(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記第1および第2の電流制御器と前記演算器との間には、前記第2のd軸電圧指令値および前記第2のq軸電圧指令値の各々の位相を第2の角度だけ進ませる第2の位相変換器が設けられている、請求項1または請求項2に記載の電力変換器の制御装置。
さらに、それぞれ前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値に応じた値の第4のd軸電圧指令値および第4のq軸電圧指令値を出力するフィードフォワード補償器を備え、
前記演算器は、前記第1、第2、および第4のd軸電圧指令値の和に基づいて前記第3のd軸電圧指令値を生成するとともに、前記第1、第2、および第4のq軸電圧指令値の和に基づいて前記第3のq軸電圧指令値を生成する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力変換器の制御装置。
さらに、それぞれ前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値に応じた値の第4のd軸電圧指令値および第4のq軸電圧指令値を出力するフィードフォワード補償器を備え、
前記演算器は、前記第1、第2、および第4のd軸電圧指令値の和に基づいて前記第3のd軸電圧指令値を生成するとともに、前記第1、第2、および第4のq軸電圧指令値の和に基づいて前記第3のq軸電圧指令値を生成する、請求項6に記載の電力変換器の制御装置。
さらに、それぞれ前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値に応じた値の第4のd軸電圧指令値および第4のq軸電圧指令値を出力するフィードフォワード補償器を備え、
前記演算器は、前記第1、第2、および第4のd軸電圧指令値の和に基づいて前記第3のd軸電圧指令値を生成するとともに、前記第1、第2、および第4のq軸電圧指令値の和に基づいて前記第3のq軸電圧指令値を生成する、請求項8に記載の電力変換器の制御装置。
さらに、それぞれ前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値に応じた値の第4のd軸電圧指令値および第4のq軸電圧指令値を出力するフィードフォワード補償器を備え、
前記演算器は、前記第1、第2、および第4のd軸電圧指令値の和に基づいて前記第3のd軸電圧指令値を生成するとともに、前記第1、第2、および第4のq軸電圧指令値の和に基づいて前記第3のq軸電圧指令値を生成する、請求項10または請求項11に記載の電力変換器の制御装置。
さらに、それぞれ前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値に応じた値の第4のd軸電圧指令値および第4のq軸電圧指令値を出力するフィードフォワード補償器を備え、
前記演算器は、前記第1、第2、および第4のd軸電圧指令値の和に基づいて前記第3のd軸電圧指令値を生成するとともに、前記第1、第2、および第4のq軸電圧指令値の和に基づいて前記第3のq軸電圧指令値を生成する、請求項13に記載の電力変換器の制御装置。
さらに、それぞれ前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値に応じた値の第4のd軸電圧指令値および第4のq軸電圧指令値を出力するフィードフォワード補償器を備え、
前記演算器は、前記第1、第2、および第4のd軸電圧指令値の和に基づいて前記第3のd軸電圧指令値を生成するとともに、前記第1、第2、および第4のq軸電圧指令値の和に基づいて前記第3のq軸電圧指令値を生成する、請求項15に記載の電力変換器の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による電力変換システムの構成を示す回路ブロック図である。
図1において、この電力変換システムは、電力変換器1、電流検出器5、電圧検出器6、および制御装置10Aを備える。この電力変換システムは、たとえば、交流電力系統7の無効電力を補償する無効電力補償装置として使用される。
【0012】
