【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、試料または試薬を処理する機器のためのピペッティング装置と、試料または試薬を処理する機器と、独立請求項の特徴を有するピペッティング装置を使用して試料または試薬をピペッティングする方法によって解決される。別のやり方または任意の組合せで実現されうる実施形態は、従属請求項に記載される。
【0008】
「有する(have)」、「備える(comprise)」もしくは「含む(include)」という用語、またはそれらの任意の文法的なバリエーションは、以下で使用されるとき、非排他的に使用される。すなわち、これらの用語は、この文脈で述べられた主体に、これらの用語によって示された特徴の他には、別の特徴が存在しない状況と、1つまたは複数の別の特徴が存在する状況の両方を指すことができる。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、Aには、Bの他に、他の要素が存在しない状況(すなわち、Aが、単独でかつ排他的にBからなる状況)と、主体Aには、Bの他に、要素C、要素CおよびD、またさらなる別の要素などの、1つまたは複数の別の要素が存在する状況の両方を指すことができる。
【0009】
さらに、「少なくとも1つの(at least one)」、「1つまたは複数の(one or more)」という用語、またはある特徴もしくは要素が1回もしくは複数回存在しうることを示す同様の表現は、この各特徴または要素を示すとき、通常は1度しか使用されないことに留意されたい。以下では、この各特徴または要素を指すとき、多くの場合において、この各特徴または要素が1回または複数回存在しうるにもかかわらず、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」という表現は繰り返されない。
【0010】
本明細書において使用される「試料(sample)」という用語は、対象となる分析物を含むとみられる材料を指す。この試料は、血液、唾液、眼球水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水、粘液、関節液、腹膜液、羊水、組織、細胞などを含む、生理学的流体などの任意の生物学的供給源から得ることができる。この検査試料を使用する前に、この検査試料に、血液からの血漿の調製、粘性の液体の希釈、溶解などの前処理が加えられる場合があり、処理の方法には、濾過、蒸溜、濃縮、妨害成分の不活性化、および試薬の添加が含まれうる。試料は、供給源から得られてすぐに使用されてもよく、たとえば臨床化学検査、免疫学的検査、凝固検査、核酸検査などの、たとえば1つまたは複数の診断検査を実施するために試料の特性を変更するための前処理が加えられた後、たとえば別の溶液での希釈後、または試薬との混合後に使用されてもよい。したがって、本明細書において使用される「試料」という用語は、元の試料に関して使用されるだけでなく、既に処理(ピペット取り、希釈、試薬との混合、濃縮、精製、増幅など)された試料にも関する。本明細書において使用される「分析物(analyte)」という用語は、検出または測定される化合物または組成物を示す。
【0011】
「試薬(reagent)」という用語は、試料の処理に必要とされる組成物を示すのに使用される。試薬は、たとえば反応を起こすため、または検出を可能にするために、試料および/または他の試薬と混合される必要がある任意の液体、たとえば溶剤や化学溶液でもよい。試薬は、たとえば希釈液(水を含む)でもよく、有機溶剤を含んでもよく、洗浄剤を含んでもよく、緩衝剤でもよい。試薬は、たとえば試料、別の試薬、または希釈液によって溶解されるように構成された乾燥試薬でもよい。より厳密な意味での試薬という用語は、反応物を含有する溶液である場合があり、典型的には、反応物は、たとえば試料の中に存在する1つもしくは複数の分析物に結合する、またはそれを化学的に形質転換することができる、化合物もしくは薬品である。反応物の例は、酵素、酵素基質、共役色素、タンパク質結合分子、核酸結合分子、抗体、キレート剤、促進剤、阻害剤、エピトープ、抗原などである。
【0012】
「試料または試薬を処理する(processing a sample or reagent)」という用語は、試料もしくは試薬を、移動する、分取する、分離する、精製する、培養する、取り扱う、もしくは反応させること、または試薬と試料を混合することに関する場合がある。
【0013】
「第1の(first)」および「第2の(second)」という用語は、本発明では、各構成部材同士を概念的に区別するためのみに使用され、いかなる重要性の順序なども示すものではないことに留意されたい。
【0014】
