特許第6816059号(P6816059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816059
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】選定支援システム及び選定支援方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20210107BHJP
   B23Q 15/18 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   G05B19/18 W
   B23Q15/18
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-81346(P2018-81346)
(22)【出願日】2018年4月20日
(65)【公開番号】特開2019-191739(P2019-191739A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年9月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】奥秋 兼一
(72)【発明者】
【氏名】山本 和弘
【審査官】 岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−278437(JP,A)
【文献】 特開2017−124473(JP,A)
【文献】 特開2006−221428(JP,A)
【文献】 特開平03−294904(JP,A)
【文献】 特開平09−329505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/00−19/46
B23Q 15/00−15/28
B23Q 17/00−17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械を駆動制御するモータ及びモータ駆動装置を有する駆動システムと、前記駆動システムの少なくとも一部を収容する収容部とを備える工作機械に対して、工作機械を構成する構成要素を選定する選定支援システムであって、
前記工作機械の運転に関する運転情報、前記工作機械の構成に関する機械情報及び前記収容部に関する収容部情報を受け付ける情報受付部と、
演算部と、を備え、
前記演算部は、前記情報受付部により受け付けられた前記運転情報、前記機械情報及び記収容部情報に基づいて、前記収容部の内部の温度を推定する温度推定部を有し、
前記温度推定部は、前記収容部に設けられる冷却装置の冷却能力、及び前記収容部の寸法に基づいて、前記収容部の内部の温度を推定し、
前記演算部は、前記温度推定部により推定された前記収容部の内部の温度と、前記収容部が許容可能な上限温度に基づいて、前記収容部の内部の温度が上限温度以下となるような、前記モータ及び前記モータ駆動装置を選定する選定部を更に有する、選定支援システム。
【請求項2】
前記演算部は、前記温度推定部により推定された前記収容部の内部の温度と、前記収容部の許容可能な上限温度とに基づいて、前記収容部の寸法を算出する寸法算出部を更に有する、請求項1に記載の選定支援システム。
【請求項3】
前記演算部は、前記温度推定部により推定された前記収容部の内部の温度と、前記収容部の許容可能な上限温度と、前記収容部の寸法とに基づいて、前記収容部の冷却装置の要否を判定する要否判定部を更に有する、請求項1に記載の選定支援システム。
【請求項4】
前記演算部は、前記要否判定部において冷却装置が必要と判定された場合、前記冷却装置の必要冷却能力を算出する冷却能力算出部を更に有する、請求項3に記載の選定支援システム。
【請求項5】
前記温度推定部は、前記運転情報、前記機械情報及び前記収容部情報に加え、更に、前記収容部に収容される前記駆動システムの機器であって、前記駆動システムにおける前記モータ及び前記モータ駆動装置以外の機器の発熱量に基づいて、前記収容部の内部の温度を推定する、請求項1に記載の選定支援システム。
【請求項6】
工作機械を駆動制御するモータ及びモータ駆動装置を有する駆動システムと、前記駆動システムの少なくとも一部を収容する収容部とを備える工作機械に対して、工作機械を構成する構成要素を選定する選定支援方法であって、
前記工作機械の運転に関する運転情報、前記工作機械の構成に関する機械情報及び前記収容部に関する収容部情報を受け付ける情報受付ステップと、
演算ステップと、を備え、
前記演算ステップは、前記情報受付ステップにより受け付けられた前記運転情報、前記機械情報及び記収容部情報に基づいて、前記収容部の内部の温度を推定する温度推定ステップを有し、
前記温度推定ステップは、前記収容部に設けられる冷却装置の冷却能力、及び前記収容部の寸法に基づいて、前記収容部の内部の温度を推定し、
