特許第6815908号(P6815908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815908
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20210107BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20210107BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20210107BHJP
   B01J 27/224 20060101ALI20210107BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20210107BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   F01N3/28 LZAB
   F01N3/28 301P
   F01N3/28 311R
   B01D53/94 100
   B01J35/02 G
   B01J27/224 A
   B01J35/04 301D
   F01N3/20 K
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-50182(P2017-50182)
(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-155108(P2018-155108A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 尚哉
【審査官】 沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−295184(JP,A)
【文献】 特開平06−285337(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/148764(WO,A1)
【文献】 特開2016−155264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
F01N 3/02
F01N 3/04− 3/38
F01N 9/00−11/00
B01D 53/73
B01D 53/86−53/90
B01D 53/94−53/96
B01J 21/00−38/74
H05B 1/00− 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側面を有する外周側壁と、外周側壁の内側に配設され、一方の底面から他方の底面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する複数の隔壁と、外周側壁に配設された一対の端子接続部とを有する柱状のハニカム構造体であって、
前記ハニカム構造体の一方又は両方の底面に二つ以上の凹部が形成されており、
該ハニカム構造体全体の平均高さをH1とし、
該ハニカム構造体を底面視したとき、
該一対の端子接続部の周方向中心同士を結び、一方の外周側面から他方の外周側面まで延びた線分を線分Mとし、
線分Mの中点Oから外周側面までの線分Mに垂直な第一方向及び第二方向の長さをそれぞれL1、L2とし、
線分Mに平行な直線であって線分Mから第一方向に向かって0.1×L1の距離にある直線M1、及び線分Mに平行な直線であって線分Mから第二方向に向かって0.1×L2の距離にある直線M2によって囲まれるハニカム構造体の部分の平均高さをH2とすると、
1>H2の関係が成立するハニカム構造体。
【請求項2】
1.2≦H1/H2の関係が成立する請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
外周側面を有する外周側壁と、外周側壁の内側に配設され、一方の底面から他方の底面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する複数の隔壁と、外周側壁に配設された一対の端子接続部とを有する柱状のハニカム構造体であって、
前記ハニカム構造体の一方又は両方の底面に二つ以上の凹部が形成されており、
外周側面から中心軸に向かって、外周側面から中心軸までの長さの5%までの領域を外周部とすると、外周部の平均高さH3及び該ハニカム構造体全体の平均高さH1について、H3>H1の関係が成立するハニカム構造体。
【請求項4】
前記ハニカム構造体全体の平均高さH1の1/2の高さにおけるセルの流路方向に直交する断面を対称面として、前記ハニカム構造体は面対称に構成されている請求項1〜の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