電力変換器1は、PWM(Pulse Width Modulation)制御部2、インバータ3、および三相変圧器4を含む。PWM制御部2は、制御装置10Aから供給される三相電圧指令値に従って、PWM制御信号を生成する。インバータ3の3つの交流端子は三相変圧器4を介して交流電力系統7の三相送電線に接続されている。インバータ3の直流端子(図示せず)は、コンデンサ、バッテリなどの直流電力を蓄える電力貯蔵装置、あるいは直流電力を発生する直流電源に接続されている。インバータ3は、PWM制御信号に従って、直流電力を三相交流電力に変換する。インバータ3によって生成された三相交流電力は、三相変圧器4を介して交流電力系統7に供給される。
【0013】
電流検出器5は、電力変換器1から交流電力系統7に流れる三相交流電流を検出し、その検出値を示す信号を制御装置10Aに与える。電圧検出器6は、交流電力系統7の三相交流電圧を検出し、その検出値を示す信号を制御装置10Aに与える。
【0014】
制御装置10Aは、位相検出器11、補正角度設定器12、加算器13,20〜23、dq変換器14,15、電流制御器16,17、位相回転変換器18、フィードフォワード(FF)補償器19、減算器24,25、および逆dq変換器26を含む。
【0015】
位相検出器11は、電圧検出器6の出力信号に基づいて、第1基準位相(ωt+φ)を生成する。補正角度設定器12は、補正角度α(第1の角度)を出力する。補正角度αは、少なくとも制御装置10Aの応答時間による制御遅れの影響を相殺するように設定され、好ましくは、電流検出器5、電圧検出器6、制御装置10A、およびPWM制御部2の応答時間などによる制御遅れの影響を相殺するように設定されている。加算器13は、第1基準位相(ωt+φ)に補正角度αを加算して第2基準位相(ωt+φ+α)を生成する。
【0016】
dq変換器14(第2のdq変換器)は、電圧検出器6によって検出された交流電力系統7の三相交流電圧を、第1基準位相(ωt+φ)に基づいてd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqにdq変換する。dq変換器15(第1のdq変換器)は、電流検出器5によって検出された電力変換器1の出力電流(三相交流電流)を、第1基準位相(ωt+φ)に基づいてd軸電流Idおよびq軸電流Iqにdq変換する。d軸電流Idおよびq軸電流Iqは、電力変換器1の出力電流のうちの無効電流および有効電流にそれぞれ対応している。
【0017】
電流制御器16(第1の電流制御器)は、d軸電流指令値Id*とdq変換器15からのd軸電流Idとの偏差ΔIdに比例するd軸電圧指令値VdP(第1のd軸電圧指令値)と、その偏差ΔIdの積分値に比例するd軸電圧指令値VdI(第2のd軸電圧指令値)とを生成する。
【0018】
電流制御器17(第2の電流制御器)は、q軸電流指令値Iq*とdq変換器15からのq軸電流Iqとの偏差ΔIqに比例するq軸電圧指令値VqP(第1のq軸電圧指令値)と、その偏差ΔIqの積分値に比例するq軸電圧指令値VqI(第2のq軸電圧指令値)とを生成する。
【0019】
図2は、制御装置10Aの要部を示すブロック図である。
図2において、電流制御器16は、減算器31、乗算器32,33、および積分器34を含む。減算器31は、d軸電流指令値Id*とd軸電流Idとの偏差ΔIdを求める。乗算器32は、偏差ΔIdに定数Kpを乗算してd軸電圧指令値VdPを生成する。乗算器33は、偏差ΔIdに定数Kiを乗算する。積分器34は、乗算器33の出力(Ki×ΔId)を積分してd軸電圧指令値VdIを生成する。
【0020】
電流制御器17は、減算器41、乗算器42,43、および積分器44を含む。減算器41は、q軸電流指令値Iq*とq軸電流Iqとの偏差ΔIqを求める。乗算器42は、偏差ΔIqに定数Kpを乗算してd軸電圧指令値VqPを生成する。乗算器43は、偏差ΔIqに定数Kiを乗算する。積分器44は、乗算器43の出力(Ki×ΔIq)を積分してq軸電圧指令値VqIを生成する。
【0021】
位相回転変換器18は、乗算器32からのd軸電圧指令値VdPの位相を補正角度αだけ遅らせてd軸電圧指令値VdPAを生成するとともに、乗算器42からのq軸電圧指令値VqPの位相を補正角度αだけ遅らせてq軸電圧指令値VqPAを生成する。
【0022】
加算器20は、位相回転変換器18からのd軸電圧指令値VdPAと積分器34からのd軸電圧指令値VdIとを加算してd軸電圧指令値Vd1*を生成する。加算器21は、位相回転変換器18からのq軸電圧指令値VqPAと積分器44からのq軸電圧指令値VqIとを加算してq軸電圧指令値Vq1*を生成する。
