(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
いったん硬化すると、30%未満のヘーズおよび80%を超える全光線透過率(いずれもASTM D1003−13に従って測定)を有する、固体硬化性透明ゴム組成物であって、
・構成成分(a):76から99.94重量%の、2以上のポリ(ビニル芳香族)ブロックおよび少なくとも1つの重合共役ジエンブロックを有するスチレンブロックコポリマーであって、前記スチレンブロックコポリマーが150,000から250,000の重量平均分子量を有し、前記ポリ(ビニル芳香族)ブロックが9,000から15,000の範囲の重量平均分子量を有し、前記スチレンブロックコポリマー中のポリ(ビニル芳香族)ブロックの含有量が全スチレンブロックコポリマーに対して8から13重量%の範囲である、スチレンブロックコポリマー、
・構成成分(b)および(c):0.05〜8.0重量%の硬化剤および助剤の組合せであって、
前記硬化剤が、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3から成る群から選択されるいずれか1以上である過酸化物であり、
前記助剤が、0重量%を超え、7.95重量%を超えない量で存在し、該助剤が、エチレングリコールメタクリレート(EGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジエチレングリコールジアクリレートおよびネオフェニレングリコールジアクリレートから成る群から選択されるいずれか1以上である、硬化剤および助剤の組合せ、
ならびに
・任意選択の構成成分(d):0.01〜20重量%の透明性に影響しない添加剤であって、着色剤、改質剤、仕上げ剤(例えば、ラウリン酸亜鉛)、酸化防止剤、還元剤、酸素捕捉剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、表面処理剤、熱安定剤、界面活性剤、ゲル化剤、殺生物剤、UV吸収剤、散布剤、難燃剤およびポリリン酸から成る群から選択されるいずれか1以上である添加剤、
を含み、
前記助剤(c)が、1:2〜10の重量比(b):(c)で使用され、
前記ゴム組成物が実質的に油を含まず、
すべての量が全組成物に対する重量パーセンテージで表される、
固体硬化性透明ゴム組成物。
構成成分(a)が、ブロックAが約10,000から約12,000の平均分子量を有し、ブロックBが約80,000から約120,000の平均分子量を有するブロックコポリマーであり、好ましくは、前記ブロックポリマー中の前記Aブロックの重量パーセンテージが10から12重量%である、請求項2に記載の組成物。
チューブ、医療用ストッパ、カテーテル、歯科用ダムおよび他の医療用途、衣服および下着、雨具、アイウェア、マスク、玩具、ダンピング材、建築材、配線用コーティング材、包装材、コンピュータ用保護部材、コンピュータ周辺機器、避妊具、成人向け玩具、人工乳首、使い捨ておむつ、文房具、容器、食品トレイ、スポーツ用ボール、ボールチェア、保護フィルム、シールならびにキーカバーから成る群から選択される、請求項7に記載の物品。
【背景技術】
【0002】
硬化透明なゴム組成物は、靭性であり、同時にゴムの挙動を示し、可視光が通過する材料であり、これは多くの用途にとって望ましい特性である。硬化透明ゴム組成物が使用され得る用途は、チューブ、医療用ストッパ、カテーテル、歯科用ダムおよび他の医療用途、衣服および下着、マスク、雨具、アイウェア、玩具、ダンピング材、建築部品、配線用被覆材、包装材、コンピュータ用保護部材、コンピュータ周辺機器、避妊具、成人向け玩具、人工乳首、使い捨ておむつ、文房具、容器、食品トレイ、スポーツ用ボール、ボールチェア、保護フィルム、シール、キーカバーなどが挙げられるが、これに限定されない。透明性および機械的特性に関する最低要件が満足されれば、医療用途および同様の用途は特に興味深い。
【0003】
このため、透明物品は、無色および透明(即ち、30%を下回るヘーズと共に、80%を超える全透過率、どちらもASTM D1003−13に従う。)であり、同時に機械的特性、即ち、ASTM D624に従う、23kNmを超える引裂強さ、どちらもISO 37:2005に従う、13MPaを超える引張強さおよび1000%を超える破断時伸び(>13)、良好なUV安定性ならびに未加硫化合物としての優れた貯蔵寿命も有する必要がある。
【0004】
WO2013025440から、スチレンブロックコポリマーおよび加硫剤を含むラテックス、ならびにこのようなラテックスでの使用に特に好適なスチレンブロックコポリマーが既知である。
【0005】
WO2004104095は、透明エラストマー性製品を形成する、エラストマー性および熱可塑性のモノビニリデン芳香族共役ジエンブロックコポリマーのブレンドに関する。
【0006】
