特許第6816102号(P6816102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816102
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20210107BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/22 C
   H05B33/14 A
   H05B33/22 A
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-502896(P2018-502896)
(86)(22)【出願日】2016年3月1日
(86)【国際出願番号】JP2016056183
(87)【国際公開番号】WO2017149636
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 章浩
【審査官】 小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−214496(JP,A)
【文献】 特開2013−179248(JP,A)
【文献】 特開2013−157277(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/190636(WO,A1)
【文献】 特開2012−186021(JP,A)
【文献】 特開2006−196188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00 − 33/28
H01L 51/50 − 51/56
H01L 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のうち第1発光部が形成される第1領域に発光材料を含む第1溶液を塗布する第1工程と、
前記第1工程の前又は後に行われ、前記基板のうち第2発光部が形成される第2領域に塗布材料を含む第2溶液を塗布する第2工程と、
前記第1工程及び前記第2工程の後に行われ、前記第1領域の前記第1溶液及び前記第2領域の前記第2溶液を乾燥させる第3工程と、
前記第3工程の後に行われ、前記第2領域に発光材料を蒸着する第4工程と、
を備える発光装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置の製造方法において、
前記第1工程及び前記第2工程の前に行われ、前記第1領域及び前記第2領域に第1正孔輸送性材料を塗布する第5工程を備える発光装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の発光装置の製造方法において、
前記第2工程で用いられる前記塗布材料は第2正孔輸送性材料である発光装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の発光装置の製造方法において、
前記第3工程と前記第4工程の間に行われ、前記第2領域に前記第2正孔輸送性材料を蒸着する第6工程を備える発光装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の発光装置の製造方法において、
前記第1正孔輸送性材料は前記第2正孔輸送性材料よりも高分子である発光装置の製造方法。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記第5工程の前に行われ、前記第1領域及び前記第2領域に正孔注入材料を塗布する第7工程を備える発光装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の発光装置の製造方法において、
前記正孔注入材料は前記第2工程で用いられる前記塗布材料よりも高分子である発光装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記第1発光部の発光スペクトルのピーク波長は、前記第2発光部の発光スペクトルのピーク波長よりも長い発光装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記第1工程及び前記第2工程において、インクジェット法が用いられる発光装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法において、
前記第4工程の後に行われ、電子注入材料を蒸着する第8工程を備える発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置や表示装置などの発光装置の光源の一つに、有機EL素子がある。有機EL素子は、第1電極と第2電極の間に有機層を配置した構成を有している。有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層を積層した多層構造を有している。
【0003】
有機層を構成する各層の製造方法として、従来は真空成膜法(例えば蒸着法)が用いられてきた。これに対し、近年は有機層を塗布法で形成することが検討されている。しかし、現状では、有機層のすべての層を塗布法で形成することは難しい。例えば、特許文献1には、正孔注入層、及び正孔輸送層の一部の層を塗布法で形成し、正孔輸送層の残りの層及び発光層を蒸着法で形成することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2にも、正孔輸送層の一部の層を塗布法で形成し、正孔輸送層の残りの層及び発光層を蒸着法で形成することが記載されている。特許文献2には、発光層の上に位置する電子輸送層も蒸着法により形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−142365号公報
