(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の連鎖端子において、端子を分離させる際には、キャリアが基台から突出するように端子を基台上に配置し、キャリアと端子との境界部分を切断刃によって上方から切断する場合がある。しかしながら、このような場合には、キャリア切断時に、電気接触部の底板に前端縁に形成されるキャリア切断部から下方に向かって突出するバリなどの突起が形成されてしまう。
【0005】
突起が電気接触部の底板の底面からはみ出して形成されると、端子をハウジング内に挿入する際に、突起によってハウジングが削られてハウジングが損傷してしまう。また、突起によってハウジングを削ることで端子の挿入抵抗が増加してしまう。
【0006】
本明細書では、端子をハウジングに収容する際に、挿入抵抗の増加を抑制すると共に、ハウジングが損傷することを防ぐ技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される技術は、ハウジング内に収容される端子であって、相手側端子と接続可能に設けられ、底板を有する端子接続部と、前記底板の端縁に設けられたキャリア切断部と、前記キャリア切断部から突出する突起と、を備え、前記キャリア切断部は、前記底板の板厚のうち前記ハウジング側とは反対側の端縁部に設けられており、前記突起は、前記底板のうち前記ハウジング側に位置する底面よりも前記底面とは反対側の面側に設けられている構成とした。
また、本明細書によって開示される技術は、コネクタであって、上記の端子と、前記端子を収容するハウジングとを備えている構成とした。
【0008】
一般に、端子の底板とキャリアとの間を切断すると、キャリア切断部には、切断による突起が形成される。ところが、上記の構成によると、キャリア切断部が底板の板厚のうちハウジング側とは反対側の端部に設けられており、突起が底面よりも底面とは反対側の面側に設けられているから、端子をハウジング内に収容する際に、突起によってハウジングの内面を削ってしまうことを抑制することができる。ひいては、端子の挿入抵抗が増加することを抑制することができる。
【0009】
本明細書によって開示される端子は、以下の構成としてもよい。
前記端子接続部は、前記底板と、前記底板と対向する天井板と、前記底板の両側縁と前記天井板の両側縁とを連結する一対の側板とによって前記相手側端子が挿入可能な筒状に形成されており、前記側板において前記相手側端子が挿入される側の端縁における前記底板側の端部には、凹状をなす凹部が設けられており、前記キャリア切断部は、前記底板において前記凹部内に突出する前記底板の端縁に設けられている構成としてもよい。
【0010】
このような構成によると、側板に設けられた凹部内に突出した底板にキャリア切断部が設けられているから、例えば、側板に凹部が設けられていない場合に比べて、切断によって底板の端縁にキャリア切断部が掲載される際に、側板に応力が生じることを抑制できる。
【0011】
つまり、端子接続部において側板が歪むことを抑制することができ、相手側端子と端子接続部と接続信頼性を向上させることができる。また、ハウジング内に端子を挿入する際に、キャリア切断部がハウジングの内面に当接する場合においても、キャリア切断部が当接した際の応力が側板に及ぶことを抑制することができる。
【0012】
前記側板には、前記相手側端子と弾性的に接触する弾性片が設けられている構成としてもよい。
側板が相手側端子と弾性的に接触する弾性片を有している構成の場合には、側板の歪みによって相手側端子と端子接続部と接続信頼性が低下することが懸念される。しかしながら、側板に設けられた凹部内に突出した底板にキャリア切断部が設けられ、側板に応力が生じることを抑制できるから、相手側端子と端子接続部との接続信頼性の点において非常に有効である。
【0013】
前記底板における前記キャリア切断部が設けられた部分には、前記底板を補強する補強部が設けられている構成とした。
このような構成によると、切断によってキャリア切断部を形成する前の状態においても、キャリア切断部が形成される部分が補強されていることになるから、他の部材などが接触することに起因してキャリア切断部の位置が分断され端子が脱落することを抑制することができる。
【0014】
また、本明細書によって開示される技術は、底板を有する端子接続部を備えた端子と、前記端子接続部における前記底板と一体に形成され、前記端子が複数連結された帯状のキャリアとを備えた連鎖端子であって、前記底板と前記キャリアとを分断する位置には、前記底板と前記キャリアとの境界部分の底面に凹状に凹んだ凹溝が全幅に亘って設けられている構成とした。
