(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る衝突危険通知システムの全体構成の一例を示す説明図である。本実施形態の衝突危険通知システムは、道路90を横断する移動体としての歩行者20と道路90を走行している車両30,40との衝突の危険を通知することにより、横断中の歩行者の危険回避を行うものである。特に、本実施形態の衝突危険通知システムは、交通事故死亡者数が最も多い高齢者が道路90を渡りきれずに反対車線(横断終了側車線)92の車両40に衝突する危険の回避に効果がある。
【0013】
なお、本実施形態では、道路を横断する危険回避対象の移動体が高齢者などの歩行者20である場合について説明するが、本発明は、歩行者以外の移動体(例えば、自転車や車椅子)である場合にも適用可能である。また、本実施形態では歩行者20が1人、車両30,40が2台の場合について説明するが、本発明は、歩行者が2人以上の場合にも適用可能であり、車両が1台又は3台以上の場合にも適用可能であり、歩行者及び車両の数に制限されない。また、車両30,40は、例えば乗用車、トラック、バスなどの自動車であり、本発明は車両の種類に制限されない。
【0014】
図1において、本実施形態の衝突危険通知システムは、道路90を横断する歩行者20と道路90を走行している車両30,40との衝突の危険を通知する衝突危険通知装置としての衝突監視サーバ10を備えている。本実施形態の衝突監視サーバ10は、例えば、移動通信網15の基地局16に設けられ、歩行者20の通信端末装置21や車両30,40の通信端末装置31,41との間で基地局16を介して送受信される各種のデータ処理を行うことができるMEC(Multi-access Edge Computing)装置である。MEC装置からなる衝突監視サーバ10は、基地局16と移動通信網15のコアネットワークとの間のノード又はコアネットワークの外側に設けてもよい。
【0015】
基地局16は、一つ又は複数のセル(セクタ、セクタセルとも呼ばれる。)を形成する。セルは地上又は海上に2次元的に形成してもよいし、上空から地上又は海上に向けて3次元的に形成してもよい。セルは、マクロセル、スモールセル、フェムトセル、ピコセル、大セル等であってもよい。複数のセルは、複二次元的に又は三次元的に隣り合うように分布するセルラー構造を構成してもよいし、階層的に一部又は全部が重なり合った階層セル構造を構成してもよい。基地局16は、マクロセル基地局、スモールセル基地局、フェムトセル基地局、ピコセル基地局、大セル基地局、地上等に固定設置された固定基地局、地上、海上、上空などを移動可能な移動型の基地局等であってもよい。基地局16は、eNodeB(evolved Node B:eNB)、gNodeB(gNB)、en−NodeB(en−gNB)、アクセスポイント等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。
【0016】
歩行者20の通信端末装置21や車両30,40の通信端末装置31,41は、移動通信サービスの加入者として使用可能なユーザ装置(以下「UE」という。)である。UE21,31,41は、ユーザ端末、端末、端末装置、移動局、移動機等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。歩行者20のUE21は、歩行者20が携帯した状態で使用され、歩行者20といっしょに移動する。また、車両30,40のUE31,41はそれぞれ、車両30,40の中で利用者が携帯した状態で使用する装置でもよいし、車両30,40に組み込んで設置された装置(例えばナビゲーション装置の一部として組み込まれた装置)であってもよい。
【0017】
歩行者20のUE21は、基地局16を介して衝突監視サーバ10と通信可能であり、衝突監視サーバ10に対して歩行情報を定期的に(例えば周期的に)又は不定期に送信する。歩行情報は、例えば、歩行者20(UE21)の現在位置P2を示す位置情報と、歩行者20(UE21)の平均歩行速度(平均移動速度)V2と、利用者IDとを含む。歩行者20の平均歩行速度V2は、例えば、UE21に記録されている移動履歴情報における位置情報の時間変化(移動距離及び移動時間)とに基づいて算出することができる。ここで、歩行者20(UE21)の「速度」は、歩行者20(UE21)の移動の方向と速さ(=速度の絶対値、大きさ)で表されるベクトル量である。
【0018】
歩行者20(UE21)の現在位置P2を示す位置情報は、例えば、UE21に設けたGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機の出力(測位結果)に基づいて算出することができる。また、UE21は、GNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つを備え、その出力に基づいて、歩行者20のGNSS受信機による現在位置の測定精度が低い場合でも歩行者20の移動経路を算出して歩行者20の現在位置を精度よく推定したり、歩行者20の姿勢や向いている方位を推定したりしてもよい。この推定結果は、衝突監視サーバ10に送信する歩行情報に含めてもよい。
【0019】
歩行者20のUE21から衝突監視サーバ10への歩行情報の送信頻度は、歩行者20と車両30,40との危険性の程度に応じて変化させてもよい。例えば、歩行者20と車両30,40と衝突の危険性が低い平時においては歩行情報の送信頻度の低めに設定し、車両30,40が歩行者20と衝突する危険性が高い危険エリアに入った準危険時又は衝突する危険性がより高い危険時にときに、歩行情報の送信頻度を平時よりも高めに設定してもよい。
【0020】
車両30,40のUE31,41はそれぞれ、基地局16を介して衝突監視サーバ10と通信可能であり、衝突監視サーバ10に対して車両情報を定期的に又は不定期に送信する。車両情報は、例えば、車両30,40(UE31,41)の現在位置P3,P4を示す位置情報と、車両30,40(UE31,41)の速度V3,V4と、車両識別情報(車両ID)とを含む。車両30,40の速度V3,V4は、例えば、車両30,40の駆動制御装置から取得することができる。車両30,40(UE31,41)の速度V3,V4は、UE31,41それぞれに記録されている移動履歴情報における位置情報の時間変化(移動距離及び移動時間)とに基づいて算出してもよい。ここで、車両30,40の「速度」は、車両30,40の移動の方向と速さ(=速度の絶対値、大きさ)で表されるベクトル量である。