【0023】
図1に戻って、フィードフォワード補償器19は、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*に応じた値のd軸電圧指令値Vd2*(第4のd軸電圧指令値)およびq軸電圧指令値Vq2*(第4のq軸電圧指令値)を出力する。
【0024】
加算器22は、加算器20からのd軸電圧指令値Vd1*(
図2)とフィードフォワード補償器19からのd軸電圧指令値Vd2*とを加算してd軸電圧指令値Vd3*(第3のd軸電圧指令値)を生成する。加算器23は、加算器21からのq軸電圧指令値Vq1*(
図2)とフィードフォワード補償器19からのq軸電圧指令値Vq2*とを加算してq軸電圧指令値Vq3*(第3のq軸電圧指令値)を生成する。
【0025】
減算器24は、dq変換器14からのd軸電圧Vdと加算器22からのd軸電圧指令値Vd3*との偏差ΔVd=Vd−Vd3*を生成する。減算器25は、dq変換器14からのq軸電圧Vqと加算器23からのq軸電圧指令値Vq3*との偏差ΔVq=Vq−Vq3*を生成する。加算器20〜23および減算器24,25は演算器を構成する。
【0026】
逆dq変換器26は、加算器13からの第2基準位相(ωt+φ+α)に基づいて、偏差ΔVdおよび偏差ΔVqを逆dq変換して三相電圧指令値を生成する。三相電圧指令値は、電力変換器1のPWM制御部2に与えられる。
【0027】
次に、この電力変換システムの動作について説明する。交流電力系統7の三相交流電圧が電圧検出器6によって検出され、その検出値に基づいて位相検出器11によって第1位相基準(ωt+φ)が生成される。補正角度設定器12からの補正角度αが加算器13によって第1位相基準(ωt+φ)に加算されて第2位相基準(ωt+φ+α)が生成される。第1位相基準(ωt+φ)はdq変換器14,15に与えられ、第2位相基準(ωt+φ+α)は逆dq変換器26に与えられる。交流電力系統7の三相交流電圧の検出値は、第1位相基準(ωt+φ)に基づいてdq変換器14によってd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqに変換される。
【0028】
電力変換器1から出力される三相交流電流は、電流検出器5によって検出され、第1位相基準(ωt+φ)に基づいてdq変換器15によってd軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換される。
【0029】
電流制御器16により、d軸電流指令値Id*とd軸電流Idの偏差ΔIdに比例するd軸電圧指令値VdPと、偏差ΔIdの積分値に比例するd軸電圧指令値VdIとが生成される。電流制御器17により、q軸電流指令値Iq*とq軸電流Iqの偏差ΔIqに比例するq軸電圧指令値VqPと、偏差ΔIqの積分値に比例するq軸電圧指令値VqIとが生成される。
【0030】
d軸電圧指令値VdPおよびq軸電圧指令値VqPの各々の位相は、位相回転変換器18によって補正角度αだけ遅らされる。d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*に応じた値のd軸電圧指令値Vd2*およびq軸電圧指令値Vq2*がフィードフォワード補償器19から出力される。
【0031】
電流制御器16からのd軸電圧指令値VdI、位相回転変換器18からのd軸電圧指令値VdPA、およびフィードフォワード補償器19からのd軸電圧指令値Vd2*が加算器20,22によって加算されてd軸電圧指令値Vd3*が生成される。dq変換器14からのd軸電圧Vdと加算器22からのd軸電圧指令値Vd3*との偏差ΔVdが減算器24によって生成される。
【0032】
電流制御器17からのq軸電圧指令値VqI、位相回転変換器18からのq軸電圧指令値VqPA、およびフィードフォワード補償器19からのq軸電圧指令値Vq2*が加算器21,23によって加算されてq軸電圧指令値Vd3*が生成される。dq変換器14からのq軸電圧Vqと加算器23からのq軸電圧指令値Vq3*との偏差ΔVqが減算器25によって生成される。
【0033】
減算器24からの偏差ΔVdと減算器25からの偏差ΔVqとは、第2位相基準(ωt+φ+α)に基づいて逆dq変換器26によって逆dq変換されて、三相電圧指令値となり、電力変換器1のPWM制御部2に与えられる。PWM制御部2は、三相電圧指令値に従ってPWM制御信号を生成する。インバータ3は、PWM制御信号に従って三相交流電力を変圧器4を介して交流電力系統7に供給する。