前記演算ステップは、前記温度推定ステップにおいて推定された前記収容部の内部の温度と、前記収容部が許容可能な上限温度に基づいて、前記収容部の内部の温度が上限温度以下となるような、前記モータ及び前記モータ駆動装置を選定する選定ステップを更に有する、選定支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械を構成する構成要素を選定する、選定支援システム及び選定支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械に用いられるモータや、そのモータを駆動するモータ駆動装置は、工作機械の運転に伴い発熱する。このようなモータやモータ駆動装置の発熱は、工作機械の誤動作や故障を引き起こす原因となり得る。
【0003】
このような状況を鑑みて、モータやモータ駆動装置の発熱量を算出し、温度を推定するシステムが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。これらの特許文献に開示のシステムを利用して、工作機械のモータ駆動装置等の温度を推定することにより、ユーザは事前に発熱を防止するための対策を講じることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−88268号公報
【特許文献2】特開2000−271836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1や特許文献2等に開示の一般的な技術では、モータやモータ駆動装置の情報のみを考慮して温度の推定を行っており、温度の推定に用いられる情報が十分ではなかった。そのため、温度の推定精度が低い場合があり、ユーザは、推定された温度に基づいて常に適切な対策を講じることが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、より適切に、モータやモータ駆動装置の温度に関する対策を講じることが可能な、選定支援システム及び選定支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る選定支援システム(例えば、後述の選定支援システム1)は、工作機械を駆動制御するモータ(例えば、後述のモータ22j)及びモータ駆動装置(例えば、後述のモータ駆動装置23k)を有する駆動システムと、前記駆動システムの少なくとも一部を収容する収容部(例えば、後述の強電盤21i)とを備える工作機械に対して、工作機械を構成する構成要素を選定する選定支援システムであって、前記工作機械の運転に関する運転情報、前記工作機械の構成に関する機械情報及び前記収容部に関する収容部情報を受け付ける情報受付部(例えば、後述の入力部14)と、演算部(例えば、後述の演算部11)と、を備え、前記演算部は、前記情報受付部により受け付けられた前記運転情報、前記機械情報及び前記収容部情報に基づいて、前記収容部の内部の温度を推定する温度推定部(例えば、後述の温度推定部112)を有することを特徴とする。
【0008】
(2) (1)に記載の選定支援システムにおいて、前記演算部は、前記温度推定部により推定された前記収容部の内部の温度と、前記収容部の許容可能な上限温度とに基づいて、前記収容部の寸法を算出する寸法算出部(例えば、後述の寸法算出部113)を更に有してもよい。
【0009】
(3) (1)に記載の選定支援システムにおいて、前記演算部は、前記温度推定部により推定された前記収容部の内部の温度と、前記収容部の許容可能な上限温度と、前記収容部の寸法とに基づいて、前記収容部の冷却装置の要否を判定する要否判定部(例えば、後述の要否判定部114)を更に有してもよい。
【0010】
(4) (3)に記載の選定支援システムにおいて、前記演算部は、前記要否判定部において冷却装置が必要と判定された場合、前記冷却装置の必要冷却能力を算出する冷却能力算出部を更に有してもよい。
【0011】
(5) (1)に記載の選定支援システムにおいて、前記温度推定部は、前記収容部に設けられる冷却装置の冷却能力、及び前記収容部の寸法に基づいて、前記収容部の内部の温度を推定し、前記演算部は、前記温度推定部により推定された前記収容部の内部の温度と、前記収容部が許容可能な上限温度に基づいて、前記収容部の内部の温度が上限温度以下となるような、前記モータ及び前記モータ駆動装置を選定する選定部(例えば、後述の選定部115)を更に有してもよい。
【0012】
(6) (1)に記載の選定支援システムにおいて、温度推定部は、前記運転情報、前記機械情報及び前記収容部情報に加え、更に、前記収容部に収容される前記駆動システムの機器であって、前記駆動システムにおける前記モータ及び前記モータ駆動装置以外の機器の発熱量に基づいて、前記収容部の内部の温度を推定してもよい。