外周側壁及び隔壁が同一材料で構成されている請求項1〜の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記ハニカム構造体が有する前記隔壁はすべて前記隔壁の平均厚みに対して±10%以内の厚みを有する請求項1〜の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記一対の端子接続部はハニカム構造体の中心軸を挟んで対向するように配設されている請求項1〜の何れか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。とりわけ、排ガス浄化用の触媒を担持し、触媒の活性温度まで早期に昇温させる用途に好適なハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンから排出される排ガス中に含まれるHC、CO、NOx等の有害物質の浄化処理のため、ハニカム構造体に触媒を担持したものが使用されている。このように、ハニカム構造体に担持した触媒によって排ガスを処理する場合、触媒をその活性温度まで昇温する必要があるが、エンジン始動時には、触媒が活性温度に達していないため、排ガスが十分に浄化されないという問題があった。特に、プラグインハイブリッド車(PHEV)やハイブリッド車(HV)は、その走行に、モーターのみによる走行を含むことから、エンジン始動頻度が少なく、エンジン始動時の触媒温度が低いため、エンジン始動直後の排ガス浄化性能が悪化し易い。
【0003】
この問題を解決するため、導電性セラミックスからなる柱状のハニカム構造体に一対の端子を接続し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることで、触媒をエンジン始動前に活性温度まで昇温できるようにした電気加熱触媒(EHC)が提案されている。EHCにおいては、触媒効果を十分に得られるようにするために、ハニカム構造体内での温度ムラを少なくして均一な温度分布にすることが望まれている。
【0004】
特開2010−229976号公報(特許文献1)では、ハニカム構造体の均一な加熱を目的として、通電発熱用ハニカム体内に体積抵抗率が低い両端面側の電極部と、内側の体積抵抗率が高い発熱部とを設けることが提案されている。
【0005】
特開2012−188958号公報(特許文献2)では、触媒担体を均一に加熱するために、排気の流れ方向と直交する直交断面で見て、触媒担体を挟んで対向する位置に電極を設けることが提案されている。また、触媒担体には、電極中心線と直交する方向に区画することで複数の区画部を設け、これらの区画部では、触媒担体の部位ごとの通電による発熱量が均一に近づくようにそれぞれ異なる体積抵抗率とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−229976号公報
【特許文献2】特開2012−188958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や2に記載の技術においては、均一加熱のため、ハニカム構造体を構成する材料の体積抵抗率を部位によって変化させることを主眼としている。しかしながら、材料を変化させるためには各部位は別々で作製し接合する必要があるため、接合部での破損などの構造信頼性が落ちるおそれがある。このため、体積抵抗率の異なる部位を接合するという手法とは異なる手法によりハニカム構造体の均一加熱性能を高められることができれば有利であろう。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、従来とは別異の観点で均一加熱性能を向上させたハニカム構造体を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、柱状ハニカム構造体の底面形状を工夫することで均一発熱性が有意に高まることを見出した。
【0010】
本発明は上記知見に基づき完成したものであり、一側面において、
外周側面を有する外周側壁と、外周側壁の内側に配設され、一方の底面から他方の底面まで貫通して流路を形成する複数のセルを区画形成する複数の隔壁と、外周側壁に配設された一対の端子接続部とを有する柱状のハニカム構造体であって、
該ハニカム構造体全体の平均高さをH1とし、
該ハニカム構造体を底面視したとき、
該一対の端子接続部の周方向中心同士を結び、一方の外周側面から他方の外周側面まで延びた線分を線分Mとし、
線分Mの中点Oから外周側面までの線分Mに垂直な第一方向及び第二方向の長さをそれぞれL1、L2とし、
線分Mに平行な直線であって線分Mから第一方向に向かって0.1×L1の距離にある直線M1、及び線分Mに平行な直線であって線分Mから第二方向に向かって0.1×L2の距離にある直線M2によって囲まれるハニカム構造体の部分の平均高さをH2とすると、
1>H2の関係が成立するハニカム構造体である。
【0011】
本発明に係るハニカム構造体は一実施形態において、1.2≦H1/H2の関係が成立する。
【0012】
本発明に係るハニカム構造体は別の一実施形態において、外周側面から中心軸に向かって、外周側面から中心軸までの長さの0〜5%の領域を外周部とすると、外周部の平均高さH3及び該ハニカム構造体全体の平均高さH1について、H3>H1の関係が成立する。
【0013】
本発明に係るハニカム構造体は更に別の一実施形態において、ハニカム構造体の一方又は両方の底面に一つ又は二つ以上の凹部が形成されている。
【0014】
