(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記構造の候補毎に前記検出値の補正量を予め記憶しておき、前記構造の複数の候補から一の候補を選択したとき、選択した前記構造に対応する前記補正量で前記検出値を補正する、請求項1または請求項2に記載の射出成形機。
前記制御装置は、前記構造が前記別構造であったときの前記設定値を用いて前記構造が前記現構造であるときの前記操作量を生成する場合に、前記制御量とは異なる所定の物理量が一定になるように前記検出値を補正する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の射出成形機。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1は、一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図1および
図2に示すように、射出成形機2は、フレームFrと、型締装置10と、射出装置40と、エジェクタ装置50と、制御装置90と、入力装置95と、出力装置96とを有する。
【0011】
先ず、型締装置10、およびエジェクタ装置50について説明する。型締装置10などの説明では、型閉時の可動プラテン13の移動方向(
図1および
図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン13の移動方向(
図1および
図2中左方向)を後方として説明する。
【0012】
型締装置10は、金型装置30の型閉、型締、型開を行う。型締装置10は、固定プラテン12、可動プラテン13、サポートプラテン15、タイバー16、トグル機構20、型締モータ21および運動変換機構25を有する。
【0013】
固定プラテン12は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン12における可動プラテン13との対向面に固定金型32が取り付けられる。
【0014】
可動プラテン13は、フレームFr上に敷設されるガイド(例えばガイドレール)17に沿って移動自在とされ、固定プラテン12に対し進退自在とされる。可動プラテン13における固定プラテン12との対向面に可動金型33が取り付けられる。
【0015】
固定プラテン12に対し可動プラテン13を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型32と可動金型33とで金型装置30が構成される。
【0016】
サポートプラテン15は、固定プラテン12と間隔をおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、サポートプラテン15は、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。サポートプラテン15のガイドは、可動プラテン13のガイド17と共通のものでもよい。
【0017】
尚、本実施形態では、固定プラテン12がフレームFrに対し固定され、サポートプラテン15がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、サポートプラテン15がフレームFrに対し固定され、固定プラテン12がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0018】
タイバー16は、固定プラテン12とサポートプラテン15とを間隔をおいて連結する。タイバー16は、複数本用いられてよい。各タイバー16は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー16には型締力検出器18が設けられる。型締力検出器18は、タイバー16の歪みを検出することによって型締力を検出し、検出結果を示す信号を制御装置90に送る。
【0019】
尚、型締力検出器18は、歪みゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取り付け位置もタイバー16に限定されない。
【0020】
トグル機構20は、固定プラテン12に対し可動プラテン13を移動させる。トグル機構20は、可動プラテン13とサポートプラテン15との間に配設される。トグル機構20は、クロスヘッド20a、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される複数のリンク20b、20cを有する。一方のリンク20bは可動プラテン13に揺動自在に取付けられ、他方のリンク20cはサポートプラテン15に揺動自在に取付けられる。クロスヘッド20aを進退させると、複数のリンク20b、20cが屈伸し、サポートプラテン15に対し可動プラテン13が進退する。