本発明によれば、試料または試薬を処理する機器のためのピペッティング装置が開示される。このピペッティング装置は、連結機構を備え、この連結機構は、少なくとも第1のピペッティングティップに連結するように構成された第1の連結ユニット、第2のピペッティングティップに連結するように構成された第2の連結ユニット、および、第1のピペッティングティップに/から第1の連結ユニットを連結することまたは解放することを選択的に可能にし、かつ、第2のピペッティングティップに/から第2の連結ユニットを連結することまたは解放することを選択的に可能にする、選択要素を備え、この選択要素は、機能的(operatively:「動作的」とも)のみならず機械的に、第1の連結ユニットおよび第2の連結ユニットに連結される。したがって、ひとつの構成部材によって動作されうるこの連結機構に、一方のもしくは他方のピペッティングティップもしくは両方を取り付けることまたはいずれも取り付けないことが可能である。本発明の意味での「機械的に連結される」という用語は、選択要素が、第1の連結ユニットおよび第2の連結ユニットと、直接的または間接的に接続または連結することであると理解されたい。この接続または連結は、非ポジティブ接続、ポジティブ接続((non-)positive connection:「(非)確動接続」とも)および/または接着剤によって実現されうる。
【0015】
本発明で使用される「ピペッティングティップ(pipetting tip)」という用語は、1回のピペッティング処理にのみ使用されうる使い捨てのピペッティングティップと、2回以上のピペッティング処理に使用されうる再利用可能なピペッティングティップを含む。使い捨てのピペッティングティップは、普通はプラスチックで作られ、ピペッティング処理の後に処分される。再利用可能なピペッティングティップは、ピペッティングニードルとして設計されてもよく、普通は、金属、または各試料に使用するのに適当な任意の他の材料で作られる。したがって、本発明で使用される、ピペッティングティップを連結ユニットと連結することに関連する「〜に連結される(coupled to)」という用語は、ピペッティングティップを、連結ユニットに解放可能に連結する処理と、ピペッティングティップと連結ユニットを固定的に連結することとを含む。後者の場合に関しては、ピペッティングニードルは、損傷による交換またはメンテナンス目的を除いて、回して留められるなどして、連結ユニットに固定的に連結されうる。
【0016】
「連結ユニット(coupling unit)」という用語は、ピペットティップと相互に作用し、連結するように構成された、ピペッティング装置上のユニットに関する。当技術分野では、たとえば米国特許第7033543号から、このような連結ユニットはよく知られている。EP189900の複式ピペットや米国特許第7947234(B2)号に記載されているものなどのマルチピペッティング装置などの、2つ以上の連結ユニットを有するピペッティング装置も、当技術分野で知られている。これらのすべての装置では、ピペットティップと相互に作用し、連結する連結ユニットは、互いに対して平行に配置される。
【0017】
当技術分野では、連結ユニットを備えるピペッティング装置がよく知られている。ふさわしい連結機構は、拡張可能な連結要素を備える連結ユニットを含む。これにより、連結ユニットがピペットティップに挿入されるとき、連結ユニットが、ピペットティップと(たとえば摩擦によって)即座に連結しないことが確実となる。この連結要素を拡張しない場合、連結ユニットは、ピペットティップと連結されることなしに、再びピペットティップから引き抜かれうる。これにより、選択要素を使用して連結要素を拡張することによって、ピペットティップを連結ユニットに選択的に連結することが可能になる。これにより、選択要素を使用して連結要素の拡張を元に戻すことによって、ピペットティップを連結ユニットから選択的に解放することも可能になる。
【0018】
連結機構の1つのタイプが、米国特許第7033543号に記載されている。この連結機構は、連結ユニットに配置される拡張可能な連結要素としての圧縮されたOリングと、ピペットティップの境界領域の凹部とを備える。この連結ユニットは、ピペットティップの接触領域(interface region:「結合領域」、「境界領域」または「インタフェース領域」とも)に動かされ、圧縮されたOリングは、ピペットティップの接触領域の凹部区域の中で拡張されて、連結ユニットとピペットティップを連結させる。ふさわしい連結機構の別の実施形態が、米国特許出願公開第20100196210号に記載されている。この連結機構は、別々のシール要素(たとえばOリングであるが、他の構造も提案されている)と、拡張可能であり、ピペットティップの接触部(interface:「境界」「結合部」または「インタフェース」とも)にある凹部またはくり抜き部と相互に作用して連結ユニットをピペットティップの接触部に連結させる保持要素とを備える。
【0019】