本発明に係るハニカム構造体は更に別の一実施形態において、ハニカム構造体全体の平均高さH1の1/2の高さにおけるセルの流路方向に直交する断面を対称面として、前記ハニカム構造体は面対称に構成されている。
【0015】
本発明に係るハニカム構造体は更に別の一実施形態において、同一材料で構成されている。
【0016】
本発明に係るハニカム構造体は更に別の一実施形態において、ハニカム構造体が有する前記隔壁はすべて前記隔壁の平均厚みに対して±10%以内の厚みを有する。
【0017】
本発明に係るハニカム構造体は更に別の一実施形態において、前記一対の端子接続部はハニカム構造体の中心軸を挟んで対向するように配設されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、体積抵抗率の異なる部位を接合するという手法を採用しなくても、柱状ハニカム構造体の底面形状を工夫することにより有意に発熱均一性が改良されたハニカム構造体が得られる。本発明の一実施形態によれば、体積抵抗率の異なる部位を接合する場合に問題となり得る接合部の構造信頼性を犠牲にすることなく、ハニカム構造体の発熱均一性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1-1】本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の模式的な斜視図である。
図1-2】本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の底面模式図である。
図2】本発明の実施例1に係るハニカム構造体の底面模式図(上図)及びA−A’線断面模式図(下図)である。
図3】本発明の実施例2に係るハニカム構造体の底面模式図(上図)及びB−B’線断面模式図(下図)である。
図4】本発明の実施例3に係るハニカム構造体の底面模式図(上図)及びC−C’線断面模式図(下図)である。
図5】比較例1に係るハニカム構造体の底面模式図(上図)及びD−D’線断面模式図(下図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0021】
<1.ハニカム構造体>
図1−1には、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体100の模式的な斜視図が示されている。また、図1−2には、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体100の底面模式図が示されている。図1−1、図1−2に示すように、ハニカム構造体100の全体形状は柱状であり、外周側面102を有する外周側壁114と、外周側壁114の内側に配設され、第一底面104から第二底面106まで貫通して流路を形成する複数のセル108を区画形成する複数の隔壁110と、外周側壁114に配設された一対の端子接続部112a、112bとを備える。
【0022】
ハニカム構造体100は、導電性を有する材料で構成されている。端子接続部112a、112bに端子を接続して、端子接続部112a、112b間に電圧を印加すると通電してジュール熱により発熱することが可能である。よって、ハニカム構造体100はヒーターとして好適に用いることができる。印加する電圧は12〜900Vが好ましく、64〜600Vが更に好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。また、ハニカム構造体100に触媒を担持することにより、ハニカム構造体100を触媒体として使用することも可能である。複数のセル108の流路には、例えば、自動車排ガス等の流体を流すことができる。
【0023】
端子接続部112a、112bは端子を接続可能である限りその形態に特に制限はないが、本実施形態においては端子を挿入して固定しやすいように、端子接続部112a、112bはそれぞれ外周側面102に穿設されている。端子接続部112a、112bは、めねじ形状とすることも可能である。なお、図1−2の底面模式図では一対の端子接続部112a、112bは隠れて見えないため、その位置を点線で表している。
【0024】
図1−2を参照すると、一対の端子接続部112a、112bは、ハニカム構造体100を底面視したとき、ハニカム構造体100の中心軸Oを挟んで対向するように配設されているのが均一加熱の観点で好ましい。具体的には、ハニカム構造体100を底面視したとき、一対の端子接続部112a、112bのそれぞれの周方向中心からハニカム構造体100の中心軸Oまで延ばした二つの線分のなす角度θ(0°≦θ≦180°)は、150°≦θ≦180°であることが好ましく、160°≦θ≦180°であることがより好ましく、170°≦θ≦180°であることが更により好ましく、180°であることが最も好ましい。
【0025】
端子接続部112a、112b間に電圧を印加すると、一対の端子接続部112a、112bの周方向中心同士を結ぶ直線Mの近辺の昇温速度が速く、直線Mから垂直方向に離れて行くにつれて昇温速度が遅くなる傾向にある。電気は最も抵抗の低い経路を優先的に流れるからである。しかしながら、直線M付近のハニカム構造体の高さを相対的に低くすることで直線M付近の電気抵抗を高め、直線M付近に電気が流れにくくすることができる。
