【文献】
The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,2012年,Vol.343, No.1,p.178-183
【文献】
Journal of the American Society of Hematology, blood,2010年,Vol.116, No.21,p.1241-1242, Abstract3013
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記CD38陽性血液悪性疾患が、多発性骨髄腫(MM)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、又は慢性リンパ性白血病(CLL)である、請求項1に記載の医薬組成物。
前記抗CD38抗体が、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞性貪食作用(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、又はアポトーシスによってCD38陽性細胞の殺傷を誘発する、請求項1、6又は7に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「CD38」は、ヒトCD38タンパク質(同義語:ADPリボシルシクラーゼ1、cADPrヒドロラーゼ1、環状ADPリボースヒドロラーゼ1)を指す。ヒトCD38は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有している。CD38は、アミノ酸残基1〜21がCD38のサイトゾルドメインを表し、アミノ酸残基22〜42が膜貫通ドメインを表し、残基43〜300がCD38の細胞外ドメインを表す、1回貫通型のII型膜タンパク質であることはよく知られている。
【0009】
本明細書で使用するところの「抗体」なる用語は、広義の意味を有し、マウス、ヒト、ヒト適合化、ヒト化、及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗体フラグメント、二重特異性又は多重特異性抗体、二量体、四量体、又は多量体抗体、及び一本鎖抗体を含む、免疫グロブリン分子を含む。
【0010】
免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて5つの主なクラス、即ち、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに分類することができる。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4へと更に細分類される。いずれの脊椎動物種の抗体軽鎖も、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2つの明確に異なるタイプ、即ちカッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に分類することができる。
【0011】
「抗体フラグメント」なる用語は、重鎖及び/又は軽鎖抗原結合部位、例えば、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2、及び3、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2、及び3、重鎖可変領域(VH)、又は軽鎖可変領域(VL)を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。抗体フラグメントは、VL、VH、CL、及びCHIドメインからなる一価のフラグメントであるFabフラグメントと、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントであるF(ab)
2フラグメントと、VH及びCHIドメインからなるFdフラグメントと、抗体の1本のアームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメントと、VHドメインからなる、ドメイン抗体(dAb)フラグメント(Wardら(1989年)、Nature 341:544〜546)と、を含む。VHドメイン及びVLドメインは、操作され、合成リンカーを介して一緒に連結して様々な種類の一本鎖抗体設計を形成することができ、ここでVH/VLドメインは、分子内で対合するか、又はVHドメイン及びVLドメインが別々の一本鎖抗体構築物によって発現される場合には分子間で対合して、一本鎖Fv(scFv)又はダイアボディなどの一価の抗原結合部位を形成する。これらは、例えば、国際公開第1998/44001号、同第1988/01649号、同第1994/13804号、及び同第1992/01047号に記載されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に周知の技術を使用して得られ、これらのフラグメントは完全長抗体の場合と同一の方法で、有用性に関してスクリーニングされる。
【0012】
「単離された抗体」というフレーズは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体又は抗体断片を指す(例えば、CD38に特異的に結合する単離された抗体は、ヒトCD38以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、ヒトCD38に特異的に結合する単離された抗体は、マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis)(カニクイザル)CD38などのヒトCD38のオルソログのような他の抗原に対して交差反応性を有する可能性がある。更に、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合もある。
【0013】
抗体可変領域は、3つの「抗原結合部位」で隔てられた「フレームワーク」領域からなる。抗原結合部位は、異なる用語を用いて定義される:(i)相補性決定領域(CDR)、これは、配列特異性に基づいてVH内に3個(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及びVL内に3個(LCDR1、LCDR2、LCDR3)が存在する(Wu and Kabat,J Exp Med 132:211〜50,1970、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、公衆衛生局、国立衛生研究所、メリーランド州ベセスダ、1991年)。(ii)「超可変領域」、すなわち「HVR」又は「HV」、VH内に3個(H1、H2、H3)及びVL内に3個(L1、L2、L3)が存在し、これは、Chothia and Lesk(Chothia and Lesk,Mol.Biol.196:901〜17,1987)により定義される構造において超可変性である抗体可変ドメインの領域を指す。他の用語には、「IMGT−CDR」(Lefranc et al.,Dev.Comparat.Immunol.27:55〜77、2003年)及び「特異性決定残基使用」(SDRU)(Almagro、Mol.Recognit、17:132〜43、2004年)が含まれる。International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース(http://www_imgt_org)は、抗原結合部位の標準化番号付け及び定義を提供する。CDR、HV、及びIMGTの表記間の対応関係については、Lefranc et al.,Dev.Comparat.Immunol.27:55〜77、2003年に記載されている。
【0014】
本明細書で使用するところの「Chothia残基」とは、Al−Lazikani(Al−Lazikaniet al.,J Mol Biol 273:927〜48、1997年)に準じて番号付けされた抗体VL残基及びVH残基である。
【0015】
「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」は、抗原結合部位として定義されたものを除く、可変領域の残りの配列である。抗原結合部位は上記のような様々な用語によって定義され得るため、フレームワークの正確なアミノ酸配列は抗原結合部位がどのように定義されるかによって決まる。
【0016】
「ヒト化抗体」とは、抗原結合部位がヒト以外の種に由来し、可変領域フレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する、抗体を指す。ヒト化抗体はフレームワーク領域内に置換を含む可能性があることから、当該フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又は生殖細胞系列遺伝子配列の完全な複製物でなくてもよい。
【0017】
「ヒト抗体」とは、フレームワーク及び抗原結合部位の両方がヒト起源の配列に由来する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。抗体が定常領域を含む場合、定常領域もヒト起源の配列に由来する。
【0018】
ヒト抗体は、抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合のヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領域又は軽鎖可変領域を含む。そのような系は、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、及び本明細書に記載されるヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するマウスなど、トランスジェニックのヒト以外の動物を含む。「ヒト抗体」は、例えばフレームワーク又は抗原結合部位内に天然に存在する体細胞突然変異、又は意図的な置換の導入によりヒト生殖系列又は再編成された免疫グロブリン配列と比較した場合に、アミノ酸の相違を含み得る。一般的に、「ヒト抗体」のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である。場合により、「ヒト抗体」は、例えばKnappik et al.,J Mol Biol 296:57〜86,2000)に記載されるヒトフレームワーク配列分析から得られたコンセンサスフレームワーク配列、又は例えばShi et al.,J Mol Biol 397:385〜96,2010及び国際公開第2009/085462号)に記載されるファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3を含みうる。抗原結合部位がヒト以外の種に由来する抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0019】
単離されたヒト化抗体は合成であり得る。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来するものであるが、合成CDR及び/若しくは合成フレームワークを組み込んだファージディスプレイなどの系を用いて生成するか、又はインビトロ突然変異誘発を行って抗体の特性を向上させることができ、インビボのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しない抗体を得ることができる。
【0020】
「組換え抗体」は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニック若しくは染色体導入動物(例えばマウス)又はそれから調製されたハイブリドーマ(下で更に説明される)から単離された抗体、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離された抗体、並びにヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライスすることを伴う任意の他の手段により調製、発現、作製、又は単離された抗体、あるいはFabアーム交換を用いてインビトロで生成される抗体などの組換え手段により調製、発現、作製、又は単離されるすべての抗体を含む。
【0021】
「モノクローナル抗体」とは、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示し、又は二重特異性モノクローナル抗体の場合には、2つの別個のエピトープに対する二重結合特異性を示す。したがって、「モノクローナル抗体」とは、抗体重鎖からのC末端リシンの除去などの可能な周知の変化を除き、各重鎖及び各軽鎖のアミノ酸組成が単一である抗体集団のことを指す。モノクローナル抗体は、抗体集団内で異成分のグリコシル化を有しうる。モノクローナル抗体は、単一特異性若しくは多特異性、又は一価、二価、若しくは多価でありうる。二価抗体は、モノクローナル抗体なる用語に包含される。
【0022】
本明細書で使用するところの「エピトープ」とは、抗体が特異的に結合する抗原の部分を指す。エピトープは通常、アミノ酸又は多糖類側鎖などの部位の化学的に活性な(極性、非極性又は疎水性など)表面基からなり、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有しうる。エピトープは、立体配座的な空間単位を形成する連続的な、かつ/又は不連続的なアミノ酸で構成されうる。不連続的エピトープでは、抗原の直鎖配列の異なる部分のアミノ酸が、タンパク質分子の折り畳みにより三次元空間で近接する。
【0023】
「変異体」とは、例えば、置換、挿入、又は欠失のような1以上の改変において参照ポリペプチド又は参照ポリヌクレオチドと異なるポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。
【0024】
「〜と併用される」とは、2以上の治療薬が、対象に混合物の状態で一緒に、又はそれぞれ単独の薬剤として同時に、又はそれぞれ単独の薬剤として任意の順番で順次に投与できることを意味する。
【0025】
「治療する」又は「治療」とは、治療的処置及び予防的又は防止的措置の両方を指すものであり、その目的は、腫瘍又は腫瘍細胞の進行又は転移のような望ましくない生理学的変化又は障害を予防又は遅延(緩和)することにある。有益な又は所望の臨床結果としては、検出可能であるか検出不能であるかによらず、症状の緩和、疾患の程度の軽減、安定した(すなわち、悪化しない)疾患状態、疾患の進行の遅延又は鈍化、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分又は完全)、並びに、治療を受けなかった場合の予想生存期間と比較した生存期間の延長が挙げられる。治療を要する者には、既に状態若しくは疾患を有している者、及び、状態若しくは疾患を有しやすい者、又は状態若しくは疾患を予防しようとする者が含まれる。
【0026】