【0021】
車両30,40のUE31,41から衝突監視サーバ10への車両情報の送信頻度は、歩行者20と車両30,40との危険性の程度に応じて変化させてもよい。例えば、歩行者20と車両30,40と衝突の危険性が低い平時においては車両情報の送信頻度の低めに設定し、車両30,40が歩行者20と衝突する危険性が高い危険エリアに入った準危険時又は衝突する危険性がより高くなった危険時にときに、車両情報の送信頻度を平時よりも高めに設定してもよい。
【0022】
また、衝突危険通知システムは、道路90の位置、形状、幅W、車線91,92、信号設置位置、横断歩道の位置中央分離帯の有無、路側のガードレールの有無などの道路に関する情報を含む地図情報を管理する地図サーバ11を備えている。
図1の例では、地図サーバ11は移動通信網15に設けているが、基地局16に設けられたMEC装置、又は基地局16と移動通信網15のコアネットワークとの間のノードに設けられたMEC装置で構成してもよい。また、地図サーバ11は衝突監視サーバ10と一体構成してもよい。
【0023】
図1において、道路90を横断しようとしている歩行者20と道路90を走行している車両(以下「接近車両」ともいう。)30,40が衝突する危険性は、歩行者20及び車両30,40だけでなく車両30,40が走行している車線91,92によっても異なる。例えば、
図1において、歩行者20の横断開始側の車両30は、道路90の横断開始位置に近い横断開始側車線(以下「手前車線」ともいう。)91において歩行者20の横断予測エリア93に図中右方向から接近している。また、歩行者20の横断終了側の車両40は、道路90の横断終了位置(図中の破線で示した歩行者20の位置)に近い横断開始側車線(以下「反対車線」ともいう。)92において歩行者20の横断予測エリア93に図中左方向から接近している。そして、道路90の手前側の歩道にいる歩行者20の横断開始タイミングにおいて各車両30,40の横断予測エリア93からの距離はほぼ同じである。歩行者20が道路90の中央部に到着するまでの時間帯に、手前車線91の車両30は横断予測エリア93に到達せず車両30と歩行者20との衝突は発生しないが、歩行者20が横断予測エリア93の中央部から向こう側の歩道に到達して横断し終わるまでの時間帯に、反対車線92の車両40が横断予測エリア93に到達して車両40と歩行者20との衝突は発生するおそれがある。この車両40と歩行者20との衝突は、高齢者のように歩行者20の歩行速度が遅い場合に発生しやすい。このように歩行者20と道路90を走行している車両30,40とが衝突する危険性が、車両30,40が走行している車線91,92によっても異なる場合がある。
【0024】
上記歩行者20と車両30,40との衝突の危険性が車線91,92によっても異なる場合があることを考慮して車線にかかわらず横断予測エリア93に接近している車両に対して一律に衝突の危険を通知することが考えられるが、この場合は、実際に衝突しない車両に対しても危険が無駄に通知されるため、不要な危険通知による通信やデータ処理等の負荷が増大してしまう。特に、横断予測エリア93に接近している車両の数が多い道路では、不要な危険通知による通信やデータ処理等の負荷が爆発的に増大してしまう。
【0025】
そこで、本実施形態では、以下に示すように、道路90を横断しようとしている歩行者20を検知したとき、歩行者20と接近車両30、40との衝突を精度よく予測し、接近車両40が歩行者20に衝突すると予測された場合は衝突の危険を通知し、接近車両30が歩行者20に衝突しないと予測された場合は衝突の危険を通知しないように、通知を制御している。
【0026】
図2は、本実施形態に係る衝突監視サーバ10の主要な機能の一例を示すブロック図である。
図2において、衝突監視サーバ10は、危険通知部100と記憶部110と通知制御部120とを備える。危険通知部100は、基地局16を介して、接近車両30,40のUE31,41に、又は、接近車両30,40のUE31,41及び歩行者20のUE21に、衝突の危険の注意又は警報を知らせるように危険を通知することができる。この危険通知は、衝突の危険の注意喚起又は警報を出力させる要求であってもよく、通知の方法を指定する方法、メッセージの内容などを含んでもよい。記憶部110は、道路90の位置、形状、幅W、車線91,92、交差点、信号設置位置、横断歩道の位置などの道路に関する情報を含む地図情報、並びに、危険通知制御に必要な他のデータを記憶する。記憶部110に記憶する地図情報は、地図サーバ11から取得することができる。
【0027】
通知制御部120は、車両情報取得部121と、移動体情報取得部としての歩行者情報取得部122と、横断移動体検知部としての横断歩行者検知部123と、接近車両特定部124と、衝突予測判断部125と、制御部126とを備える。
車両情報取得部121は、道路90を走行している一又は複数の車両のUEから基地局16を介して、当該車両の現在位置及び移動速度を含む車両情報を受信して取得する。
歩行者情報取得部122は、道路90を横断しようとしている歩行者20のUE21から基地局16を介して、歩行者20の現在位置及び移動速度を含む歩行者情報(移動体情報)を受信して取得する。歩行者情報は、利用者識別情報(利用者ID)、UE21に設けられたGNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つの出力の情報、歩行者20の移動履歴情報などを含んでもよい。
【0028】
横断歩行者検知部123は、道路90を横断しようとしている歩行者20を検知する。この検知は、例えば、歩行者20のUE21から取得した歩行者20の現在位置に基づいて行うことができる。また、この検知には、UE21に設けられたGNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つの出力の情報を用いたり、歩行者20の移動履歴情報を用いたりしてもよい。
【0029】
接近車両特定部124は、道路90を走行している車両30,40の現在位置及び移動速度を含む車両情報とに基づいて、歩行者20が横断開始から横断終了までに通過すると予測される横断予測エリア93に接近している接近車両30,40を特定する。例えば、接近車両特定部124は、道路90の横断開始位置に近い手前車線(横断開始側車線)91において歩行者20の横断予測エリア93に接近している横断開始側の接近車両30と、道路90の横断開始位置から遠い反対車線(横断終了側車線)92において歩行者20の横断予測エリア93に接近している横断終了側の接近車両40とを特定する。なお、図示の例では、横断予測エリア93は道路90の車両走行方向に直交しているが、車両走行方向に対して斜め方向に傾斜してもよい。