【0026】
そこで、本発明に係るハニカム構造体の一実施形態においては、ハニカム構造体100全体の平均高さをH1とし、
該ハニカム構造体を底面視したとき、
一対の端子接続部の周方向中心同士を結び、一方の外周側面から他方の外周側面まで延びた線分を線分Mとし、
線分Mの中点Oから外周側面までの線分Mに垂直な第一方向及び第二方向の長さをそれぞれL1、L2とし、
線分Mに平行な直線であって線分Mから第一方向に向かって0.1×L1の距離にある直線M1、及び線分Mに平行な直線であって線分Mから第二方向に向かって0.1×L2の距離にある直線M2によって囲まれるハニカム構造体の部分の平均高さをH2とすると、
1>H2の関係が成立する。均一加熱性を高める上では、1.2≦H1/H2の関係が成立することが好ましく、1.4≦H1/H2の関係が成立することがより好ましく、1.6≦H1/H2の関係が成立することが更により好ましい。但し、H1/H2を大きくし過ぎると逆に直線M付近に電流が流れ難くなる。そこで、均一加熱性の観点からは、H1/H2≦3.0の関係が成立することが好ましく、H1/H2≦2.5の関係が成立することがより好ましく、H1/H2≦2.0の関係が成立することが更により好ましい。
【0027】
ハニカム構造体100全体の平均高さH1は、以下の手順で求められる。まず、ハニカム構造体100全体の外形寸法に基づく体積V1を算出する。ハニカム構造体100にはセルが存在し、セルは空洞であるが、セルは中実なものとして捉え、体積から控除しない。次いで、ハニカム構造体を底面視したときの全体面積S1を算出する。すると、H1=V1/S1で与えられる。
【0028】
直線M1及び直線M2によって囲まれるハニカム構造体の部分の平均高さH2は以下の手順で求められる。まず、ハニカム構造体を底面視したときに直線M1及び直線M2によって囲まれるハニカム構造体の部分の体積V2を外形寸法に基づき算出する。V1と同様にセルの空洞部分は体積から控除しない。次いで、ハニカム構造体を底面視したときに直線M1及び直線M2によって囲まれるハニカム構造体の部分の面積S2を算出する。すると、H2=V2/S2で与えられる。
【0029】
ハニカム構造体100全体の平均高さH1は、特に制限はなく、用途や求められる性能に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
直線M付近のハニカム構造体の高さを相対的に低くする方法としては、限定的ではないが、ハニカム構造体の一方の底面、好ましくは両方の底面の少なくとも直線Mに対応する部分に一つ又は二つ以上の凹部を形成する方法が挙げられる。凹部の数、深さ及び形状はハニカム構造体の形状に応じて適宜設計すればよい。例えば、凹部は底面視で円形状、楕円状、長円状、多角形状(四角形、六角形等)などとすることができる。凹部の内側面をハニカム構造体の底面に対して垂直方向に設けることができ、また、凹部の内側面を傾斜面として徐々に深くなるようにすることもできる。均一加熱性を高めるという観点では、直線Mから垂直方向に離れて行くに従って凹部を浅くすることや、直線Mを対称軸として線対称に一つ又は二つ以上の凹部を形成することも有効である。
【0031】
図1−1及び図1−2に示す実施形態においては、ハニカム構造体100には、中心軸Oを中心とした底面視円形の円筒状凹部116が各底面104、106に一つずつ形成されている。均一加熱性を高めるという観点では、ハニカム構造体全体の平均高さH1の1/2の高さにおけるセル108の流路方向に直交する断面を対称面として、ハニカム構造体を面対称に構成することが好ましい。
【0032】
ハニカム構造体の構造強度を確保するという観点からは、ハニカム構造体の外周側壁付近は薄くしないことが好ましい。このため、本発明に係るハニカム構造体の一実施形態においては、ハニカム構造体100を底面視したとき、外周側面102から中心軸Oに向かって、外周側面102から中心軸Oまでの長さの0〜5%の領域を外周部とすると、外周部の平均高さH3及びハニカム構造体100全体の平均高さH1について、H3>H1の関係が成立する。H1/H3≦0.9であることがより好ましく、H1/H3≦0.8であることが更により好ましい。但し、H1/H3が小さくなりすぎると中央部に電気が流れ難くなる。そこで、均一加熱性の観点からは、0.5≦H1/H3の関係が成立することが好ましく、0.6≦H1/H3の関係が成立することがより好ましく、0.7≦H1/H3の関係が成立することが更により好ましい。
【0033】
外周部の平均高さH3は以下の手順で求められる。まず、ハニカム構造体の外周部の体積V3を外形寸法に基づき算出する。V1と同様にセルの空洞部分は体積から控除しない。次いで、ハニカム構造体を底面視したときに外周部の面積S3を算出する。すると、H3=V3/S3で与えられる。
【0034】