【0015】
このような構成の連鎖端子によると、底板とキャリアとを切断する位置に全幅に亘って凹溝が設けられることで、底板とキャリアとを切断する部分は、底板の底面から離れた反対側の面側の部分となる。
したがって、切断部分に切断によるバリなどの突起が形成される場合においても、底板の底面から突起が外方にはみ出すことを抑制することができる。つまり、連鎖端子から分離された端子をハウジング内に収容する際に、ハウジングの内面を突起によって削ることを抑制することができる。ひいては、端子の挿入抵抗が増加することを抑制することができる。
【0016】
前記底板と前記キャリアとには、前記凹溝が設けられた領域を補強する補強部が設けられている構成とした。
このような構成によると、端子とキャリアとの間を切断する前の状態において凹溝が形成されている部分を補強することができる。つまり、凹溝が形成されることに起因して底板とキャリアとの間の強度が低下している部分を補強することができる。これにより、他の部材などが接触することによってキャリアから端子が脱落することを抑制することができる。
【0017】
前記凹溝は、前記底板の板厚よりも前記端子と前記キャリアとが連結される方向に大きい形態で前記底板と前記キャリアとの境界部分の全幅に亘って形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、凹溝が端子とキャリアとが連結される方向に大きくなっているから、底板とキャリアとの間の切断位置の精度を緩和することができる。つまり、切断位置の位置調整作業を簡素化して生産性を向上させることができる。
【0018】
前記凹溝は、前記底板の板厚よりも前記端子と前記キャリアとが連結される方向に小さい形態で前記底板と前記キャリアとの境界部分の全幅に亘って形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、底板とキャリアとの間の切断位置の精度を高めて底板とキャリアとの間を切断することになるから、分離された端子の寸法精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本明細書によって開示される技術によれば、端子をハウジングに収容する際に、挿入抵抗の増加を抑制することができると共に、ハウジングが損傷することを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
本明細書に開示された技術における実施形態1について
図1から
図19を参照して説明する。
本実施形態は、合成樹脂製のハウジング40と、ハウジング40に設けられたキャビティ41内に収容される雌端子(「端子」の一例)10とを備えたコネクタ60を例示している。
【0022】
ハウジング40は、
図1および
図2に示すように、上下方向に扁平であって左右方向に延びた略直方体形状をなしている。ハウジング40は、絶縁性の合成樹脂を射出成型することにより形成される。ハウジング40には、雌端子10を収容する前後方向に延びた複数のキャビティ41が、左右方向に間隔を空けて並列されると共に、上下に2段に設けられている。上段に形成された各キャビティ41と、下段に形成された各キャビティ41とは、左右方向にずれて配置されている。
【0023】
キャビティ41は、
図9および
図10に示すように、前後方向に長く形成されており、前端および後端に開口している。キャビティ41の前端開口からは図示しない雄端子が挿入可能とされており、キャビティ41の後端開口からは雌端子10が収容可能とされている。
【0024】
また、ハウジング40は、上段に形成されたキャビティ41と、下段に形成されたキャビティ41との間を上下に仕切る隔壁42を有している。隔壁42は、キャビティ41の後端部から後方に延出されている。隔壁42の上面および下面には、左右方向に隣り合うキャビティ41を左右に仕切るための仕切壁43が設けられている。仕切壁43は、左右方向に隣り合うキャビティ41に収容されたそれぞれの雌端子10を電気的に絶縁する役割を果たしている。
【0025】
ハウジング40の後端部には、
図1に示すように、リアホルダ50が装着可能とされている。ハウジング40の左右方向の両側壁には、仮係止ロック部45および本係止ロック部46が設けられており、リアホルダ50に設けられたロック受け部51と仮係止ロック部45および本係止ロック部46とが前後方向に係止することで、リアホルダ50が仮係止位置または本係止位置に保持されるようになっている。
【0026】
