樹脂流路部131が形成されている。
詳細は後述するが、樹脂流路部131は、第1樹脂ハウジング121の樹脂成型時に、2箇所の樹脂注入口119から注入された溶融樹脂が金型120内において、樹脂流路部131側で均等に行き渡るように溶融樹脂の流動性を向上させる。すなわち、樹脂流路部131は、樹脂の充填ムラを低減させるための樹脂の流路としても機能する。つまり、溶融した樹脂は、樹脂注入口119から樹脂流路部131側に至るにつれて温度が下がって流動性が低下してくるため、この樹脂流路部131によって、この付近での樹脂の流動性が確保される。2箇所の樹脂注入口119から注入された溶融樹脂は第1端部本体127の端部127cを経由して樹脂流路部131付近で合流し、樹脂流露部131を通じて第2端部ハウジング125側に行き渡る。
【0077】
(モータケースの形成方法)
次に、
図7に基づいて、モータケース50の製造方法について説明する。
図7は、モータケース50の製造方法についての説明図である。
同図に示すように、モータケース50を形成するにあたって、まず、ステータ40をプリモールドして第1樹脂ハウジング121を形成する。この際、予め巻線5が巻回された分割コア10を環状に連結してステータ40を形成する。また、ステータ40の第1インシュレータ16上に浮き防止リング7をスナップフィット固定しておく。
【0078】
そして、このようなステータ40を、金型120内にセットする。ここで、ステータ40の外周面は、凹部31bを除いた表面が露出する形になり、鍔部14の内周面も露出している。このため、この露出したステータ40の外周面および内周面を利用して金型120に対するステータ40の位置決めを行うことができる。すなわち、金型120に、露出したステータ40の外周面や内周面を当接させることにより、金型120に対するステータ40の位置決めを高精度に行うことが可能になる。
【0079】
また、金型120には、ステータ40の径方向外側の外周面(バックヨーク31の外周面31a)で、且つ第1樹脂ハウジング121のリブ部129に対応する位置に、それぞれ樹脂注入口119が設けられている。また、樹脂注入口119は、第1端部本体127の外周面127bの端部127c寄りで、且つリブ部129となる位置に沿う直線上に配置されている。このような樹脂注入口119を通って、金型120内に溶融された樹脂が注入され、第1樹脂ハウジング121が形成される(第1ハウジング形成工程)。
【0080】
ここで、樹脂注入口119は、リブ部129となる位置に沿う直線上に配置されている。このため、樹脂注入口119から流入された樹脂は、リブ部129となる流路を通って、径方向外側から第2インシュレータ17内へと樹脂が流れ込む(
図7における矢印Y1参照)。また、径方向外側から第1インシュレータ16内へと樹脂が流れ込む(
図7における矢印Y2参照)。
また、リブ部129が形成される位置には、ステータ40の外周面に凹部31bが形成されている。このため、凹部31bが形成されている分、各インシュレータ16,17へと流れる樹脂の流路が大きく確保され、樹脂の湯流れが向上する。
【0081】
各インシュレータ16,17に流れ込んだ樹脂は、さらに奥へと流れ込み(
図7における矢印Y3参照)、周方向で隣接するティース32間に充填される。そして、溶融樹脂は樹脂流路部131側で合流して、ベース被覆部126を形成し、金型120内に樹脂が完全に充填された後、冷却を行う。これにより、ステータ40の周囲を覆う第1樹脂ハウジング121が形成される。
【0082】
ここで、金型120を用いて第1樹脂ハウジング121を射出成型するので、金型120から取り外した第1樹脂ハウジング121には、樹脂注入口119に対応する位置、つまり、径方向外側の外周面(第1端部ハウジング124の外周面127b)に、樹脂注入痕130が2箇所形成される。
また、上記したように、第1樹脂ハウジング121を形成するにあたって、溶融された樹脂の流れの方向は、ステータ40の外周面、つまり、径方向外側から径方向内側へと向かう方向である。このため、各分割コア10には、分割バックヨーク30の外周面30b側から径方向内側に向かって樹脂圧がかかる。つまり、各分割コア10には、樹脂圧によって互いに密接する方向に向かって力が作用する。
【0083】
続いて、第1樹脂ハウジング121によってプリモールドされたステータ40を用いて二次成型を行い、第2樹脂ハウジング122を形成する(第2ハウジング形成工程)。この際、第2ハウジング形成工程において使用する金型(不図示)に、結線端子56やコネクタ端子55をセットする。そして、第2樹脂ハウジング122を形成し、モータケース50の製造が完了する。
