特許第6816133号(P6816133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6816133改変ヒトT細胞受容体アルファ定常領域遺伝子を含む遺伝子改変細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816133
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】改変ヒトT細胞受容体アルファ定常領域遺伝子を含む遺伝子改変細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20210107BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20210107BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   C12N15/62 ZZNA
   C12N15/12
   C12N5/10
【請求項の数】6
【全頁数】86
(21)【出願番号】特願2018-517380(P2018-517380)
(86)(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公表番号】特表2018-535663(P2018-535663A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】US2016055492
(87)【国際公開番号】WO2017062451
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2019年10月2日
(31)【優先権主張番号】62/297,426
(32)【優先日】2016年2月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/237,394
(32)【優先日】2015年10月5日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508117721
【氏名又は名称】プレシジョン バイオサイエンシズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャンツ,デレック
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ジェームス,ジェファーソン
(72)【発明者】
【氏名】ニコルソン,マイケル,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】マクレオード,ダニエル,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】アントニー,ジェヤラージ
(72)【発明者】
【氏名】バートセビッチ,ビクター
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/176915(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第3004337(EP,A1)
【文献】 国際公開第2014/153470(WO,A1)
【文献】 Can. Res., 2015, Vol. 75, No. 18, pp. 3853-3859
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12N 5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変ヒトT細胞受容体(TCR)アルファ定常領域遺伝子をそのゲノム中に含む遺伝子改変ヒトT細胞であって
前記改変ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子が5’から3’に:
(a)前記ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子の5’領域;
(b)キメラ抗原受容体をコードする外因性ポリヌクレオチド;及び
(c)前記ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子の3’領域;
を含み、
前記外因性ポリヌクレオチドが、前記TCRアルファ定常領域遺伝子の配列番号3の13位と14位との間に挿入され前記キメラ抗原受容体は、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び1又は複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含み、前記遺伝子改変ヒトT細胞は、前記細胞表面で内因性TCRを発現しない、遺伝子改変ヒトT細胞
【請求項2】
前記細胞外リガンド結合ドメインが、配列番号112と少なくとも95%の配列同一性を有し、前記細胞外リガンド結合ドメインがCD19に結合する、請求項1に記載の遺伝子改変ヒトT細胞。
【請求項3】
前記キメラ抗原受容体が、以下からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の遺伝子改変ヒトT細胞
(a)配列番号113と少なくとも95%の配列同一性を有する細胞内細胞質シグナル伝達ドメイン
(b)配列番号114と少なくとも95%の配列同一性を有する細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;
(c)配列番号115と少なくとも95%の配列同一性を有するシグナルペプチド;及び
(d)配列番号116と少なくとも95%の配列同一性を有するヒンジドメイン。
(e)配列番号117と少なくとも95%の配列同一性を有する膜貫通ドメイン
【請求項4】
前記キメラ抗原受容体が、配列番号111と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の遺伝子改変ヒトT細胞。
【請求項5】
前記外因性ポリヌクレオチドが、前記キメラ抗原受容体の発現を駆動するプロモータ配列を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の遺伝子改変ヒトT細胞。
【請求項6】
前記プロモータ配列が、配列番号118と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項に記載の遺伝子改変ヒトT細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年2月19日に出願された「改変ヒトT細胞受容体アルファ定常領域遺伝子を含む遺伝子改変細胞」と題する米国特許仮出願第62/297,426号明細書、及び2015年10月5日に出願された「改変ヒトT細胞受容体アルファ定常領域遺伝子を含む遺伝子改変細胞」と題する米国特許仮出願第62/237,394号明細書に対する優先権を主張するものであり、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、腫瘍学、癌免疫療法、分子生物学、及び組換え核酸技術の分野に関する。特に、本発明は、改変ヒトT細胞受容体アルファ定常領域遺伝子をそのゲノムに含む、内因性T細胞受容体の細胞表面発現が低下している遺伝子改変細胞に関する。本発明は更に、このような遺伝子改変細胞を作製するための方法、及びこのような細胞を対象において癌を含む疾患を治療するために使用する方法に関する。
【0003】
EFS−WEBを介してテキストファイルとして提出される配列表の参照
本出願には、EFS−Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列表が含まれており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2016年10月3日に作成された前記ASCIIコピーの名称は2000706_00180WO1.txtであり、サイズは264,046バイトである。
【背景技術】
【0004】
T細胞養子免疫療法は、癌治療のための有望なアプローチである。この戦略は、特定の腫瘍関連抗原に対するそれらの特異性を高めるように遺伝子改変された、単離ヒトT細胞を利用する。遺伝子改変は、抗原特異性をT細胞に移植するためのキメラ抗原受容体又は外因性T細胞受容体の発現を含み得る。外因性T細胞受容体とは対照的に、キメラ抗原受容体は、モノクローナル抗体の可変ドメインからその特異性に由来する。従って、キメラ抗原受容体を発現するT細胞(CAR T細胞)は、主要組織適合性複合体において腫瘍の免疫反応性を非限定的に誘導する。今日まで、T細胞養子免疫療法は、B細胞悪性腫瘍(例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、及び慢性リンパ球性白血病)、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、グリア芽腫、進行した神経膠腫、卵巣癌、中皮腫、メラノーマ、及び膵臓癌を含む多数の癌の臨床療法として利用されてきている。
【0005】
癌治療としての潜在的有用性にもかかわらず、CAR T細胞による養子免疫療法は、ある程度、細胞表面上の内因性T細胞受容体の発現によって制限されていた。内因性T細胞受容体を発現するCAR T細胞は、同種異系患者への投与後に、主要及び副組織適合抗原を認識し、移植片対宿主病(GVHD)の発症をもたらし得る。結果として、臨床試験は、患者のT細胞を単離し、キメラ抗原受容体を取り込むように遺伝子改変して、次いで同じ患者に再注入する、自己CAR T細胞の使用に大きく焦点を当てている。自己由来のアプローチは、投与されたCART細胞に免疫寛容を提供するが、このアプローチは、患者の癌が診断された後に患者特異的CART細胞を作製するのに必要な時間と費用の両方によって制約される。
【0006】
従って、内因性T細胞受容体の発現を低下させ、投与によりGVHDを発症しない、第三者ドナー由来のT細胞を用いて調製された「既製の」CART細胞を開発することが有利であると思われる。このような製品は、診断に先立って作製および検証され、必要に応じてすぐに患者に提供することができる。従って、GVHDの発生を防止するために内因性T細胞受容体を欠く同種異系CAR T細胞の開発が必要である。
【0007】
ゲノムDNAの遺伝子改変は、目的の遺伝子座においてDNA配列を認識するように操作された、部位特異的で、レアカッティングなエンドヌクレアーゼを使用して行うことができる。操作された部位特異的ヌクレアーゼを生成するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ゲノム中の所定の部位を認識及び切断するように操作することができる。ZFNは、FokI制限酵素のヌクレアーゼドメインに融合されたジンクフィンガーDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質である。ジンクフィンガードメインは、長さが約18塩基対の所定のDNA配列に結合するタンパク質を生成するための合理的又は実験的手段によって再設計することができる。この操作されたタンパク質ドメインをFokIヌクレアーゼに融合することにより、ゲノムレベルの特異性でDNA切断を標的とすることが可能にする。ZFNは、広範囲の真核生物における遺伝子の付加、除去、及び置換を標的とするために広範に使用されている(非特許文献1に概説されている)。同様に、TAL−エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)を生成して、ゲノムDNA中の特定の部位を切断することができる。ZFNと同様に、TALENは、FokIヌクレアーゼドメインに融合された、操作された部位特異的DNA結合ドメインを含む(非特許文献2に概説されている)。しかし、この場合、DNA結合ドメインは、それぞれが単一のDNA塩基対を特異的に認識するTAL−エフェクタードメインのタンデム配列を含む。本発明の実施にZFN及びTALENが有する限界は、それらがヘテロ二量体であることであり、その結果、細胞内の単一機能性ヌクレアーゼの産生が2つのタンパク質単量体の同時発現を必要とすることである。
【0008】
コンパクトTALENは、二量体化の必要性を回避する代わりのエンドヌクレアーゼ構造を有する(非特許文献3)。コンパクトTALENは、I−TevIホーミングエンドヌクレアーゼ由来のヌクレアーゼドメインに融合された、操作された部位特異的TAL−エフェクターDNA結合ドメインを含む。FokIとは異なり、I−TevIは二本鎖DNA切断を行うために二量体化する必要がないため、コンパクトTALENは単量体として機能する。
【0009】
CRISPR/Cas9系に基づく操作されたエンドヌクレアーゼも当技術分野で知られている(非特許文献4;非特許文献5)。CRISPRエンドヌクレアーゼは、2つの成分:(1)カスパーゼエフェクターヌクレアーゼ、典型的には微生物Cas9;及び(2)ヌクレアーゼをゲノムの目的の位置に誘導する、約20ヌクレオチドの標的化配列を含む短い「ガイドRNA」、を含む。それぞれが異なる標的化配列を有する複数のガイドRNAを同じ細胞において発現させることにより、ゲノム中の複数の部位に対するDNA切断を同時に標的化することが可能である。従って、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼは本発明に適している。CRISPR/Cas9系の主要な欠点は、報告されている高頻度のオフターゲットDNA切断であり、このことがヒト患者を治療するための系の有用性を制限し得る(非特許文献6)。
【0010】
ホーミングエンドヌクレアーゼは、植物及び真菌のゲノムに一般的に見出される、15〜40塩基対の切断部位を認識する天然に存在するヌクレアーゼのグループである。それらは、寄生虫DNA因子、例えばグループ1自己スプライシングイントロン及びインテイン等と頻繁に関連している。それらは、細胞のDNA修復機構を動員する、染色体における二本鎖切断を生じさせることによって、宿主ゲノムの特定の位置で相同組換え又は遺伝子挿入を自然に促進する(非特許文献1)。ホーミングエンドヌクレアーゼは、通常、LAGLIDADG(配列番号7)ファミリー、GIY−YIGファミリー、His−CysボックスファミリーおよびHNHファミリーの4つのファミリーに分類される。これらのファミリーは、触媒活性及び認識配列に影響を及ぼす構造モチーフを特徴とする。例えば、LAGLIDADG(配列番号7)ファミリーのメンバーは、保存されたLAGLIDADG(配列番号7)モチーフの1又は2つのいずれかのコピーを有することを特徴とする(非特許文献8を参照されたい)。LAGLIDADG(配列番号7)モチーフの単一のコピーを有するLAGLIDADG(配列番号7)ホーミングエンドヌクレアーゼはホモ二量体を形成するが、LAGLIDADG(配列番号7)モチーフの2つのコピーを有するメンバーは単量体として見出される。
【0011】
I−CreI(配列番号6)は、藻類クラミドモナス・レインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)の葉緑体染色体中の22塩基対の認識配列を認識及び切断する、ホーミングエンドヌクレアーゼのLAGLIDADG(配列番号7)ファミリーのメンバーである。野生型I−CreI切断部位の優先性を改変するために、遺伝子選択技術が用いられている(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。より最近では、I−CreI及び他のホーミングエンドヌクレアーゼを、哺乳動物、酵母植物、細菌、及びウイルスのゲノム中の部位を含む、多岐にわたるDNA部位を標的とするように包括的に再設計可能なモノ−LAGLIDADG(配列番号7)ホーミングエンドヌクレアーゼを合理的に設計する方法が記載されている、(特許文献1)。
【0012】
特許文献2に最初に記載されているように、I−CreI及びその操作された誘導体は通常二量体であるが、第1のサブユニットのC末端を第2のN末端に結合する短いペプチドリンカーを使用して、単一のポリペプチドに融合することができる(非特許文献13; 非特許文献14)。従って、機能的「単鎖」メガヌクレアーゼを、単一の転写産物から発現させることができる。
【0013】
ヒトT細胞受容体アルファ定常領域中のDNA標的を切断するための操作されたメガヌクレアーゼの使用は、特許文献3に以前に開示されている。特許文献3は、TCRアルファ定常領域遺伝子のエクソン1内の認識配列(特許文献3の配列番号3)を標的とするように操作された、I−OnuIメガヌクレアーゼの変異体を開示している。特許文献3は、キメラ抗原受容体がTCRノックアウト細胞において発現され得ることを論じているが、著者らは、TCRアルファ定常領域遺伝子中のメガヌクレアーゼ切断部位への、キメラ抗原受容体コード配列の挿入を開示していない。
【0014】
内因性TCRの発現を破壊するための他のヌクレアーゼ及び機序の使用も開示されている。例えば、ヒトT細胞におけるTCR遺伝子を破壊するためのジンクフィンガーヌクレアーゼの使用は、特許文献4及び5に記載されている。特許文献6は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、並びに単離されたT細胞中のTCR遺伝子を標的とするために操作された単鎖ガイドRNAを有するCRISPR/Casシステムの使用を記載する。特許文献7は、T細胞における特異的TCR及び/又はCD3鎖をコードする核酸を標的とする、小型ヘアピンRNAの使用を開示している。
【0015】
しかし、本発明は、先行技術の教示を改善する。本発明者らは、ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子に挿入された外因性ポリヌクレオチド配列(例えば、キメラ抗原受容体又は外因性TCRコード配列)を含み、同時に細胞表面における内因性T細胞受容体の発現を破壊する遺伝子改変細胞を最初に教示している。更に、先行技術は、本明細書に記載のメガヌクレアーゼ若しくは認識配列、又はこのような遺伝子改変細胞を作製するためのそれらの使用を教示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2007/047859号公報
【特許文献2】国際公開第2009/059195号公報
【特許文献3】国際公開第2014/191527号公報
【特許文献4】米国特許第8,95,828号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2014/034902号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2014/0301990号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Nucleic Acids Res 33(2005)、5978
【非特許文献2】Curr Opin Struct Biol.23(2013):93〜9
【非特許文献3】Nat Commun.4(2013):1762
【非特許文献4】Nat Protoc.8(2013):2281〜2308
【非特許文献5】Nat Methods 10(2013):957〜63
【非特許文献6】Nat Biotechnol.31(2013):822〜6
【非特許文献7】Q Rev.Biophys.38(2006):49〜95
【非特許文献8】Nucleic Acids Res.29(18)(2001):3757〜3774
【非特許文献9】J.Mol.Biol.342(2004):31〜41
【非特許文献10】Nucleic Acids Res.33(2005):e178
【非特許文献11】Nucleic Acids Res.30(2002):3870〜9
【非特許文献12】J.Mol.Biol.355(2006):443〜58
【非特許文献13】Nucleic Acids Res.37(2009年):1650〜62
【非特許文献14】Nucleic Acids Res.37(2009):5405〜19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、そのゲノム中に改変T細胞受容体(TCR)アルファ定常領域遺伝子を含む遺伝子改変細胞を提供する。このような細胞は、遺伝子改変ヒトT細胞、又はヒトT細胞に由来する遺伝子改変細胞である。更に、このような細胞は、非改変対照細胞と比較した場合、内因性TCRの細胞表面発現が低下している。本発明はまた、遺伝子改変細胞の作製方法を提供する。本発明は更に、遺伝子改変細胞を投与することによって癌を治療するための免疫療法の方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って、一態様において、本発明は、そのゲノム中に改変ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子を含む遺伝子改変細胞を提供し、該改変ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子は、5’から3’に:(a)ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子の5’領域;(b)外因性ポリヌクレオチド;及び(c)ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子の3’領域を含む。遺伝子改変細胞は、遺伝子改変ヒトT細胞であるか、又はヒトT細胞に由来する遺伝子改変細胞である。更に、遺伝子改変細胞は、非改変対照細胞と比較した場合、内因性TCRの細胞表面発現が低下している。
【0020】
一実施形態において、外因性ポリヌクレオチドは、キメラ抗原受容体をコードする核酸配列を含み、このキメラ抗原受容体は、細胞外リガンド結合ドメイン及び1又は複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0021】
このような一実施形態において、キメラ抗原受容体は、配列番号112と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は最大100%の配列同一性を有する細胞外リガンド結合ドメインを含み、この細胞外リガンド結合ドメインはCD19に結合する。
【0022】
別のこのような実施形態において、キメラ抗原受容体は、配列番号113と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は最大100%の配列同一性を有する細胞内細胞質シグナル伝達ドメインを含む。
【0023】
別のこのような実施形態において、キメラ抗原受容体は、配列番号114と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は最大100%の配列同一性を有する細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0024】