EP2848650から、様々な種類の包装に好適な物理的特性を良好なバランスで有するブロックコポリマー組成物が既知である。
【0007】
優れた透明ゴム組成物が、例えばWO2014132718に記載されている。この用途では、一方では硬度および強度などのゴム特性と他方では透明性との間でバランスの改善が見出されているが、さらなる改善がなお必要である。これらの改善された機械的特性は、医療用途などにとって特に重要である。現在、医療用途および他の用途に使用可能である、新たな組成物が見出されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「ヘーズ」の用語は、厚さ2mmの被験材料シートを使用することによって、ASTM D1003−13に従って測定した透明材料のぼやけ度を意味する。ヘーズの値は、前方散乱によって0.044rad以上の角度で入射光から逸脱する透過光のパーセントとして求める。
【0012】
「全光線透過率」を意味する「TT」という用語は、ASTM D1003−13に従って測定した、透明材料を通過する光線の比を示す。全光線透過率の値は、被験物上の平行な入射光束に対する全透過光束の比として求める。
【0013】
「A型硬度計硬度」または「Hs」という用語は、ASTM D2240に従って測定した、ゴム組成物の硬度を意味する。Hsの値は、本明細書において、以下の手順、即ち、被験物にプランジャを絶えず押当て、押当ててから0秒または30秒後に被験物に押込まれたプランジャの深さを測定することから求める。
【0014】
「引裂強さ」という用語は、ASTM D624に従って測定した、ゴム組成物の引裂強さを意味する。引裂強さの値は、本明細書において、厚さ2mmの被験材料シートを用いて求め、N/mm単位に換算する。
【0015】
「ビニル含有量」という用語は、1,2付加(ブタジエンの場合−イソプレンでは3,4付加となる。)を介して重合される共役ジエンの量を示す。純粋な「ビニル」基は1,3−ブタジエンの1,2付加重合の場合にのみ形成されるが、ブロックコポリマーの最終特性に対するイソプレンの3,4付加重合(および他の共役ジエンへの同様の付加)の効果は、同様となる。上記の付加の結果、ポリマー骨格上にペンダントビニル基が生成される。ポリマー中のビニル含有量は、プロトンNMRなどの当分野における従来技術を用いて測定され得る。
【0016】
ビニル含有量は、分配剤の相対量を変化させることによって効果的に制御される。認識されるように、分配剤は2つの目的を果たす。分配剤は、モノアルケニルアレーンおよび共役ジエンの制御分布を生成し、共役ジエンの微細構造も制御する。分配剤のリチウムに対する好適な比は、開示が参照により組み入れられている、U.S.Pat.No.RE 27,145に記載されている。
【0017】
「可塑剤油」、「可塑剤」および「軟化剤」という用語は、当分野における材料の特性を変化させる添加剤として既知の(油性)化合物を意味する。可塑剤としては、パラフィン油、鉱油、エステル油、炭化水素系合成潤滑油、ナフテン油および植物油が挙げられるが、これに限定されない。
【0018】
本明細書で使用する場合、別途記載しない限り、「分子量」という用語は、コポリマーのポリマーまたはブロックの真の分子量(g/モル)を示す。本明細書および特許請求の範囲で示す分子量は、ASTM 3536に従って行われるように、ポリスチレン較正標準を使用してゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。GPCは、ポリマーが分子サイズに従って分離される方法であり、最大分子が最初に溶離する。クロマトグラフは、市販のポリスチレン分子量標準を使用して較正する。このように較正されたGPCを使用して測定したポリマーの分子量は、見掛け分子量としても既知の、スチレン換算分子量である。スチレン換算分子量は、ポリマーのスチレン含有量およびジエンセグメントのビニル含有量が既知である場合、真の分子量に換算され得る。使用される検出器は、好ましくは複合紫外線および屈折率検出器である。本明細書で表す分子量は、真の分子量に換算されたGPCトレースのピークにて測定され、一般に「ピーク分子量」と呼ばれる。見掛け分子量として表す場合、これらの分子量は、ブロックコポリマー組成を考慮せず、後続の真の分子量への変換を行わないことを除いて、同様に求められる。
【0019】
本明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「含有する」という用語は、別途記載しない限り、物品または構成成分が要素を伴うまたは含むことを意味する。これらの用語の趣旨は、内的付加および外的付加の両方を含む。
【0020】
本明細書において、「約」、「およそ」、または「適切に」という用語が値の前に付けられている場合、この値は少なくとも±10パーセントの許容誤差を含むことができる。
【0021】
構成成分(a)