【0030】
横断予測エリア93は、例えば、道路90を横断しようとしている歩行者20の現在位置及び平均歩行速度に基づいて決定することができる。横断予測エリア93の決定には、GNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つの出力の情報を用いたり、歩行者20の移動履歴情報を用いたりしてもよい。横断予測エリア93は、車両進行方向に幅を有してもよい。
【0031】
衝突予測判断部125は、接近車両30,40が横断予測エリア93において歩行者20に衝突するか否かを予測する。例えば、衝突予測判断部125は、横断開始側の接近車両30及び横断終了側の接近車両40それぞれについて、接近車両30,40が歩行者20に衝突するか否かを予測し、歩行者20と接近車両30,40との衝突の危険を通知するか否かを判断する。
【0032】
制御部126は、衝突予測判断部125の予測判断結果に基づいて危険の通知を行うように危険通知部100を制御する。例えば、制御部126は、接近車両30,40のうち、反対車線92の接近車両40が歩行者20に衝突すると予測された場合は衝突の危険を、その接近車両40のUE41に、又は、接近車両40のUE41及び歩行者20のUE21に通知し、手前車線91の接近車両30が歩行者20に衝突しないと予測された場合は、その接近車両30のUE41及び歩行者20のUE21のいずれにも衝突の危険を通知しないように、危険通知部100を制御する。
【0033】
図3は、本実施形態に係る平時及び準危険時における衝突監視サーバ10の処理の一例を示すシーケンス図である。
図4は、平時における道路90を横断する歩行者20と接近車両40との位置関係の一例を示す説明図である。
図5は、準危険時における道路90を横断する歩行者20と接近車両40との位置関係の一例を示す説明図である。なお、
図4及び
図5では、歩行者20との衝突がより発生しやすい反対車線92を走行している接近車両40について示しているが、手前車線91を走行している接近車両30についても同様に危険通知の制御を行うことができる。
【0034】
図3の平時の制御モード(
図4参照)では、まず、歩行者20がUE21を操作して衝突監視アプリケーション(例えば、高齢者に特化したアプリケーション)を起動すると(S101)、衝突監視サーバ10は、歩行者20のUE21から基地局16を介して、起動したアプリケーション情報と歩行者20の加入者情報としての利用者識別情報(利用者ID)とUE21の現在位置P2の位置情報を受信する(S102)。衝突監視サーバ10は、UE21から受信した情報に基づいて、歩行者20の種別を判断する(S103)。例えば、衝突監視サーバ10は、UE21から受信したアプリケーション情報と利用者識別情報に基づいて、歩行者20が高齢者であるか否かを判断する(S103)。
【0035】
次に、衝突監視サーバ10は、UE21から受信した現在位置P2の位置情報に基づいて、歩行者20の位置するエリアについて、道路90の位置、形状、幅W、車線91,92、交差点、信号設置位置、横断歩道の位置、中央分離帯の有無、路側のガードレールの有無などの道路に関する情報を含む地図情報を、地図サーバ11から受信する(S104)。
【0036】
更に、衝突監視サーバ10は、歩行者20のUE21から基地局16を介して歩行者情報を受信する(S105)。歩行者情報は、歩行者20の現在位置P2の位置情報と、平均歩行速度V2と、利用者識別情報(利用者ID)とを含む。
【0037】
なお、歩行者情報は、UE21に設けられたGNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つの出力の情報、歩行者20の移動履歴情報などを含んでもよい。GNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの出力は、道路(車道)90に対する歩行者20の向きや、歩行者20が道路90のどちら側(の歩道)でどの方向を向いているか等の判断に用いることができる。また、移動履歴情報は、例えば、歩行者20の位置情報と地図情報とを照合し、歩行者20がどの道路を歩いてきたかをトラッキングした情報である。GNSS受信情報による位置精度が数十mでありGNSS測位データ単体では道路(車道)90の近傍エリアしか判定できない場合でも、前記移動履歴情報を用いることにより、道路(車道)90のどちら側に歩行者20が存在しているかを判定できる。
【0038】
また、歩行者情報は、歩行者20が道路90を横断しようとしていることを示す横断予測情報と、歩行者20が道路90のどちら側から横断しようとしているかを示す横断開始位置関連情報とを含んでもよい。横断予測情報及び横断開始位置関連情報は、前述のGNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つの出力の情報であってもよいし、その出力に基づいて生成したものであってもよいし、歩行者20の移動履歴情報に基づいて生成されたものであってもよい。例えば、横断開始位置関連情報は、地図情報と道路横断前までの歩行者20の歩行の軌跡の情報とを組み合わせて推定してもよい。地図情報と道路横断前までの歩行の軌跡とを組み合わせることで、GNSS受信機による測位精度やジャイロセンサの分解能がそこまで高くなくても、歩行者が道路のどちら側から横断を開始しているかを推定することができる。
【0039】
次に、衝突監視サーバ10は、道路90を横断しようとしている歩行者20の種別(例えば高齢者)を判断した後、その歩行者20の種別(例えば高齢者)に応じて、地図サーバ11から受信した地図情報と歩行者20のUE21から受信した歩行者情報とに基づいて危険エリアを特定する(S106)。例えば、歩行者20が高齢者の場合、高齢者にとって車両との衝突が発生しやすいと推定される危険エリアを特定する。なお、すでに特定されている危険エリアの情報が衝突監視サーバ10の記憶部に記憶されている場合は、その特定エリアを更新する。
【0040】