雌端子10は、導電性を有する金属板をプレスなどによって加工することによって形成されている。雌端子10を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼など、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態に係る雌端子10は、銅、または銅合金によって形成されている。また、雌端子10の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、錫、ニッケル、銀など必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。本実施形態に係る雌端子10の表面には、錫めっき層が形成されている。
【0027】
雌端子10は、
図3、
図5および
図6に示すように、図示しない雄端子(「相手側端子」の一例)が前方から挿入される接続筒部(「端子接続部」の一例)20と、電線Wが接続される電線接続部30と、接続筒部20と電線接続部30とを前後方向に繋ぐ繋ぎ部11とを備えて構成されている。
【0028】
電線接続部30は、角筒状をなす本体部31の後端部に芯線挟持部32が設けられた形態とされている。芯線挟持部32は、電線Wの芯線を上下方向両側から挟持する一対の挟持片33を有している。
一対の挟持片33は、
図3および
図6に示すように、本体部31の上板および下板から後方に向かって延出した形態をなしており、一対の挟持片33は、基端部を支点に互いに近づく方向に弾性変形可能とされている。
【0029】
また、電線接続部30には、電線接続部30の外面を覆う図示しない覆い部が外嵌されるようになっている。覆い部は、一対の挟持片33の間に電線Wの芯線が後方から挿入された後、電線接続部30を覆うように組み付けられることで、一対の挟持片33を互いに近く付く方向に押圧し、芯線と一対の挟持片33とを接触させる。これにより、電線Wと雌端子10とが電気的に接続されるようになっている。
【0030】
一方、接続筒部20は、
図3から
図8に示すように、前後方向に延びる正面視略矩形の角筒状をなしており、底板21と、底板21と上下方向に対向する天井板23と、底板21の左右方向の両側縁と天井板23の左右方向の両側縁とを上下方向に連結する一対の側板24とによって前後方向に開口する角筒状に形成されている。
【0031】
接続筒部20の天井板23の外面(上面)23Aには、後方に向かうほど拡幅する係止突起25が突設されている。
係止突起25は、半割した略円錐状に形成されており、
図9から
図12に示すように、雌端子10がハウジング40のキャビティ41内に挿入された際に、キャビティ41の上側内面41Uに圧入され、雌端子10をキャビティ41内に抜け止めするようになっている。
【0032】
また、接続筒部20内には、
図8に示すように、雄端子が前端開口から挿入可能とされており、接続筒部20の内部には、接続筒部20内に挿入された雄端子に弾性的に接触する弾性片26が設けられている。
弾性片26は、一対の側板24のうちの一方の側板24(本実施形態では、正面視右側の側板24)に設けられている。
【0033】
弾性片26は、後端部が側板24の内面に接触すると共に前端部が自由端となる片持ち状に形成されており、接続筒部20に雄端子が前方から挿入されると、弾性片26が雄端子に弾性的に接触することで雄端子と雌端子10とが電気的に接続されるようになっている。
【0034】
一対の側板24の前端縁には、
図3および
図4に示すように、側板24と直交する方向である左右方向に延出された前板20Fが設けられている。
また、一対の側板24の前端縁における底板21側の下端部には、
図3、
図4、
図6および
図7に示すように、凹部27が設けられている。
【0035】
凹部27は、側板24の前縁および下縁に開口するように略矩形凹状に形成されており、凹部27内には、接続筒部20の底板21が後方から突出している。凹部27内に突出した底板21は、突出底板22とされ、突出底板22は、
図5から
図8に示すように、接続筒部20の前板20Fよりもやや前方に突出した形態とされている。
【0036】
さて、接続筒部20の凹部27内に突出している突出底板22の前端縁には、
図3から
図8に示すように、キャリア切断部28が形成されている。キャリア切断部28は、雌端子10を製造する過程において後述するキャリア81の連結部82と突出底板22との間をプレス加工などによって切断する際に生じた切断跡である。
【0037】
キャリア切断部28は、突出底板22の板厚のうち底面22Dとは反対側の上面(「底面22Dとは反対側の面」の一例)22U側の端縁部に形成されている。
【0038】