【0084】
(電動ポンプの動作)
次に、電動ポンプ1の動作について説明する。
コネクタハウジング54のコネクタ端子55を介して不図示の基板に供給された電流は、ステータ40に巻回されているコイル6に選択的に供給される。これにより、ステータ40に所望の磁束が形成される。この磁束とロータ80の永久磁石(不図示)で磁気的な吸引力や反発力が生じ、ロータ80が回転する。ロータ80が回転すると、これに伴ってポンプ部3が駆動する。これにより、例えば自動車に搭載されたミッションにオイルが供給される。
【0085】
このように、上述の第1実施形態では、ステータ40をインサート成型するにあたって、まず、第1樹脂ハウジング121を形成している。この第1樹脂ハウジング121には、径方向外側の外周面、つまり第1端部ハウジング124の外周面127bに、2箇所の樹脂注入痕130が形成されている。すなわち、第1樹脂ハウジング121を形成するにあたって、溶融された樹脂の流れの方向は、ステータ40の径方向外側から径方向内側へと向かう方向である。このため、各分割コア10には、分割バックヨーク30の外周面30b側から径方向内側に向かって樹脂圧がかかる。つまり、各分割コア10には、樹脂圧によって互いに密接する方向に向かって力が作用する。このため、分割コア10同士の結合部位の結合力が弱くなって、分割コア10同士の間に隙間が形成されたままステータ40がインサート成型されてしまうことを防止できる。この結果、コア本体11の径方向内側(スロット開口部側)の真円度が高まり、モータ性能が低下してしまうことを防止できる。
【0086】
また、第1樹脂ハウジング121を形成する際の樹脂の流れが、径方向外側から径方向内側へと向かう一方向に限定できる。このため、例えば、樹脂圧を受けてステータ40に巻回された巻線5が巻崩れる場合、この巻崩れ方向を一方向に限定することができる。このため、第1樹脂ハウジング121を形成し易くすることができると共に、第1樹脂ハウジング121を高精度に形成できる。
【0087】
さらに、第1樹脂ハウジング121の樹脂注入痕130は、リブ部129に沿う直線上に配置されている。つまり、金型120の樹脂注入口119から流入された樹脂は、リブ部129となる流路を通ることになるので湯流れが良好で、各インシュレータ16,17内や周方向で隣接するティース32間に樹脂を充填しやすくすることができる。このため、第1樹脂ハウジング121を、より高精度に形成し易くすることができる。
また、リブ部129が形成される位置には、ステータ40の外周面に凹部31bが形成されている。このため、凹部31bが形成されている分、各インシュレータ16,17へと流れる樹脂の流路が大きく確保され、樹脂の湯流れをさらに向上させることができる。
【0088】
さらに、モータケース50を、ステータ40をプリモールドしてなる第1樹脂ハウジング121と、第1樹脂ハウジング121を覆うように形成される第2樹脂ハウジング122と、の2層構造としている。そして、第2樹脂ハウジング122に、拡張部品取付部である基板収納部52を一体成型している。このため、モータケース50を一度に形成する場合と比較して各樹脂成型体(第1樹脂ハウジング121、第2樹脂ハウジング122)の肉厚を薄肉化できる。したがって、モータケース50に基板収納部52を一体的に設ける場合であっても、この基板収納部52への樹脂の湯流れの悪化を抑制できる。また、第1樹脂ハウジング121や第2樹脂ハウジング122の肉厚を全体として均一化しやすくなり、樹脂成型時のヒケを防止できる。よって、モータケース50全体を高精度に形成できる。
【0089】
また、ティース32の鍔部14のうち、内周面を露出させるように、各分割コア10間に樹脂が充填されて第1樹脂ハウジング121が形成される。このため、第2樹脂ハウジング122の成型時に基準面としてティース32の鍔部14の内周面を使用することができる。さらに、完成したモータ部2への通電時に、ステータ40の径方向内側とロータ80との間に介在物がなくなるため、ステータ40側からロータ80側への磁束の通りが良好となる。
さらに、ステータ40の渡り線62が配線されている側の第1インシュレータ16上に、渡り線62の浮き上がりを防止するための浮き防止リング7を設けている。そして、第1樹脂ハウジング121を形成する際(ステータ40をプリモールドする際)、第1樹脂ハウジング121によって、浮き防止リング7も覆うように構成している。
【0090】
