特許第6815879号(P6815879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6815879インサートボルトを有する樹脂ブラケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815879
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】インサートボルトを有する樹脂ブラケット
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/04 20060101AFI20210107BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20210107BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20210107BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20210107BHJP
【FI】
   F16B35/04 B
   B29C45/14
   B29C45/26
   B29L9:00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-10975(P2017-10975)
(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公開番号】特開2018-119597(P2018-119597A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(73)【特許権者】
【識別番号】000228981
【氏名又は名称】日本スタッドウェルディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓑輪 健一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 繁
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 誠
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−121635(JP,A)
【文献】 特開平11−148508(JP,A)
【文献】 特開昭58−069012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/04
B29C 45/14
B29C 45/26
B29L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトと、当該ボルトの頭部をインサート成形した第1樹脂部と、当該第1樹脂部の一部をインサート成形した第2樹脂部とを備えた、インサートボルトを有する樹脂ブラケットであって、
前記第1樹脂部の前記一部には、
軸心が前記ボルトと一致した円筒部と、
前記円筒部の外径側面から前記ボルトの軸心に対して垂直な外方向に突出したリブと、
前記円筒部の一端側から前記ボルトの軸心に対して垂直な外方向に延出して設けられ、前記ボルトの軸心方向に貫通した貫通孔が形成されたフランジ部と、が設けられ、
前記第2樹脂部は、前記貫通孔から前記フランジ部外縁までの外周部を樹脂材で取り囲みかつ前記フランジ部および前記リブを埋め込むように、インサート成形されている、
ことを特徴とする、インサートボルトを有する樹脂ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトを樹脂材でインサート成形した樹脂ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に、ボルトまたはナットなどのインサート部材を第1の樹脂でインサート成形し、このインサート成形品をさらに第2の樹脂に埋め込んで成形した樹脂成形品が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−121635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インサート部材をインサート成形する第1の樹脂と、このインサート成形品と結合させる第2の樹脂とに、異なる種類の樹脂材料(異種樹脂材)を用いる場合がある。このような場合には、第1の樹脂と第2の樹脂との間の機械的な結合(接着)が破壊されないように、例えばインサート部材がボルトであれば、ボルトの軸心周りの回転方向による破壊に抵抗する「耐回転力」や、ボルトの引き抜き方向(軸心方向)による破壊に抵抗する「耐引き抜き力」などを、向上させる必要がある。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、異種樹脂材が結合された結合箇所における耐回転力および耐引き抜き力を向上させ、異種樹脂材間における結合力(接着力)を向上させることができる、インサートボルトを有する樹脂ブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ボルトと、ボルトの頭部をインサート成形した第1樹脂部と、第1樹脂部の一部をインサート成形した第2樹脂部とを備えた、インサートボルトを有する樹脂ブラケットであって、第1樹脂部の一部には、軸心がボルトと一致した円筒部と、円筒部の外径側面からボルトの軸心に対して垂直な外方向に突出したリブと、円筒部の一端側から前記ボルトの軸心に対して垂直な外方向に延出して設けられ、ボルトの軸心方向に貫通した貫通孔が形成されたフランジ部と、が設けられ、第2樹脂部は、貫通孔からフランジ部外縁までの外周部を樹脂材で取り囲みかつフランジ部およびリブを埋め込むように、インサート成形されている、ことを特徴とする。
【0007】