【0021】
型締モータ21は、サポートプラテン15に取付けられており、トグル機構20を作動させる。型締モータ21は、クロスヘッド20aを進退させることにより、リンク20b、20cを屈伸させ、可動プラテン13を進退させる。
【0022】
運動変換機構25は、型締モータ21の回転運動を直線運動に変換してクロスヘッド20aに伝達する。運動変換機構25は、例えばボールねじ機構などで構成される。
【0023】
型締装置10の動作は、制御装置90によって制御される。制御装置90は、型閉工程、型締工程、型開工程などを制御する。
【0024】
型閉工程では、型締モータ21を駆動してクロスヘッド20aを設定速度で前進させることにより、可動プラテン13を前進させ、可動金型33を固定金型32に接触させる。クロスヘッド20aの位置や速度は、例えば型締モータ21のエンコーダ21aなどにより検出される。その検出結果を示す信号が、制御装置90に送られる。
【0025】
型締工程では、型締モータ21をさらに駆動してクロスヘッド20aを設定位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型33と固定金型32との間にキャビティ空間34が形成され、キャビティ空間34に液状の成形材料が充填される。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間34の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
【0026】
型開工程では、型締モータ21を駆動してクロスヘッド20aを設定速度で後退させることにより、可動プラテン13を後退させ、可動金型33を固定金型32から離間させる。
【0027】
尚、本実施形態の型締装置10は、駆動源として、型締モータ21を有するが、型締モータ21の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置10は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0028】
また、本実施形態の型締装置10は、型開閉方向が水平方向の横型であるが、型開閉方向が鉛直方向の竪型でもよい。
【0029】
エジェクタ装置50は、金型装置30から成形品を突き出す。エジェクタ装置50は、エジェクタモータ51、運動変換機構52、およびエジェクタロッド53を有する。
【0030】
エジェクタモータ51は、可動プラテン13に取り付けられる。エジェクタモータ51は、運動変換機構52に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構52に連結されてもよい。
【0031】
運動変換機構52は、エジェクタモータ51の回転運動をエジェクタロッド53の直線運動に変換する。運動変換機構52は、例えばボールねじ機構などで構成される。
【0032】
エジェクタロッド53は、可動プラテン13の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド53の前端部は、可動金型33内に進退自在に配設される可動部材35と接触する。尚、エジェクタロッド53は、可動部材35に連結されてもよい。
【0033】
エジェクタ装置50の動作は、制御装置90によって制御される。制御装置90は、突出し工程などを制御する。
【0034】
突出し工程では、エジェクタモータ51を駆動してエジェクタロッド53を前進させることにより、可動部材35を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ51を駆動してエジェクタロッド53を後退させ、可動部材35を元の位置まで後退させる。エジェクタロッド53の位置や速度は、例えばエジェクタモータ51のエンコーダ51aにより検出される。その検出結果を示す信号が、制御装置90に送られる。
【0035】
次に、射出装置40について説明する。射出装置40の説明では、型締装置10の説明と異なり、充填時のスクリュ43の移動方向(
図1および
図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ43の移動方向(
図1および
図2中右方向)を後方として説明する。
【0036】
射出装置40は、フレームFrに対し進退自在なスライドベースSbに設置され、金型装置30に対し進退自在とされる。射出装置40は、金型装置30にタッチされ、金型装置30内に成形材料を充填する。
【0037】
射出装置40は、例えば、シリンダ41、ノズル42、スクリュ43、冷却器44、計量モータ45、射出モータ46、圧力検出器47、加熱器48、および温度検出器49を有する。
【0038】