ここで、第1樹脂ハウジング121を形成する際、樹脂圧によって渡り線62が変位してしまい、渡り線62を所定の位置にインサート成型できない可能性がある。このため、浮き防止リング7によって渡り線62を上から押えることにより、樹脂成型時の渡り線62の変位を防止でき、渡り線62を所定の位置にインサート成型できる。この結果、第1樹脂ハウジング121全体を高精度に形成できる。
さらに、第1樹脂ハウジング121に浮き防止リング7もインサート成型することにより、第2樹脂ハウジング122を形成する際、複雑な樹脂の流路を減少できる。このため、第2樹脂ハウジング122を容易、且つ高精度に形成できる。
【0091】
また、第1樹脂ハウジング121には、第1端部ハウジング124と第2端部ハウジング125との間に跨るように、且つ各リブ部129からほぼ120度の角度の位置にリブ部129と同等形状の樹脂流路部131が形成されている。このため、第1樹脂ハウジング121の樹脂成型時に、2箇所の樹脂注入口119から注入された溶融樹脂が金型120内において、樹脂流路部131側で均等に行き渡るように溶融樹脂の流動性を向上させることができる。よって、第1樹脂ハウジング121を高精度に成型できる。
【0092】
(第2実施形態)
次に、
図6、
図7を援用し、
図8に基づいて、本発明の第2実施形態について説明する。
図8は、第2実施形態におけるステータ240の斜視図であって、前述の
図4に対応している。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する。
同図に示すように、第2実施形態におけるステータ240は、周方向に分割可能に構成されていない。この点、前述の第1実施形態のステータ40と相違する点である。
【0093】
すなわち、ステータ240のコア本体211は、略円筒状のバックヨーク231を有している。また、コア本体211は、バックヨーク231から径方向内側に向かって突出形成された複数のティース32と、このティース32の周囲を被覆するように装着された絶縁性のインシュレータ33と、このインシュレータ33の上からティース32に巻回される巻線5と、を備えている。そして、それぞれのティース32に巻線5を巻回することにより、複数のコイル6が形成される。
【0094】
このような構成のもと、モータケース50にステータ240をインサート成型する際、そのモータケース50の形成方法は、前述の第1実施形態と同様である。すなわち、モータケース50にステータ240をインサート成型するにあたって、まず、ステータ240をプリモールドして第1樹脂ハウジング121を形成する(第1ハウジング形成工程)。この際、金型120(
図7参照)では、ステータ240の径方向外側の外周面(バックヨーク231の外周面31a)で、且つ第1樹脂ハウジング121のリブ部129(
図6参照)に対応する位置から樹脂を注入する。このため、樹脂成型された第1樹脂ハウジング121には、径方向外側の外周面(第1端部ハウジング124の外周面127b)に、樹脂注入痕130(
図6参照)が形成される。
【0095】
続いて、第1樹脂ハウジング121によってプリモールドされたステータ240を用いて二次成型を行い、第2樹脂ハウジング122を形成する(第2ハウジング形成工程)。この際、第2ハウジング形成工程において使用する金型(不図示)に、結線端子56やコネクタ端子55をセットする。そして、第2樹脂ハウジング122を形成し、モータケース50の製造が完了する。
【0096】
したがって、上述の第2実施形態によれば、モータケース50を一度に形成する場合と比較して各樹脂成型体(第1樹脂ハウジング121、第2樹脂ハウジング122)の肉厚を薄肉化できる。このため、モータケース50に基板収納部52を一体的に設ける場合であっても、この基板収納部52への樹脂の湯流れの悪化を抑制できる。また、第1樹脂ハウジング121や第2樹脂ハウジング122の肉厚を全体として均一化しやすくなり、樹脂成型時のヒケを防止できる。このため、モータケース50全体を高精度に形成できる。
【0097】
また、第1樹脂ハウジング121を形成する際の樹脂の流れが、径方向外側から径方向内側へと向かう一方向に限定できるので、例えば、樹脂圧を受けてステータ240に巻回された巻線5が巻崩れる場合、この巻崩れ方向を一方向に限定することができる。このため、第1樹脂ハウジング121を形成し易くすることができると共に、第1樹脂ハウジング121を高精度に形成できる。
【0098】
さらに、第1樹脂ハウジング121の樹脂注入痕130は、リブ部129に沿う直線上に配置されている。つまり、金型120の樹脂注入口119から流入された樹脂は、リブ部129となる流路を通ることになるので湯流れが良好で、各インシュレータ16,17内や周方向で隣接するティース32間に樹脂を充填しやすくすることができる。このため、第1樹脂ハウジング121を、より高精度に形成し易くすることができる。