本明細書に示す組成物中の構成成分(a)として使用されるブロックコポリマーは、好ましくは、単純な構造A−B−Y−(B−A)nを有し、構造中、
・各Aは独立して、少なくとも90モル%のアルケニル芳香族炭化水素で構成されるポリマーブロックであり、
・ポリマー(PSC)の総重量に対するAの重量含有量は、8〜13%の範囲であり、
・Yは、2を超える官能価を有するカップリング剤の残余であり、
・分岐度(DoB)はn+1(nは、2から5、好ましくは2から4の整数である)であり、
・各Bは独立して、少なくとも90モル%の1以上の共役ジエンで構成されるポリマーブロックであり、
・該スチレンブロックコポリマーは、少なくとも90%のカップリング効率(CE)を有し、
・各Aブロックは独立して、9,000から15,000の範囲の重量平均分子量(MW A)を有し、そして
・各Bブロックは独立して、75,000から150,000の範囲の重量平均分子量(MW B)を有する。
【0022】
ラジアルスチレンブロックコポリマーは、少量の非カップリングブロックコポリマーを含み得る。非カップリングポリマーはAB構造を有する。示したように、Aブロックは、重合アルケニル芳香族炭化水素で主に構成されたブロックであり、Bブロックは、1または複数の重合共役ジエンから主に構成されたブロックである。本開示の目的のために、該表現は、主として、10モル%以下、好ましくは5モル%未満の共重合性モノマーが存在し得ることを示す。
【0023】
ブロックAは、好ましくは約10,000から約12,000の間の平均分子量を有する。ブロックBは、好ましくは約80,000から約120,000の間の平均分子量を有する。アルケニル芳香族炭化水素ポリマー末端ブロックの平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーによって求めるのに対して、ブロックコポリマーのアルケニル芳香族炭化水素ポリマー含有量は、完成ブロックポリマーの赤外分光法によって測定する。最終ブロックポリマー中のAブロックの重量パーセントは、8から13重量%、好ましくは10から12重量%であるべきである。
【0024】
構成成分(b)および(c)
硬化剤(b)としては、例えば硫黄、硫黄含有化合物、ラジカル硬化剤および過酸化物が挙げられる。硬化剤は、汚染が少なく、従って最終製品の透明性が高いという観点から、過酸化物であることが好ましい。優れた結果は、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジイソブチリルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチル−ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチル−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジコハク酸ペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチル−ベンゾイル)ペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチル−ベンゾイル)ペルオキシド、ベンゾイル(3−メチル−ベンゾイル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシマレイン酸、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ブタン、t−ブチルペルオキベンゾエート、n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ジ(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ヘキシルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチル−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドおよびt−ブチルヒドロペルオキシドから成る群から選択される過酸化物によって実現されている。
【0025】
より好ましくは、過酸化物は、悪臭および残留物量を抑制するために、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(例えばアクゾ製トリゴノックス(R)101または日油株式会社製パーヘキサ(R)25B)または1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(例えば日油株式会社製パーヘキサ(R)C、アルケマ製のルペロックス(R)331M80、またはアクゾ製のトリゴノックス22)である。2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3(例えばアクゾ製のトリゴノックス145)も、これの安定性および使いやすさを考慮すると好適である。