【0034】
したがって、d軸電流Idおよびq軸電流Iqがそれぞれd軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*になるようにインバータ3が制御され、d軸電流指令値Id*およびq軸電流指令値Iq*に応じた値の無効電流および有効電流が電力変換器1から交流電力系統7に供給される。
【0035】
以上のように、この実施の形態1では、偏差ΔId=Id*−Idに比例するd軸電圧指令値VdPの位相と、偏差ΔIq=Iq*−Iqに比例するq軸電圧指令値VqPの位相との各々を位相回転変換器18によって補正角度αだけ遅らせる。偏差ΔIdの積分値に比例するd軸電圧指令値VdIの位相と、偏差ΔIqの積分値に比例するq軸電圧指令値VqIの位相とについては、遅らせない。そして、第1基準位相(ωt+φ)よりも補正角度αだけ進められた第2基準位相(ωt+φ+α)に基づいて、偏差ΔVd=Vd−Vd3*および偏差ΔVq=Vq−Vq*を逆dq変換器26によって逆dq変換する。
【0036】
したがって、偏差ΔId,ΔIqに比例するd軸電圧指令値VdPおよびq軸電圧指令値VqPの位相を位相回転変換器18によって補正角度αだけ遅らせた後に、逆dq変換器26によって補正角度αだけ進ませるので、結果として、d軸電圧指令値VdPおよびq軸電圧指令値VqPの位相は変化しない。したがって、d軸電圧指令値VdPおよびq軸電圧指令値VqPの位相が進められて制御安定性が低下することを防止することができる。
【0037】
また、偏差ΔId,ΔIqの積分値に比例するd軸電圧指令値VdIおよびq軸電圧指令値VqIの位相、フィードフォワード補償器19からのd軸電圧指令値Vd2*およびq軸電圧指令値Vq2*の位相、ならびに、dq変換器14からのd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqの位相を逆dq変換器26によって補正角度αだけ進ませるので、制御装置10Aなどの応答時間による制御誤差を低減することができる。
【0038】
図3は、実施の形態1の変更例を示す回路ブロック図であって、
図1と対比される図である。
図4は、
図3に示した制御装置10Bの要部を示すブロック図であって、
図2と対比される図である。
図3および
図4を参照して、この変更例が実施の形態1と異なる点は、制御装置10Aが制御装置10Bで置換されている点である。制御装置10Bは、制御装置10Aに位相回転変換器50を追加したものである。
【0039】
位相回転変換器50は、電流制御器16の積分器34からのd軸電圧指令値VdIの位相を補正角度βだけ進ませてd軸電圧指令値VdIAを生成するとともに、電流制御器17の積分器44からのq軸電圧指令値VqIの位相を補正角度βだけ進ませてq軸電圧指令値VqIAを生成する。補正角度βは、制御装置10Bの積分制御が安定化するように設定されている。
【0040】
加算器20は、位相回転変換器18からのd軸電圧指令値VdPAと位相回転変換器50からのd軸電圧指令値VdIAとを加算してd軸電圧指令値Vd1*を生成する。加算器21は、位相回転変換器18からのq軸電圧指令値VqPAと位相回転変換器50からのq軸電圧指令値VqIAとを加算してd軸電圧指令値Vq1*を生成する。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0041】
上述したように、PI制御では、積分項では正相成分が支配的となり、正相成分は位相遅れが大きいほど不安定になる。したがって、実施の形態1では、偏差ΔId,ΔIqの積分値に比例するd軸電圧指令値VdIおよびq軸電圧指令値VqIの位相遅れが大きい場合には、積分制御が不安定になる恐れがある。これに対して、この変更例では、d軸電圧指令値VdIおよびq軸電圧指令値VqIの位相を位相回転変換器50によって補正角度βだけ進ませるので、積分制御が不安定になることを防止することができる。
【0042】
[実施の形態2]
図5は、この発明の実施の形態2による電力変換システムの構成を示す回路ブロック図であって、
図1と対比される図である。
図6は、
図5に示した制御装置10Cの要部を示すブロック図であって、
図2と対比される図である。
図5および