また、リブ部129が形成される位置には、ステータ40の外周面に凹部31bが形成されている。このため、凹部31bが形成されている分、各インシュレータ16,17へと流れる樹脂の流路が大きく確保され、樹脂の湯流れをさらに向上させることができる。
【0099】
さらに、ステータ240の渡り線62が配線されている側の第1インシュレータ16上に、渡り線62の浮き上がりを防止するための浮き防止リング7を設けている。このように、浮き防止リング7によって渡り線62を上から押えることにより、樹脂成型時の渡り線62の変位を防止でき、渡り線62を所定の位置にインサート成型できる。この結果、第1樹脂ハウジング121全体を高精度に形成できる。
また、第1樹脂ハウジング121に浮き防止リング7もインサート成型することにより、第2樹脂ハウジング122を形成する際、複雑な樹脂の流路を減少できる。このため、第2樹脂ハウジング122を容易、且つ高精度に形成できる。
【0100】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、電動ポンプ1は、自動車に搭載されたミッション(何れも不図示)を駆動させるために、このミッションにオイルを供給するためのものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな用途に電動ポンプ1を用いることができる。
【0101】
さらに、上述の実施形態では、電動ポンプ1を構成するモータケース50に、ポンプ部3のステータ40をインサート成型した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、モータ部2単体として、ステータ40がインサート成型される構成を採用してもよい。
また、上述の実施形態では、ステータ40,240は、ティース32が6つ設けられており、3相(U相、V相、W相)構造になっている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ティース32の個数やロータ80の永久磁石(不図示)の個数は、任意に設定することができる。
【0102】
また、上述の実施形態では、金型120の樹脂注入口119は、ステータ40の径方向外側の外周面(バックヨーク31の外周面31a)で、且つ第1樹脂ハウジング121のリブ部129となる位置に沿う直線上に配置されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、リブ部129と異なる位置上に、樹脂注入口119を設けてもよい。さらに、ステータ40の径方向外側の外周面から樹脂を注入可能な位置に樹脂注入口119が設けられていればよい。但しこの場合、バックヨーク31の外周面31a側の樹脂流路を確保するために、樹脂注入口119の位置によっては、バックヨーク31の外周面31aに樹脂流路を形成したり、バックヨーク31の外周面31a全体を第1樹脂ハウジング121で覆うように構成し、樹脂流路を確保したりする必要がある。
【0103】
また、上述の実施形態では、第2樹脂ハウジング122に、拡張部品取付部として制御部4を構成する基板収納部52を一体成型した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、第2樹脂ハウジング122に、拡張部品取付部としてさまざまなものを一体成型することが可能である。例えば、基板収納部52に代わってコネクタハウジング54だけを一体成型してもよい。
【0104】
さらに、上述の実施形態では、第1樹脂ハウジング121にリブ部129が2箇所形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、リブ部129の個数は任意に設定することが可能である。但し、このリブ部129に沿う直線上に、樹脂注入口119を配置する場合、第1樹脂ハウジング121を形成する際の樹脂圧が、ステータ40の径方向外側から径方向内側に作用するように、少なくとも2つリブ部129を設けることが望ましい。換言すれば、第1樹脂ハウジング121には、少なくとも2つの樹脂注入痕130が形成されていることが望ましい。
【0105】
また、上述の実施形態では、第1ハウジング121に、樹脂流路部131が1箇所形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、樹脂流路部131の個数は任意に設定することが可能である。