キャリア切断部28の前端縁には、
図6および
図7に示すように、斜め前下方に向かって僅かに突出する突起29が形成されている。突起29は、キャリア81の連結部82と突出底板22との間を切断する際に、キャリア切断部28の前端縁に生じる、いわゆるバリである。また、突起29は、キャリア切断部28が突出底板22の上面22U側の端部に形成されることで、突出底板22の底面22Dよりも上側に形成されている。言い換えると、突起29は、突出底板22の底面22Dから下方に突出しないように構成されている。
【0039】
次に、雌端子10の製造方法の一例と共に、キャリア切断部28について説明する。
雌端子10を製造するには、まず、図示しない金属板材をプレスなどによって打ち抜きおよび曲げ加工を行うことにより、
図13から
図17に示すような連鎖端子80を形成する。
【0040】
連鎖端子80は、金属板材を打ち抜いて、
図18および
図19に示すように、帯状のキャリア81と、キャリア81の連結部82に連結される複数の端子素片91とを有する形態を構成する。
【0041】
端子素片91は、雌端子10の接続筒部20を形成するための筒部素片92と、電線接続部30を形成するための図示しない接続素片とを備えており、接続筒部20の突出底板22を構成する部分とキャリア81の連結部82との間である境界部分には、切り欠くように凹状に凹んだ凹溝83が設けられている。
【0042】
凹溝83は、金属板材をプレスなどによって打ち抜き加工する際に形成する。凹溝83は、
図18および
図19に示すように、突出底板22を構成する部分とキャリア81の連結部82との間の境界部分の底面80Dから上方に向かって凹んだ側面視三角状に形成されている。また、凹溝83は、
図17に示すように、前後方向の長さ寸法L2が突出底板22の板厚寸法L1よりも前後方向(雌端子10とキャリア81とが連結される方向)小さい形態で左右方向の全幅に亘って形成されている。
【0043】
また、一対の側板24を構成する部分の前縁の両側の端部には、
図18および
図19に示すように、スリット94が形成されている。
そして、金属板材を打ち抜いた後、筒部素片92や接続素片などに対して所定の曲げ加工を行うことで、
図13から
図17に示すように、キャリア81に複数の雌端子10が連結された連鎖端子80を形成する。
【0044】
ここで、一対の側板24を構成する部分の両側の端部には、スリット94が形成されており、曲げ加工によって接続筒部20の前板20Fを形成する際に、曲げ応力が各側板24に及ぶことを抑制することができるから、各側板24が反ることを抑制しつつ、接続筒部20の前板20Fを形成することができる。
【0045】
また、側板24を構成する部分のスリット94によって、接続筒部20の側板24の前縁部における下端部には、凹部27が形成され、凹部27内には、突出底板22が後方から突出した状態となる。
【0046】
次に、連鎖端子80のキャリア81の連結部82から雌端子10を分離させるには、キャリア81を順送りする送り工程によって連鎖端子80を搬送し、雌端子10とキャリア81の連結部82との間を切断する切断工程によって突出底板22とキャリア81の連結部82との間の境界部分を切断する。これにより、キャリア切断部28が形成された雌端子10が連続的に形成される。
【0047】
詳細には、切断工程は、
図20に示すように、基台Bの端部から接続筒部20の前端部が僅かに突出するように雌端子10を基台B上に配置する。
次に、突出底板22とキャリア81の連結部82とを分断する切断刃Cが、基台Bの側面に沿うように上方から下方に向かって変位し、連鎖端子80から雌端子10が分離される。
【0048】
ここで、切断刃Cによって切断される位置は、突出底板22とキャリア81の連結部82との間の凹溝83が設けられた部分であって、凹溝83は、突出底板22とキャリア81の連結部82との間の境界部分の底面80Dから上方に向かって凹んだ側面視三角状をなし、突出底板22とキャリア81の連結部82との境界部分において左右方向の全幅に亘って形成されている。
【0049】
つまり、切断工程によって形成されたキャリア切断部28は、接続筒部20の突出底板22の上面22U側の端部に形成される。また、キャリア切断部28が形成される際に、キャリア切断部28の前端縁には、切断によって生じる突起29が形成され、この突起29は、突出底板22の底面22Dよりも上側に配される。
【0050】
ところで、切断刃Cによってキャリア81と突出底板22との境界部分を切断する際には、切断箇所に大きな力が作用することになる。このため、基台Bに対する雌端子10の位置や切断刃Cの位置が微妙にずれている場合には、突出底板22に対して応力が生じることで、接続筒部20の側板24に歪みが生じることが懸念される。