【0026】
硬化剤(c)の量は、硬化性構成成分、ここでは構成成分(a)、(b)および(d)の100部に対する部で表してもよい。好ましくは、硬化剤(c)の量は、0.05から1.5phr、より好ましくは0.1から1.0phrで変化する。
【0027】
助剤(c)としては、エチレングリコールメタクリレート(EGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジエチレングリコールジアクリレートおよびネオフェニレングリコールジアクリレートから成る群から選択されるいずれか1以上が使用され得る。
【0028】
助剤(
c)は必須ではない。従って下限はゼロである。ここでまた、0.05重量%の硬化剤と共に使用する場合、助剤の量は7.95重量%を超えない。微量の硬化剤、例えば0.05〜0.1重量%の範囲の硬化剤では、助剤の相対量は高くなり得る。例えば7.95重量%の助剤を0.05重量%の硬化剤と共に使用する、上記実施例における重量比(c)対(d)は、1:159である。従って、重量比は、100:1から1:100まで変化し得る。微量の硬化剤、例えば0.01〜0.09重量%の硬化剤を用いると、重量比は1:88まで変化し得て、少量の硬化剤、例えば0.1〜0.15重量%の硬化剤を用いると、重量比は1:53まで変化し得る。より多量の硬化剤において、硬化剤および助剤は、好ましくは1:2〜10、より好ましくは1:3〜7の重量比(b):(c)で使用される。特に好ましいのは、構成成分(b)としての(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンまたは2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3と構成成分(c)としてのEGDMAまたはTMPTMAとの組合せである。
【0029】
添加剤(d)
本実施形態の組成物は、追加の構成成分が(使用量において)ヘーズおよび透明性に影響を及ぼさない限り、該構成成分をさらに含み得る。追加の構成成分としては、着色剤、改質剤、仕上げ剤(例えば、ラウリン酸亜鉛)、酸化防止剤(例えばモノフェノール、ビスフェノール、ポリフェノール、硫黄、BASF製のイルガノックス(R)1010、イルガフォス(R)168、イルガノックス(R)1726およびイルガノックス PS800などのリン系化合物)、還元剤、酸素捕捉剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、表面処理剤、熱安定剤、着色剤、フィラー、界面活性剤、ゲル化剤、殺生物剤、UV吸収剤(例えばサリチル酸、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、シアノアクリレートおよびヒンダードアミン)、散布剤(例えばポリエチレンなどのポリオレフィン、シリカ、タルク、炭酸カルシウム粉末)、難燃剤ならびにポリリン酸が挙げられるが、これに限定されない。特に、大量のフィラー、散布剤および同様の不透明な添加剤を回避すべきであり、好ましくは最高5重量%、好ましくは最高2重量%に維持する。好ましい最大1重量%の、好ましくは回避される一般的な添加剤は、カーボンブラックである。量がより多いと、組成物のヘーズおよび透明度に急速におよび不利に影響を及ぼす。無機フィラーなどについても同様の上限が存在する。
【0030】
好ましくは、本組成物は、油のにじみを回避する軟化剤として、実質的に油を含まない。
【0031】
着色剤は、組成物が透明青色、透明赤色および透明緑などの透明または半透明の着色を有するように使用され得る。着色剤は、着色顔料、体質顔料、耐腐食性顔料および機能性顔料(例えば、フタロシアニングリーン、チタン、鉄青、酸化鉄、亜酸化鉛および硫化亜鉛)などの従来の任意の着色剤を含み得る。
【0032】
本実施形態の透明組成物は、十分な透明性の観点から、好ましくは30%未満のヘーズ、より好ましくは25%以下のヘーズを有し得る。ヘーズが30%以上であると、組成物の透明性が低すぎて市場の実用的および審美的要求を満たすことができない。
【0033】
本実施形態の組成物は、30秒で測定したA型硬度計硬度が好ましくは20以上であり、より好ましくは25から40であり、これは医療用途および人工乳首などに理想的である。
【0034】
好ましくは、本組成物は、80%以上、好ましくは84%以上の全光線透過率(ASTM D1003−13に従って測定)を有する。全光線透過率が80%未満である場合、組成物は十分な透明性を有さない。
【0035】
好ましくは、組成物は、ASTM D624に従って厚さ2mmのシートによって測定した(およびN/mm単位に換算した)、10N/mm以上、好ましくは10N/mmから50N/mm、より好ましくは10N/mmから40N/mmの引裂強さを有する。引裂強さが10N/mm未満であると、組成物の耐久性を欠いている。