シリンダ41は、供給口41aから内部に供給された成形材料を加熱する。供給口41aはシリンダ41の後部に形成される。シリンダ41の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器44が設けられる。冷却器44よりも前方において、シリンダ41の外周には、バンドヒータなどの加熱器48と温度検出器49とが設けられる。
【0039】
シリンダ41は、シリンダ41の軸方向(
図1および
図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器48と温度検出器49とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器49の実測温度が設定温度になるように、制御装置90が加熱器48を制御する。
【0040】
ノズル42は、シリンダ41の前端部に設けられ、金型装置30に対し押し付けられる。ノズル42の外周には、加熱器48と温度検出器49とが設けられる。ノズル42の実測温度が設定温度になるように、制御装置90が加熱器48を制御する。
【0041】
スクリュ43は、シリンダ41内において回転自在に且つ進退自在に配設される。
【0042】
計量モータ45は、スクリュ43を回転させることにより、スクリュ43の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ41からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ43の前方に送られシリンダ41の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ43が後退させられる。
【0043】
射出モータ46は、スクリュ43を進退させる。射出モータ46は、スクリュ43を前進させることにより、スクリュ43の前方に蓄積された液状の成形材料をシリンダ41から射出し金型装置30内に充填させる。その後、射出モータ46は、スクリュ43を前方に押し、金型装置30内の成形材料に圧力をかける。不足分の成形材料が補充できる。射出モータ46とスクリュ43との間には、射出モータ46の回転運動をスクリュ43の直線運動に変換する運動変換機構が設けられる。この運動変換機構は、ボールねじ機構などで構成される。
【0044】
圧力検出器47は、例えば射出モータ46とスクリュ43との間に配設され、スクリュ43が成形材料から受ける圧力、スクリュ43に対する背圧などを検出する。スクリュ43が成形材料から受ける圧力は、スクリュ43から成形材料に作用する圧力に対応する。圧力検出器47は、その検出結果を示す信号を制御装置90に送る。
【0045】
射出装置40の動作は、制御装置90によって制御される。制御装置90は、充填工程、保圧工程、計量工程などを制御する。
【0046】
充填工程では、射出モータ46を駆動してスクリュ43を設定速度で前進させ、スクリュ43の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置30内に充填させる。スクリュ43の位置や速度は、例えば射出モータ46のエンコーダ46aにより検出される。その検出結果を示す信号が制御装置90に送られる。スクリュ43の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。スクリュ43の設定速度は、スクリュ43の位置や時間などに応じて変更されてよい。
【0047】
尚、充填工程においてスクリュ43の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ43を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ43の停止の代わりに、スクリュ43の微速前進または微速後退が行われてもよい。
【0048】
保圧工程では、射出モータ46を駆動してスクリュ43を設定圧力で前方に押し、金型装置30内の成形材料に圧力をかける。不足分の成形材料が補充できる。成形材料の圧力は、例えば圧力検出器47により検出される。その検出結果を示す信号が制御装置90に送られる。
【0049】
保圧工程では金型装置30内の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間34の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間34からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間34内の成形材料の固化が行われる。成形サイクルの短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0050】