上記危険エリアの特定には、地図情報に含まれる信号設置位置、横断歩道の位置、中央分離帯の有無、路側のガードレールの有無などの道路に関する情報を用いてもよい。例えば、道路90に歩行者用の信号が設置されているエリア、横断歩道があるエリアなどでは、歩行者20が安全に横断することができるので、危険エリアではないと判断してもよい。また、道路90に中央分離帯があるエリア、路側のガードレールがあるエリアなどにおいては、その道路90を歩行者20は横断しようとしない可能性が高いので、危険エリアではないと判断してもよい。
【0041】
次に、衝突監視サーバ10は、歩行者20が危険エリアにいるか否か(歩行者20が準危険状態にあるか否か)を判断する(S107)。歩行者20が危険エリアにいる(歩行者20が準危険状態にある)場合(S107でYES)、衝突監視サーバ10は、歩行者20が危険エリア内にいること(歩行者20が準危険状態にあること)を、歩行者20のUE21に通知し(S108)、準危険時の制御モードに移る。
【0042】
一方、歩行者20が危険エリアにいない(歩行者20が準危険状態にない)場合(S107でNO)、衝突監視サーバ10は、上記ステップS104〜S107を低頻度(例えば、数十秒〜数分に1回)で繰り返し実行する。
【0043】
なお、歩行者20のUE21に地図情報を記憶しておき、
図3の平時における危険エリアの特定及び歩行者20が危険エリアにいる否かの判断を歩行者20のUE21で行うようにしてもよい。
【0044】
図3の準危険時の制御モード(
図4参照)では、まず、衝突監視サーバ10は、歩行者20のUE21から基地局16を介して歩行者情報を受信する(S201)とともに、歩行者20の周辺エリアを走行している一台又は複数大の車両のUEから基地局16を介して車両情報を受信する(S202)。なお、
図3では、図示の都合上、車両30,40のUE31,41のみから車両情報を受信するように図示しているが、周辺エリアを走行している車両30,40以外の車両のUEからも車両情報を受信する。
【0045】
上記ステップS201で歩行者20のUE21から受信する歩行者情報は、歩行者20の現在位置P2’の位置情報と、平均歩行速度V2’と、利用者識別情報(利用者ID)とを含む。また、前述のように、歩行者情報は、UE21に設けられたGNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つの出力の情報、歩行者20の移動履歴情報などを含んでもよい。また、歩行者情報は、歩行者20が道路90を横断しようとしていることを示す横断予測情報と、歩行者20が道路90のどちら側から横断しようとしているかを示す横断開始位置関連情報とを含んでもよい。
【0046】
また、上記ステップS202で各車両から受信する車両情報は、接近車両30(UE31),40(UE41)の現在位置P3’,P4’を示す位置情報、速度V3’,V4’及び車両識別情報(車両ID)を含む。
【0047】
次に、衝突監視サーバ10は、地図サーバ11から受信した地図情報と、歩行者20のUE21から受信した歩行者情報とに基づいて、歩行者20が横断開始から横断終了までに通過すると予測される横断予測エリア93を予測する(S203)。すでに予測されている特定されている横断予測エリア93の情報が衝突監視サーバ10の記憶部に記憶されている場合は、その横断予測エリア93を更新する。
【0048】
更に、衝突監視サーバ10は、地図サーバ11から受信した地図情報と、各車両のUEから受信した車両情報と、上記横断予測エリア93の情報とに基づいて、各車両の進路を予測し、歩行者20の横断予測エリア93に接近している接近車両を特定する(S204)。本例では、道路90の横断開始位置に近い手前車線(横断開始側車線)91を走行して右側から横断予測エリア93に接近している横断開始側の車両30と、道路90の横断開始位置から遠い反対車線(横断終了側車線)92を走行して図中左側から横断予測エリア93に接近している横断終了側の車両40(
図4,5参照)を、接近車両として特定している。なお、すでに特定されている接近車両の情報が衝突監視サーバ10の記憶部に記憶されている場合は、その接近車両の情報を更新する。
【0049】
次に、衝突監視サーバ10は、接近車両30,40が歩行者20に衝突するか否かを予測し、所定の注意喚起条件に基づいて、歩行者20と接近車両30,40との衝突の危険について接近車両30,40に注意喚起を通知するか否かを判断する(S205)。
【0050】
また、注意喚起条件は、例えば、接近車両30,40が歩行者20衝突すると予測された場合の接近車両30,40と横断予測エリア93との距離D3’,D4’が所定の第1距離閾値Thd1(例えば100m)以下であるという条件である。なお、注意喚起条件は、接近車両30,40が歩行者20衝突すると予測された場合の接近車両30,40が横断予測エリア93に到達するまでの予測時間T3’,T4’が所定の第1時間閾値Tht1(例えば20秒)以下であるという条件であってもよい。
【0051】
また、準危険時における第1距離閾値Thd1及び第1時間閾値Tht1はそれぞれ、接近車両30,40が走行している車線が手前車線91であるか反対車線92であるかによって互いに異なる値に設定してもよい。すなわち、準危険時における第1距離閾値Thd1及び第1時間閾値Tht1はそれぞれ、横断予測エリア93に接近している接近車両が横断開始側の手前車線91の接近車両30であるか横断終了側の反対車線92の接近車両40であるかによって変えてもよい。例えば、反対車線92の接近車両40に対する第1距離閾値Thd1を、手前車線91の接近車両30に対する第1距離閾値Thd1よりも大きくする。また、反対車線92の接近車両40に対する第1時間閾値Tht1を、手前車線91の接近車両30に対する第1時間閾値Thd1よりも大きくする。これにより、横断終了側の反対車線92の接近車両40に対して、より遠い距離から注意喚起を通知したり、より早いタイミングに注意喚起を通知したりすることができる。
【0052】
次に、衝突監視サーバ10は、上記注意喚起条件(例えば、D3’,D4’≦Thd1、又は、T3’,T4’≦Tht1)を満たしていると判断した場合、すなわち、歩行者20と接近車両30,40との衝突の危険について接近車両30,40に注意喚起を通知すると判断した場合(S205でYES)、基地局16を介して接近車両30,40のUE31,41に注意喚起の情報を送信する(S206)。注意喚起の情報は、衝突の危険の注意喚起を出力させる要求であってもよく、通知の方法を指定する方法、メッセージの内容などを含んでもよい。接近車両30,40は、衝突監視サーバ10から受信した注意喚起の情報に基づいて、衝突危険の注意喚起のメッセージを画像表示若しくは音声出力又はアラーム音(鳴動)によって出力する(S207)。なお、出力する注意喚起のメッセージは、車両30,40又はUE31,41内に予め記憶しておいたメッセージでもよいし、衝突監視サーバ10から受信したメッセージでもよい。