別のこのような実施形態において、キメラ抗原受容体はシグナルペプチドを更に含む。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、配列番号115と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は最大100%の配列同一性を有し得る。
【0025】
別のこのような実施形態において、キメラ抗原受容体はヒンジドメインを更に含む。いくつかの実施形態において、ヒンジドメインは、配列番号116と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は最大100%の配列同一性を有する。
【0026】
別のこのような実施形態において、キメラ抗原受容体は膜貫通ドメインを更に含む。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、配列番号117と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は最大100%の配列同一性を有する。
【0027】
別のこのような実施形態において、キメラ抗原受容体は、配列番号111と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は最大100%の配列同一性を有する。
【0028】
別の実施形態において、外因性ポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチドの発現を駆動するプロモータ配列を含む。このような一実施形態において、プロモータ配列は、配列番号118と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は最大100%の配列同一性を有する。
【0029】
別の実施形態において、外因性ポリヌクレオチドの核酸配列は、配列番号119と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は最大100%の配列同一性を有する。
【0030】
別の実施形態において、外因性ポリヌクレオチドは、配列番号3を含む認識配列内の位置においてTCR遺伝子に挿入される。このような一実施形態において、改変ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子は、配列番号120と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は最大100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0031】
別の実施形態において、外因性ポリヌクレオチドは、配列番号4を含む認識配列内の位置においてTCRアルファ定常領域遺伝子に挿入される。このような一実施形態において、改変ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子は、配列番号121と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は最大100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0032】
別の実施形態において、外因性ポリヌクレオチドは、配列番号5を含む認識配列内の位置においてTCRアルファ定常領域遺伝子に挿入される。このような一実施形態において、改変ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子は、配列番号122と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は最大100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0033】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の遺伝子改変細胞及び医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0034】
別の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための、本明細書に記載の遺伝子改変細胞を提供する。本発明は更に、それを必要とする対象において疾患を治療するための医薬品の製造における、本明細書に記載の遺伝子改変細胞の使用を提供する。このような一態様において、この医薬品は癌の治療に有用である。いくつかの実施形態において、癌の治療は免疫療法である。
【0035】
別の態様において、本発明は、改変ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子を含む遺伝子改変細胞の作製方法であって、(a)細胞に、(i)操作されたヌクレアーゼをコードする第1の核酸配列;又は(ii)操作されたヌクレアーゼタンパク質を導入し、前記操作されたヌクレアーゼがヒトTCRアルファ定常領域遺伝子内の認識配列に切断部位を生成する工程、及び(b)外因性ポリヌクレオチドを含む第2の核酸配列を細胞に導入する工程、を含む方法を提供する。このような方法において、細胞はヒトT細胞であるか、又はヒトT細胞に由来する。更に、外因性ポリヌクレオチド配列は、切断部位においてヒトTCRアルファ定常領域遺伝子に挿入される。更に、遺伝子改変細胞は、非改変対照細胞と比較した場合、内因性TCRの細胞表面発現が低下している。
【0036】
本方法の様々な実施形態において、第1の核酸配列又は操作されたヌクレアーゼタンパク質は、第2の核酸を導入する前に、又は第2の核酸を導入した後に細胞に導入することができる。
【0037】
本方法の一実施形態において、第2の核酸配列は、5’から3’に:(a)切断部位に隣接する5’上流配列に相同な5’相同アーム;(b)外因性ポリヌクレオチド;及び(c)切断部位に隣接する3’下流配列に相同な3’相同アーム、を含む。このような実施形態において、外因性ポリヌクレオチドの配列は、相同組換えによって切断部位においてヒトTCRアルファ定常領域遺伝子に挿入される。
【0038】
本方法の別の実施形態において、第2の核酸は切断部位に対して実質的な相同性を欠き、外因性ポリヌクレオチドの配列は、非相同末端結合によってヒトTCRアルファ定常領域遺伝子に挿入される。
【0039】
本方法の別の実施形態において、外因性ポリヌクレオチドは、キメラ抗原受容体をコードする核酸配列を含む。
【0040】
本方法の別の実施形態において、外因性ポリヌクレオチドは、外因性ポリヌクレオチドの発現を駆動する第1のプロモータ配列を含む。
【0041】
本方法の別の実施形態において、操作されたヌクレアーゼをコードする第1の核酸は、mRNAを用いて細胞に導入される。いくつかの実施形態において、mRNAは、本明細書に記載の少なくとも1つの操作されたヌクレアーゼのコード配列及び少なくとも1つの更なるタンパク質(例えば、第2のヌクレアーゼ)のコード配列を含むポリシストロニックmRNAであり得る。特定の実施形態において、ポリシストロニックmRNAは、同じ遺伝子(例えば、T細胞受容体アルファ定常領域遺伝子)内の異なる認識配列を標的とする、本明細書に記載の2つ以上の操作されたヌクレアーゼをコードすることができる。他の実施形態において、ポリシストロニックmRNAは、本明細書に記載の操作されたヌクレアーゼ、及び同じ遺伝子(例えば、T細胞受容体アルファ定常領域遺伝子)内の異なる認識配列を認識及び切断するか、あるいは、ゲノム中の目的の別の遺伝子内の異なる認識配列を認識及び切断する第2のヌクレアーゼをコードすることができる。このような実施形態において、このようなポリシストロニックmRNAを使用して作製された遺伝子改変細胞は、同時にノックアウトされた複数の遺伝子を有することができる。更なる実施形態において、ポリシストロニックmRNAは、本明細書に記載の少なくとも1つの操作されたヌクレアーゼ及び細胞に有益な1つの更なるタンパク質をコードし、切断部位への目的の外因性配列の挿入効率を改善し、且つ/又は疾患の治療に有益である。
【0042】
本方法の別の実施形態において、少なくとも第2の核酸配列は、第2の核酸配列を含むウイルスベクターと細胞とを接触させることによって細胞に導入される。いくつかの実施形態において、第1の核酸配列及び第2の核酸配列の両方が、第1の核酸配列及び第2の核酸配列の両方を含む単一のウイルスベクターと細胞とを接触させることによって導入される。あるいは、細胞は、第1の核酸配列を含む第1のウイルスベクター及び第2の核酸配列を含む第2のウイルスベクターと接触させることができる。
【0043】
第2の核酸配列がウイルスベクターによって導入される方法のこのような実施形態において、第2の核酸は、5’相同アームの5’上流に位置する、又は3’相同アームの3’下流に位置する第2のプロモータ配列を更に含むことができる。第2のプロモータが3’相同アームの3’下流に位置する実施形態において、プロモータは逆位であってよい。
【0044】
本方法の別の特定の実施形態において、少なくとも第2の核酸配列は、第2の核酸配列を含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターと細胞とを接触させることによって細胞に導入される。いくつかの実施形態において、第1の核酸配列及び第2の核酸配列の両方が、第1の核酸配列及び第2の核酸配列の両方を含む単一の組換えAAVと細胞とを接触させることによって導入される。あるいは、細胞は、第1の核酸配列を含む第1の組換えAAV及び第2の核酸配列を含む第2の組換えAAVと接触させることができる。
【0045】
第2の核酸配列が組換えAAVベクターによって導入される方法のこのような実施形態において、第2の核酸は、5’相同アームの5’上流に位置する、又は3’相同アームの3’下流に位置する第2のプロモータ配列を更に含むことができる。第2のプロモータが3’相同アームの3’下流に位置する実施形態において、プロモータは逆位であってよい。
【0046】
本方法の別のこのような実施形態において、組換えAAVベクターは、自己相補的AAVベクターである。
【0047】
本方法の別のこのような実施形態において、組換えAAVベクターは、任意の血清型を有することができる。本方法の特定の実施形態において、組換えAAVベクターは、AAV2の血清型を有する。本方法の別の特定の実施形態において、組換えAAVベクターは、AAV6の血清型を有する。
【0048】
本方法の別の実施形態において、少なくとも第2の核酸配列は、一本鎖DNA鋳型を使用して細胞に導入される。
【0049】
本方法の特定の実施形態において、本明細書に記載の操作されたヌクレアーゼをコードする第1の核酸配列はmRNAにより細胞に導入され、外因性ポリヌクレオチドを含む第2の核酸配列はウイルスベクター、好ましくは組換えAAVベクターを使用して細胞に導入され、細胞はヒトT細胞であり、目的の配列はキメラ抗原受容体をコードする。このような実施形態において、この方法は、キメラ抗原受容体を含み、対照細胞と比較したときに内因性T細胞受容体の細胞表面発現が低下している遺伝子改変T細胞を作製する。
【0050】
本方法の別の実施形態において、操作されたヌクレアーゼは、組換えメガヌクレアーゼ、組換えジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、組換え転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Casヌクレアーゼ、又はメガTALヌクレアーゼである。本方法の特定の実施形態において、操作されたヌクレアーゼは組換えメガヌクレアーゼである。
【0051】
本方法のこのような実施形態において、組換えメガヌクレアーゼは、ヒトT細胞受容体アルファ定常領域(配列番号1)の残基93〜208内の認識配列を認識及び切断する。このような組換えメガヌクレアーゼは、第1のサブユニット及び第2のサブユニットを含み、第1のサブユニットは、認識配列の第1の認識半部位に結合し、第1の超可変(HVR1)領域を含み、第2のサブユニットは、認識配列の第2の認識半部位に結合し、第2の超可変(HVR2)領域を含む。
【0052】
本方法のこのような一実施形態において、認識配列は配列番号3(即ち、TRC1−2認識配列)を含む。
【0053】
本方法の別のこのような実施形態において、第1のメガヌクレアーゼサブユニットは、配列番号:8〜18のいずれか1つの残基198〜344又は配列番号19〜27のいずれか1つの残基7〜153と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、第2のメガヌクレアーゼサブユニットは、配列番号8〜18のいずれか1つの残基7〜153又は配列番号19〜27のいずれか1つの残基198〜344と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0054】
本方法の別のこのような実施形態において、HVR1領域は、(a)配列番号8〜18のいずれか1つの215位;又は(b)配列番号19〜27のいずれか1つの24位に対応する位置にYを含む。別のこのような実施形態において、HVR1領域は、(a)配列番号8〜18のいずれか1つの233位;又は(b)配列番号19〜27のいずれか1つの42位に対応する位置にGを含む。別のこのような実施形態において、HVR1領域は、(a)配列番号8〜18のいずれか1つのそれぞれ215位及び233位;又は(b)配列番号19〜27のいずれか1つのそれぞれ24位及び42位に対応する位置に、Y及びGの1又は複数を含む。
【0055】
本方法の別のこのような実施形態において、HVR2領域は、(a)配列番号8〜18のいずれか1つの26位;又は(b)配列番号19〜27のいずれか1つの217位に対応する位置にTを含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、(a)配列番号8〜18のいずれか1つの28位;又は(b)配列番号19〜27のいずれか1つの219位に対応する位置にF若しくはYを含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、(a)配列番号8〜18のいずれか1つの38位;又は(b)配列番号19〜27のいずれか1つの229位に対応する位置にFを含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、(a)配列番号8〜18のいずれか1つの44位;又は(b)配列番号19〜27のいずれか1つの235位に対応する位置にSを含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、(a)配列番号8〜18のいずれか1つの46位;又は(b)配列番号19〜27のいずれか1つの237位に対応する位置にF若しくはYを含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、(a)配列番号8〜18のいずれか1つのそれぞれ26、28、38、44、及び46;又は(b)配列番号19〜27のいずれか1つのそれぞれ217、219、229、235、及び237位に対応する位置に、T、F又はY、F、S及びF又はY及びRの1又は複数を含む。
【0056】
本方法の別のこのような実施形態において、HVR1領域は、配列番号:8〜18のいずれか1つの残基215〜270又は配列番号19〜27のいずれか1つの残基24〜79を含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、配列番号8〜18のいずれか1つの残基24〜79又は配列番号19〜27のいずれか1つの残基215〜270を含む。
【0057】
本方法の別のこのような実施形態において、第1のメガヌクレアーゼサブユニットは、配列番号8〜18のいずれか1つの残基198〜344又は配列番号19〜27のいずれか1つの残基7〜153を含む。別のこのような実施形態において、第2のメガヌクレアーゼサブユニットは、配列番号8〜18のいずれか1つの残基7〜153又は配列番号19〜27のいずれか1つの残基198〜344を含む。
【0058】
本方法の別のこのような実施形態において、組換えメガヌクレアーゼは、リンカーを含む単鎖メガヌクレアーゼであり、リンカーは、第1のサブユニットと第2のサブユニットとを共有結合する。
【0059】
本方法の別のこのような実施形態において、組換えメガヌクレアーゼは、配列番号8〜27のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0060】
本方法の更なる実施形態において、認識配列は配列番号4(即ち、TRC3−4認識配列)を含む。
【0061】
本方法のこのような一実施形態において、第1のメガヌクレアーゼサブユニットは、配列番号28又は29の残基7〜153と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、第2のメガヌクレアーゼサブユニットは、配列番号28又は29の残基198〜344と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0062】
本方法の別のこのような実施形態において、HVR1領域は、配列番号28又は29の24位に対応する位置にYを含む。別のこのような実施形態において、HVR1領域は、配列番号30又は31の26位に対応する位置にTを含む。別のこのような実施形態において、HVR1領域は、配列番号28又は29の46位に対応する位置にYを含む。別のこのような実施形態において、HVR1領域は、配列番号28又は29のそれぞれ位置24、26、及び46に対応する位置にY、T、及びYの1又は複数を含む。
【0063】
本方法の別のこのような実施形態において、HVR2領域は、配列番号28又は29の215位に対応する位置にHを含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、配列番号28又は29の266位に対応する位置にTを含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、配列番号28又は29の268位に対応する位置にCを含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、配列番号28又は29の215、266、及び268位に対応する位置にH、T、及びCの1又は複数を含む。
【0064】
本方法の別のこのような実施形態において、HVR1領域は、配列番号28又は29の残基24〜79を含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、配列番号28又は29の残基215〜270を含む。
【0065】
本方法の別のこのような実施形態において、第1のメガヌクレアーゼサブユニットは、配列番号28又は29の残基7〜153を含む。別のこのような実施形態において、第2のメガヌクレアーゼサブユニットは、配列番号28又は29の残基198〜344を含む。
【0066】
本方法の別のこのような実施形態において、組換えメガヌクレアーゼは、リンカーを含む単鎖メガヌクレアーゼであり、リンカーは、第1のサブユニットと第2のサブユニットとを共有結合する。
【0067】
本方法の別のこのような実施形態において、組換えメガヌクレアーゼは、配列番号28又は29のアミノ酸配列を含む。
【0068】
本方法の更なる実施形態において、認識配列は配列番号5(即ち、TRC7−8認識配列)を含む。
【0069】
本方法のこのような一実施形態において、第1のメガヌクレアーゼサブユニットは、配列番号30の残基7〜153又は配列番号31若しくは32の残基198〜344と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、第2のメガヌクレアーゼサブユニットは、配列番号30の残基198〜344又は配列番号31若しくは32の残基7〜153と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0070】
本方法の別のこのような実施形態において、HVR1領域は、(a)配列番号30の24位;又は(b)配列番号31若しくは32の215位に対応する位置にYを含む。
【0071】
本方法の別のこのような実施形態において、HVR2領域は、(a)配列番号30の215位;又は(b)配列番号31若しくは32の24位に対応する位置にY若しくはWを含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、(a)配列番号30の231位;又は(b)配列番号31若しくは32の40位に対応する位置にM、L、若しくはWを含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、(a)配列番号30の237位;又は(b)配列番号31若しくは32の46位に対応する位置にYを含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、(a)配列番号30のそれぞれ215位、231位及び237位;又は(b)配列番号31若しくは32のそれぞれ24位、40位、及び46位に対応する位置に、Y若しくはW、M、L若しくはW及びYの1又は複数を含む。
【0072】
本方法の別のこのような実施形態において、HVR1領域は、配列番号30の残基24〜79又は配列番号31若しくは32の残基215〜270を含む。別のこのような実施形態において、HVR2領域は、配列番号30の残基215〜270又は配列番号31若しくは32の残基24〜79を含む。
【0073】
本方法の別のこのような実施形態において、第1のメガヌクレアーゼサブユニットは、配列番号30の残基7〜153又は配列番号31若しくは32の残基198〜344を含む。別のこのような実施形態において、第2のメガヌクレアーゼサブユニットは、配列番号30の残基198〜344又は配列番号31若しくは32の残基7〜153を含む。
【0074】
本方法の別のこのような実施形態において、組換えメガヌクレアーゼは、リンカーを含む単鎖メガヌクレアーゼであり、リンカーは、第1のサブユニットと第2のサブユニットとを共有結合する。
【0075】
本方法の別のこのような実施形態において、組換えメガヌクレアーゼは、配列番号30〜32のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0076】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象において癌を治療するための免疫療法の方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載の遺伝子改変細胞及び医薬として許容される担体を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載の方法に従って作製された遺伝子改変細胞及び医薬として許容される担体を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含む。
【0077】
本方法の別の実施形態において、治療される癌は、B細胞起源の癌、乳癌、胃癌、神経芽腫、骨肉腫、肺癌、メラノーマ、前立腺癌、結腸癌、腎細胞癌、卵巣癌、横紋筋肉腫、白血病、及びホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0078】