一実施形態では、ピペッティング装置は、第1の連結ユニットと第2の連結ユニットの少なくとも2つのペアを備えてもよく、あるペアの第1の連結ユニットと第1のピペットティップの間の連結状態は、別のペアの第1の連結ユニットと第1のピペットティップの間の連結状態と同じであり、あるペアの第2の連結ユニットと第2のピペットティップの間の連結状態は、別のペアの第2の連結ユニットと第2のピペットティップの間の連結状態と同じである。
【0020】
この連結機構は、第1の連結ユニットに接続される第1の連結レバーと、第2の連結ユニットに接続される第2の連結レバーをさらに備えてもよく、第1の連結レバーは、第1の連結ユニットが第1のピペッティングティップに連結するように構成された係合位置と、第1の連結ユニットが第1のピペッティングティップから解放されるように構成された解放位置との間で移動可能であり、第2の連結レバーは、第2の連結ユニットが第2のピペッティングティップに連結するように構成された係合位置と、第2の連結ユニットが第2のピペッティングティップから解放されるように構成された解放位置との間で移動可能であり、選択要素は、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーと機能的に連結される。したがって、十分に確立された連結レバーの構成は変更される必要はないが、本発明の選択要素に使用されうる。
【0021】
選択要素は、回転ディスクを備えてもよく、この回転ディスクは、選択的に、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成された、突出部および下位部を備える。本発明の意味での回転ディスクは、回転可能なディスクとして理解されたい。すなわち、突出部は、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しないこと、一方と係合すること、または両方と係合することが可能である。下位部も、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しないこと、一方と係合すること、または両方と係合することが可能である。言うまでもなく、突出部と下位部は同時に第1の連結レバーおよび第2の連結レバーと係合できずともよく、突出部のみ、または下位部のみが、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーと同時に係合できてよい。しかし、突出部が第1の連結レバーおよび第2の連結レバーの一方と係合し、その一方で下位部が第1の連結レバーおよび第2の連結レバーの他方と係合することは可能である。さらに、突出部および下位部の一方が第1の連結レバーと第2の連結レバーの両方に係合する場合、突出部および下位部の他方は、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーから係合解除される。したがって、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーの係合の可能性に関しては、この特有の設計を有する単一の回転ディスクによって、かなりの自由度を実現することができる。
【0022】
別の実施形態では、選択要素は、回転ディスクの代わりに、選択的に、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成された突出部を下面に備える、直線シフトブロックを備えてもよい。一実施形態では、中央の凹部が、シフトブロックの下面の2つの突出部の間に配置される。これにより、右の連結レバーと左の連結レバーのどちらかを素早く選択して、降下位置に動かすことが可能になる。
【0023】
第1の連結レバーは、突出部によって係合されるときは係合位置に存在することができ、下位部によって係合されるときは解放位置に存在することができ、第2の連結レバーは、突出部によって係合されるときは係合位置に存在することができ、下位部によって係合されるときは解放位置に存在することができる。したがって、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーの係合および係合解除は、回転ディスクの回転位置で実現される。
【0024】
突出部および下位部のそれぞれは、選択的に、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成されるように、回転ディスクは回転可能であってよい。したがって、係合する動作または係合解除する動作は、回転ディスクを回転させることによって実現することができる。
【0025】
この回転ディスクは、回転ディスクを回転させるように構成された回転可能な軸上に設けられてもよい。したがって、この回転ディスクは、比較的単純な構成によって回転されうる。
【0026】