「治療有効量」とは、所望の治療結果を得るために必要な用量及び期間で有効な量を指す。治療的に有効な量は、個体の病態、年齢、性別、及び体重などの要因、並びに個体において所望の応答を引き出す治療薬又は治療薬の組み合わせの能力によって種々であってよい。抵抗性に伴って低下又は減少しうる有効な治療薬又は治療薬の組み合わせの例示的な指標としては、例えば、患者の健康状態の改善、腫瘍量の減少、腫瘍の増殖の停止若しくは鈍化、及び/又は体内の他の場所への癌細胞の転移の不在が含まれる。
【0027】
「相乗」、「相乗作用」又は「相乗的な」とは、組み合わせることで得られると予想される相加効果を超えることを意味する。
【0028】
「増殖を阻害する」(例えば、腫瘍細胞などの細胞に言及する場合)は、当業者に周知の適切な対照条件で増殖された同一の細胞の増殖と比較して、治療薬又は治療薬若しくは薬剤の組み合わせと接触されるときのインビトロ又はインビボでの細胞増殖における測定可能な減少を指す。インビトロ又はインビボでの細胞の増殖の阻害は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、又は100%でありうる。細胞増殖の阻害は、例えばADCC、アポトーシス、壊死などの様々な機構により、又は細胞分裂の阻害によって生じうる。
【0029】
「対象」には、あらゆるヒト又は非ヒト動物が含まれる。「非ヒト動物」には、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳動物及び非哺乳動物などのすべての脊椎動物が含まれる。「対象」及び「患者」なる用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0030】
本明細書で使用するところの「サバイビン(Survivin)」とは、配列番号22に示されるアミノ酸配列を有するサバイビンタンパク質を指す。サバイビンは、アポトーシス阻害因子(inhibitor of apoptosis)(IAP)ファミリーに属する。サバイビンは、アポトーシス阻害剤及び細胞周期調節因子として作用する二重機能タンパク質である。ヒトの悪性腫瘍では、サバイビンの過剰発現が認められ、悪い予後、腫瘍再発、及び治療抵抗性と正の相関関係がある(Liu et al.,Cancer Biol.Ther.,7:1053〜1060,2008;MMita et al.,Clin Cancer Res 14:5000〜5005,2008)。
【0031】
配列番号22
MGAPTLPPAWQPFLKDHRISTFKNWPFLEGCACTPERMAEAGFIHCPTENEPDLAQCFFCFKELEGWEPDDDPIEEHKKHSSGCAFLSVKKQFEELTLGEFLKLDRERAKNKIAKETNNKKKEFEETAEKVRRAIEQLAAMD
【0032】
「サバイビン阻害剤」とは、サバイビン活性を阻害するか、サバイビン活性に拮抗するか、サバイビン活性を低減するか、又は抑制する分子を指し、例えば、細胞内でのサバイビンの抗アポトーシス活性を阻害する分子を指す。サバイビン阻害剤は、サバイビンの抗アポトーシス活性を約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、又は100%阻害することができる。サバイビン阻害剤は、小分子、ペプチド、ワクチン、ポリヌクレオチド、DNA、又はRNA分子でありうる。
【0033】
本発明は、BMニッチに存在する骨髄間質細胞(BMSC)が、サバイビンの発現を上昇させることに少なくとも一部よって抗体誘発性ADCCからMM細胞を保護し、また、サバイビン阻害剤がMM細胞の抗体介在性ADCCを向上させ、BMSCにより誘発されるADCC耐性を消失させる、という知見に少なくとも一部基づいたものである。BMSCは、MM細胞を、細胞接着により媒介される免疫抵抗によって細胞傷害性Tリンパ球(CTL)依存性溶解から保護することが示されており、サバイビンは、溶解抵抗性MM細胞において発現上昇することが見出されている(de Haartet al.,Clin Cance Res 19:5591〜5601,2013)。
【0034】
本発明は、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を治療する方法であって、その治療を要する対象に、抗CD38抗体及びサバイビン阻害剤をCD38陽性血液悪性疾患を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、方法を提供する。
【0035】
本発明は更に、対象の体内の多発性骨髄腫細胞の増殖又は分裂を阻害する方法であって、その阻害を要する対象に、抗CD38抗体及びサバイビン阻害剤を多発性骨髄腫細胞の増殖又は分裂を阻害するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、方法も提供する。
【0036】
「CD38陽性血液悪性疾患」とは、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫を含む、CD38を発現する腫瘍細胞の存在によって特徴付けられる血液悪性疾患を指す。このようなCD38陽性血液悪性疾患の例としては、前駆B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫及びB細胞非ホジキンリンパ腫、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病並びに成熟B細胞腫瘍、例えばB細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞急性リンパ球性白血病、B細胞前リンパ急性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)(鄭悪性度、中悪性度及び高悪性度FLを含む)、皮膚濾胞中心リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫(MALT型、節性及び脾性型)、有毛細胞白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、形質細胞腫、多発性骨髄腫(MM)、形質細胞白血病、移植後リンパ増殖性疾患、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞白血病及び未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)がある。
【0037】
CD38は、多発性骨髄腫、白血病、及びリンパ腫を含む様々な血液悪性疾患、例えば、B細胞慢性リンパ性白血病、白血病、ワルデンストレームマクログロブリン血症、原発性全身性アミロイド症、マントル細胞リンパ腫、前リンパ性/骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、大顆粒リンパ球性(LGL)白血病、NK細胞白血病及び形質細胞白血病で発現される。CD38の発現は、前立腺の腺上皮、膵臓の島細胞、耳下腺を含む腺の導管上皮、気管支上皮細胞、精巣及び卵巣の細胞、並びに結腸直腸腺癌における腫瘍上皮を含む異なる起源の上皮/内皮細胞に関して記載されている。CD38発現が関与しうるその他の疾患としては、例えば、肺の気管支上皮癌、乳癌(乳房の乳管及び小葉における上皮層悪性増殖から発生)、β−細胞(インスリノーマ)から発生する膵臓腫瘍、消化管の上皮から発生する腫瘍(例えば、腺癌及び扁平上皮癌)、前立腺における癌、及び睾丸セミノーマ並びに卵巣癌が含まれる。中枢神経系においては、神経芽細胞腫がCD38を発現する。
【0038】
いくつかの実施形態では、CD38陽性血液悪性疾患は、多発性骨髄腫(MM)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、又は慢性リンパ性白血病(CLL)である。
【0039】
いくつかの実施形態では、CD38陽性血液悪性疾患は、MMである。
【0040】
いくつかの実施形態では、CD38陽性血液悪性疾患は、ALLである。
【0041】
いくつかの実施形態では、CD38陽性血液悪性疾患は、NHLである。
【0042】
いくつかの実施形態では、CD38陽性血液悪性疾患は、DLBCLである。
【0043】
いくつかの実施形態では、CD38陽性血液悪性疾患は、BLである。
【0044】
いくつかの実施形態では、CD38陽性血液悪性疾患は、FLである。
【0045】
いくつかの実施形態では、CD38陽性血液悪性疾患は、MCLである。
【0046】
いくつかの実施形態では、CD38陽性血液悪性疾患は、AMLである。
【0047】
いくつかの実施形態では、CD38陽性血液悪性疾患は、CLLである。
【0048】
いくつかの実施形態では、CD38陽性血液悪性疾患は、形質細胞疾患である。
【0049】
いくつかの実施形態では、形質細胞疾患は、軽鎖アミロイドーシス(AL)、多発性骨髄腫(MM)、又はワルデンストレームマクログロブリン血症である。
【0050】
いくつかの実施形態では、形質細胞疾患は、ALである。
【0051】
いくつかの実施形態では、形質細胞疾患は、MMである。
【0052】
いくつかの実施形態では、形質細胞疾患は、ワルデンストレームマクログロブリン血症である。
【0053】
B細胞非ホジキンリンパ腫の例は、リンパ腫様肉芽腫症、原発性滲出性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、重鎖病(γ、μ、及びα病を含む)、免疫抑制剤による治療によって誘発されるリンパ腫、例えばシクロスポリン誘発性リンパ腫及びメトトレキサート誘発性リンパ腫である。
【0054】
一実施形態では、CD38を発現する細胞が関与する疾患は、ホジキンリンパ腫である。
【0055】
CD38を発現する細胞に関与する疾患の他の例としては、成熟T細胞及びNK細胞腫瘍を含むT及びNK細胞に由来する悪性疾患、例えば、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ性白血病、アグレッシブNK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型、78腸管症型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉腫/セザリー症候群、原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖性疾患(原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫C−ALCL、リンパ腫様丘疹症、境界病変)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、非特定型末梢性T細胞リンパ腫、及び未分化大細胞型リンパ腫が挙げられる。
【0056】
骨髄系細胞に由来する悪性疾患の例としては、急性前骨髄球性白血病を含む急性骨髄性白血病、及び慢性骨髄性白血病を含む慢性骨髄増殖性疾患が挙げられる。
【0057】
あらゆる抗CD38抗体を本発明の方法で使用することができる。抗CD38抗体の可変領域は、既存の抗CD38抗体から得ることができ、場合により、常法を用いて完全長抗体としてクローニングすることができる。使用することが可能な、CD38に結合する例示的な抗体可変領域が、例えば国際公開第05/103083号、同第06/125640号、同第07/042309号、同第08/047242号、同第12/092612号、同第06/099875号及び同第11/154453A1号に記載されている。
【0058】
使用することが可能な例示的な抗CD38抗体として、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)がある。DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)は、それぞれ配列番号4及び5に示される重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列、それぞれ配列番号6、7、及び8に示される重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、及びHCDR3の配列、並びに配列番号9、10、及び11にそれぞれ示される軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含みし、IgG1/κサブタイプである。DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)の重鎖のアミノ酸配列を配列番号12に示し、軽鎖のアミノ酸配列を配列番号13に示す。
【0059】
配列番号1
MANCEFSPVSGDKPCCRLSRRAQLCLGVSILVLILVVVLAVVVPRWRQQWSGPGTTKRFPETVLARCVKYTEIHPEMRHVDCQSVWDAFKGAFISKHPCNITEEDYQPLMKLGTQTVPCNKILLWSRIKDLAHQFTQVQRDMFTLEDTLLGYLADDLTWCGEFNTSKINYQSCPDWRKDCSNNPVSVFWKTVSRRFAEAACDVVHVMLNGSRSKIFDKNSTFGSVEVHNLQPEKVQTLEAWVIHGGREDSRDLCQDPTIKELESIISKRNIQFSCKNIYRPDKFLQCVKNPEDSSCTSEI
【0060】
配列番号2
SKRNIQFSCKNIYR
【0061】
配列番号3
EKVQTLEAWVIHGG
【0062】
配列番号4
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGFTFNSFAMSWVRQAPGKGLEWVSA
ISGSGGGTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYFCAKDK
ILWFGEPVFDYWGQGTLVTVSS
【0063】
配列番号5
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYD
ASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQ
GTKVEIK
【0065】
配列番号7
AISGSGGGTYYADSVKG
【0066】
配列番号8
DKILWFGEPVFDY
【0070】
配列番号12
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGFTFNSFAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGGTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYFCAKDKILWFGEPVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0071】
配列番号13
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0072】
使用することができる別の例示的な抗CD38抗体は、米国特許第7,829,693号に記載される、それぞれ配列番号14及び15のVH及びVL配列を含むmAb003である。
【0073】
配列番号14