計量工程では、計量モータ45を駆動してスクリュ43を設定回転数で回転させ、スクリュ43の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ43の前方に送られシリンダ41の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ43が後退させられる。スクリュ43の回転数は、例えば計量モータ45のエンコーダ45aにより検出される。その検出結果を示す信号が制御装置90に送られる。
【0051】
計量工程では、スクリュ43の急激な後退を制限すべく、射出モータ46を駆動してスクリュ43に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ43に対する背圧は、例えば圧力検出器47により検出される。その検出結果を示す信号が制御装置90に送られる。スクリュ43が設定位置まで後退し、スクリュ43の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が終了する。
【0052】
尚、本実施形態の射出装置40は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式でもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
【0053】
制御装置90は、
図1や
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)91と、メモリなどの記憶媒体92と、入力インターフェイス93と、出力インターフェイス94とを有する。制御装置90は、記憶媒体92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置90は、入力インターフェイス93で外部からの信号を受信し、出力インターフェイス94で外部に信号を送信する。
【0054】
入力装置95は、ユーザの入力操作を受け付け、ユーザの入力操作に応じた操作信号を制御装置90に送信する。入力装置95としては、例えばタッチパネルが用いられる。タッチパネルは、後述の出力装置96を兼ねる。
【0055】
出力装置96は、制御装置90による制御下で、入力装置95の入力操作に応じた操作画面を表示する。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。
【0056】
ユーザは、出力装置96で表示される操作画面を見ながら、入力装置95を操作することにより型締装置10や射出装置40、エジェクタ装置などの設定を行う。設定は、記憶媒体92に記憶され、必要に応じて読み出される。
【0057】
制御装置90は、成形条件を示す制御量の設定値と制御量の検出値とに基づいて、制御対象部の操作量を生成する。制御対象部としては、例えば電力機器が用いられ、モータやヒータなどが用いられる。
【0058】
制御装置90は、制御量の設定値と制御量の検出値との差分がゼロになるように、制御対象部の操作量を生成してよい。尚、本実施形態の制御方式は、フィードバック制御であるが、フィードフォワード制御でもよい。
【0059】
制御量としては、例えば、力、圧力、トルク、温度、電流、移動距離(例えば回転移動距離、直線移動距離)、および負荷時間から選ばれる少なくとも1つの物理量を、単独または組合せで用いる。組合せは、和、差、積、商のいずれでもよく、これらのうちの複数でもよい。組合せとしては、例えば、力と移動距離との積、力と負荷時間との積、移動距離と負荷時間との商(つまり速度)などが挙げられる。
【0060】
ところで、射出成形機2は、機種毎に異なる構造を有する。また、射出成形機2は、同一の機種であっても、交換部品の生産中止などによって代替部品を搭載することがあり、異なる構造を有することがある。制御量と操作量とは、射出成形機2の構造の差に応じて異なる関係を有する。尚、制御量と操作量との関係は、例えば伝達関数で表される。
【0061】
例えば、計量工程において、制御量であるスクリュ43の背圧(より詳細にはスクリュ43の背圧で制御される成形材料の圧力)と、操作量である射出モータ46の供給電流との関係は、周辺機器の摩擦抵抗の影響を受けるため、周辺機器の構造の差に応じて異なる。例えば、射出モータ46の供給電流が同じ場合に、周辺機器の摩擦抵抗が小さくなると、成形材料の圧力が大きくなる。周辺機器の摩擦抵抗が小さくなる場合としては、例えば潤滑剤の漏れを防止するシール部材が不要になる場合が挙げられる。シール部材の摩擦抵抗が無くなる分、全体の摩擦抵抗が小さくなる。
【0062】
同様に、保圧工程において、制御量である成形材料の圧力と、操作量である射出モータ46の供給電流との関係は、周辺機器の摩擦抵抗の影響を受けるため、周辺機器の構造の差に応じて異なる。