ピペッティング装置は、軸を回転させるように構成されたモータをさらに備えてもよい。したがって、回転ディスクを手動で操作する必要がなくなる。
第1の連結ユニットは、第1のピペッティングティップの第1の内面に配置された第1の対応する止め具に対し、第1の軸方向止め具に、軸方向にプレストレスを与える(prestress)ように構成された、第1のプレストレス部材を備えてもよく、第2の連結ユニットは、第2のピペッティングティップの第2の内面に配置された第2の対応する止め具に対し、第2の軸方向止め具に、軸方向にプレストレスを与えるように構成された、第2のプレストレス部材を備えてもよい。したがって、第1のピペッティングティップおよび第2のピペッティングティップは、第1の連結ユニットおよび第2の連結ユニットに、確実かつ解放可能に固定されうる。
【0027】
第1のプレストレス部材は、第1のピペッティングティップを第1の連結ユニットに対して密封するように構成された、第1の弾性的に変形可能なシール部材を備えてもよく、第2のプレストレス部材は、第2のピペッティングティップを第2の連結ユニットに対して密封するように構成された、第2の弾性的に変形可能なシール部材を備えてもよい。したがって、ピペッティングティップの中の試料は、試料の劣化または汚染を避けるために、周囲の環境から密封されうる。
【0028】
第1の連結ユニットは、第1のシール部材を軸方向に圧縮するように構成された第1の圧搾装置を備えてもよく、第2の連結ユニットは、第2のシール部材を軸方向に圧縮するように構成された第2の圧搾装置を備えてもよい。第1のシール部材は、第1のピペッティングティップの第1の内面との係合をひき起こすプレストレス力の実質的にない状態では軸方向に圧縮されていない状態であってもよく、軸方向に圧縮される過程で、第1のピペッティングティップの第1の内面との係合をひき起こすプレストレス力に入るように構成されてもよく、第2のシール部材は、第2のピペッティングティップの第2の内面との係合をひき起こすプレストレス力の実質的にない状態では軸方向に圧縮されていない状態であってもよく、軸方向に圧縮される過程で、第2のピペッティングティップの第2の内面との係合をひき起こすプレストレス力に入るように構成されてもよい。したがって、第1のピペッティングティップおよび第2のピペッティングティップは、第1のシール部材および第2のシール部材との係合によって、第1の連結ユニットおよび第2の連結ユニットに、確実かつ解放可能に固定されうる。
【0029】
第1の圧搾装置は、第1の連結レバーに機能的に連結することができ、第2の圧搾装置は、第2の連結レバーに機能的に連結することができる。したがって、第1の圧搾装置は、第1の連結レバーで動作させることができ、第2の圧搾装置は、第2の連結レバーで動作させることができる。
【0030】
ピペッティング装置は、第1のシリンジが第1のプランジャを備え、第2のシリンジが第2のプランジャを備える、第1のシリンジおよび第2のシリンジと、第1のプランジャおよび第2のプランジャを動作させるように構成される単一のアクチュエータとをさらに備えてもよい。すなわち、第1のプランジャと第2のプランジャは、単一のアクチュエータによって動作されうる。したがって、単一のプランジャを単一のアクチュエータに関連づける必要はなく、2つ以上のプランジャを動作させるのに必要なアクチュエータの数が減る。
【0031】
第1のシリンジと第2のシリンジは、互いに対して平行に配置されてもよい。したがって、単一のアクチュエータによってプランジャを動作させるための構成が単純化されうる。
【0032】
第1のシリンジおよび第2のシリンジは、連結機構の中に延びることができる。したがって、コンパクトな構成が提供される。
ピペッティング装置は、第1の連結ユニットと第2の連結ユニットが互いに対して平行に配置される非傾斜位置と、第1の連結ユニットが第2の連結ユニットに対して傾けられる傾斜位置との間で第1の連結ユニットを動かすための傾斜機構をさらに備えてもよい。したがって、本発明のピペッティング装置によれば、第1の連結ユニットは、枢動によって、第2の連結ユニットから遠ざけて動かされうる。これにより、第1の連結ユニットが第2の連結ユニットに対して傾けられる場合、第1の連結ユニットは、第2の連結ユニットの沈む動きを妨げないので、第2の連結ユニットに連結されるピペッティングティップは、より深く試料容器に沈められうる。
【0033】
傾斜機構は、第1の枢動部の回りで傾斜可能でもよい。したがって、傾斜機構も、比較的単純な構成を示す単一の枢動軸または回転軸の回りの単一の枢動によって、傾斜位置に移動されうる。
【0034】
ピペッティング装置は、傾斜機構をトリガするように構成された傾斜機構トリガをさらに備えてもよい。したがって、第1の連結ユニットが傾けられる前に、まず第1の連結ユニットの傾斜が開始されまたはトリガされなければならない。
【0035】
