特許第6816123号(P6816123)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6816123試料または試薬を処理する機器のためのピペッティング装置、試料または試薬を処理する機器、および試料または試薬をピペッティングする方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816123
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】試料または試薬を処理する機器のためのピペッティング装置、試料または試薬を処理する機器、および試料または試薬をピペッティングする方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20210107BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   G01N1/00 101K
   G01N35/10 B
   G01N35/10 G
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-512851(P2018-512851)
(86)(22)【出願日】2016年10月12日
(65)【公表番号】特表2018-536840(P2018-536840A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(86)【国際出願番号】EP2016074398
(87)【国際公開番号】WO2017064089
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2019年7月22日
(31)【優先権主張番号】15189536.4
(32)【優先日】2015年10月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100203611
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 大地
(72)【発明者】
【氏名】バッハマン,ハンス−ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】バルメットラー,クルト
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト,ゲザ
(72)【発明者】
【氏名】シュニーベリ,ロルフ
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2001/0039843(US,A1)
【文献】 特表2007−533981(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0178016(US,A1)
【文献】 特開平09−119936(JP,A)
【文献】 特開平09−119935(JP,A)
【文献】 米国特許第05057281(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 − 1/44
G01N 35/10 −37/00
B01L 3/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結機構を備える、試料または試薬を処理する機器のためのピペッティング装置(100)であって、前記連結機構が、第1のピペッティングティップ(108)に連結するように構成された第1の連結ユニット(104)と、第2のピペッティングティップ(110)に連結するように構成された第2の連結ユニット(106)と、前記第1の連結ユニット(104)を前記第1のピペッティングティップ(108)に連結すること、または前記第1のピペッティングティップ(108)から前記第1の連結ユニット(104)を解放することを選択的に可能にし、かつ、前記第2の連結ユニットを前記第2のピペッティングティップ(110)に連結することまたは前記第2のピペッティングティップ(110)から前記第2の連結ユニット(106)を解放することを選択的に可能にする、選択要素(138)と、を少なくとも備え、前記選択要素(138)が、前記第1の連結ユニット(104)および前記第2の連結ユニット(106)と機械的に連結され、前記選択要素が、一方もしくは他方の前記ピペッティングティップ、または前記ピペッティングティップの両方を前記連結機構に取り付けること、あるいは前記ピペッティングティップのいずれも前記連結機構への取り付けないことを制御するように構成された単一の構成部材である、ピペッティング装置(100)。
【請求項2】
前記連結機構が、前記第1の連結ユニット(104)に接続された第1の連結レバー(112)と、前記第2の連結ユニット(106)に接続された第2の連結レバー(114)をさらに備え、前記第1の連結レバー(112)が、前記第1の連結ユニット(104)が前記第1のピペッティングティップ(108)に連結するように構成された係合位置と、前記第1の連結ユニット(104)が前記第1のピペッティングティップ(108)から解放されるように構成された解放位置との間で移動可能であり、前記第2の連結レバー(114)が、前記第2の連結ユニット(106)が前記第2のピペッティングティップ(110)に連結するように構成された係合位置と、前記第2の連結(106)ユニットが前記第2のピペッティングティップ(110)から解放されるように構成された解放位置との間で移動可能であり、前記選択要素(138)が、前記第1の連結レバー(112)および前記第2の連結レバー(114)と機能的に連結される、請求項1に記載のピペッティング装置(100)。
【請求項3】
前記選択要素(138)が、回転ディスク(140)を備え、前記回転ディスク(140)が、選択的に、前記第1の連結レバー(112)および前記第2の連結レバー(114)のいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成された、突出部(142)および下位部(144)を備える、請求項2に記載のピペッティング装置(100)。
【請求項4】
前記第1の連結レバー(112)が、前記突出部(142)によって係合されるときは前記係合位置にあり、前記下位部(144)によって係合されるときは前記解放位置にあり、前記第2の連結レバー(114)が、前記突出部(142)によって係合されるときは前記係合位置にあり、前記下位部(144)によって係合されるときは前記解放位置にある、請求項3に記載のピペッティング装置(100)。
【請求項5】
前記突出部(142)および前記下位部(144)のそれぞれが、選択的に、前記第1の連結レバー(112)および前記第2の連結レバー(114)のいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成されるに、前記回転ディスク(140)が回転可能である、請求項3または4に記載のピペッティング装置(100)。
【請求項6】
前記回転ディスク(140)が、前記回転ディスク(140)を回転させるように構成された回転可能な軸(146)上に設けられる、請求項5に記載のピペッティング装置(100)。
【請求項7】
前記軸(146)を回転させるように構成されたモータ(148)をさらに備える、請求項6に記載のピペッティング装置(100)。
【請求項8】
第1のシリンジ(122)および第2のシリンジ(124)であって、前記第1のシリンジ(122)が第1のプランジャ(126)を備え、前記第2のシリンジ(124)が第2のプランジャ(128)を備える、第1のシリンジ(122)および第2のシリンジ(124)と、前記第1のプランジャ(126)および前記第2のプランジャ(128)を動作させるように構成されるアクチュエータ(130)とをさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のピペッティング装置(100)。
【請求項9】
前記第1のシリンジ(122)および前記第2のシリンジ(124)が、前記連結機構の中に延びる、請求項8に記載のピペッティング装置(100)。
【請求項10】
前記第1の連結ユニット(104)を、前記第1の連結ユニット(104)と前記第2の連結ユニット(106)が互いに対して平行に配置される非傾斜位置と、前記第1の連結ユニット(104)が前記第2の連結ユニット(106)に対して傾けられる傾斜位置との間で動かすための傾斜機構をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のピペッティング装置(100)。
【請求項11】
前記傾斜機構が、第1の枢動部の回りで傾斜可能である、請求項10に記載のピペッティング装置(100)。
【請求項12】
前記傾斜機構が、前記傾斜位置に解放可能に固定可能である、請求項10または11に記載のピペッティング装置(100)。
【請求項13】
前記連結機構が、前記第1の連結ユニット(104)に設けられた第1の連結ユニット突出部をさらに備え、前記第1の連結レバー(112)が、第1の連結レバー凹部を備え、前記傾斜機構が、前記第1の連結ユニット突出部と前記第1の連結レバー凹部との係合によって、前記傾斜位置に解放可能に固定可能である、請求項2を引用する請求項12に記載のピペッティング装置(100)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のピペッティング装置(100)と、第1の容器(200)用の投入部であって、前記第1の容器(200)が、試料または試薬を備える、投入部と、前記ピペッティング装置(100)によって前記試料または試薬が移動可能である第2の容器(204)を保持するための保持器(202)とを備える、試料または試薬を処理するための機器(198)。
【請求項15】
− 前記第1の連結ユニット(104)が第1のピペッティングティップ(108)と連結するのを可能にするように、前記選択要素(138)を選択的に動作させるステップと、
− 前記第2の連結ユニット(106)が第2のピペッティングティップ(110)と連結するのを可能にするように、前記選択要素(138)を選択的に動作させるステップと、
− 前記第1のピペッティングティップ(108)によって、第1の試料または試薬を第1の容器から吸引するステップ、および/または
− 前記第2のピペッティングティップ(110)によって、第2の試料または試薬を第2の容器から吸引するステップを含む、
請求項1から13のいずれか一項に記載のピペッティング装置(100)を使用して、試料または試薬をピペッティングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料または試薬を処理する機器のためのピペッティング装置、試料または試薬を処理する機器、および試料または試薬をピペッティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の意味での試料または試薬を処理する機器は、ピペッティング装置を備える。このようなピペッティング装置は、吸引および分注する動作によって、試料または試薬を第1の容器から第2の容器に移動するのに使用される。試料を処理するためのこの種の最新機器の大部分は完全に自動で動作し、容器に収納された試料および/または試薬だけが機器に挿入されなければならず、分取や分析などの所望の処理が始められる必要がある。