【特許文献2】特開2014−127303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表示装置や発光色が調整可能な照明装置は、発光色が異なる複数種類の発光部を有している。発光部の発光色は、基本的に、発光層に用いられる材料によって決まる。このため、発光色が異なる複数種類の発光部を一つの基板に混載する場合、一つの基板の上に、発光層が塗布法で形成される発光部と、発光層が蒸着法で形成される発光部の双方が存在することがある。このような場合、前者の発光部は、後者の発光部に対して、塗布法で形成される層が厚くなる。このため、有機層を構成する塗布材料の乾燥状態が前者と後者とで異なってしまう。この場合、複数種類の発光部の乾燥状態をいずれも最適な状態にすることは難しく、その結果、一部の発光部の品質が低下してしまう。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、発光色が異なる複数種類の発光部を一つの基板に混載させる場合において、一部の発光部の品質が低下しないようにすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板のうち第1発光部が形成される第1領域に発光材料を塗布する第1工程と、
前記第1工程の前又は後に行われ、前記基板のうち第2発光部が形成される第2領域に塗布材料を塗布する第2工程と、
前記第1工程及び前記第2工程の後に行われ、前記第1領域の前記発光材料及び前記第2領域の前記塗布材料を乾燥させる第3工程と、
前記第3工程の後に行われ、前記第2領域に発光材料を蒸着する第4工程と、
を備える発光装置の製造方法である。
【0009】
請求項11に記載の発明は、基板の第1領域に形成された第1発光部と、
前記基板の第2領域に形成された第2発光部と、
を備え、
前記第1発光部は、
第1正孔注入層と、
前記第1正孔注入層の上に位置している第1正孔輸送層と、
前記第1正孔輸送層の上に位置している第1発光層と、
を有し、
前記第2発光部は、
第2正孔注入層と、
前記第2正孔注入層の上に位置しており、第1正孔輸送性材料を含む第2正孔輸送層と、
前記第2正孔輸送層の上に位置しており、第2正孔輸送性材料を含む第3正孔輸送層と、
前記第3正孔輸送層の上に位置しており、前記第2正孔輸送性材料を含む第4正孔輸送層と、
前記第4正孔輸送層の上に位置している第2発光層と、
を有する発光装置である。
【0010】
請求項16に記載の発明は、前記基板の上に形成され、複数の開口を有する絶縁層と、
前記絶縁層のうち隣り合う前記開口の間に位置する部分の上に位置している隔壁と、
第1の前記開口に位置している第1発光部と、
第2の前記開口に位置している第2発光部と、
を備え、
前記第1発光部は、
第1正孔注入層と、
前記第1正孔注入層の上に位置している第1正孔輸送層と、
前記第1正孔輸送層の上に位置している第1発光層と、
を有し、
前記第2発光部は、
第2正孔注入層と、
前記第2正孔注入層の上に位置していて前記第1正孔輸送層よりも厚い第2正孔輸送層と、
前記第2正孔輸送層の上に位置している第2発光層と、
を有し、
前記第2発光部の隣に位置する前記隔壁の上には、厚さ方向において、前記第2正孔注入層及び前記第2正孔輸送層の一部が位置しておらず、かつ前記第2正孔輸送層の残りの部分及び前記第2発光層が位置している発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0012】
図1】実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
図2】発光装置の製造方法を示す断面図である。
図3】発光装置の製造方法を示す断面図である。
図4】実施例1に係る発光装置の平面図である。
図5図4から第2電極を取り除いた図である。
図6図5から有機層及び絶縁層を取り除いた図である。
図7図4のA−A断面図である。
図8】実施例2に係る発光装置の平面図である。
図9図8から隔壁、第2電極、有機層、及び絶縁層を取り除いた図である。
図10図8のB−B断面図である。
図11】(a)は、図10の点線αで囲んだ領域を拡大した図であり、図11(b)は、図10の点線βで囲んだ領域を拡大した図である。
図12図8のC−C断面図である。
図13図8のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、本実施形態において、正孔輸送層および正孔注入層などの表現はそれぞれ、正孔輸送性の材料を含む層、正孔注入性の材料を含む層の意味で用いる。
【0014】
図1は、実施形態に係る発光装置10の構成を示す断面図である。実施形態に係る発光装置10は、基板100、第1発光部140a、及び第2発光部140bを備えている。第1発光部140aは、基板100の第1領域100aに形成されており、正孔注入層121(第1正孔注入層)、第1正孔輸送層122a、及び第1発光層123aを有している。第2発光部140bは、基板100の第2領域100bに形成されており、正孔注入層121(第2正孔注入層)、第2正孔輸送層122b、第3正孔輸送層122c、第4正孔輸送層122d、及び第2発光層123bを有している。第2正孔輸送層122bは正孔注入層121の上に形成されており、第1正孔輸送材料を含んでいる。第3正孔輸送層122cは第2正孔輸送層122bの上に形成されており、第2正孔輸送材料を含んでいる。また、第4正孔輸送層122dは第3正孔輸送層122cの上に形成されており、第3正孔輸送層122cと同じ材料すなわち第2正孔輸送材料を含んでいる。第3正孔輸送層122cは塗布法を用いて形成されており、第4正孔輸送層122dは蒸着法を用いて形成されている。このため、第3正孔輸送層122c及び第4正孔輸送層122dの間には界面が存在する。また、第3正孔輸送層122cの屈折率は第4正孔輸送層122dの屈折率と異なる。また、第1正孔輸送層122aは第2正孔輸送層122bと同じ材料すなわち第1正孔輸送材料を含んでいる。以下、詳細に説明する。