傾斜機構トリガは、傾斜機構を非傾斜位置に解放可能に固定するように構成されてもよい。したがって、第1の連結ユニットの望ましくない傾斜が防止される。
傾斜機構は第1の凹部を備えてもよく、傾斜機構トリガはピンを備えてもよく、ピンと第1の凹部との係合によって、傾斜機構は、非傾斜位置に固定可能である。したがって、ピンと第1の凹部との係合によって、第1の連結ユニットの望ましくない傾斜が防止される。
【0036】
傾斜機構トリガは、第2の枢動部の回りで枢動するように構成されたトリガ・レバーを備えてもよい。したがって、傾斜機構および第1の連結ユニットの傾斜運動は、トリガ・レバーの単純な回転運動または枢動によって開始されまたはトリガされうる。
【0037】
ピンは、トリガ・レバーに接続されてもよい。したがって、ピンは、トリガ・レバーの運動によって動かされうる。
傾斜機構は、ピンの第1の凹部からの係合解除によって、非傾斜位置から解放可能でもよい。したがって、傾斜機構は、第1の連結ユニットの非傾斜位置に確実に固定されうるが、一方、ピンを第1の凹部から外す単純な動きによって、そこから解放されうる。
【0038】
ピンは、第2の枢動部の回りでトリガ・レバーを枢動させることによって、第1の凹部と選択的に係合可能かつ係合解除可能でもよい。したがって、傾斜機構は、第1の連結ユニットの非傾斜位置に確実に固定されうるが、ピンを第1の凹部から外すことをもたらすトリガ・レバーの単純な枢動によって、そこから解放されうる。
【0039】
傾斜機構は、傾斜位置において解放可能に固定可能でもよい。したがって、第1の連結ユニットが非傾斜位置に戻る望ましくない動き、および第1の連結ユニットが試料容器に衝突することが防止されうる。
【0040】
連結機構は、第1の連結ユニットに接続される第1の連結レバーと、第2の連結ユニットに接続される第2の連結レバーと、第1の連結ユニットに設けられた第1の連結ユニット突出部とをさらに備えてもよい。第1の連結レバーは、第1の連結レバー凹部を備えてもよい。この傾斜機構は、第1の連結ユニット突出部と第1の連結レバー凹部との係合によって、傾斜位置に解放可能に固定可能でもよい。したがって、比較的単純な構成によって、第1の連結ユニットが非傾斜位置に戻る望ましくない動き、および第1の連結ユニットが試料容器に衝突することが確実に防止されうる。
【0041】
傾斜機構は、第1の連結ユニット突出部の第1の連結レバー凹部からの係合解除によって、傾斜位置から解放可能でもよい。したがって、第1の連結ユニットは、第1の連結ユニット突出部を第1の連結レバー凹部から外すことによって、非傾斜位置に戻ることができる。
【0042】
第1の連結ユニット突出部は、傾斜機構を第1の枢動部の回りで枢動させることによって、第1の連結レバー凹部と選択的に係合可能かつ係合解除可能でもよい。したがって、第1の連結ユニット突出部が第1の連結レバー凹部に入る、または第1の連結レバー凹部から出る回転運動または枢動によって、第1の連結ユニットは、傾斜位置または非傾斜位置に動かされうる。
【0043】
傾斜機構トリガは、分析装置の作動装置との係合によって作動するように構成されてもよい。したがって、傾斜機構トリガは、このピペッティング装置の外部の装置、またはこのピペッティング装置とは別々の装置によって作動されうる。これにより、ピペッティング装置にアクチュエータを設けて、傾斜機構トリガを作動させる必要がなくなる。
【0044】
傾斜機構トリガは、ピペッティング装置の、作動装置に対する第1の方向への動きによって作動されるように構成されてもよい。したがって、容易に制御可能なピペッティング装置の動きによって、傾斜機構を作動させることができる。
【0045】
傾斜機構は、作動装置の突出部と係合可能な第2の凹部を備えてもよい。傾斜機構は、作動装置の突出部と係合する第2の凹部を用いて、ピペッティング装置の作動装置に対する第2の方向への動きによって、第1の枢動部の回りで傾斜可能でもよい。第2の方向は、第1の方向とは異なってもよい。したがって、傾斜機構は、ピペッティング装置の外部の装置、またはピペッティング装置とは別々の装置によって傾けられうる。これにより、ピペッティング装置自体にアクチュエータを設けて、傾斜機構および第1の連結ユニットを傾斜させる必要がなくなる。
【0046】
この第2の方向は、第1の方向に対して垂直でもよい。したがって、傾斜機構は、ピペッティング装置の動きによって、トリガされうるだけでなく、傾けられうる。
傾斜機構は、アクチュエータによって、第1の枢動部の回りで傾斜可能でもよい。このように、アクチュエーション装置をなくすことが望まれる場合に実現されうる代替策が実現される。
【0047】
ピペッティング装置は、第1の連結ユニットが非傾斜位置にあるか、それとも傾斜位置にあるかを検出するためのセンサをさらに備えてもよい。このセンサは、ホールセンサでもよい。ピペッティング装置は、傾斜機構に配置された磁石をさらに備えてもよい。このように、第1の連結ユニットが非傾斜位置にあるか、それとも傾斜位置にあるかが検出されうる。これにより、第1の連結ユニットと試料容器の衝突が起きる可能性がない場合にのみ、第2のピペッティング装置が試料容器に沈められることが確実となる。