本方法の別の実施形態において、B細胞起源の癌は、B系列急性リンパ芽球性白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病、及びB細胞非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0079】
いくつかの実施形態において、CARは、細胞外抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態において、細胞外リガンド結合ドメイン又は部分は、モノクローナル抗体由来の単鎖可変断片(scFv)の形態であってよく、これらは、特定のエピトープ又は抗原(例えば、癌細胞又は他の疾患を引き起こす細胞又は粒子等の細胞の表面に優先的存在するにエピトープ又は抗原)に対する特異性を提供する。scFvはリンカー配列を介して結合することができる。細胞外リガンド結合ドメインは、任意の目的の抗原又はエピトープに特異的であり得る。いくつかの実施形態において、scFvはヒト化することができる。キメラ抗原受容体の細胞外ドメインはまた、Bリンパ球上の自己抗原特異的B細胞受容体によって認識され得る、従って、抗体媒介性自己免疫疾患において自己反応性Bリンパ球を特異的に標的として、殺傷するようにT細胞を導く自己抗原を含む(Payneら、(2016)、Science353(6295):179〜184を参照されたい)。このようなCARは、キメラ自己抗体受容体(CAAR)と呼ばれ、その使用は本発明に包含される。
【0080】
本発明の上記及び他の態様及び実施形態は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することにより、より完全に理解することができる。明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよい。実施形態の全ての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、まさに各組み合わせが個々に且つ明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴は、別々に又は任意の適切な部分的組み合わせで提供されてもよい。実施形態に列挙された特徴の全ての部分的組み合わせもまた、本発明によって具体的に包含され、まさにこのような各部分的組み合わせが個々に且つ明示的に本明細書に開示されているかのように本明細書に開示される。本明細書で開示される本発明の各態様の実施形態は、必要な変更を加えて本発明の互いの態様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】ヒトTRCアルファ定常領域遺伝子中のTRC認識配列を示す。図1Aは本発明の組換えメガヌクレアーゼによって標的とされる各認識配列は、2つの認識半部位を含む。各認識半部位は、4塩基対の中央配列によって分離された9塩基対を含む。TRC1−2認識配列(配列番号3)は、ヒトT細胞アルファ定常領域(配列番号1)のヌクレオチド187〜208に及んでおり、TRC1及びTRC2と呼ばれる2つの認識半部位を含む。TRC3−4認識配列(配列番号4)は、ヒトT細胞アルファ定常領域(配列番号1)のヌクレオチド93〜114に及んでおり、TRC3及びTRC4と呼ばれる2つの認識半部位を含む。TRC7−8認識配列(配列番号5)は、ヒトT細胞アルファ定常領域(配列番号1)のヌクレオチド118〜139に及んでおり、TRC7及びTRC8と呼ばれる2つの認識ハーフサイトを含む。B)本発明の組換えメガヌクレアーゼは、HVR1領域を含む第1のサブユニットが第1の認識半部位(例えばTRC1、TRC3、又はTRC7)に結合し、HVR2領域を含む第2のサブユニットが第2の認識半部位(例えば、TRC2、TRC4、又はTRC8)二結合する、2つのサブユニットを含む。組換えメガヌクレアーゼが単鎖メガヌクレアーゼである実施形態において、HVR1領域を含む第1のサブユニットは、N末端又はC末端サブユニットのいずれかとして配置することができる。同様に、HVR2領域を含む第2のサブユニットは、N末端又はC末端サブユニットのいずれかとして配置することができる。
図2A-2B】TRC1結合サブユニットのアミノ酸アライメントを示す。図2A図2Bは本発明に包含されるいくつかの組換えメガヌクレアーゼは、配列番号3の9塩基対のTRC1認識半部位に結合する1つのサブユニットを含む。アミノ酸配列アライメントは、配列番号8〜27に示される組換えメガヌクレアーゼのTRC1結合サブユニット(配列番号33〜52)について提供される。示されるように、配列番号8〜18のTRC1結合サブユニットは残基198〜344を含み、配列番号19〜27のTRC1結合サブユニットは残基7〜153を含む。各TRC1結合サブユニットは、示されるように56アミノ酸の超可変領域を含む。超可変領域内の可変残基は網掛けされており、各位置で最も頻度の高いアミノ酸は、最も一般的な残基は太字で、2番目に多いものは太字かつイタリック体で更に強調されている。超可変領域外の残基は、80位又は271位のQ又はE残基を除いて、各サブユニットにおいて同一である(米国特許第8,021,867号明細書を参照されたい)。図2に提供される全てのTRC1結合サブユニットは、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼ(配列番号33)のTRC1結合サブユニット(残基198〜344)と少なくとも90%の配列同一性を共有する。示した残基番号は、配列番号8〜27の残基番号である。
図3A-3B】TRC2結合サブユニットのアミノ酸アライメントを示す。図3A図3Bは本発明に包含されるいくつかの組換えメガヌクレアーゼは、配列番号3の9塩基対のTRC2認識半部位に結合する1つのサブユニットを含む。配列番号8〜27に示される組換えメガヌクレアーゼのTRC2結合サブユニット(配列番号58〜77)についてのアミノ酸配列アライメントが提供される。示されるように、配列番号8〜18のTRC2結合サブユニットは残基7〜153を含み、配列番号19〜27のTRC2結合サブユニットは残基198〜344を含む。各TRC2結合サブユニットは、示されるように56アミノ酸の超可変領域を含む。超可変領域内の可変残基は網掛けされており、各位置で最も頻度の高いアミノ酸は、最も一般的な残基は太字で、2番目に多いものは太字且つイタリック体でさらに強調されている。超可変領域外の残基は、80位又は271位のQ又はE残基(米国特許第8,021,867号を参照されたい)、並びにメガヌクレアーゼTRC1−2x.87 EE、TRC1−2x.87QE、TRC1−2x.87EQ、TRC1−2x.87、及びTRC1−2x.163の139位のR残基(灰色の網掛け及び下線)を除いて、各サブユニットにおいて同一である。図3に提供される全てのTRC2結合サブユニットは、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼ(配列番号58)のTRC2結合サブユニット(残基7〜153)と少なくとも90%の配列同一性を共有する。示した残基番号は、配列番号8〜27の残基番号である。
図4】TRC3結合サブユニットのアミノ酸アライメントを示す。本発明に包含されるいくつかの組換えメガヌクレアーゼは、配列番号4の9塩基対のTRC3認識半部位に結合する1つのサブユニットを含む。配列番号28及び29に示される組換えメガヌクレアーゼのTRC3結合サブユニット(配列番号53及び54)についてのアミノ酸配列アラインメントが提供される。示されるように、配列番号28及び29のTRC3結合サブユニットは、残基7〜153を含む。各TRC3結合サブユニットは、示されるように56アミノ酸の超可変領域を含む。超可変領域内の可変残基は網掛けされている。超可変領域外の残基は、80位のQ又はE残基を除いて、各サブユニットにおいて同一である(米国特許第8,021,867号を参照されたい)。TRC3−4x.3及びTRC 3−4x.19メガヌクレアーゼのTRC3結合サブユニットは、97%の配列同一性を共有する。示した残基番号は、配列番号28及び29の残基番号である。
図5】TRC4結合サブユニットのアミノ酸アライメントを示す。本発明に包含されるいくつかの組換えメガヌクレアーゼは、配列番号4の9塩基対のTRC4認識半部位に結合する1つのサブユニットを含む。配列番号28及び29に示される組換えメガヌクレアーゼのTRC4結合サブユニット(配列番号78及び79)についてのアミノ酸配列アラインメントが提供される。示されるように、配列番号28及び29のTRC4結合サブユニットは残基198〜344を含む。各TRC4結合サブユニットは、示されるように56アミノ酸の超可変領域を含む。超可変領域内の可変残基は網掛けされている。超可変領域外の残基は、80位のQ又はE残基を除いて、各サブユニットにおいて同一である(米国特許第8,021,867号を参照されたい)。TRC3−4x.3及びTRC3−4x.19メガヌクレアーゼのTRC4結合サブユニットは、97%の配列同一性を共有する。示した残基番号は、配列番号28及び29の残基番号である。
図6A-6B】TRC7結合サブユニットのアミノ酸アライメントを示す。図6A図6Bは本発明に包含されるいくつかの組換えメガヌクレアーゼは、配列番号5の9塩基対のTRC7認識半部位に結合する1つのサブユニットを含む。配列番号30〜32に示される組換えメガヌクレアーゼのTRC7結合サブユニット(配列番号55〜57)についてのアミノ酸配列アライメントが提供される。示されるように、配列番号30のTRC7結合サブユニットは残基7〜153を含み、配列番号31及び32のTRC7結合サブユニットは残基198〜344を含む。各TRC7結合サブユニットは、示されるように56アミノ酸の超可変領域を含む。超可変領域内の可変残基は網掛けされており、各位置で最も頻度の高いアミノ酸は、最も一般的な残基は太字で、2番目に多いものは太字且つイタリック体で更に強調されている。超可変領域外の残基は、80位又は271位のQ又はE残基を除いて、各サブユニットにおいて同一である(米国特許第8,021,867号を参照されたい)。図6で提供される全てのTRC7結合サブユニットは、TRC 7−8x.7メガヌクレアーゼ(配列番号55)のTRC7結合サブユニット(残基7−153)と少なくとも90%の配列同一性を共有する。示される残基番号は、配列番号30〜32の残基番号である。
図7A-7B】TRC8結合サブユニットのアミノ酸アライメントを示す。図7A図7Bは本発明に包含されるいくつかの組換えメガヌクレアーゼは、配列番号5の9塩基対のTRC8認識半部位に結合する1つのサブユニットを含む。配列番号30〜32に示される組換えメガヌクレアーゼのTRC8結合サブユニット(配列番号80〜82)についてのアミノ酸配列アライメントが提供される。示されるように、配列番号30のTRC8結合サブユニットは残基198〜344を含み、配列番号31及び32のTRC8結合サブユニットは残基7〜153を含む。各TRC8結合サブユニットは、示されるように56アミノ酸の超可変領域を含む。超可変領域内の可変残基は網掛けされており、各位置で最も頻度の高いアミノ酸は、最も一般的な残基は太字で、2番目に多いものは太字且つイタリック体でさらに強調されている。超可変領域外の残基は、80位又は271位のQ又はE残基を除いて、各サブユニットにおいて同一である(米国特許第8,021,867号を参照されたい)。図7で提供される全てのTRC8結合サブユニットは、TRC 7−8x.7メガヌクレアーゼ(配列番号80)のTRC8結合サブユニット(残基198〜344)と少なくとも90%の配列同一性を共有する。示される残基番号は、配列番号30〜32の残基番号である。
図8】T細胞受容体アルファ定常領域(配列番号1)に見出される認識配列を標的とする組換えメガヌクレアーゼを評価するためのCHO細胞におけるレポーターアッセイの模式図である。本明細書中に記載の組換えメガヌクレアーゼのために、レポーターカセットが細胞のゲノムに安定に組み込まれたCHO細胞株が作製された。レポーターカセットは、5’から3’の順序で、:SV40初期プロモータ;GFP遺伝子の5’の2/3;本発明の操作されたメガヌクレアーゼの認識配列(例えば、TRC1−2認識配列、TRC3−4認識配列、又はTRC7−8認識配列);CHO−23/24メガヌクレアーゼの認識配列(WO/2012/167192);及びGFP遺伝子の3’の2/3、で構成されていた。このカセットを安定にトランスフェクトされた細胞は、DNA破壊誘発剤の不在下ではGFPを発現しなかった。メガヌクレアーゼは、それぞれのメガヌクレアーゼをコードするプラスミドDNA又はmRNAの形質導入によって導入された。メガヌクレアーゼ認識配列のいずれかでDNA破壊が誘導された場合、GFP遺伝子の重複領域は互いに組換えられて機能的GFP遺伝子を生成する。次いで、GFP発現細胞のパーセンテージは、メガヌクレアーゼによるゲノム切断の頻度の間接的測定として、フローサイトメトリによって決定することができる。
図9】CHO細胞レポーターアッセイにおいて、ヒトT細胞受容体アルファ定常領域(配列番号1)中の認識配列を認識し、切断する組換えメガヌクレアーゼの効率を示す。配列番号8〜32に示される組換えメガヌクレアーゼのそれぞれを、TRC1−2認識配列(配列番号3)、TRC3−4認識配列(配列番号4)、又はTRC7−8認識配列(配列番号5)を標的とするように操作し、CHO細胞レポーターアッセイにおける有効性についてスクリーニングした。示した結果は、TRC標的認識配列またはCHO−23/24認識配列を切断するための各メガヌクレアーゼの有効性を示す、各アッセイで観察されたGFP発現細胞のパーセンテージを提供する。陰性対照(RHO1−2bs)を各アッセイに更に含めた。図9A図9CはTRC1−2認識配列を標的とするメガヌクレアーゼ。図9DはTRC3−4認識配列を標的とするメガヌクレアーゼ。図9E図9FはTRC7−8認識配列を標的とするメガヌクレアーゼ。図9Gは271位のQがEで置換された(TRC1−2x.87QE)、80位のQがEで(TRC1−2x.87EQ)、又は80位のQ及び271位のQの両方がEで置換された(TRC1−2x.87EE)TRC1−2x.87メガヌクレアーゼの変異体。
図10】CHO細胞レポーターアッセイにおける組換えメガヌクレアーゼ有効性の時間経過を示す。TRC1−2x.87QE、TRC1−2x.87EQ、及びTRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼを、メガヌクレアーゼをコードするmRNAをCHOレポーター細胞に導入した1、4、6、8、及び12日後に決定されたGFP発現細胞のパーセンテージを用いてCHOレポーターアッセイで評価した。
図11】TRC1−2メガヌクレアーゼのトランスフェクション後のJurkat細胞ゲノムDNAの分析を示す。TRC1−2メガヌクレアーゼをコードするmRNAのトランスフェクションの72時間後に、ゲノムDNAを回収し、T7エンドヌクレアーゼアッセイを実施して、内因性TRC1−2認識配列における遺伝子改変を推定した。
図12】内因性TRC1−2認識配列における遺伝子改変についての、Jurkat細胞におけるTRC1−2メガヌクレアーゼ発現の用量応答を示す。Jurkat細胞に、3μg又は1μgいずれかの所与のTRC1−2メガヌクレアーゼmRNAをトランスフェクトした。96時間で、T7エンドヌクレアーゼアッセイを用いてゲノムDNAを分析した。
図13】ヒトT細胞におけるTRC1−2認識配列の切断を示す。図13AはCD3T細胞を抗CD3抗体及び抗CD28抗体で3日間刺激し、次いでTRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼをコードするmRNAを電気穿孔した。トランスフェクション後3日目及び7日目にゲノムDNAを回収し、T7エンドヌクレアーゼアッセイを使用して分析した。図13Bは内因性TRC1−2認識配列の突然変異がT細胞受容体の表面発現を排除するのに十分であるかどうかを決定するために、抗CD3抗体を使用したフローサイトメトリによって細胞を分析した。トランスフェクション後3日目及び7日目に対照細胞(水をトランスフェクトした)及びTRC1−2x.87EEトランスフェクト細胞を分析し、CD3陽性T細胞及びCD3陰性T細胞のパーセンテージを決定した。
図14】TRC1−2メガヌクレアーゼの発現後のヒトT細胞中のTRC1−2認識配列で観察された代表的な核酸配列の欠失を示す。
図15】組換えAAVベクターの配列要素及び外因性核酸配列を内因性TCRアルファ定常領域遺伝子に挿入するための操作されたヌクレアーゼと組み合わせたその使用を示す図である。
図16】AAV405ベクターを作製するために使用されるプラスミドのマップを示す。
図17】AAV406ベクターを作製するために使用されるプラスミドのマップを示す。
図18】AAV形質導入効率を向上させるための、メガヌクレアーゼmRNAトランスフェクションおよび組換えAAV形質導入のタイミングの決定を示す。ヒトCD3T細胞にTRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼをコードするmRNAを電気穿孔し、トランスフェクション後2、4、又は8時間に、細胞にGFPをコードする組換えAAVベクター(GFP−AAV)を形質導入した。T細胞を、形質導入の72時間後に、GFP発現についてフローサイトメトリによって分析し、形質導入効率を決定した。
図19】組換えAAVベクターを使用した外因性核酸配列の挿入についてのヒトT細胞の分析を示す。CD3T細胞にTRC1−2x.87EEmRNAをトランスフェクトし、続いて(トランスフェクション2時間後)AAV405又はAAV406を形質導入した。形質導入のみの対照には(水を)擬似トランスフェクトし、AAV405又はAAV406のいずれかを形質導入した。メガヌクレアーゼのみの対照にはTRC1−2x.87EEをトランスフェクトし、次いでトランスフェクションの2時間後に(水を)擬似形質導入した。ゲノムDNAをT細胞から回収し、AAVベクター中の相同領域を超える配列を認識するプライマーを使用して、PCRによりTRC1−2遺伝子座を増幅させた。相同性領域の外側のPCRプライマーは、AAVベクターからではなく、T細胞ゲノムの増幅のみを可能にした。PCR産物を精製し、EagIで消化した。次いで、PCR産物を切断について分析した。
図20】AAV405を使用したヒトT細胞のTRC1−2認識配列へのEagI挿入の特徴付けを示す。図20Aでは先の実験で生成した未消化PCR産物をpCR−平滑ベクター(pCR−blunt vector)にクローニングした。コロニーPCRを、M13フォワード及びリバースプライマーを使用して行い、TRC1−2x.87EEおよびAAV405をトランスフェクトした細胞由来のPCR産物の一部をゲル電気泳動によって分析した。分析により、完全長PCR産物(約1600bp)、より小さいインサート、及び空のプラスミド(約300bp)の混合物が示されている。図20Bでは並行して、PCR産物の別の部分をEagIで消化して、TRC1−2認識配列に挿入されたEagI認識部位を含むクローンのパーセントを決定した。EagIで切断されたPCR産物は、約700および800bpの予想された断片を生成した。
図21】AAV406を使用したヒトT細胞のTRC1−2認識配列へのEagI挿入の特徴付けを示す。図21Aでは先の実験で生成した未消化PCR産物をpCR−平滑ベクター(pCR−blunt vector)にクローニングした。コロニーPCRを、M13フォワード及びリバースプライマーを使用して行い、TRC1−2x.87EE及びAAV406をトランスフェクトした細胞由来のPCR産物の一部をゲル電気泳動によって分析した。分析により、完全長PCR産物(約1600bp)、より小さいインサート、及び空のプラスミド(約300bp)の混合物が示されている。図21Bでは並行して、PCR産物の別の部分をEagIで消化して、TRC1−2認識配列に挿入されたEagI認識部位を含むクローンのパーセントを決定した。EagIで切断されたPCR産物は、約700及び800bpの予想された断片を生成した。
図22図22Aは、TRC1−2メガヌクレアーゼの発現後のヒトT細胞におけるTRC1−2認識配列で観察された代表的な核酸配列の欠失及び挿入(即ち、インデル)を示す。図22Bは、EagI制限部位を含む外因性核酸配列の挿入を確認するTRC1−2認識配列の核酸配列を示す。
図23】組換えAAV形質導入効率の向上を示す図である。形質導入効率を、メガヌクレアーゼmRNAトランスフェクションのタイミング及びその後のAAV形質導入のタイミングを最適化することによってさらに分析した。トランスフェクション直後又はトランスフェクションの2時間後に、ヒトCD3T細胞にTRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼをコードするmRNAを電気穿孔し、続いてGFP−AAVを形質導入した。更に、刺激されていない休止T細胞にGFP−AAVを形質導入した。擬似形質導入細胞も分析した。形質導入の72時間後、細胞をGFP発現についてフローサイトメトリによって分析し、AAV形質導入効率を決定した。
図24】AAV−CAR100(AAV408)ベクターを作製するために使用されるプラスミドのマップである。
図25】AAV−CAR763(AAV412)ベクターを作製するために使用されるプラスミドのマップである。
図26】ヒトT細胞におけるTRC1−2認識部位でのキメラ抗原受容体コード配列の挿入を示す図である。AAV412 HDR鋳型がTRC1−2認識配列における二本鎖切断の修復に利用されたかどうかを決定するための、PCRに基づくアッセイを開発した。
図27】ヒトT細胞におけるTRC1−2認識部位でのキメラ抗原受容体コード配列の挿入を示す図である。AAV408HDR鋳型がTRC1−2認識配列における二本鎖切断の修復に利用されたかどうかを決定するための、PCRに基づくアッセイを開発した。図27AはCAR遺伝子がその遺伝子座に挿入されている場合、TRC1−2認識配列座の5’末端にのみ産物を増幅するプライマー対を使用して生成されたPCR産物を示す。図27BはCAR遺伝子がその遺伝子座に挿入されている場合、TRC1−2認識配列座の3’末端にのみ産物を増幅するプライマー対を用いて生成されたPCR産物を示す。
図28】デジタルPCRの図である。図28AはヒトT細胞におけるTRC1−2認識部位へのキメラ抗原受容体コード配列の挿入効率を定量的に決定するために開発されたデジタルPCRアッセイの略図を示す。図28BはTRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼmRNA及び/又は漸増量のAAV408を電気穿孔したヒトT細胞由来のゲノムDNAについてのデジタルPCRの結果を示す。
