特許第6815966号(P6815966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6815966
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F01N 5/02 20060101AFI20210107BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20210107BHJP
   F28F 21/04 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   F01N5/02 B
   F28D1/053 Z
   F28F21/04
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-201117(P2017-201117)
(22)【出願日】2017年10月17日
(65)【公開番号】特開2019-74036(P2019-74036A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥啓
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 建人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太
(72)【発明者】
【氏名】村田 登志朗
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−170645(JP,A)
【文献】 特開2012−193946(JP,A)
【文献】 特開2015−140972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 5/02
F28D 1/053
F28F 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の周壁と、前記周壁の内部を前記周壁の軸方向に延びる複数の第1セル及び複数の第2セルに区画する区画壁とを備え、前記第1セルを流通する液状の第1流体と、前記第2セルを流通する第2流体との間で熱交換が行われる熱交換器であって、
軸方向両端部が封止された前記第1セルが、前記軸方向に直交する第1方向に並設されてなる第1セル列と、
前記第1セル列の軸方向に並設され、隣接する前記第1セル同士を連通するとともに、前記第1方向の一端部が前記第1流体の流入口又は流出口として前記周壁に開口する一対の連通部とを備え、
前記連通部の少なくとも一方は、前記第1方向における前記周壁に開口する側に向かって軸方向長さが徐々に長くなるように設けられた拡張連通部であり、
前記拡張連通部における軸方向端部側の端面は、
前記軸方向に対して斜めとなる平面、
又は軸方向端部側に凸となる曲面、
又は軸方向端部側に凸となる曲面と、前記第1方向における前記曲面の端部から当該端部の接線方向に延びる平面との組み合わせ面
により構成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記第2流体の流通方向の上流側に位置する前記連通部は、前記拡張連通部である請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記拡張連通部の軸方向端部側の端面が設けられている部分において、前記拡張連通部の軸方向長さが短い部分ほど、前記周壁及び前記区画壁の軸方向の長さが短くなっている請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記流入口及び前記流出口は共に、前記周壁における前記第1方向の同じ側に開口している請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
図19(a)〜(c)に示すように、特許文献1に開示される熱交換器40は、筒状の周壁41と、周壁41の内部を周壁41の軸方向に延びる複数の第1セル43a及び複数の第2セル43bに区画する区画壁42とを備えている。第1セル43aは、軸方向両端部が閉塞されるとともに上下に隣接する第1セル43a同士が連通されることにより、周壁41に流入口44a及び流出口44bが開口する第1流路44を形成している。第2セル43bは、軸方向両端部が流入口及び流出口として開口する第2流路45を形成している。こうした熱交換器は、第1流路44を流通する第1流体と第2流路45を流通する第2流体との間で熱交換を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−140972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記熱交換器は、車両等に搭載されて、排気ガス等の高温の流体と、冷却水等の液状の流体との間での熱交換に用いられる場合がある。