【0051】
しかしながら、本実施形態によると、接続筒部20の一対の側板24には、凹部27が設けられ、凹部27内に突出した突出底板22の前端縁がキャリア81の連結部82との切断位置(キャリア切断部28)となっているから、例えば、一対の側板24に凹部が設けられていない場合に比べて、切断刃Cによる応力が一対の側板24に及ぶことを抑制することができる。
【0052】
つまり、本実施形態のように、相手側端子と接触する弾性片26が側板24に設けられている場合には、側板24の歪みによって相手側端子と接続筒部20と接続信頼性が低下することが懸念される。しかしながら、本実施形態によると、接続筒部20の側板24に凹部27を形成し、この凹部27内に突出する突出底板22にキャリア切断部28が設けられるから、側板24に応力が生じることを抑制できる。これにより、相手側端子と接続筒部20と接続信頼性が低下することを抑制することができる。
【0053】
最後に、雌端子10の電線接続部30に別途形成しておいた覆い部を組み付けることで覆い部が取り付けられた雌端子10が完成する。
【0054】
次に、上記の方法によって形成された雌端子10を備えたコネクタ60を製造する方法について説明すると共に、その時の作用および効果について説明する。
まず、
図9に示すように、ハウジング40のキャビティ41の後端開口から雌端子10をキャビティ41内に挿入する。そして、
図12に示すように、雌端子10がキャビティ41内の正規位置に至ると、接続筒部20の係止突起25がキャビティ41の上側内面41Uに圧入され、雌端子10がキャビティ41内に保持される。
【0055】
この雌端子10の挿入操作を繰り返し、全てのキャビティ41に雌端子10を挿入する。
ここで、仮に、端子筒部の突出底板におけるキャリア切断部に形成された突起が、突出底板の底面よりも下方に突出していると、雌端子の挿入操作の際に、突起によってキャビティの下側内面が突起によって削られてしまい、ハウジングが損傷する。また、突起がキャビティの下側内面を削ることで雌端子の挿入抵抗が増加してしまうことが懸念される。
【0056】
ところが、本実施形態によると、連鎖端子80における雌端子10の突出底板22とキャリア81の連結部82との間の境界部分の底面80Dには、左右方向の全幅に亘って上方に向かって凹んだ側面視三角状の凹溝83が形成されている。
【0057】
そして、この凹溝83が設けられた部分が切断刃Cによって上方から切断されることで、突出底板22の前端縁における天井面側(上面側)の端部にキャリア切断部28が形成され、キャリア切断部28には、突出底板22の底面22Dよりも上側に配された突起29が形成される。
【0058】
つまり、ハウジング40のキャビティ41に対して雌端子10を挿入する挿入操作の際に、キャビティ41の下側内面41Dが雌端子10の突起29によって削られることを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態の雌端子10は、ハウジング40のキャビティ41に挿入される際に、接続筒部20の係止突起25がキャビティ41の上側内面41Uに圧入されることで、
図10および
図11に示すように、雌端子10の後端がやや上方に持ち上がった傾斜姿勢で挿入される傾向にある。
【0060】
雌端子10が傾斜姿勢でキャビティ41に挿入されると、キャリア切断部28がキャビティ41の下側内面41Dに対して当接することになってしまい、当接した際の応力が側板24に及ぶことが懸念される。
【0061】
しかしながら、本実施形態の雌端子10は、接続筒部20の一対の側板24における凹部27内に突出する突出底板22の前端縁にキャリア切断部28が設けられており、雌端子10が傾斜姿勢でキャビティ41に挿入される際には、このキャリア切断部28がキャビティ41の下側内面41Dに当接することになるから、例えば、一対の側板に凹部が設けられていない場合に比べて、当接した際の応力が一対の側板24に作用することを抑制することができる。
【0062】
以上のように、本実施形態の雌端子10は、ハウジング40内に収容される雌端子10であって、相手側端子と接続可能に設けられ、底板21を有する接続筒部20と、底板21の端縁に設けられたキャリア切断部28と、キャリア切断部28から突出する突起29と、を備え、キャリア切断部28は、底板21の板厚のうちハウジング40側である下側とは反対側の上側の端縁部に設けられており、突起29は、底板21のうち下側に位置する底面21Dよりも上面21U側(底面21Dとは反対側)に設けられている。