図29】ヒトT細胞上のCD19キメラ抗原受容体の細胞表面発現の図である。抗CD19キメラ抗原受容体の発現レベルを、AAV408をHDR鋳型として使用して、TRC1−2認識配列にCAR遺伝子を挿入した細胞において決定した。細胞表面発現をフローサイトメトリによって分析した。図29A擬似電気穿孔し、擬似形質導入した細胞(MOI−0)、及び擬似電気穿孔し、漸増量のAAV408を形質導入した細胞を示す。図29BはTRC1−2x.87EEを電気穿孔し、擬似形質導入した細胞(MOI−0)、及びTRC1−2x.87EEを電気穿孔し、漸増量のAAV408を形質導入した細胞を示す。
図30】AAV421ベクターを作製するために使用されるプラスミドのマップを示す。
図31】AAV422ベクターを作製するために使用されるプラスミドのマップを示す。
図32】キメラ抗原受容体コード配列の挿入を示す。PCR法を使用して、AAV421又はAAV422によって導入されたキメラ抗原受容体コード配列が、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼによって切断されたTRC1−2認識部位に挿入されたかどうかを決定した。図32AはAAV421による形質導入後の挿入の分析を示す。図32BはAAV422による形質導入後の挿入の分析を示す。
図33】ヒトT細胞上のCD19キメラ抗原受容体の細胞表面発現を示す図である。抗CD19キメラ抗原受容体の発現レベルを、AAV421をHDR鋳型として使用して、TRC1−2認識配列にCAR遺伝子を挿入した細胞において決定した。細胞表面発現をフローサイトメトリによって分析した。図33Aは擬似電気穿孔し、擬似形質導入した細胞(MOI−0)、及び擬似電気穿孔し、漸増量のAAV421を形質導入した細胞を示す。図33BはTRC1−2x.87EEを電気穿孔し、擬似形質導入した細胞(MOI−0)、及びTRC1−2x.87EEを電気穿孔し、漸増量のAAV421を形質導入した細胞を示す。
図34】細胞表面キメラ抗原受容体を発現するヒトT細胞の増殖を示す図である。いくつかの方法により、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼのためのmRNAの電気穿孔及びAAV421の形質導入後に、CD3/CART細胞集団の優先的な拡大及び濃縮を決定した。図34AはIL−7(10ng/mL)及びIL−15(10ng/mL)の補添を示す。図34BはIL−7(10ng/mL)及びIL−15(10ng/mL)の補添、並びにマイトマイシンCにより不活性化されたIM−9細胞とのインキュベーションを示す。図34CはIL−7(10ng/mL)及びIL−15(10ng/mL)の補添、並びにマイトマイシンCにより不活性化されたIM−9細胞との2回のインキュベーションを示す。
図35】ヒトT細胞上のCD19キメラ抗原受容体の細胞表面発現を示す図である。抗CD19キメラ抗原受容体の発現レベルを、AAV422をHDR鋳型として使用して、TRC1−2認識配列にCAR遺伝子を挿入した細胞において決定した。細胞表面発現をフローサイトメトリによって分析した。図35Aは擬似電気穿孔し、擬似形質導入した細胞(MOI−0)、及び擬似電気穿孔し、漸増量のAAV422を形質導入した細胞を示す。図35BはTRC1−2x.87EEを電気穿孔し、擬似形質導入した細胞(MOI−0)、及びTRC1−2x.87EEを電気穿孔し、漸増量のAAV422を形質導入した細胞を示す。
図36】細胞表面キメラ抗原受容体を発現するヒトT細胞の増殖を示す図である。いくつかの方法により、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼのためのmRNAの電気穿孔及びAAV422の形質導入後に、CD3/CART細胞集団の優先的な拡大及び濃縮を決定した。図36AはIL−7(10ng/mL)及びIL−15(10ng/mL)の補添を示す。図36BはIL−7(10ng/mL)及びIL−15(10ng/mL)の補添、並びにマイトマイシンCにより不活性化されたIM−9細胞とのインキュベーションを示す。図36CはIL−7(10ng/mL)及びIL−15(10ng/mL)の補添、並びにマイトマイシンCにより不活性化されたIM−9細胞との2回のインキュベーションを示す。
図37】一本鎖AAVを使用したメガヌクレアーゼノックアウト効率を示す図である。実験は、一本鎖AAVベクターを同時に形質導入した場合のヒトT細胞における2つのメガヌクレアーゼのノックアウト効率を調べるために行った。図37AはTRC1−2x.87EEのためのmRNAを電気穿孔し、漸増量の一本鎖AAV412を形質導入した細胞を示す。図37Bはベータ−2ミクログロブリン遺伝子を標的とするメガヌクレアーゼのためのmRNAを電気穿孔し、漸増量の一本鎖AAV412を形質導入した細胞を示す。図37CはTRC1−2x.87EEのためのmRNAを電気穿孔し、漸増量の一本鎖AAV422を形質導入した細胞を示す。
図38】抗CD19CAR T細胞の機能活性を示す図である。図38AはCD19Raji細胞又はCD19−U937細胞のいずれかを標的集団とするIFN−γELISPOTアッセイを示す。図38Bはルシフェラーゼ標識CD19Raji細胞を標的とする細胞死滅アッセイを示す。
図39】線形化DNAドナー鋳型の形質導入後の、キメラ抗原受容体の発現を示す図である。これらの実験は、TRC1−2認識配列座に相同な相同アーム(homology arm)に隣接する抗CD19CAR遺伝子を含むプラスミドを生成した。いくつかのプラスミドにおいて異なるプロモータが使用され、相同アームは「短い」(5’相同アームで200bp及び3’相同アームで180bp)か、又は「長い」(5’相同アームで985bp及び3’相同アーム上で763bp)化のいずれかであった。CARドナープラスミドをベクター骨格中の制限部位で線形化し、ゲル精製した。図39AはバックグラウンドCD3/CAR染色を示す。図39BはTRC1−2x.87EEmRNA単独を電気穿孔した細胞を示す。図39CはTRC1−2x.87EEmRNAと、EF1αコアプロモータ及びHTLVエンハンサーを有する長い相同アームベクターとを共電気穿孔した細胞を示す。図39DはTRC1−2x.87EEmRNAと、EF1αコアプロモータ(エンハンサーなし)とを有する短い相同アームベクターを共電気穿孔した細胞を示す。図39EはTRC1−2x.87EEmRNAの不在下でEF1αコアプロモータ及びHTLVエンハンサーを有する長い相同アームベクターを電気穿孔した細胞を示す。図39FはTRC1−2x.87EEmRNAの不在下でEF1αコアプロモータを有する(エンハンサーなし)短い相同アームベクターを電気穿孔した細胞を示す。図39GはCAR遺伝子の5’末端にCARの発現を駆動するMNDプロモータ及びイントロンを含む長い相同アーム構築物と、TRC1−2x.87EEmRNAとを電気穿孔した細胞を示す。図39HはCARの発現を駆動するMNDプロモータ含み、イントロンを含まない長い相同アーム構築物と、TRC1−2x.87EEmRNAとを電気穿孔した細胞を示す。図39IはMNDプロモータを含み、イントロンを含まない短い相同アームプラスミドと、TRC1−2x.87EEmRNAとを電気穿孔した細胞を示す。図39JはCAR遺伝子の5’末端にCARの発現を駆動するMNDプロモータ及びイントロンを含む長い相同アーム構築物を電気穿孔したが、TRC1−2x.87EEmRNAは電子穿孔されなかった細胞を示す。図39KはCARの発現を駆動するMNDプロモータ含み、イントロンを含まない長い相同アーム構築物を電気穿孔したが、TRC1−2x.87EEmRNAは電気穿孔しなかった細胞を示す。図39LはMNDプロモータを含み、イントロンを含まない短い相同アームプラスミドを電気穿孔したが、TRC1−2x.87EEmRNAは電気穿孔しなかった細胞を示す。図39MはJeTプロモータを含んだ短い相同アーム構築物と、TRC1−2x.87EEmRNAとを電気穿孔した細胞を示す。図39NはCMVプロモータを含んだ長い相同アーム構築物と、TRC1−2x.87EEmRNAとを電気穿孔した細胞を示す。図39OはJeTプロモータを含んだ短い相同アーム構築物を電気穿孔したが、TRC1−2x.87EEmRNAは電気穿孔しなかった細胞を示す。図39PはCMVプロモータを含んだ長い相同アーム構築物を電気穿孔したが、TRC1−2x.87EEmRNAは電気穿孔しなかった細胞を示す。
図40】線形化されたDNA構築物によって送達されたキメラ抗原受容体コード領域が、ヒトT細胞においてTRC1−2認識配列に挿入されたかどうかを決定するためのPCR分析の図である。
図41】AAV423ベクターを作製するために使用されるプラスミドのマップを示す。
図42】ヒトT細胞上のCD19キメラ抗原受容体の細胞表面発現を示す図である。抗CD19キメラ抗原受容体の発現レベルを、AAV423をHDR鋳型として使用して、TRC1−2認識配列にCAR遺伝子を挿入した細胞において決定した。細胞表面発現をフローサイトメトリによって分析した。図42A擬似電気穿孔し、擬似形質導入した細胞(MOI−0)、及び擬似電気穿孔し、漸増量のAAV423を形質導入した細胞を示す。図42BはTRC1−2x.87EEを電気穿孔し、擬似形質導入した細胞(MOI−0)、及びTRC1−2x.87EEを電気穿孔し、漸増量のAAV423を形質導入した細胞を示す。
図43】キメラ抗原受容体コード配列の挿入を示す図である。PCR法を使用して、AAV423によって導入されたキメラ抗原受容体コード配列が、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼによって切断されたTRC1−2認識部位に挿入されたかどうかを決定した。
図44】抗CD19CAR T細胞の表現型分析を示す。図44Aでは活性化T細胞にTRC1−2x.87EEmRNAで電気穿孔し、次にJeTプロモータにより駆動され、相同アームに隣接する抗CD19CAR発現カセットを含むAAV6ベクターを形質導入した。IL−2(10ng/mL)と共に5日間培養した後、フローサイトメトリによって細胞表面CD3及び抗CD19CAR発現について細胞を分析した。図44Bでは抗CD3磁気ビーズを用いてCD3細胞を枯渇させることによりCD3細胞を濃縮した。次いで、枯渇させた細胞をIL−15(10ng/mL)及びIL−21(10ng/mL)中で3日間培養し、CD3及び抗CD19CARの細胞表面発現について再分析した。C)CD3CD19CAR T細胞の精製された集団をフローサイトメトリによって分析し、CD4及びCD8である細胞のパーセンテージを決定した。図44DではCD3CD19CAR T細胞の精製された集団を、フローサイトメトリによってさらに分析し、CD62L及びCD45ROを染色することによってそれらがセントラルメモリーT細胞、移行性メモリーT細胞、又はエフェクターメモリーT細胞であるかどうかを決定した。
図45】Raji播種性リンパ腫モデルを示す。ホタルルシフェラーゼ(ffLuc)44を安定に発現するRaji細胞を、2.0×10細胞/マウスの用量で、1日目に5〜6週齢の雌NSGマウスに静脈注射した。4日目に、PBS、又は同じ健康なドナーPBMCから調製された遺伝子編集された対照TCR KO T細胞を含有するPBS、又は同じドナーから調製されたCAR T細胞の表示の用量を含有するPBSを、マウスにi.v.注射した。表示の日に、生存マウスにルシフェリン基質(150mg/kg生理食塩水)を腹腔内注射し、麻酔し、7分後に「IVIS SpectrumCT」(登録商標)(Perkin Elmer、Waltham、MA)を使用してルシフェラーゼ活性を測定した。Living Imageソフトウェア4.5.1(Perkin Elmer、Waltham、MA)を使用してデータを分析し、エクスポートした。発光信号強度は、p/秒/cm/srの輝度で表される。
【0082】
配列の簡単な説明
配列番号1は、ヒトT細胞受容体アルファ定常領域遺伝子(NCBI Gene ID番号28755)のヌクレオチド配列を示す。
【0083】
配列番号2は、ヒトT細胞受容体アルファ定常領域によってコードされるアミノ酸配列を示す。
【0084】
配列番号3は、TRC1−2認識配列のアミノ酸配列を示す。
【0085】
配列番号4は、TRC3−4認識配列のヌクレオチド配列を示す。
【0086】
配列番号5は、TRC7−8認識配列のヌクレオチド配列を示す。
【0087】
配列番号6は、I−CreIのアミノ酸配列を示す。
【0088】
配列番号7は、LAGLIDADGモチーフのアミノ酸配列を示す。
【0089】
配列番号8は、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0090】
配列番号9は、TRC1−2x.87QEメガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0091】
配列番号10は、TRC1−2x.87EQメガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0092】
配列番号11は、TRC1−2x.87メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0093】
配列番号12は、TRC1−2x.6メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0094】
配列番号13は、TRC1−2x.20メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0095】
配列番号14は、TRC1−2x.55メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0096】
配列番号15は、TRC1−2x.60メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0097】
配列番号16は、TRC1−2x.105メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0098】
配列番号17はTRC1−2x.163メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0099】
配列番号18は、TRC1−2x.113_3メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0100】
配列番号19は、TRC1−2x.5メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0101】
配列番号20は、TRC1−2x.8メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0102】
配列番号21は、TRC1−2x.25メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0103】
配列番号22は、TRC1−2x.72メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0104】
配列番号23は、TRC1−2x.80メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0105】
配列番号24は、TRC1−2x.84メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0106】
配列番号25は、TRC1−2x.120メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0107】
配列番号26は、TRC1−2x.113_1メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0108】
配列番号27は、TRC1−2x.113_2メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0109】
配列番号28はTRC3−4x.3メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0110】
配列番号29は、TRC3−4x.19メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0111】
配列番号30は、TRC7−8x.7メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0112】
配列番号31は、TRC7−8x.9メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0113】
配列番号32は、TRC7−8x.14メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。
【0114】
配列番号33は、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0115】
配列番号34は、TRC1−2x.87QEメガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0116】
配列番号35は、TRC1−2x.87EQメガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0117】
配列番号36は、TRC1−2x.87メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0118】
配列番号37は、TRC1−2x.6メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0119】
配列番号38は、TRC1−2x.20メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0120】
配列番号39は、TRC1−2x.55メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0121】
配列番号40は、TRC1−2x.60メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0122】
配列番号41は、TRC1−2x.105メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0123】
配列番号42は、TRC1−2x.163メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0124】
配列番号43は、TRC1−2x.113_3メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0125】
配列番号44は、TRC1−2x.5メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0126】
配列番号45は、TRC1−2x.8メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0127】
配列番号46は、TRC1−2x.25メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0128】
配列番号47は、TRC1−2x.72メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0129】
配列番号48は、TRC1−2x.80メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0130】
配列番号49は、TRC1−2x.84メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0131】
配列番号50は、TRC1−2x.120メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0132】
配列番号51は、TRC1−2x.113_1メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0133】
配列番号52は、TRC1−2x.113_2メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0134】
配列番号53は、TRC3−4x.3メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0135】
配列番号54はTRC3−4x.19メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0136】
配列番号55は、TRC7−8x.7メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0137】
配列番号56はTRC7−8x.9メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0138】
配列番号57はTRC7−8x.14メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0139】
配列番号58は、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0140】
配列番号59は、TRC1−2x.87QEメガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0141】
配列番号60は、TRC1−2x.87EQメガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0142】
配列番号61は、TRC1−2x.87メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0143】
配列番号62は、TRC1−2x.6メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0144】
配列番号63は、TRC1−2x.20メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0145】
配列番号64は、TRC1−2x.55メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0146】
配列番号65は、TRC1−2x.60メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0147】
配列番号66は、TRC1−2x.105メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0148】
配列番号67は、TRC1−2x.163メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0149】
配列番号68は、TRC1−2x.113_3メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0150】
配列番号69は、TRC1−2x.5メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0151】