この場合、液状の流体が熱交換器内で沸騰してしまうことがあった。液状の流体が沸騰する要因の一つとして、熱交換器内における流体の滞留が挙げられる。すなわち、熱交換器における液状の流体の流路に、流体が流通し難い箇所が存在し、その箇所に滞留した流体が加熱され続けることにより沸騰する。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱交換器内における液状の流体の滞留を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の熱交換器は、筒状の周壁と、上記周壁の内部を上記周壁の軸方向に延びる複数の第1セル及び複数の第2セルに区画する区画壁とを備え、上記第1セルを流通する液状の第1流体と、上記第2セルを流通する第2流体との間で熱交換が行われる熱交換器であって、軸方向両端部が封止された上記第1セルが、上記軸方向に直交する第1方向に並設されてなる第1セル列と、上記第1セル列の軸方向に並設され、隣接する上記第1セル同士を連通するとともに、上記第1方向の一端部が上記第1流体の流入口又は流出口として上記周壁に開口する一対の連通部とを備え、上記連通部の少なくとも一方は、上記第1方向における上記周壁に開口する側に向かって軸方向長さが徐々に長くなるように設けられた拡張連通部であり、上記拡張連通部における軸方向端部側の端面は、上記軸方向に対して斜めとなる平面、又は軸方向端部側に凸となる曲面、又は軸方向端部側に凸となる曲面と、上記第1方向における上記曲面の端部から当該端部の接線方向に延びる平面との組み合わせ面により構成されている。
【0007】
軸方向両端部が封止された第1セルからなる第1セル列に対して、周壁に開口する連通部を設けることによって第1流体の流路が形成されている場合、連通部の周壁に開口しない側の端部の角部は、第1流体の流通方向が大きく変わる箇所でもあることから、第1流体の滞留が特に生じやすい。上記構成によれば、連通部を、軸方向端部側の端面が上記の特定形状に構成された拡張連通部としたことによって、第1流体の流路は、滞留が生じやすい上記角部が除かれたような形状となるとともに、拡張連通部内を第1流体がスムーズに流通するようになる。その結果、上記角部における第1流体の滞留が抑制されて、熱交換器内における第1流体の沸騰が抑制される。
【0008】
本発明の熱交換器について、上記第2流体の流通方向の上流側に位置する上記連通部は、上記拡張連通部であることが好ましい。
第2流体が高温である場合、熱交換器の内部における第2流体の流通方向の上流側の部分は、第2流体の熱により高温になりやすい。そのため、第2流体の流通方向の上流側に位置する連通部を拡張連通部とすることにより、第1流体の沸騰をより効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明の熱交換器について、上記拡張連通部の軸方向端部側の端面が設けられている部分において、上記拡張連通部の軸方向長さが短い部分ほど、上記周壁及び上記区画壁の軸方向の長さが短くなっていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、熱交換器の小型化を図ることができる。
本発明の熱交換器について、上記流入口及び上記流出口は共に、上記周壁における上記第1方向の同じ側に開口していることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、第1流路の流入口及び流出口が、周壁の同じ側に設けられているため、第1流体を給排するための流路部材を周壁の同じ側に取り付けることができる。これにより、流路部材を含めた熱交換器の設置スペースの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱交換器内における液状の流体の滞留を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】熱交換器の斜視図。
図2】熱交換器の正面図。
図3図2の3−3線断面図。
図4図2の4−4線断面図。
図5】成形工程の説明図。
図6】加工工程の説明図(第1加工の説明図)。
図7】加工工程の説明図(第2加工の加工治具を挿入した状態の説明図)。
図8】加工工程の説明図(第2加工の加工治具を挿入した後の説明図)。
図9】脱脂工程の説明図。
図10】含浸工程の説明図。
図11】変更例の熱交換器の断面図。
図12】変更例の熱交換器の断面図。