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYAFSWVRQAPGQGLEWMGRVIPFLGIANSAQKFQGRVTITADKSTSTAY
MDLSSLRSEDTAVYYCARDDIAALGPFDYWGQGTLVTVSSAS
【0074】
配列番号15
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQP
EDFATYYCQQYNSYPRTFGQGTKVEIK
【0075】
使用することができる別の例示的な抗CD38抗体として、米国特許第7,829,693号に記載される、それぞれ配列番号16及び17のVH及びVL配列を含むmAb024がある。
【0076】
配列番号16
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFSNYWIGWVRQMPGKGLEWMGIIYPHDSDARYSPSFQGQVTFSADKSISTAY
LQWSSLKASDTAMYYCARHVGWGSRYWYFDLWGRGTLVTVSS
【0077】
配列番号17
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEP
EDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK
【0078】
使用することができる別の例示的な抗CD38抗体として、米国特許第8,088,896号に記載される、それぞれ配列番号18及び19のVH及びVL配列を含むMOR−202(MOR−03087)がある。
【0079】
配列番号18
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYYMNWVRQAPGKGLEWVSGISGDPSNTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLY
LQMNSLRAEDTAVYYCARDLPLVYTGFAYWGQGTLVTVSS
【0080】
配列番号19
DIELTQPPSVSVAPGQTARISCSGDNLRHYYVYWYQQKPGQAPVLVIYGDSKRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISGTQAE
DEADYYCQTYTGGASLVFGGGTKLTVLGQ
【0081】
使用することができる別の例示的な抗CD38抗体として、米国特許第8,153,765号に記載される、それぞれ配列番号20及び21のVH及びVL配列を含むイサツキシマブがある。イサツキシマブのVH及びVLは、IgG1/κとして表すことができる。
【0082】
配列番号20
QVQLVQSGAEVAKPGTSVKLSCKASGYTFTDYWMQWVKQRPGQGLEWIGT
IYPGDGDTGYAQKFQGKATLTADKSSKTVYMHLSSLASEDSAVYYCARGD
YYGSNSLDYWGQGTSVTVSS
【0083】
配列番号21
DIVMTQSHLSMSTSLGDPVSITCKASQDVSTVVAWYQQKPGQSPRRLIYS
ASYRYIGVPDRFTGSGAGTDFTFTISSVQAEDLAVYYCQQHYSPPYTFGG
GTKLEIK
【0084】
本発明の方法で使用される抗CD38抗体は、例えばファージディスプレイライブラリから新たに選択されてもよく、その場合、ファージは、ヒト免疫グロブリン又はその一部(例えば、Fab、一本鎖抗体(scFv)、又は対をなさない若しくは対をなした抗体可変領域)を発現するように操作される((Knappik et al.,J Mol Biol 296:57〜86,2000、Krebs et al.,J Immunol Meth 254:67〜84,2001、Vaughan et al.,Nature Biotechnology 14:309〜314,1996、Sheets et al.,PITAS(USA)95:6157〜6162,1998、Hoogenboom及びWinter、J Mol Biol 227:381,1991、Marks et al.,J Mol Biol 222:581,1991)。CD38結合可変ドメインは、例えば、Shi et al.(2010),J Mol Biol 397:385〜96及び国際公開第09/085462号に記載されるバクテリオファージpIXコートタンパク質との融合タンパク質として抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を発現するファージディスプレイライブラリから単離することができる。抗体ライブラリをヒトCD38細胞外ドメインへの結合に関してスクリーニングし、得られた陽性クローンを更に特徴付け、クローンライセートからFabを単離した後、完全長抗体としてクローニングすることができる。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ法は、当技術分野にて確立されている。例えば、米国特許第5,223,409号、同第5,403,484号、及び同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,580,717号、同第5,969,108号、同第6,172,197号、同第5,885,793号、同第6,521,404号、同第6,544,731号、同第6,555,313号、同第6,582,915号、及び同第6,593,081号を参照されたい。
【0085】
本発明は更に、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を治療する方法であって、その治療を要する対象に、配列番号4のVL及び配列番号5のVLを含む抗体とCD38への結合に関して競合する抗CD38抗体並びにサバイビン阻害剤を、CD38陽性血液悪性疾患を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、方法も提供する。
【0086】
本発明は更に、多発性骨髄腫を有する対象を治療する方法であって、その治療を要する対象に、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む抗体とCD38への結合に関して競合する抗CD38抗体並びにサバイビン阻害剤を、多発性骨髄腫を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、方法も提供する。
【0087】
本発明は更に、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を治療する方法であって、その治療を要する対象に、ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合する抗CD38抗体を、CD38陽性血液悪性疾患を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、方法も提供する。
【0088】
本発明は更に、多発性骨髄腫を有する対象を治療する方法であって、その治療を要する対象に、ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合する抗CD38抗体並びにサバイビン阻害剤を、多発性骨髄腫を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、方法も提供する。
【0089】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、それぞれ配列番号6、7、及び8のHCDR1、HCDR2、及びHCDR2を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、それぞれ配列番号9、10、及び11のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、それぞれ配列番号6、7、8、9、10及び11のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号4のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有するVLと、配列番号5のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号14のVH及び配列番号15のVLを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号16のVH及び配列番号17のVLを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号18のVH及び配列番号19のVLを含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む。
【0098】
抗体は、周知のインビトロ法を用いて、CD38への結合に関して、参照抗体、例えばDARZALEX(商標)(配列番号4のVH及び配列番号5のVLを有するダラツムマブ)との競合について評価することができる。例示的な方法では、CD38を組換えにより発現するCHO細胞を非標識参照抗体と4℃で15分インキュベートした後、過剰量の蛍光標識した試験抗体と4℃で45分インキュベートすることができる。PBS/BSA中での洗浄後、常法を用いてフローサイトメトリーにより蛍光を測定することができる。別の例示的な方法においては、ヒトCD38の細胞外部分が、ELISAプレートの表面に被覆され得る。過剰の非標識参照抗体を、約15分間添加し、その後ビオチン化試験抗体を添加し得る。PBS/Tween中で洗浄後、試験ビオチン化抗体の結合を、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)結合ストレプトアビジンと、標準的な方法を用いて検出されたシグナルとを用いて検出し得る。競合アッセイでは、参照抗体を標識し、試験抗体を標識しなくてよいことは直ちに明らかである。参照抗体が試験抗体の結合を阻害するか、又は試験抗体が参照抗体の結合を少なくとも80%、85%、90%、95%、又は100%阻害する場合、試験抗体は参照抗体と競合する。試験抗体のエピトープは、例えば、ペプチドマッピングにより、又は既知の方法を用いる水素/重水素保護アッセイにより、又は結晶構造判定により、更に定義され得る。
【0099】
抗体が配列番号2及び配列番号3内の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14の残基に結合する場合、抗CD38抗体は、ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)内の少なくとも1つのアミノ酸及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)内の少なくとも1つのアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)内の少なくとも2つのアミノ酸及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)内の少なくとも2つのアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)内の少なくとも3つのアミノ酸及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)内の少なくとも3つのアミノ酸に結合する。
【0100】
ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合する例示的な抗体の1つとして、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)がある。
【0101】
ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合する抗体は、例えば、標準方法を用いてかつ本明細書に記載される通りに、マウスを、配列番号2及び3に示したアミノ酸配列を有するペプチドで免疫化し、得られた抗体をこれらのペプチドとの結合に関して、例えばELISA又は突然変異誘発実験を用いて特徴付けることによって生成することができる。
【0102】
抗体のFc部分は、下記により詳細に述べるように、抗体依存性細胞媒介細胞傷害作用(ADCC)、抗体依存性細胞性貪食作用(ADCP)、又は補体依存性細胞傷害作用(CDC)などの抗体のエフェクター機能を媒介することができる。このような機能は、FCエフェクタードメイン(複数可)の貧食活性若しくは溶解活性を有する免疫細胞上のFc受容体への結合によって又はFcエフェクタードメイン(複数可)の補体系の成分への結合によって、媒介され得る。通常、Fc結合細胞又は補体成分によって媒介される作用(複数可)は、標的細胞、例えばCD38発現細胞の阻害及び/又は枯渇をもたらす。ヒトIgGアイソタイプである、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4は、エフェクター機能に関して特異的な能力を呈する。ADCCは、IgG1及びIgG3によって媒介され、ADCPは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4によって媒介され、CDCは、IgG1及びIgG3によって媒介され得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプのものである。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、IgG1アイソタイプのものである。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、IgG2アイソタイプのものである。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、IgG3アイソタイプのものである。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、IgG4アイソタイプのものである。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、抗体依存性細胞性細胞傷害作用(ADCC)、抗体依存性細胞性貪食作用(ADCP)、補体依存性細胞傷害作用(CDC)、又はアポトーシスによってCD38発現細胞のインビトロ殺傷を誘発する。
【0109】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、ADCCによってCD38発現細胞の殺傷を誘発する。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、ADCPによってCD38発現細胞の殺傷を誘発する。
【0111】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、CDCによってCD38発現細胞の殺傷を誘発する。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、アポトーシスによってCD38発現細胞の殺傷を誘発する。
