【実施例】
【0037】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0038】
<植毛粉体塗装物の製造>
(1)実施例1のコイルばね
粉体塗料と植毛用有機フィラーとがドライブレンドされてなる粉体塗料組成物を使用する第一の方法により、植毛粉体塗装物を製造した。基材としては、ばね鋼製のコイルばねを使用した。コイルばねの総巻数は50、寸法は外径27.5mm、自由高さ570mm、線径3.7mmである。コイルばねの表面にはリン酸亜鉛皮膜が形成されている。粉体塗料組成物は、粉体塗料500gと植毛用有機フィラー500gとを容器に投入し、上下方向に500mmのストロークで100回振とうして調製した。粉体塗料としては、神東塗料(株)製のエポキシ/ポリエステル粉体塗料「イノバックス(登録商標)Hシリーズ」を使用した。植毛用有機フィラーとしては、(株)新ニッセン製のナイロン繊維(3.3デシテックス(太さに換算すると19.3μm)、長さ500μm、電着処理膜有り、表面抵抗値10
10〜10
13Ω)を使用した。
【0039】
まず、静電塗装ガンにより粉体塗料組成物をコイルばねに吹き付けた。静電塗装ガンとしては、ノードソン(株)製「VERSA−SPRAY II」を使用した。ノズルは、フラット形状であり、幅4mmのスリットを有する。吹き付け条件は、電圧100kV、吐出量60g/分、搬送エアー圧2.5MPa、静電塗装ガンの移動速度50mm/秒、ワーク間距離200mmとした。吹き付けは次のようにして行った。コイルばねを縦に静置した状態で、静電塗装ガンを上から下に移動させた。この際、ノズルのスリットの向きが、コイルばねの軸方向と同じ方向になるようにした。その後、コイルばねを軸を中心にして90°回転させて、静電塗装ガンを下から上に移動させた。続いて、コイルばねを軸を中心にして同方向に180°回転させて、電塗装ガンを上から下に移動させた。最後に、コイルばねを軸を中心にして戻る方向に90°回転させて、静電塗装ガンを下から上に移動させた。このようにして、コイルばねの全周に対して、粉体塗料組成物の吹き付けを合計4回行った。それから、コイルばねを熱風乾燥機に入れ、200℃で20分間焼き付けた。これにより、粉体塗料中のエポキシ樹脂とポリエステル樹脂とを硬化させて塗膜を形成した。このようにして植毛粉体塗装されたコイルばねを、実施例1のコイルばねと称す。実施例1のコイルばねにおける植毛用有機フィラーの付着量は、6mg/cm
2である。実施例1のコイルばねは、本発明の植毛粉体塗装物に含まれる。
【0040】
実施例1のコイルばねの厚さ方向の断面SEM写真を倍率100倍で撮影したところ、塗膜の厚さは350μmであった。塗膜と植毛層とを合わせた厚さ(塗膜の厚さ+植毛用有機フィラーの最大長さ)は450μmであった。また、塗膜は巣状の空孔を有していることが確認された。塗膜の厚さ方向と垂直な面方向における当該空孔の最大長さは280μmであった。
【0041】
(2)実施例2のコイルばね
粉体塗装と植毛とを別々に行う第二の方法により、植毛粉体塗装物を製造した。基材のコイルばね、粉体塗料および植毛用有機フィラーは、実施例1の植毛粉体塗装において使用したものと同じである。
【0042】
まず、静電塗装ガンにより粉体塗料をコイルばねに吹き付けた。静電塗装ガンとしては、旭サナック(株)製「BPS700」(ノズルは反射板式ノズル)を使用した。吹き付け条件は、電圧100kV、吐出量70g/分、静電塗装ガンの移動速度40mm/秒、ワーク間距離200mmとした。吹き付けは次のようにして行った。コイルばねを縦に静置した状態で(軸方向=上下方向)、静電塗装ガンを下から上、上から下、下から上というように、上下方向に3回移動(1.5往復)させた。その後、コイルばねを軸を中心にして180°回転させて、同じように静電塗装ガンを1.5往復させた。
【0043】