【0048】
本発明によれば、試料または試薬を処理する機器が開示される。機器は、前に述べられたようなピペッティング装置と、第1の容器用の投入部であって、容器は試料または試薬を備える、投入部と、ピペッティング装置によって試料または試薬が移動されうる第2の容器を保持するための保持器とを備える。
【0049】
本発明によれば、上記のようなピペッティング装置を使用して、試料または試薬をピペッティングする方法が開示される。この方法は、
− 第1の連結ユニットが第1のピペッティングティップと連結するのを可能にするように、選択要素を選択的に動作させるステップ、
− 第2の連結ユニットが第2のピペッティングティップと連結するのを可能にするように、選択要素を選択的に動作させるステップ、
− 第1のピペッティングティップによって、第1の容器から第1の試料または試薬を吸引するステップ、および/または
− 第2のピペッティングティップによって、第2の容器から第2の試料または試薬を吸引するステップを含む。
【0050】
本発明によれば、上記のようなピペッティング装置を使用して、試料または試薬をピペッティングする方法が開示される。この方法は、
− 第2のピペッティングティップを第2の連結ユニットに連結するステップと、
− 第1の連結ユニットを、第1の連結ユニットと第2の連結ユニットが互いに対して平行に配置される非傾斜位置から第1の連結ユニットが第2の連結ユニットに対して傾けられる傾斜位置に動かすステップと、
− 第1の連結ユニットが傾斜位置にある間に、試料または試薬を、第2のピペッティングティップによって第1の容器から吸引するステップを含む。
【0051】
本発明の知見を要約して、以下の実施形態が開示される。
実施形態1:連結機構を備える、試料または試薬を処理する機器のためのピペッティング装置であって、この連結機構が、第1のピペッティングティップに連結するように構成された第1の連結ユニットと、第2のピペッティングティップに連結するように構成された第2の連結ユニットと、第1の連結ユニットを第1のピペッティングティップに連結することまたは第1の連結ユニットを第1のピペッティングティップから解放することを選択的に可能にし、かつ、第2の連結ユニットを第2のピペッティングティップに連結することまたは第2の連結ユニットを第2のピペッティングティップから解放することを選択的に可能にする選択要素と、を少なくとも備え、この選択要素が、第1の連結ユニットおよび第2の連結ユニットに機械的に連結される、ピペッティング装置。
【0052】
実施形態2:連結機構が、第1の連結ユニットに接続された第1の連結レバーと、第2の連結ユニットに接続された第2の連結レバーとをさらに備え、第1の連結レバーが、第1の連結ユニットが第1のピペッティングティップに連結するように構成された係合位置と、第1の連結ユニットが第1のピペッティングティップから解放されるように構成された解放位置との間で移動可能であり、第2の連結レバーが、第2の連結ユニットが第2のピペッティングティップに連結するように構成された係合位置と、第2の連結ユニットが第2のピペッティングティップから解放されるように構成された解放位置との間で移動可能であり、選択要素が、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーに機能的に連結される、実施形態1に記載のピペッティング装置。
【0053】
実施形態3:選択要素が、回転ディスクを備え、回転ディスクが、選択的に、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成された、突出部および下位部を備える、実施形態2に記載のピペッティング装置。
【0054】
実施形態4:第1の連結レバーが、突出部によって係合されるときは係合位置にあり、下位部によって係合されるときは解放位置にあり、第2の連結レバーが、突出部によって係合されるときは係合位置にあり、下位部によって係合されるときは解放位置にある、実施形態3に記載のピペッティング装置。
【0055】
実施形態5:突出部および下位部のそれぞれが、選択的に、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成されるように、回転ディスクが回転可能である、実施形態3または4に記載のピペッティング装置。
【0056】
実施形態6:回転ディスクが、回転ディスクを回転させるように構成された回転可能な軸上に設けられる、実施形態5に記載のピペッティング装置。
実施形態7:軸を回転させるように構成されたモータをさらに備える、実施形態6に記載のピペッティング装置。