【0003】
本発明は、第1の容器に収容された液体の試料または試薬と共に動作する分析器具などの機器のためのものである。普通、第1の容器に収納された試料または試薬は、ピペッタのピペットプローブによって、分析位置で第1の容器から吸われる。具体的には、ピペッタのピペッティングプローブは、移動可能なアームに留められ、上方から、開いた第1の容器に浸かり、適切な量の試料または試薬が、ピペットプローブ(トランスファーニードルとしても知られている)の中に吸われて移動され、第2の容器に移される。普通、第1の容器は、所定のパターンでラックに配置される。これらは、ピペッティング装置の複数の自動ピペッティングチャネルによって取り扱われる。それと同時に、すべての、または単にそのうちのいくつかのピペッティングチャネルを並行して処理することが求められる。並行して働く複数のピペッティングチャネルが、たとえばEP2410342A2で開示されている。
【0004】
分析器具と共に上記のピペッティング装置を使用することによって、並列処理に関する利点がもたらされる。しかし、依然としていくつかの欠点が存在する。具体的には、このような自動ピペッティング装置は、各ピペッティングチャネルに対して個々の制御装置を有し、これにより、大きな空間およびすべての個々の制御機構についての多くのアクチュエータが必要になる。したがって、自動ピペッティング装置で取り扱われるピペッティングチャネルが多くなるほど、ピペッティング処理にかかるコストが上がる。さらに、アクチュエータの数が増加することにより、制御機構が必要とする空間が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2410342(A2)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、構成の複雑さおよび試料または試薬の取扱いに関して改良された、試料または試薬を処理する機器のためのピペッティング装置と、試料または試薬を処理する機器と、このようなピペッティング装置を使用して試料または試薬をピペッティングする方法を提供することである。特に、可能な限り少ないアクチュエータと可能な限り小さな空間を使用していくつかのピペッティングチャネルを制御することができ、これによって自動ピペッティング装置のコストを低減させる、ピペッティング装置および試料または試薬を処理する機器を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、試料または試薬を処理する機器のためのピペッティング装置と、試料または試薬を処理する機器と、独立請求項の特徴を有するピペッティング装置を使用して試料または試薬をピペッティングする方法によって解決される。別のやり方または任意の組合せで実現されうる実施形態は、従属請求項に記載される。
【0008】
「有する(have)」、「備える(comprise)」もしくは「含む(include)」という用語、またはそれらの任意の文法的なバリエーションは、以下で使用されるとき、非排他的に使用される。すなわち、これらの用語は、この文脈で述べられた主体に、これらの用語によって示された特徴の他には、別の特徴が存在しない状況と、1つまたは複数の別の特徴が存在する状況の両方を指すことができる。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、Aには、Bの他に、他の要素が存在しない状況(すなわち、Aが、単独でかつ排他的にBからなる状況)と、主体Aには、Bの他に、要素C、要素CおよびD、またさらなる別の要素などの、1つまたは複数の別の要素が存在する状況の両方を指すことができる。
【0009】
さらに、「少なくとも1つの(at least one)」、「1つまたは複数の(one or more)」という用語、またはある特徴もしくは要素が1回もしくは複数回存在しうることを示す同様の表現は、この各特徴または要素を示すとき、通常は1度しか使用されないことに留意されたい。以下では、この各特徴または要素を指すとき、多くの場合において、この各特徴または要素が1回または複数回存在しうるにもかかわらず、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」という表現は繰り返されない。
【0010】
本明細書において使用される「試料(sample)」という用語は、対象となる分析物を含むとみられる材料を指す。この試料は、血液、唾液、眼球水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水、粘液、関節液、腹膜液、羊水、組織、細胞などを含む、生理学的流体などの任意の生物学的供給源から得ることができる。この検査試料を使用する前に、この検査試料に、血液からの血漿の調製、粘性の液体の希釈、溶解などの前処理が加えられる場合があり、処理の方法には、濾過、蒸溜、濃縮、妨害成分の不活性化、および試薬の添加が含まれうる。試料は、供給源から得られてすぐに使用されてもよく、たとえば臨床化学検査、免疫学的検査、凝固検査、核酸検査などの、たとえば1つまたは複数の診断検査を実施するために試料の特性を変更するための前処理が加えられた後、たとえば別の溶液での希釈後、または試薬との混合後に使用されてもよい。したがって、本明細書において使用される「試料」という用語は、元の試料に関して使用されるだけでなく、既に処理(ピペット取り、希釈、試薬との混合、濃縮、精製、増幅など)された試料にも関する。本明細書において使用される「分析物(analyte)」という用語は、検出または測定される化合物または組成物を示す。
【0011】
「試薬(reagent)」という用語は、試料の処理に必要とされる組成物を示すのに使用される。試薬は、たとえば反応を起こすため、または検出を可能にするために、試料および/または他の試薬と混合される必要がある任意の液体、たとえば溶剤や化学溶液でもよい。試薬は、たとえば希釈液(水を含む)でもよく、有機溶剤を含んでもよく、洗浄剤を含んでもよく、緩衝剤でもよい。試薬は、たとえば試料、別の試薬、または希釈液によって溶解されるように構成された乾燥試薬でもよい。より厳密な意味での試薬という用語は、反応物を含有する溶液である場合があり、典型的には、反応物は、たとえば試料の中に存在する1つもしくは複数の分析物に結合する、またはそれを化学的に形質転換することができる、化合物もしくは薬品である。反応物の例は、酵素、酵素基質、共役色素、タンパク質結合分子、核酸結合分子、抗体、キレート剤、促進剤、阻害剤、エピトープ、抗原などである。
【0012】
「試料または試薬を処理する(processing a sample or reagent)」という用語は、試料もしくは試薬を、移動する、分取する、分離する、精製する、培養する、取り扱う、もしくは反応させること、または試薬と試料を混合することに関する場合がある。
【0013】
「第1の(first)」および「第2の(second)」という用語は、本発明では、各構成部材同士を概念的に区別するためのみに使用され、いかなる重要性の順序なども示すものではないことに留意されたい。
【0014】
本発明によれば、試料または試薬を処理する機器のためのピペッティング装置が開示される。このピペッティング装置は、連結機構を備え、この連結機構は、少なくとも第1のピペッティングティップに連結するように構成された第1の連結ユニット、第2のピペッティングティップに連結するように構成された第2の連結ユニット、および、第1のピペッティングティップに/から第1の連結ユニットを連結することまたは解放することを選択的に可能にし、かつ、第2のピペッティングティップに/から第2の連結ユニットを連結することまたは解放することを選択的に可能にする、選択要素を備え、この選択要素は、機能的(operatively:「動作的」とも)のみならず機械的に、第1の連結ユニットおよび第2の連結ユニットに連結される。したがって、ひとつの構成部材によって動作されうるこの連結機構に、一方のもしくは他方のピペッティングティップもしくは両方を取り付けることまたはいずれも取り付けないことが可能である。本発明の意味での「機械的に連結される」という用語は、選択要素が、第1の連結ユニットおよび第2の連結ユニットと、直接的または間接的に接続または連結することであると理解されたい。この接続または連結は、非ポジティブ接続、ポジティブ接続((non-)positive connection:「(非)確動接続」とも)および/または接着剤によって実現されうる。
【0015】
本発明で使用される「ピペッティングティップ(pipetting tip)」という用語は、1回のピペッティング処理にのみ使用されうる使い捨てのピペッティングティップと、2回以上のピペッティング処理に使用されうる再利用可能なピペッティングティップを含む。使い捨てのピペッティングティップは、普通はプラスチックで作られ、ピペッティング処理の後に処分される。再利用可能なピペッティングティップは、ピペッティングニードルとして設計されてもよく、普通は、金属、または各試料に使用するのに適当な任意の他の材料で作られる。したがって、本発明で使用される、ピペッティングティップを連結ユニットと連結することに関連する「〜に連結される(coupled to)」という用語は、ピペッティングティップを、連結ユニットに解放可能に連結する処理と、ピペッティングティップと連結ユニットを固定的に連結することとを含む。後者の場合に関しては、ピペッティングニードルは、損傷による交換またはメンテナンス目的を除いて、回して留められるなどして、連結ユニットに固定的に連結されうる。
【0016】
「連結ユニット(coupling unit)」という用語は、ピペットティップと相互に作用し、連結するように構成された、ピペッティング装置上のユニットに関する。当技術分野では、たとえば米国特許第7033543号から、このような連結ユニットはよく知られている。EP189900の複式ピペットや米国特許第7947234(B2)号に記載されているものなどのマルチピペッティング装置などの、2つ以上の連結ユニットを有するピペッティング装置も、当技術分野で知られている。これらのすべての装置では、ピペットティップと相互に作用し、連結する連結ユニットは、互いに対して平行に配置される。
【0017】
当技術分野では、連結ユニットを備えるピペッティング装置がよく知られている。ふさわしい連結機構は、拡張可能な連結要素を備える連結ユニットを含む。これにより、連結ユニットがピペットティップに挿入されるとき、連結ユニットが、ピペットティップと(たとえば摩擦によって)即座に連結しないことが確実となる。この連結要素を拡張しない場合、連結ユニットは、ピペットティップと連結されることなしに、再びピペットティップから引き抜かれうる。これにより、選択要素を使用して連結要素を拡張することによって、ピペットティップを連結ユニットに選択的に連結することが可能になる。これにより、選択要素を使用して連結要素の拡張を元に戻すことによって、ピペットティップを連結ユニットから選択的に解放することも可能になる。
【0018】