次に、静電塗装ガンにより植毛用有機フィラーをコイルばねに吹き付けた。静電塗装ガンとしては、旭サナック(株)製「NU−070P」を使用した。ノズルは、フラット形状であり、幅4mmのスリットを有する。吹き付け条件は、電圧100kV、吐出量100g/分、搬送エアー圧0.1MPa、静電塗装ガンの移動速度50mm/秒、ワーク間距離200mmとした。吹き付けは次のようにして行った。粉体塗料を吹き付けた時と同様にコイルばねを縦に静置した状態で、静電塗装ガンを下から上に移動させた。この際、ノズルのスリットの向きが、コイルばねの軸方向と同じ方向になるようにした。その後、コイルばねを軸を中心にして90°ずつ回転させて、その都度同じように静電塗装ガンを移動させた。このようにして、コイルばねの全周に対して、植毛用有機フィラーの吹き付けを合計4回行った。
【0044】
次に、コイルばねを熱風乾燥機に入れ、200℃で20分間焼き付けた。これにより、粉体塗料中のエポキシ樹脂とポリエステル樹脂とを硬化させて塗膜を形成した。このようにして植毛粉体塗装されたコイルばねを実施例2のコイルばねと称す。実施例2のコイルばねにおける植毛用有機フィラーの付着量は、3mg/cm
2である。実施例2のコイルばねは、本発明の植毛粉体塗装物に含まれる。
【0045】
図2に、実施例2のコイルばねの表面付近の断面模式図を示す。
図2に示すように、コイルばね10の表面には植毛塗装層11が形成されている。植毛塗装層11は、塗膜110と植毛層111とを有している。植毛塗装層11において、植毛用有機フィラー13の一部は、塗膜110に埋設され、それ以外の他部は塗膜110から突出している。実施例2のコイルばねの厚さ方向の断面SEM写真を倍率100倍で撮影したところ、塗膜110の厚さ(
図2中、Aで示す)は100μmであった。塗膜110と植毛層111とを合わせた厚さ(塗膜の厚さ+植毛用有機フィラーの最大長さ、
図2中、Bで示す)は600μmであった。塗膜110の断面に巣状の空孔は見られなかった。
【0046】
(3)比較例1のコイルばね
接着剤を使用した従来の方法により、植毛加工物を製造した。基材のコイルばねとしては、予めジオメット(登録商標)塗装されたものを使用した。ジオメット塗装により、コイルばねの表面には、金属フレークが無機バインダーにより結合されて層状に重なったジオメット皮膜が形成される。ジオメット皮膜は、防錆性能を有する。コイルばねの総巻数、寸法などは、実施例1の植毛粉体塗装において使用したものと同じである。接着剤としては、ヘンケルジャパン(株)製のアクリル・スチレン共重合樹脂接着剤「ヨドゾール(登録商標)AA76」を使用した。植毛用有機フィラーは、実施例1の植毛粉体塗装において使用したものと同じである。
【0047】
まず、スプレーガン(アネスト岩田(株)製「W−100」、ノズル径1.8mm)により接着剤をコイルばねに吹き付けた。吹き付けは、コイルばねを回転させながらスプレーガンを十数往復させて行った。スプレーガンの移動速度は600mm/秒、吹き付け時間は80秒、ワーク間距離は50mmとした。続いて、吹き付けられた接着剤の表面に、静電塗装ガンにより植毛用有機フィラーを吹き付けた。使用した静電塗装ガンは、実施例1の植毛粉体塗装において使用したものと同じである(ノードソン(株)製「VERSA−SPRAY II」)。吹き付け条件は、電圧1kV、吐出量100g/分、静電塗装ガンの移動速度600mm/秒、吹き付け時間60秒、ワーク間距離50mmとした。吹き付けは、コイルばねを回転させながら静電塗装ガンを十数往復させて行った。それから、コイルばねを熱風乾燥機に入れ、70℃で20分間焼き付けた後、さらに130℃で5分間焼き付けた。このようにして植毛加工されたコイルばねを比較例1のコイルばねと称す。
【0048】
<消音性評価>
コイルばねが圧縮されて座屈すると、うねり部が隣接部材に当接して打音が発生する。したがって、実施例1、2、比較例1の各コイルばねについて圧縮試験を行い、コイルばねの座屈に伴い発生する打音の振動レベルを測定することにより、植毛による消音性を評価した。
図3に、圧縮試験装置の概略図を示す。
【0049】