図6を参照して、この電力変換システムが実施の形態1と異なる点は、制御装置10Aが制御装置10Cで置換されている点である。制御装置10Cが制御装置10Aと異なる点は、補正角度設定器12、加算器13、および位相回転変換器18が除去され、位相回転変換器51〜53が追加されている点である。
【0043】
位相検出器11によって生成された第1位相基準(ωt+φ)は、そのまま逆dq変換器26に与えられる。逆dq変換器26は、第1位相基準(ωt+φ)に基づいて、偏差ΔVd,ΔVqを逆dq変換して三相電圧指令値を生成する。
【0044】
電流制御器16によって生成されたd軸電圧指令値VdPは、そのまま加算器20に与えられる。電流制御器17によって生成されたq軸電圧指令値VqPは、そのまま加算器21に与えられる。
【0045】
位相回転変換器51は、電流制御器16の積分器34からのd軸電圧指令値VdIの位相を補正角度αだけ進ませてd軸電圧指令値VdIBを生成するとともに、電流制御器17の積分器44からのq軸電圧指令値VqIの位相を補正角度αだけ進ませてq軸電圧指令値VqIBを生成する。
【0046】
位相回転変換器52は、dq変換器14からのd軸電圧の位相を補正角度αだけ進ませてd軸電圧Vdを生成するとともに、dq変換器14からのq軸電圧の位相を補正角度αだけ進ませてq軸電圧Vqを生成する。
【0047】
位相回転変換器53は、フィードフォワード補償器19からのd軸電圧指令値の位相を補正角度αだけ進ませてd軸電圧指令値Vd2*を生成するとともに、フィードフォワード補償器19からのq軸電圧指令値の位相を補正角度αだけ進ませてq軸電圧指令値Vq2*を生成する。
【0048】
補正角度αは、少なくとも制御装置10Cの応答時間による制御遅れの影響を相殺するように設定され、好ましくは、電流検出器5、電圧検出器6、制御装置10C、およびPWM制御部2の応答時間などによる制御遅れの影響を相殺するように設定されている。
【0049】
加算器20は、電流制御器16の乗算器32からのd軸電圧指令値VdPと位相回転変換器51からのd軸電圧指令値VdIBとを加算してd軸電圧指令値Vd1*を生成する。加算器21は、電流制御器17の乗算器42からのq軸電圧指令値VqPと位相回転変換器51からのq軸電圧指令値VqIBとを加算してd軸電圧指令値Vq1*を生成する。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0050】
以上のように、この実施の形態2では、偏差ΔId=Id*−Idの積分値に比例するd軸電圧指令値VdIの位相と、偏差ΔIq=Iq*−Iqの積分値に比例するq軸電圧指令値VqIの位相との各々を位相回転変換器51によって補正角度αだけ進ませる。偏差ΔIdに比例するd軸電圧指令値VdPの位相と、偏差ΔIqに比例するq軸電圧指令値VqPの位相とについては、遅らせない。そして、第1基準位相(ωt+φ)に基づいて、偏差ΔVd=Vd−Vd3*および偏差ΔVq=Vq−Vq*を逆dq変換器26によって逆dq変換する。
【0051】
したがって、偏差ΔId,ΔIqに比例するd軸電圧指令値VdPおよびq軸電圧指令値VqPの位相は変化しない。したがって、d軸電圧指令値VdPおよびq軸電圧指令値VqPの位相が進められて制御安定性が低下することを防止することができる。
【0052】
また、偏差ΔId,ΔIqの積分値に比例するd軸電圧指令値VdIおよびq軸電圧指令値VqIの位相を位相回転変換器51によって補正角度αだけ進ませるので、制御装置10Cなどの応答時間による制御誤差を低減することができる。
【0053】
さらに、d軸電圧指令値VdIおよびq軸電圧指令値VqIの位相を位相回転変換器51によって補正角度αだけ進ませるので、積分制御が不安定になることを防止することができる。
【0054】
[実施の形態3]
図7は、この発明の実施の形態3による電力変換システムの構成を示す回路ブロック図であって、
図1と対比される図である。
図7において、この電力変換システムは、電力変換器1A、電流検出器5、および制御装置10Dを備える。この電力変換システムは、誘導電動機8の駆動装置として使用される。
【0055】