【0013】
(7)本発明に係る選定支援方法は、工作機械を駆動制御するモータ及びモータ駆動装置を有する駆動システムと、前記駆動システムの少なくとも一部を収容する収容部とを備える工作機械に対して、工作機械を構成する構成要素を選定する選定支援方法であって、前記工作機械の運転に関する運転情報、前記工作機械の構成に関する機械情報及び前記収容部に関する収容部情報を受け付ける情報受付ステップと、演算ステップと、を備え、前記演算ステップは、前記情報受付ステップにより受け付けられた前記運転情報、前記機械情報及び前記収容部情報に基づいて、前記収容部の内部の温度を推定する温度推定ステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より適切に、モータやモータ駆動装置の温度に関する対策を講じることが可能な、選定支援システム及び選定支援方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る選定支援システムの概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る選定支援システムの機能ブロック図である。
図3図2の入力部及び表示部の一例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る選定処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2の実施形態に係る選定処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の第3の実施形態に係る選定処理を示すフローチャートである。
図7】本発明の第4の実施形態に係る選定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る選定支援システム1の概略図である。選定支援システム1は、工作機械を構成する構成要素を選定する。工作機械の構成要素は、例えば、強電盤、モータ、モータ駆動装置、冷却装置などの工作機械を構成する要素である。工作機械は、モータ及びモータ駆動装置を有する駆動システムと、駆動システムの少なくとも一部を収容する収容部とを備える。工作機械は、典型的には、各種加工を行う加工機であるが、これ以外にも、直接的に加工は行わない搬送機構や移動機構などを広く含む。モータは、工作機械の各部を駆動させる駆動力を発生させる。モータ駆動装置は、モータに必要な電力を供給して、モータを駆動し、制御する。収容部は、典型的には、モータ駆動装置を収容し、モータの一部若しくは全部を収容するか、収容しない。収容部は、典型的には強電盤(制御盤)である。強電盤の筐体に収容されるモータ及びモータ駆動装置は、強電盤の一部を構成する。
【0017】
選定候補の構成要素を「選定対象20」ともいう。図1には、選定対象20としては、それぞれ複数種類の強電盤21a〜21i、モータ22a〜22j、モータ駆動装置23a〜23kが例示されている。区別する必要が無いときには、強電盤21a〜21i、モータ22a〜22j、モータ駆動装置23a〜23kそれぞれを代表して、強電盤21、モータ22、モータ駆動装置23ともいう。本実施形態において図示されていないが、強電盤21には、駆動システムの一部であるモータ駆動装置23が収容されており、一方、モータ22は収容されていない。
【0018】
選定支援システム1は、以下に詳述する方法によって、選定対象20の中から、特定の構成要素を選定する。そして、選定支援システム1は、特定の構成要素を選定すると、その他の情報にも基づいて、強電盤の内部の温度を推定する。
「選定する」は、選定する(選定を完了させる)ことだけではなく、選定の支援(補助)をすることも含む。選定の支援としては、複数種類の選定候補を挙げて選定の完了をユーザに行わせる場合や、選定の際の判断材料を提示するまでにとどめる場合が挙げられる。選定対象20は、ここでは、工作機械に搭載する強電盤21、モータ22、及びモータ駆動装置23である。選定対象20は、1種類に絞り込む必要は無く、2〜3種類程度に絞り込み、その中から1種類を選択させるようにしてもよい。図3に示す例では、モータを2種類に絞り込み、その中から1種類を選択するようにしており、また、モータ駆動装置を2種類に絞り込み、その中から1種類を選択するようにしている。強電盤については、強電盤の選定(強電盤の冷却装置の選定)の判断材料を提示するようにしている。なお、選定対象20には、他の機器が含まれていてもよい。
【0019】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る選定支援システムの機能ブロック図である。図2に示すように、選定支援システム1は、演算部11と、ROM12と、RAM13と、入力部14と、表示部15と、記憶部16と、通信部17とを備えている。