図13】変更例の熱交換器の断面図。
図14】変更例の熱交換器の断面図。
図15】変更例の熱交換器の断面図。
図16】変更例の熱交換器の断面図。
図17】シミュレーションを行った熱交換器の第1流路における各寸法を示す模式図。
図18】(a)〜(e)は、シミュレーションによる流速コンター図。
図19】(a)は、従来技術の熱交換器の斜視図、(b)は、(a)の19b−19b線断面図、(c)は、(a)の19c−19c線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、熱交換器の一実施形態を説明する。
図1及び図2に示すように、熱交換器10は、矩形筒状の周壁11と、周壁11の内部を周壁11の軸方向に延びる複数の第1セル13及び複数の第2セル14に区画する区画壁12とを備えている。矩形筒状の周壁11は、対向する一対の縦側壁11aと対向する一対の横側壁11bとを有し、周壁11の軸方向に直交する断面形状が横長の長方形をなすように構成されている。
【0015】
図2に示すように、区画壁12は、周壁11の軸方向に直交する断面において、縦側壁11aと平行な区画壁12と、横側壁11bに平行な区画壁12とで格子状をなすように構成されている。区画壁12が構成するセル構造は特に限定されるものではないが、例えば、区画壁12の壁厚が0.1〜0.5mmであり、セル密度が、周壁11の軸方向に直交する断面1cmあたり15〜93セルであるセル構造とすることができる。また、熱交換器10の両端面、即ち周壁11の両端縁及び区画壁12の両端縁は、周壁11の軸方向に直交する平面状に形成されている。
【0016】
図3及び図4に示すように、第1セル13は、液状の第1流体を流通させるセルであり、その両端部が共に封止部22によって封止されている。第2セル14は、第2流体を流通させるセルであり、その両端部が共に開放されている。
【0017】
液状の第1流体としては特に限定されず、例えば、公知の熱媒体を用いることができる。公知の熱媒体としては、例えば、冷却水(Long Life Coolant:LLC)や、エチレングリコール等の有機溶剤が挙げられる。第2流体としては特に限定されず、例えば、内燃機関の排気ガスが挙げられる。
【0018】
図2に示すように、周壁11の軸方向に直交する断面において、第1セル13の断面形状と第2セル14の断面形状は、全て同じである。
図2に示すように、熱交換器10は、周壁11の縦側壁11aに沿って第1セル13のみが配列した複数の第1セル列13aを備える。本実施形態においては、周壁11の縦側壁11aに平行な方向が第1方向となる。以下、周壁11の縦側壁11aに平行な方向を第1方向と記載する。
【0019】
また、熱交換器10は、周壁11の横側壁11bに沿った方向における隣り合う第1セル列13aの間に位置して、縦側壁11aに沿って第2セル14のみが配列した第2セル列を備える。隣接する第1セル13のセル列の間に配置される第2セル列の列数は、特に限定されるものではないが、例えば、第2流体が内燃機関の排気ガス等の気体である場合には、第2セル列の列数を2以上とすることが好ましく、3〜4列とすることがより好ましい。
【0020】
図3に示すように、第1セル列13aの軸方向の一方側(図面右側)の端部には、第1方向に延びるように形成されて、第1方向に隣接する第1セル13同士を連通する流入側連通部15aが設けられている。流入側連通部15aにおける第1方向の一方側の端部は、周壁11(横側壁11b)に開口するとともに、同他方側の端部は、第1方向において最も他方側に位置する第1セル13にまで達している。
【0021】
また、第1セル列13aの軸方向の他方側(図面左側)の端部には、第1方向に延びるように形成されて、第1方向に隣接する第1セル13同士を連通する流出側連通部15bが設けられている。流出側連通部15bにおける第1方向の一方側の端部は、周壁11(横側壁11b)に開口するとともに、同他方側の端部は、第1方向において最も他方側に位置する第1セル13にまで達している。
【0022】
図3に示すように、流入側連通部15a及び流出側連通部15bは、第1セル13の両端部を封止する封止部22の内面に沿って形成されている。軸方向の一方側(図面右側)の端部に設けられた封止部22の内面22aは、軸方向に直交する垂直面となっている。したがって、流入側連通部15aの軸方向長さL1は、第1方向の全体にわたって同じ長さである。
【0023】