連結機構の1つのタイプが、米国特許第7033543号に記載されている。この連結機構は、連結ユニットに配置される拡張可能な連結要素としての圧縮されたOリングと、ピペットティップの境界領域の凹部とを備える。この連結ユニットは、ピペットティップの接触領域(interface region:「結合領域」、「境界領域」または「インタフェース領域」とも)に動かされ、圧縮されたOリングは、ピペットティップの接触領域の凹部区域の中で拡張されて、連結ユニットとピペットティップを連結させる。ふさわしい連結機構の別の実施形態が、米国特許出願公開第20100196210号に記載されている。この連結機構は、別々のシール要素(たとえばOリングであるが、他の構造も提案されている)と、拡張可能であり、ピペットティップの接触部(interface:「境界」「結合部」または「インタフェース」とも)にある凹部またはくり抜き部と相互に作用して連結ユニットをピペットティップの接触部に連結させる保持要素とを備える。
【0019】
一実施形態では、ピペッティング装置は、第1の連結ユニットと第2の連結ユニットの少なくとも2つのペアを備えてもよく、あるペアの第1の連結ユニットと第1のピペットティップの間の連結状態は、別のペアの第1の連結ユニットと第1のピペットティップの間の連結状態と同じであり、あるペアの第2の連結ユニットと第2のピペットティップの間の連結状態は、別のペアの第2の連結ユニットと第2のピペットティップの間の連結状態と同じである。
【0020】
この連結機構は、第1の連結ユニットに接続される第1の連結レバーと、第2の連結ユニットに接続される第2の連結レバーをさらに備えてもよく、第1の連結レバーは、第1の連結ユニットが第1のピペッティングティップに連結するように構成された係合位置と、第1の連結ユニットが第1のピペッティングティップから解放されるように構成された解放位置との間で移動可能であり、第2の連結レバーは、第2の連結ユニットが第2のピペッティングティップに連結するように構成された係合位置と、第2の連結ユニットが第2のピペッティングティップから解放されるように構成された解放位置との間で移動可能であり、選択要素は、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーと機能的に連結される。したがって、十分に確立された連結レバーの構成は変更される必要はないが、本発明の選択要素に使用されうる。
【0021】
選択要素は、回転ディスクを備えてもよく、この回転ディスクは、選択的に、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成された、突出部および下位部を備える。本発明の意味での回転ディスクは、回転可能なディスクとして理解されたい。すなわち、突出部は、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しないこと、一方と係合すること、または両方と係合することが可能である。下位部も、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しないこと、一方と係合すること、または両方と係合することが可能である。言うまでもなく、突出部と下位部は同時に第1の連結レバーおよび第2の連結レバーと係合できずともよく、突出部のみ、または下位部のみが、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーと同時に係合できてよい。しかし、突出部が第1の連結レバーおよび第2の連結レバーの一方と係合し、その一方で下位部が第1の連結レバーおよび第2の連結レバーの他方と係合することは可能である。さらに、突出部および下位部の一方が第1の連結レバーと第2の連結レバーの両方に係合する場合、突出部および下位部の他方は、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーから係合解除される。したがって、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーの係合の可能性に関しては、この特有の設計を有する単一の回転ディスクによって、かなりの自由度を実現することができる。
【0022】
別の実施形態では、選択要素は、回転ディスクの代わりに、選択的に、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成された突出部を下面に備える、直線シフトブロックを備えてもよい。一実施形態では、中央の凹部が、シフトブロックの下面の2つの突出部の間に配置される。これにより、右の連結レバーと左の連結レバーのどちらかを素早く選択して、降下位置に動かすことが可能になる。
【0023】
第1の連結レバーは、突出部によって係合されるときは係合位置に存在することができ、下位部によって係合されるときは解放位置に存在することができ、第2の連結レバーは、突出部によって係合されるときは係合位置に存在することができ、下位部によって係合されるときは解放位置に存在することができる。したがって、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーの係合および係合解除は、回転ディスクの回転位置で実現される。
【0024】
突出部および下位部のそれぞれは、選択的に、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成されるように、回転ディスクは回転可能であってよい。したがって、係合する動作または係合解除する動作は、回転ディスクを回転させることによって実現することができる。
【0025】
この回転ディスクは、回転ディスクを回転させるように構成された回転可能な軸上に設けられてもよい。したがって、この回転ディスクは、比較的単純な構成によって回転されうる。
【0026】
ピペッティング装置は、軸を回転させるように構成されたモータをさらに備えてもよい。したがって、回転ディスクを手動で操作する必要がなくなる。
第1の連結ユニットは、第1のピペッティングティップの第1の内面に配置された第1の対応する止め具に対し、第1の軸方向止め具に、軸方向にプレストレスを与える(prestress)ように構成された、第1のプレストレス部材を備えてもよく、第2の連結ユニットは、第2のピペッティングティップの第2の内面に配置された第2の対応する止め具に対し、第2の軸方向止め具に、軸方向にプレストレスを与えるように構成された、第2のプレストレス部材を備えてもよい。したがって、第1のピペッティングティップおよび第2のピペッティングティップは、第1の連結ユニットおよび第2の連結ユニットに、確実かつ解放可能に固定されうる。
【0027】
第1のプレストレス部材は、第1のピペッティングティップを第1の連結ユニットに対して密封するように構成された、第1の弾性的に変形可能なシール部材を備えてもよく、第2のプレストレス部材は、第2のピペッティングティップを第2の連結ユニットに対して密封するように構成された、第2の弾性的に変形可能なシール部材を備えてもよい。したがって、ピペッティングティップの中の試料は、試料の劣化または汚染を避けるために、周囲の環境から密封されうる。
【0028】
第1の連結ユニットは、第1のシール部材を軸方向に圧縮するように構成された第1の圧搾装置を備えてもよく、第2の連結ユニットは、第2のシール部材を軸方向に圧縮するように構成された第2の圧搾装置を備えてもよい。第1のシール部材は、第1のピペッティングティップの第1の内面との係合をひき起こすプレストレス力の実質的にない状態では軸方向に圧縮されていない状態であってもよく、軸方向に圧縮される過程で、第1のピペッティングティップの第1の内面との係合をひき起こすプレストレス力に入るように構成されてもよく、第2のシール部材は、第2のピペッティングティップの第2の内面との係合をひき起こすプレストレス力の実質的にない状態では軸方向に圧縮されていない状態であってもよく、軸方向に圧縮される過程で、第2のピペッティングティップの第2の内面との係合をひき起こすプレストレス力に入るように構成されてもよい。したがって、第1のピペッティングティップおよび第2のピペッティングティップは、第1のシール部材および第2のシール部材との係合によって、第1の連結ユニットおよび第2の連結ユニットに、確実かつ解放可能に固定されうる。
【0029】
第1の圧搾装置は、第1の連結レバーに機能的に連結することができ、第2の圧搾装置は、第2の連結レバーに機能的に連結することができる。したがって、第1の圧搾装置は、第1の連結レバーで動作させることができ、第2の圧搾装置は、第2の連結レバーで動作させることができる。
【0030】
ピペッティング装置は、第1のシリンジが第1のプランジャを備え、第2のシリンジが第2のプランジャを備える、第1のシリンジおよび第2のシリンジと、第1のプランジャおよび第2のプランジャを動作させるように構成される単一のアクチュエータとをさらに備えてもよい。すなわち、第1のプランジャと第2のプランジャは、単一のアクチュエータによって動作されうる。したがって、単一のプランジャを単一のアクチュエータに関連づける必要はなく、2つ以上のプランジャを動作させるのに必要なアクチュエータの数が減る。
【0031】
第1のシリンジと第2のシリンジは、互いに対して平行に配置されてもよい。したがって、単一のアクチュエータによってプランジャを動作させるための構成が単純化されうる。
【0032】
第1のシリンジおよび第2のシリンジは、連結機構の中に延びることができる。したがって、コンパクトな構成が提供される。
ピペッティング装置は、第1の連結ユニットと第2の連結ユニットが互いに対して平行に配置される非傾斜位置と、第1の連結ユニットが第2の連結ユニットに対して傾けられる傾斜位置との間で第1の連結ユニットを動かすための傾斜機構をさらに備えてもよい。したがって、本発明のピペッティング装置によれば、第1の連結ユニットは、枢動によって、第2の連結ユニットから遠ざけて動かされうる。これにより、第1の連結ユニットが第2の連結ユニットに対して傾けられる場合、第1の連結ユニットは、第2の連結ユニットの沈む動きを妨げないので、第2の連結ユニットに連結されるピペッティングティップは、より深く試料容器に沈められうる。
【0033】
傾斜機構は、第1の枢動部の回りで傾斜可能でもよい。したがって、傾斜機構も、比較的単純な構成を示す単一の枢動軸または回転軸の回りの単一の枢動によって、傾斜位置に移動されうる。
【0034】
ピペッティング装置は、傾斜機構をトリガするように構成された傾斜機構トリガをさらに備えてもよい。したがって、第1の連結ユニットが傾けられる前に、まず第1の連結ユニットの傾斜が開始されまたはトリガされなければならない。
【0035】
傾斜機構トリガは、傾斜機構を非傾斜位置に解放可能に固定するように構成されてもよい。したがって、第1の連結ユニットの望ましくない傾斜が防止される。
傾斜機構は第1の凹部を備えてもよく、傾斜機構トリガはピンを備えてもよく、ピンと第1の凹部との係合によって、傾斜機構は、非傾斜位置に固定可能である。したがって、ピンと第1の凹部との係合によって、第1の連結ユニットの望ましくない傾斜が防止される。
【0036】
傾斜機構トリガは、第2の枢動部の回りで枢動するように構成されたトリガ・レバーを備えてもよい。したがって、傾斜機構および第1の連結ユニットの傾斜運動は、トリガ・レバーの単純な回転運動または枢動によって開始されまたはトリガされうる。
【0037】
ピンは、トリガ・レバーに接続されてもよい。したがって、ピンは、トリガ・レバーの運動によって動かされうる。
傾斜機構は、ピンの第1の凹部からの係合解除によって、非傾斜位置から解放可能でもよい。したがって、傾斜機構は、第1の連結ユニットの非傾斜位置に確実に固定されうるが、一方、ピンを第1の凹部から外す単純な動きによって、そこから解放されうる。