【0063】
また、本実施形態の連鎖端子80は、突出底板22を有する接続筒部20を備えた雌端子10と、接続筒部20における突出底板22と一体に形成されることにより、雌端子10が複数連結された帯状のキャリア81とを備えた連鎖端子80であって、突出底板22とキャリア81の連結部82とを分断する位置には、突出底板22とキャリア81の連結部82との境界部分の底面80Dに凹状に凹んだ凹部27が全幅に亘って設けられている。
【0064】
したがって、突出底板22とキャリア81の連結部82とを分断する位置には、突出底板22とキャリア81の連結部82との境界部分の底面80Dに切り欠くように凹状に凹んだ凹溝83が全幅に亘って設けられており、この凹溝83の位置において突出底板22とキャリア81の連結部82とが切断によって分断されると、キャリア切断部28が突出底板22の板厚のうち上側の端縁部に設けられ、切断により生じる突起29が底面22Dよりも上面22U側に配される。
【0065】
つまり、接続筒部20の突出底板22とキャリア81の連結部82とが切断によって分断されると、キャリア切断部28には、切断による突起29が形成されるものの、突起29が突出底板22の底面22Dよりも下側にはみ出すことがない。これにより、雌端子10をハウジング40のキャビティ41に挿入する際に、キャビティ41の下側内面41Dを突起29によって削ることを抑制することができる。また、突起29によってキャビティ41の下側内面41Dを削ることを抑制するから、雌端子10の挿入抵抗が増加することを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態によると、接続筒部20は、底板21と、底板21と上下方向に対向する天井板23と、底板21の両側縁と天井板23の両側縁とを連結する一対の側板24とによって相手側端子が挿入可能な筒状に形成されており、一対の側板24のうちの一方の側板24には、相手側端子と弾性的に接触する弾性片26が設けられている。そして、側板24において相手側端子が挿入される側の前端縁における底板21側の端部には、凹状をなす凹部27が設けられており、キャリア切断部28は、底板21において凹部27内に突出する突出底板22の前端縁に設けられている。
【0067】
つまり、側板24に設けられた凹部27内に突出した突出底板22にキャリア切断部28が設けられているから、例えば、側板に凹部が設けられていない場合に比べて、突出底板22とキャリア81の連結部82とを切断によって分断する際に、側板24に応力が生じることを抑制できる。
【0068】
これにより、相手側端子と弾性的に接触する弾性片26を有している側板24に応力が生じることを抑制でき、相手側端子と接続筒部20との接続信頼性が低下することを抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態の連鎖端子80によると、突出底板22とキャリア81の連結部82との間に設けられた凹溝83は、突出底板22の板厚よりも前後方向(雌端子10とキャリア81とが連結される方向)に小さい形態で突出底板22とキャリア81の連結部82との境界部分の全幅に亘って形成されている。
【0070】
つまり、突出底板22とキャリア81の連結部82との間の切断位置の精度を高めて突出底板22とキャリア81の連結部82との境界部分を切断することになるから、連鎖端子80から分離した雌端子10の寸法精度を向上させることができる。
【0071】
<実施形態2>
次に、実施形態2について
図21を参照して説明する。
実施形態2は、実施形態1における連鎖端子80の凹溝83の形状を変更したものであって、実施形態1と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0072】
実施形態2の連鎖端子180における凹溝183は、
図21に示すように、前後方向(雌端子10とキャリア81とを連結する方向)の長さ寸法L3が、接続筒部120の突出底板122の板厚寸法L1よりも大きく形成されている。
したがって、凹溝183が前後方向に大きくなることで切断刃Cによる切断位置の精度を緩和することができる。これにより、切断位置の調整作業を簡素化することができ、生産性を向上させることができる。
【0073】
<実施形態3>
次に、実施形態3について
図22から
図26を参照して説明する。
実施形態3は、実施形態1における連鎖端子80のキャリア81の連結部82と突出底板22とが連結された部分の形状を変更したものであって、実施形態1と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0074】