配列番号70は、TRC1−2x.8メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0152】
配列番号71はTRC1−2x.25メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0153】
配列番号72は、TRC1−2x.72メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0154】
配列番号73は、TRC1−2x.80メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0155】
配列番号74は、TRC1−2x.84メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0156】
配列番号75は、TRC1−2x.120メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0157】
配列番号76は、TRC1−2x.113_1メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0158】
配列番号77は、TRC1−2x.113_2メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0159】
配列番号78は、TRC3−4x.3メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0160】
配列番号79は、TRC3−4x.19メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0161】
配列番号80は、TRC7−8x.7メガヌクレアーゼの残基198〜344を示す。
【0162】
配列番号81は、TRC7−8x.9メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0163】
配列番号82は、TRC7−8x.14メガヌクレアーゼの残基7〜153を示す。
【0164】
配列番号83は、TRC1−2認識配列のアンチセンス鎖のヌクレオチド配列を示す。
【0165】
配列番号84は、TRC3−4認識配列のアンチセンス鎖のヌクレオチド配列を示す。
【0166】
配列番号85は、TRC7−8認識配列のアンチセンス鎖のヌクレオチド配列を示す。
【0167】
配列番号86は、配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0168】
配列番号87は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0169】
配列番号88は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0170】
配列番号89は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0171】
配列番号90は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0172】
配列番号91は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0173】
配列番号92は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0174】
配列番号93は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0175】
配列番号94は、切断に起因する挿入及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0176】
配列番号95は、切断に起因する挿入及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0177】
配列番号96は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0178】
配列番号97は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0179】
配列番号98は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0180】
配列番号99は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0181】
配列番号100は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0182】
配列番号101は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0183】
配列番号102は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0184】
配列番号103は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0185】
配列番号104は、切断に起因する欠失及びNHEJを含む配列番号1のヌクレオチド162〜233を示す。
【0186】
配列番号105は、配列番号1のヌクレオチド181〜214を示す。
【0187】
配列番号106は、相同組換えによって挿入された外因性核酸配列を含む配列番号1のヌクレオチド181〜214を示す。
【0188】
配列番号107は、AAV405ベクターを作製するために使用されるプラスミドのヌクレオチド配列を示す。
【0189】
配列番号108は、AAV406ベクターを作製するために使用されるプラスミドのヌクレオチド配列を示す。
【0190】
配列番号109は、AAV−CAR100(AAV408)ベクターを作製するために使用されるプラスミドのヌクレオチド配列を示す。
【0191】
配列番号110は、AAV−CAR763(AAV412)ベクターを作製するために使用されるプラスミドのヌクレオチド配列を示す。
【0192】
配列番号111は、抗CD19キメラ抗原受容体のアミノ酸配列を示す。
【0193】
配列番号112は、抗CD19細胞外リガンド結合ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0194】
配列番号113は、キメラ抗原受容体細胞内細胞質シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0195】
配列番号114は、キメラ抗原受容体細胞内共刺激ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0196】
配列番号115は、キメラ抗原受容体シグナルペプチドドメインのアミノ酸配列を示す。
【0197】
配列番号116は、キメラ抗原受容体ヒンジ領域のアミノ酸配列を示す。
【0198】
配列番号117は、キメラ抗原受容体膜貫通ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0199】
配列番号118は、EF−1アルファコアプロモータのヌクレオチド配列を示す。
【0200】
配列番号119は、外因性ポリヌクレオチドインサートのヌクレオチド配列を示す。
【0201】
配列番号120は、TRC1−2認識配列内に挿入された外因性核酸配列を含むヒトTCRアルファ定常領域遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【0202】
配列番号121は、TRC3−4認識配列内に挿入された外因性核酸配列を含むヒトTCRアルファ定常領域遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【0203】
配列番号122は、TRC7−8認識配列内に挿入された外因性核酸配列を含むヒトTCRアルファ定常領域遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
【0204】
配列番号123は、AAV421ベクターを作製するために使用されるプラスミドの核酸配列を示す。
【0205】
配列番号124は、AAV422ベクターを作製するために使用されるプラスミドの核酸配列を示す。
【0206】
配列番号125は、AAV423ベクターを作製するために使用されるプラスミドの核酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0207】
1.1 参照と定義
本明細書で言及する特許及び科学文献は、当業者が利用可能な知識を確立する。本明細書に引用されるGenBankデータベース配列を含む、発行された米国特許、許可された出願、公開された外国出願、及び参考文献は、それぞれが具体的かつ個々に参照により組み込まれると示されると同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0208】
本発明は、異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完璧且つ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。例えば、一実施形態に関して図示された特徴は、他の実施形態に組み込むことができ、特定の実施形態に関して図示された特徴は、その実施形態から削除することができる。更に、本明細書に示唆された実施形態に対する多くの変形および追加は、本開示に照らして当業者には明らかであり、これらは本発明から逸脱するものではない。
【0209】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書における本発明の説明に使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を限定する意図のものではない。
【0210】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0211】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、又は「この(the)」は、1つ又は複数を意味することができる。例えば、「1つの(a)」細胞は単一の細胞又は多数の細胞を意味することができる。
【0212】
本明細書で使用されるように、特に他のことが示されない限り、「又は」という語は、「及び/又は」の包括的な意味で使用され、「どちらか/又は」の排他的な意味で使用されるものではない。
【0213】
本明細書で使用される用語「メガヌクレアーゼ」は、12塩基対を超える認識配列で二本鎖DNAに結合するエンドヌクレアーゼを指す。好ましくは、本発明のメガヌクレアーゼの認識配列は22塩基対である。メガヌクレアーゼは、I−CreIに由来するエンドヌクレアーゼであり得、例えばDNA結合特異性、DNA切断活性、DNA結合親和性、又は二量体化特性に関して天然I−CreIと比較して改変されたI−CreIの操作された変異体を指すことができる。I−CreIのこのような改変された変異体を作製するための方法は、当技術分野において公知である(例えば、国際公開第2007/047859号パンフレット)。本明細書で使用されるメガヌクレアーゼは、ヘテロ二量体として、又は一対のDNA結合ドメインがペプチドリンカーを用いて単一のポリペプチドに連結された「単鎖メガヌクレアーゼ」として二本鎖DNAに結合する。用語「ホーミングエンドヌクレアーゼ」は、用語「メガヌクレアーゼ」と同義である。本発明のメガヌクレアーゼは、細胞、特にヒトT細胞において発現した場合実質的に非毒性であり、従って、本明細書に記載の方法を用いて測定した場合に、細胞生存率に対する有害効果またはメガヌクレアーゼ切断活性の有意な低下を観察することなく、細胞にトランスフェクトし、37℃において維持することができる。
【0214】
本明細書で使用される場合、用語「単鎖メガヌクレアーゼ」は、リンカーによって連結された一対のヌクレアーゼサブユニットを含むポリペプチドを指す。単鎖メガヌクレアーゼは、N末端サブユニット−リンカー−C−末端サブユニットという構成を有する。2つのメガヌクレアーゼサブユニットは、一般に、アミノ酸配列が同一ではなく、同一ではないDNA配列を認識する。従って、単鎖メガヌクレアーゼは、典型的には、偽パリンドローム又は非パリンドローム認識配列を切断する。単鎖メガヌクレアーゼは、実際には二量体ではないが、「単鎖ヘテロ二量体」又は「単鎖ヘテロ二量体メガヌクレアーゼ」と呼ばれることがある。明確にするために、他に特定しない限り、「メガヌクレアーゼ」という用語は、二量体又は単鎖メガヌクレアーゼを指すことができる。
【0215】
本明細書で使用される、用語「リンカー」は、2つのメガヌクレアーゼサブユニットを単一のポリペプチドに結合するために使用される外因性ペプチド配列を指す。リンカーは、天然タンパク質に見出される配列を有してもよく、又は天然タンパク質には見出されない人工配列であってもよい。リンカーは可撓性で二次構造が欠如していてもよく、又は生理学的条件下で特定の三次元構造を形成する傾向を有していてもよい。リンカーとしては、限定するものではないが、米国特許第8,445,251号に包含されるものを挙げることができる。いくつかの実施形態において、リンカーは、配列番号8〜32のいずれか1つの残基154〜195を含むアミノ酸配列を有することができる。
【0216】
本明細書で使用される場合、用語「TALEN」は、FokIヌクレアーゼドメインの任意の部分に融合された16〜22個のTALドメイン反復配列を含むDNA結合ドメインを含むエンドヌクレアーゼを指す。
【0217】
本明細書で使用される場合、「コンパクトTALEN」という用語は、I−TevIホーミングエンドヌクレアーゼのヌクレアーゼドメインの任意の触媒活性部分に任意の向きで融合された16〜22個のTALドメイン反復配列を有するDNA結合ドメインを含むエンドヌクレアーゼを指す。
【0218】
本明細書で使用される場合、用語「CRISPR」は、Cas9等のカスパーゼと、ゲノムDNA中の認識部位にハイブリダイズすることによって、カスパーゼのDNA切断を誘導するガイドRNAとを含む、カスパーゼに基づくエンドヌクレアーゼを指す。
【0219】
本明細書で使用される場合、用語「メガTAL」は、操作された配列特異的ホーミングエンドヌクレアーゼを有する活性化因子様エフェクター(TALE)DNA結合ドメインを含む単鎖ヌクレアーゼを指す。
【0220】
タンパク質に関して本明細書で使用される場合、用語「組換え」は、タンパク質をコードする核酸及び該タンパク質を発現する細胞又は生物に遺伝子操作技術を適用した結果として改変されたアミノ酸配列を有することを意味する。核酸に関して、用語「組換え」は、遺伝子操作技術を適用した結果として改変された核酸配列を有することを意味する。遺伝子操作技術としては、限定するものではないが、PCR及びDNAクローニング技術;トランスフェクション、形質転換、及び他の遺伝子移入技術;相同組換え;部位特異的突然変異誘発;並びに遺伝子融合が挙げられる。この定義に従って、天然に存在するタンパク質と同一のアミノ酸配列を有するが、異種宿主でのクローニング及び発現によって産生されるタンパク質は、組換え体とはみなされない。
【0221】
本明細書で使用される場合、用語「野生型」は、同種の遺伝子の対立遺伝子集団における最も一般的な天然に存在する対立遺伝子(即ち、ポリヌクレオチド配列)を指し、野生型対立遺伝子によってコードされるポリペプチドがその元の機能を有する。用語「野生型」は、野生型対立遺伝子によってコードされるポリペプチドも指す。野生型対立遺伝子(即ち、ポリヌクレオチド)及びポリペプチドは、野生型配列に対して1又は複数の突然変異及び/又は置換を含む突然変異体又は変異体の対立遺伝子及びポリペプチドとは区別される。野生型の対立遺伝子又はポリペプチドは、生物において正常な表現型を付与することができるが、突然変異体又は変異体の対立遺伝子又はポリペプチドは、場合によっては、変化した表現型を付与し得る。野生型ヌクレアーゼは、組換え体又は非天然のヌクレアーゼとは区別される。
【0222】
組換えタンパク質に関して本明細書で使用される場合、用語「改変」は、参照配列(例えば、野生型又は天然の配列)と比較した組換え配列におけるアミノ酸残基の任意の挿入、欠失、又は置換を意味する。
【0223】
本明細書で使用される場合、用語「認識配列」は、エンドヌクレアーゼによって結合及び切断されるDNA配列を指す。メガヌクレアーゼの場合、認識配列は、4つの塩基対によって分離された1対の逆位9塩基対「半部位」を含む。単鎖メガヌクレアーゼの場合、タンパク質のN末端ドメインは第1の半部位に接触し、タンパク質のC末端ドメインは第2の半部位に接触する。メガヌクレアーゼによる切断は、4塩基対の3’「オーバーハング」を生じる。「オーバーハング」又は「粘着末端」は、二本鎖DNA配列のエンドヌクレアーゼ切断によって生成され得る短い一本鎖DNAセグメントである。I−CreIに由来するメガヌクレアーゼ及び単鎖メガヌクレアーゼの場合、オーバーハングは、22塩基対認識配列の塩基10〜13を含む。コンパクトTALENの場合、認識配列は、I−TevIドメインによって認識される第1のCNNNGN配列、続いて長さが4〜16塩基対である非特異的スペーサ、続いてTAL−エフェクタードメインによって認識される長さ16〜22bpの第2の配列である(この配列は、典型的には5’T塩基を有する)。コンパクトTALENによる切断は、2塩基対の3’オーバーハングを生じる。CRISPRの場合、認識配列は、典型的には16〜24塩基対の配列であり、これにガイドRNAが結合してCas9切断を誘導する。CRISPRによる切断は平滑末端を生成した。
【0224】
本明細書で使用される場合、用語「標的部位」又は「標的配列」は、ヌクレアーゼの認識配列を含む、細胞の染色体DNAの領域を指す。
【0225】
本明細書で使用される場合、用語「DNA結合親和性」又は「結合親和性」は、メガヌクレアーゼが参照DNA分子(例えば、認識配列又は任意の配列)と非共有結合する傾向を意味する。結合親和性は、解離定数Kによって測定される。本明細書中で使用される場合、参照認識配列に対するヌクレアーゼのKが、基準ヌクレアーゼと比較して統計的に有意なパーセント変化で増加または減少される場合、ヌクレアーゼは結合親和性を「変化」させている。
【0226】
本明細書で使用する場合、用語「相同組換え」又は「HR」は、修復鋳型として同種DNA配列を使用して二本鎖DNA切断を修復する天然の細胞プロセスを指す(例えば、Cahillら、(2006)、Front.Biosci.11:1958〜1976)。相同なDNA配列は、細胞に送達された内因性染色体配列又は外因性核酸であり得る。
【0227】
本明細書中で使用される場合、用語「非相同末端結合」又は「NHEJ」は、2本鎖DNA切断が、2つの非相同DNAセグメントの直接接合によって修復される天然の細胞プロセスを指す(例えば、Cahillら、(2006)、Front.Biosci.11:1958〜1976を参照されたい)。非相同末端結合によるDNA修復は誤りを起こしやすく、修復部位でのDNA配列の非鋳型付加又は欠失が頻繁に起こる。いくつかの例では、標的認識配列における切断は、標的認識部位においてNHEJを生じる。遺伝子のコード配列中の標的部位のヌクレアーゼ誘導切断、続いてNHEJによるDNA修復は、フレームシフト突然変異等の遺伝子機能を破壊する突然変異をコード配列に導入する可能性がある。従って、細胞集団において遺伝子を効果的にノックアウトするために、操作されたヌクレアーゼを使用することができる。
【0228】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗原受容体」又は「CAR」は、免疫エフェクター細胞(例えば、ヒトT細胞)上に抗原に対する特異性を付与又は移植する操作された受容体を指す。キメラ抗原受容体は、典型的には、細胞外リガンド結合ドメイン又は部分、及びT細胞活性化に必要なシグナルを伝達する1又は複数の刺激ドメインを含む細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態において、細胞外リガンド結合ドメイン又は部分は、モノクローナル抗体由来の単鎖可変断片(scFv)の形態であってよく、これらは、特定のエピトープ又は抗原(例えば、癌細胞又は他の疾患を引き起こす細胞又は粒子の表面に優先的存在するにエピトープ又は抗原)に対する特異性を提供する。細胞外リガンド結合ドメインは、任意の目的の抗原又はエピトープに特異的であり得る。特定の実施形態において、リガンド結合ドメインはCD19に特異的である。
【0229】
キメラ抗原受容体の細胞外ドメインはまた、Bリンパ球上の自己抗原特異的B細胞受容体によって認識され得る、従って、抗体媒介性自己免疫疾患において自己反応性Bリンパ球を特異的に標的として、殺傷するようにT細胞を導く自己抗原を含む(Payneら、(2016)、Science 353(6295):179〜184を参照されたい)。このようなCARは、キメラ自己抗体受容体(CAAR)と呼ばれ、その使用は本発明に包含される。
【0230】
scFvは、リンカー配列を介して結合することができる。細胞内刺激ドメインは、抗原結合後に免疫エフェクター細胞に活性化シグナルを伝達する1又は複数の細胞質シグナル伝達ドメインを含み得る。このような細胞質シグナル伝達ドメインは、限定するものではないが、CD3−ゼータを含む。細胞内刺激ドメインはまた、リガンド結合後に増殖性及び/又は細胞生存シグナルを伝達する1又は複数の細胞内共刺激ドメインを含み得る。このような細胞内共刺激ドメインとしては、限定するものではないが、CD28ドメイン、4−1BBドメイン、OX40ドメイン、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。キメラ抗原受容体は、ヒンジ又はスペーサ配列を介して細胞外リガンド結合ドメインに結合した膜貫通ドメインを含む、追加の構造要素を更に含むことができる。
【0231】
本明細書で使用する場合、「外因性T細胞受容体」又は「外因性TCR」とは、TCRを内因性に発現してもしなくてもよい免疫エフェクター細胞(例えば、ヒトT細胞)のゲノムにその配列が導入されるTCRを指す。免疫エフェクター細胞上の外因性TCRの発現は、特定のエピトープ又は抗原(例えば、癌細胞又は他の疾患を引き起こす細胞又は粒子の表面に優先的に存在するエピトープ又は抗原)に対する特異性を付与することができる。このような外因性T細胞受容体は、アルファ及びベータ鎖を含むことができ、又はガンマ及びデルタ鎖を含むことができる。本発明において有用な外因性TCRは、任意の抗原又は目的のエピトープに対して特異性を有し得る。
【0232】
本明細書で使用される場合、用語「発現低下」は、対照細胞と比較した場合、遺伝子改変細胞の細胞表面における内因性T細胞受容体の発現の任意の低下を指す。低下という用語はまた、対照細胞の集団と比較した場合、細胞表面で内因性ポリペプチド(即ち、内因性T細胞受容体)を発現する、細胞集団中の細胞のパーセンテージの低下を指すことができる。このような低下は、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%まで、又は最大100%であり得る。従って、用語「低下」は、内因性T細胞受容体の部分ノックダウン及び完全ノックダウンの両方を包含する。