【0063】
また、制御量であるシリンダ41の温度(より詳細にはシリンダ41の温度で制御される成形材料の温度)と、操作量である加熱器48の供給電流との関係は、シリンダ41などにおける熱の移動の影響を受けるため、シリンダ41などの構造の差に応じて異なる。例えば、加熱器48の供給電流が同じ場合、加熱器48から冷却器44への熱の移動が制限されると、成形材料の温度が高くなる。熱の移動が制限される場合としては、例えば加熱器48と冷却器44との間において断熱リング41bがシリンダ41に追加される場合が挙げられる。シリンダ41の途中で熱の移動が制限できる。
【0064】
そこで、制御装置90は、射出成形機の構造が現構造とは異なる別構造であったときの設定値を用いて射出成形機の構造が現構造であるときの操作量を生成する場合に、別構造と現構造との構造差に基づいて制御量の検出値を補正する。検出値の補正量は、予め試験などにより求められ、記憶媒体92に記憶されたものを読み出して用いる。例えば、制御量が計量工程におけるスクリュ43の背圧である場合、圧力検出器47によって検出される圧力から摩擦抵抗を除いた成形材料の圧力が構造差に関係なく同じになるように、補正量が決められる。同様に、制御量が保圧工程における成形材料の圧力である場合、圧力検出器47によって検出される圧力から摩擦抵抗を除いた成形材料の圧力が構造差に関係なく同じになるように、補正量が決められる。また、制御量がシリンダ41の温度である場合、シリンダ41の内部の成形材料の温度が構造差に関係なく同じになるように、補正量が決められる。シリンダ41の内部の成形材料の温度が同じか否かは、計量工程における計量モータ45のトルクが同じか否かでチェックできる。計量モータ45のトルクが同じであれば、シリンダ41の内部の成形材料の粘性ひいては温度が同じあるためである。
【0065】
制御装置90は、補正後の検出値と設定値とに基づいて操作量を生成する。よって、射出成形機2、2A、2Bの構造が異なる場合に、射出成形機2、2A、2Bの設定の互換性を確保することができる。例えば射出成形機2、2A、2Bのそれぞれに同一の金型装置30が搭載される場合に、射出成形機2、2A、2B毎に設定を変える必要が無くなり、ユーザの都合に合わせることができる。また、射出成形機2の全体の入れ替え(機種変更)や射出成形機2の一部の入れ替えなどによって、射出成形機2の構造が変更された場合にも、設定の互換性を確保することができ、入れ替え前の旧い設定がそのまま使用できる。
【0066】
制御装置90は、射出成形機2の構造の候補毎に検出値の補正量を予め記憶しておき、構造の複数の候補から一の候補を選択したとき、選択した構造に対応する補正量で検出値を補正してよい。一の候補は、複数の要素の組合せで特定されてもよい。尚、選択した構造が別構造ではなく現構造である場合、補正量は当然にゼロである。
【0067】
制御装置90は、別の射出成形機2A、2Bに、ネットワーク4などを介して接続されていてよい。ネットワーク4は、有線でも無線でもよい。射出成形機2Aは射出成形機2の現構造とは異なるA構造を有し、射出成形機2Bは射出成形機2の現構造とは異なるB構造を有する。A構造とB構造とは異なる構造である。制御装置90は、射出成形機2A、2Bから、それぞれの構造と設定値との組合せを取得できる。その取得には、メモリーカードなどの記憶媒体などが用いられてもよく、ネットワーク4が用いられなくてもよい。
【0068】
制御装置90は、構造と設定値とを対応付けて記憶媒体92に記憶する。制御装置90は、現在設定されている設定値と、記憶媒体92に記憶された情報とに基づいて、現在設定されている設定値に対応付けた構造を自動で選択できる。現在設定されている設定値が、現構造のものか、別構造のものか判別できる。ユーザによる構造の選択の手間を省略でき、また、ユーザによる誤選択を防止できる。
【0069】
制御装置90は、射出成形機の構造が現構造とは異なる別構造であったときの設定値を用いて射出成形機の構造が現構造であるときの操作量を生成する場合に、制御量とは異なる所定の物理量が一定になるように検出値を補正してもよい。例えば、制御量がシリンダ41の温度である場合、計量工程における計量モータ45のトルクが同じになるように制御装置90が検出値を補正する。計量モータ45のトルクは、シリンダ41の内部の成形材料の粘性ひいては温度を表すためである。
【0070】
図3は、一実施形態による射出成形機の操作画面を示す図である。この操作画面100は、検出値の補正に用いられる。操作画面100は、例えば制御量入力欄101と、構造入力欄102と、実施/解除選択欄103とを含む。
【0071】