【0015】
第1発光部140a及び第2発光部140bは、いずれも基板100の一面に形成されている。第1発光部140a及び第2発光部140bは、絶縁層150によって画定されている。絶縁層150は、例えばポリイミドなどの感光性の材料を用いて形成されており、露光及び現像工程を経て、所定の形状に形成される。具体的には、絶縁層150は、第1領域100aの上に位置する第1の開口152a、及び第2領域100bの上に位置する第2の開口152bを有している。絶縁層150は、第1電極110が形成された後、かつ正孔注入層121が形成される前に形成される。ただし、絶縁層150は形成されていなくてもよい。
【0016】
第1発光部140aは第1電極110、第1有機層120a、及び第2電極130を有しており、第2発光部140bは第1電極110、第2有機層120b、及び第2電極130を有している。第1有機層120a及び第2有機層120bは、いずれも第1電極110と第2電極130の間に位置している。また、第1有機層120aは第1の開口152aの内側に位置しており、第2有機層120bは第2の開口152bの内側に位置している。このため、第1発光部140aは第1の開口152aの内側に位置することになり、第2発光部140bは第2の開口152bの内側に位置することになる。第1発光部140a及び第2発光部140bは、ボトムエミッション型の発光部であってもよいし、トップエミッション型の発光部であってもよい。
【0017】
第1発光部140a及び第2発光部140bがボトムエミッション型である場合、基板100は、例えばガラスや透光性の樹脂などの透光性の材料で形成されており、基板100のうち第1電極110とは逆側の面が発光装置10の光取出面になっている。一方、第1発光部140a及び第2発光部140bがトップエミッション型である場合、基板100は上述した透光性の材料で形成されていてもよいし、透光性を有さない材料で形成されていてもよい。基板100は、例えば矩形などの多角形である。また、基板100は可撓性を有していてもよい。基板100が可撓性を有している場合、基板100の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下である。特に基板100をガラス材料で可撓性を持たせる場合、基板100の厚さは、例えば200μm以下である。基板100を樹脂材料で可撓性を持たせる場合は、基板100の材料として、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドを含ませて形成されている。また、基板100が樹脂材料を含む場合、水分が基板100を透過することを抑制するために、基板100の少なくとも発光面(好ましくは両面)に、SiNやSiONなどの無機バリア膜が形成されている。
【0018】
第1電極110及び第2電極130の少なくとも一方は、光透過性を有する透明電極である。例えば第1発光部140a及び第2発光部140bがボトムエミッション型である場合、少なくとも第1電極110は透明電極である。一方、第1発光部140a及び第2発光部140bがトップエミッション型である場合、少なくとも第2電極130は透明電極である。なお、第1電極110及び第2電極130の双方が透明電極であってもよい。この場合、発光装置10は両面発光型の発光装置になる。
【0019】
透明電極を構成する透明導電材料は、金属を含む材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)等の金属酸化物である。第1電極110の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。第1電極110は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。なお、第1電極110は、カーボンナノチューブ、又はPEDOT/PSSなどの導電性有機材料であってもよいし、薄い金属電極であってもよい。
【0020】
第1電極110及び第2電極130のうち透光性を有していない電極は、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される金属の合金からなる金属層を含んでいる。この電極は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。
【0021】
なお、第1発光部140a及び第2発光部140bがトップエミッション型の発光装置である場合、第1電極110は、金属層と透明導電層をこの順に積層した構造であってもよい。
【0022】
また、第2発光部140bの第2有機層120bは、正孔注入層121、第2正孔輸送層122b、第3正孔輸送層122c、第4正孔輸送層122d、第2発光層123b、正孔ブロック層124、電子輸送層125、及び電子注入層126を有している。ただし、電子輸送層125及び電子注入層126の一方は形成されていなくてもよい。
【0023】
正孔注入層121は、正孔が移動する材料(正孔移動性の有機材料)を用いて形成されている。正孔注入層121の厚さは例えば50nm以上100nm以下である。第1有機層120aの正孔注入層121及び第2有機層120bの正孔注入層121は、同一工程で形成されている。正孔注入層121の形成方法は、塗布法、特にインクジェット法である。正孔注入層121を構成する材料(正孔注入材料)は、導電性高分子材料であり、例えば、PEDOT-PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホナート))などのポリチオフェン系材料が挙げられる。その他、アリールアミン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体等を含む高分子の正孔注入材料が挙げられる。但し、これらに限定されない。