【0233】
アミノ酸配列及び核酸配列の両方に関して本明細書で使用される場合、用語「同一性パーセント」、「配列同一性」、「類似性パーセンテージ」、「配列類似性」等は、アライメントしたアミノ酸残基又はヌクレオチドの間の類似性を最大にする、同一又は類似の残基又はヌクレオチドの数、総残基又はヌクレオチドの数及び配列アライメント中のギャップの存在及び長さの関数である、配列のアライメントに基づく2つの配列の類似性の程度の尺度を指す。標準的なパラメータを使用して配列類似性を決定するための様々なアルゴリズム及びコンピュータプログラムが利用可能である。本明細書中で使用される場合、配列類似性は、アミノ酸配列についてはBLASTpプログラム及び核酸配列についてはBLASTnプログラムを使用して測定され、これらは両方ともNational Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して利用可能であり、例えば、Altschulら、(1990)、J.Mol.Biol.215:403〜410;Gish及びStates(1993)、Nature Genet.3:266〜272;Maddenら、(1996)、Meth.Enzymol.266:131〜141;Altschulら、(1997)、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402);Zhangら、(2000)、J.Comput.Biol.7(1−2):203〜14に記載されている。本明細書中で使用される場合、2つのアミノ酸配列の類似性パーセントは、BLASTpアルゴリズムについての以下のパラメータに基づくスコアである:ワードサイズ=3;ギャップ開始ペナルティ=−11;ギャップ伸長ペナルティ=−1;及びスコア行列=BLOSUM62。本明細書中で使用される場合、2つの核酸配列の類似性パーセントは、BLASTnアルゴリズムについての以下のパラメータに基づくスコアである:ワードサイズ=11;ギャップ開始ペナルティ=−5;ギャップ伸長ペナルティ=−2;マッチ報酬=1;ミスマッチペナルティ=−3。
【0234】
2つのタンパク質又はアミノ酸配列の改変に関して本明細書で使用される場合、第1のタンパク質における特定の改変が第2のタンパク質における改変と同じアミノ酸残基の置換であり、2つのタンパク質が標準配列アラインメント(例えば、BLASTpプログラムを用いて)に供される場合に、第1のタンパク質における改変のアミノ酸位が、第2のタンパク質における改変のアミノ酸位に対応するか、又は整列することを示すために「対応する」という用語が使用される。従って、残基X及びYが配列アライメントにおいて互いに対応する場合、第1のタンパク質における残基「X」のアミノ酸「A」への改変は、第2のタンパク質における残基「Y」のアミノ酸「A」への改変に対応し、X及びYが実際には異なる数であってもよい。
【0235】
本明細書で使用される場合、用語「認識半部位」、「認識配列半部位」、又は単に「半部位」は、ホモ二量体又はヘテロ二量体メガヌクレアーゼの単量体によって、あるいは単鎖メガヌクレアーゼの1つのサブユニットによって認識される、二本鎖DNA分子中の核酸配列を意味する。
【0236】
本明細書中で使用される場合、用語「超可変領域」は、比較的高い可変性を有するアミノ酸を含むメガヌクレアーゼ単量体又はサブユニット内の局在化配列を指す。超可変領域は、約50〜60個の連続残基、約53〜57個の連続残基、又は好ましくは約56個の残基を含むことができる。いくつかの実施形態において、超可変領域の残基は、配列番号8〜32のいずれか1つの24〜79位又は215〜270位に対応し得る。超可変領域は、認識配列中のDNA塩基と接触する1又は複数の残基を含むことができ、単量体又はサブユニットの塩基選択を変更するように改変することができる。超可変領域はまた、メガヌクレアーゼが二本鎖DNA認識配列と結合する場合、DNA骨格に結合する1又は複数の残基を含むことができる。このような残基は、DNA骨格及び標的認識配列に対するメガヌクレアーゼの結合親和性を変化させるように改変することができる。本発明の異なる実施形態において、超可変領域は、可変性を示す1〜20の間の残基を含むことができ、塩基選択及び/又はDNA結合親和性に影響を及ぼすように改変することができる。特定の実施形態において、超可変領域は、可変性を示す約15〜18の間の残基を含み、塩基選択及び/又はDNA結合親和性に影響を及ぼすように修飾することができる。いくつかの実施形態において、超可変領域内の可変残基は、配列番号8〜32のいずれか1つの24、26、28、29、30、32、33、38、40、42、44、46、66、68、70、72、73、75、及び77位の1又は複数に対応する。他の実施形態において、超可変領域内の可変残基は、配列番号8〜32のいずれか1つの215、217、219、221、223、224、229、231、233、235、237、248、257、259、261、263、264、266、及び268位の1又は複数に対応する。
【0237】
本明細書で使用される場合、用語「T細胞受容体アルファ定常領域遺伝子」及び「TCRアルファ定常領域遺伝子」は互換的に使用され、NCBI GenID NO.28755(配列番号1)によって同定されるヒト遺伝子を指す。
【0238】
用語「組換えDNA構築物」、「組換え構築物」、「発現カセット」、「発現構築物」、「キメラ構築物」、「構築物」、及び「組換えDNA断片」は、本明細書において互換的に使用され、一本鎖又は二本鎖ポリヌクレオチドである。組換え構築物は、限定するものではないが、天然に一緒には見出されない調節及びコード配列を含む、一本鎖又は二本鎖ポリヌクレオチドの人工的な組み合わせを含む。例えば、組換えDNA構築物は、異なる供給源に由来する調節配列及びコード配列、又は同じ供給源に由来し、天然に見出されるものとは異なる様式で配置される調節配列及びコード配列を含み得る。このような構築物は、単独で使用してもよく、又はベクターと組み合わせて使用してもよい。
【0239】
本明細書中で使用される場合、「ベクター」又は「組換えDNAベクター」は、所定の宿主細胞においてポリペプチドをコードする配列の転写及び翻訳が可能な複製系及び配列を含む構築物であり得る。ベクターが使用される場合、ベクターの選択は、当業者に周知の宿主細胞を形質転換するために使用される方法に依存する。ベクターとしては、限定するものではないが、プラスミドベクター及び組換えAAVベクター、又は本発明のメガヌクレアーゼをコードする遺伝子を標的細胞に送達するために適切な当技術分野で公知の任意の他のベクターを挙げることができる。当業者は、本発明の単離されたヌクレオチド又は核酸配列のいずれかを含む宿主細胞を首尾よく形質転換、選択、及び増殖させるために、ベクター上に存在しなければならない遺伝的要素を十分に認識している。
【0240】
本明細書中で使用される場合、「ベクター」は、ウイルスベクターを指すこともできる。ウイルスベクターとしては、限定するものではないが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を挙げることができる。
【0241】
本明細書で使用する場合、「ポリシストロニック」mRNAは、2つ以上のコード配列(即ち、シストロン)を含み、2つ以上のタンパク質をコードする単一のメッセンジャーRNAを指す。ポリシストロニックmRNAは、限定するものではないが、IRES要素、T2A要素、P2A要素、E2A要素、及びF2A要素を含む、同じmRNA分子由来の2つ以上の遺伝子の翻訳を可能にする、当技術分野において公知の任意の要素を含むことができる。
【0242】
本明細書中で使用される場合、「ヒトT細胞」又は「T細胞」は、ヒトドナーから単離されたT細胞を指す。ヒトT細胞及びそれに由来する細胞には、継代培養されていない単離されたT細胞、不死化のない細胞培養条件下で継代及び維持されたT細胞、並びに不死化され、細胞培養下で無期限に維持され得るT細胞が含まれる。
【0243】
本明細書で使用する場合、「対照」又は「対照細胞」は、遺伝子改変細胞の遺伝子型又は表現型における変化を測定するための基準点を提供する細胞を指す。対照細胞は、例えば:(a)野生型細胞、即ち、遺伝子改変細胞を生じた遺伝子改変のための出発物質と同じ遺伝子型の細胞;(b)遺伝子改変された細胞と同じ遺伝子型の細胞であるが、ヌル構築物で形質転換された(即ち、目的の形質に対して公知の効果を有さない構築物を有する)細胞;(c)遺伝子改変された細胞と遺伝的に同一であるが、変化した遺伝子型又は表現型の発現を誘導する条件又は刺激、あるいは更なる遺伝子改変に曝されない細胞を含むことができる。
【0244】
本明細書で使用される場合、変数の数値範囲の列挙は、本発明が、その範囲内の値のいずれかに等しい変数で実施され得ることを伝える意図のものである。従って、本質的に離散的な変数の場合、この変数は、範囲の終点を含む数値範囲内の任意の整数値に等しくなり得る。同様に、本質的に連続する変数の場合、この変数は、範囲の終点を含む数値範囲内の任意の実数値と等しくなり得る。一例として、限定するものではないが、0から2の間の値を有すると記載された変数は、変数が本質的に離散的である場合、0、1、又は2の値を取ることができ、変数が本質的に連続的である場合、0.0、0.1、0.01、0.001、又はであれば、≧0且つ≦2の任意の他の実数値を取ることができる。
【0245】
2.1 本発明の原理
本発明は、切断部位におけるNHEJが、TCRアルファ鎖サブユニットの発現及び最終的に細胞表面でのT細胞受容体の発現を破壊するように、操作されたヌクレアーゼを、ヒトTCRアルファ定常領域遺伝子(配列番号1)に見出される認識配列の認識及び切断に利用できるという発見に部分的に基づいている。更に、本発明によれば、外因性ポリヌクレオチド配列は、例えば相同組換えによって、目的の配列が細胞内で同時に発現されるようにヌクレアーゼ切断部位においてTCRアルファ定常領域遺伝子に挿入される。このような外因性配列は、例えば、キメラ抗原受容体、外因性TCR受容体、又は任意の他の目的のポリペプチドをコードすることができる。
【0246】
従って、本発明は、単一の操作されたヌクレアーゼで単一の認識部位を標的化することにより、内因性T細胞受容体のノックアウトと外因性核酸配列(例えば、キメラ抗原受容体又は外因性TCR)の発現との両方を可能にする。キメラ抗原受容体をコードする配列がTCRアルファ定常領域遺伝子に挿入される特定の実施形態において、本発明は、抗原特異的CARを発現し、内因性TCRの発現を低下又は完全にノックアウトさせる同種異系T細胞を作製する単純化された方法を提供する。このような細胞は、同種異系の対象に投与された場合、移植片対宿主病(GVHD)の誘導の減少を示し得るか、又は誘導し得ない。
【0247】
2.2 T細胞受容体アルファ定常領域遺伝子内の認識配列を認識及び切断するためのヌクレアーゼ
生存細胞のゲノム中でDNA切断を行うために部位特異的ヌクレアーゼを使用することが可能であり、このようなDNA切断は突然変異誘発性NHEJ修復を介して、又はトランスジェニックDNA配列との相同組換えを介してゲノムの永続的改変をもたらし得ることが、当技術分野では公知である。NHEJは切断部位で突然変異誘発を生じ、対立遺伝子の不活性化を引き起こす。NHEJ関連突然変異誘発は、初期停止コドンの生成、異常な非機能性タンパク質を生成するフレームシフト突然変異、を介して対立遺伝子を不活性化する可能性があり、あるいはナンセンス変異依存mRNA分解等の機序を引き起こす可能性がある。NHEJを介した突然変異誘発を誘導するヌクレアーゼの使用は、特定の突然変異又は野生型対立遺伝子中に存在する配列を標的化するために使用することができる。標的遺伝子座における二本鎖切断を誘導するためのヌクレアーゼの使用は、特にゲノム標的と相同である配列に隣接するトランスジェニックDNA配列の相同組換えを刺激することが公知である。このようにして、外因性核酸配列を標的座に挿入することができる。このような外因性核酸は、例えば、キメラ抗原受容体、外因性TCR、又は目的の任意の配列若しくはポリペプチドをコードすることができる。
【0248】
異なる実施形態において、様々な異なるタイプのヌクレアーゼが本発明の実施に有用である。一実施形態において、本発明は組換えメガヌクレアーゼを使用して実施することができる。別の実施形態において、本発明は、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPR Nickaseを用いて実施することができる。所定のDNA部位を認識するCRISPR及びCRISPR Nickaseを生成するための方法予は、当技術分野で公知であり、例えば、Ran、ら、(2013)Nat Protoc.8:2281〜308を参照されたい。別の実施形態において、本発明は、TALEN又はコンパクトTALENを使用して実施することができる。所定のDNA部位に結合するTALEドメインを作製するための方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Reyonら、(2012)Nat Biotechnol.30:460〜5を参照されたい。更なる実施形態において、本発明はメガTALを使用して実施することができる。
【0249】
好ましい実施形態において、本発明を実施するために使用されるヌクレアーゼは、単鎖メガヌクレアーゼである。単鎖メガヌクレアーゼは、N末端サブユニット及びリンカーペプチドによって連結されたC末端サブユニットを含む。2つのドメインのそれぞれは、認識配列の半分(即ち、認識半部位)を認識し、DNA切断の部位は、2つのサブユニットの接合点付近の認識配列の中央にある。DNA鎖切断は、メガヌクレアーゼによるDNA切断が4塩基対の3’一本鎖オーバーハングの対を生成するように、4塩基対によって相殺される。
【0250】
いくつかの実施例において、本発明の組換えメガヌクレアーゼは、TRC1−2認識配列(配列番号3)を認識及び切断するように操作されている。このような組換えメガヌクレアーゼは、本明細書では総称して「TRC1−2メガヌクレアーゼ」と呼ばれる。例示的なTRC1−2メガヌクレアーゼは、配列番号8〜27で提供される。
【0251】
更なる実施例において、本発明の組換えメガヌクレアーゼは、TRC3−4認識配列(配列番号4)を認識及び切断するように操作されている。このような組換えメガヌクレアーゼは、本明細書では総称して「TRC3−4メガヌクレアーゼ」と呼ばれる。例示的なTRC3−4メガヌクレアーゼは、配列番号28及び29で提供される。
【0252】
更なる実施例において、本発明の組換えメガヌクレアーゼは、TRC7−8認識配列(配列番号5)を認識及び切断するように操作されている。このような組換えメガヌクレアーゼは、本明細書では総称して「TRC7−8メガヌクレアーゼ」と呼ばれる。例示的なTRC7−8メガヌクレアーゼは、配列番号30〜32で提供される。
【0253】
本発明の組換えメガヌクレアーゼは、第1の超可変領域(HVR1)領域を含む第1のサブユニットと、第2の超可変領域(HVR2)を含む第2のサブユニットとを含む。更に、第1のサブユニットは、認識配列の第1の認識半部位(例えばTRC1、TRC3、又はTRC7半部位)に結合し、第2のサブユニットは、認識配列の第2の認識半部位(例えば、TRC2、TRC4、又はTRC8半部位)に結合する。組換えメガヌクレアーゼが単鎖メガヌクレアーゼである実施形態において、HVR1領域を含み、第1の半部位に結合する第1のサブユニットがN末端サブユニットとして配置され、HVR2領域を含み、第2の半分部位に結合する第2のサブユニットがC末端サブユニットとして配置されるように第1及び第2のサブユニットを配向させることができる。別の実施形態において、HVR1領域を含み、第1の半部位に結合する第1のサブユニットがC末端サブユニットとして配置され、HVR2領域を含み、第2の半分部位に結合する第2のサブユニットがN末端サブユニットとして配置されるように第1及び第2のサブユニットを配向させることができる。本発明の例示的なTRC1−2メガヌクレアーゼを表1に示す。本発明の例示的なTRC3−4メガヌクレアーゼを表2に示す。本発明の例示的なTRC7−8メガヌクレアーゼを表3に示す。
【0254】
表1.TRC1−2認識配列(配列番号3)を認識及び切断するように操作された例示的組換えメガヌクレアーゼ
【表1】
【0255】
「TRC1サブユニット%」及び「TRC2サブユニット%」は、それぞれ、各メガヌクレアーゼのTRC1結合及びTRC2結合サブユニット領域と、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼのTRC1結合及びTRC2結合サブユニット領域との間のアミノ酸配列同一性を表す。
【0256】
表2.TRC3−4認識配列(配列番号4)を認識及び切断するように操作された例示的組換えメガヌクレアーゼ
【表2】
【0257】
*「TRC3サブユニット%」及び「TRC4サブユニット%」は、それぞれ、各メガヌクレアーゼのTRC3結合及びTRC4結合サブユニット領域と、TRC3−4x.3メガヌクレアーゼのTRC3結合及びTRC4結合サブユニット領域との間のアミノ酸配列同一性を表す。
【0258】
表3.TRC7−8認識配列(配列番号5)を認識及び切断するように操作された例示的組換えメガヌクレアーゼ
【表3】
【0259】
*「TRC7サブユニット%」及び「TRC8サブユニット%」は、それぞれ、各メガヌクレアーゼのTRC7結合及びTRC8結合サブユニット領域と、TRC7−8x.7メガヌクレアーゼのTRC7結合及びTRC8結合サブユニット領域との間のアミノ酸配列同一性を表す。
【0260】
2.3 遺伝子改変細胞の作製方法
本発明は、ヒトT細胞受容体(TCR)アルファ定常領域遺伝子(配列番号1)内に見出される認識配列を認識及び切断する操作されたヌクレアーゼを使用して、遺伝子改変細胞を作製する方法を提供する。このような認識配列における切断は、切断部位におけるNHEJを可能にし、ヒトT細胞受容体アルファ鎖サブユニットの発現を破壊し、細胞表面でのT細胞受容体の発現及び/又はまたは機能の低下をもたらす。更に、このような認識配列における切断は、外因性核酸配列のTCRアルファ定常領域遺伝子への直接相同組換えを更に可能にすることができる。
【0261】
本発明の操作されたヌクレアーゼは、タンパク質の形態で、又は好ましくは、操作されたヌクレアーゼをコードする核酸として細胞に送達され得る。このような核酸は、DNA(例えば、環状または線形化プラスミドDNA又はPCR産物)又はRNAであり得る。操作されたヌクレアーゼコード配列がDNA形態で送達される実施形態に関しては、メガヌクレアーゼ遺伝子の転写を促進するためにプロモータに動作可能に連結されなければならない。本発明に適した哺乳動物プロモータには、サイトメガロウイルス初期(CMV)プロモータ(Thomsenら、(1984)、Proc Natl Acad Sci USA.81(3):659〜63)又はSV40初期プロモータ(Benoist及びChambon(1981)、Nature.290(5804):304〜10)等の構成的プロモータ、並びにテトラサイクリン誘導性プロモータ(Dingermannら、(1992)、Mol Cell Biol.12(9):4038〜45)等の誘導性プロモータが挙げられる。
【0262】
いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼをコードするmRNAは、操作されたヌクレアーゼをコードする遺伝子が細胞のゲノムに組み込まれる可能性を低減するため、細胞に送達される。操作されたヌクレアーゼをコードするこのようなmRNAは、インビトロ転写のような当技術分野で公知の方法を使用して作製することができる。いくつかの実施形態において、mRNAは、7−メチル−グアノシンを用いてキャップされる。いくつかの実施形態において、mRNAはポリアデニル化されていてもよい。
【0263】
特定の実施形態において、本発明の操作されたヌクレアーゼをコードするmRNAは、細胞内で同時に発現される2つ以上のヌクレアーゼをコードするポリシストロニックmRNAであり得る。ポリシストロニックmRNAは、同じ標的遺伝子中の異なる認識配列を標的とする、本発明の2つ以上のヌクレアーゼをコードすることができる。あるいは、ポリシストロニックmRNAは、本明細書に記載の少なくとも1つのヌクレアーゼと、同じ遺伝子に位置する別個の認識配列を標的とするか、又は切断部位が両方の遺伝子において生成されるように第2の遺伝子に位置する第2の認識配列を標的とする少なくとも1つの更なるヌクレアーゼとをコードすることができる。ポリシストロニックmRNAは、限定するものではないが、IRES要素、T2A要素、P2A要素、E2A要素、及びF2A要素を含む、同じmRNA分子由来の2つ以上の遺伝子(即ち、シストロン)の翻訳を可能にする、当技術分野において公知の任意の要素を含むことができる。
【0264】
精製されたヌクレアーゼタンパク質を細胞に送達してゲノムDNAを切断することができ、このことにより、当技術分野で公知の様々な異なる機序によって、目的の配列を有する切断部位での相同組換え又は非相同末端結合が可能になる。
【0265】
いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼタンパク質又は操作されたヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、細胞透過性ペプチド又は標的リガンドに結合され、細胞取り込みを促進する。当技術分野で公知の細胞透過性ペプチドの例としては、ポリ−アルギニン(Jearawiriyapaisarnら、(2008)Mol Ther.16:1624〜9)、HIVウイルス由来のTATペプチド(Hudeczら、(2005)、Med.Res.Rev.25:679〜736)、MPG(Simeoniら、(2003)Nucleic Acids Res.31:2717〜2724)、Pep−1(Deshayesら、(2004)Biochemistry43:7698〜7706)、及びHSV−1 VP−22(Deshayesら、(2005)Cell Mol Life Sci.62:1839〜49)が挙げられる。別の実施形態において、操作されたヌクレアーゼ、又は操作されたヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、該ヌクレアーゼタンパク質/DNA/mRNAが標的細胞に結合し、それによって内在化されるように、標的細胞上に発現される特異的細胞表面受容体を認識する抗体に共有結合又は非共有結合される。あるいは、操作されたヌクレアーゼタンパク質/DNA/mRNAは、このような細胞表面受容体に対する天然リガンド(又は天然リガンドの一部)に共有結合又は非共有結合され得る。(McCallら、(2014)Tissue Barriers.2(4):e944449;Dindaら、(2013)Curr Pharm Biotechnol.14:1264〜74;Kangら、(2014)Curr Pharm Biotechnol.15(3):220〜30;Qianら、(2014)Expert Opin Drug Metab Toxicol.10(11):1491〜508)。