【0053】
なお、衝突監視サーバ10は、基地局16を介して歩行者20のUE21に注意喚起の情報を送信してもよい。また、歩行者20のUE21及び接近車両30,40のUE31,41は、基地局16を介さずに互いに直接通信可能な通信機能を有する場合、接近車両30,40のUE31,41は、衝突監視サーバ10から注意喚起の情報をしたとき、その注意喚起の情報を自車の識別情報(車両ID)とともに歩行者20のUE21に送信してもよい。歩行者20のUE21は、注意喚起の情報を受信すると、その受信した注意喚起の情報と、過去の一定時間内に同一車両から受信した注意喚起の情報とが重複していないかチェックし、重複している場合は2回目の注意喚起の情報は破棄して無視し、重複していない場合のみ今回の受信した注意喚起の情報に基づいて衝突危険の注意喚起のメッセージを画像表示若しくは音声出力又はアラーム音(鳴動)によって出力する。
【0054】
なお、出力する注意喚起のメッセージは、UE21,31,41内に予め記憶しておいたメッセージでもよいし、衝突監視サーバ10から受信したメッセージでもよい。また、注意喚起のメッセージは、道路90に対する歩行者20が向いている方向、歩行者20からみた接近車両30,40の方向、接近車両30,40からみた歩行者20の方向などに応じて変えてもよい。
【0055】
上記ステップS205において、上記注意喚起条件を満たしていない場合、すなわち、注意喚起を通知しないと判断した場合(S205でNO)、衝突監視サーバ10は、上記ステップS201〜S205を、平時よりも高い高頻度(例えば、数秒〜0.1秒に1回)で繰り返し実行する。こうすることで、無線通信機能が常時起きている状態(例えば、LTEにおいてはRRC Connected状態)、すなわち、スリープ時から起き上がるためにかかる時間の考慮が不要となる応対(例えば、LTEにおいてはPaging契機や端末からのデータ通信契機などによるRRC Idle状態からRRC Connected状態に遷移する時間)となるため、準危険時におけるS206の注意喚起の伝達遅延を最小限に抑制する効果を期待できる。
【0056】
なお、
図3の準危険時の衝突監視サーバ10の処理において、接近車両30,40が歩行者20に衝突するか否かの予測、接近車両30,40に注意喚起を通知するか否かの判断及び注意喚起のメッセージの種別は、次のように接近車両30,40が走行している車線91,92に応じて、すなわち、接近車両30,40が歩行者20から見て右から接近しているか左から接近しているかに応じて異ならせてもよい。
【0057】
例えば、接近車両40が反対車線92を走行して歩行者20の左から到来する場合、衝突監視サーバ10は、歩行者20の平均歩行速度V2’と横断道路の幅Wの情報から、歩行者20が横断開始から反対車線92を渡り切る時間W/V2’[秒]を算出する。次に、衝突監視サーバ10は、接近車両40と歩行者20(横断予測エリア93)との間の相対距離L4’と接近車両40の速度情報V4’から、上記W/V2’[秒]以内に接近車両40が歩行者20と衝突する危険性があるかを予測し、衝突する危険性がある場合((L4’/V4’)≦(W/V2’))は、注意喚起1を発動する。
【0058】
また、接近車両30が手前車線91を走行して歩行者20の右から到来する場合、衝突監視サーバ10は、歩行者20の平均歩行速度V2’と横断道路の幅Wの情報から、歩行者20が横断開始から手前車線91を渡り切る時間W/(2×V2’)[秒]を算出する。次に、衝突監視サーバ10は、接近車両30と歩行者20(横断予測エリア93)との間の相対距離L3と接近車両30の速度情報V3’から、上記W/(2×V2’)[秒]以内に接近車両40が歩行者20と衝突する危険性があるかを予測し、衝突する危険性がある場合((L3’/V3’)≦W/(2×V2’))は、注意喚起2を発動し、接近車両40が到達する前に歩行者20が手前車線91を渡り切る場合((L3’/V3’)>W/(2×V2’))は、注意喚起3を発動する。
【0059】
上記3種類の注意喚起1〜注意喚起3のメッセージは、例えば,次の(1)〜(3)のようなメッセージであってもよい。
(1)注意喚起1:
接近車両40向けメッセージ:「右側から横断中の歩行者あり」
歩行者20向けメッセージ:「左から車の到来あり」
(2)注意喚起2:
接近車両30向け:「左側から横断中の歩行者あり」
歩行者20向け:「右から車の到来あり」
(3)注意喚起3:
接近車両30向け:「直前に横断した歩行者あり」
【0060】
図6は、本実施形態に係る危険時における衝突監視サーバ10の処理の一例を示すシーケンス図である。
図7は、危険時における道路90を横断する歩行者20と接近車両40との位置関係の一例を示す説明図である。
図8は、危険時における道路90を横断する歩行者20と接近車両40との位置関係の他の例を示す説明図である。
図6〜
図8は、歩行者20と接近車両40とが衝突する危険性が前述の準危険時よりも高い危険時の場合の例である。
図8の例は、交差点94において歩行者20が横断している場合の例である。なお、
図7及び
図8では、歩行者20との衝突がより発生しやすい反対車線92を走行している接近車両40について示しているが、手前車線91を走行している接近車両30についても同様に警報通知の制御を行うことができる。
【0061】
図6の危険時の制御モード(
図7及び
図8参照)では、まず、衝突監視サーバ10は、歩行者20のUE21から基地局16を介して歩行者情報を受信する(S301)とともに、歩行者20の横断予測エリア93に接近している反対車線92の接近車両30,40のUE41から基地局16を介して車両情報を受信する(S302)。
【0062】
上記ステップS301で歩行者20のUE21から受信する歩行者情報は、歩行者20の現在位置P2’’の位置情報と、平均歩行速度V2’’と、利用者識別情報(利用者ID)とを含む。歩行者情報は、UE21に設けられたGNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つの出力の情報、歩行者20の移動履歴情報などを含んでもよい。