【0113】
「抗体依存性細胞傷害作用」、「抗体依存性細胞媒介細胞傷害作用」、又は「ADCC」は、抗体で被覆された標的細胞と、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、及び好中球などの溶解活性を有するエフェクター細胞との、エフェクター細胞上で発現されるFcγ受容体(FcγR)を介した相互作用に依存する細胞死を誘発するための機構である。例えば、NK細胞はFcγRIIIaを発現し、一方単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIaを発現する。CD38発現MM細胞などの抗体被覆標的細胞の死滅は、膜孔形成タンパク質及びプロテアーゼの分泌を通してのエフェクター細胞活性の結果として生じる。抗CD38抗体のADCC活性を評価するために、抗体は、免疫エフェクター細胞と組み合わせて、CD38発現細胞に添加され得るが、これらが抗原抗体複合体によって活性化されると、標的細胞の細胞溶解をもたらし得る。細胞溶解は、溶解した細胞からの標識(例えば、放射性基質、蛍光染料、又は天然細胞内タンパク質)の放出によって検出することができる。そのようなアッセイ用の例示的なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)及びNK細胞が挙げられる。CD38を発現する多発性骨髄腫細胞株又は初代MM細胞を標的細胞として用いることができる。例示的なアッセイでは、ルシフェラーゼを発現するように操作したMM細胞株を抗CD38抗体とインキュベートする。新しく単離したPBMCエフェクター細胞を、標的細胞:エフェクター細胞の比が40:1となるように加える。PBMCの添加の4時間後にルシフェリンを加え、ルミノメータ(SpectraMax、モレキュラー・デバイシーズ社(Molecular Devices))を使用して、生存MM細胞から放射される生じた生物発光シグナルを20分以内に測定することで、MM細胞のADCC率(%)を、次式を用いて計算することができる。すなわち、ADCC(%)=1−(PBMCの非存在下での平均生物発光シグナル/PBMCの存在下での平均生物発光シグナル)×100%。抗CD38抗体は、上記に述べたようなインビトロアッセイにおけるADCC率(%)が少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%,又は100%である場合に「インビトロでADCCを誘発する」ものとする。
【0114】
「補体依存性細胞傷害性」又は「CDC」は、標的結合抗体のFcエフェクタードメインが補体成分C1qに結合してこれを活性化し、補体成分C1qが次に補体カスケードを活性化して、標的細胞の死滅をもたらす、細胞死を誘発するためのメカニズムを指す。補体の活性化はまた、標的細胞表面上の補体成分の沈着をもたらすことができ、これが白血球への補体受容体(例えば、CR3)の結合によって、ADCCを容易にする。例示的なアッセイでは、B細胞悪性疾患を有する患者から単離された初代BM−MNC細胞を、抗CD38抗体及び10%のプールされたヒト血清に由来する補体を用いて、0.3〜10μg/mLの濃度で1時間処理し、初代CD138
+ MM細胞の生存率を、van der Veer et al.,Haematologica 96:284〜290,2011、van der Veer et al.,Blood Cancer J 1(10):e41 2011に記載される方法を用いたフローサイトメトリーによって決定することができる。MM細胞溶解の割合は、本明細書に記載されるアイソタイプ対照に対して決定することができる。本発明の方法において用いられる抗CD38抗体は、CDCは、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%まで誘発することができる。
【0115】
「抗体依存性細胞性貪食作用」(「ADCP」)とは、例えばマクロファージ又は樹状細胞のような貪食細胞による細胞内移行による抗体被覆標的細胞の排除の機構を指す。ADCPは、エフェクター細胞として、単球由来マクロファージを、またGFP又はその他の標識分子を発現するように遺伝子操作された標的細胞として、CD38を発現している、Daudi細胞(ATCC(登録商標)CCL−213(商標))、B細胞性白血病、又はリンパ腫瘍細胞を用いて、評価され得る。エフェクター:標的細胞の比は、例えば4:1であり得る。エフェクター細胞は、標的細胞と共に4時間にわたり、抗CD38抗体と共に又はそれなしでインキュベートされ得る。インキュベーション後、細胞は、アキュターゼを用いて剥離され得る。マクロファージは、蛍光標識に結合した抗CD11b抗体及び抗CD14抗体により識別され得るが、貪食作用パーセントは、標準的な方法を用いて、CD11
+及びCD14
+マクロファージ中のパーセントGFP蛍光に基づいて決定され得る。本発明の方法で使用される抗CD38抗体は、ADCPを約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%まで誘発することができる。
【0116】
抗CD38抗体によって引き出されるADCCは、抗体Fc内の特定の置換によって高めることができる。例示的な置換は、例えば、米国特許第6,737,056号に記載されたように、アミノ酸位置256、290、298、312、356、330、333、334、360、378、又は430(EUインデックスに従った残基番号付け)における置換である。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、抗体Fcにアミノ酸置換を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、抗体Fcにおいて、アミノ酸位置256、290、298、312、356、330、333、334、360、378、又は430における置換を含む(EUインデックスに従った残基番号付け)。
【0119】
抗CD38抗体によって誘発されるADCCは、抗体オリゴ糖成分を操作することによっても高めることができる。ヒトIgG1又はIgG3は、Asn297でN−グリコシル化されており、グリカンの大部分は、二分岐のG0、G0F、G1、G1F、G2、又はG2Fの形態である。遺伝子操作されていないCHO細胞により生成される抗体は、典型的には、少なくとも約85%のグリカンフコース含量を有する。Fc領域に結合した二分岐の複合体型オリゴ糖からのコアフコースの除去は、抗原結合又はCDC活性を変更することなく、改善されたFcγRIIIa結合を介して抗体のADCCを増強する。かかる改変抗体は、培養物の浸透圧の制御(Konno et al.,Cytotechnology 64(:249〜65,2012)、宿主細胞株としての変異体CHO株Lec13の適用(Shields et al.,J Biol Chem 277:26733〜26740,2002)、宿主細胞株としての変異体CHO株EB66の適用(Olivier et al.,MAbs;2(4),2010;印刷に先立って電子公開、PMID:20562582)、ラットハイブリドーマ細胞株YB2/0の宿主細胞株としての適用(Shinkawa et al.,J Biol Chem 278:3466〜3473,2003)、α 1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子に対して特異的な低分子干渉RNAの導入(Mori et al.,Biotechnol Bioeng88:901〜908,2004)、あるいはβ−1,4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII及びゴルジα−マンノシダーゼII又は強力なα−マンノシダーゼI阻害物質のキフネンシンの共発現(Ferrara et al.,J Biol Chem281:5032〜5036,2006、Ferrara et al.,Biotechnol Bioeng93:851〜861,2006、Xhou et al.,Biotechnol Bioeng 99;652〜65,2008)などの、Fcオリゴ糖の二分岐複合型を有する比較的高度に脱フコシル化された抗体の効果的な発現につながることが報告されている様々な方法を用いて得ることができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、約0%〜約15%、例えば、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0%のフコース含量を有する二分岐グリカン構造を有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、約50%、40%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0%のフコース含量を有する二分岐グリカン構造を有する。
【0122】
Fc中の置換及び減少したフコース含量は、抗CD38抗体のADCC活性を増強することができる。
【0123】
「フコース含量」とは、Asn297における糖鎖内のフコース単糖類の量を意味する。フコースの相対量は、全糖構造に対するフコース含有構造の割合である。これらの糖構造は、複数の方法、例えば、1)国際公開第2008/077546号に記載されるような、N−グリコシダーゼF処理試料(例えば、複合体、ハイブリッド、及びオリゴ−並びに高マンノース構造)のMALDI−TOFの使用、2)Asn297グリカンの酵素放出、その後の誘導体化、及び蛍光検出を備えたHPLC(UPLC)及び/又はHPLC−MS(UPLC−MS)による検出/定量、3)第1のGlcNAc単糖類と第2のGlcNAc単糖類との間を切断し、フコースを第1のGlcNAcに結合させる、Endo S又は他の酵素によるAsn297のグリカンの処理を伴うか又はこの処理なしでの、天然又は還元mAbのインタクトプロテイン分析、4)酵素消化(例えば、トリプシン又はエンドペプチダーゼLys−C)による抗体の構成ペプチドへの消化、その後のHPLC−MS(UPLC−MS)による分離、検出及び定量、5)Asn297においてPNGase Fを用いる、特異的酵素脱グリコシル化による抗体タンパク質からの抗体オリゴ糖の分離、によって特性評価かつ定量することができる。このようにして放出されるオリゴ糖は、フルオロフォアで標識され、グリカン構造の細かな特性評価を可能にする様々な補足的技術によって分離かつ特定することが可能であり、これらは、実験的質量の理論的質量との比較によるマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)質量分析、イオン交換HPLC(GlycoSep C)によるシアル化の程度の決定、順相HPLC(GlycoSep N)による親水性の基準に準拠するオリゴ糖型の分離及び定量、並びに高性能キャピラリー電気泳動−レーザ誘起蛍光(HPCE−LIF)によるオリゴ糖の分離及び定量による。
【0124】
本出願で使用される「低フコース」又は「低フコース含量」とは、抗体が約0%〜約15%のフコース含量を有することを指す。
【0125】
本明細書で使用するところの「正常なフコース」又は「正常なフコース含量」とは、抗体が約50%を超える、通常80%を超える、又は85%を超えるフコース含量を有することを指す。
【0126】
配列番号12の重鎖及び配列番号13の軽鎖を含む抗体と実質的に同一である抗体は、本発明の方法において用いることができる。本明細書で使用するところの「実質的に同一」なる用語は、比較される2つの抗体重鎖又は軽鎖のアミノ酸配列が同一であるか、又は「ごくわずかな相違」を有するということを意味する。ごくわずかな相違とは、抗体の特性に悪影響を及ぼさない抗体重鎖又は軽鎖における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ酸の置換である。同一性パーセントは、例えば、Vector NTI v.9.0.0(Invitrogen、Carlsbad、CA)のAlignXモジュールの初期設定を使用するペアワイズアライメントによって決定することができる。本発明のタンパク質配列を問い合わせ配列として使用することで、例えば、近縁配列を確認するために公開データベース又は特許データベースでの検索を実行することができる。かかる検索を実行するために使用される例示的なプログラムは、初期設定を使用する、XBLAST若しくはBLASTPプログラム(http_//www_ncbi_nlm/nih_gov)、又はGenomeQuest(商標)(GenomeQuest、Westborough、MA)スイートである。本発明の方法において使用される抗CD38抗体に対して行われうる例示的な置換は、例えば、同様な電荷、疎水性、又は化学両論的特性を有するアミノ酸による保存的置換である。保存的置換はまた、例えば安定性又は親和性といった抗体の特性を向上させるために、又は抗体エフェクターの機能を改善するためにも行われ得る。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ酸置換が、例えば、抗CD38抗体の重鎖又は軽鎖に対して行われ得る。更に、アラニンスキャニング変異導入法についてこれまでに述べられているように(MacLennan et al.,Acta Physiol.Scand.Suppl.643、55〜67,1998;Sasaki et al.,Adv.Biophys.35:1〜24,1998)、重鎖又は軽鎖内の任意の天然残基をアラニンで置換することもできる。所望のアミノ酸置換は、そのような置換が望まれる時点で当業者が決定しうる。アミノ酸置換は、例えば、PCR突然変異誘発(米国特許第4,683,195号)によって行うことができる。変異体のライブラリは、周知の方法を用いて、例えば、ランダムコドン(NNK)又は非ランダムコドン、例えば11個のアミノ酸(Ala、Cys、Asp、Glu、Gly、Lys、Asn、Arg、Ser、Tyr、Trp)をコードするDVKコドンを用い、そして所望の特性を有する変異体を求めてのライブラリをスクリーニングすることで生成されてもよい。生成された変異体は、本明細書に記載の方法を用いて、そのCD38への結合及びADCCを誘発する能力について試験することができる。
【0127】