【0024】
第1正孔輸送層122a、第2正孔輸送層122b、第3正孔輸送層122c、及び第4正孔輸送層122dは、いずれも正孔移動性の有機材料を用いて形成されている。詳細には、第1正孔輸送層122aの厚さは例えば30nm以上100nm以下である。第2正孔輸送層122bの厚さは例えば30nm以上100nm以下である。後述するように、第1正孔輸送層122aは第2正孔輸送層122bと同一工程で形成されるため、第1正孔輸送層122aの厚さは第2正孔輸送層122bの厚さとほぼ等しい。第3正孔輸送層122cの厚さは例えば10nm以上40nm以下であり、第4正孔輸送層122dの厚さは例えば10nm以上40nm以下である。第1正孔輸送層122a及び第2正孔輸送層122bは第1正孔輸送性材料を用いて形成されており、第3正孔輸送層122c及び第4正孔輸送層122dは第2正孔輸送性材料を用いて形成されている。第1正孔輸送性材料は、第2正孔輸送性材料よりも高分子である。第1正孔輸送性材料は、高分子の正孔輸送性材料であり、例えば、TFB(ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4'-(N-(4-sec-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)])等のトリフェニルアミン系材料が挙げられる。その他、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体等を含む高分子の正孔輸送材料が挙げられる。但し、これらに限定されない。第2正孔輸送性材料は、低分子の正孔輸送性材料であり、例えば、α-NPD(ビス(N-(1-ナフチル-N-フェニル)ベンジジン))、m-MTDATA(4,4',4''-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン)、TCTA(4,4',4''-トリ(N-カルバゾール)トリフェニルアミン)、2-TNATA(4,4',4''-トリス[2-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン)等が挙げられる。その他、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、スチリルアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニレン誘導体、アザトリフェニレン誘導体等を含む低分子の正孔輸送材料が挙げられる。但し、これらに限定されない。第3正孔輸送層122cのように第2正孔輸送材料を塗布法で成膜する際はこれら材料を有機溶媒に溶解して成膜する。ここで、有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、ドデシルベンゼン、シクロヘキサノール、テトラリン、メシチレン、ブサイドクメン 、ジハイドロベンゾフラン、シクロヘキシルベンゼン、1-メチルナフタレン、p-アニシルアルコール、ジメチルナフタレン、3-メチルビフェニル、4−メチルビフェニル、3−イソプロピルビフェニル、モノイソプロピルナフタレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン、クロロホルム、安息香酸エチル、安息香酸ブチル等が挙げられる。但し、これらに限定されない。また、これらは単独もしくは2種以上を混合して用いても良い。
【0025】
第1正孔輸送層122a及び第2正孔輸送層122bは第1正孔輸送性材料を塗布することにより形成されている。また、第3正孔輸送層122cは、第2正孔輸送性材料を塗布することにより形成されている。詳細には、第3正孔輸送層122cとなる第2正孔輸送性材料は、第1正孔輸送層122a及び第2正孔輸送層122bとなる第1正孔輸送性材料が塗布され、かつ乾燥された後に、塗布される。このため、第2正孔輸送層122bと第3正孔輸送層122cの間には界面が存在する。第1正孔輸送層122a及び第2正孔輸送層122b、並びに第3正孔輸送層122cは、例えばスピンコーティング法を用いて形成されているが、他の塗布法(例えばインクジェット法)を用いて形成されていてもよい。
【0026】
また、第4正孔輸送層122dは、蒸着法を用いて形成されている。このように、第3正孔輸送層122cと第4正孔輸送層122dは、互いに異なる成膜方法を用いて形成されている。このため、第3正孔輸送層122cと第4正孔輸送層122dがいずれも第2正孔輸送性材料を用いて形成されているにも関わらず、第3正孔輸送層122cと第4正孔輸送層122dの間には界面が存在する。また、第3正孔輸送層122cと第4正孔輸送層122dの屈折率は、互いに異なる。例えば、第3正孔輸送層122cの屈折率は、第4正孔輸送層122dの屈折率よりも小さい。
【0027】
第1発光層123a及び第2発光層123bは、いずれも電子と正孔の再結合に伴って発光する材料を用いて形成されている。ただし、第1発光層123aの発光色は第2発光層123bの発光色とは異なる。例えば、第1発光層123a(すなわち第1発光部140a)の発光スペクトルのピーク波長は、第2発光層123b(すなわち第2発光部140b)の発光スペクトルのピーク波長よりも長い。第1発光層123aの発光色は、例えば緑色(ピーク波長が500nm以上550nm以下)又は赤色(ピーク波長が600nm以上680nm以下)であり、第2発光層123bの発光色は、例えば、青色(ピーク波長が430nm以上480nm以下)である。