本態様の樹脂ブラケットは、第1樹脂部の円筒部の外径側面に、ボルトの軸心に対して垂直な外方向に突出したリブを設ける。このリブに対して、第2樹脂部を、リブを埋め込むように成形する。
【0008】
これにより、第1樹脂部と第2樹脂部とがリブを介して噛み合う構造となるため、ボルトの軸心周りの回転方向に対する樹脂部間の耐回転力が向上する。
【0009】
また、本態様の樹脂ブラケットは、第1樹脂部の円筒部の一端側からボルトの軸心に対して垂直な外方向に延出したフランジ部に、ボルトの軸心方向に貫通した貫通孔を設ける。この貫通孔に対して、第2樹脂部を、貫通孔からフランジ部外縁までの外周部を樹脂材で取り囲み、かつ、フランジ部を埋め込むように成形する。
【0010】
これにより、第1樹脂部のフランジ部の外周部を第2樹脂部が取り囲んで掴む構造となるため、ボルトの引き抜き方向(軸心方向)に対する樹脂部間の耐引き抜き力が向上する。また、第1樹脂部の貫通孔に第2樹脂部の樹脂材が充填されるので、ボルトの軸心周りの回転方向に対する樹脂部間の耐回転力が向上する。よって、第1樹脂部と第2樹脂部との間の結合力(接着力)が向上する。
【0011】
さらに、本態様の樹脂ブラケットは、第1樹脂部の円筒部の一端側からボルトの軸心に対して垂直な外方向に延出するフランジ部を設ける。このフランジ部に対して、第2樹脂部を、フランジ部を覆うように成形する。
【0012】
これにより、第2樹脂部が第1樹脂部のフランジ部を挟んだカギ型構造となるため、ボルトの引き抜き方向(軸心方向)に対する樹脂部間の耐引き抜き力が向上する。よって、第1樹脂部と第2樹脂部との間の結合力(接着力)が向上する。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明のインサートボルトを有する樹脂ブラケットによれば、異種樹脂材が結合された結合箇所における耐回転力および耐引き抜き力を向上させ、異種樹脂材間における結合力(接着力)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂ブラケットの構造例を示す図
図2A図1に示す樹脂ブラケットのA−A断面図
図2B図1に示す樹脂ブラケットのB−B断面図
図2C図1に示す樹脂ブラケットのC−C断面図
図2D図1に示す樹脂ブラケットのD−D断面図
図3】本実施形態の樹脂ブラケットを構成するボルトを示す図
図4】本実施形態の樹脂ブラケットを構成するボルトおよび第1樹脂部を示す図
図5A図4に示す第1樹脂部のF−F断面図
図5B図4に示す第1樹脂部のG−G断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
[概要]
本発明のインサートボルトを有する樹脂ブラケットは、種類が異なる第1樹脂部と第2樹脂部とが、リブを用いた噛み合い構造、貫通孔を用いた掴み合い構造、およびフランジを用いたカギ型構造を、有している。これらの構造により、第1樹脂部と第2樹脂部との結合箇所における耐回転力および耐引き抜き力を向上させることができる。
【0016】
[樹脂ブラケットの構造]
図1は、本発明の一実施形態に係るインサートボルトを有する樹脂ブラケット1の構造例を示す上面図(a)、正面図(b)、および底面図(c)である。図2A図2Dは、それぞれ、図1(a)および(b)に示した本実施形態に係る樹脂ブラケット1のA−A線による断面図、B−B線による断面図、C−C線による断面図、およびD−D線による断面図である。図3は、本実施形態に係る樹脂ブラケット1を構成するボルト10の形状を示す図である。図4は、本実施形態に係る樹脂ブラケット1を構成するボルト10をインサート成形した第1樹脂部20の形状を示す正面図(a)および底面図(b)である。図5Aおよび図5Bは、それぞれ、図4(a)に示した第1樹脂部20のF−F線による断面図およびG−G線による断面図である。
【0017】
本実施形態に係る樹脂ブラケット1は、図1および図2A図2Dに示すように、インサート部材であるボルト10と、ボルト10の頭部11を所定の樹脂材料でインサート成形した第1樹脂部20と、第1樹脂部20の一部をインサート成形した第2樹脂部30と、を含んで構成されている。
【0018】
・ボルト10
ボルト10は、図3に示すように、六角形のボルト頭部11と、ボルト頭部11から突出するボルト軸部12と、を備えている。ボルト軸部12には、例えば、ナット(図示せず)などが螺合される雄ネジが形成されている。ボルト頭部11は、インサート成形によって、第1樹脂部20に埋め込まれる。このボルト頭部11は、ボルト軸部12にナットなどが螺合された際に、ボルト10が供回り(空回り)しないように、後述する第1樹脂部20と係合して回転力を抑止する役割を果たす。よって、ボルト頭部11の形状は、上述した役割を果たすことができれば、六角形に限られたものではなく、他の形状であってもよい。
【0019】
・第1樹脂部20
第1樹脂部20は、図4に示すように、ボルト軸部12が露出し、かつボルト頭部11が埋め込まれるように、ボルト10を所定の樹脂材料でインサート成形した部材である。この第1樹脂部20には、例えばポリアミド(PA66)などの樹脂材料を使用することができる。
【0020】
第1樹脂部20は、円筒部21と、円筒部21の一端側(一方底面)からボルト10の軸心に対して垂直な外方向に延出して設けられたフランジ部23と、円筒部21の他端側(他方底面)からボルト10の軸心に対して垂直な外方向に延出して設けられた埋込部22と、を有している。
【0021】
埋込部22には、円筒部21の軸心とボルト10の軸心とを一致させた状態で、ボルト10のボルト頭部11が埋め込まれる。
【0022】
円筒部21の外径側面21sには、図4および図5Aに示すように、ボルト10の軸心周りの回転方向に対して垂直に突出する、換言するとボルト10の軸心に対して垂直な外方向に突出するリブ21rが、等角度間隔で4つ設けられている。すなわち、円筒部21の外径側面21sには、90度の間隔で、外方向に延出した4つのリブ21rが立設されている。各々のリブ21rは、その先端が、埋込部22の外周縁およびフランジ部23の外縁を越えないように形成されている。