「保存的改変」とは、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に大きく影響するか、又はこれを変えることのないアミノ酸の改変のことを指す。保存的改変には、アミノ酸の置換、付加、及び欠失が含まれる。保存的置換とは、アミノ酸が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられる置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、明確に定義されており、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン)、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えばフェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン)、アミドを有するアミノ酸(例えばアスパラギン、グルタミン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、及び硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(システイン、メチオニン)が挙げられる。更に、アラニンスキャニング変異導入法についてこれまでに述べられているように、ポリヌクレオチド内の任意の天然残基をアラニンで置換することもできる(MacLennan et al.(1988),Acta Physiol.Scand.Suppl.643、55〜67;Sasaki et al.,(1988)Adv.Biophys.35:1〜24)。本発明の抗体に対するアミノ酸置換は、例えばPCR変異導入法(米国特許第4,683,195号)などの周知の方法によって行うことができる。あるいは、変異体のライブラリは、例えば、ランダムコドン(NNK)又は非ランダムコドン(例えば11個のアミノ酸(Ala、Cys、Asp、Glu、Gly、Lys、Asn、Arg、Ser、Tyr、Trp)をコードするDVKコドン)を用いて生成することもできる。得られた抗体変異体は、本明細書に述べられるアッセイを使用してそれらの特性について試験することができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、ある範囲の親和性(K
D)でヒトCD38に結合することができる。一実施形態では、抗CD38抗体は、約1×10
−8M以下のK
D、例えば、5×10
−9M、1×10
−9M、5×10
−10M、1×10
−10M、5×10
−11M、1×10
−11M、5×10
−12M、1×10
−12M、5×10
−13M、1×10
−13M、5×10
−14M、1×10
−14M、若しくは5×10
−15M、又は、当業者により実施される、表面プラズモン共鳴法又は結合平衡除外(Kinexa)法によって測定される任意の範囲若しくはその範囲内の任意の値のKDでCD38に結合する。例示的な1つの親和性として、1×10
−8M以下がある。別の例示的な親和性として、1×10
−9M以下がある。
【0129】
KinExA装置、ELISA又は競合的結合アッセイは当業者には周知のものである。特定の抗体/CD38相互作用について測定される親和性は、異なる条件下(例えば、浸透圧、pH)で測定した場合には異なりうる。したがって、親和性及び他の結合パラメータ(例えば、K
D、K
on、K
off)の測定は、一般的には標準的な条件及び本明細書に記載される緩衝液などの標準化緩衝液を用いて行われる。例えばBiacore 3000又はProteOnを用いた親和性測定での内部誤差(標準偏差(SD)として測定されるもの)は典型的に、典型的な検出範囲内で測定した場合、5〜33%の範囲内であり得ることが当業者には分かるであろう。したがって、K
Dに関して用語「約」は、アッセイにおける一般的な標準偏差を反映する。例えば、K
Dが1×10
−9Mである場合の一般的なSDは、±0.33×10
−9M以下である。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、二重特異性抗体である。既存の抗CD38抗体のVL及び/若しくはVH領域、又は本明細書に記載されるようにして新たに特定されたVL及びVH領域は、遺伝子操作を受けて二重特異性の全長抗体にされてもよい。このような二重特異性抗体は、抗体Fc中のCH3相互作用を、二重特異性抗体を形成するように調節することにより製造され得るが、それには、以下に記載のような技術を用いることができる:米国特許第7,695,936号、国際公開第04/111233号、米国特許出願公開第2010/0015133号、同第2007/0287170号、国際公開第2008/119353号、米国特許出願公開第2009/0182127号、同第2010/0286374号、同第2011/0123532号、国際公開第2011/131746号、同第2011/143545号、又は米国特許出願公開第2012/0149876号。
【0131】
例えば、本発明の二重特異性抗体は、国際公開第2011/131746号に記載された方法に従って、インビトロで無細胞環境下、2種類の一重特異性ホモ二量体抗体のCH3領域中に非対称な突然変異を導入し、ジスルフィド結合を異性化させる還元条件下において、2種類の親一重特異性ホモ二量体抗体から二重特異性ヘテロ二量体抗体を形成することにより生成されてもよい。この方法においては、第1の一重特異性二価抗体(例えば、抗CD38抗体)及び第2の一重特異性二価抗体は、ヘテロ二量体の安定性を促進するCH3ドメインにおける特定の置換を有するように遺伝子操作されるが、これらの抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合異性化を受けるのに十分な還元条件下において共にインキュベートされ、これにより、Fabアーム交換による二重特異性抗体が生成される。インキュベーション条件は、最適には、非還元条件に戻されてもよい。使用されうる例示的な還元剤は、2−メルカプトエチルアミン(2−MEA)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、グルタチオン、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L−システイン、及びベータ−メルカプトエタノール、好ましくは、2−メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される還元剤である。例えば、少なくとも20℃の温度において、少なくとも25mMの2−MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5〜8、例えば、pH7.0又はpH7.4において、少なくとも90分のインキュベーションが使用されてもよい。
【0132】
二重特異性抗体の第1の重鎖及び第2の重鎖に使用されうる例示的なCH3の変異は、K409R及び/又はF405Lである。
【0133】
本発明の抗体のVL領域及び/又はVH領域を組み込むことができる更なる二重特異性構造は、例えば、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD)(国際公開第2009/134776号)、又は、ロイシンジッパー又はコラーゲン二量体化ドメインのような、2つの抗体アームを異なる特異性で連結する様々な二量体化ドメインを含む構造である(国際公開第2012/022811号、米国特許第5,932,448号、同第6,833,441号)。DVDは、VH1−リンカー−VH2−CH構造を有する重鎖と、VL1−リンカー−VL2−CL構造を有する軽鎖とを含む完全長抗体であるが、リンカーは任意である。
【0134】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は毒素と結合される。結合方法及び好適な毒素は、周知のものである。
【0135】
いくつかの実施形態では、MMを有する対象は、CD16の158位でフェニルアラニンについてホモ接合型(FcγRIIIa−158F/F遺伝子系)であるか、又は、CD16の158位でバリン及びフェニルアラニンについてヘテロ接合型(FcγRIIIa−158F/V遺伝子型)である。CD16は、Fcガンマ受容体IIIa(FcγRIIIa)又は低親和性免疫グロブリンガンマFc領域受容体III−Aアイソフォームとしても知られている。FcγRIIIaタンパク質残基の158位におけるバリン/フェニルアラニン(V/F)多型性は、ヒトIgGに対するFcγRIIIa親和性に影響を及ぼすことが示されている。FcγRIIIa−158F/F又はFcγRIIIa−158F/V多型性を有する受容体は、FcγRIIIa−158V/Vと比較するとき、Fc結合の低減を示し、したがってADCCの低減を示す。ヒトN結合オリゴ糖状のフコースの欠如又は低量のフコースは、抗体のヒトFcγRIIIa(CD16)への結合の改善に起因して、抗体のADCCを誘発する能力を改善する(Shields et al.,J Biol Chem 277:26733〜40、2002年)。日常的方法を用いて、患者をFcγRIIIa多型性について分析することができる。
【0136】
いくつかの実施形態では、サバイビン阻害剤は小分子である。
【0137】
いくつかの実施形態では、サバイビン阻害剤はポリヌクレオチドである。
【0138】
サバイビン阻害剤は、サバイビン遺伝子の転写若しくはタンパク質発現の阻害、サバイビンタンパク質の二量体化の阻害、不安定化の促進、又はその分解の誘発などの任意の機構によってサバイビン誘発性アポトーシスを阻害することができる。
【0139】
例示的なサバイビンの小分子阻害剤の1つにYM155がある。YM155は、サバイビンのプロモーターに結合してその転写を阻害する。他の例示的なサバイビンの小分子阻害剤としては、例えば、米国特許第6,608,108号に記載されるノルジヒドログアイアレチン酸誘導体、及び米国特許出願公開第2012/0122910号に記載される分子がある。他のサバイビンのポリヌクレオチド阻害剤が、例えば米国特許第6,838,283号、国際公開第01/057059号、同第09/114476号、及び同第09/044793号に記載されている。ポリヌクレオチド阻害剤としては、miRNA(microRNA)、siRMA(small intereference RNA)、ASO(アレル特異的オリゴヌクレオチド)、及び当該技術分野では周知の他のポリヌクレオチド阻害剤が挙げられる。
【0140】
投与/医薬組成物
本発明の方法では、抗CD38抗体は、抗CD38抗体と医薬的に許容される担体とを含む好適な医薬組成物中で提供されうる。担体は、抗CD38抗体と一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルであってよい。そのようなビヒクルは、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などの、石油、動物、植物、又は合成物起源のものを含む、水及び油などの液体であってよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを用いることができる。これらの溶液は滅菌され、一般には粒子状物質を含まない。これらは、通常の周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。この組成物は、生理学的条件に近づけるために必要とされる医薬的に許容される補助物質、例えばpH調整剤及び緩衝剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤等を含有することができる。そのような医薬製剤中の本発明の分子又は抗体の濃度は幅広く異なってもよく、即ち約0.5重量%未満から、通常は少なくとも約1重量%まで、最大で15又は20重量%までであってよく、また、選択される特定の投与方法に従って、必要とされる用量、流体体積、粘度等に主に基づいて選択される。好適なビヒクル及び製剤(他のヒトタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含む)は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21
st Edition,Troy,D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,Philadelphia,PA 2006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing pp 691〜1092に記載され、特にpp.958〜989を参照されたい。
【0141】
本発明の方法における抗CD38抗体の投与方法は、当該技術分野において周知であるように、非経口投与、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内若しくは皮下、肺内、経粘膜(経口、鼻腔内、膣内、直腸)又は当業者に理解される他の手段などの任意の好適な経路であり得る。
【0142】
本発明の方法における抗CD38抗体は、例えば、静脈内(IV)注入又はボーラス注射により非経口的に、筋肉内又は皮下又は腹腔内になど任意の適当な経路によって患者に投与することができる。静脈内注入は、例えば、15、30、60、90、120、180、若しくは240分にわたって、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12時間にわたって実施されてもよい。
【0143】
CD38陽性血液悪性疾患を有する患者に投与される用量は、治療される疾患を緩和するか又は少なくとも部分的に抑制するのに十分(「治療的に有効な量」)であり、時には、0.005mg〜約100mg/kg、例えば、約0.05mg〜約30mg/kg、又は約5mg〜約25mg/kg、若しくは約4mg/kg、約8mg/kg、約16mg/kg、若しくは約24mg/kg、又は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10mg/kgであってもよいが、更により高い量、例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100mg/kgであってもよい。
【0144】
例えば、50、100、200、500、又は1000mgの固定単位用量が与えられるか、又は患者の表面積に基づいて例えば、500、400、300、250、200、若しくは100mg/m
2の用量で与えられてもよい。通常、1〜8回の用量(例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8回)がMMを治療するために投与されるが、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、又はそれよりも多い用量を投与することが可能である。
【0145】
本発明の方法における抗CD38抗体の投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、5週間、6週間、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月以上後に繰り返すことができる。治療過程を繰り返すことも可能であり、長期にわたる投与も同様に可能である。繰り返し投与は、同一用量であるか、又は異なる用量であってもよい。例えば、本発明の方法における抗CD38抗体は、8mg/kg又は16mg/kgで1週間間隔で8週間にわたり投与され、8mg/kg又は16mg/kgで2週間毎に更に16週間の投与が続き、その後、8mg/kg又は16mg/kgで4週間毎に静脈内注入による投与を続けて行うことができる。
【0146】
本発明の方法では、抗CD38抗体は、例えば、1週間に1回、6ヶ月以上の期間にわたるなどの維持療法によって投与されてもよい。