【0057】
実施形態8:第1の連結ユニットが、第1のピペッティングティップの第1の内面に配置された第1の対応する止め具に対し、第1の軸方向止め具に、軸方向にプレストレスを与えるように構成された、第1のプレストレス部材を備え、第2の連結ユニットが、第2のピペッティングティップの第2の内面に配置された第2の対応する止め具に対し、第2の軸方向止め具に、軸方向にプレストレスを与えるように構成された、第2のプレストレス部材を備える、実施形態2から6のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
【0058】
実施形態9:第1のプレストレス部材が、第1のピペッティングティップを第1の連結ユニットに対して密封するように構成された、第1の弾性的に変形可能なシール部材を備え、第2のプレストレス部材が、第2のピペッティングティップを第2の連結ユニットに対して密封するように構成された、第2の弾性的に変形可能なシール部材を備える、実施形態8に記載のピペッティング装置。
【0059】
実施形態10:第1の連結ユニットが、第1のシール部材を軸方向に圧縮するように構成された第1の圧搾装置を備え、第2の連結ユニットが、第2のシール部材を軸方向に圧縮するように構成された第2の圧搾装置を備える、実施形態9に記載のピペッティング装置。
【0060】
実施形態11:第1のシール部材が、第1のピペッティングティップの第1の内面との係合をひき起こすプレストレス力の実質的にない状態では軸方向に圧縮されていない状態であり、軸方向に圧縮される過程で、第1のピペッティングティップの第1の内面との係合をひき起こすプレストレス力に入るように構成されており、第2のシール部材が、第2のピペッティングティップの第2の内面との係合をひき起こすプレストレス力の実質的にない状態では軸方向に圧縮されていない状態であり、軸方向に圧縮される過程で、第2のピペッティングティップの第2の内面との係合をひき起こすプレストレス力に入るように構成されている、実施形態10に記載のピペッティング装置。
【0061】
実施形態12:第1の圧搾装置が第1の連結レバーと機能的に連結され、第2の圧搾装置が第2の連結レバーと機能的に連結される、実施形態10または11に記載のピペッティング装置。
【0062】
実施形態13:第1のシリンジおよび第2のシリンジであって、第1のシリンジが第1のプランジャを備え、第2のシリンジが第2のプランジャを備える、第1のシリンジおよび第2のシリンジと、第1のプランジャおよび第2のプランジャを動作させるように構成される単一のアクチュエータとをさらに備える、実施形態1から12のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
【0063】
実施形態14:第1のシリンジと第2のシリンジが、互いに対して平行に配置される、実施形態13に記載のピペッティング装置。
実施形態15:第1のシリンジおよび第2のシリンジが、連結機構の中に延びる、実施形態13または14に記載のピペッティング装置。
【0064】
実施形態16:第1の連結ユニットと第2の連結ユニットが互いに対して平行に配置される非傾斜位置と、第1の連結ユニットが第2の連結ユニットに対して傾けられる傾斜位置との間で、第1の連結ユニットを動かすための傾斜機構をさらに備える、実施形態2から15のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
【0065】
実施形態17:傾斜機構が、第1の枢動部の回りで傾斜可能である、実施形態16に記載のピペッティング装置。
実施形態18:傾斜機構をトリガするように構成された傾斜機構トリガをさらに備える、実施形態16または17に記載のピペッティング装置。
【0066】
実施形態19:傾斜機構トリガが、傾斜機構を非傾斜位置に解放可能に固定するように構成された、実施形態18に記載のピペッティング装置。
実施形態20:傾斜機構機構が第1の凹部を備え、傾斜機構トリガがピンを備え、傾斜機構が、ピンと第1の凹部との係合によって、非傾斜位置に固定可能である、実施形態19に記載のピペッティング装置。
【0067】
実施形態21:傾斜機構トリガが、第2の枢動部の回りで枢動するように構成されたトリガ・レバーを備える、実施形態20に記載のピペッティング装置。
実施形態22:ピンが、トリガ・レバーに接続される、実施形態21に記載のピペッティング装置。
【0068】
実施形態23:傾斜機構が、ピンの第1の凹部からの係合解除によって、非傾斜位置から解放可能である、実施形態22に記載のピペッティング装置。
実施形態24:第2の枢動部の回りでトリガ・レバーを枢動させることによって、ピンが、第1の凹部と選択的に係合可能かつ係合解除可能である、実施形態23に記載のピペッティング装置。
【0069】