【0020】
演算部11は、記憶部16に記憶された各種プログラムを実行することにより、選定支援システム1の全体を制御する。例えば、演算部11は、選定対象20から強電盤21、モータ22及びモータ駆動装置23を選定する処理(以下、「選定処理」と称する)のためのプログラムを実行する。
【0021】
入力部14は、工作機械の運転に関する運転情報、工作機械の構成に関する機械情報、及び強電盤に関する収容部情報を受け付ける。運転情報は、例えば、切削加工、塑性加工、又は溶接加工等の加工の種類、加工スピードの高低である。機械情報は、例えば、加工軸の情報である。収容部情報とは、例えば、強電盤の寸法や、強電盤が許容可能な上限温度である。
【0022】
後で詳述するが、入力部14は、運転情報受付部141、機械情報受付部142、強電盤情報受付部143及び駆動部情報受付部144を備える。運転情報受付部141は運転情報を、機械情報受付部142は機械情報を、強電盤情報受付部143は収容部情報を、駆動部情報受付部144はモータ22及びモータ駆動装置23の情報を、それぞれユーザの入力操作を通して受け付ける。そして、入力部14の入力情報に基づいて、演算部11によって処理された演算結果等が、表示部15の結果表示画面151に表示される。
【0023】
ROM(Read Only Memory)12には、選定支援システム1の全体を制御するプログラムや、選定処理に用いられるプログラム等が記憶されている。これらのプログラムは、演算部11の処理に応じて実行される。RAM(Ramdom Access Memory)13は、演算部11の処理に応じて一時的にデータの読み書きが行われる、所謂ワーキングメモリである。
【0024】
記憶部16には、後述の選定処理で用いられる、発熱量情報データベース(発熱量情報DB)16aが記録されている。発熱量情報データベース16aには、モータ22及びモータ駆動装置23の動作に伴う発熱量の情報が保持されている。発熱量の情報は、予め測定されたり、計算されたりして求められる。通信部17は、図示しない通信機器等と通信することによって、例えば、演算に使用するためのデータを受信したり、演算の結果データを送信したりする。
【0025】
〔演算部11の詳細〕
選定処理のためのプログラムを実行することにより、演算部11には、機能的構成として、UI表示制御部111と、温度推定部112と、寸法算出部113と、要否判定部114と、選定部115と、が形成される。選定支援システム1は、構成要素(強電盤21、モータ22、及びモータ駆動装置23)の型番等に紐付けられた、発熱量、強電盤の寸法等の各種情報が格納された発熱量情報データベース16aにアクセスし、適宜情報を取得することが可能である。
【0026】
UI表示制御部111は、選定処理において、ユーザが各種情報を入出力するためのユーザインターフェース画面(UI画面)を表示する。例えば、UI表示制御部111は、工作機械の運転に関する情報(運転情報)の入力画面(運転情報受付部141)、工作機械の構成に関する情報(機械情報)の入力画面(機械情報受付部142)、強電盤のサイズや強電盤の上限温度に関する情報(収容部情報)の入力画面(強電盤情報受付部143)、モータ22及びモータ駆動装置23(アンプ等)、その他の機器(PLC等)に関する情報(駆動部情報)の入力画面(駆動部情報受付部144)を表示すると共に、ユーザによるこれらの情報の入力を受け付ける。UI表示制御部111は、選定された構成要素の選定結果を示す画面(結果表示画面151)等を表示する。
【0027】
温度推定部112は、少なくとも、運転情報受付部141、機械情報受付部142、及び強電盤情報受付部143の入力に基づいて、強電盤21の内部の温度を推定する。或いは、温度推定部112は、更に、駆動部情報受付部144に入力された情報を用いて温度を推定してもよい。温度推定部112は、入力された情報と、記憶部16に記録されている発熱量情報データベース16aとを参照して、強電盤21の内部の温度を推定する。
【0028】
寸法算出部113は、第2の実施形態において機能する構成であって、温度推定部112によって推定された温度と、強電盤21の許容可能な上限温度とに基づいて、強電盤21の寸法を算出する。
【0029】
要否判定部114は、第3の実施形態において機能する構成であって、温度推定部112によって推定された温度と、強電盤21の許容可能な上限温度と、強電盤21の寸法に基づいて、強電盤21への冷却装置の設置の要否を判定する。冷却装置は、例えば、熱交換器やクーラである。
【0030】
選定部115は、第4の実施形態において機能する構成であって、温度推定部112によって推定された温度と、強電盤21の許容可能な上限温度とに基づいて、強電盤21の内部の温度が上限温度以下となるような、モータ22、モータ駆動装置23等を選定する。