【0028】
第1有機層120aの正孔ブロック層124は、第1発光層123aのうち第1正孔輸送層122aとは逆側の面に接しており、正孔が第1発光層123aを突き抜けて第1有機層120aの電子輸送層125又は電子注入層126に到達することを抑制する。第2有機層120bの正孔ブロック層124も同様である。正孔ブロック層124は、例えば電子が移動することができる材料(電子移動性の有機材料)を用いて形成される。正孔ブロック層124の厚さは、例えば5nm以上50nm以下である。なお、第1有機層120a及び第2有機層120bは、正孔ブロック層124を有していなくてもよい。
【0029】
第1有機層120aの電子輸送層125及び第2有機層120bの電子輸送層125は、いずれも電子が移動する材料(電子移動性の有機材料)を用いて形成されている。このような材料としては、例えば、含窒素芳香族複素環誘導体、芳香族炭化水素環誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体が挙げられる。第1有機層120aの電子輸送層125及び第2有機層120bの電子輸送層125は、互いに同一の工程で形成されているため、ほぼ同じ厚さを有している。電子輸送層125の厚さは、例えば5nm以上100nm以下である。
【0030】
第1有機層120aの電子注入層126及び第2有機層120bの電子注入層126は、いずれも例えばLiFなどのアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、又はリチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体を用いて形成される。第1有機層120aの電子注入層126及び第2有機層120bの電子注入層126は、互いに同一の工程で形成されているため、ほぼ同じ厚さを有している。電子注入層126の厚さは、例えば0.1nm以上10nm以下である。
【0031】
なお、第1有機層120a及び第2有機層120bは、さらに電子阻害層を有していてもよい。電子阻害層は、正孔輸送層と発光層の間に位置し、発光層を突き抜けた電子が正孔輸送層や正孔注入層に到達することを抑制する。電子阻害層は、例えば、正孔が移動する材料(正孔移動性の有機材料)の少なくとも一つを用いて形成することができる。電子阻害層の厚さは、例えば5nm以上50nm以下である。
【0032】
また、図1に示す例において、第1有機層120aの各層は第1の開口152aの内側に位置しており、第2有機層120bの各層は第2の開口152bの内側に位置している。ただし、正孔注入層121、第1正孔輸送層122a、及び第2正孔輸送層122bは、絶縁層150の上に形成されていてもよい。この場合、第1有機層120aの正孔注入層121と第2有機層120bの正孔注入層121は互いに繋がっていてもよいし、第1正孔輸送層122aと第2正孔輸送層122bも互いに繋がっていてもよい。
【0033】
図2の各図及び図3の各図は、発光装置10の製造方法を示す断面図である。発光装置10の製造方法は、以下の工程を有している。まず、基板100の第1領域100aに、発光材料(具体的には第1発光層123aとなる材料)を塗布する(第1工程)。また、この第1工程の前又は後に、基板100の第2領域100bに、塗布材料(具体的には第3正孔輸送層122cとなる第2正孔輸送性材料)を塗布する(第2工程)。そして、第1工程及び第2工程の後において、第1領域100aの発光材料及び第2領域100bの塗布材料を乾燥させる(第3工程)。その後、第2領域100bに発光材料を蒸着する(第4工程)。以下、詳細に説明する。
【0034】
まず、図2(a)に示すように、基板100の第1領域100a及び第2領域100bに、第1電極110を、例えば蒸着法又はスパッタリング法を用いて形成する。次いで、基板100の上に絶縁層150、第1の開口152a、及び第2の開口152bを形成する。次いで、基板100の第1領域100a及び第2領域100bに、正孔注入材料を、例えばインクジェット法を用いて塗布し、その後乾燥させる。これにより、第1発光部140aの正孔注入層121及び第2発光部140bの正孔注入層121が形成される(第7工程)。
【0035】
次いで、基板100の第1領域100a及び第2領域100bに、第1正孔輸送材料を、例えばインクジェット法を用いて塗布し、その後乾燥させる。これにより、第1発光部140aの第1正孔輸送層122a及び第2発光部140bの第2正孔輸送層122bが形成される(第5工程)。
【0036】
次いで、図2(b)に示すように、基板100の第2領域100bに、第2正孔輸送材料を、例えばインクジェット法を用いて塗布する(第2工程)。次いで、基板100の第1領域100aに、第1発光層123aとなる発光材料を、例えばインクジェット法を用いて塗布する(第1工程)。なお、第1工程が行われた後に第2工程が行われてもよい。
【0037】
次いで、第1工程で塗布した塗布材料及び第2工程で塗布した塗布材料を乾燥させる(第3工程)。これにより、第1発光部140aの第1発光層123a及び第2発光部140bの第3正孔輸送層122cが形成される。
【0038】
次いで、図3(a)に示すように、基板100の第2領域100bに、第2正孔輸送性材料を蒸着する(第6工程)。これにより、第4正孔輸送層122dが形成される。次いで、基板100の第2領域100bに、発光材料を蒸着する(第4工程)。これにより、第2発光層123bが形成される。
【0039】