【0023】
なお、円筒部21の外径側面21sに設けられるリブ21rの数は、4つに限られたものではなく、1つ以上の任意の数であっても構わない。また、円筒部21の外径側面21sに設けられるリブ21rの角度間隔は、等角度間隔に限られたものではなく、任意の角度であっても構わない。
【0024】
フランジ部23には、図4および図5Bに示すように、ボルト10の軸心方向に貫通した貫通孔23aが4つ設けられている。この貫通孔23aは、第1樹脂部20のインサート成形時に溶融した第2樹脂部30の樹脂材料が流れ込むことによって、フランジ部23の外周部23fを第2樹脂部30の樹脂材料で取り囲む役割を果たす。本実施形態では、この4つの貫通孔23aが、円筒部21の外径側面21sに設けられた隣り合うリブ21rとリブ21rとの間に設けられている。
【0025】
なお、フランジ部23に設けられる貫通孔23aの数は、円筒部21の外径側面21sに設けられるリブ21rの数に対応した4つに限られたものではなく、1つ以上の任意の数であっても構わない。また、フランジ部23に設けられる貫通孔23aは、隣り合うリブ21rとリブ21rとの間に1つだけとは限られず、複数の貫通孔23aが設けられても構わない。
【0026】
・第2樹脂部30
第2樹脂部30は、図1(b)および図2A図2Dに示すように、第1樹脂部20の一部(円筒部21およびフランジ部23)をインサート成形した部材である。第2樹脂部30には、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)などの樹脂材料を使用することができる。
【0027】
第2樹脂部30は、図2A図2Dに示すように、第1樹脂部20の円筒部21の外径側面21sを覆い、4つのリブ21rを埋め込むようにインサート成形される。また、第2樹脂部30は、図2A図2Dに示すように、第1樹脂部20の貫通孔23aからフランジ部23の外縁までの外周部23fを樹脂材料で取り囲み、かつ、フランジ部23を覆うようにインサート成形される。つまり第2樹脂部30は、図2Cに示すように、フランジ部23の外周部23fが第2樹脂部30の樹脂材料で覆われることになる。これにより、第2樹脂部30が第1樹脂部20と結合する。
【0028】
[樹脂ブラケット作用・効果]
上述したように、本実施形態に係るインサートボルトを有する樹脂ブラケット1は、第1樹脂部20において、円筒部21の外径側面21sに、ボルト10の軸心周りの回転方向に対して垂直に突出した、換言するとボルト10の軸心に対して垂直な外方向に突出した4つのリブ21rを、設けている。これに対して、第2樹脂部30を、埋め込むようにインサート成形している。
【0029】
この構造により、第1樹脂部20と第2樹脂部30とがリブ21rを介して噛み合うこととなり、第1樹脂部20と第2樹脂部30とが強く結合される。従って、ボルト10の軸心周りの回転方向に対する樹脂部間の耐回転力を向上させることができる。
【0030】
また、本実施形態に係るインサートボルトを有する樹脂ブラケット1は、第1樹脂部20において、円筒部21の一端側からボルト10の軸心に対して垂直な外方向に延出したフランジ部23に、ボルト10の軸心方向に貫通した4つの貫通孔23aを、設けている。これに対して、第2樹脂部30を、貫通孔23aからフランジ部23の外縁までの外周部23fを樹脂材料で取り囲み、かつ、フランジ部23を埋め込むようにインサート成形している。
【0031】
この構造により、第1樹脂部20のフランジ部23の外周部23fを第2樹脂部30が取り囲んで掴むこととなるため、第1樹脂部20と第2樹脂部30とが強く結合される。従って、ボルト10の引き抜き方向(軸心方向)に対する樹脂部間の耐引き抜き力を向上させることができる。また、第1樹脂部20の貫通孔23aに第2樹脂部30の樹脂材が充填されるので、ボルト10の軸心周りの回転方向に対する樹脂部間の耐回転力を向上させることができる。よって、第1樹脂部20と第2樹脂部30との間の結合力(接着力)を向上させることができる。
【0032】
さらに、本実施形態に係るインサートボルトを有する樹脂ブラケット1は、第1樹脂部20において、円筒部21の一端側からボルト10の軸心に対して垂直な外方向に延出するフランジ部23を、設けている。これに対して、第2樹脂部30を、フランジ部23を覆うように成形している。
【0033】
この構造により、第1樹脂部20のフランジ部を第2樹脂部30が挟んだカギ型構造となるため、第1樹脂部20と第2樹脂部30とが強く結合される。従って、ボルト10の引き抜き方向(軸心方向)に対する樹脂部間の耐引き抜き力を向上させることができる。よって、第1樹脂部20と第2樹脂部30との間の結合力(接着力)を向上させることができる。
【0034】
なお、本実施形態のように、第1樹脂部20の樹脂材がポリアミドであり、第2樹脂部30の樹脂材が高密度ポリエチレンである場合、ボルト10が周辺の熱源による輻射熱によって加熱された場合でも、ボルト10からポリアミドを介した高密度ポリエチレンへの熱伝達を抑制でき、高密度ポリエチレンが溶融することを回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の樹脂ブラケットは、樹脂部品を異なる種類の樹脂材料でインサート成形した樹脂成形品などに利用可能であり、特に異種樹脂材が結合された結合箇所の耐回転力および耐引き抜き力の向上を図りたい場合などに有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 樹脂ブラケット
10 ボルト
11 ボルト頭部
12 ボルト軸部
20 第1樹脂部
21 円筒部
21r リブ
21s 外径側面
22 埋込部
23 フランジ部
23a 貫通孔
23f 外周部
30 第2樹脂部
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B