実施形態25:傾斜機構が、傾斜位置に解放可能に固定可能である、実施形態17から24のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
実施形態26:連結機構が、第1の連結ユニットに設けられた第1の連結ユニット突出部をさらに備え、第1の連結レバーが、第1の連結レバー凹部を備え、第1の連結ユニット突出部と第1の連結レバー凹部との係合によって、傾斜機構が、傾斜位置に解放可能に固定可能である、実施形態25に記載のピペッティング装置。
【0070】
実施形態27:第1の連結ユニット突出部の第1の連結レバー凹部からの係合解除によって、傾斜機構が、傾斜位置から解放可能である、実施形態26に記載のピペッティング装置。
【0071】
実施形態28:第1の枢動部の回りで傾斜機構を枢動させることによって、第1の連結ユニット突出部が、第1の連結レバー凹部と選択的に係合可能かつ係合解除可能である、実施形態27に記載のピペッティング装置。
【0072】
実施形態29:傾斜機構トリガが、分析装置の作動装置との係合によって作動するように構成された、請求項18から28のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
実施形態30:傾斜機構トリガが、ピペッティング装置の、作動装置に対する第1の方向への動きよって作動されるように構成された、実施形態29に記載のピペッティング装置。
【0073】
実施形態31:傾斜機構が、作動装置の突出部と係合可能な第2の凹部を備え、傾斜機構は、作動装置の突出部と係合する第2の凹部を用いて、ピペッティング装置の作動装置に対する第2の方向への動きによって、第1の枢動部の回りで傾斜可能である、実施形態30に記載のピペッティング装置。
【0074】
実施形態32:第2の方向が、第1の方向とは異なる、実施形態31に記載のピペッティング装置。
実施形態33:第2の方向が、第1の方向に対して垂直である、実施形態31または32に記載のピペッティング装置。
【0075】
実施形態34:傾斜機構が、アクチュエータによって、第1の枢動部の回りで傾斜可能である、実施形態17から33のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
実施形態35:第1の連結ユニットが非傾斜位置にあるのか、それとも傾斜位置にあるのかを検出するためのセンサをさらに備える、実施形態16から34のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
【0076】
実施形態36:センサがホールセンサである、実施形態35に記載のピペッティング装置。
実施形態37:傾斜機構に配置された磁石をさらに備える、実施形態36に記載のピペッティング装置。
【0077】
実施形態38:実施形態1から37のいずれか1つに記載のピペッティング装置と、第1の容器用の投入部であって、容器は試料または試薬を備える、投入部と、ピペッティング装置によって試料または試薬が移動されうる第2の容器を保持するための保持器とを備える、試料または試薬を処理する機器。
【0078】
実施形態39:実施形態1から37のいずれか1つに記載のピペッティング装置を使用して試料または試薬をピペッティングする方法であって、
− 第1の連結ユニットが第1のピペッティングティップと連結するのを可能にするように、選択要素を選択的に動作させるステップ、
− 第2の連結ユニットが第2のピペッティングティップと連結するのを可能にするように、選択要素を選択的に動作させるステップ、
− 第1のピペッティングティップによって、第1の試料または試薬を第1の容器から吸引するステップ、および/または
− 第2のピペッティングティップによって、第2の試料または試薬を第2の容器から吸引するステップを含む、方法。
【0079】
実施形態40:実施形態1から37のいずれか1つに記載のピペッティング装置を使用して試料または試薬をピペッティングする方法であって、
− 第2のピペッティングティップを第2の連結ユニットに連結するステップと、
− 第1の連結ユニットを、第1の連結ユニットと第2の連結ユニットが互いに対して平行に配置される非傾斜位置から、第1の連結ユニットが第2の連結ユニットに対して傾けられる傾斜位置に動かすステップと、
− 第1の連結ユニットが傾斜位置にある間に、第2のピペッティングティップによって試料または試薬を第1の容器から吸引するステップを含む、方法。
【0080】
本発明のさらなる特徴および実施形態は、後に続く実施形態の説明において、より詳細に開示されることになる。その中で、これらの各特徴は、当業者には理解されることになるように、別のやり方、または任意の実施可能な組合せで実現されうる。本発明の範囲は、開示される実施形態によって限定されない。これらの実施形態は、概略的に図に示される。図において、これらの図における同一の参照番号は、同一の、または機能的に同等な要素を指す。