その後、図3(b)に示すように、第1有機層120aの正孔ブロック層124及び第2有機層120bの正孔ブロック層124を、真空蒸着法を用いて形成する。次いで、第1有機層120aの電子輸送層125及び第2有機層120bの電子輸送層125を、真空蒸着法を用いて形成する。さらに、電子輸送層125の上に、電子注入材料を真空蒸着する(第8工程)。これにより、第1有機層120aの電子注入層126及び第2有機層120bの電子注入層126が形成される。このようにして、第1有機層120a及び第2有機層120bが形成される。
【0040】
そして、第1有機層120a及び第2有機層120bのそれぞれの上に、第2電極130を形成する。第2電極130は、例えば蒸着法又はスパッタリング法を用いて形成される。
【0041】
本実施形態において、第1発光部140aの第1発光層123aは塗布法を用いて形成されており、第2発光部140bの第2発光層123bは蒸着法を用いて形成されている。このような構成は、第1発光部140aの塗布工程の回数と第2発光部140bの塗布工程の回数に差がある構成である。塗布で形成した有機層は溶媒を乾燥させる工程が必要であるが、ここで、乾燥工程は第1発光部140aと第2発光部140bとのそれぞれの領域にのみでできるものではなく、基板100で一括して行われることが多い。ここで、各有機層の濡れの状況に差があると乾燥工程で成膜不良が起こりやすい。つまり、第1発光部140aは塗布法で形成しているため、溶媒を含むいわゆるウエットな状態にある。他方で、第2発光部140bは蒸着法で形成されるため乾燥状態にある。このため、発光装置10を乾燥工程にかけると、乾燥している(ウエットでない)第2発光部140b側の絶縁層150の上に第1発光部140aの乾燥工程中の有機層が引き寄せられる。いわゆる引き寄せが起こる。この現象が発生すると第1発光層140aの有機層120の膜厚が第1発光層140a内で不均一となり、発光装置10の品質の劣化につながる。
【0042】
これに対して本実施形態では、第2発光部140bの第2正孔輸送層122bの上に、第3正孔輸送層122cを形成している。第3正孔輸送層122cは塗布法で形成されており、また、第1発光層123aと同一工程で乾燥されている。従って、乾燥工程を行う段階において第1発光部140aおよび第2発光部140bの双方に形成される有機層が塗布法によって成膜されている。このため、第1発光部140aの乾燥状態と第2発光部140bの乾燥状態を揃えることができる。その結果、前述の引き寄せの発生を抑えることができるため、第1発光部140aの品質を高めることができる。
【0043】
また、第2発光部140bにおいて、正孔注入層121及び第2正孔輸送層122bは塗布法を用いて形成されており、第3正孔輸送層122c及び第4正孔輸送層122dは蒸着法を用いて形成されている。この場合、第2発光部140bの正孔輸送層の一部の層は塗布法で形成されることになり、正孔輸送層の残りの層は蒸着法で形成されることになる。このため、第2発光部140bの正孔輸送層のうち塗布法で形成された層と蒸着法で形成された層の界面で、正孔の移動度が低下する可能性がある。これに対して本実施形態では、第2正孔輸送層122bと第4正孔輸送層122dの間に、第3正孔輸送層122cを有している。第3正孔輸送層122cは第4正孔輸送層122dと同じ材料で構成されており、かつ、塗布法により形成されている。従って、上記した正孔の移動度の低下を抑制できる。従って、第2発光部140bの発光効率の低下を抑制できる。
【0044】
(実施例1)
図4は、実施例1に係る発光装置10の平面図である。図5図4から第2電極130を取り除いた図である。図6図5から有機層120及び絶縁層150を取り除いた図である。図7は、図4のA−A断面図である。本実施例に係る発光装置10は照明装置であり、基板100のほぼ全面に発光領域が形成されている。この発光領域には、第1発光部140a、第2発光部140b、及び第3発光部140cが繰り返し形成されている。第1発光部140a、第2発光部140b、及び第3発光部140cは、いずれもストライプ状(線状)に延在している。
【0045】
第1発光部140a及び第2発光部140bの構成は、実施形態に示したとおりである。第3発光部140cは、第1発光層123aの代わりに第3発光層123cを有している点を除いて、第1発光部140aと同様の構成を有している。第3発光層123cの材料は、第1発光層123aの材料と異なる。言い換えると、第3発光部140cの第3有機層120cは、発光層を除いて、第1発光部140aの第1有機層120aと同様の構成を有している。第1発光部140a及び第3発光部140cの一方の発光色は赤色であり、他方は緑色である。一方、第2発光部140bの発光色は青色である。
【0046】
第1発光部140a、第2発光部140b、及び第3発光部140cは、いずれも、第1電極110、第1端子112、第2電極130、及び第2端子132を有している。本実施形態において、発光装置10は、調光可能な照明装置である。このため、第1電極110、第1端子112、第2電極130、及び第2端子132は、発光部毎に独立している。ただし、第2端子132はすべての発光部に対して共通の端子であってもよい。この場合、第2電極130も、全ての発光部に共通の電極(いわゆるベタ電極)であってもよい。また、発光装置10が調光機能を有していない場合(例えば発光装置10が白色の照明装置である場合)、第1端子112はすべての発光部に対して共通の端子であってもよい。この場合、第1電極110も、全ての発光部に共通の電極(いわゆるベタ電極)であってもよい。
【0047】
第1端子112及び第2端子132は、第1電極110と同じ材料を用いて形成された層を有している。この層は、第1電極110と同一の工程で形成される。また、第1端子112のうち第1電極110と同様の材料で形成されている層は、第1電極110と一体になっている。一方、第2端子132は第1電極110から分離している。
【0048】