セル108を区画形成する隔壁110の厚みは、0.1〜0.3mmであることが好ましく、0.15〜0.25mmであることがより好ましい。隔壁110の厚みが0.1mm以上であることで、ハニカム構造体の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁110の厚みが0.3mm以下であることで、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁110の厚みは、セル108の流路に直交する断面において、隣接するセル108の重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁110を通過する部分の長さとして定義される。
【0035】
ハニカム構造体100の均一加熱性を高めるという観点では、隔壁110の厚みを部位によって変化させるという手法を追加的に採用してもよい。例えば、ハニカム構造体100を底面視したときの一対の端子接続部112a、112bの周方向中心同士を結ぶ直線M付近の隔壁110の厚みを小さくすることで電気抵抗を高めることが考えられる。しかしながら、隔壁110の厚みを部位によって変化させるという手法は、ハニカム構造体内で強度分布が生じることになる。そのため、本発明に係るハニカム構造体の一実施形態においては、ハニカム構造体100が有する隔壁110はすべて隔壁110の平均厚みに対して±10%以内の厚みを有し、好ましくは±5%以内の厚みを有する。
【0036】
ハニカム構造体100は、セル108の流路方向に直交する断面において、セル密度が40〜150セル/cm2であることが好ましく、70〜100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2より低いと、触媒担持面積が少なくなることがある。セル密度が150セル/cm2より高いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0037】
ハニカム構造体100の外周側壁114を設けることは、ハニカム構造体100の構造強度を確保し、また、セル108を流れる流体が外周側面102から漏洩するのを防止する観点で有用である。具体的には、外周側壁114の厚みTは好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上、更により好ましくは0.2mm以上である。但し、外周側壁114を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁110との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周側壁114の厚みTは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周側壁114の厚みTは、厚みを測定しようとする外周側壁114の箇所をセルの流路方向に直交する断面で観察したときに、当該測定箇所における外周側面102の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。図1−2に外周側壁114の厚みTの測定箇所を例示的に示す。
【0038】
ハニカム構造体100は導電性を有する限り特に材質に制限はなく、金属やセラミックス等を使用可能である。特に、耐熱性と導電性の両立の観点から、ハニカム構造体100の材質は、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするものであることが好ましく、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素であることが更に好ましい。ハニカム構造体100の材質が、珪素−炭化珪素複合材を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造体100が、珪素−炭化珪素複合材(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素−炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。また、ハニカム構造体100の材質が、炭化珪素を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造体100が、炭化珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0039】
ハニカム構造体100の材質が、珪素−炭化珪素複合材である場合、ハニカム構造体100に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造体100に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造体100に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることが更に好ましい。10質量%より低いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。40質量%より高いと、焼成時に形状を保持できないことがある。
【0040】