【0147】
例えば、本発明の方法では、抗CD38抗体は、単回投与又は24、12、8、6、4、若しくは2時間毎の分割投与を用いて、あるいはこれらの任意の組み合わせを用いて、約0.1〜100mg/kgの量の1日用量として、例えば、1日当たり0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90又は100mg/kgで、治療開始後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40日目のうちの少なくとも1日に、あるいは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20週目のうちの少なくとも1週に、あるいはこれらの任意の組み合わせで提供されてもよい。
【0148】
本発明の方法における抗CD38抗体はまた、癌の進行リスクを低下させ、癌の進行におけるイベントの発生の開始を遅延させ、かつ/又は癌が緩解した際の再発リスクを低下させるために、予防的に投与されてもよい。これは、他の生物学的要因のために、存在することが知られている腫瘍の位置を特定することが難しい患者において特に有用であり得る。
【0149】
本発明の方法における抗CD38抗体は、保存のために凍結乾燥させ、使用に先立って適当な担体中で戻すことができる。この技術は、通常のタンパク調製物に関して有効であることが示されており、周知の凍結乾燥法及び再構成技術を用いることができる。
【0150】
本発明の方法では、抗CD38抗体を、サバイビン阻害剤と組み合わせて投与することができる。
【0151】
本発明の方法では、抗CD38抗体を、サバイビン阻害剤YM155と組み合わせて投与することができる。
【0152】
本発明の方法で使用されるYM155は、国際公開第01/60803号及び同第2004/092160号に開示される製造方法によって容易に入手可能である。
【0153】
YM155は、経口投与若しくは非経口投与、又は静脈内投与することができる。これと関連して、静脈内投与用の注射製剤としては、滅菌水溶液又は非水性溶液、懸濁液、及び乳濁液を含むものが挙げられる。水性溶媒としては、例えば注射用の蒸留水、及び生理食塩水が挙げられる。非水性溶媒としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、エタノールなどのアルコール、ポリソルベート80などが挙げられる。これらの組成物は更に、張度調整剤、防腐剤、保湿剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、及び可溶化剤を含むことができる。これらは、例えば細菌フィルターを通じた濾過、滅菌剤の混合又は照射によって滅菌することができる。あるいは、無菌固体組成物を調製し、これを注射用に滅菌水又は滅菌溶媒に使用直前に溶解若しくは懸濁することも可能である。
【0154】
静脈内投与では、YM155は、1日1回若しくは複数用量に分けて、又は注入によって連続的に(持続点滴投与)、例えば0.1〜20mg/m
2/日、例えば1〜10mg/m
2/日を投与することができる。YM155は、3〜10mg/m
2/日を、4日間〜20日間、例えば4日間〜14日間、又は5日間、7日間、10日間若しくは14日間の期間にわたって、及び/又は7日間の期間にわたって連続的に注入することができる。投与が更に継続される場合には、上記の投薬期間の終了後、1日間〜2ヶ月、7日間〜21日間、又は14日間の休薬期間を含む投薬サイクルを用いることができる。あるいは、YM155は、3〜8mg/m
2/日の用量を7日間注入することにより連続的に投与した後、14日間の休薬期間を置くこともでき、状況に応じてこのサイクルを1サイクルとして繰り返す。投与頻度、投与量、注入時間、投薬サイクルなどは、抗癌剤の種類、患者の状態、年齢、性別などを考慮して個別の症例に適宜したがって決定することができる。
【0155】
本発明の方法では、抗CD38抗体とサバイビン阻害剤の組み合わせを、任意の都合のよい時間枠にわたって投与することができる。例えば、抗CD38抗体とサバイビン阻害剤を同日に患者に投与することができる。しかしながら、抗CD38抗体とサバイビン阻害剤とは、交互の日、又は交互の週若しくは月などで投与することもできる。いくつかの方法では、抗CD38抗体とサバイビン阻害剤とは、治療される患者の体内で検出可能な濃度でこれらが同時に存在する(例えば血清中)ような充分に近い時間内に投与することができる。いくつかの方法では、多数の投与回数からなる抗CD38抗体によるある期間にわたった治療過程全体の後、又は前に、多数の投与回数からなるサバイビン阻害剤による治療過程が行われる。1日、2日、又は数日間若しくは数週間の回復期間を、抗CD38抗体とサバイビン阻害剤の投与の間に置くことができる。
【0156】
サバイビン阻害剤と併用される抗CD38抗体は、任意の形態の放射線療法、及び任意の形態の放射線手術、及び/又は外科手術と共に投与され得るが、そのような放射線療法には、体外照射療法、強度変調放射線療法(IMRT)が挙げられ、放射線手術には、ガンマナイフ、サイバーナイフ、Linac、及び組織内放射線照射(例えば、放射性シードの埋め込み、Glia Siteバルーン)が挙げられる。
【0157】
CD38に特異的に結合する抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物の皮下投与
抗CD38抗体は、抗CD38抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物として皮下投与することができる。
【0158】
皮下投与される医薬組成物中の抗CD38抗体の濃度は、約20mg/mLとすることができる。
【0159】
皮下投与される医薬組成物は、約1,200mg〜1,800mgの抗CD38抗体を含むことができる。
【0160】
皮下投与される医薬組成物は、約1,200mgの抗CD38抗体を含むことができる。
【0161】
皮下投与される医薬組成物は、約1,600mgの抗CD38抗体を含むことができる。
【0162】
皮下投与される医薬組成物は、約1,800mgの抗CD38抗体を含むことができる。
【0163】
皮下投与される医薬組成物は、約30,000U〜45,000Uのヒアルロニダーゼを含むことができる。
【0164】
皮下投与される医薬組成物は、約1,200mgの抗CD38抗体及び約30,000Uのヒアルロニダーゼを含むことができる。
【0165】
皮下投与される医薬組成物は、約1,800mgの抗CD38抗体及び約45,000Uのヒアルロニダーゼを含むことができる。
【0166】
皮下投与される医薬組成物は、約1,600mgの抗CD38抗体及び約30,000Uのヒアルロニダーゼを含むことができる。
【0167】
皮下投与される医薬組成物は、約1,600mgの抗CD38抗体及び約45,000Uのヒアルロニダーゼを含むことができる。
【0168】
皮下投与される医薬組成物は、配列番号23のアミノ酸配列を有するヒアルロニダーゼrHuPH20を含むことができる。
【0169】
rHuPH20は、組換えヒアルロニダーゼ(HYLENEX(登録商標)組換え体)であり、国際公開第2004/078140号に記載されている。
【0170】
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸(EC 3.2.1.35)を分解し、細胞外マトリクス中のヒアルロナンの粘性を低下させることにより組織の透過性を高める酵素である。
【0171】
配列番号23
MGVLKFKHIFFRSFVKSSGVSQIVFTFLLIPCCLTLNFRAPPVIPNVPFLWAWNAPSEFCLGKFDEPLDMSLFSFIGSPRINATGQGVTIFYVDRLGYYPYIDSITGVTVNGGIPQKISLQDHLDKAKKDITFYMPVDNLGMAVIDWEEWRPTWARNWKPKDVYKNRSIELVQQQNVQLSLTEATEKAKQEFEKAGKDFLVETIKLGKLLRPNHLWGYYLFPDCYNHHYKKPGYNGSCFNVEIKRNDDLSWLWNESTALYPSIYLNTQQSPVAATLYVRNRVREAIRVSKIPDAKSPLPVFAYTRIVFTDQVLKFLSQDELVYTFGETVALGASGIVIWGTLSIMRSMKSCLLLDNYMETILNPYIINVTLAAKMCSQVLCQEQGVCIRKNWNSSDYLHLNPDNFAIQLEKGGKFTVRGKPTLEDLEQFSEKFYCSCYSTLSCKEKADVKDTDAVDVCIADGVCIDAFLKPPMETEEPQIFYNASPSTLSATMFIVSILFLIISSVASL
【0172】
抗CD38抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物の投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、又はそれよりも長い期間の後に繰り返すことができる。治療過程を繰り返すことも可能であり、長期にわたる投与も同様に可能である。繰り返し投与は、同一用量であるか、又は異なる用量であってもよい。例えば、抗CD38抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物は、週1回を8週間、その後に2週に1回を16週間、その後に4週に1回投与することができる。投与される医薬組成物は、約1,200mgの抗CD38抗体及び約30,000Uのヒアルロニダーゼを含むことができ、その際、医薬組成物中のCD38に特異的に結合する抗体の濃度は約20mg/mLである。投与される医薬組成物は、約1,800mgの抗CD38抗体及び約45,000Uのヒアルロニダーゼを含むことができる。投与される医薬組成物は、約1,600mgの抗CD38抗体及び約30,000Uのヒアルロニダーゼを含むことができる。投与される医薬組成物は、約1,600mgの抗CD38抗体及び約45,000Uのヒアルロニダーゼを含むことができる。
【0173】
抗CD38抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物は、腹部に皮下投与することができる。
【0174】
抗CD38抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物は、約80mL、90mL、100mL、110mL、又は120mLの全体積で投与することができる。
【0175】
投与を行うには、20mg/mLの抗CD38抗体を25mMの酢酸ナトリウム、60mMの塩化ナトリウム、140mMのD−マンニトール、0.04%のポリソルベート20(pH5.5)に加えたものを、rHuPH20(1.0mg/mL)(75〜150kU/mL)を10mMのL−ヒスチジン、130mMのNaCl、10mMのL−メチオニン、0.02%ポリソルベート80(pH6.5)に加えたものと、混合物を対象に投与する前に混合することができる。
【0176】
本発明の更なる実施形態
1.CD38陽性血液悪性疾患を有する対象の治療においてサバイビン阻害剤と併用される、抗CD38抗体。
2.CD38陽性血液悪性疾患を有する対象の治療において抗CD38抗体と併用される、サバイビン阻害剤。
3.CD38陽性血液悪性疾患を有する患者の治療において使用される、抗CD38抗体とサバイビン阻害剤との組み合わせ。
4.CD38陽性血液悪性疾患が、多発性骨髄腫(MM)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、又は慢性リンパ性白血病(CLL)である、実施形態1にしたがって使用される抗CD38抗体、実施形態2にしたがって使用されるサバイビン阻害剤、又は実施形態3に記載の組み合わせ。
5.CD38陽性血液悪性疾患が、形質細胞疾患である、実施形態1若しくは4にしたがって使用される抗CD38抗体、実施形態2若しくは4にしたがって使用されるサバイビン阻害剤、又は実施形態3若しくは4に記載の組み合わせ。
6.形質細胞疾患が、軽鎖アミロイドーシス(AL)、多発性骨髄腫(MM)、又はワルデンストレームマクログロブリン血症である、実施形態1、4若しくは5にしたがって使用される抗CD38抗体、実施形態2、4若しくは5にしたがって使用されるサバイビン阻害剤、又は実施形態3、4若しくは5に記載の組み合わせ。
7.形質細胞疾患がMMである、実施形態1若しくは4〜6のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜6のいずれか1つにしたがって使用されるサバイビン阻害剤、又は実施形態3若しくは4〜6のいずれか1つに記載の組み合わせ。
8.抗CD38抗体が、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)、抗体依存性細胞性貪食作用(ADCP)、補体依存性細胞傷害作用(CDC)、又はアポトーシスによってCD38陽性細胞の殺傷を誘発する、実施形態1若しくは4〜7のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜7のいずれか1つにしたがって使用されるサバイビン阻害剤、又は実施形態3若しくは4〜7のいずれか1つに記載の組み合わせ。
9.抗CD38抗体が、
a.IgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4アイソタイプのものであるか、又は、
b.IgG1アイソタイプのものである、実施形態1若しくは4〜8のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜8のいずれか1つにしたがって使用されるサバイビン阻害剤、又は実施形態3若しくは4〜6のいずれか1つに記載の組み合わせ。
10.抗CD38抗体が、
a.CD38への結合に関して、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含む抗体と競合するか、
b.ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合するか、
c.それぞれ配列番号6、7、及び8の重鎖相補性決定領域(HCDR)1(HCDR1)、2(HCDR2)、及び3(HCDR3)配列を含むか、
d.それぞれ配列番号9、10、及び11の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1(LCDR1)、2(LCDR2)、及び3(LCDR3)配列を含むか、
e.それぞれ配列番号6、7、8、9、10、及び11のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むか、
f.配列番号4のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号5のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むか、
g.配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含むか、
h.