【0031】
図3は、入力部14の入力画面の一例を示す模式図である。図中の矢印は、順に入力画面が変化することを示す。なお、入力の順は一例に過ぎず、他の順で入力画面が遷移してもよい。
【0032】
運転情報受付部141には、「加工種類」や「加工スピード」等の運転情報を選択する画面が表示される。
強電盤21の内部の温度は、モータ駆動装置23の発熱量などに応じて増減する場合があるが、モータ駆動装置23の発熱量は加工スピードや加工の種類に依存するため、これらの情報は温度推定部112において温度を推定する際に考慮される。
【0033】
機械情報受付部142には、機械情報として「選定軸」に関する情報を選択する画面が表示される。
工作機械の選定軸の種類によって、モータ駆動装置23の発熱量などが変化する場合があるため、選定軸の種類は、温度推定部112において温度を推定する際に考慮される。
【0034】
駆動部情報受付部144には、自動的に選択されたモータ及びモータ駆動装置の種類が表示されるか、或いは、ユーザがモータを選択する場合にはモータの種類を選択する画面が表示される。
モータの種類によって対応するモータ駆動装置が変わり、そしてモータ駆動装置の発熱量が変化するため、モータの種類は、温度推定部112において温度を推定する際に考慮される。
【0035】
結果表示画面151には、上述の入力情報に基づいて、温度推定部112において推定された強電盤21の「総発熱量」が表示される。或いは、「消費電力」や「損失電力」等の電力情報(図示せず)が表示されてもよい。なお、これらの表示は省略されてもよい。
【0036】
強電盤情報受付部143には、強電盤21の寸法(外形サイズ)を入力する画面が表示される。ユーザは、寸法として、高さH[mm]、幅W[mm]、及び、長さL[mm]を入力することができる。また、他の機器の総発熱量と、モータの負荷率を入力することができる。他の機器の総発熱量は、カタログ値等に基づいて入力されてもよい。モータの負荷率については、ユーザがモータの定格負荷に対して個々に設定する。例えば、主軸モータの運転にマージンを持たせるために、負荷率が50%に設定されると、モータの回転数が定格の50%として設計される。また、図示されていないが、強電盤情報受付部143には、強電盤21の許容可能な上限温度を入力する画面も表示される。
【0037】
結果表示画面151には、温度推定部112において推定された温度などに基づいて、冷却装置の設置を推奨する等のガイダンスが表示される。
【0038】
〔第1の実施形態に係る選定処理〕
図4は、第1の実施形態において実行される選定処理を示すフローチャートである。
ステップS11において、演算部11は、運転情報受付部141において入力された運転情報、例えば上述の「加工スピード」等を取得する。ステップS12において、演算部11は、機械情報受付部142において入力された機械情報、例えば上述の「選択軸」の種類を取得する。ステップS13において、演算部11は、強電盤情報受付部143において入力された制御盤の情報、例えば、「寸法」を取得する。ステップS14において、演算部11は、ユーザが選択したモータの種類などを取得する。ステップS11〜S14において取得された情報は、一時的にRAM13に記録される。
【0039】
ステップS15において、演算部11の温度推定部112は、ステップS11〜S14において一時的にRAM13に記録された種々の情報を読み出す。温度推定部112は、記憶部16に保存された発熱量情報データベース16aを参照し、「加工スピード」、「選択軸」、及び取得したモータの種類などに応じたモータ駆動装置の発熱量を算出し、強電盤21の「寸法」に基づいて強電盤21の内部の温度を推定する。発熱量情報データベース16aは、例えば、テーブル形式のデータベースであって、温度推定部112は、読み出した情報に対応する発熱量を取得することができる。
【0040】
ステップS16において、終了条件を満たすか否かが判定される。終了条件は、例えば、結果表示画面151に、推定された温度が表示されたことである。
このように、ステップS11〜S16の選定処理によって、工作機械の運転情報、機械情報、さらには強電盤21の情報を考慮して、強電盤21の内部の温度をより高精度に推定することが可能となる。
【0041】
〔第2の実施形態に係る選定処理〕
図5を参照して、第2の実施形態の説明をする。第2の実施形態では、第1の実施形態と比べて、選定処理において寸法算出部113が更に機能する。即ち、温度推定部によって推定された収容部(強電盤)の内部の温度と、入力された収容部の上限温度とに基づいて、寸法算出部113は収容部の寸法を算出する。なお、図5において、第1の実施形態と同一の処理には同一の符号が付されている。
【0042】