ハニカム構造体100は、ジュール熱により発熱するものであり、例えば、その電気抵抗率については特に制限はない。例えば、ハニカム構造体100の電気抵抗率は、1〜200Ωcmであることが好ましく、10〜100Ωcmであることが更に好ましい。また、ハニカム構造体100を使用する用途に合わせて、ハニカム構造体100の電気抵抗率を選択することもできる。本発明において、ハニカム構造体100の電気抵抗率は、四端子法により400℃で測定した値とする。
【0041】
ハニカム構造体100の均一加熱性を高めるという観点では、ハニカム構造体100の材質を部位によって変化させるという手法を追加的に採用してもよい。例えば、ハニカム構造体100を底面視したときの一対の端子接続部112a、112bの周方向中心同士を結ぶ直線M付近の隔壁110を構成する材料の電気抵抗率を高めることが考えられる。しかしながら、ハニカム構造体100の材質を部位によって変化させるという手法は、先述した通り、複数の部品を接合する必要があることから、ハニカム構造体100の構造強度を低下させるおそれがある。そのため、本発明に係るハニカム構造体100は一実施形態において、すべての隔壁を同一材料で構成することができる。本発明に係るハニカム構造体100は別の一実施形態において、すべての隔壁110及び外周側壁114を同一材料で構成することができる。本発明に係るハニカム構造体100は更に別の一実施形態において、すべての構成要素を同一材料で構成することができる。この場合、ハニカム構造体100は何れの部位においても材料組成が実質同一であり、一体成形可能である。
【0042】
隔壁110は多孔質とすることができる。隔壁110の気孔率は、35〜60%であることが好ましく、35〜45%であることが更に好ましい。気孔率が、35%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。気孔率が60%を超えるとハニカム構造体の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0043】
ハニカム構造体の隔壁110の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。平均細孔径が15μmより大きいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0044】
セル108の流路方向に直交する断面におけるセル108の形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせ、であることが好ましい。これ等のなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体100に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0045】
ハニカム構造体100の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体100の大きさは、耐熱性(外周方向外壁部に入るクラック)の理由により、底面の面積が2000〜20000mm2であることが好ましく、5000〜15000mm2であることが更に好ましい。
【0046】
<2.ハニカム構造体の製造方法>
次に、本発明のハニカム構造体を製造する方法について例示的に説明するが、本発明のハニカム構造体の製造方法については、以下に説明する製造方法に限定されることはない。本発明のハニカム構造体の製造方法は一実施形態において、ハニカム成形体を得る工程と、ハニカム成形体を焼成する工程とを含む。
【0047】
ハニカム成形体の作製は、公知のハニカム構造体の製造方法におけるハニカム成形体の作製方法に準じて行うことができる。例えば、まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜50μmが好ましく、3〜40μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2〜35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。尚、これは、ハニカム構造体の材質を、珪素−炭化珪素系複合材とする場合の成形原料の配合であり、ハニカム構造体の材質を炭化珪素とする場合には、金属珪素は添加しない。
【0048】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0049】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20〜60質量部であることが好ましい。
【0050】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0051】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5〜10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径のことである。