i.配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
ii.配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
iii.配列番号18のVH及び配列番号19のVL、若しくは、
iv.配列番号20のVH及び配列番号21のVLのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むか、又は、
i.
i.配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
ii.配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
iii.配列番号18のVH及び配列番号19のVL、若しくは、
iv.配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む、実施形態1若しくは4〜9のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜9のいずれか1つにしたがって使用されるサバイビン阻害剤、又は実施形態3若しくは4〜9のいずれか1つに記載の組み合わせ。
11.抗CD38抗体が、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態1若しくは4〜10のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜10のいずれか1つにしたがって使用されるサバイビン阻害剤、又は実施形態3若しくは4〜10のいずれか1つに記載の組み合わせ。
12.サバイビン阻害剤が、小分子、又はポリヌクレオチド又はワクチンである、実施形態1若しくは4〜11のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜11のいずれか1つにしたがって使用されるサバイビン阻害剤、又は実施形態3若しくは4〜11のいずれか1つに記載の組み合わせ。
13.サバイビン阻害剤がYM155である、実施形態1若しくは4〜12のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜12のいずれか1つにしたがって使用されるサバイビン阻害剤、又は実施形態3若しくは4〜12のいずれか1つに記載の組み合わせ。
14.抗CD38抗体とサバイビン阻害剤とが、同時、順次、又は別々に投与される、実施形態1若しくは4〜13のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体、実施形態2若しくは4〜13のいずれか1つにしたがって使用されるサバイビン阻害剤、又は実施形態3若しくは4〜13のいずれか1つに記載の組み合わせ。
15.抗CD38抗体が、それぞれ配列番号6、7、8、9、10、及び11のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列を含む、CD38陽性血液悪性疾患を有する対象の治療においてサバイビン阻害剤と併用される抗CD38抗体。
16.抗CD38抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む、実施形態15にしたがって使用される抗CD38抗体。
17.抗CD38抗体が、IgG1アイソタイプのものである、実施形態15又は16にしたがって使用される抗CD38抗体。
18.抗CD38抗体が、配列番号12の重鎖及び配列番号13の軽鎖を含む、実施形態15〜17のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体。
19.抗CD38抗体とサバイビン阻害剤とが、同時、順次、又は別々に投与される、実施形態15〜18のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体。
20.抗CD38抗体が静脈内投与される、実施形態15〜19のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体。
21.抗CD38抗体が、抗CD38抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物中で皮下投与される、実施形態15〜19のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体。
22.ヒアルロニダーゼが、配列番号23のrHuPH20である、実施形態21にしたがって使用される抗CD38抗体。
23.CD38陽性血液悪性疾患が多発性骨髄腫である、実施形態15〜22のいずれか1つにしたがって使用される抗CD38抗体。
【0177】
以上、本発明を一般論として説明したが、本発明の各実施形態を、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない以下の実施例において更に開示する。
【0178】
材料及び方法
細胞及び細胞培養
骨髄単核球(BM−MNC)及び末梢血単核球(PBMC)
多発性骨髄腫(MM)患者又は健康な個人からの骨髄(BM)吸引物及び健康な個人からの末梢血(PB)を、ヘルシンキ宣言に基づく研究医療機関倫理委員会(institutional medical ethical committee)によって承認されたプロトコール及び手順を用いて採取した。健康なドナー(HD)のPBMC及びBM−MNCを、それぞれ、PB試料及びMM吸引物からFicoll−Hypaque密度勾配遠心分離によって単離した。PBMCを、ADCC実験においてエフェクター細胞として直接使用した。BM−MNCは、使用時まで冷凍結保存した。
【0179】
多発性骨髄腫(MM)細胞株
ルシフェラーゼ(Luc)を形質導入したヒトMM細胞株RPMI−8226及びUM9を、10%ウシ胎児血清(FBS、インテグロ社(Integro)BV)及び抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン、ライフ・テクノロジーズ社(Life Technologies))を添加したRPMI1640(Invitrogen)中、37℃で、5% CO
2を含む加湿雰囲気中で維持した。
【0180】
骨髄間質細胞(BMSC)
接着性間質細胞を、プラスチック接着により健康な個人(hBMSC)又はMM患者(pBMSC)のBM−MNCから単離して培養した。細胞を、5%血小板溶解物、ヘパリン、及び抗生物質を加えたOptimem(インビトロジェン社(Invitrogen))中で培養した。hBMSCは継代6代目まで実験で使用し、pBMSCは継代1回又は2回後に使用した。
【0181】
試薬
YM155(臭化セパントロニウム;4,9−ジヒドロ−1−(2−メトキシエチル)−2−メチル−4,9−ジオキソ−3−(2−ピラジニルメチル)−1H−ナフト[2,3−d]イミダゾリウムブロミド;CAS 781661−94−7)(セレック・ケミカルズ社(Selleck Chemicals))を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に1mMの濃度で溶解し、アリコートに分けて使用時まで保存した。YM155を、各実験で示した濃度で培地中に希釈した。
【0184】
多発性骨髄腫細胞株に対する、細胞区画特異的生物発光に基づいた抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)(「細胞区画特異的なBLIに基づいた細胞傷害性アッセイ)
hBMSCを、1×10
4細胞/ウェルの密度で100μLの培地中、白色不透明の平底96ウェルプレート(コスタ−社(Costar))に播種した。6時間の接着時間の後、ルシフェラーゼを形質導入したMM細胞株を、1×10
4細胞/ウェルの密度でBMSCをコーティングしたウェル、又はコーティングしないウェルに加えた。YM155を試験する実験では、YM155を、示した濃度でMM細胞と共に加えた。16〜20時間後、ダラツムマブを、示した濃度で加え、室温で15分静置した。次いで、健康な個人から新たに単離したPBMCを、示したエフェクター:標的細胞比でエフェクター細胞として加えた。PBMCを加えた4時間後に、125μg/mLのホタルルシフェリン(プロメガ社(Promega))を加え、生存MM細胞から放射される生物発光シグナルをルミノメータ(SpectraMax,モレキュラー・デバイシーズ社(Molecular Devices))を使用して20分以内に測定した。MM細胞の生存率(%)を次式を用いて計算した。すなわち、生存率(%)=(PBMCの非存在下での平均生物発光シグナル/PBMCの存在下での平均生物発光シグナル)×100%。これらのアッセイでは、MM細胞の生存率は、ADCC介在溶解を直接反映するものであり、McMillin et al.,Nat Med 16:483〜489,2010に記載される古典的なクロム放出アッセイと相関している。
【0185】
多発性骨髄腫BM−MNCにおけるFACSに基づいたADCCアッセイ
15〜35%のCD138
+ MM細胞を有するMM患者からの凍結BM−MNCを、FACSに基づいたADCCアッセイで使用した。細胞を解凍し、10% HSを加えたRPMI中で培養した。16〜20時間後、BM−MNCをトリパンブルー排除法によってカウントし、4×10
4細胞/ウェルを96ウェル丸底プレートに播種した。ダラツムマブ及び/又はYM155を、各実験について示したように各ウェルに加えた。24時間後、蛍光標識した抗CD138抗体、抗CD38抗体、抗CD56抗体、及び抗CD3抗体で細胞を染色し、BM−MNC中の初代CD138
+ MM細胞の生存率を上記に述べたようにFACSによって測定した(Groen et al.,Blood 120:e9〜e16,2012)。MM細胞の溶解率(%)を下式を用いて推定した。すなわち、細胞溶解率(%)=1−(処理ウェル中の生存CD138
+細胞のカウント/コントロールウェル中の生存CD138
+細胞数のカウント)×100%。
【0186】
フローサイトメトリー
MM細胞上のCD38の発現レベルを調べるため、MM細胞を単独で、又はBMSCと培養し、CD38フルオレセイン結合抗体とインキュベートした。細胞を、BMSCのマーカーとしてのCD105により更に染色した。CD105陰性細胞上でのCD38の発現を上記に述べたようにFACSによって測定した(de Haart et al.,Clin Cancer Res 19:5591〜601,2013)。
【0187】
インビボ腫瘍標的化実験
HD−BMSCでコーティングした3個の2〜3mmの2相リン酸カルシウム粒子からなるハイブリッド足場材に、上記に述べたようにLuc
+ MM細胞株UM9(1×10
6細胞/足場)をインビトロでロードした後、RAG2
−/−γc
−/−マウスに皮下移植した(Groen et al.,Blood 120:e9〜e16,2012)。移植の10日後、足場内で増殖する腫瘍を有するマウスを、溶媒コントロール、ダラツムマブ+PBS、又はダラツムマブ+YM155で処理した。コントロール群を含む各マウスに、ADCCを誘発するためのヒトNK細胞源として、T細胞を枯渇させたHD−PBMC(5×10
6細胞)を更に投与した。PBS及びPBSに希釈したYM155を皮下注入ポンプ(Alzet 1007D)を使用して投与し、1mg/kg/dの薬剤を連続的に供給した。10日後にポンプを取り外した。上記に述べたようにBLIを行った(Spaapen et al.,Clin Cancer Res 16:5481〜88,2010;Rozemuller et al.,Haematologica 93:1049〜57,2008)。
【0188】
グランザイムB酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
無細胞上清のグランザイムB(GzB)含有量を、市販のELISAキット(Pelipair,サンクイン社(Sanquin)、オランダ、アムステルダム)を製造者の指示にしたがって使用して測定した。
【実施例】
【0189】
実施例1.骨髄間質細胞は多発性骨髄腫細胞の抗体依存性細胞傷害に対する保護を与える
骨髄(BM)微小環境の間質細胞はCTL及びNK媒介性細胞傷害からMM細胞を保護することから、ダラツムマブによって誘発される抗体依存性細胞傷害(ADCC)に対して同様の保護作用が生じるか否かを評価した。
【0190】
2種類のCD38
+ルシフェラーゼ形質導入MM細胞株であるUM9及びRPMIに対する健康なドナーのBMSCによるADCCの誘発について、細胞区画特異的なBLIに基づいた細胞傷害作用アッセイでエフェクター細胞としてのHD−PBMCの存在下又は非存在下で、ダラツムマブの連続的な濃度を用いて試験を行った。BMSCの非存在下では、ダラツムマブは、両方のMM細胞株でADCCを用量依存的に媒介した。BMSCの存在下では、どちらの細胞株もダラツムマブ誘発性ADCCに対する感受性がより低かった。
図1Aは、UM9細胞におけるダラツムマブ誘発性ADCCに対するBMSCの効果を示し、
図1Bは、RPMI−8226細胞におけるダラツムマブ誘発性ADCCに対するBMSCの効果を示している。
【0191】
初代MM細胞をダラツムマブ誘発性ADCCから保護するBMSCの能力について、上記に述べた方法を用いてFACSに基づいたADCCアッセイで更に評価を行った。このアッセイでは、少なくとも15%のCD138