また、軸方向の他方側(図面左側)の端部に設けられた封止部22の内面22bは、軸方向に対して傾斜する傾斜面となっている。したがって、流出側連通部15bは、封止部22の内面22bにより構成される軸方向端部側の端面(以下、端面22bという。)が、軸方向に対して斜めとなる平面となっている。これにより、流出側連通部15bの軸方向長さL2は、第1方向の他方側(周壁11に開口しない側)の端部から第1方向の一方側(周壁11に開口する側)の端部に向かって、第1方向の全体に亘って徐々に長くなっている。したがって、本実施形態においては、流出側連通部15bが拡張連通部となる。拡張連通部(流出側連通部15b)における端面22bの軸方向に対する傾斜角度Θは、95°以上であることが好ましく、95°以上115°以下であることがより好ましい。
【0024】
図3に示すように、熱交換器10の内部には、流入側連通部15a、第1セル13、及び流出側連通部15bにより構成され、流入側連通部15aの開口を流入口とし、流出側連通部15bの開口を流出口とする略U字状の第1流路17が、各第1セル列13aにそれぞれ形成されている。
【0025】
また、図4に示すように、熱交換器10の内部には、第2セル14により構成され、周壁11の軸方向両端部を流入口又は流出口とする第2流路18が形成されている。本実施形態においては、軸方向において、拡張連通部である流出側連通部15bが位置する側の端部が第2流路18の流入口となっている。そして、上記構成の熱交換器10は、第1流路17を流れる液状の第1流体と、第2流路18を流れる第2流体との間で、区画壁12を介して熱交換を行うことができる。
【0026】
次に、第1流路17内における第1流体の流れについて説明する。
図3に示すように、第1流体は、流入側連通部15aの開口から熱交換器10内の第1流路17に供給される。第1流路17に供給された第1流体は、流入側連通部15aに沿って第1方向の他方側へ流れつつ、流入側連通部15a側に開口する各第1セル13に分岐して流れ込む。
【0027】
そして、第1流体は、各第1セル13内を軸方向に沿って流れ、流出側連通部15bにて合流しつつ、流出側連通部15bに沿って第1方向の一方側へと流れる。ここで、流出側連通部15bは、第1方向の一方側(周壁11に開口している側)に向かって、軸方向長さL2が徐々に長くなる拡張連通部となっている。そのため、流出側連通部15bに流入した第1流体は、軸方向に対して斜めとなる平面状の端面22bに沿って流れること、及び流出側連通部15bにおいて相対的に広い側へと流れようとすることにより、第1方向の一方側(周壁11に開口している側)へと積極的に誘導される。そして、流出側連通部15bを第1方向の一方側へと流れた第1流体は、流出側連通部15bの開口から熱交換器10外に排出される。
【0028】
なお、熱交換器10の周壁11、区画壁12、及び封止部22を構成する材料は特に限定されるものではなく、公知の熱交換器に用いられる材料を用いることができ、例えば、炭化ケイ素、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物が挙げられる。これらの中でも、炭化ケイ素を主成分として含む材料は、他のセラミック材料に比べて熱伝導率が高く、熱交換効率を高くすることができるため好ましい。ここで、「主成分」とは、50質量%以上を意味するものとする。炭化ケイ素を主成分として含む材料としては、例えば、炭化ケイ素の粒子と金属ケイ素の粒子を含む材料が挙げられる。
【0029】
次に、図5〜10に基づいて、本実施形態の熱交換器の一製造方法について説明する。熱交換器は、以下に記載する成形工程、加工工程、脱脂工程、含浸工程を順に経ることにより製造される。
【0030】
(成形工程)
熱交換器の成形に用いる原料として、炭化ケイ素粒子と、有機バインダーと、分散媒とを含有する粘土状の混合物を調製する。図5に示すように、この粘土状の混合物を用いて、矩形筒状の周壁11と、周壁11の内部を周壁11の軸方向に延びる複数のセルCに区画する区画壁12とを備える成形体20を成形する。この成形体20は、全てのセルCについて、その両端が開放された状態となっている。成形体20は、例えば、押し出し成形により成形することができる。得られた成形体20に対して、成形体20を乾燥させる乾燥処理を行う。
【0031】
(加工工程)
加工工程では、成形体における一部のセルの両端部を封止する第1加工、及び成形体に流入側連通部及び流出側連通部を形成する第2加工を行う。
【0032】
図6に示すように、第1加工では、成形体20に形成される複数のセルCのうち、第1セルを構成するセルCの両端部に対して、成形工程において用いた粘土状の混合物を充填して、当該セルCの両端部を封止する封止部22を形成する。その後、成形体20に対して、封止部22を乾燥させる乾燥処理を行う。
【0033】
第2加工では、例えば、加熱された加工具を成形体に接触させる方法を用いて、成形体における周壁、区画壁、及び封止部の一部を除去して、流入側連通部及び流出側連通部を形成する。