【0266】
いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼタンパク質又は操作されたヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、当技術分野で公知の方法を使用して、ナノ粒子に共有結合、若しくは好ましくは非共有結合されるか、又はこのようなナノ粒子内に封入される(Sharmaら(2014)Biomed Res Int.2014)。ナノ粒子は、その長さスケールが<1μm、好ましくは<100nmであるナノスケール送達システムである。このようなナノ粒子は、金属、脂質、ポリマー、又は生体高分子からなるコアを使用して設計することができ、組換えメガヌクレアーゼタンパク質、mRNA又はDNAの複数のコピーをナノ粒子コアに付着又は封入することができる。これは、各細胞に送達されるタンパク質/mRNA/DNAのコピー数を増加させ、従って、個々の操作されたヌクレアーゼの細胞内発現を増加させて、標的認識配列が切断される可能性を最大にする。このようなナノ粒子の表面を、ポリマー又は脂質(例えば、キトサン、カチオン性ポリマー、又はカチオン性脂質)で更に改変して、その表面が追加の官能性を付与するコア−シェルナノ粒子を形成し、細胞送達及びペイロードの取り込みを増強することができる(Jianら、(2012)Biomaterials.33(30):7621〜30)。ナノ粒子は、ナノ粒子を適切な細胞型に導き、及び/又は細胞取り込みの可能性を高めるために、標的化分子に更に結合されることが有利であり得る。このような標的化分子の例としては、細胞表面受容体に特異的な抗体及び細胞表面受容体に対する天然リガンド(又は天然リガンドの一部)が挙げられる。
【0267】
いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼタンパク質又は操作されたヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、カチオン性脂質を使用してリポソーム内に封入又は複合体化される(例えば、Lipofectamine(商標)、Life Technologies Corp.、Carlsbad、CA;Zurisら、(2015)Nat Biotechnol. 33:73〜80;Mishraら、(2011)J Drug Deliv.2011:863734を参照されたい)。リポソーム及びリポプレックス製剤は、ペイロードを分解から保護し、細胞の細胞膜との融合及び/又は破壊によって細胞の取り込みおよび送達効率を促進することができる。
【0268】
いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼタンパク質又は操作されたヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、ポリマー足場(例えばPLGA)内に封入されるか、又はカチオン性ポリマー(例えばPEI、PLL)を使用して複合体化される(Tamboliら、(2011)Ther Deliv.2(4):523〜536)。
【0269】
いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼタンパク質、又は操作されたヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、ミセルに自己集合する両親媒性分子と組み合わされる(Tongら、(2007).J Gene Med。9(11):956〜66)。ポリマーミセルは、凝集を防止し、電荷相互作用をマスクし、細胞外の非特異的相互作用を減少させることができる親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)で形成されたミセルシェルを含み得る。
【0270】
いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼタンパク質、又は操作されたヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、細胞への送達のために、エマルジョン又はナノエマルジョン(即ち、平均粒径<1nmを有する)内に製剤化される。用語「エマルジョン」は、限定するものではないが、任意の水中油型、油中水型、水中油中水型、又は油中水中油型の分散液又は液滴を指し、水不混和相が水相と混合されると、無極性残基(例えば、長い炭化水素鎖)を水から遠ざけ、極性頭部基を水に向ける疎水力の結果として形成され得る脂質構造を含む。これらの他の脂質構造としては、限定するものではないが、単層、少重層、及び多重層の脂質小胞、ミセル並びにラメラ相が挙げられる。エマルジョンは、水相及び親油性相(典型的には油及び有機溶媒を含む)からなる。エマルジョンはまた、しばしば、1又は複数の界面活性剤を含有する。ナノエマルジョン製剤は周知であり、例えば、米国特許出願第2002/0045667号及び第2004/0043041号、並びに米国特許第6,015,832号、第6,506,803号、第6,635,676号、及び第6,559,189号の明細書に記載されており、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0271】
いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼタンパク質、又は操作されたヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、多官能性ポリマーコンジュゲート、DNAデンドリマー、及びポリマーデンドリマーに共有結合又は非共有結合される(Mastorakosら、(2015)Nanoscale.7(9):3845〜56;Chengら、(2008)J Pharm Sci.97(1):123〜43)。デンドリマーの発生は、ペイロードの容量及びサイズを制御することができ、高いペイロード容量を提供することができる。更に、複数の表面基の表示を活用して、安定性を改善し、非特異的な相互作用を低減することができる。
【0272】
いくつかの実施形態において、操作されたヌクレアーゼをコードする遺伝子は、ウイルスベクターを使用して細胞に導入される。このようなベクターは当技術分野で公知であり、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが挙げられる(Vannucciら、(2013 New Microbiol.36:1〜22)に概説されている)。本発明に有用な組換えAAVベクターは、細胞へのウイルスの形質導入及びヌクレアーゼ遺伝子の細胞ゲノムへの挿入を可能にする任意の血清型を有することができる。特定の実施形態において、組換えAAVベクターは、AAV2又はAAV6の血清型を有する。組換えAAVベクターはまた、それらが宿主細胞において第2鎖DNA合成を必要としないように自己相補的であり得る(McCartyら、(2001)Gene Ther.8:1248〜54)。
【0273】
操作されたヌクレアーゼ遺伝子がDNA形態(例えばプラスミド)で、及び/又はウイルスベクター(例えばAAV)を介して送達される場合、それらはプロモータに作動可能に連結されなければならない。いくつかの実施形態において、これは、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクターのLTR)由来の内因性プロモータ又は周知のサイトメガロウイルス若しくはSV40ウイルスの初期プロモータ等のウイルスプロモータであり得る。好ましい実施形態において、ヌクレアーゼ遺伝子は、標的細胞(例えば、ヒトT細胞)において遺伝子発現を優先的に駆動するプロモータに動作可能に連結される。
【0274】
本発明は更に、外因性核酸配列がヌクレアーゼ切断部位でTRCアルファ定常領域遺伝子に挿入されるように、外因性核酸の細胞への導入を提供する。いくつかの実施形態において、外因性核酸は、5’相同アーム及び3’相同アームを含み、ヌクレアーゼ切断部位における核酸配列の細胞ゲノムへの組換えを促進する。
【0275】
本発明の外因性核酸は、先に考察した手段のいずれかによって細胞に導入することができる。特定の実施形態において、外因性核酸は、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス等のウイルスベクター、又は好ましくは組換えAAVベクターを用いて導入される。外因性核酸を導入するために有用な組換えAAVベクターは、細胞へのウイルスの形質導入及び外因性核酸配列の細胞ゲノムへの挿入を可能にする任意の血清型を有することができる。特定の実施形態において、組換えAAVベクターは、AAV2又はAAV6の血清型を有する。組換えAAVベクターはまた、それらが宿主細胞において第2鎖DNA合成を必要としないように自己相補的であり得る。
【0276】
別の特定の実施形態において、外因性核酸は、一本鎖DNA鋳型を使用して細胞内に導入することができる。一本鎖DNAは、外因性核酸を含むことができ、好ましい実施形態において、相同組換えによってヌクレアーゼ切断部位への核酸配列の挿入を促進するために5’及び3’相同アームを含むことができる。一本鎖DNAは、5’相同アームの5’上流に5’AAV逆位末端反復(ITR)配列を、3’相同アームの3’下流に3’AAV ITR配列を更に含むことができる。
【0277】
別の特定の実施形態において、本発明のエンドヌクレアーゼ及び/又は本発明の外因性核酸配列をコードする遺伝子は、線形化DNA鋳型のトランスフェクションによって細胞に導入することができる。いくつかの実施例において、エンドヌクレアーゼ及び/又は外因性核酸配列をコードするプラスミドDNAは、環状プラスミドDNAが細胞へのトランスフェクションの前に線形化されるように、1又は複数種の制限酵素によって消化することができる。
【0278】
細胞に送達される場合、本発明の外因性核酸は、細胞におけるコードされたポリペプチドの発現に適した、先に述べた哺乳動物プロモータ及び誘導性プロモータを含む任意のプロモータに動作可能に連結することができる。本発明の外因性核酸は、合成プロモータに動作可能に連結されていてもよい。合成プロモータとしては、限定するものではないが、JeTプロモータ(国際公開第2002/012514号パンフレット)を挙げることができる。
【0279】
本発明の遺伝子改変細胞がヒトT細胞又はそれに由来する細胞である実施例において、このような細胞は、メガヌクレアーゼ及び/又は外因性核酸配列の導入前に活性化を必要とし得る。例えば、T細胞は、可溶性の、又は支持体(即ち、ビーズ)とコンジュゲートした抗CD3及び抗CD28抗体と、細胞を活性化するのに十分な時間接触させることができる。
【0280】
本発明の遺伝子改変細胞は、1又は複数の誘導可能な自殺遺伝子を発現するように更に改変することができ、その誘導により細胞死を引き起こし、インビトロ又はインビボの細胞の選択的破壊を可能にする。いくつかの例では、自殺遺伝子は、細胞傷害性ポリペプチド、非毒性プロドラッグを細胞傷害性薬物に変換する能力を有するポリペプチド、及び/又は細胞内の細胞傷害性遺伝子経路を活性化するポリペプチドをコードすることができる。即ち、自殺遺伝子は、単独又は他の化合物の存在下で細胞死を引き起こす生成物をコードする核酸である。このような自殺遺伝子の代表例は、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼをコードするものである。更なる例は、水痘帯状疱疹ウイルスのチミジンキナーゼをコードする遺伝子及び5−フルオロシトシンを毒性の高い化合物5−フルオロウラシルに変換することができるシトシンデアミナーゼの細菌遺伝子である。自殺遺伝子としては更に、非限定的な例として、カスパーゼ−9、カスパーゼ−8、又はシトシンデアミナーゼをコードする遺伝子が挙げられる。いくつかの例において、カスパーゼ−9は、二量化(CID)の特定の化学誘導剤を用いて活性化することができる。自殺遺伝子はまた、細胞を治療用及び/又は細胞傷害性のモノクローナル抗体に感受性にする、細胞の表面で発現されるポリペプチドをコードすることもできる。更なる例において、自殺遺伝子は、抗CD20 mAbであるリツキシマブによって認識される抗原性モチーフ及び自殺遺伝子を発現する細胞の選択を可能にするエピトープを含む組換え抗原性ポリペプチドをコードすることができる。例えば、2つのリツキシマブ結合エピトープ及びQBEnd10結合エピトープを含む、国際公開第2013153391号パンフレットに記載のRQR8ポリペプチドを参照されたい。このような遺伝子について、リツキシマブを必要に応じて対象に投与して、細胞枯渇を誘導することができる。
【0281】
2.4 医薬組成物
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の遺伝子改変細胞、又は本発明の遺伝子改変細胞の集団及び医薬担体を含む医薬組成物を提供する。このような医薬組成物は、公知の技術に従って調製することができる。例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy(第21版、2005年)を参照されたい。本発明による医薬製剤の製造において、細胞は、典型的には、医薬として許容される担体と混合され、得られた組成物が対象に投与される。当然のことながら、担体は製剤中の他の成分と適合するという意味において許容可能でなければならず、対象に有害であってはならない。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、対象の疾患の治療に有用な1又は複数の更なる薬剤を更に含むことができる。遺伝子改変細胞が遺伝子改変ヒトT細胞(又はそれに由来する細胞)である更なる実施形態において、本発明の医薬組成物は、インビボでの細胞増殖及び生着を促進する、サイトカイン(例えば、IL−2、IL−7、IL−15、及び/又はIL−21)等の生体分子を更に含むことができる。本発明の遺伝子改変細胞を含む医薬組成物は、追加の薬剤又は生物学的分子と同じ組成物で投与することができ、あるいは、別々の組成物で同時投与することができる。
【0282】
本発明の医薬組成物は、T細胞養子免疫療法によって標的とされ得る任意の疾患状態を治療するために有用であり得る。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は癌の治療に有用である。このような癌としては、限定するものではないが、癌腫、リンパ腫、肉腫、芽腫、白血病、B細胞起源の癌、乳癌、胃癌、神経芽腫、骨肉腫、肺癌、メラノーマ、前立腺癌、結腸癌、腎細胞癌、卵巣癌、横紋筋肉腫、白血病、及びホジキンリンパ腫が挙げられる。特定の実施形態において、B細胞起源の癌としては、限定するものではないが、B系列急性リンパ芽球性白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病、及びB細胞非ホジキンリンパ腫が挙げられる。
【0283】
2.5 組換えAAVベクターの作製方法
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の方法において使用するための組換えAAVベクターを提供する。組換えAAVベクターは、典型的には、HEK−293のような哺乳動物細胞株において産生される。ウイルスのcap遺伝子及びrep遺伝子は、その自己複製を防止して、治療遺伝子(例えば、エンドヌクレアーゼ遺伝子)を送達する余地を作り出すためにベクターから除去されるので、これらをパッケージング細胞株にトランスで提供することが必要である。更に、複製を支持するために必要な「ヘルパー」(例えば、アデノウイルス)成分を提供することが必要である(Cots D、Bosch A、Chillon M(2013)Curr.Gene Ther.13(5):370〜81)。しばしば、組換えAAVベクターは、細胞株に、「ヘルパー」成分をコードする第1のプラスミド、cap及びrep遺伝子を含む第2のプラスミド、並びにウイルスにパッケージングされる介在DNA配列含むウイルス性ITRを含む第3のプラスミドをトランスフェクトする三重トランスフェクションを使用して作製される。カプシドに包まれたゲノム(目的のITR及び1又は複数の介在遺伝子)を含むウイルス粒子は、その後、凍結融解サイクル、超音波処理、界面活性剤、又は当技術分野で公知の他の手段によって細胞から単離される。次いで、粒子を塩化セシウム密度勾配遠心分離又はアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製し、続いて、目的の(1又は複数の)遺伝子に、細胞、組織、又はヒト患者等の生物に送達する。
【0284】
組換えAAV粒子は、典型的には細胞中で産生される(製造される)ので、部位特異的エンドヌクレアーゼがパッケージング細胞中で確実に発現されないようにするために、本発明の実施において予防措置を講じる必要がある。本発明のウイルスゲノムは、エンドヌクレアーゼに対する認識配列を含むので、パッケージング細胞株において発現される任意のエンドヌクレアーゼは、ウイルスゲノムがウイルス粒子にパッケージングされる前にこれを切断することができる。これは、パッケージング効率の低下及び/又は断片化したゲノムのパッケージングを生じる。以下を含むいくつかのアプローチを使用して、パッケージング細胞におけるエンドヌクレアーゼ発現を防止することができる:
【0285】
1.エンドヌクレアーゼは、パッケージング細胞において活性ではない組織特異的プロモータの制御下に置くことができる。例えば、筋肉組織への(1又は複数の)エンドヌクレアーゼ遺伝子の送達のためにウイルスベクターが開発された場合、筋肉特異的プロモータを使用することができる。筋特異的プロモータの例としては、C5−12(Liuら、(2004)Hum Gene Ther.15:783〜92)、筋特異的クレアチンキナーゼ(MCK)プロモータ(Yuasaら、(2002)Gene Ther.9:1576〜88)、又は平滑筋22(SM22)プロモータ(Haaseら、(2013)BMC Biotechnol.13:49〜54)が挙げられる。CNS(ニューロン)特異的プロモータの例としては、NSE、シナプシン、及びMeCP2プロモータ(Lentzら、(2012)Neurobiol Dis.48:179〜88)が挙げられる。肝特異的プロモータの例としては、アルブミンプロモータ(Palb等)、ヒトα1−抗トリプシン(Pa1AT等)、及びヘモペキシン(Phpx等)(Kramer、MGら、(2003)Mol.Therapy 7:375〜85)が挙げられる。眼特異的プロモータの例としては、オプシン、及び角膜上皮特異的K12プロモータ(Martin KRG、Klein RL及びQuigley HA(2002)Methods(28):267〜75)(Tong Yら、(2007)J Gene Med,9::956〜66)が挙げられる。これらのプロモータ又は当技術分野で公知の他の組織特異的プロモータは、HEK−293細胞において高度に活性ではなく、従って、本発明のウイルスベクターに組み込まれた場合、パッケージング細胞において有意なレベルのエンドヌクレアーゼ遺伝子発現を生じることは期待されない。同様に、本発明のウイルスベクターは、他の細胞株の使用及び不適合性組織特異的プロモータの使用(即ち、周知のHeLa細胞株(ヒト上皮細胞)及び肝臓特異的ヘモペキシンプロモータの使用)を企図している。組織特異的プロモータの他の例としては、滑膜肉腫PDZD4(小脳)、C6(肝臓)、ASB5(筋肉)、PPP1R12B(心臓)、SLC5A12(腎臓)、コレステロール調節APOM(肝臓)、ADPRHL1(心臓)、及び一遺伝子性奇形症候群TP73L(筋肉)が挙げられる。(Jacox Eら、(2010)PLoS One v.5(8):e12274)。
【0286】
2.あるいは、ベクターは、エンドヌクレアーゼが発現されにくい異なる種由来の細胞にパッケージングすることができる。例えば、ウイルス粒子は、非哺乳類パッケージング細胞において活性ではない、周知のサイトメガロウイルス又はSV40ウイルスの初期プロモータ等の哺乳動物プロモータを用いて、微生物、昆虫、又は植物細胞中で産生され得る。好ましい実施形態において、ウイルス粒子は、Gaoらが記載したバキュロウイルス系を使用して昆虫細胞中で産生される(Gao,H.ら、(2007)J.Biotechnol.131(2):138〜43)。哺乳動物プロモータの制御下にあるエンドヌクレアーゼは、これらの細胞で発現する可能性は低い(Airenne,KJら、(2013)Mol.Ther.21(4):739〜49)。更に、昆虫細胞は、哺乳動物細胞とは異なるmRNAスプライシングモチーフを利用する。従って、ヒト成長ホルモン(HGH)イントロン又はSV40ラージT抗原イントロン等の哺乳動物イントロンを、エンドヌクレアーゼのコード配列に組み込むことが可能である。これらのイントロンは昆虫細胞のプレmRNA転写産物から効率的にスプライシングされないので、昆虫細胞は機能的エンドヌクレアーゼを発現せず、完全長ゲノムをパッケージングする。対照的に、得られた組換えAAV粒子が送達される哺乳動物細胞は、プレmRNAを適切にスプライシングし、機能的エンドヌクレアーゼタンパク質を発現する。Haifeng Chenは、昆虫パッケージング細胞中における毒性タンパク質バルナーゼ及びジフテリア毒素断片Aの発現を減弱させ、これらの毒素遺伝子を有する組換えAAVベクターの産生を可能にするためのHGH及びSV40ラージT抗原イントロンの使用を報告している(Chen,H(2012)Mol Ther Nucleic Acids.1(11):e57)。
【0287】
3.エンドヌクレアーゼ遺伝子は、エンドヌクレアーゼ発現のために小分子誘導物質が必要とされるように、誘導プロモータに動作可能に連結することができる。誘導性プロモータの例としては、Tet−Onシステム(Clontech;Chen H.ら、(2015)BMC Biotechnol.15(1):4))及びRheoSwitchシステム(Intrexon;Sowa G.ら、(2011)Spine、36(10):E623〜8)が挙げられる。両方のシステム並びに当技術分野で公知の類似のシステムは、小分子活性化因子(それぞれドキシサイクリン又はエクジソン)に応答して転写を活性化するリガンド誘導性転写因子(それぞれTetリプレッサー及びエクジソン受容体の変種)に依存する。このようなリガンド誘導性転写活性化因子を使用する本発明の実施は、1)転写因子に対する(1又は複数の)結合部位を有するエンドヌクレアーゼ遺伝子を、対応する転写因子に応答するプロモータの制御下に置くこと、並びに2)パッケージングされたウイルスゲノム中の転写因子をコードする遺伝子を含むこと、を含む。後者の工程は、転写活性化因子が同じ細胞に供給されない場合、組換えAAV送達後に標的の細胞又は組織においてエンドヌクレアーゼが発現されないので、必要である。次いで、転写活性因子は、同族小分子活性化因子で処理された細胞又は組織においてのみ、エンドヌクレアーゼ遺伝子発現を誘導する。このアプローチは、小分子誘導物質がいつ、及びどの組織に送達されるかを選択することによって、エンドヌクレアーゼ遺伝子発現を空間−時間的様式で調節することができるので、有利である。しかし、担持能力が著しく制限されたウイルスゲノムに誘導物質を含める必要性は、このアプローチに欠点を生じさせる。