【0038】
ピンは、第2の枢動部の回りでトリガ・レバーを枢動させることによって、第1の凹部と選択的に係合可能かつ係合解除可能でもよい。したがって、傾斜機構は、第1の連結ユニットの非傾斜位置に確実に固定されうるが、ピンを第1の凹部から外すことをもたらすトリガ・レバーの単純な枢動によって、そこから解放されうる。
【0039】
傾斜機構は、傾斜位置において解放可能に固定可能でもよい。したがって、第1の連結ユニットが非傾斜位置に戻る望ましくない動き、および第1の連結ユニットが試料容器に衝突することが防止されうる。
【0040】
連結機構は、第1の連結ユニットに接続される第1の連結レバーと、第2の連結ユニットに接続される第2の連結レバーと、第1の連結ユニットに設けられた第1の連結ユニット突出部とをさらに備えてもよい。第1の連結レバーは、第1の連結レバー凹部を備えてもよい。この傾斜機構は、第1の連結ユニット突出部と第1の連結レバー凹部との係合によって、傾斜位置に解放可能に固定可能でもよい。したがって、比較的単純な構成によって、第1の連結ユニットが非傾斜位置に戻る望ましくない動き、および第1の連結ユニットが試料容器に衝突することが確実に防止されうる。
【0041】
傾斜機構は、第1の連結ユニット突出部の第1の連結レバー凹部からの係合解除によって、傾斜位置から解放可能でもよい。したがって、第1の連結ユニットは、第1の連結ユニット突出部を第1の連結レバー凹部から外すことによって、非傾斜位置に戻ることができる。
【0042】
第1の連結ユニット突出部は、傾斜機構を第1の枢動部の回りで枢動させることによって、第1の連結レバー凹部と選択的に係合可能かつ係合解除可能でもよい。したがって、第1の連結ユニット突出部が第1の連結レバー凹部に入る、または第1の連結レバー凹部から出る回転運動または枢動によって、第1の連結ユニットは、傾斜位置または非傾斜位置に動かされうる。
【0043】
傾斜機構トリガは、分析装置の作動装置との係合によって作動するように構成されてもよい。したがって、傾斜機構トリガは、このピペッティング装置の外部の装置、またはこのピペッティング装置とは別々の装置によって作動されうる。これにより、ピペッティング装置にアクチュエータを設けて、傾斜機構トリガを作動させる必要がなくなる。
【0044】
傾斜機構トリガは、ピペッティング装置の、作動装置に対する第1の方向への動きによって作動されるように構成されてもよい。したがって、容易に制御可能なピペッティング装置の動きによって、傾斜機構を作動させることができる。
【0045】
傾斜機構は、作動装置の突出部と係合可能な第2の凹部を備えてもよい。傾斜機構は、作動装置の突出部と係合する第2の凹部を用いて、ピペッティング装置の作動装置に対する第2の方向への動きによって、第1の枢動部の回りで傾斜可能でもよい。第2の方向は、第1の方向とは異なってもよい。したがって、傾斜機構は、ピペッティング装置の外部の装置、またはピペッティング装置とは別々の装置によって傾けられうる。これにより、ピペッティング装置自体にアクチュエータを設けて、傾斜機構および第1の連結ユニットを傾斜させる必要がなくなる。
【0046】
この第2の方向は、第1の方向に対して垂直でもよい。したがって、傾斜機構は、ピペッティング装置の動きによって、トリガされうるだけでなく、傾けられうる。
傾斜機構は、アクチュエータによって、第1の枢動部の回りで傾斜可能でもよい。このように、アクチュエーション装置をなくすことが望まれる場合に実現されうる代替策が実現される。
【0047】
ピペッティング装置は、第1の連結ユニットが非傾斜位置にあるか、それとも傾斜位置にあるかを検出するためのセンサをさらに備えてもよい。このセンサは、ホールセンサでもよい。ピペッティング装置は、傾斜機構に配置された磁石をさらに備えてもよい。このように、第1の連結ユニットが非傾斜位置にあるか、それとも傾斜位置にあるかが検出されうる。これにより、第1の連結ユニットと試料容器の衝突が起きる可能性がない場合にのみ、第2のピペッティング装置が試料容器に沈められることが確実となる。
【0048】
本発明によれば、試料または試薬を処理する機器が開示される。機器は、前に述べられたようなピペッティング装置と、第1の容器用の投入部であって、容器は試料または試薬を備える、投入部と、ピペッティング装置によって試料または試薬が移動されうる第2の容器を保持するための保持器とを備える。
【0049】
本発明によれば、上記のようなピペッティング装置を使用して、試料または試薬をピペッティングする方法が開示される。この方法は、
− 第1の連結ユニットが第1のピペッティングティップと連結するのを可能にするように、選択要素を選択的に動作させるステップ、
− 第2の連結ユニットが第2のピペッティングティップと連結するのを可能にするように、選択要素を選択的に動作させるステップ、
− 第1のピペッティングティップによって、第1の容器から第1の試料または試薬を吸引するステップ、および/または
− 第2のピペッティングティップによって、第2の容器から第2の試料または試薬を吸引するステップを含む。
【0050】
本発明によれば、上記のようなピペッティング装置を使用して、試料または試薬をピペッティングする方法が開示される。この方法は、
− 第2のピペッティングティップを第2の連結ユニットに連結するステップと、
− 第1の連結ユニットを、第1の連結ユニットと第2の連結ユニットが互いに対して平行に配置される非傾斜位置から第1の連結ユニットが第2の連結ユニットに対して傾けられる傾斜位置に動かすステップと、
− 第1の連結ユニットが傾斜位置にある間に、試料または試薬を、第2のピペッティングティップによって第1の容器から吸引するステップを含む。
【0051】
本発明の知見を要約して、以下の実施形態が開示される。
実施形態1:連結機構を備える、試料または試薬を処理する機器のためのピペッティング装置であって、この連結機構が、第1のピペッティングティップに連結するように構成された第1の連結ユニットと、第2のピペッティングティップに連結するように構成された第2の連結ユニットと、第1の連結ユニットを第1のピペッティングティップに連結することまたは第1の連結ユニットを第1のピペッティングティップから解放することを選択的に可能にし、かつ、第2の連結ユニットを第2のピペッティングティップに連結することまたは第2の連結ユニットを第2のピペッティングティップから解放することを選択的に可能にする選択要素と、を少なくとも備え、この選択要素が、第1の連結ユニットおよび第2の連結ユニットに機械的に連結される、ピペッティング装置。
【0052】
実施形態2:連結機構が、第1の連結ユニットに接続された第1の連結レバーと、第2の連結ユニットに接続された第2の連結レバーとをさらに備え、第1の連結レバーが、第1の連結ユニットが第1のピペッティングティップに連結するように構成された係合位置と、第1の連結ユニットが第1のピペッティングティップから解放されるように構成された解放位置との間で移動可能であり、第2の連結レバーが、第2の連結ユニットが第2のピペッティングティップに連結するように構成された係合位置と、第2の連結ユニットが第2のピペッティングティップから解放されるように構成された解放位置との間で移動可能であり、選択要素が、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーに機能的に連結される、実施形態1に記載のピペッティング装置。
【0053】
実施形態3:選択要素が、回転ディスクを備え、回転ディスクが、選択的に、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成された、突出部および下位部を備える、実施形態2に記載のピペッティング装置。
【0054】
実施形態4:第1の連結レバーが、突出部によって係合されるときは係合位置にあり、下位部によって係合されるときは解放位置にあり、第2の連結レバーが、突出部によって係合されるときは係合位置にあり、下位部によって係合されるときは解放位置にある、実施形態3に記載のピペッティング装置。
【0055】
実施形態5:突出部および下位部のそれぞれが、選択的に、第1の連結レバーおよび第2の連結レバーのいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成されるように、回転ディスクが回転可能である、実施形態3または4に記載のピペッティング装置。
【0056】
実施形態6:回転ディスクが、回転ディスクを回転させるように構成された回転可能な軸上に設けられる、実施形態5に記載のピペッティング装置。
実施形態7:軸を回転させるように構成されたモータをさらに備える、実施形態6に記載のピペッティング装置。
【0057】
実施形態8:第1の連結ユニットが、第1のピペッティングティップの第1の内面に配置された第1の対応する止め具に対し、第1の軸方向止め具に、軸方向にプレストレスを与えるように構成された、第1のプレストレス部材を備え、第2の連結ユニットが、第2のピペッティングティップの第2の内面に配置された第2の対応する止め具に対し、第2の軸方向止め具に、軸方向にプレストレスを与えるように構成された、第2のプレストレス部材を備える、実施形態2から6のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
【0058】
実施形態9:第1のプレストレス部材が、第1のピペッティングティップを第1の連結ユニットに対して密封するように構成された、第1の弾性的に変形可能なシール部材を備え、第2のプレストレス部材が、第2のピペッティングティップを第2の連結ユニットに対して密封するように構成された、第2の弾性的に変形可能なシール部材を備える、実施形態8に記載のピペッティング装置。
【0059】
実施形態10:第1の連結ユニットが、第1のシール部材を軸方向に圧縮するように構成された第1の圧搾装置を備え、第2の連結ユニットが、第2のシール部材を軸方向に圧縮するように構成された第2の圧搾装置を備える、実施形態9に記載のピペッティング装置。
【0060】
実施形態11:第1のシール部材が、第1のピペッティングティップの第1の内面との係合をひき起こすプレストレス力の実質的にない状態では軸方向に圧縮されていない状態であり、軸方向に圧縮される過程で、第1のピペッティングティップの第1の内面との係合をひき起こすプレストレス力に入るように構成されており、第2のシール部材が、第2のピペッティングティップの第2の内面との係合をひき起こすプレストレス力の実質的にない状態では軸方向に圧縮されていない状態であり、軸方向に圧縮される過程で、第2のピペッティングティップの第2の内面との係合をひき起こすプレストレス力に入るように構成されている、実施形態10に記載のピペッティング装置。
【0061】
実施形態12:第1の圧搾装置が第1の連結レバーと機能的に連結され、第2の圧搾装置が第2の連結レバーと機能的に連結される、実施形態10または11に記載のピペッティング装置。
【0062】
実施形態13:第1のシリンジおよび第2のシリンジであって、第1のシリンジが第1のプランジャを備え、第2のシリンジが第2のプランジャを備える、第1のシリンジおよび第2のシリンジと、第1のプランジャおよび第2のプランジャを動作させるように構成される単一のアクチュエータとをさらに備える、実施形態1から12のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