【0036】
配合手順
配合工程は、好ましくは、
・構成成分(a)および(d)を混合してこれの混合物を得ることと、
・場合により助剤(c)を混合物に添加することと、最後に
・硬化剤(b)を添加して混合物を均一に混練して熟成させることを含む。
【0037】
混合および熟成条件は、使用する装置によって変わる。混合は、例えば、「ローラーミル手順」に従って実施され得る。構成成分(a)から開始して、これを従来の条件で動作しているローラーミルに導入してよい。ローラ速度は、一般に1分間に17から20回転の範囲内となるが、ローラは約120℃に維持される。ステップ1において、構成成分(d)は、構成成分(a)と組合される。摩擦により温度が上昇し得る。好ましくは、構成成分の混合は、130℃以下で行う。構成成分(a)が高温に供される時間を短く維持するならば、構成成分(a)の色および安定性に対する悪影響にもかかわらず、温度を150℃まで上昇させる場合など、より高温を使用してよい。混合が完了したら、混合物をローラーミルから取り出す(「シートオフ」)。
【0038】
ステップ(2)において、ローラーミルを約75℃で動作させ、ここで構成成分(b)および(c)を添加する。好ましくは、構成成分(c)がある場合には、構成成分(c)を最初に添加する。該手順は、ステップ(1)の手順と同様であり、これにより、予備硬化を引き起こし得る高温が(明らかに)回避される。製品は再びシートオフする。混合は、内部ミキサーを用いて行ってもよい。例えば、毎分64回転で動作する内部ミキサーを使用して、構成成分(a)を最初に添加することが推奨される。これに構成成分(d)を添加する。好ましくは、混合物のコア温度は135℃を下回る。ステップ(2)では、内部混合物を約50℃に設定し、第1の構成成分(c)を添加する。次の構成成分(b)を添加する。予備硬化を回避するために、混合物のコア温度は90℃を超えないことが好ましい。
【0039】
好ましくは、使用前に混合物を熟成させる。熟成のためには、化合物を約周囲温度に少なくとも2時間以上、好ましくは6時間以上、より好ましくは10時間以上、維持することが推奨される。
【0040】
射出成形手順
硬化ゴム組成物から成る製品を作製する様々な方法が既知である。例えば医療用ストッパ、針シールド、履物製品、ダンピング材、建築部品、成人向け玩具、人工乳首、シール、台所用品および他の多くの用途が圧縮成形、射出成形およびトランスファー成形によって作られることが多い。硫黄硬化剤を用いた射出成形が使用され得るが、このような製品は透明性を欠く。過酸化物硬化剤を含む化合物を用いた射出成形によって透明な製品を製造できることは、知られていなかった。該製品は、他の方法や圧縮成形で作られたものよりも優れていることさえも同様に認知されず、非常に驚くべきであった。射出成形の間、過酸化物硬化剤は、通例、高温にて、化合物に含まれる酸素の存在によって失活する。本開示の方法において、失活は、適正な(エアポケット、故に酸素の存在を排除する)装置を選択すること、適正な(ここでは比較的低い)温度を選択すること、および適正な(ここでは供給ゾーン、移行ゾーン、計量ゾーンおよびキャビティでの低温における相対的に低い粘度を有する)化合物を選択することによって回避される。従って、ここで硬化透明製品は、改善された機械的特性を有する射出成形によって作ることができる。さらに、硬化時間が大幅に短縮される。
【0041】
硬化性ゴム組成物は粘着性となりやすい。さらに、射出成形装置内の条件は、製品の透明性に悪影響を及ぼすように思われる。このため、驚くべきことに、射出成形は、化合物中の構成成分の特定の選択および特定の成形条件の選択によって可能であるだけでなく、圧縮成形により同じ組成物から作られた製品と比べて改善された特性を備えた製品が得られることが今や見出された。
【0042】
ゴム射出成形用装置が既知である。縦型射出成形機から横型射出成形機まで、様々な設計が開発されている。透明性と改良された機械的特性のためには、特定の条件を使用すべきである。該条件は、25mmのスクリュおよび350ccmのバレルを備えたDESMA Hydro−Balance装置を用いて、一例として説明する。本開示はこの装置に限定されない。さらに、他の装置で推奨される硬化時間および温度はわずかに異なることがある。さらに、該方法中に確実に空気(酸素)がほとんどまたは全く捕捉されないようにする、適切な供給形態ならびにスクリュおよびバレルの適合形状を有する装置を使用することが重要である。
【0043】
射出成形によって、圧縮成形および他の方法と比較して、必要な硬化時間は短縮される。射出成形時間は、3〜8分で変化し得て、同様の物品の圧縮成形に必要な通例の時間と比較して約2分短い。同様に、射出成形温度は130から180℃で変化し、圧縮成形に必要な通例の温度と比較して約10℃低い。
【0044】