【0034】
具体的には、図7に示すように、流入側連通部に対応する外形状を有するブレード状の加工具21aと、及び流出側連通部に対応する外形状を有するブレード状の加工具21bを用意する。この加工具21a,21bは、耐熱性の金属(例えば、ステンレス鋼)により形成され、その厚さは、セルCの幅を超えない厚さに設定されている。次に、成形体20に含まれる有機バインダーが焼失する温度となるようにブレードを加熱する。例えば、有機バインダーがメチルセルロースである場合には、ブレードを400℃以上に加熱する。
【0035】
そして、加熱された加工具21a,21bを、第1方向の一方側から成形体20に差し込んだ後、これを引き抜く。このとき、加熱された加工具21a,21bと成形体20とが接触すると、その接触部分において成形体20に含まれる有機バインダーが燃焼して焼失する。そのため、成形体20に対する加工具21a,21bの挿入抵抗は非常に小さいものとなり、加工具21a,21bの挿入時に、挿入された部分の周辺部分に変形や破壊が生じ難い。また、有機バインダーが焼失することによって、発生する加工屑の量が減少する。
【0036】
そして、図8に示すように、差し込まれた加工具21a,21bが引き抜かれることによって、流入側連通部15a及び流出側連通部15bが形成される。なお、拡張連通部(流出側連通部15b)における軸方向端部側の端面22bは、加工具21bとの接触によって封止部22の一部が除去されることにより形成される。上記の第1加工及び第2加工からなる加工工程を経ることにより、加工成形体が得られる。
【0037】
(脱脂工程)
脱脂工程は、加工成形体を加熱することによって、加工成形体に含まれる有機バインダーを焼失させることにより、加工成形体から有機バインダーが除去された脱脂体を得る工程である。図9に示すように、脱脂工程を経ることにより、加工成形体から有機バインダーが除去されて、炭化ケイ素の粒子同士が接触した状態で配置された骨格部分を有する脱脂体30が得られる。
【0038】
(含浸工程)
含浸工程は、脱脂体の各壁の内部に金属ケイ素を含浸させる工程である。含浸工程においては、脱脂体に対して金属ケイ素の塊を接触させた状態として、金属ケイ素の融点以上(例えば、1450℃以上)に加熱する。これにより、図10に示すように、溶融した金属ケイ素が毛細管現象によって、脱脂体の骨格部分を構成する粒子間の隙間へ入り込み、同隙間に金属ケイ素が含浸される。
【0039】
含浸工程の加熱処理は、脱脂工程の加熱処理から連続して行ってもよい。例えば、加工成形体に対して金属ケイ素の塊を接触させた状態として、金属ケイ素の融点未満の温度で加熱することにより有機バインダーを除去して脱脂体とした後、加熱温度を金属ケイ素の融点以上に上昇させ、溶融した金属ケイ素を脱脂体に含浸させる。
【0040】
上記の含浸工程を経ることにより、熱交換器が得られる。
ここで、本実施形態においては、脱脂工程以降の工程において特別な温度管理を行っている。すなわち、脱脂工程以降の工程においては、成形工程に用いた混合物に含まれる炭化ケイ素の焼結温度未満の温度下にて実施し、加工成形体、脱脂体を上記焼結温度以上の温度下に曝さないようにしている。したがって、脱脂工程においては、有機バインダーが焼失可能な温度以上、かつ上記焼結温度未満の温度で加熱を行う。同様に、含浸工程においては、金属ケイ素の融点以上、かつ上記焼結温度未満の温度で加熱を行う。
【0041】
次に、本実施形態の作用及び効果について記載する。
(1)熱交換器は、筒状の周壁と、周壁の内部を周壁の軸方向に延びる複数の第1セル及び複数の第2セルに区画する区画壁とを備えている。また、軸方向両端部が封止された第1セルが、軸方向に直交する第1方向に並設されてなる第1セル列と、第1セル列の軸方向に並設され、隣接する第1セル同士を連通するとともに、第1方向の一端部が第1流体の流入口又は流出口として周壁に開口する連通部(流入側連通部及び流出側連通部)を備えている。連通部の一方(流出側連通部)は、第1方向における上記周壁に開口する側に向かって軸方向長さが徐々に長くなるように設けられた拡張連通部であり、拡張連通部における軸方向端部側の端面は、軸方向に対して斜めとなる平面により構成されている。
【0042】
軸方向両端部が封止された第1セルからなる第1セル列に対して、周壁に開口する流入側連通部及び流出側連通部を設けることによって第1流体の流路が形成されている場合、流出側連通部の周壁に開口しない側の端部の角部は、第1流体の流通方向が大きく変わる箇所でもあることから、第1流体の滞留が特に生じやすい。
【0043】