また、第1端子112及び第2端子132は、第1電極110を挟んで互いに逆側に位置している。本図に示す例では基板100は矩形である。そして、第1端子112は基板100の一辺に沿って形成されており、第2端子132は、基板100の4辺のうち第1端子112とは逆側の辺に沿って形成されている。
【0049】
絶縁層150は、第1の開口152a、第2の開口152b、及び第3の開口152cを有している。第1の開口152aは第1発光部140aが形成されるべき領域に位置しており、第2の開口152bは第2発光部140bが形成されるべき領域に位置しており、第3の開口152cは第3発光部140cが形成されるべき領域に位置している。そして、第2電極130の一部は、絶縁層150をまたいで第2端子132の上まで延在している。
【0050】
本実施例において、第1発光部140a及び第2発光部140bの製造方法は、実施形態に示したとおりである。また、第3発光部140cは、第3発光層123cを第1発光層123aとは別の塗布材料を用いて形成される点を除いて、第1発光部140aと同一の工程で形成される。このため、第3発光層123cとなる塗布材料は、第1発光層123aとなる塗布材料及び第3正孔輸送層122cとなる塗布材料の同一の工程で乾燥される。
【0051】
本実施例においても、第2発光部140bの第2正孔輸送層122bの上に、第3正孔輸送層122cを形成している。第3正孔輸送層122cは塗布法で形成されており、また、第1発光層123a及び第3発光層123cと同一工程で乾燥されている。このため、第1有機層120aのうち塗布法で形成される層の乾燥状態、第2有機層120bのうち塗布法で形成される層の乾燥状態、及び第3有機層120cのうち塗布法で形成される層の乾燥状態のそれぞれを適切な状態にすることができる。その結果、第1発光部140aの品質、第2発光部140bの品質、及び第3発光部140cの品質は、いずれも高くなる。
【0052】
また、実施形態と同様に、第2発光部140bの正孔輸送層における正孔の移動度の低下を抑制できる。従って、第2発光部140bの発光効率の低下を抑制できる。
【0053】
(実施例2)
図8は、実施例2に係る発光装置10の平面図である。図9は、図8から隔壁170、第2電極130、有機層120、及び絶縁層150を取り除いた図である。図10図8のB−B断面図である。図11(a)は、図10の点線αで囲んだ領域を拡大した図であり、図11(b)は、図10の点線βで囲んだ領域を拡大した図である。図12図8のC−C断面図であり、図13図8のD−D断面図である。
【0054】
実施例2に係る発光装置10はディスプレイであり、基板100、第1電極110、複数の第1発光部140a、複数の第2発光部140b、複数の第3発光部140c、発光部140、絶縁層150、複数の第1の開口152a、複数の第2の開口152b、複数の第3の開口152c、複数の開口154、複数の引出配線114、有機層120、第2電極130、複数の引出配線134、及び複数の隔壁170を有している。
【0055】
第1電極110は、第1方向(図8におけるY方向)にライン状に延在している。そして第1電極110の端部は、引出配線114に接続している。
【0056】
引出配線114は、第1電極110を第1端子112に接続する配線である。本図に示す例では、引出配線114の一端側は第1電極110に接続しており、引出配線114の他端側は第1端子112となっている。本図に示す例において、第1電極110及び引出配線114は一体になっている。そして第1端子112の上及び引出配線114の上には、導体層180が形成されている。導体層180は、第1電極110よりも抵抗の低い金属、例えばAl又はAgを用いて形成されている。なお、引出配線114の一部は絶縁層150によって覆われている。
【0057】
絶縁層150は、図8、及び図10図13に示すように、複数の第1電極110上及びその間の領域に形成されている。絶縁層150には、複数の第1の開口152a、複数の第2の開口152b、複数の第3の開口152c、及び複数の開口154が形成されている。複数の第2電極130は、第1電極110と交差する方向(例えば直交する方向:図8におけるX方向)に互いに平行に延在している。そして、複数の第2電極130の間には、詳細を後述する隔壁170が延在している。第1の開口152a、第2の開口152b、及び第3の開口152cは、いずれも平面視で第1電極110と第2電極130の交点に位置している。そして、第1の開口152a、第2の開口152b、及び第3の開口152cは、マトリクスを構成するように配置されている。
【0058】
開口154は、平面視で複数の第2電極130のそれぞれの一端側と重なる領域に位置している。また開口154は、開口152が構成するマトリクスの一辺に沿って配置されている。そしてこの一辺に沿う方向(例えば図8におけるY方向、すなわち第1電極110に沿う方向)で見た場合、開口154は、所定の間隔で配置されている。開口154からは、引出配線134の一部分が露出している。そして、引出配線134は、開口154を介して第2電極130に接続している。
【0059】
引出配線134は、第2電極130を第2端子132に接続する配線であり、第1電極110と同一の材料からなる層を有している。引出配線134の一端側は開口154の下に位置しており、引出配線134の他端側は、絶縁層150の外部に引き出されている。そして本図に示す例では、引出配線134の他端側が第2端子132となっている。そして、第2端子132の上及び引出配線134の上にも、導体層180が形成されている。なお、引出配線134の一部は絶縁層150によって覆われている。
【0060】