制御量入力欄101は、成形条件を示す制御量をユーザが入力する欄である。ユーザが制御量入力欄101にタッチすると、制御量の候補がポップアップ表示されてよい。その候補の中から制御量をユーザが選択できる。
【0072】
構造入力欄102は、制御量入力欄101で入力される制御量の設定値に対応する構造をユーザが入力する欄である。ユーザが構造入力欄102にタッチすると、構造の候補がポップアップ表示されてよい。その候補の中から構造をユーザが選択できる。
【0073】
実施/解除選択欄103は、制御量入力欄101で入力された制御量の検出値の補正の実施または解除をユーザが選択する欄である。ユーザが制御量入力欄101にタッチする度に、実施を意味する「ON」と、解除を意味する「OFF」とに表示が切り替えられてよい。
【0074】
制御装置90は、操作画面100におけるユーザの入力操作に従って、制御量の検出値の補正を行う。尚、制御量の種類や構造の種類が予め決められている場合、制御量入力欄101や構造入力欄102はなくてもよいが、残っていてもよい。
【0075】
制御装置90は、操作画面100の操作を許可するか否かに関する権限情報を、ユーザの番号や名前などの識別情報毎に予め記憶媒体92に記憶してよい。制御装置90は、操作画面100を操作するユーザの識別情報を読み取り機などで取得し、取得した識別情報と予め記憶媒体92に記憶された情報とに基づいて操作画面100の操作を許可するか否かを決める。権限のあるユーザのみが操作画面100を操作でき、権限のないユーザによる操作画面100の操作を禁止できる。尚、読み取り機としては、入力装置95、一次元コードリーダ、二次元コードリーダなどが用いられる。
【0076】
図4は、一実施形態による計量工程における、スクリュの背圧と、成形材料の圧力と、摩擦抵抗との関係図である。
図4(a)は、第1構造の射出成形機の計量工程における、スクリュの背圧と、成形材料の圧力と、摩擦抵抗との関係図である。
図4(b)は、第1構造とは異なる第2構造の射出成形機において検出値補正がオフ状態(解除状態)の計量工程における、スクリュの背圧と、成形材料の圧力と、摩擦抵抗との関係図である。
図4(c)は、第2構造の射出成形機において検出値補正がオン状態(実施状態)の計量工程における、スクリュの背圧と、成形材料の圧力と、摩擦抵抗との関係図である。
図4では、潤滑剤の漏れを防止するシール部材が有る場合、つまりスクリュ43の駆動系の摩擦抵抗が大きい場合を第1構造、上記シール部材が無い場合、つまりスクリュ43の駆動系の摩擦抵抗が小さい場合を第2構造と呼ぶ。
【0077】
図4(a)〜
図4(c)に示す制御装置90は、成形条件を示す制御量の設定値と制御量の検出値とに基づいて、制御対象部の操作量を生成する操作量生成部97を有する。また、
図4(b)〜(c)に示す制御装置90は、第2構造と第1構造との構造差に基づいて制御量の検出値を補正する検出値補正部98を有する。
【0078】
尚、
図4に図示される制御装置90の各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
図5に図示される制御装置の各機能ブロックについて同様である。
【0079】
図4(a)では、射出装置40の構造は、第1構造である。このとき、操作量生成部97は、制御量であるスクリュ43の背圧の設定値BP0とその検出値BP1とに基づいて、操作量である射出モータ46の供給電流値を生成する。操作量生成部97は、設定値BP0と検出値BP1との偏差がゼロになるように、射出モータ46の供給電流値を生成する。スクリュ43の背圧の検出値BP1は、圧力検出器47によって検出される。
【0080】
図4(b)では、射出装置40の構造は第1構造とは異なる第2構造であるが、
図3に示す実施/解除選択欄103において検出値補正の解除(オフ)が選択されているため、検出値補正部98は機能せず、スクリュ43の背圧の検出値BP2は補正されない。そのため、操作量生成部97は、設定値BP0と検出値BP2とに基づいて、射出装置40の構造が第1構造であった場合と同様に、射出モータ46の供給電流値を生成する。
【0081】
ところで、計量工程において、成形材料の圧力MPは、スクリュ43の背圧の検出値BPと、摩擦抵抗FRとの差(BP−FR)で表される。計量工程において、成形材料の圧力MPが許容範囲に収まることが求められる。
【0082】
ここで、成形材料の圧力MPに関わる、摩擦抵抗FRは、射出装置40の構造などで定まる。スクリュ43の背圧の検出値BPが同じ場合、摩擦抵抗FRが大きいほど、成形材料の圧力MPが小さい。
【0083】
また、成形材料の圧力MPに関わる、スクリュ43の背圧の検出値BPは、射出モータ46の供給電流値などで定まる。摩擦抵抗FRが同じ場合、射出モータ46の供給電流値が大きいほど、スクリュ43の背圧の検出値BPが大きく、成形材料の圧力MPが大きい。