電力変換器1Aは、PWM制御部2およびインバータ3を含む。PWM制御部2は、制御装置10Dから供給される三相電圧指令値に従って、PWM制御信号を生成する。インバータ3の3つの交流端子は誘導電動機8の3つの入力端子に接続される。インバータ3の直流端子(図示せず)は、コンデンサ、バッテリなどの直流電力を蓄える電力貯蔵装置、あるいは直流電力を発生する直流電源に接続されている。インバータ3は、PWM制御信号に従って、直流電力を三相交流電力に変換する。インバータ3から出力された三相交流電力は、誘導電動機8に供給される。電流検出器5は、電力変換器1から誘導電動機8に流れる三相交流電流を検出し、その検出値を示す信号を制御装置10Dに与える。
【0056】
制御装置10Dが制御装置10A(
図1)と異なる点は、位相検出器11が速度検出器61、加算器62、および積分器63で置換され、dq変換器14および減算器24,25が除去されている点である。
【0057】
速度検出器61は、誘導電動機8の回転周波数ωmを検出する。加算器62は、回転周波数ωmにすべり周波数指令値ωs*を加算して1次周波数ωを求める。積分器63は、1次周波数ωを積分して第1位相基準(ωt+φ)を求める。加算器13は、積分器63からの第1位相基準(ωt+φ)に補正角度設定器12からの補正角度αを加算して第2位相基準(ωt+φ+α)を生成する。補正角度αは、少なくとも制御装置10Dの応答時間による制御遅れがなくなるように設定され、好ましくは、電流検出器5、制御装置10D、およびPWM制御部2の応答時間などによる制御遅れがなくなるように設定されている。
【0058】
dq変換器15は、電流検出器5によって検出された電力変換器1Aの出力電流(三相交流電流)を、第1基準位相(ωt+φ)に基づいてd軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換する。逆dq変換器26は、加算器13からの第2位相基準(ωt+φ+α)に基づいて、加算器22,23からのd軸電圧指令値Vd3*およびq軸電圧指令値Vq3*を逆dq変換して三相電圧指令値を生成する。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0059】
以上のように、この実施の形態3では、偏差ΔId=Id*−Idに比例するd軸電圧指令値VdPの位相と、偏差ΔIq=Iq*−Iqに比例するq軸電圧指令値VqPの位相との各々を位相回転変換器18によって補正角度αだけ遅らせる。偏差ΔIdの積分値に比例するd軸電圧指令値VdIの位相と、偏差ΔIqの積分値に比例するq軸電圧指令値VqIの位相とについては、遅らせない。そして、第1基準位相(ωt+φ)よりも補正角度αだけ進められた第2基準位相(ωt+φ+α)に基づいて、d軸電圧指令値Vd3*およびq軸電圧指令値Vq3*を逆dq変換器26によって逆dq変換する。
【0060】
したがって、偏差ΔId,ΔIqに比例するd軸電圧指令値VdPおよびq軸電圧指令値VqPの位相を位相回転変換器18によって補正角度αだけ遅らせた後に、逆dq変換器26によって補正角度αだけ進ませるので、d軸電圧指令値VdPおよびq軸電圧指令値VqPの位相は変化しない。したがって、d軸電圧指令値VdPおよびq軸電圧指令値VqPの位相が進められて制御安定性が低下することを防止することができる。
【0061】
また、偏差ΔId,ΔIqの積分値に比例するd軸電圧指令値VdIおよびq軸電圧指令値VqIの位相を逆dq変換器26によって補正角度αだけ進ませるので、制御装置10Dの応答時間による制御誤差を低減することができる。
【0062】
図8は、実施の形態3の変更例を示す回路ブロック図であって、
図7と対比される図である。
図8を参照して、この変更例が実施の形態3と異なる点は、制御装置10Dが制御装置10Eで置換されている点である。制御装置10Eは、制御装置10Dに位相回転変換器50を追加したものである。
【0063】
位相回転変換器50は、
図3および
図4で説明したように、電流制御器16の積分器34からのd軸電圧指令値VdIの位相を補正角度βだけ進ませてd軸電圧指令値VdIAを生成するとともに、電流制御器17の積分器44からのq軸電圧指令値VqIの位相を補正角度βだけ進ませてq軸電圧指令値VqIAを生成する。補正角度βは、制御装置10Eの積分制御が安定化するように設定されている。
【0064】
加算器20は、位相回転変換器18からのd軸電圧指令値VdPAと位相回転変換器50からのd軸電圧指令値VdIAとを加算してd軸電圧指令値Vd1*を生成する。加算器21は、位相回転変換器18からのq軸電圧指令値VqPAと位相回転変換器50からのq軸電圧指令値VqIAとを加算してd軸電圧指令値Vq1*を生成する。他の構成および動作は、実施の形態3と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0065】