【0063】
実施形態14:第1のシリンジと第2のシリンジが、互いに対して平行に配置される、実施形態13に記載のピペッティング装置。
実施形態15:第1のシリンジおよび第2のシリンジが、連結機構の中に延びる、実施形態13または14に記載のピペッティング装置。
【0064】
実施形態16:第1の連結ユニットと第2の連結ユニットが互いに対して平行に配置される非傾斜位置と、第1の連結ユニットが第2の連結ユニットに対して傾けられる傾斜位置との間で、第1の連結ユニットを動かすための傾斜機構をさらに備える、実施形態2から15のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
【0065】
実施形態17:傾斜機構が、第1の枢動部の回りで傾斜可能である、実施形態16に記載のピペッティング装置。
実施形態18:傾斜機構をトリガするように構成された傾斜機構トリガをさらに備える、実施形態16または17に記載のピペッティング装置。
【0066】
実施形態19:傾斜機構トリガが、傾斜機構を非傾斜位置に解放可能に固定するように構成された、実施形態18に記載のピペッティング装置。
実施形態20:傾斜機構機構が第1の凹部を備え、傾斜機構トリガがピンを備え、傾斜機構が、ピンと第1の凹部との係合によって、非傾斜位置に固定可能である、実施形態19に記載のピペッティング装置。
【0067】
実施形態21:傾斜機構トリガが、第2の枢動部の回りで枢動するように構成されたトリガ・レバーを備える、実施形態20に記載のピペッティング装置。
実施形態22:ピンが、トリガ・レバーに接続される、実施形態21に記載のピペッティング装置。
【0068】
実施形態23:傾斜機構が、ピンの第1の凹部からの係合解除によって、非傾斜位置から解放可能である、実施形態22に記載のピペッティング装置。
実施形態24:第2の枢動部の回りでトリガ・レバーを枢動させることによって、ピンが、第1の凹部と選択的に係合可能かつ係合解除可能である、実施形態23に記載のピペッティング装置。
【0069】
実施形態25:傾斜機構が、傾斜位置に解放可能に固定可能である、実施形態17から24のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
実施形態26:連結機構が、第1の連結ユニットに設けられた第1の連結ユニット突出部をさらに備え、第1の連結レバーが、第1の連結レバー凹部を備え、第1の連結ユニット突出部と第1の連結レバー凹部との係合によって、傾斜機構が、傾斜位置に解放可能に固定可能である、実施形態25に記載のピペッティング装置。
【0070】
実施形態27:第1の連結ユニット突出部の第1の連結レバー凹部からの係合解除によって、傾斜機構が、傾斜位置から解放可能である、実施形態26に記載のピペッティング装置。
【0071】
実施形態28:第1の枢動部の回りで傾斜機構を枢動させることによって、第1の連結ユニット突出部が、第1の連結レバー凹部と選択的に係合可能かつ係合解除可能である、実施形態27に記載のピペッティング装置。
【0072】
実施形態29:傾斜機構トリガが、分析装置の作動装置との係合によって作動するように構成された、請求項18から28のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
実施形態30:傾斜機構トリガが、ピペッティング装置の、作動装置に対する第1の方向への動きよって作動されるように構成された、実施形態29に記載のピペッティング装置。
【0073】
実施形態31:傾斜機構が、作動装置の突出部と係合可能な第2の凹部を備え、傾斜機構は、作動装置の突出部と係合する第2の凹部を用いて、ピペッティング装置の作動装置に対する第2の方向への動きによって、第1の枢動部の回りで傾斜可能である、実施形態30に記載のピペッティング装置。
【0074】
実施形態32:第2の方向が、第1の方向とは異なる、実施形態31に記載のピペッティング装置。
実施形態33:第2の方向が、第1の方向に対して垂直である、実施形態31または32に記載のピペッティング装置。
【0075】
実施形態34:傾斜機構が、アクチュエータによって、第1の枢動部の回りで傾斜可能である、実施形態17から33のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
実施形態35:第1の連結ユニットが非傾斜位置にあるのか、それとも傾斜位置にあるのかを検出するためのセンサをさらに備える、実施形態16から34のいずれか1つに記載のピペッティング装置。
【0076】
実施形態36:センサがホールセンサである、実施形態35に記載のピペッティング装置。
実施形態37:傾斜機構に配置された磁石をさらに備える、実施形態36に記載のピペッティング装置。
【0077】
実施形態38:実施形態1から37のいずれか1つに記載のピペッティング装置と、第1の容器用の投入部であって、容器は試料または試薬を備える、投入部と、ピペッティング装置によって試料または試薬が移動されうる第2の容器を保持するための保持器とを備える、試料または試薬を処理する機器。
【0078】
実施形態39:実施形態1から37のいずれか1つに記載のピペッティング装置を使用して試料または試薬をピペッティングする方法であって、
− 第1の連結ユニットが第1のピペッティングティップと連結するのを可能にするように、選択要素を選択的に動作させるステップ、
− 第2の連結ユニットが第2のピペッティングティップと連結するのを可能にするように、選択要素を選択的に動作させるステップ、
− 第1のピペッティングティップによって、第1の試料または試薬を第1の容器から吸引するステップ、および/または
− 第2のピペッティングティップによって、第2の試料または試薬を第2の容器から吸引するステップを含む、方法。
【0079】
実施形態40:実施形態1から37のいずれか1つに記載のピペッティング装置を使用して試料または試薬をピペッティングする方法であって、
− 第2のピペッティングティップを第2の連結ユニットに連結するステップと、
− 第1の連結ユニットを、第1の連結ユニットと第2の連結ユニットが互いに対して平行に配置される非傾斜位置から、第1の連結ユニットが第2の連結ユニットに対して傾けられる傾斜位置に動かすステップと、
− 第1の連結ユニットが傾斜位置にある間に、第2のピペッティングティップによって試料または試薬を第1の容器から吸引するステップを含む、方法。
【0080】
本発明のさらなる特徴および実施形態は、後に続く実施形態の説明において、より詳細に開示されることになる。その中で、これらの各特徴は、当業者には理解されることになるように、別のやり方、または任意の実施可能な組合せで実現されうる。本発明の範囲は、開示される実施形態によって限定されない。これらの実施形態は、概略的に図に示される。図において、これらの図における同一の参照番号は、同一の、または機能的に同等な要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】本発明によるピペッティング装置の斜視図である。
図2】ピペッティング装置のピペッティング機構の斜視図である。
図3】ピペッティング装置の連結機構および選択要素の斜視図である。
図4】第1の動作状態でのピペッティング装置の斜視図である。
図5】第2の動作状態でのピペッティング装置の斜視図である。
図6】第3の動作状態でのピペッティング装置の斜視図である。
図7】第4の動作状態でのピペッティング装置の斜視図である。
図8】本発明によるピペッティング装置の左面の斜視図である。
図9】ピペッティング装置の別の左面の斜視図である。
図10】ピペッティング装置の右正面の斜視図である。
図11】ピペッティング装置の左背面の斜視図である。
図12】ピペッティング装置の右背面の斜視図である。
図13】ピペッティング装置の左背面の斜視図である。
図14】試料または試薬を処理する機器の概略図である。
図15】選択要素の第2の実施形態を示す図である。
図16-1】傾斜機構、および傾斜機構の要素の非傾斜位置から傾斜位置への進行を示す詳細図である(訳注:出願手続の便宜上、原文の図16(a)〜(o)を図16−1、図16−2、図16−3、図16−4および図16−5として記載した。図16−1は図16(a)〜(c)に対応する。)。
図16-2】傾斜機構、および傾斜機構の要素の非傾斜位置から傾斜位置への進行を示す詳細図である(訳注:図16(d)〜(f)に対応する)。
図16-3】傾斜機構、および傾斜機構の要素の非傾斜位置から傾斜位置への進行を示す詳細図である(訳注:図16(g)〜(i)に対応する)。
図16-4】傾斜機構、および傾斜機構の要素の非傾斜位置から傾斜位置への進行を示す詳細図である(訳注:図16(j)〜(l)に対応する)。
図16-5】傾斜機構、および傾斜機構の要素の非傾斜位置から傾斜位置への進行を示す詳細図である(訳注:図16(m)〜(o)に対応する。なお、原文の「Short description of the figures」には「Figs. 16 (a)-(m)」と記載されている(図16(n)および図16(o)についての説明が欠けている)が、これは「Figs. 16 (a) - (o)」の誤記であろうと考えられる。)。
【発明を実施するための形態】
【0082】
図1は、ピペッティング装置100の斜視図を示す。ピペッティング装置100は、いわゆるピペッタのように設計されてもよい。ピペッティング装置100は、連結機構102を備える。この連結機構102は、少なくとも、第1の連結ユニット104および第2の連結ユニット106を備える。この第1の連結ユニット104は、第1のピペッティングティップ108に連結するように構成される。第2の連結ユニット106は、第2のピペッティングティップ110に連結するように構成される。連結機構102は、第1の連結ユニット104に接続される第1の連結レバー112をさらに備える。連結機構102は、第2の連結ユニット106に接続される第2の連結レバー114をさらに備える。この第1の連結レバー112は、第1の連結ユニット104が第1のピペッティングティップ108に連結するように構成された係合位置と、第1の連結ユニット104が第1のピペッティングティップ108から解放されるように構成された解放位置との間で移動可能である。類似して、第2の連結レバー114は、第2の連結ユニット106が第2のピペッティングティップ110に連結するように構成された係合位置と、第2の連結ユニット106が第2のピペッティングティップ110から放されるように構成された解放位置との間で移動可能である。この目的のために、第1の連結ユニット106は、第1のピペッティングティップ108の第1の内面に配置された第1の対応する止め具に対し、第1の軸方向止め具に、軸方向にプレストレスを与えるように構成された、第1のプレストレス部材(詳細には示されない)を備える。第2の連結ユニット106は、第2のピペッティングティップ110の第2の内面に配置された第2の対応する止め具に対し、第2の軸方向止め具に、軸方向にプレストレスを与えるように構成された、第2のプレストレス部材(詳細には示されない)を備える。この第1のプレストレス部材は、第1のピペッティングティップ108を第1の連結ユニット104に対して密封するように構成された、第1の弾性的に変形可能なシール部材を備える。この第2のプレストレス部材は、第2の連結ユニット106に対して第2のピペッティングティップ110を密封するように構成された、第2の弾性的に変形可能なシール部材を備える。