縦型および横型スクリューインライン射出成形機が使用され得る。本開示の方法で使用される化合物の弱粘着性ストリップの取り扱い上の理由から、横型射出成形機が好ましい。
【0045】
射出成形機は、専用供給手段を装備してよい。例えば、DESMA射出成形機は、先入れ先出し(FiFo)原理を利用する射出ユニットを装備している。とにかく、化合物は、好ましくは様々な長さの約40×5mmの小形ストリップ(stripes)または約40×5mmのリボンの形態で供給される。好ましくは、工業環境、能動供給ローラが使用され、これは化合物、特に軟質粘着性IR化合物の供給に非常に有効である。
【0046】
汎用射出成形機は、3つの主要部分を備えたスクリュを有する。一般に、各部分には独自の形状および目的がある。供給ゾーンは、供給システムの基部から材料を取り込み、材料が搬送されるにつれて化合物の粘度を低下させ始めるスクリュの部分である。一般に、フライト深さ(供給深さ)は一定である。供給ゾーンの後にフライト深さが減少する圧縮ゾーン(移行ゾーンとも呼ばれる。)が続き、化合物の粘度がさらに低下して、エアポケットが排除される。最後に、フライト深さが最小であるが一定である計量ゾーンがあり、計量ゾーンは金型内に計量される低粘度化合物の量を制御する。
【0047】
示されているように、熟成化合物は、キャビティを有する金型に連結されたインラインスクリューを備えたバレルに連結された能動供給システムを備え、供給ゾーン温度が30から60℃の範囲であり、移行ゾーン温度および計量ゾーン温度がそれぞれ45から80℃の範囲内であり、スクリュ速度が80から130RPMの範囲内であり、キャビティ温度が140から190℃の範囲の金型を備える射出成形機に供給される。好ましくは、供給ゾーン中の温度は35から55℃の範囲である。好ましくは、移行ゾーンおよび計量ゾーンの温度は50から76℃である。キャビティの好ましい温度は、150から180℃の範囲である。
【0048】
好ましくは、射出速度は5から20ccm/sである。 明らかに、射出速度は、キャビティおよび製造される物品の複雑さによっても変わる。射出圧は、好ましくは35から100バールの範囲であるが、25から120バールの範囲で変化してよい。型締力は明らかに射出圧を超える必要があり、通例、約250バール以上の範囲である。金型内の後圧は、40から70バール、好ましくは50から60バールで変化してよい。
【0049】
前述したように、作られる製品の形状や使用されるスクリュの形状にもよるが、他の供給者の装置を使用する場合は、多少異なる条件が見出され得る。例えば、射出成形機は、単軸、二軸または多軸を用い得る。スクリュのピッチは、供給深さおよび計量深さと同様に変化し得る。
【0050】
用途
本実施形態の組成物は、高い引裂強さおよび他の機械的特性と組合せて、これの高い透明性を利用できる任意の産業分野で使用され得る。産業用途としては、医療用途、衣服および下着、マスク、雨具、保護眼鏡およびゴーグル、マスク、玩具、ダンピング材、建築部品、配線用コーティング材、包装材、コンピュータ用保護部材、コンピュータ周辺機器、避妊具、成人向け玩具、人工乳首、使い捨ておむつ、文房具、容器、食品トレイ、スポーツ用ボール、ボールチェアならびに保護フィルムなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0051】
本実施形態の組成物は、従来技法によって製造できない、高い透明性および強さを有する医療用途や人工乳首等などの製造に、好適に使用され得る。
【0052】
上記の用途は、本実施形態の一例に過ぎないことに留意されたい。
【実施例】
【0053】
本開示の実施形態を、以下の実施例を参照してさらに説明するが、これの範囲をこれらの実施形態に限定するものではない。実施例では、本開示の定義による以下のポリマーが使用されている。表1を参照されたい。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
実施例1−4
構成成分(a)および(d)を、±120℃の温度のオープンローラ内で均一に混練した。相対量を表2に示す。構成成分(b)を、トリゴノックス101の場合は±90℃またはトリゴノックス145の場合は±120℃の温度のオープンローラに加え、混合物を再度均一に混錬した。混練したゴムをローラから切り離して、厚さの2mmから3mmのシートとした。シートを室温で一昼夜熟成させた。
【0057】
熟成したゴムを、トリゴノックス101は150℃およびトリゴノックス145は160℃の温度ならびに15MPaの圧力下で加熱プレス機(Fontijne Grotnes BV製)で6分間加熱することにより硬化または加硫して被験試料を得て、これを上で論じた試験手順に供し、物理的および化学的特性を測定した。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】