この変更例では、実施の形態1の変更例(
図3および
図4)と同様に、d軸電圧指令値VdIおよびq軸電圧指令値VqIの位相を位相回転変換器50によって補正角度βだけ進ませるので、積分制御が不安定になることを防止することができる。
【0066】
[実施の形態4]
図9は、この発明の実施の形態4による電力変換システムの構成を示す回路ブロック図であって、
図7と対比される図である。
図9を参照して、この電力変換システムが実施の形態4と異なる点は、制御装置10Dが制御装置10Fで置換されている点である。制御装置10Fが制御装置10Dと異なる点は、補正角度設定器12、加算器13、および位相回転変換器18が除去され、位相回転変換器51,53が追加されている点である。
【0067】
積分器63によって生成された第1位相基準(ωt+φ)は、そのまま逆dq変換器26に与えられる。逆dq変換器26は、第1位相基準(ωt+φ)に基づいて、加算器22,23からのd軸電圧指令値Vd3*およびq軸電圧指令値Vq3*を逆dq変換して三相電圧指令値を生成する。
【0068】
電流制御器16によって生成されたd軸電圧指令値VdPは、そのまま加算器20に与えられる。電流制御器17によって生成されたq軸電圧指令値VqPは、そのまま加算器21に与えられる。
【0069】
位相回転変換器51は、電流制御器16の積分器34からのd軸電圧指令値VdIの位相を補正角度αだけ進ませてd軸電圧指令値VdIBを生成するとともに、電流制御器17の積分器44からのq軸電圧指令値VqIの位相を補正角度αだけ進ませてq軸電圧指令値VqIBを生成する。
【0070】
位相回転変換器53は、フィードフォワード補償器19からのd軸電圧指令値の位相を補正角度αだけ進ませてd軸電圧指令値Vd2*を生成するとともに、フィードフォワード補償器19からのq軸電圧指令値の位相を補正角度αだけ進ませてq軸電圧指令値Vq2*を生成する。
【0071】
補正角度αは、少なくとも制御装置10Fの応答時間による制御遅れを相殺するように設定され、好ましくは、電流検出器5、制御装置10F、およびPWM制御部2の応答時間などによる制御遅れを相殺するように設定されている。
【0072】
加算器20は、電流制御器16の乗算器32からのd軸電圧指令値VdPと位相回転変換器51からのd軸電圧指令値VdIBとを加算してd軸電圧指令値Vd1*を生成する。加算器21は、電流制御器17の乗算器42からのq軸電圧指令値VqPと位相回転変換器51からのq軸電圧指令値VqIBとを加算してd軸電圧指令値Vq1*を生成する。他の構成および動作は、実施の形態3と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0073】
以上のように、この実施の形態4では、偏差ΔId=Id*−Idの積分値に比例するd軸電圧指令値VdIの位相と、偏差ΔIq=Iq*−Iqの積分値に比例するq軸電圧指令値VqIの位相との各々を位相回転変換器51によって補正角度αだけ進ませる。偏差ΔIdに比例するd軸電圧指令値VdPの位相と、偏差ΔIqに比例するq軸電圧指令値VqPの位相とについては、遅らせない。そして、第1基準位相(ωt+φ)に基づいて、d軸電圧指令値Vd3*およびq軸電圧指令値Vq3*を逆dq変換器26によって逆dq変換する。
【0074】
したがって、偏差ΔId,ΔIqに比例するd軸電圧指令値VdPおよびq軸電圧指令値VqPの位相は変化しない。したがって、d軸電圧指令値VdPおよびq軸電圧指令値VqPの位相が進められて制御安定性が低下することを防止することができる。
【0075】
また、偏差ΔId,ΔIqの積分値に比例するd軸電圧指令値VdIおよびq軸電圧指令値VqIの位相を位相回転変換器51によって補正角度αだけ進ませるので、制御装置10Fなどの応答時間による制御誤差を低減することができる。
【0076】
さらに、d軸電圧指令値VdIおよびq軸電圧指令値VqIの位相を位相回転変換器51によって補正角度αだけ進ませるので、積分制御が不安定になることを防止することができる。
【0077】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。