図3に示すように、圧縮試験装置20は、外筒21と、コイルばね22と、治具23と、を備えている。外筒21は、上向きに開口する有底円筒状を呈している。外筒21の底面には、芯棒210が立設されている。芯棒210は、外筒21の径方向中心に配置されている。外筒21の底面には、芯棒210を囲むようにばね座211が配置されている。コイルばね22は、外筒21内に収容されている。コイルばね22は芯棒210を軸にして配置され、下側の座巻部はばね座211に環装されている。治具23は、リング状を呈しており、外筒21の内周面に沿って上下方向に移動可能である。治具23は、コイルばね22の上側の座巻部に当接している。外筒21の外周面には、加速度ピックアップ24が取り付けられている。加速度ピックアップ24は、チャージアンプ25を介してFFT(高速フーリエ変換)アナライザ26に接続されている。
【0050】
治具23を下方に移動させてコイルばね22を圧縮し、圧縮荷重がある大きさに到達すると、コイルばね22の軸が、波形や螺旋状などに湾曲する。すなわち、コイルばね22が座屈する。これにより、コイルばね22にうねり部が発生する。うねり部が外筒21の内周面に当接する際、打音が発生する。発生した打音を加速度ピックアップ24により検出し、FFTアナライザ26により振動レベルを測定した。本実施例においては、加速度ピックアップ24として、昭和測器(株)製の「2354A」を使用した。また、チャージアンプ25として(株)小野測器製の「CH−1200A」を、FFTアナライザ26として同社製の「DS−3000」を使用した。
【0051】
図4に、実施例1、2、および比較例1の各コイルばねにおける打音の振動レベルを示す。
図4に示すように、実施例1のコイルばねの振動レベルは、比較例1のコイルばねの振動レベルよりもやや小さくなった。実施例2のコイルばねの振動レベルは、比較例1のコイルばねの振動レベルの約1/3にまで低下した。これにより、本発明の植毛粉体塗装物は、接着剤層を有する従来の植毛加工物と同等以上の消音性を有することが確認された。
【0052】
<耐食性評価>
実施例1、2、比較例1の各コイルばねについて塩水噴霧試験を行い、耐食性(防錆性)を評価した。塩水噴霧試験には、スガ試験機(株)製の塩水噴霧試験機「STP−160」を使用した。試験条件はJIS Z 2371:2000に規定される塩水噴霧試験方法の中性塩水噴霧試験に準拠し、塩分濃度を5質量%、温度を35℃として、72、240、480、720時間経過ごとに、赤錆発生の有無を確認した。赤錆の有無については、植毛塗装層などを剥離して、コイルばねの素地を目視により観察して確認した。
【0053】
塩水噴霧試験の結果、720時間経過後においても、実施例1、2、比較例1のコイルばねには赤錆は見られなかった。これにより、本発明の植毛粉体塗装物は、接着剤層を有する従来の植毛加工物と同等の耐食性を有することが確認された。
【0054】
<フィラーの固着性評価>
実施例1と同じ粉体塗料組成物を使用して試験片の表面に植毛粉体塗装を行って、植毛粉体塗装物を製造した。試験片には、日本テストパネル(株)製の冷間圧延鋼板(SPCC−SD、縦70mm×横150mm、厚さ0.8mmの長方形板状)を使用した。試験片の表面にはリン酸亜鉛皮膜が形成されている。植毛粉体塗装方法は以下の通りである。
【0055】
まず、静電塗装ガンにより粉体塗料組成物を試験片の表面に吹き付けた。使用した静電塗装ガンは、実施例1の植毛粉体塗装において使用したものと同じである(ノードソン(株)製「VERSA−SPRAY II」)。吹き付け条件は、電圧100kV、吐出量60g/分、搬送エアー圧2.5MPa、静電塗装ガンの移動速度300mm/秒、ワーク間距離200mmとした。吹き付けは、試験片の縦方向に静電塗装ガンを2往復させて行った。この際、ノズルのスリットの向きは、試験片の横方向にした。それから、試験片を熱風乾燥機に入れ、200℃で20分間焼き付けた。これにより、粉体塗料中のエポキシ樹脂とポリエステル樹脂とを硬化させて塗膜を形成した。このようにして植毛粉体塗装された試験片を、実施例3の試験片と称す。実施例3の試験片は、本発明の植毛粉体塗装物に含まれる。