【0083】
第1の連結ユニット104は、第1のシール部材を軸方向に圧縮するように構成された、第1の圧搾装置116を備える。第2の連結ユニット106は、第2のシール部材を軸方向に圧縮するように構成された、第2の圧搾装置を備える。この第1のシール部材は、第1のピペッティングティップ108の第1の内面との係合をひき起こすプレストレス力の実質的にない状態では軸方向に圧縮されている状態であり、軸方向に圧縮される過程で、第1のピペッティングティップ108の第1の内面との係合をひき起こすプレストレス力に入るように構成されている。第2のシールは、第2のピペッティングティップ110の第2の内面との係合をひき起こすプレストレス力の実質的にない状態では軸方向に圧縮されていない状態であり、軸方向に圧縮される過程で、第2のピペッティングティップ110の第2の内面との係合をひき起こすプレストレス力に入るように構成されている。図1から解釈されうるように、第1の圧搾装置116は、第1の連結レバー112に機能的に連結される。第2の圧搾装置118は、第2の連結レバー114に機能的に連結される。
【0084】
図2は、ピペッティング装置100のピペッティング機構120の斜視図を示す。ピペッティング機構120は、第1のシリンジ122および第2のシリンジ124を備える。第1のシリンジ122は、第1のプランジャ126を備える。第2のシリンジ124は、第2のプランジャ128を備える。ピペッティング機構120は、第1のプランジャ126および第2のプランジャ128を作動させるように構成された、単一のアクチュエータ130をさらに備える。たとえば、アクチュエータ130は、スピンドル134を駆動するように構成されたモータ132として形成される。スピンドル134は、コネクタ136を用いて第1のプランジャ126および第2のプランジャ128に接続される。したがって、モータ132を用いてスピンドル134を軸方向に動かすことにより、第1のプランジャ126および第2のプランジャ128は、同時に軸方向に動く。さらに、第1のシリンジ122および第2のシリンジ124は、互いに平行に配置される。第1のシリンジ122および第2のシリンジ124は、連結機構102の中に延びる。第1のプランジャ126および第2のプランジャ128を軸方向に動かすことにより、試料は、第1のピペッティングティップ108および/または第2のピペッティングティップ110の中に吸引されうる、またはそこから分注されうる。
【0085】
図3は、ピペッティング装置100の連結機構102および選択要素138の斜視図を示す。選択要素138は、選択的に第1の連結ユニット104を第1のピペッティングティップ108に連結し、また第1の連結ユニット104を第1のピペッティングティップ108から解放することを可能にし、かつ選択的に第2の連結ユニット106を第2のピペッティングティップ110と連結し、また第2の連結ユニット106を第2のピペッティングティップ110から解放することを可能にするように構成される。図3に示されるように、選択要素138の基本原理によれば、選択要素138は、機能的かつ機械的に、第1の連結ユニット104および第2の連結ユニット106と連結される。具体的には、選択要素138は、機能的かつ機械的に、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114と連結される。本発明の基本原理に関してより良く理解するのを助けるために、図3は、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114に直接機械的に連結された選択要素138を示すことに留意されたい。以下でさらに詳細に述べられることになるように、必ずしもというわけではないが、さらなる構成部材を用いて、選択要素138を第1の連結レバー112および第2の連結レバー114に間接的に連結することも実施可能である。選択要素138は、回転ディスク140を備える。
【0086】
回転ディスク140は、特有の形状で形成される。具体的には、回転ディスク140は、単なる平坦なディスクとして形成されず、突出部142および下位部144を備える。回転ディスク140および突出部が第1の連結レバー112および第2の連結レバー114を横切って動くときにいかなる乱れまたは障害も起きないように、突出部142および下位部144は互いに徐々に移行する。突出部142および下位部144は、選択的に、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114のいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成される。言い換えれば、第1の連結レバー112は、突出部142と下位部144のどちらかによって接触されてもよく、第2の連結レバー114は、突出部142または下位部144のどちらかによって接触されてもよい。このそれぞれの接触は、別々に実現されても、同時に実現されてもよい。したがって、第1の連結レバー112は、突出部142によって係合されるときは係合位置にあり、下位部144によって係合されるときは解放位置にある。類似して、第2の連結レバー114は、突出部142によって係合されるときは係合位置にあり、下位部144によって係合されるときは解放位置にある。具体的には、突出部142および下位部144のそれぞれが、選択的に、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114のいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成されるように、回転ディスク140は回転可能である。この目的のために、回転ディスク140は、回転ディスク140を回転させるように構成された回転可能な軸146上に設けられる。回転ディスク140が回転されて、突出部142が第1の連結レバー112および/または第2の連結レバー114と係合するとき、突出部142および下位部144は、選択要素138の作動のいかなる乱れも起きないように、互いに徐々に移行する。ピペッティング装置100は、軸146を回転させるように構成されたモータ148をさらに備えてもよい。選択要素138の動作は、以下でさらに詳細に述べられることになる。
【0087】
図4は、第1の動作状態での選択要素138を示す。図4は、第1の回転位置での回転ディスク140を示し、下位部144が、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114と係合する。すなわち、第1の圧搾装置116および第2の圧搾装置118は、第1のシール部材および第2のシール部材が軸方向に圧縮されない、非圧搾位置にある。具体的には、図4で示されるように、第1の圧搾装置116および第2の圧搾装置118は、軸方向上方位置にある。したがって、第1の連結ユニット104は、第1のピペッティングティップ108から解放され、または係合せず、第2の連結ユニット106は、第2のピペッティングティップ110から解放され、または係合しない。
【0088】
図5は、第2の動作状態での選択要素138を示す。図5は、第2の回転位置での回転ディスク140を示し、突出部142は第1の連結レバー112と係合するが、下位部144は第2の連結レバー114と係合する。すなわち、回転ディスク140は、第1の回転位置に対して90°回転されている。第1の圧搾装置116は第1のシール部材が軸方向に圧縮される軸方向下方位置に、第1のピペッティングティップ108の第1の内面との係合をひき起こすプレストレス力にいるように、位置し、一方、第2の圧搾装置118は、依然として軸方向上方位置または非圧搾位置に位置し、ここでは、第2のシール部材は、軸方向に圧縮されない。したがって、第1の連結ユニット104は、第1のピペッティングティップ108と連結または係合し、第2の連結ユニット106は、第2のピペッティングティップ110から解放される、または係合しない。
【0089】
図6は、第3の動作状態での選択要素138を示す。図6は、第3の回転位置での回転ディスク140を示し、突出部142が、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114と係合する。したがって、回転ディスク140は、第2の回転位置に対して90°、第1の回転位置に対して180°回転されている。第1の圧搾装置112はそれぞれ、第1のシール部材および第2のシール部材が軸方向に圧縮される軸方向下方位置に、第1のピペッティングティップ108の第1の内面および第2のピペッティングティップ110の第2の内面との係合をひき起こすプレストレス力にいるように、位置する。したがって、第1の連結ユニット104は、第1のピペッティングティップ108と連結または係合し、第2の連結ユニット106は、第2のピペッティングティップ110と連結または係合する。
【0090】
図7は、第4の動作状態での選択要素138を示す。図7は、第4の回転位置での回転ディスク140を示し、突出部142は第2の連結レバー114と係合するが、下位部144は第1の連結レバー112と係合する。したがって、回転ディスク140は、第1の回転位置に対して90°回転されているが、第1の回転位置から第2の回転位置への回転運動の方向に対して、逆方向に回転されている。第2の圧搾装置118は、第2のシール部材が軸方向に圧縮される軸方向下方位置に、第2のピペッティングティップ110の第2の内面との係合をひき起こすプレストレス力にいるように、位置し、一方、第1の圧搾装置116は、軸方向上方位置または非圧搾位置に位置し、ここでは、第1のシール部材は、軸方向に圧縮されない。したがって、第2の連結ユニット106は、第2のピペッティングティップ110と連結または係合され、第1の連結ユニット104は、第1のピペッティングティップ108から解放される、または係合しない。要約すると、連結機構102は、回転ディスク140を回転させることにより、第1のピペッティングティップ108および第2のピペッティングティップ110のいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成される。
【0091】
これ以降、ピペッティング装置100のさらなる態様が述べられることになる。
図8は、ピペッティング装置100の左面の斜視図を示す。ピペッティング装置100は、傾斜機構150をさらに備える。傾斜機構150は、第1の連結ユニット104および第2の連結ユニット106が互いに対して平行に配置される非傾斜位置と、第1の連結ユニット104が第2の連結ユニット106に対して傾けられる傾斜位置との間で、第1の連結ユニット104を動かすように構成される。
【0092】