ステップS11において、演算部11は運転情報を取得する。ステップS12において、演算部11は機械情報を取得する。ステップS23において、ユーザは、入力部14の強電盤情報受付部143から、強電盤21の許容可能な上限温度を入力する。演算部11は、上限温度を取得する。ステップS14において、演算部11は、ユーザが選択したモータの種類などを取得する。ステップS11〜S14において取得された情報は、一時的にRAM13に記録される。
【0043】
ステップS25において、寸法算出部113は、RAM13に一時的に記録されている情報に基づいて、強電盤21の寸法を算出する。具体的には、強電盤21に収容されるモータ駆動装置23等が、運転情報及び機械情報に従って駆動したときに、強電盤21の内部の温度が上限温度を超えないような強電盤21の寸法を算出する。
【0044】
ステップS16において、終了条件を満たすか否かが判定される。終了条件は、例えば、結果表示画面151に、強電盤21の寸法が表示されたことである。
このように、ステップS11〜S16の選定処理によって、工作機械の運転情報、機械情報、さらには強電盤21の上限温度の情報を考慮して、強電盤21の寸法を算出することにより、結果として、強電盤21の内部の温度をより高精度に推定することが可能となる。
【0045】
〔第3の実施形態に係る選定処理〕
図6を参照して、第3の実施形態の選定処理を説明する。第3の実施形態では、第1の実施形態と比べて、選定処理において要否判定部114が更に機能する。即ち、第3の実施形態における選定処理では、温度推定部112によって推定された強電盤21の内部の温度、入力された強電盤21の上限温度、及び強電盤21の寸法に基づいて、要否判定部114は強電盤21の冷却装置の要否を判定する。第3の実施形態では、強電盤21の上限温度と寸法とが変更できない場合には、強電盤21に冷却装置を設ける必要があるため、選定支援システム1は冷却装置の有無を判定する。なお、図6において、第1の実施形態又は第2の実施形態と同一の処理については同一の符号が付されている。
【0046】
ステップS11において、演算部11は運転情報を取得する。ステップS12において、演算部11は機械情報を取得する。ステップS33において、演算部11は強電盤21の許容可能な上限温度、及び強電盤21の寸法を取得する。ステップS14において、演算部11はモータの種類を取得し、これらを一時的にRAM13に記録する。
【0047】
ステップS35において、温度推定部112は、ステップS11〜S14においてRAM13に一時的に記録されている情報に基づいて、強電盤21の内部の温度を推定する。要否判定部114は、強電盤21に収容されるモータ駆動装置23等が、運転情報及び機械情報に従って駆動したときに、強電盤21の内部の温度が上限温度を超えると推定される場合、冷却装置が必要であると判定する。
【0048】
ステップS16において、終了条件を満たすか否かが判定される。終了条件は、例えば、結果表示画面151に、冷却装置の要否の判定結果が表示されたことである。
このように、ステップS11〜S16の選定処理によって、工作機械の運転情報、機械情報、さらには強電盤21の上限温度及び寸法の情報を考慮して、高精度に強電盤21の温度を推定するとともに、冷却装置の要否の判定結果を得ることが可能となる。
【0049】
なお、演算部11は冷却能力算出部を更に備えていてもよい。冷却能力算出部は、上述の要否判定部114において冷却装置が必要と判定された場合、上限温度に達しないために必要な冷却能力を算出する。これにより、ユーザは冷却装置の選定の支援を受けることが出来る。
【0050】
〔第4の実施形態に係る選定処理〕
図7を参照して、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、第1の実施形態と比べて、選定処理において、モータ22やモータ駆動装置23を選定するための選定部115が更に機能する。即ち、温度推定部112は、強電盤21に設けられる冷却装置の冷却能力、及び強電盤21の寸法に基づいて、強電盤21の内部の温度を推定する。そして、選定部115は、推定された強電盤21の内部の温度と、強電盤21の許容可能な上限温度に基づいて、強電盤21の内部の温度が上限温度以下となるような、モータ及びモータ駆動装置を選定する。第4の実施形態では、強電盤21の寸法が変更できない場合には、強電盤21の上限温度と冷却装置による冷却能力とを考慮してモータ22及びモータ駆動装置23を選定することができる。なお、図7において、第1〜第3の実施形態と同一の処理については同一の符号が付されている。
【0051】