【0056】
比較のため、実施例3と同じ試験片を用いて、接着剤を使用した従来の方法により植毛加工物を製造した。接着剤および植毛用有機フィラーは、比較例1の植毛塗装において使用したものと同じである。植毛方法は以下の通りである。
【0057】
まず、比較例1の植毛塗装において使用したスプレーガン(アネスト岩田(株)製「W−100」)により接着剤を試験片の表面に吹き付けた。吹き付けは、試験片の縦方向にスプレーガンを2往復させて行った。スプレーガンの移動速度は300mm/秒、吹き付け時間は1秒、ワーク間距離は50mmとした。続いて、吹き付けられた接着剤の表面に、実施例1の植毛粉体塗装において使用した静電塗装ガン(ノードソン(株)製「VERSA−SPRAY II」)により植毛用有機フィラーを吹き付けた。吹き付け条件は、電圧1kV、吐出量100g/分、静電塗装ガンの移動速度300mm/秒、吹き付け時間1秒、ワーク間距離200mmとした。吹き付けは、試験片の縦方向にスプレーガンを2往復させて行った。それから、試験片を熱風乾燥機に入れ、70℃で20分間焼き付けた後、さらに130℃で5分間焼き付けた。このようにして植毛加工された試験片を、比較例2の試験片と称す。
【0058】
実施例3および比較例2の試験片についてテープ剥離試験を行い、植毛用有機フィラーの抜けにくさを評価した。テープ剥離試験は、次のようにして行った。まず、試験片の植毛塗装層をエアブローして、固定されていないフィラーを除去した。次に、粘着テープ(ニチバン(株)製「セロテープ(登録商標)CT−24」)を植毛塗装層に指の腹で密着させた後、剥離した。そして、粘着テープに付着した植毛用有機フィラーの量を比較した。
図5に、実施例3の試験片に貼着させた粘着テープの拡大写真を示す。
図6に、比較例2の試験片に貼着させた粘着テープの拡大写真を示す。
【0059】
図5と
図6とを比較すると、実施例3の試験片に貼着させた粘着テープに付着したフィラーの量は、比較例2の試験片に貼着させた粘着テープに付着したフィラーの量よりも少ないことがわかる。これにより、本発明の植毛粉体塗装物においては、接着剤層を有する従来の植毛加工物よりもフィラーが抜けにくいことが確認された。
【0060】
実施例3の試験片の植毛塗装層は、植毛用有機フィラーと粉体塗料とが混合された粉体塗料組成物を使用して形成されている。この場合、植毛用有機フィラーが粉体塗料に絡み合うようにして固定されるため、植毛用有機フィラーが抜けにくくなると考えられる。植毛用有機フィラーが抜けにくいと、消音性などの性能が低下しにくいことに加えて、植毛粉体塗装物を組み付ける際に周囲を汚しにくい、抜けたフィラーが他の部材の動作を妨げるおそれが少ないなどの利点がある。
【0061】
<膜厚の調整>
実施例3の試験片を製造した際の植毛粉体塗装方法において、粉体塗料組成物の吹き付け時間と塗膜の厚さとの関係を調べた。
図7に、粉体塗料組成物の吹き付け時間に対する塗膜厚さを示す。
図7に示すように、塗膜厚さは粉体塗料組成物の吹き付け時間にほぼ比例して厚くなった。このように、粉体塗料と植毛用有機フィラーとがドライブレンドされてなる粉体塗料組成物を用いると、粉体塗料組成物の吹き付け時間を調整するだけで、塗膜厚さを容易に調整することができる。例えば、本発明の植毛粉体塗装物において、塗膜厚さが大きいと、耐食性および消音性がより向上する。
【0062】
<植え付け状態と消音性との関係>
(1)ばね定数
実施例2のコイルばねについて、植毛層のばね定数を測定した。
図8に、測定方法の説明図を示す。
図8に示すように、まず、コイルばね30を横にして台座31の上に置き、上側の側面における植毛層の高さを測定した。次に、その側面に質量1gの一円硬貨32を一枚ずつ重ねて載せていき、その都度植毛層の高さを測定した。そして、加えた荷重に対する植毛層の高さの変位量(たわみ量)から、ばね定数を算出した。植毛層の高さは、レーザ変位計により測定した。
【0063】