【0063】
また、上記ステップS302で各車両から受信する車両情報は、接近車両30(UE31),40(UE41)の現在位置P3’’,P4’’を示す位置情報、速度V3’’,V4’’及び車両識別情報(車両ID)を含む。
【0064】
次に、衝突監視サーバ10は、地図サーバ11から受信した地図情報と、接近車両30,40のUE41から受信した車両情報と、上記横断予測エリア93の情報とに基づいて、接近車両30,40の進路を予測し(S303)、前記準危険時よりも高い確率で接近車両30,40が歩行者20に衝突するか否かを予測し、所定の警報条件に基づいて、歩行者20と接近車両30,40との衝突の危険について接近車両30,40に警報を通知するか否かを判断する(S304)。
【0065】
ここで、警報条件は、例えば、接近車両30,40と横断予測エリア93との距離D3,D4が所定の第2距離閾値Thd2(例えば、50m)以下であるという条件である。なお、警報条件は、接近車両30,40が歩行者20衝突すると予測された場合の接近車両30,40が横断予測エリア93に到達するまでの予測時間T3,T4が所定の第2時間閾値Tht2(例えば、10秒)以下であるという条件であってもよい。
【0066】
また、危険時における第2距離閾値Thd2及び第2時間閾値Tht2はそれぞれ、接近車両が走行している車線が手前車線91であるか反対車線92であるかによって互いに異なる値に設定してもよい。すなわち、危険時における第2距離閾値Thd2及び第2時間閾値Tht2はそれぞれ、横断予測エリア93に接近している接近車両が横断開始側の手前車線91の接近車両30であるか横断終了側の反対車線92の接近車両40であるかによって変えてもよい。例えば、反対車線92の接近車両40に対する第2距離閾値Thd2を、手前車線91の接近車両30に対する第2距離閾値Thd2よりも大きくする。また、反対車線92の接近車両40に対する第2時間閾値Tht2を、手前車線91の接近車両30に対する第2時間閾値Thd2よりも大きくする。これにより、横断終了側の反対車線92の接近車両40に対して、より遠い距離から警報情報を通知したり、より早いタイミングに警報情報を通知したりすることができる。
【0067】
また、危険時においては、歩行者20と接近車両30,40とが衝突する危険性が前述の準危険時よりも高まっているので、危険時の第2距離閾値Thd2及び第2時間閾値Tht2はそれぞれ、前述の準危険時における第1距離閾値Thd1及び第1時間閾値Tht1よりも小さい値に設定してもよい。
【0068】
次に、衝突監視サーバ10は、上記警報条件(例えば、D4’’≦Thd2、又は、T4’’≦Tht2)を満たしていると判断した場合、すなわち、歩行者20と接近車両30,40との衝突の危険について歩行者20及び接近車両30,40に警報を通知すると判断した場合(S304でYES)、基地局16を介して接近車両30,40のUE31,41及び歩行者20のUE21に警報情報を送信する(S305、S306)。警報情報は、衝突の危険の警報を出力させる要求であってもよく、通知の方法を指定する方法、メッセージの内容などを含んでもよい。
【0069】
接近車両30,40は、衝突監視サーバ10から受信した警報情報に基づいて、衝突危険の警報のメッセージを画像表示若しくは音声出力又はアラーム音(鳴動)によって出力する(S307)。また、歩行者20のUE21は、衝突監視サーバ10から警報情報を受信すると、その受信した警報情報と、過去の一定時間内に同一車両から受信した警報情報とが重複していないかチェックし(S308)、重複している場合は2回目の警報情報を破棄して無視し、重複していない場合のみ今回の受信した警報情報に基づいて、衝突危険の警報のメッセージを画像表示若しくは音声出力又はアラーム音(鳴動)によって出力する(S309)。
【0070】
なお、出力する警報のメッセージは、UE21,31,41又は車両30,40内に予め記憶しておいたメッセージでもよいし、衝突監視サーバ10から受信したメッセージでもよい。また、警報のメッセージは、道路90に対する歩行者20が向いている方向、歩行者20からみた接近車両30,40の方向、接近車両30,40からみた歩行者20の方向などに応じて変えてもよい。
【0071】
上記ステップS304において、上記警報条件を満たしていない場合、すなわち、警報を通知しないと判断した場合(S304でNO)、衝突監視サーバ10は、上記ステップS301〜S304を、平時よりも高い高頻度(例えば、数秒〜0.1秒に1回)で繰り返し実行する。こうすることで、無線通信機能が常時起きている状態(例えば、LTEにおいてはRRC Connected状態)、すなわち、スリープ時から起き上がるためにかかる時間の考慮が不要となる応対(例えば,LTEにおいては、Paging契機や端末からのデータ通信契機などによるRRC Idle状態からRRC Connected状態に遷移する時間)となるため、危険時におけるS306の警報情報の伝達遅延を最小限に抑制する効果を期待できる。
【0072】
なお、歩行者20のUE21及び接近車両30,40のUE31,41は、基地局16を介さずに互いに直接通信可能な通信機能を有する場合、接近車両30,40のUE31,41は、衝突監視サーバ10から警報情報を受信したとき、その警報情報を自車の識別情報(車両ID)とともに歩行者20のUE21に送信してもよい。
【0073】
また、
図6の危険時の衝突監視サーバ10の処理において、接近車両30,40が歩行者20に衝突するか否かの予測、接近車両30,40に警報を通知するか否かの判断及び警報のメッセージの種別は、次のように接近車両30,40が走行している車線91,92に応じて、すなわち、接近車両30,40が歩行者20から見て右から接近しているか左から接近しているかに応じて異ならせてもよい。
【0074】
例えば、接近車両40が反対車線92を走行して歩行者20の左から到来する場合、衝突監視サーバ10は、歩行者20の平均歩行速度V2’’と横断道路の幅Wの情報から、歩行者20が横断開始から反対車線92を渡り切る時間W/V2’’[秒]を算出する。次に、衝突監視サーバ10は、接近車両40と歩行者20(横断予測エリア93)との間の相対距離L4’’と接近車両40の速度情報V4’’から、上記W/V2’’[秒]以内に接近車両40が歩行者20と衝突する危険性があるかを予測し、衝突する危険性がある場合((L4’’/V4’’)≦(W/V2’’))は、警報1を発動する。