実施形態3の連鎖端子280には、キャリア81の連結部282と雌端子210の突出底板222との間を補強する補強部285が設けられている。
補強部285は、キャリア81の連結部282および接続筒部220の突出底板222の左右方向略中央部において連結部282と突出底板222とに亘って形成されており、連結部282の上面282Uおよび突出底板222の上面222Uから上方に向かってリブ状に突出する形態をなしている。
【0075】
したがって、補強部285によってキャリア81の連結部282から突出底板222の部分の強度を向上させることができるようになっている。
そして、連結部282と突出底板222との境界部分である凹溝83の位置を切断刃Cによって切断すると、
図26に示すように、雌端子210の突出底板222の前端部には、キャリア切断部28と共に切断刃Cによって切断された補強部285が形成される。
【0076】
つまり、連鎖端子280においてキャリア81の連結部282と突出底板22との境界部分に凹溝83を形成することで、連結部282と突出底板222との間の強度が低下することが懸念される。
【0077】
しかしながら、本実施形態によると、補強部285によって、キャリア81の連結部282から突出底板222の間の強度を向上させているから、連鎖端子280を搬送する場合などに、他の部材が接触するなどして雌端子210が連鎖端子280から脱落することを抑制することができる。
【0078】
<変形例>
次に、実施形態3の変形例1について
図27から
図32を参照して説明する。
本変形例は、実施形態3の補強部285の形状を変更したものであって、実施形態3と同様に、キャリア81の連結部382と雌端子310の接続筒部320における突出底板322との間を補強するものである。なお、実施形態1と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0079】
変形例は、突出底板322の前端よりもやや後方の位置からキャリア81の連結部382の間の部分が、
図31に示すように、断面円弧状に形成されることで補強部385を構成している。詳しくは、補強部385は、
図27から
図31に示すように、突出底板322の前端から連結部382に向かうほど左右方向の中央部が下方に向かって凹むように円弧状に反った形態とされている。
【0080】
したがって、実施形態3と同様に、補強部385によってキャリア81の連結部382から突出底板322の前端部分の強度を向上させることができるようになっている。
そして、連結部382と突出底板322との境界部分である凹溝83の位置を切断刃Cによって切断すると、
図32に示すように、雌端子310の突出底板322の前端部には、円弧状のキャリア切断部328が形成されるようになっている。
【0081】
つまり、連鎖端子380においてキャリア81の連結部382と突出底板322との境界部分に凹溝83を形成することにより、連結部382と突出底板222との間の強度が低下するものの、補強部385によって、キャリア81の連結部382から突出底板322の前端部の強度を向上させているから、雌端子210が連鎖端子280から脱落することを抑制することができる。
【0082】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では、雌端子10,210,310の突出底板22,122,222,322にキャリア切断部28,328および突起29が形成された構成とした。しかしながら、これに限らず、雄端子の底板にキャリア切断部および突起が形成される構成にしてもよい。
【0083】
(2)上記実施形態では、接続筒部20,120,220,320を正面視略矩形の角筒状に構成にした。しかしながら、これに限らず、接続筒部が底板を有していれば、接続筒部を三角や五角形以上の角筒状や円筒状に構成してもよい。
(4)上記実施形態では、弾性片26が側板24に設けられた構成とした。しかしながら、これに限らず、弾性片が底板や天井板に設けられた構成にしてもよい。
【0084】
(5)上記実施形態3では、キャリア81の連結部82と突出底板22とに亘ってリブ状の補強部285が左右方向中央部に設けられた構成とし、上記の変形例では、キャリア81の連結部382および突出底板322の前端部を下方に反らせて補強部385を構成した。しかしながら、これに限らず、キャリアの連結部と突出底板とに亘ってリブ状の補強部を複数に構成してもよく、連結部および突出底板の前端部を上方に反らせて補強部を構成してもよい。