第1の開口152aの内側には第1有機層120aが形成されており、第2の開口152bの内側には第2有機層120bが形成されており、第3の開口152cの内側には第3有機層120cが形成されている。第1有機層120aの構成、第2有機層120bの構成、及び第3有機層120cの構成は、いずれも実施例1に示した通りである。なお、各有機層の少なくとも一部の層は、各開口の外側に食み出していてもよい。ただし、図13に示すように、いずれの有機層も、開口154には形成されていない。
【0061】
第2電極130は、図8図10図13に示すように、第1方向と交わる第2方向(図8におけるX方向)に延在している。そして隣り合う第2電極130の間には、隔壁170が形成されている。隔壁170は、第2電極130と平行すなわち第2方向に延在している。隔壁170の下地は、例えば絶縁層150である。隔壁170は、例えばポリイミド系樹脂などの感光性の樹脂であり、露光及び現像されることによって、所望のパターンに形成されている。なお、隔壁170はポリイミド系樹脂以外の樹脂、例えばエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂、二酸化珪素等の無機材料で構成されていても良い。
【0062】
隔壁170は、断面が台形の上下を逆にした形状(逆台形)になっている。すなわち隔壁170の上面の幅は、隔壁170の下面の幅よりも大きい。このため、隔壁170を第2電極130より前に形成しておくと、蒸着法やスパッタリング法を用いて第2電極130を基板100の一面側に形成することで、複数の第2電極130を一括で形成することができる。
【0063】
また、隔壁170は、有機層120を分断する機能も有している。例えば有機層120を構成する各層のうち塗布法で形成される層(例えば、正孔注入層121、第1正孔輸送層122a、第2正孔輸送層122b、第3正孔輸送層122c、第1発光層123a、及び第3発光層123c)は、隔壁170の間に位置する領域に塗布材料を塗布することにより、形成される。一方、有機層120のうち蒸着法で形成される層(例えば第4正孔輸送層122d、第2発光層123b、正孔ブロック層124、電子輸送層125、及び電子注入層126)は、隔壁170の側面には形成されないため、隔壁170によって分断される。
【0064】
そして、図11(a)に示すように、隔壁170のうち第1発光部140aの隣に位置する領域の上面には、第1有機層120aのうち蒸着法で形成される層、具体的には、正孔ブロック層124、電子輸送層125、及び電子注入層126のみが形成されており、正孔注入層121、第1正孔輸送層122a、及び第1発光層123aは形成されていない。このため、第1発光部140aの近くにおいて、隔壁170の上に位置する有機層は、第1の開口152a内に位置する第1有機層120aよりも薄い。
【0065】
同様に、図11(b)に示すように、隔壁170のうち第3発光部140cの隣に位置する領域の上面には、第3有機層120cのうち蒸着法で形成される層、具体的には、正孔ブロック層124、電子輸送層125、及び電子注入層126のみが形成されており、正孔注入層121、第1正孔輸送層122a、及び第3発光層123cは形成されていない。このため、第3発光部140cの近くにおいて、隔壁170の上に位置する有機層は、第3の開口152c内に位置する第3有機層120cよりも薄い。
【0066】
また、図11(a)及び(b)に示すように、隔壁170のうち第2発光部140bの隣に位置する領域の上面には、第2有機層120bのうち蒸着法で形成される層、具体的には、第4正孔輸送層122d、第2発光層123b、正孔ブロック層124、電子輸送層125、及び電子注入層126のみが形成されており、正孔注入層121、第2正孔輸送層122b、及び第3正孔輸送層122cは形成されていない。言い換えると、第2発光部140bの隣に位置する隔壁170の上面には、厚さ方向において、第2発光部140bの正孔注入層121及び正孔輸送層の一部が形成されており、かつ、第2発光部140bの正孔輸送層の残りの部分及び第2発光層123bが形成されている。そして、第2発光部140bの近くにおいて、隔壁170の上に位置する有機層は、第2発光部140b内に位置する第2有機層120bよりも薄い。
【0067】
ただし、図10、及び図11の各図に示すように、隔壁170のうち第2発光部140bの隣の領域の上に位置する有機層は、隔壁170のうち第1発光部140aの隣の領域の上に位置する有機層、及び隔壁170のうち第3発光部140cの隣の領域の上に位置する有機層のいずれよりも厚い。これは、第2有機層120bが第4正孔輸送層122dを有しており、かつ第2発光層123bが蒸着法を用いて形成されているためである。
【0068】
次に、本実施例における発光装置10の製造方法を説明する。まず、基板100上に第1電極110、引出配線114,134を形成する。これらの形成方法は、実施形態において第1電極110を形成する方法と同様である。
【0069】
次いで、引出配線114の上、第1端子112の上、引出配線134の上、及び第2端子132の上に、導体層180を形成する。次いで、絶縁層150、第1の開口152a、第2の開口152b、及び第3の開口152cを形成し、さらに隔壁170を形成する。次いで第1有機層120aの各層、第2有機層120bの各層、及び第3有機層120cの各層を形成する。これら各層の形成方法は、実施例1に示したとおりである。次いで、第2電極130を形成する。
【0070】
本実施例においても、実施例1と同様に、第1発光部140aの品質、第2発光部140bの品質、及び第3発光部140cの品質は、いずれも高くなる。また、実施形態と同様に、第2発光部140bの正孔輸送層における正孔の移動度の低下を抑制できる。従って、第2発光部140bの発光効率の低下を抑制できる。
【0071】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13