【0075】
また、接近車両30が手前車線91を走行して歩行者20の右から到来する場合、衝突監視サーバ10は、歩行者20の平均歩行速度V2’’と横断道路の幅Wの情報から、歩行者20が横断開始から手前車線91を渡り切る時間W/(2×V2’’)[秒]を算出する。次に、衝突監視サーバ10は、接近車両30と歩行者20(横断予測エリア93)との間の相対距離L3’’と接近車両30の速度情報V3’’から、上記W/(2×V2’’)[秒]以内に接近車両40が歩行者20と衝突する危険性があるかを予測し、衝突する危険性がある場合((L3’’/V3’’)≦W/(2×V2’’))は、警報2を発動し、接近車両40が到達する前に歩行者20が手前車線91を渡り切る場合((L3’’/V3’’)>W/(2×V2’’))は、警報3を発動する。
【0076】
上記3種類の警報1〜3のメッセージは、例えば,次の(1)〜(3)のようなメッセージであってもよい。
(1)警報1:
接近車両40向けメッセージ:「右側から横断中の歩行者あり」
歩行者20向けメッセージ:「左から車の到来あり」
(2)警報2:
接近車両30向け:「左側から横断中の歩行者あり」
歩行者20向け:「右から車の到来あり」
(3)警報3:
接近車両30向け:「直前に横断した歩行者あり」
【0077】
以上、本実施形態によれば、道路90を横断しようとしている歩行者(移動体)20を検知したとき、接近車両30、40が歩行者20に衝突すると予測された場合は衝突の危険を通知することにより、歩行者20と接近車両30、40との衝突を回避するとともに、接近車両30、40が歩行者20に衝突しないと予測された場合は衝突の危険を通知しないことにより、不要な衝突危険通知(擬陽性アラート)による通信やサーバ処理等の負荷の増大を回避することができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、横断開始側の手前車線91の接近車両30及び横断終了側の反対車線92の接近車両40それぞれについて、接近車両30、40が歩行者(移動体)20に衝突するか否かを個別に予測し、歩行者20と接近車両との衝突の危険を通知するか否かを判断することにより、歩行者20に接近している車両が横断開始側の手前車線91の接近車両30であるか横断終了側の反対車線92の接近車両40であるかに応じて衝突危険通知を適切に通知することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、歩行者(移動体)20及び接近車両30、40の現在位置に基づいて容易に算出可能な歩行者20と接近車両30、40との距離D3,D4の算出値と、所定の判定基準(距離閾値Thd1,Thd2)とを比較することにより、前記衝突危険を通知するか否かの判定処理を簡易に行うことができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、横断開始側の接近車両30との距離D3と横断終了側の接近車両40との距離D4とで判定基準(距離閾値Thd1,Thd2)を変えることにより、横断終了側の接近車両40に対して、より遠い距離から前記衝突危険(注意喚起、警報情報)を通知することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、横断開始側の接近車両30が横断予測エリア93に到達する予測時間T3と横断終了側の接近車両40が横断予測エリア93に到達する時間T4とで判定基準(時間閾値Tht1,Tht2)を変えることにより、横断終了側の接近車両40に対して、より早いタイミングで前記衝突危険(注意喚起、警報情報)を通知することができる。
【0082】
また、本実施形態によれば、車両情報を定期的に取得することにより、道路を横断しようとしている歩行者(移動体)20を検知したタイミングに車両情報を取得する場合に比して、前記衝突危険を通知するか否かの判定をより速やかに実施できる。
【0083】
また、本実施形態によれば、歩行者情報(移動体情報)が、歩行者(移動体)20が道路90を横断しようとしていることを示す横断予測情報と、歩行者20が道路90のどちら側から横断しようとしているかを示す横断開始位置関連情報とを含むことにより、前記衝突危険を通知するか否かの判定の開始タイミングを精度よく決定することができるので、不要な衝突危険通知による負荷の増大をより確実に回避することができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、歩行者情報(移動体情報)が、歩行者(移動体)20のUE(通信端末装置)21に設けられたGNSS受信機、ジャイロスコープ、加速度センサ、速度センサ及び磁気センサの少なくとも一つの出力の情報を含むことにより、歩行者20のGNSSなどの外部到来電波の受信による現在位置の測定精度が低い場合でも歩行者20の移動経路を算出して歩行者の現在位置を精度よく推定することができ、また、歩行者20の姿勢や向いている方位を推定できるため、道路を横断しようとしている歩行者の検知精度が高くなる。
【0085】
また、本実施形態によれば、歩行者情報(移動体情報)が、(移動体)20の移動履歴情報を含むことにより、歩行者20が道路を横断しようとしているかや歩行者が道路のどちら側から横断しようとしているかを精度よく判断できるので、前記衝突危険を通知するか否かの判定の開始タイミングを精度よく決定することができる。
【0086】
また、本実施形態において、衝突監視サーバ(衝突危険通知装置)10は、移動通信網15の基地局16又は基地局16とコアネットワークとの間のノード又はコアネットワークの外側に設けられたMEC装置であり、し、基地局16に接続されている複数の歩行者20のUE21及び複数の車両30,40のUE31,41について衝突危険通知に関する処理を分散処理することができるので、移動通信網(コアネットワーク)15の負荷増大を抑制することができる。
【0087】
なお、本実施形態において、道路90を横断する移動体は、歩行者20以外の車椅子又は自転車であってもよく、前記衝突の危険の通知は、車椅子若しくは自転車の運転者が所持するUE(通信端末装置)に送信してもよい。
【0088】
また、本実施形態において、移動通信網15の基地局16又は基地局16とコアネットワークとの間のノード又はコアネットワークの外側に設けられたMEC装置を介して歩行者(移動体)20のUE(通信端末装置)と車両のUE(通信端末装置)とが通信することにより、双方の間で歩行者情報(移動体情報)や車両情報を送受信してもよい。