図9は、ピペッティング装置100の左面の別の斜視図を示す。図8は、非傾斜位置での第1の連結ユニット104を示すが、図2は、傾斜位置での第1の連結ユニット104を示し、第1の連結ユニット104が、第2の連結ユニット106に対して傾けられる。ピペッティング装置は、傾斜機構150をトリガするように構成された傾斜機構トリガ152をさらに備える。ピペッティング装置100は、枠154をさらに備える。連結機構102、傾斜機構150および傾斜機構トリガ152は、少なくとも部分的には枠154の中に配置され、枠154によって支持される。一実施形態では、選択要素138も、少なくとも部分的には、枠154の中に配置される。具体的には、傾斜機構150は、第1の枢動部156の回りで傾斜可能である。第1の枢動部156は、枠154に配置された、対応して形成された開口120の中に支持される。開口158は、枠154の側壁に配置される。このように、傾斜機構150は、第1の連結ユニット104と共に傾斜可能である。言い換えれば、傾斜機構150もまた、非傾斜位置と傾斜位置の間で移動可能である。第1のピペッティングティップ108または第2のピペッティングティップ110が容器と衝突するのを防止するために、第1の連結ユニット104は、傾けられうるだけでなく、非傾斜位置および傾斜位置のそれぞれにおいてロックもされうるのが望ましい。これ以降、非傾斜位置および傾斜位置のそれぞれにおいて、第1の連結ユニット104のロックがどのように実現されるのかが、より詳細に定められることになる。
【0093】
図10は、ピペッティング装置100の右正面の斜視図を示す。本発明をより良く理解するのを助けるために、図10では枠154が省略されていることに留意されたい。傾斜機構トリガ152は、傾斜機構150を非傾斜位置に解放可能に固定するように構成される。具体的には、傾斜機構150は、第1の凹部160を備える。傾斜機構トリガ152は、ピン162を備える。ピン162と第1の凹部160との係合により、傾斜機構150は、非傾斜位置に固定可能である。具体的には、傾斜機構トリガ152は、第2の枢動部166の回りを枢動するように構成されたトリガ・レバー164を備える。第2の枢動部166は、枠154によって支持されてもよい。第2の枢動部166は、第1の枢動部156に対して垂直に配置される。たとえば、第2の枢動部166は、枠154の前方の壁に配置される。具体的には、ピン162は、トリガ・レバー164に接続される。ピン162の第1の凹部160からの係合解除を用いて、傾斜機構150は、非傾斜位置から解放可能である。ピン162は、第2の枢動部166の回りでトリガ・レバー164を枢動させることによって、選択的に第1の凹部160と係合可能かつ係合解除可能である。
【0094】
図10から解釈されうるように、第2の枢動部166は、トリガ・レバー164の中央部168に設けられる。ピン162は、トリガ・レバー164の上端部170に設けられる。図10は、第1の凹部160と係合されるピン162を示す。トリガ・レバー164が、図10の図示に対して反時計回りの方向に第2の枢動部166の回りで枢動される場合、上端部170は、図10の図示に対して左に動く。したがって、ピン162も左に動き、第1の凹部160から解放される。類似して、トリガ・レバー164が、第2の枢動部166の回りで時計回りの方向に枢動される場合、上端部170は右に動き、その結果、ピン162も右に動く。次いで、ピン162が第1の凹部160と係合し、その結果、傾斜機構150の傾斜が阻止される。
【0095】
さらに、傾斜機構150は、傾斜位置に解放可能に固定可能である。図8および9で示されるように、連結機構102は、第1の連結ユニット104に設けられた第1の連結ユニット突出部172をさらに備える。第1の連結ユニット突出部172は、カラー(collar:「襟(襟状部)」とも)として形成されてもよい。第1の連結レバー112は、第1の連結レバー凹部174を備える。第1の連結ユニット突出部172と第1の連結レバー凹部174との係合により、傾斜機構150は、傾斜位置に解放可能に固定可能である。類似して、第1の連結ユニット突出部172の第1の連結レバー凹部174からの係合解除により、傾斜機構150は、傾斜位置から解放可能である。
【0096】
第1の枢動部156の回りで傾斜機構150を枢動させることにより、第1の連結ユニット突出部172は、第1の連結レバー凹部174と選択的に係合可能かつ係合解除可能である。たとえば、傾斜機構150が、図8および9が示すものに対して、第1の枢動部156の回りで反時計回りの方向に枢動される場合、第1の連結ユニット104は、非傾斜位置から傾斜位置へ動かされる。さらに、第1の連結ユニット突出部172は、図9に示されるように、第1の連結レバー凹部と係合する方に動かされる。類似して、傾斜機構150が、図9から始まり、第1の枢動部156の回りで時計回りの方向に枢動される場合、第1の連結ユニット104は、傾斜位置から非傾斜位置に動かされ、第1の連結ユニット突出部172は、第1の連結レバー凹部174との係合を解除される。
【0097】
図11は、ピペッティング装置100の左背面の斜視図を示す。図11では、本発明をより良く理解するのを助けるために、枠154が省略されていることに留意されたい。傾斜機構150の傾斜運動を実現するために、本発明は、作動装置176を提供する。より具体的には、傾斜機構トリガ152は、ピペッティング装置100の、作動装置176に対する第1の方向178への動きによって作動されるように構成される。作動装置176は、ピペッティング装置100に対して静止していることに留意されたい。図11から解釈されうるように、作動装置176は、少なくとも1つの傾斜面180を備える。ピペッティング装置100が、作動装置176に向かって第1の方向178に動かされるとき、傾斜面180は、トリガ・レバー164の下端部182と係合する。下端部182と係合する傾斜面180は、図11の図示においては、下端部によって隠されていることに留意されたい。傾斜面180により、トリガ・レバー164が、第2の枢動部166の回りで、図11が示すものに対して時計回りの方向、図10が示すものに対して反時計回りの方向に対応する、に枢動する。
【0098】
図12は、ピペッティング装置100の右背面の斜視図を示す。図12では、本発明をより良く理解するのを助けるために、枠154が省略されていることに留意されたい。傾斜面180のトリガ・レバー164の下端部182との係合により、ピン162は、上記のやり方で第1の凹部160から解放される。図12は、第1の凹部160から外に動かされたピン162を示す。したがって、ピペッティング装置100が作動装置176に向かって第1の方向178に動くことは、傾斜機構150の固定を解放する働きをする。傾斜機構150を傾けるために、作動装置176と関連する別の処理が実現される。
【0099】
図13は、ピペッティング装置100の左背面の斜視図を示す。図13では、本発明をより良く理解するのを助けるために、枠154が省略されていることに留意されたい。具体的には、傾斜機構150は、傾斜機構150の前端部186に配置された第2の凹部184を備える。前端部186は、作動装置176に対向する。作動装置176は、突出部188を備える。突出部188は、傾斜面180の上方に配置される。第2の凹部184は、突出部188と係合可能である。第2の凹部184が突出部188と係合した状態でのピペッティング装置100の作動装置176に対する第2の方向190への動きによって、傾斜機構150は、上記のやり方で第1の枢動部156の回りで傾斜可能である。第2の方向190は、第1の方向178とは異なる。より具体的には、第2の方向190は、第1の方向178に対して垂直である。
【0100】
ピペッティング装置100が、図13の図示に対して上方への動きに対応する第2の方向190に動かされる場合、第2の凹部184が突出部188と係合して、前端部186が下方に動かされ、その結果、傾斜機構150は、第1の枢動部156の回りで反時計回りの方向に枢動する。この構成により、傾斜機構150の傾斜運動を実現するための追加的なアクチュエータをなくすことが可能になる。言うまでもなく、本発明の代替実施形態(詳細には示されない)によれば、傾斜機構150は、アクチュエータを用いて、第1の枢動部156の回りで傾斜可能でもよい。さらに、図13に示されるように、ピペッティング装置100は、第1の連結ユニット104が、非傾斜位置にあるのか、それとも傾斜位置にあるのかを検出するためのセンサ192を備えてもよい。センサ192は、ホールセンサ194でもよい。この目的のために、磁石196が、傾斜機構150に配置されてもよい。磁石196がホールセンサ194に対向する場合、ホールセンサ194は、信号を出力する;それは第1の連結ユニット104が非傾斜位置にあることを示す。磁石196がホールセンサ194から遠ざけて動かされたがゆえに磁石196がホールセンサ194に対向していない場合、ホールセンサ194は、信号を出力しない;それは第1の連結ユニット104が傾斜位置にあることを示す。
【0101】
図14は、試料または試薬を処理するための機器198の概略図を示す。ピペッティング装置100は、機器198の一部でもよい。機器198は、試料または試薬を備える第1の容器200用の投入部205と、ピペッティング装置100により試料または試薬を移動可能である第2の容器204を保持するための保持器202とをさらに備える。第1の容器200および/または第2の容器204は、管(tube:「試験管」とも)として形成されてもよい。試料を処理するための機器198は、作動装置176をさらに備える。作動装置176は、第1の容器200に配置されてもよい。別法として、作動装置176は、第1の容器200から間隔を空けて配置されてもよい。
【0102】
本発明によるピペッティング装置を用いて、試料または試薬をピペットで取ることができる。具体的には、第1のピペッティングティップ108は、任意選択で第1の連結ユニット104に連結されても、されなくてもよいが、一方、第2のピペッティングティップ110は、第2の連結ユニット106に連結される。このような連結プロセスは、当業者によく知られているので、この連結プロセスに関する説明は省略される。次いで、第1の連結ユニット104は、非傾斜位置から傾斜位置に動かされ、その結果、第1の連結ユニット104は、第2の連結ユニット106に対して傾けられる。次いで、第1の容器200からの試料または試薬は、第2のピペッティングティップ110により吸引される。具体的には、第2のピペッティングティップ110の長さと第2のピペッティングティップ110の第1の容器200への目標浸漬深さとの比が、所定の閾値を下回る場合、第1の連結ユニット104は、傾斜位置に動かされる。言い換えれば、第2のピペッティングティップ110の長さが、目標浸漬深さに対応するのに十分でない場合、第1の連結104ユニットと、第2のピペッティングティップ110が沈められる第1の容器200との衝突を避けるために、第1の連結ユニット104は、傾斜位置に動かされる。第1の連結ユニット104が傾斜位置に動かされなければならない場合、第1のピペッティングティップ108は、第1の連結ユニット104と連結されない。最後に、ピペッティング装置100は、第2の容器204に動かされ、試料または試薬は、第2のピペッティングティップ110から第2の容器204に分注される。このように、試料または試薬は、ピペッティング装置100を用いて、第1の容器200から第2の容器204に移動される。
【0103】
