【実施例】
【0028】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0029】
(実施例1)
銅品位99質量%の板状の粗銅をアノードとし、ステンレス板をカソードとして、以下の条件により電解液中で電解分解を行った。
・アノードの粗銅中のNi濃度(Ni品位):900〜2000ppm
・電解液の組成:銅40〜60g/L、ニッケル14.1〜14.6g/L、硫酸:120〜220g/L、砒素:3〜10g/L、アンチモン:0.1〜0.5g/L、ビスマス:0.1〜0.5g/L
・電流密度:322A/dm
2
【0030】
電解液中のNi濃度はモニターしておき、電解中は常にNi濃度が14.5g/L以下に保持されるように制御した。具体的には、必要なときに電解液を取り出して、実施形態でも述べた冷凍結晶法でNi成分を除去し、Ni濃度が減少した電解液を再び使用することで、電解液のNi濃度が14.5g/L以下に保持されるように制御した。
【0031】
また、電解によってカソードに生成した電気銅を採取し、下記式に基づいて電流効率(%)を算出した。
電流効率(%)=(生成された電気銅量/理論電気銅量)×100
【0032】
(実施例2)
銅品位99質量%の板状の粗銅をアノードとし、ステンレス板をカソードとして、以下の条件により電解液中で電解分解を行った。
・アノードの粗銅中のNi濃度(Ni品位):1000〜2100ppm
・電解液の組成:銅40〜60g/L、ニッケル13.6〜14.0g/L、硫酸:120〜220g/L、砒素:3〜10g/L、アンチモン:0.1〜0.5g/L、ビスマス:0.1〜0.5g/L
・電流密度:322A/dm
2
【0033】
電解液中のNi濃度はモニターしておき、電解中は常にNi濃度が14.0g/L以下に保持されるように制御した。具体的には、必要なときに電解液を取り出して、実施形態でも述べた冷凍結晶法でNi成分を除去し、Ni濃度が減少した電解液を再び使用することで、電解液のNi濃度が14.0g/L以下に保持されるように制御した。
また、実施例1と同様にして電流効率を算出した。
【0034】
(実施例3)
銅品位99質量%の板状の粗銅をアノードとし、ステンレス板をカソードとして、以下の条件により電解液中で電解分解を行った。
・アノードの粗銅中のNi濃度(Ni品位):1100〜1900ppm
・電解液の組成:銅40〜60g/L、ニッケル13.2〜13.5g/L、硫酸:120〜220g/L、砒素:3〜10g/L、アンチモン:0.1〜0.5g/L、ビスマス:0.1〜0.5g/L
・電流密度:322A/dm
2
【0035】
電解液中のNi濃度はモニターしておき、電解中は常にNi濃度が13.4g/L以下に保持されるように制御した。具体的には、必要なときに電解液を取り出して、実施形態でも述べた冷凍結晶法でNi成分を除去し、Ni濃度が減少した電解液を再び使用することで、電解液のNi濃度が13.5g/L以下に保持されるように制御した。
また、実施例1と同様にして電流効率を算出した。
【0036】
(実施例4)
銅品位99質量%の板状の粗銅をアノードとし、ステンレス板をカソードとして、以下の条件により電解液中で電解分解を行った。
・アノードの粗銅中のNi濃度(Ni品位):1100〜1900ppm
・電解液の組成:銅40〜60g/L、ニッケル11.0〜12.0g/L、硫酸:120〜220g/L、砒素:3〜10g/L、アンチモン:0.1〜0.5g/L、ビスマス:0.1〜0.5g/L
・電流密度:322A/dm
2
【0037】
電解液中のNi濃度はモニターしておき、電解中は常にNi濃度が12.0g/L以下に保持されるように制御した。具体的には、必要なときに電解液を取り出して、実施形態でも述べた冷凍結晶法でNi成分を除去し、Ni濃度が減少した電解液を再び使用することで、電解液のNi濃度が12.0g/L以下に保持されるように制御した。
また、実施例1と同様にして電流効率を算出した。
【0038】
(比較例1)
銅品位99質量%の板状の粗銅をアノードとし、ステンレス板をカソードとして、以下の条件により電解液中で電解分解を行った。
・アノードの粗銅中のNi濃度(Ni品位):1400〜2400ppm
・電解液の組成:銅40〜60g/L、ニッケル15.5〜17.0g/L、硫酸:120〜220g/L、砒素:3〜10g/L、アンチモン:0.1〜0.5g/L、ビスマス:0.1〜0.5g/L
・電流密度:322A/dm
2
【0039】
電解液中のNi濃度はモニターしておき、電解中は常にNi濃度が15.5g/L以上に保持されるように制御した。
また、実施例1と同様にして電流効率を算出した。
【0040】
実施例1〜4及び比較例1の評価結果を
図1〜5に示す。
図1は実施例1に係る電解液中のNi濃度14.1〜14.6g/Lにおける電流効率−アノード中Ni品位のグラフである。
図2は実施例2に係る電解液中のNi濃度13.6〜14.0g/Lにおける電流効率−アノード中Ni品位のグラフである。
図3は実施例3に係る電解液中のNi濃度13.2〜13.5g/Lにおける電流効率−アノード中Ni品位のグラフである。
図4は実施例4に係る電解液中のNi濃度11.0〜12.0g/Lにおける電流効率−アノード中Ni品位のグラフである。
図5は比較例1に係る電解液中のNi濃度15.5〜17.0g/Lにおける電流効率−アノード中Ni品位のグラフである。
このように、実施例1〜3はNiを含む粗銅をアノードとして用い、電解液中のNi濃度を15g/L以下に保持しながら電解を行うことで、アノード中Ni品位が1800ppm以上と高くても電流効率がいずれも96%以上と良好であった。
また、実施例4はNiを含む粗銅をアノードとして用い、電解液中のNi濃度を12g/L以下に保持しながら電解を行うことで、アノード中Ni品位が1800ppm以上と高くても電流効率がいずれも97%以上と良好であった。
一方、比較例1はNiを含む粗銅をアノードとして用い、電解液中のNi濃度を15g/Lを超えて保持しながら電解を行ったため、特にアノード中Ni品位が1800ppm以上と高い場合、電流効率が96%を下回った。