【0089】
また、本実施形態によれば、衝突監視サーバ(衝突危険通知装置)10は、移動通信網15を介して複数の歩行者(移動体)20のUE(通信端末装置)21及び複数の車両30,40のUE(通信端末装置)31,41と通信可能なサーバであってもよい。この場合は、複数の歩行者及び複数の車両について衝突危険の通知を集中管理することができる。
【0090】
また、本実施形態において、衝突監視サーバ(衝突危険通知装置)10の全体の機能又は一部の機能は、歩行者(移動体)20のUE(通信端末装置)、車両30,40又はその車両のUE(通信端末装置)31,41に設けてもよい。
【0091】
また、本実施形態において、接近車両30,40が歩行者20に衝突するか否かの予測及び接近車両30,40に警報を通知するか否かの判断に、接近車両30,40に搭載した撮像手段としての車載カメラで撮影した画像の撮影結果を使用してもよい。例えば、道路90を走行している接近車両30,40の車載カメラで前方を横断している歩行者(例えば高齢者)20が横断していることを検知すると、接近車両30,40は運転者に歩行者との衝突危険を通知し、自車の車両情報(位置情報、速度情報、車両識別情報(車両ID))と、横断している歩行者を検知した旨の検知警報(検知アラート)とを、衝突監視サーバ10に送信する。基地局16を介さずに歩行者20のUE21と直接通信可能な通信機能を有する場合、接近車両30,40は上記自車の車両情報と検知警報とを歩行者20のUE21に送信してもよい。
衝突監視サーバ10は、接近車両30,40から受信した検知警報を契機として、地図上で接近車両30,40の車両ID情報から当該接近車両30,40の位置及びその前方の進行方向における所定距離(例えば100m)の範囲のエリアに存在する道路横断中の歩行者(例えば高齢者)20を特定する。衝突監視サーバ10は、特定した歩行者20のUE21に、当該接近車両30,40の車両ID情報と歩行者20から見た車両方向と検知警報(検知アラート)とを送信する。
歩行者20のUE21は、衝突監視サーバ10から受信した検知警報を契機として、衝突危険の警報のメッセージを画像表示若しくは音声出力又はアラーム音(鳴動)によって出力する。
以上のように車載カメラの画像を用いることにより、より現場の状況に従った衝突直前の危険判定を行うことができる。
【0092】
また、本実施形態において、衝突監視サーバ10は、高齢者などの歩行者20の危険度の程度を示す指標値である危険度スコアを、当該歩行者の関係者のUEに送信してもよい。例えば、歩行者20の平均歩行速度V2、行動履歴、前述の準危険度及び危険の発生頻度などに基づいて危険度スコアを算出し、その危険度スコアの算出値を定期的に当該歩行者の関係者(歩行者の家族、歩行者が入居している施設の関係者)のUEに送信する。この送信には、衝突の危険が発生した場所や時間などを含んでもよい。
以上のように高齢者などの歩行者20の移動時の危険度を見える化し、歩行者20の危険行動を未然に防ぐことができる。
【0093】
また、本実施形態において、上記衝突危険通知の対象として、高齢者だけでなく、歩きながらUE21を操作している歩行者(歩きスマホを行っている歩行者)20を追加してもよい。例えば、歩行者20のUE21は、そのUE21が操作されている状態でUE21が歩行速度で移動しているときに、歩きスマホを行っていると判断し、歩きスマホの状態を検知することができる。歩行者20のUE21は、一定時間歩きスマホの状態が継続する場合、当該歩行者が歩きスマホを行っている歩行者である情報を、衝突監視サーバ10に送信する。その後の処理は、前述の
図3〜
図8に示した衝突監視サーバ10の処理と同様である。
以上のように、高齢者だけでなく、車両との衝突の危険性が高い歩きスマホを行っている歩行者に対しても衝突危険を通知することができる。
【0094】
また、本実施形態において、UE21側の例外処理として、UE21を有する移動体である利用者が自動車などの車両に乗車して運転している乗車中の場合は、そのUE21に対して前述の衝突の注意喚起の情報や警告情報などの衝突危険の通知を行わないようにしてもよい。例えば、UE21は、その端末内に搭載した加速度センサや速度センサの出力、又は、衝突監視サーバ10による利用者の速度判定などに基づいて、UE21の利用者が乗車中であるか否かを判定することができる。UE21の利用者が乗車中である場合、前述の衝突の注意喚起の情報や警告情報などの衝突危険の情報を受信したとしても、UE21は衝突危険の注意喚起や警報のメッセージの出力を行わないように制御する。
更に、衝突監視サーバ10は、乗車中の利用者のUE21から位置情報を受信しても、その受信した位置情報は、利用者のUE21の行動履歴情報の推定に含めないようにしてもよい。すなわち、衝突監視サーバ10における危険通知の制御において、乗車中のUE21の行動履歴は考慮しないようにしてもよい。
以上のようにUE21の利用者が自動車などの車両に乗車して運転している乗車中の場合は、そのUE21に対して前述の衝突の注意喚起の情報や警告情報などの衝突危険の通知を行わないようにすることにより、UE21への不要な通知を更に抑制することができる。また、歩行者の行動履歴の推定にあたり、不要な情報を抑制することができる。
【0095】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに衝突危険通知装置、サーバ及び衝突危険通知システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0096】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、eNode B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0097】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0098】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であれよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0099】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。