比較のため、自動車のパワーバックドア用スプリングアセンブリ(スタビラス社製)に使用されている従来のコイルばねについても、同様の方法で植毛層のばね定数を測定した。このコイルばねは、塗装後に乾燥して塗膜を形成した後、接着剤を塗布し、その上に植毛するという三工程により製造されたものである。以下、このコイルばねを、比較例3のコイルばねと称す。
【0064】
図9に、二つのコイルばねにおける荷重とたわみ量との関係をグラフで示す。
図9に示すように、比較例3のコイルばねよりも実施例2のコイルばねの方が、グラフの傾きが大きい、すなわちばね定数が大きいことがわかる。算出されたばね定数は、実施例2のコイルばねにおいては0.11N/mm、比較例3のコイルばねにおいては0.04N/mmであった。
【0065】
(2)植え付け状態
実施例2のコイルばねと同様の方法で植毛粉体塗装した三つのコイルばねを準備し、各々、実施例2a、2b、2cと番号付けした。また、前述した比較例3のコイルばねに加えて、自動車のパワーバックドア用スプリングアセンブリ(エドシャ社製)に使用されている従来のコイルばねを準備して、比較例4のコイルばねとした。比較例4のコイルばねも、塗装後に乾燥して塗膜を形成した後、接着剤を塗布し、その上に植毛するという三工程により製造されたものである。
【0066】
準備した合計五つのコイルばねについて、フィラーの植え付け状態を調べた。前出
図1により説明したように、まず、コイルばねの断面SEM写真(倍率100倍)を撮影した。そして、幅1mmの測定幅において、コイルばねの表面から1/4〜3/4長さまでの中区間に切断面が見えているフィラーを傾斜しているフィラーとみなし、その数を数えた。結果を表1に示す。
【表1】
【0067】
表1に示すように、比較例3、4のコイルばねよりも実施例2a、2b、2cのコイルばねの方が、傾斜しているフィラーの数が多かった。
【0068】
(3)消音性評価
実施例2a、2b、2cおよび比較例3、4の各コイルばねの消音性を評価した。
図10に、打音測定装置の概略図を示す。
図10に示すように、打音測定装置4は、支持部材40と、ガイドレール41と、治具42と、コイルばね43と、鋼板44と、を備えている。
【0069】
支持部材40は、底板400とその上に載置されている固定台401とを有している。底板400は、床から8°の角度で傾斜して配置されている。ガイドレール41は、固定台401の上面に取り付けられている。ガイドレール41は、左右方向に延在している。測定開始時には、
図10中、点線で示すように、治具42はガイドレール41の右端側に取り付けられている。治具42は、ガイドレール41に沿って移動可能である。治具42は、筒部420を有している。筒部420は、左方に開口する有底円筒状を呈している。コイルばね43の軸方向片側は、筒部420に収容されている。収容されているコイルばね43の座巻部は、筒部420の図示しないばね座に環装されている。鋼板44は、底板400に対して垂直に立設されている。鋼板44は、ガイドレール41の左端側に対向して配置されている。
【0070】
打音の測定は次のようにして行った。
図10中、白抜き矢印で示すように、治具42を速度320mm/秒で左方向に滑らせて、コイルばね43を鋼板44に衝突させた。その時の打音を、騒音計45で測定した。打音の測定結果を先の表1にまとめて示す。表1においては、打音を、比較例3のコイルばねの音圧を1.0とした時の音圧比で示している。音圧比が小さいほど消音性が高い。表1に示すように、傾斜しているフィラーの数が3本以上の実施例2a、2b、2cのコイルばねの打音は、比較例3、4のコイルばねの打音と比較して、いずれも小さくなった。特に、傾斜しているフィラーの数が6本以上の実施例2a、2bのコイルばねの打音は、比較例3、4のコイルばねの打音の6割になり、消音性に優れることが確認された。
【0071】
以上より、本発明の植毛粉体塗装物は、傾斜した状態で植え付けられている植毛用有機フィラーを有し、本発明の植毛粉体塗装物においては、植毛層のばね定数が大きく、消音性に優れることが確認された。