上記のように、図3は、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114に直接機械的に連結される選択要素138を示す。図3は、選択要素138が、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114と協働することを説明するためのものである。図4〜13は、構成上の代替策を示し、選択要素138は、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114と間接的に機械的に連結される。より具体的には、選択要素138は、第1の接続部材206および第2の接続部材208によって、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114と機械的に連結される。第1の接続部材206および第2の接続部材208が、これ以降さらに詳細に説明される理由のために、任意選択で提供されてもよい。上記のように、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114は、それぞれ係合位置と解放位置の間で移動可能である。この種類の動きは、直線的な動きではなく、枢動である。より具体的には、第1の連結レバー112は、第1の枢動軸210の回りで枢動的に移動可能であり、第2の連結レバー114は、第2の枢動軸212の回りで枢動的に移動可能である。第1の枢動軸210は、第1の連結レバー112の前端部214で延び、第2の枢動軸212は、第2の連結レバー114の前端部216で延びる。第1の枢動軸210および第2の枢動軸212は、互いに部分的に重なってもよい。したがって、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114は、それぞれ、第1の枢動軸210および第2の枢動軸212の回りで、円形の経路に沿って移動可能である。第1の連結レバー112は、第1の挿入孔218をさらに備え、第2の連結レバー114は、第2の挿入孔220を備える。第1の挿入孔218は、第1の連結レバー112の後端部222に配置される。第2の挿入孔220は、第2の連結レバー114の後端部224(図10)に配置される。第1の接続部材206は、第1の接続部材突出部226を備える。第2の接続部材208は、第2の接続部材突出部228(図10)を備える。第1の接続部材突出部226は、第1の接続部材206の下端部230に配置され、第1の挿入孔218の中に挿入されるように構成される。このように、第1の接続部材206は、第1の連結レバー112に接続される。第2の接続部材突出部228は、第2の接続部材208の下端部232に配置され、第2の挿入孔220の中に挿入されるように構成される。第1の接続部材206の上端部234(下端部230の反対側)は、回転ディスク140と接続される。同様に、第2の接続部材208の上端部236(下端部232の反対側)は、回転ディスク140と接続される。したがって、第1の接続部材206および第2の接続部材208のそれぞれは、選択要素138および回転ディスク140のそれぞれと接続される。
【0104】
第1の連結レバー112は、第1の接続部材突出部226の回りでも枢動的に移動可能であり、第2の連結レバー114は、第2の接続部材突出部228の回りでも枢動的に移動可能である。さらに、第1の接続部材突出部226は、第1の挿入孔218の中でわずかに移動可能であり、第2の接続部材突出部228は、第2の挿入孔220の中でわずかに移動可能である。したがって、突出部142および下位部114と第1の連結レバー112および第2の連結114の正確な係合状態からのずれを引き起こす可能性がある、回転ディスク140の表面に沿った第1の連結レバー112および第2の連結114の動きは、第1の接続部材206および第2の接続部材208によって防止される。より具体的には、第1の連結レバー112および第2の連結レバー114の円形の経路に沿った動きが打ち消される一方、第1の接続部材206および第2の接続部材208は、回転ディスク140が回転することによって、上方向および下方向に直線的に移動可能である。したがって、第1の接続部材206および第2の接続部材208の上端部234、236は、軸146に対して垂直な平面内の同じ位置にとどまるが、これらは回転ディスク140に対して横方向には動かない。回転ディスク140と接触する面は、第1の接続部材206および第2の接続部材208に対する回転ディスク140の回転位置から独立して、常に変わらないように、第1の接続部材206および第2の接続部材208の上端部234、236は、丸みを帯びてもよいことに留意されたい。
【0105】
連結機構102は、第1の連結ユニット104および第2の連結ユニット106以上のものを備えてもよいことが、明確に述べられる。言い換えれば、連結機構102は、3つ以上のピペッティングティップを連結ユニットに連結するのを可能にするために、3つ以上の連結ユニットを備えてもよい。たとえば、連結機構102は、4、6、8、10、またはさらに多くのピペッティングティップの連結を可能にするために、4、6、8、10、またはさらに多くの連結ユニットを備えてもよい。この場合、ピペッティング装置100は、2つの連結ユニットのいくつかのペアを作動させるのを可能にするように、上記のように設計されうる選択要素138を複数備える。
【0106】
図15a)〜i)は、選択要素の別の実施形態を示す。この選択要素は、選択的に、第1の連結レバー(112)および第2の連結レバー(114)のいずれとも係合しない、一方と係合する、または両方と係合するように構成された、下面(303)の突出部(301、302)を備える、直線シフトブロック(300)を備える。一実施形態では、中央の凹部(304)は、シフトブロック(300)の下面(303)の2つの突出部(301、302)の間に配置される。これにより、右(112)の連結レバーと左(114)の連結レバーのどちらかを素早く選択して、降下位置に動かすことが可能になる。図15a)では、第1の接続部材(206)と第2の接続部材(208)の両方が、中央の凹部(304)に位置する。この位置から、直線シフトブロック(300)は、右のどちらにも(訳注:原文は「either to the right」。原文のみから判断すると、「左右のどちらにも」または単なる「右に」の誤りであると思われる。図15bも考慮すると、単なる「右に」の誤りであると思われる。)動くことができ、その結果、連結レバー(112)が降下位置(図15b)に動かされ、また直線シフトブロック(300)がさらに右に動かされて、その結果、両方の連結レバー(112、114)が降下位置に動かされ(図15c)、また直線シフトブロック(300)がさらに右に動くことにより、連結レバー(112)は降下位置にないが、連結レバー(114)を降下位置になるように選択することが可能になる(図15d)。直線シフトブロック(300)をさらに動かすと、連結レバー(112、114)のいずれも、降下位置になるように選択されない(図15e)。図15f)〜i)は、逆方向の直線シフトブロック(300)の動きを示し、選択的に、連結レバー(114)(図15f)、両方の連結レバー(114、112)(図15g)、もしくは連結レバー(112)(図15h)を降下位置に動かす、またはいずれの連結レバー(112、114)(図15i)も降下位置に動かさないことが可能になる。したがって、この直線シフトブロック(300)により、突出部(301、302)のうちの1つで対応する接続部材(206、208)に接触することによって、降下位置に動かされるように連結レバー(112または114)を選択すること、および/または突出部(301、302)に相当しない下面(303)で対応する接続部材(206、208)に接触することによって、降下位置に動かされるべきではない連結レバー(112、114)を選択することが可能になる。
【0107】
図16(a)〜16(l)は、作動装置176と共に作動する際の、傾斜機構150、トリガ・レバー164および第1の連結ユニット104の動きを示す。
図16(a)は、連結ユニット104が非傾斜位置にあり、ピン162がロック位置にあるときの、トリガ・レバー164の位置を示す。ピン162がロック位置にあるとき、傾斜機構150は動くことができない。図14(b)は、この機構をより良く示すために、作動装置が図面から削除されていること以外は、図14(a)と一致する。図14(c)は、トリガ・レバー164、第1の連結ユニット104および傾斜機構150が非作動位置にあり、ピン162がロック位置にある、図16(a)および16(b)に示されたピペッティング装置の、左面からの接写を示す。
【0108】
図16(d)は、作動装置176によるトリガ・レバー164の作動を示す。作動装置176の下方部分が、トリガ・レバー164の下方部分を動かし、これによってトリガ152のレバーを反時計回りに動かし、したがって、ピン162がアンロック位置に動く。図16(e)は、この機構をより良く示すために、作動装置が図面から削除されていること以外は、図16(d)と一致する。図16(f)は、トリガ・レバー164が反時計回りに動かされ、第1の連結ユニット104は依然として非傾斜位置にあり、ピン162はアンロック位置にあり、傾斜機構150は非作動位置にある、図16(d)および16(e)に示されるピペッティング装置の、左面からの接写を示す。
【0109】
図16(g)は、作動装置176がトリガ・レバー164に対して下方に動かされるとき、傾斜機構150および第1の連結ユニット104が動いた後の装置を示す。傾斜機構150は、下方に動かされ、これによって第1の連結ユニット104を傾斜させる。トリガ・レバー164は、このステップでは静止したままである。図16(h)は、この機構をより良く示すために、作動装置が図面から削除されていること以外は、図16(g)と一致する。図16(i)は、図16(g)および16(h)で示されるピペッティング装置の左面からの接写を示し、ここで、傾斜機構150は、前の状態と比較して下方の位置にあり、第1の連結ユニット104は、ある程度傾けられる。
【0110】
図16(j)は、第1の連結ユニット104が最終の傾斜位置に動いた後の装置を示す。作動装置176は、図16(g)と比較してさらに下方に動かされる。これにより、傾斜機構150も、図16(g)と比較してさらに下方に動かされ、第1の連結ユニット104は、図16(g)よりも傾けられる。トリガ・レバー164は、このステップでは静止したままであり、ピン162もそうであり、ピン162は、依然としてアンロック位置にある。図16(k)は、この機構をより良く示すために、作動装置が図面から削除されていること以外は、図16(j)と一致する。図16(l)は、図16(k)および16(j)に示されたピペッティング装置の左面からの接写を示し、ここで、傾斜機構150は、図16(i)と比較して下方の位置にあり、第1の連結ユニット104は、完全に傾けられる。
【0111】
図16(m)は、作動装置176を取り外した後の、傾けられたピペッティング装置を示す。トリガ・レバー164は、わずかに時計回りに動き、これによって、ピン162がロック位置に動かされる。これにより、傾斜機構150は最も下方の位置でロックされ、第1の連結ユニット104は傾斜位置でロックされる。図16(n)は、この機構をより良く示すために、作動装置が図面から削除されていること以外は、図16(m)と一致する。図16(o)は、図16(m)および16(n)で示されるピペッティング装置の左面からの接写を示し、ここで、トリガ・レバー164は図16(i)と比較してわずかに時計回りに動かされ、傾斜機構150はその最も下方の位置にあり、第1の連結ユニット104は完全に傾けられ、ここではロック位置にあるピン162が認められ、これによって、完全に傾けられた第1の連結ユニット104を、その傾斜位置にロックする。
図1
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図16-1】
図16-2】
図16-3】
図16-4】
図16-5】