【0084】
検出値補正部98が機能しない場合、射出モータ46の供給電流値は射出装置40の構造が第1構造である場合と同様に生成される。そのため、スクリュ43の背圧の検出値BP2は、射出装置40の構造が第1構造である場合の検出値BP1と同等の値になる。一方、第2構造の摩擦抵抗FR2は、第1構造の摩擦抵抗FR1よりも小さい。その結果、第2構造の成形材料の圧力MP2は、第1構造の成形材料の圧力MP1よりも大きくなる。
【0085】
一方、
図4(c)では、
図4(b)と同様に射出装置40の構造は第2構造であるが、
図4(b)とは異なり
図3に示す実施/解除選択欄103において検出値補正の実施(オン)が選択されているため、検出値補正部98は機能する。
【0086】
検出値補正部98は、第2構造と第1構造の構造差に基づき、スクリュ43の背圧の検出値BP2を補正する。例えば、射出装置の構造が第1構造から第2構造へ変わることで摩擦抵抗FRが小さくなる場合、検出値補正部98はスクリュ43の背圧の検出値BP2を大きく補正する。操作量生成部97は、補正後の検出値が大きいため、設定値との偏差を無くすように、射出モータ46の供給電流値を小さくする。これにより、スクリュ43の背圧の実際の検出値BP2´が小さくなり、射出装置40の構造が第2構造である場合の成形材料の圧力MP2´が射出装置40の構造が第1構造である場合の成形材料の圧力MP1と同等になる。検出値補正部98は、第2構造と第1構造の構造差に基づき、第2構造の成形材料の圧力MP2´が第1構造の成形材料の圧力MP1と同等になるように、圧力検出器47の検出値BP2を補正する。よって、第1構造の射出成形機と第2構造の射出成形機とで、計量工程において同じ圧力設定値を使用することができ、設定の互換性を確保することができる。
【0087】
尚、
図4(c)に示すスクリュ43の背圧の検出値BP2´が
図4(b)に示すスクリュ43の背圧の検出値BP2よりも小さくなることで、
図4(c)に示す摩擦抵抗FR2´が
図4(b)に示す摩擦抵抗FR2よりも小さくなる。BP2に占めるFR2の割合と、BP2´に占めるFR2´の割合とは同等になる。検出値補正部98は、第2構造の成形材料の圧力MP2´が第1構造の成形材料の圧力MP1と同等になるように、スクリュ43の背圧の検出値の変化(BP2´とBP2との差)によって生じる摩擦抵抗の変化(FR2´とFR2との差)に基づいてスクリュ43の背圧の検出値BP2を補正してよい。
【0088】
保圧工程における制御は、計量工程における制御と同様であるので説明を簡略化する。保圧工程では、検出値補正部98は、第2構造と第1構造の構造差に基づき、第2構造の成形材料の圧力MP2´が第1構造の成形材料の圧力MP1と同等になるように、圧力検出器47の検出値BP2を補正する。これにより、第1構造の射出成形機と第2構造の射出成形機とで、保圧工程において同じ圧力設定値を使用することができ、設定の互換性を確保することができる。検出値補正部98は、保圧工程において、計量工程と同様に、第2構造の成形材料の圧力MP2´が第1構造の成形材料の圧力MP1と同等になるように、圧力検出器47の検出値の変化(BP2´とBP2との差)によって生じる摩擦抵抗の変化(FR2´とFR2との差)に基づいて圧力検出器47の検出値BP2を補正してよい。
【0089】
図5は、一実施形態による射出成形における、加熱器によるシリンダの加熱量と、シリンダから成形材料への伝熱量と、シリンダから冷却器に移動する熱量との関係を示す図である。
図5(a)は、第1構造の射出成形機の射出成形における、加熱器によるシリンダの加熱量と、シリンダから成形材料への伝熱量と、シリンダから冷却器に移動する熱量との関係を示す図である。
図5(b)は、第1構造とは異なる第2構造の射出成形機において検出値補正がオフ状態(解除状態)の射出成形における、加熱器によるシリンダの加熱量と、シリンダから成形材料への伝熱量と、シリンダから冷却器に移動する熱量との関係を示す図である。
図5(c)は、第2構造の射出成形機において検出値補正がオン状態(実施状態)の射出成形における、加熱器によるシリンダの加熱量と、シリンダから成形材料への伝熱量と、シリンダから冷却器に移動する熱量との関係を示す図である。
図5では、断熱リング41bが無い場合、つまりシリンダ41から冷却器44に移動する熱量が大きい場合を第1構造、断熱リング41bが有る場合、つまりシリンダ41から冷却器44に移動する熱量が小さい場合を第2構造と呼ぶ。
【0090】
図5(a)〜
図5(c)に示す制御装置90は、成形条件を示す制御量の設定値と制御量の検出値とに基づいて、制御対象部の操作量を生成する操作量生成部97を有する。また、