演算部11は、ステップS11において運転情報を取得する。ステップS12において、演算部11機械情報を取得する。ステップS23において、演算部11は強電盤21が許容可能な上限温度を取得し、これらを一時的にRAM13に記録する。ステップS44において、選定部115は、強電盤21に設けられている冷却装置の冷却能力を検出する。選定部115は、RAM13に一時的に記録されている情報を読み出すとともに、発熱量情報データベース16aを参照し、上限温度に収まるような、モータ及びモータ駆動装置を選定する。
【0052】
ステップS16において、終了条件を満たすか否かが判定される。終了条件は、例えば、結果表示画面151に、モータ等の選定結果が表示されたことである。
このように、ステップS11〜S16の選定処理によって、工作機械の運転情報、機械情報、強電盤21の上限温度の情報、さらには冷却装置の冷却能力を考慮して、強電盤21の温度を高精度に推定するとともに、上限温度に収まるようなモータ駆動装置23kを選定することが可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、前述した実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0054】
例えば、温度推定部112は、モータ22及びモータ駆動装置23以外の機器(例えば、PLC)の発熱量を算出し、強電盤21の内部の温度を推定してもよい。また、上述の実施形態では、モータ駆動装置23が強電盤21に収容されているが、モータ22の一部又は全部も強電盤21に収容されていてもよい。この場合、温度推定部112は、モータ22の発熱量及びモータ駆動装置23の発熱量に基づいて、強電盤21の内部の温度を推定する。
上述の実施形態において、収容部情報として、強電盤21の許容可能な上限温度が入力されるが、必ずしも上限温度である必要はなく、例えば、ユーザの所望の温度が入力されてもよい。
【0055】
上述の実施形態において、発熱量情報DB16aを選定支援システム1に備えることとして説明したが、これに限られない。即ち、これらのデータベースの一部又は全部を、ネットワークを介して通信可能な他の装置(データベースサーバ等)に備え、選定支援システム1がネットワークを介してデータベースに適宜アクセスする構成としてもよい。
【0056】
以上説明した実施形態の選定支援システム1の機能の全部又は一部は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組合せにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、プロセッサがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。ハードウェアで構成する場合、選定支援システム1の機能の一部又は全部を、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等の集積回路(IC)で構成することができる。
【0057】
選定支援システム1の機能の全部又は一部をソフトウェアで構成する場合、選定支援システム1の動作の全部又は一部を記述したプログラムを記憶した、ハードディスク、ROM等の記憶部、演算に必要なデータを記憶するDRAM、CPU、及び各部を接続するバスで構成されたコンピュータにおいて、演算に必要な情報をDRAMに記憶し、CPUで当該プログラムを動作させることで実現することができる。
【0058】
これらのプログラムは、様々なタイプのコンピュータ可読媒体(computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。コンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。コンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、DVD−ROM(Digital Versatile Disk)、DVD−R、DVD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory))を含む。
また、これらのプログラムは、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・・選定支援システム,11・・・演算部,12・・・ROM,13・・・RAM,14・・・入力部,15・・・表示部,16・・・記憶部,16a・・・発熱量情報DB,17・・・通信部,20・・・選定対象,21・・・強電盤,22・・・モータ,23・・・モータ駆動装置,111・・・UI表示制御部,112・・・温度推定部,113・・・寸法算出部,114・・・要否判定部,115・・・選定部,141・・・運転情報受付部,142・・・機械情報受付部,143・・・強電盤情報受付部,144・・・駆動部情報受付部,151・・・結果表示画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7