上記構成によれば、連通部を、軸方向端部側の端面が上記の特定形状に構成された拡張連通部としたことによって、第1流体の流路は、滞留が生じやすい上記角部が除かれたような形状となるとともに、拡張連通部内を第1流体がスムーズに流通するようになる。その結果、上記角部における第1流体の滞留が抑制されて、熱交換器内における第1流体の沸騰が抑制される。
【0044】
なお、熱交換器内で第1流体が沸騰すると、その沸騰の衝撃によって熱交換器の強度が低下するおそれがある。そのため、熱交換器内における第1流体の沸騰を抑制することにより、熱交換器の長寿命化を図ることができる。また、熱交換器に求められる強度が低くなることにより、熱交換効率等の強度以外の要素を重視して熱交換器の材料を選択することも可能となり、材料選択の自由度が向上する。
【0045】
(2)拡張連通部における軸方向端部側の端面の軸方向に対する傾斜角度が95°以上である。
上記構成によれば、第1流体の滞留をより効果的に抑制することができる。
【0046】
(3)拡張連通部における軸方向端部側の端面の軸方向に対する傾斜角度が115°以下である。
上記構成によれば、拡張連通部を設けたことに起因して、軸方向において、第1流体が流れる範囲(第1流路の形成範囲)に位置する第2流路の長さが過度に短くなることを抑制できる。これにより、熱交換器の熱交換効率の低下を抑制できる。
【0047】
(4)第2流体の流通方向の上流側に位置する連通部は、拡張連通部である。
第2流体が高温である場合、熱交換器の内部における第2流体の流通方向の上流側の部分は、第2流体の熱により高温になりやすい。そのため、第2流体の流通方向の上流側に位置する連通部を拡張連通部とすることにより、第1流体の沸騰をより効果的に抑制することができる。
【0048】
(5)流出口を有する連通部(流出側連通部)は、拡張連通部である。
流出口を有する連通部の周壁に開口しない側の端部は、流入口を有する連通部の周壁に開口しない側の端部と比較して、第1流体の滞留による沸騰が生じやすい傾向がある。そのため、流出口を有する連通部を拡張連通部とすることにより、第1流体の滞留による沸騰をより効果的に抑制することができる。
【0049】
(6)第1セルの両端部を封止する封止部を備え、封止部の軸方向の長さを変化させることにより拡張連通部における軸方向端部側の端面が形成されている。
上記構成によれば、熱交換器における流出口側の端面の形状を、拡張連通部における軸方向端部側の端面に沿った形状以外の任意の形状(例えば、周壁の軸方向に直交する平面状)に形成することが可能になるため、熱交換器の設計の自由度が向上する。
【0050】
(7)流入口及び流出口は共に、周壁における第1方向の同じ側(一方側)に開口している。
上記構成によれば、第1流路の流入口及び流出口が、周壁の同じ側に設けられているため、第1流体を給排するための流路部材を周壁の同じ側に取り付けることができる。これにより、流路部材を含めた熱交換器の設置スペースの低減を図ることができる。
【0051】
(8)区画壁は、炭化ケイ素を主成分として含む。炭化ケイ素は、セラミック材料の中でも熱伝導率が高い材料であるため、区画壁の熱伝導率を高くすることができる。したがって、熱交換器の熱交換効率を向上させることができる。
【0052】
(9)本実施形態の熱交換器は、上記のような温度管理下で製造されることにより、炭化ケイ素の粒子同士が接触した状態で配置されて骨格部分が形成され、この骨格部分の隙間に金属ケイ素が充填されて形状が保持されたものとなる。すなわち、炭化ケイ素の粒子同士は、焼結による結合部(ネック)を有していない状態となっている。これにより、熱交換器の使用中に、内部の温度差に起因して区画壁の内部にひずみが生じても、炭化ケイ素の粒子間のネックに亀裂が生じることを抑制することができる。また、ネックを介して亀裂が伸展することを抑制することができる。
【0053】
本実施形態は、次のように変更して実施することも可能である。また、上記実施形態の構成や以下の変更例に示す構成を適宜組み合わせて実施することも可能である。
図11に示すように、流出口側の連通部及び流入口側の連通部の両方を拡張連通部としてもよい。また、流入口側の連通部のみを拡張連通部としてもよい。
【0054】
図12に示すように、流出口(流出口側の連通部の開口)と、流入口(流入側の連通部)とが異なる方向に開口する構成であってもよい。
図13に示すように、拡張連通部は、軸方向端部側の端面が、軸方向端部側に凸となるアール面等の曲面であることにより、周壁に開口する側に向かって軸方向長さが徐々に長くなる形状であってもよい。
【0055】