【0052】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形して、隔壁及び外周側壁を備えたハニカム成形体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。次に、得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。以下、乾燥後のハニカム成形体を「ハニカム乾燥体」と称することがある。ハニカム成形体(又は、ハニカム乾燥体)の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、ハニカム成形体の両底部を切断して所望の長さとすることができる。
【0053】
次いで、上記のようにして得られたハニカム成形体の外周側面に一対の端子接続部を穿孔機等によって形成することができる。また、上記のようにして得られたハニカム成形体の一方又は両方の底面を旋盤やフライス盤等を用いた切削加工によって加工して、所望の凹部を形成することができる。一対の端子接続部及び底面加工は焼成後に行ってもよいが、廃棄材の増加や研磨治具の摩耗が懸念されるため、何れも焼成前に形成することが好ましい。
【0054】
次いで、ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体を得る。焼成を行う前に、ハニカム成形体を乾燥してもよい。また、焼成の前に、充填材用原料中のバインダ等を除去するため、脱脂を行ってもよい。焼成条件としては、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸化処理を行うことが好ましい。脱脂及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、図2〜5においては、簡単のため、ハニカム構造体のセル構造の記載は省略している。
【0056】
<比較例1>
(1.円柱状の坏土の作製)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合してセラミック原料を調製した。そして、セラミック原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。そして、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部とした。造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部とした。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部とした。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は20μmであった。炭化珪素、金属珪素及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0057】
(2.ハニカム乾燥体の作製)
得られた円柱状の坏土を碁盤目状の口金を有する押出成形機を用いて成形し、セルの流路方向に直交する断面における各セル形状が正方形である円柱状ハニカム成形体を得た。このハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両底面を所定量切断して、ハニカム乾燥体を作製した。
【0058】
(3.端子接続部の形成)
次に、図5に示すように、底面視におけるハニカム乾燥体の中心軸Oを挟んで対向する外周側面102の高さ方向中央部に円筒状の一対の端子接続部112a、112bを穿孔機によって穿設した。なお、図5の底面模式図では一対の端子接続部112a、112bは内側に隠れて見えないため点線で表している。
【0059】
(4.底面の加工)
比較例1においては底面104、106に対して凹部を形成する加工を実施しなかった。
【0060】
(5.焼成)
次に、ハニカム乾燥体を、脱脂し、焼成し、更に酸化処理してハニカム構造体を得た。脱脂の条件は、酸化雰囲気下、550℃、3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下、1450℃、2時間とした。酸化処理の条件は、酸化雰囲気下、1300℃、1時間とした。
【0061】
得られたハニカム構造体の各種寸法は、ハニカム乾燥体とほぼ同じであった。ハニカム乾燥体は、底面が直径120mmの円形であり、高さ(セルの流路方向における長さ)が10mmであった。セル密度は62セル/cm2であり、隔壁の厚みはすべて0.15mmであり、隔壁の気孔率は45%であり、隔壁の平均細孔径は8.6μmであった。外周側壁の厚みは何れの測定箇所においても0.35mmであった。該ハニカム構造体のH1、H2、及びH3を表1に示す。
【0062】
(6.加熱時の温度分布測定)
得られたハニカム構造体について、一対の端子接続部112a、112bにそれぞれ端子を接続し、両端子に電圧を印加して電気エネルギー(400W)を20秒間投入したときの、ハニカム構造体の部位毎の温度のばらつきを調査した。温度の測定点は、図5に示すA点〜D点の4点とし、電気エネルギーの投入を開始してから20秒経過時の各測定点の温度を測定した。結果を表2に示す。
【0063】
<実施例1>
(1.円柱状の坏土の作製)
比較例1と同様の手順により円柱状の坏土を作製した。
【0064】