+悪性形質細胞を含むBM−MNCと充分な数の自家エフェクターNK細胞をダラツムマブとインキュベートして、ADCCを誘発した。BM−MNCを単独又は自家BMSCとの共培養中で試験して、BMSCの効果を評価した。24時間の培養後にFACSに基づいた生存率アッセイを行ってCD138
+の生存細胞を測定して、溶解率を計算した。初代MM細胞のADCCの誘発は自家MM−BMSCの存在下では試験したドナーの両方で効率が低く(
図2A及び
図2B)、腫瘍微小環境の間質細胞がダラツムマブ療法に対する抵抗性を誘発したことを示すものである。
【0192】
実施例2.ADCCのBMSC誘発性抑制は、CD38の発現低下又はNK細胞の抑制によって引き起こされない
ADCCに対するBMSC媒介性保護の機構を理解するため、CD38の表面発現及びNK細胞活性の生じうる変化について評価を行った。
【0193】
MM細胞株であるUM9及びRPMI−8226を、健康なドナーのBMSCの存在下又は非存在下で培養した。いずれのMM細胞株においても、MM細胞とBMSCとの共培養によってCD38の発現レベルは低下しなかった(データは示されていない)。
【0194】
BMSCは、IDO、TGF−β又はPGE−2などの複数の免疫抑制因子を産生することが知られていることから、BMSCによるADCCからの保護はNK細胞活性化の抑制によるものと考えられる(この抑制は、免疫シナプス内のグランザイムB及びパーフォリンを脱顆粒して放出させることによりその標的を殺傷するNK細胞の能力を低下させる)。そこで、ダラツムマブによるNK細胞活性化に対するBMSCの効果を、NK細胞活性のマーカーとしてダラツムマブ媒介性のグランザイムBの分泌を用いて調べた。BMSCの存在下では、グランザイムBの濃度は一般的に上清中でより高かった(データは示されていない)。したがって、ADCCに対するBMSC媒介性の保護はNK細胞の抑制によるものではない可能性が高かった。
【0195】
実施例3.サバイビンの阻害は、ADCCに対するBMSC媒介性保護を阻害し、ダラツムマブと多発性骨髄腫細胞の相乗的なADCC媒介性殺傷効果を与える。
BMSCは、MM細胞におけるサバイビンの発現上昇によるCTL溶解からMM細胞を保護することが示されている。ダラツムマブによって誘発されるADCCに対するBMSC媒介性保護の可能な機構としてのサバイビンの調節について、サバイビンの小分子阻害物質であるYM155を用いて評価を行った。
【0196】
最初に、NK細胞の生存率に対するYM155の効果を評価した。MM患者のBM−MNCを、異なる用量のYM155の存在下で24時間培養した。MM細胞(CD138
+細胞)及び(CD3
−CD138
−CD56
+細胞)の生存率を、FACSによって測定した。NK細胞は、MM細胞において既にある程度の傷害作用を示しているYM155の用量において影響を受けなかった(
図3)。
【0197】
ダラツムマブ、YM155、及びダラツムマブとYM155との併用の効果を、NK細胞に対して傷害作用を有さないことが示されているYM155の濃度を用いてRPMI−8226細胞及び2つのMM患者試料で評価した。
【0198】
これらのアッセイでは、ダラツムマブ及びYM155を、RPMI−8226細胞についてはそれぞれ0.3μg/mL及び1nMの濃度で、MM患者試料についてはそれぞれ1μg/mL及び120nMの濃度で使用した。エフェクター細胞として健康なドナーのPBMCを、RPMI−8226細胞については40:1、MM患者試料については30:1のエフェクター:標的細胞の比で使用した。
【0199】
RPMI−8226細胞では、BMSCの非存在下でダラツムマブ単独又はYM155単独で約20%の細胞に溶解が誘発された。BMSCの存在下では、ダラツムマブが約10%の細胞に溶解を誘発したのに対して、YM155では効果は見られなかった。ダラツムマブとYM155との併用は相乗効果をもたらし、BMSCの非存在下では約50%の細胞の溶解を誘発し、BMSCの存在下では約45%の細胞の溶解を誘発した(
図4A)。BMSCにおけるダラツムマブとYM155との併用の相乗効果は約5倍であった。同様に、ダラツムマブとYM155との併用は、120nMのYM155を使用したMM患者試料1では相乗効果をもたらし(
図4B)、より低量のYM155(64nM)を使用したMM患者試料2(
図4C)及び4人の患者から得たMM細胞を加え合わせた試料(
図4D)では中程度の相乗効果をもたらした。したがって、YM155は、MM細胞及び細胞株においてダラツムマブ媒介性ADCCに対するBMSCの保護効果を阻害した。
【0200】
したがって、サバイビンの発現上昇は、MM細胞のADCC媒介性殺傷効果の抑制の重要な機構の1つと考えられ、この機構はサバイビンの薬剤による調節によって防止することが可能である。
【0201】
実施例4.ダラツムマブとYM155の併用療法のインビボ抗腫瘍効果
ダラツムマブとYM155との併用のインビボでの妥当性について、RAG2
−/−gc
−/−マウスにおける前臨床的異種移植モデルで試験した。この試験では、MM腫瘍を、ヒトBMSCでコーティングしたセラミック製足場材の皮下移植によって形成されたヒト化BM様ニッチ中で増殖させた。ヒトMSCでコーティングし、ルシフェラーゼを形質導入したMM細胞株UM9をロードしたハイブリッド足場材を、RAG2
−/−gc
−/−マウスの背部の皮下に移植した(マウス1匹当たり4個の足場材)。移植の10日後、増殖中の腫瘍をBLIによって可視化し、定量した。次いで、異なるマウス群(n=4)を、溶媒コントロールで処理するか(コントロール)、又はダラツムマブ、YM155、若しくはダラツムマブ+YM155で処理した。YM155又はその溶媒のPBSは、1mg/kg/dのYM155の速度で10日間にわたり皮下注入ポンプにより投与した。コントロール群を含む各マウスに、ADCCを誘発するためのヒトNK細胞源として、T細胞を枯渇させたHD−PBMC(5×10
6細胞)を投与した。マウスをBLIにより毎週監視した。
図5に、各群の相対腫瘍増殖率を示す。ダラツムマブで処理したマウスと、ダラツムマブ+YM155で処理したマウスとの間の統計的差を、マンホイットニーU検定を用いて計算した。ダラツムマブは、腫瘍増殖率に対してわずかな効果を有した。抗MM作用はYM155ではより顕著であり、YM155は更にダラツムマブと強い相乗作用を示して、有意に向上した抗MM作用が得られた。これらの効果は、ダラツムマブとサバイビン阻害剤YM155との併用により臨床的に有益な効果が期待されうることを示すものである。
【0202】
これらの結果は、小分子YM155によるサバイビンのレベルの抑制が、BMSCの非存在下でのダラツムマブ媒介性ADCCを向上させたばかりでなく、重要な点としてBMSCにより誘発されるADCC抵抗性を阻害したことを示している。ダラツムマブにYM155を加えることでBMSCの非存在下においても高い抗腫瘍効果が示されたが、このことは、YM155/ダラツムマブ併用療法が、例えば形質細胞白血病におけるようにMM細胞がBMSCと直接接触していない場合であっても潜在的に有益な効果を有することを示している。更に、BMSCの存在下で、MM細胞の溶解率の最大で4倍の向上に見られるADCCの有意な向上は、BM内に存在するMM細胞に対して、ダラツムマブ療法をYM155と併用することによってより大きな効果が得られることを示すものである。YM155による治療はNK細胞の機能又は生存率に負の影響を与えないことも示されたが、このことは、この併用療法の臨床的応用を検討するうえでの必要条件である。
【0203】
ダラツムマブとYM155との併用の有効性が多発性骨髄腫において実証されたが、この併用療法は、CD38を発現する他の血液学的腫瘍、特に主としてBM内に存在するものに対しても有効でありうることが推察される。この点に関し、AMLは、AML細胞が高レベルのCD38だけでなく、臨床転帰不良の予測因子である高レベルのサバイビンも発現することから、格好の候補である。CLL細胞はBM内で高いサバイビン発現レベルを有し、一部の患者でCD38が発現されることから、CLLは、併用療法の別の有望な候補となりうる。約50%の非ホジキンリンパ腫における高いCD38及びサバイビンの発現は、この疾患をやはりYM155/ダラツムマブの併用の有効性の評価の対象とするものである。これらを合わせると、ダラツムマブとYM155の併用は、広範な血液学的腫瘍に幅広く適用可能であると考えられる。
本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
CD38陽性血液悪性疾患を有する対象を治療する方法であって、該治療を要する前記対象に、抗CD38抗体及びサバイビン阻害剤を前記CD38陽性血液悪性疾患を治療するうえで充分な時間にわたって投与すること、を含む、方法。
[2]
前記CD38陽性血液悪性疾患が、多発性骨髄腫(MM)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、又は慢性リンパ性白血病(CLL)である、上記[1]に記載の方法。
[3]
前記CD38陽性血液悪性疾患が、形質細胞疾患である、上記[1]に記載の方法。
[4]
前記形質細胞疾患が、軽鎖アミロイドーシス(AL)、多発性骨髄腫(MM)、又はワルデンストレームマクログロブリン血症である、上記[3]に記載の方法。
[5]
前記形質細胞疾患がMMである、上記[4]に記載の方法。
[6]
前記抗CD38抗体が、CD38への結合に関して、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含む抗体と競合する、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
前記抗CD38抗体が、ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合する、上記[6]に記載の方法。
[8]
前記抗CD38抗体が、それぞれ配列番号6、7、及び8の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、及びHCDR3の配列と、それぞれ配列番号9、10、及び11の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、及びLCDR3の配列とを含む、上記[7]に記載の方法。
[9]
前記抗CD38抗体が、配列番号4のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号5のアミノ酸配列と95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む、上記[8]に記載の方法。
[10]
前記抗CD38抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む、上記[9]に記載の方法。
[11]
前記抗CD38抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプのものである、上記[10]に記載の方法。
[12]
前記抗CD38抗体が、IgG1アイソタイプのものである、上記[11]に記載の方法。
[13]
前記抗CD38抗体が、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞性貪食作用(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)、又はアポトーシスによってCD38陽性細胞の殺傷を誘発する、上記[12]に記載の方法。
[14]
前記抗CD38抗体が、
a.配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b.配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c.配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は、
d.配列番号20のVH及び配列番号21のVLのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、上記[1]又は[3]に記載の方法。
[15]
前記抗CD38抗体が、
a.配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b.配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c.配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は、
d.配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む、上記[14]に記載の方法。
[16]
前記サバイビン阻害剤が、小分子、ポリヌクレオチド、又はワクチンである、上記[1]に記載の方法。
[17]
前記小分子がYM155である、上記[16]に記載の方法。
[18]
前記抗CD38抗体と前記サバイビン阻害剤とが、同時、順次、又は別々に投与される、上記[1]に記載の方法。
[19]
前記抗CD38抗体が静脈内投与される、上記[18]に記載の方法。
[20]
前記抗CD38抗体が、前記抗CD38抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物中で皮下投与される、上記[18]に記載の方法。
[21]
前記ヒアルロニダーゼが配列番号23のrHuPH20である、上記[20]に記載の方法。