図5(b)〜(c)に示す制御装置90は、第2構造と第1構造との構造差に基づいて制御量の検出値を補正する検出値補正部98を有する。
【0091】
図5(a)では、射出装置40の構造は、第1構造である。このとき、操作量生成部97は、制御量であるシリンダ41の温度の設定値T0とその検出値T1とに基づいて、操作量である加熱器48の供給電流値を生成する。操作量生成部97は、設定値T0と検出値T1との偏差がゼロになるように、加熱器48の供給電流値を生成する。尚、供給電流値は、加熱器48に電流を供給するオン時間と、加熱器48に電流を供給しないオフ時間との割合(つまり、単位時間に占めるオン時間の割合)で表してもよい。
【0092】
図5(b)では、射出装置40の構造は第1構造とは異なる第2構造であるが、
図3に示す実施/解除選択欄103において検出値補正の解除(オフ)が選択されているため、検出値補正部98は機能せず、シリンダ41の温度の検出値T2は補正されない。そのため、操作量生成部97は、設定値T0と検出値T2とに基づいて、射出装置40の構造が第1構造であった場合と同様に、加熱器48の供給電流値を生成する。
【0093】
ところで、射出成形において、シリンダ41の内部の成形材料の温度(以下、単に「成形材料の温度」とも呼ぶ。)は、シリンダ41から成形材料への伝熱量(以下、「成形材料の加熱量MH」とも呼ぶ。)などで定まる。成形材料の加熱量MHは、加熱器48によるシリンダ41の加熱量(以下、単に「シリンダ41の加熱量SH」とも呼ぶ。)と、シリンダ41から冷却器44に移動する熱量(以下、単に「移動熱量EH」とも呼ぶ。)との差(SH−EH)で表される。射出成形において、成形材料の温度が許容範囲に収まることが求められる。
【0094】
ここで、成形材料の温度に関わる、移動熱量EHは、射出装置40の構造などで定まる。シリンダ41の加熱量SHが同じ場合、移動熱量EHが小さいほど、成形材料の加熱量MHが大きく、成形材料の温度が高い。
【0095】
また、成形材料の温度に関わる、シリンダ41の加熱量SHは、加熱器48の供給電流値などで定まる。移動熱量EHが同じ場合、加熱器48の供給電流値が大きいほど、シリンダ41の加熱量SHが大きく、成形材料の温度が高い。
【0096】
検出値補正部98が機能しない場合、加熱器48の供給電流値は射出装置40の構造が第1構造である場合と同様に生成される。そのため、シリンダ41の加熱量SH2は、射出装置40の構造が第1構造である場合の加熱量SH1と同等の値になる。一方、第2構造の移動熱量EH2は、第1構造の移動熱量EH1よりも小さい。その結果、第2構造の成形材料の加熱量MH2は第1構造の成形材料の加熱量MH1よりも大きく、第2構造の成形材料の温度は第1構造の成形材料の温度よりも高くなる。
【0097】
一方、
図5(c)では、
図5(b)と同様に射出装置40の構造は第2構造であるが、
図5(b)とは異なり
図3に示す実施/解除選択欄103において検出値補正の実施(オン)が選択されているため、検出値補正部98は機能する。
【0098】
検出値補正部98は、第2構造と第1構造の構造差に基づき、シリンダ41の温度の検出値T2を補正する。例えば、射出装置の構造が第1構造から第2構造へ変わることで移動熱量EHが小さくなる場合、検出値補正部98はシリンダ41の温度の検出値T2を大きく補正する。操作量生成部97は、補正後の検出値が大きいため、設定値との偏差を無くすように、加熱器48の供給電流値を小さくする。これにより、シリンダ41の加熱量SH2´が小さくなり、第2構造の成形材料の加熱量MH2´が第1構造の成形材料の加熱量MH1と同等になり、第2構造の成形材料の温度が第1構造の成形材料の温度と同等になる。検出値補正部98は、第2構造と第1構造の構造差に基づき、第2構造の成形材料の温度が第1構造の成形材料の温度と同等になるように、シリンダ41の温度の検出値T2を補正する。よって、第1構造の射出成形機と第2構造の射出成形機とで、射出成形において同じ温度設定値を使用することができ、設定の互換性を確保することができる。
【0099】
尚、
図5(c)に示すシリンダ41の加熱量SH2´が
図5(b)に示すシリンダ41の加熱量SH2よりも小さくなることで、
図5(c)に示す移動熱量EH2´が
図5(b)に示す移動熱量EH2よりも小さくなる。SH2に占めるEH2の割合と、SH2´に占めるEH2´の割合とは同等になる。検出値補正部98は、第2構造の成形材料の温度が第1構造の成形材料の温度と同等になるように、シリンダ41の加熱量の変化(SH2´とSH2との差)によって生じる移動熱量の変化(EH2´とEH2との差)に基づいてシリンダ41の温度の検出値T2を補正してよい。
【0100】
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。