(2.ハニカム乾燥体の作製)
比較例1と同様の手順によりハニカム乾燥体を作製した。
【0065】
(3.端子接続部の形成)
比較例1と同様の手順により端子接続部を形成した。
【0066】
(4.底面の加工)
ハニカム乾燥体の両底面に切削加工により、図2に示す配置に従い、底面視における該一対の端子接続部の周方向中心同士を結ぶ直線Mに垂直な方向に延びる長円状の凹部116を直線Mを対称軸として線対称に多数形成した。この際、凹部116の深さ(X)は2.5mm、凹部116の直線Mに平行な方向のピッチ(P)は10mm、凹部116の直線Mに平行な方向の幅(W)は5mmとした。なお、底面視におけるハニカム乾燥体の外周側面102から中心軸Oに向かう5mmの長さの外周領域には凹部116は形成しなかった。
【0067】
(5.焼成)
比較例1と同様の手順により、ハニカム乾燥体を、脱脂し、焼成し、更に酸化処理してハニカム構造体を得た。
【0068】
得られたハニカム構造体の各種寸法は、ハニカム乾燥体とほぼ同じであった。該ハニカム構造体のH1、H2、及びH3を表1に示す。なお、底面加工後のハニカム構造体は、ハニカム構造体全体の平均高さH1の1/2の高さにおけるセルの流路方向に直交する断面を対称面として、ハニカム構造体は面対称に構成されていた。
【0069】
(6.加熱時の温度分布測定)
得られたハニカム構造体について、比較例1と同様の方法で加熱時の温度分布を測定した。結果を表2に示す。
【0070】
<実施例2>
(1.円柱状の坏土の作製)
比較例1と同様の手順により円柱状の坏土を作製した。
【0071】
(2.ハニカム乾燥体の作製)
比較例1と同様の手順によりハニカム乾燥体を作製した。
【0072】
(3.端子接続部の形成)
比較例1と同様の手順により端子接続部を形成した。
【0073】
(4.底面の加工)
ハニカム乾燥体の両底面に切削加工により、図3に示す配置に従い、底面視円形(直径D=8mm)の円筒状凹部を直線Mを対称軸として線対称に多数形成した。この際、凹部116の深さ(X)は2.5mm、凹部116の直線Mに平行な方向及び垂直な方向のピッチ(P)はそれぞれ10mmとした。なお、底面視におけるハニカム乾燥体の外周側面102から中心軸Oに向かう5mmの長さの外周領域には凹部116は形成しなかった。
【0074】
(5.焼成)
比較例1と同様の手順により、ハニカム乾燥体を、脱脂し、焼成し、更に酸化処理してハニカム構造体を得た。
【0075】
得られたハニカム構造体の各種寸法は、ハニカム乾燥体とほぼ同じであった。該ハニカム構造体のH1、H2、及びH3を表1に示す。なお、底面加工後のハニカム構造体は、ハニカム構造体全体の平均高さH1の1/2の高さにおけるセルの流路方向に直交する断面を対称面として、ハニカム構造体は面対称に構成されていた。
【0076】
(6.加熱時の温度分布測定)
得られたハニカム構造体について、比較例1と同様の方法で加熱時の温度分布を測定した。結果を表2に示す。
【0077】
<実施例3(参考例)
(1.円柱状の坏土の作製)
比較例1と同様の手順により円柱状の坏土を作製した。
【0078】
(2.ハニカム乾燥体の作製)
比較例1と同様の手順によりハニカム乾燥体を作製した。
【0079】
(3.端子接続部の形成)
比較例1と同様の手順により端子接続部を形成した。
【0080】
(4.底面の加工)
ハニカム乾燥体の両底面に切削加工により、図4に示す配置に従い、ハニカム乾燥体の中心軸Oを中心とした底面視円形(半径R=50mm)の円筒状凹部116を各底面104、106に一つずつ形成した。この際、凹部116の深さ(X)は2.5mmとした。
【0081】
(5.焼成)
比較例1と同様の手順により、ハニカム乾燥体を、脱脂し、焼成し、更に酸化処理してハニカム構造体を得た。
【0082】
得られたハニカム構造体の各種寸法は、ハニカム乾燥体とほぼ同じであった。該ハニカム構造体のH1、H2、及びH3を表1に示す。なお、底面加工後のハニカム構造体は、ハニカム構造体全体の平均高さH1の1/2の高さにおけるセルの流路方向に直交する断面を対称面として、ハニカム構造体は面対称に構成されていた。
【0083】
(6.加熱時の温度分布測定)
得られたハニカム構造体について、比較例1と同様の方法で加熱時の温度分布を測定した。結果を表2に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
<考察>
実施例及び比較例の何れも一対の端子接続部の周方向中心同士を結ぶ直線Mの近辺の昇温速度が速く、直線Mから垂直方向に離れて行くにつれて昇温速度が遅かった。しかしながら、実施例1〜3ではH1>H2の関係が成立していたことで、A点とC点の温度差が比較例1に比べて小さく、均一加熱性能が向上したことが分かる。特に、H1/H2が好適な値に制御された実施例1は最も均一加熱性能が高かった。
【符号の説明】
【0087】
100 ハニカム構造体
102 外周側面
104 第一底面
106 第二底面
108 セル
110 隔壁
112a、112b 端子接続部
114 外周側壁
116 凹部
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5