図14及び図15に示すように、拡張連通部は、軸方向端部側の端面が、軸方向端部側に凸となるアール面等の曲面と、第1方向における曲面の端部から当該端部の接線方向に延びる平面との組み合わせ面であることにより、周壁に開口する側に向かって軸方向長さが徐々に長くなる形状であってもよい。なお、図14は、軸方向端部側の端面における周壁に開口する側に、平面が位置する組み合わせ面を示す例であり、図15は、軸方向端部側の端面における周壁に開口する側に、曲面が位置する組み合わせ面を示す例である。
【0056】
・熱交換器の外形状は特に限定されるものではない。例えば、図16に示すように、第1方向において封止部22の長さを一定にする等して、拡張連通部における軸方向端部側の端面の形状に沿った端面10aを有する形状の熱交換器であってもよい。すなわち、拡張連通部が設けられている部分において、拡張連通部の軸方向長さが短い部分ほど、周壁及び区画壁の軸方向長さが短くなっていてもよい。この場合には、熱交換器の小型化を図ることができる。
【0057】
・第2流体の流通方向の下流側に位置する連通部を拡張連通部としてもよいし、第2流体の流通方向の上流側に位置する連通部及び下流側に位置する連通部の両方を拡張連通部としてもよい。
【0058】
・第2流路における第2流体の流通方向に対する第1流路の流入口及び流出口の位置は特に限定されるものではない。例えば、第2流体の流通方向の上流側に第1流路の流入口が位置し、同下流側に流出口が位置するように構成してもよい。
【0059】
・第1セルは、それぞれ異なる断面形状を有していてもよい。また、第2セルは、それぞれ異なる断面形状を有していてもよい。
・周壁は、矩形筒状に限定されるものではなく、例えば、矩形筒状以外の多角筒状であってもよいし、円筒状や楕円筒状であってもよい。
【0060】
・本実施形態では、周壁と区画壁とが、炭化ケイ素を主成分として含む材料で構成されていたが、この態様に限定されない。区画壁のみが、炭化ケイ素を主成分として含む材料で構成されていてもよく、周壁と区画壁とが、炭化ケイ素を主成分として含む材料以外で構成されていてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、上記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
熱交換器の第1流路について、拡張連通部の形状を異ならせた実施例1〜4及び比較例における第1流路内の第1流体の流速分布をシミュレーションにより求めた。
【0062】
(シミュレーション条件)
シミュレーション条件は以下のとおりである。また、シミュレーションを行った熱交換器の第1流路における各寸法を図17に示す。
【0063】
第1セルの形状(縦A1×横A2×長さA3):1.2mm×1.2mm×80mm
第1セル列を構成する第1セルの数n:24個
流入口及び流出口の形状(縦B1×横B2):10mm×1.2mm
流入側連通部及び流出側連通部の長さB3:35mm
区画壁の厚さC:0.25mm
拡張連通部の形状(軸方向端部側の端面の軸方向に対する傾斜角度Θ):125°(実施例1)、110°(実施例2)、100°(実施例3)、95°(実施例4)、90°(比較例)
第1流体の流量:10L/min
シミュレーションソフト:Fluent(登録商標)(ANSYS社製)
(シミュレーション結果)
図18にシミュレーション結果の流速コンター図を示す。流速コンター図においては、色の濃淡により部位毎の流速を示しており、色の濃い部分ほど流速が速く、色の薄い部分ほど流速が遅くなっている。なお、各流速コンター図の中央の白色部分は区画壁である。
【0064】
図18(e)に示すように、拡張連通部を設けない比較例の場合(Θ=90°)には、流入側連通部及び流出側連通部における周壁に開口しない側の端部の角部に、第1流体が滞留して流速が著しく遅くなる部分が生じている。一方、図18(a)〜(d)に示すように、拡張連通部を設けた実施例1〜4の場合(Θ=125°、110°、100°、95°)には、比較例と比較して、流出側連通部における上記角部に生じる、第1流体が滞留する部分の範囲が減少している。そして、その減少度合は、拡張連通部における軸方向端部側の端面の傾斜角度Θが大きくなるにしたがって大きくなっている。また、拡張連通部における軸方向端部側の端面の形状を図13〜15に示すような形状とした場合にも同様のシミュレーション結果が得られた。
【符号の説明】
【0065】
L1,L2…軸方向長さ、10…熱交換器、11…周壁、12…区画壁、13…第1セル、13a…第1セル列、14…第2セル、15a…流入側連通部、15b…流出側連通部、16…第1流路、17…第2流路、22…封止部。
図1
図2
図3
図4
図5
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