【0288】
4.別の好ましい実施形態において、組換えAAV粒子は、エンドヌクレアーゼの発現を妨げる転写リプレッサーを発現する哺乳動物細胞株において産生される。転写リプレッサーは当技術分野において公知であり、Tet−リプレッサー、Lac−リプレッサー、Croリプレッサー、及びLambdaリプレッサーが挙げられる。エクジソン受容体等の多くの核内ホルモン受容体は、それらの同族ホルモンリガンドの不在下で転写リプレッサーとしても作用する。本発明を実施するために、パッケージング細胞は、転写リプレッサーをコードするベクターをトランスフェクト/形質導入され、ウイルスゲノム中のエンドヌクレアーゼ遺伝子(パッケージングベクター)は、リプレッサーがプロモータをサイレンシングするように、リプレッサーに対する結合部位を含むように改変されたプロモータに動作可能に連結される。転写リプレッサーをコードする遺伝子は、種々の位置に置くことができる。前記遺伝子は、別のベクターにコード化することができ、ITR配列の外側のパッケージングベクターに組み込むことができ、cap/repベクター又はアデノウイルスヘルパーベクターに組み込むことができ、又は最も好ましくは、それが構成的に発現されるようにパッケージング細胞のゲノムに安定に組み込むことができる。転写リプレッサー部位を取り込むために一般的な哺乳動物プロモータを改変する方法は、当技術分野で公知である。例えばChangおよびRoninsonは強力な構成的CMV及びRSVプロモータを、Lacリプレッサーのオペレーターを含むように改変し、改変プロモータからの遺伝子発現がリプレッサーを発現する細胞において大きく減弱したことを示した(Chang BD及びRoninson IB(1996)Gene 183:137〜42)。非ヒト転写リプレッサーの使用は、エンドヌクレアーゼ遺伝子の転写が、リプレッサーを発現するパッケージング細胞でのみ抑制され、得られる組換えAAVベクターを形質導入された標的の細胞又は組織では抑制されないことを確実にする。
【0289】
2.6 操作されたヌクレアーゼ変異体
本発明の実施形態は、本明細書に記載の操作されたヌクレアーゼ、特に組換えメガヌクレアーゼ、及びその変異体を包含する。本発明の更なる実施形態は、本明細書に記載の組換えメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む単離ポリヌクレオチド及びこのようなポリヌクレオチドの改変体を包含する。
【0290】
本明細書で使用される場合、「変異体」は、実質的に類似の配列を意味する意図のものである。「変異体」ポリペプチドは、天然タンパク質の1又は複数の内部部位における1又は複数個のアミノ酸の欠失若しくは付加、及び/又は天然ポリペプチドの1又は複数の部位における1又は複数個のアミノ酸の置換により、「天然の」ポリペプチドから導かれたポリペプチドを意味する意図のものである。本明細書で使用される場合、「天然の」ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、変異体が由来する親配列を含む。実施形態によって包含される変異体ポリペプチドは生物学的に活性である。即ち、それらは天然タンパク質の所望の生物学的活性;即ち、例えばTRC1−2認識配列(配列番号3)、TRC3−4認識(配列番号4)、及びTRC7−8認識配列(配列番号5)を含むヒトT細胞受容体アルファ定常領域(配列番号1)に見出される認識配列を認識及び切断する能力を保有し続けている。このような変異体は、例えばヒトの操作から生じ得る。実施形態の天然ポリペプチド(例えば、配列番号8〜32)の生物学的に活性な変異体、又は本明細書に記載の認識半部位結合サブユニット(例えば、配列番号33〜82)の生物学的に活性な変異体は、本明細書の他の箇所に記載されている配列アラインメントプログラム及びパラメータによる決定で、天然ポリペプチドまたは天然サブユニットと約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を有する。実施形態のポリペプチド又はサブユニットの生物学的に活性な変異体は、そのポリペプチド又はサブユニットと、わずか約1〜40個のアミノ酸残基、わずか約1〜20個、わずか約1〜10個、わずか約5個、わずか4、3、2個、又は更には1個のアミノ酸残基が異なり得る。
【0291】
実施形態のポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、切断、及び挿入を含む様々な方法で改変することができる。このような操作のための方法は、当技術分野において一般的に知られている。例えば、アミノ酸配列変異体は、DNA中の突然変異によって調製することができる。突然変異誘発及びポリヌクレオチド改変のための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488〜492;Kunkelら、(1987)Methods in Enzymol.154:367〜382;米国特許第4,873,192号明細書;Walker及びGaastra編、(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company、New York)及びそこに引用されている参考文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoffら、(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.、Washington,D.C.)のモデルに見出すことができ、当該文献は参照により本明細書に組み込まれる。1つのアミノ酸を同様の特性を有する別のアミノ酸と交換する等の保存的置換が最適であり得る。
【0292】
野生型I−CreIメガヌクレアーゼのDNA認識ドメインに対するアミノ酸改変の実質的な数が以前に同定されており(例えば、米国特許第8,021,867号明細書)、これを、単独で又は組み合わせることにより、得られた合理的に設計されたメガヌクレアーゼが、野生型酵素とは異なる半部位特異性を有するように、DNA認識配列半部位内の個別の塩基において特異性が改変された組換えメガヌクレアーゼがもたらされる。表4は、認識半部位の各半部位位置(−1から−9)に存在する塩基に基づいて特異性を高めるために組換えメガヌクレアーゼ単量体又はサブユニットにおいてなされ得る有望な置換を提供する。
【0293】
【表4】
【0294】
ポリヌクレオチドの場合、「変異体」は、天然のポリヌクレオチド内の1又は複数の部位に1又は複数のヌクレオチドの欠失及び/又は付加を含む。当業者は、実施形態の核酸の変異体が、オープンリーディングフレームが維持されるように構築されることを認識するであろう。ポリヌクレオチドの場合、保存的変異体には、遺伝コードの縮重のために、実施形態のポリペプチドの1つのアミノ酸配列をコードする配列が含まれる。変異体ポリヌクレオチドは、例えば部位特異的突然変異誘発を使用することによって生成されるが、実施形態の組換えメガヌクレアーゼを依然としてコードするような、合成的に誘導されたポリヌクレオチドを含む。一般に、実施形態の特定のポリヌクレオチドの変異体は、本明細書の他の箇所に記載されている配列アラインメントプログラム及びパラメータによる決定で、その特定のポリヌクレオチドと少なくとも約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はそれ以上の配列同一性を有すると思われる。実施形態の特定のポリヌクレオチド(即ち、参照ポリヌクレオチド)の変異体は、変異ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと参照ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドとの間の配列同一性のパーセントを比較することによって評価することもできる。
【0295】
本明細書に包含されるタンパク質配列の欠失、挿入、及び置換は、ポリペプチドの特徴において根本的な変化を生じることは期待されない。しかし、その実施に先立って、置換、欠失、又は挿入の正確な効果を予測することが困難である場合、当業者は、ヒトT細胞受容体アルファ定常領域遺伝子(配列番号1)内に見出される認識配列を選択的に認識及び切断するその能力についてポリペプチドをスクリーニングすることによって、その効果が評価されることを理解するであろう。
【実施例】
【0296】
本発明を以下の実施例によって更に説明するが、これらの実施例を、本発明を限定するものとして解釈すべきではない。当業者であれば、単なる日常的な実験を用いて、本明細書に記載の特定の物質及び手順に対する多数の等価物を認識し、又は確認することができるであろう。このような等価物は、以下の実施例に従った特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0297】
実施例1;TRC認識配列を認識及び切断するメガヌクレアーゼの特徴付け
【0298】
1.TRC1−2認識配列を認識および切断するメガヌクレアーゼ
本明細書で「TRC1−2メガヌクレアーゼ」と総称される組換えメガヌクレアーゼ(配列番号8〜27)は、ヒトT細胞受容体アルファ定常領域中に存在するTRC1−2認識配列(配列番号3)を認識及び切断するように操作されていた。各TRC1−2組換えメガヌクレアーゼは、SV40由来N末端ヌクレアーゼ局在化シグナル、第1のメガヌクレアーゼサブユニット、リンカー配列、及び第2のメガヌクレアーゼサブユニットを含む。各TRC1−2メガヌクレアーゼの第1のサブユニットは、配列番号3のTRC1認識半部位に結合し、第2のサブユニットはTRC2認識半部位に結合する(図1Aを参照されたい)。
【0299】
図2及び図3に示すように、TRC1結合サブユニット及びTRC2結合サブユニットは各々、それぞれHVR1及びHVR2と呼ばれる56塩基対の超可変領域を含む。TRC1結合サブユニットは、80位又は271位(Q又はE残基を含む)を除いてHVR1領域の外側で同一であり、HVR1領域内では高度に保存されている。同様に、TRC2結合サブユニットもまた、80位又は271位(Q又はE残基を含む)、並びにメガヌクレアーゼTRC1−2x.87EE、TRC1−2x.87QE、TRC1−2x.87EQ、TRC1−2x.87、及びTRC1−2x.163の139位(R残基を含む)(網掛けの灰色及び下線)を除いて、HVR2領域の外側で同一である。HVR1領域と同様に、HVR2領域も高度に保存されている。
【0300】
配列番号8〜27のTRC1結合領域を図2に示し、それぞれ配列番号33〜52として提供する。配列番号33〜52はそれぞれ、メガヌクレアーゼTRC1−2x.87EE(配列番号8)のTRC1結合領域である配列番号33と少なくとも90%の配列同一性を共有する。配列番号8〜27のTRC2結合領域を図3に示し、それぞれ配列番号58〜77として提供する。配列番号58〜77はそれぞれ、メガヌクレアーゼTRC1−2x.87EE(配列番号8)のTRC2結合領域である配列番号58と少なくとも90%の配列同一性を共有する。
【0301】
2.TRC3−4認識配列を認識及び切断するメガヌクレアーゼ
本明細書で「TRC3−4メガヌクレアーゼ」と総称される組換えメガヌクレアーゼ(配列番号28及び29)は、ヒトT細胞受容体アルファ定常領域中に存在するTRC3−4認識配列(配列番号4)を認識及び切断するように操作されていた。各TRC3−4組換えメガヌクレアーゼは、SV40由来N末端ヌクレアーゼ局在化シグナル、第1のメガヌクレアーゼサブユニット、リンカー配列、及び第2のメガヌクレアーゼサブユニットを含む。各TRC3−4メガヌクレアーゼの第1のサブユニットは、配列番号4のTRC3認識半部位に結合し、第2のサブユニットはTRC4認識半部位に結合する(図1Aを参照されたい)。
【0302】
図4及び図5に示すように、TRC3結合サブユニット及びTRC4結合サブユニットは各々、それぞれHVR1及びHVR2と呼ばれる56塩基対の超可変領域を含む。TRC3結合サブユニットは、80位又は271位(Q又はE残基を含む)を除いてHVR1領域の外側で同一であり、HVR1領域内では高度に保存されている。同様に、TRC4結合サブユニットもまた、80位又は271位(Q又はE残基を含む)を除いてHVR2領域の外側で同一であり、HVR2領域内では高度に保存されている。
【0303】
配列番号28及び29のTRC3結合領域を図4に示し、それぞれ配列番号53及び54として提供する。配列番号53及び54は、96.6%の配列同一性を共有する。配列番号28及び29のTRC4結合領域を図5に示し、それぞれ配列番号78及び79として示す。配列番号78及び79もまた、96.6%の配列同一性を共有する。
【0304】
3.TRC7−8認識配列を認識および切断するメガヌクレアーゼ
本明細書で「TRC7−8メガヌクレアーゼ」と総称される組換えメガヌクレアーゼ(配列番号30〜32)は、ヒトT細胞受容体アルファ定常領域中に存在するTRC7−8認識配列(配列番号5)を認識及び切断するように操作されていた。各TRC7−8組換えメガヌクレアーゼは、SV40由来N末端ヌクレアーゼ局在化シグナル、第1のメガヌクレアーゼサブユニット、リンカー配列、及び第2のメガヌクレアーゼサブユニットを含む。各TRC7−8メガヌクレアーゼの第1のサブユニットは、配列番号5のTRC7認識半部位に結合し、第2のサブユニットはTRC8認識半部位に結合する(図1Aを参照されたい)。
【0305】
図6及び図7に示すように、TRC7結合サブユニット及びTRC8結合サブユニットは各々、それぞれHVR1及びHVR2と呼ばれる56塩基対の超可変領域を含む。TRC7結合サブユニットは、80位又は271位(Q又はE残基を含む)を除いてHVR1領域の外側で同一であり、HVR1領域内では高度に保存されている。同様に、TRC8結合サブユニットもまた、80位又は271位(Q又はE残基を含む)を除いてHVR2領域の外側で同一であり、HVR2領域内では高度に保存されている。
【0306】
配列番号30〜32のTRC7結合領域を図6に示し、それぞれ配列番号55〜57として提供する。配列番号55〜57はそれぞれ、メガヌクレアーゼTRC7−8x.7(配列番号30)のTRC7結合領域である配列番号55と少なくとも90%の配列同一性を共有する。配列番号30〜32のTRC8結合領域を図7に示し、それぞれ配列番号80〜82として提供する。配列番号80−82はそれぞれ、メガヌクレアーゼTRC7−8x.7(配列番号30)のTRC8結合領域である配列番号80と少なくとも90%の配列同一性を共有する。
【0307】
4.CHO細胞レポーターアッセイにおけるヒトT細胞受容体アルファ定常領域認識配列の切断
TRC1−2、TRC3−4、及びTRC7−8メガヌクレアーゼがそれぞれの認識配列(それぞれ配列番号3、4、及び5)を認識及び切断することができるかどうかを決定するために、各組換えメガヌクレアーゼを、先に記載のCHO細胞レポーターアッセイ(国際公開第/2012/167192号パンフレット及び図8を参照されたい)を使用して評価した。アッセイを実施するために、細胞のゲノムに組み込まれた非機能性緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子発現カセットを保有するCHO細胞レポーター株を作製した。各細胞株のGFP遺伝子は、メガヌクレアーゼによるいずれかの認識配列の細胞内切断が機能性GFP遺伝子をもたらす相同組換え事象を刺激するように、一対の認識配列によって分断された。
【0308】
この研究のために開発されたCHOレポーター細胞株において、GFP遺伝子に挿入された1つの認識配列は、TRC1−2認識配列(配列番号3)、TRC3−4認識配列(配列番号4)、又はTRC7−8認識配列(配列番号5)であった。GFP遺伝子に挿入された第2の認識配列は、「CHO−23/24」と呼ばれる対照メガヌクレアーゼによって認識及び切断されるCHO−23/24認識配列であった。TRC1−2認識配列及びCHO−23/24認識配列を含むCHOレポーター細胞は、本明細書では「TRC1−2細胞」と呼ばれる。TRC3−4認識配列及びCHO−23/24認識配列を含むCHOレポーター細胞は、本明細書では「TRC3−4細胞」と呼ばれる。TRC7−8認識配列及びCHO−23/24認識配列を含むCHOレポーター細胞は、本明細書では「TRC7−8細胞」と呼ばれる。
【0309】
CHOレポーター細胞を、それらの対応する組換えメガヌクレアーゼをコードするプラスミドDNAをトランスフェクトし(例えば、TRC1−2細胞にはTRC1−2メガヌクレアーゼをコードするプラスミドDNAをトランスフェクトした)、又はCHO−23/34メガヌクレアーゼをコードするプラスミドDNAをトランスフェクトした。各アッセイにおいて、製造者の指示に従ってLipofectamine2000(ThermoFisher)を使用して、96ウェルプレートにおいて、4eのCHOレポーター細胞に50ngのプラスミドDNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞をフローサイトメトリにより評価して、トランスフェクトされていない陰性対照(TRC1−2bs)と比較したGFP陽性細胞のパーセンテージを決定した。図9に示すように、TRC1−2、TRC3−4、及びTRC7−8メガヌクレアーゼは全て、対応する認識配列を含む細胞株において、陰性対照を有意に超える頻度でGFP陽性細胞を産生することが見出された。
【0310】
TRC1−2x.87QE、TRC1−2x.87EQ、及びTRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼの効力も、時間依存的様式で決定した。この研究では、TRC1−2細胞(1e)に1細胞あたり1eのメガヌクレアーゼmRNAコピーを、製造元の指示に従ってBioRad Gene Pulser Xcellを使用して電気穿孔した。トランスフェクションの1、4、6、8、及び12日後、細胞をフローサイトメトリによって評価して、GFP陽性細胞のパーセンテージを決定した。図10に示すように、各TRC1−2メガヌクレアーゼはトランスフェクションの2日後に高効率を示し、50%を超えるGFP陽性細胞が観察された。この効果は12日間にわたって持続し、細胞毒性の証拠は観察されなかった。
【0311】
5.結論
これらの研究は、本発明に包含されるTRC1−2メガヌクレアーゼ、TRC3−4メガヌクレアーゼ、及びTRC7−8メガヌクレアーゼが、それらのそれぞれの認識配列を細胞内で効率的に標的とし、切断できることを実証した。
【0312】
実施例2;T細胞におけるTRC認識配列の切断及び細胞表面T細胞受容体発現の抑制
【0313】
1.Jurkat細胞におけるTRC1−2認識配列の切断
この研究は、本発明に包含されるTRC1−2メガヌクレアーゼが、Jurkat細胞(不死化ヒトTリンパ球細胞株)においてTRC1−2認識配列を切断できることを実証した。1eのJurkat細胞に1細胞あたり8eの所与のTRC1−2メガヌクレアーゼmRNAコピーを、BioRad Gene Pulser Xcellを製造元の指示に従って使用して電気穿孔した。トランスフェクションの72時間後に、ゲノムDNA(gDNA)を細胞から採取し、T7エンドヌクレアーゼI(T7E)アッセイを実施して内因性TRC1−2認識配列(図11)における遺伝子改変を推定した。T7Eアッセイでは、TRC1−2認識部位に隣接するプライマーを使用してTRC1−2遺伝子座をPCRにより増幅する。TRC1−2遺伝子座内にインデル(ランダムな挿入又は欠失)がある場合、得られたPCR産物は、野生型対立遺伝子及び突然変異対立遺伝子の混合物からなると思われる。PCR産物を変性させ、ゆっくりと再アニーリングする。ゆっくりとした再アニーリングは、野生型及び突然変異対立遺伝子からなるヘテロ二重鎖の形成を可能にし、ミスマッチ塩基及び/又はバルジを生じる。T7E1酵素は、ミスマッチ部位で切断し、ゲル電気泳動によって可視化され得る切断産物を生じる。図11は、TRC1−2メガヌクレアーゼの13の異なるバージョンがT7E1アッセイにおいて陽性結果を生じ、内因性TRC1−2認識配列におけるインデルの効果的な生成を示していることを明確に実証した。
【0314】
TRC1−2メガヌクレアーゼの切断特性を更に調べるために、用量反応実験をJurkat細胞で行った。1eのJurkat細胞に1細胞あたり3μg又は1μgの所与のTRC1−2メガヌクレアーゼmRNAコピーを、BioRad Gene Pulser Xcellを製造元の指示に従って使用して電気穿孔した。トランスフェクションの96時間後、gDNAを回収し、T7E1アッセイを上記のように行った。図12に見られるように、TRC1−2x.87メガヌクレアーゼの3つの異なるバージョンを含む15種類の異なるTRC1−2メガヌクレアーゼは、内因性TRC1−2認識部位での切断を示した。TRC1−2x.87EEは特にうまく機能し、T7E1アッセイにおいて強いシグナルを生成し、Jurkat細胞で毒性がほとんど又は全くなかった。
【0315】
2.ヒトT細胞におけるTRC1−2認識配列の切断
この研究は、本発明に包含されるTRC1−2メガヌクレアーゼが、ドナーから得られたヒトT細胞においてTRC1−2認識配列を切断できることを実証した。CD3T細胞を抗CD3抗体及び抗CD28抗体で3日間刺激し、次いでAmaxa4D−Nucleofector(Lonza)を製造元の指示に従って使用して、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼをコードするmRNAを電気穿孔した。トランスフェクションの3日後及び7日後、gDNAを回収し、T7E1アッセイを上記のように行った。図13Aは、TRC1−2x.87EEがヒトT細胞において内因性TRC1−2認識配列に突然変異を効果的に導入し、メガヌクレアーゼがTRC1−2認識配列を認識及び切断したことを示すことを実証している。切断産物の強度は、トランスフェクションの3日目後と7日目後との間で変化がないと思われ、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼによる毒性はほとんど又は全くないことを示唆している。内因性TRC1−2認識配列における突然変異がT細胞受容体の表面発現を排除するのに十分であるかどうかを決定するために、抗CD3抗体を使用したフローサイトメトリによって細胞を分析した。図13Bは、トランスフェクトされたT細胞の約50%がCD3に対して陰性に染色されことを示し、T細胞受容体のノックアウトを示している。CD3陰性集団は、トランスフェクション後3日目と7日目との間で有意に変化せず、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼに関連する毒性はほとんど若しくはまったくないか、又はT細胞受容体発現の喪失を更に示した。
【0316】
CD3発現の消失がTRC1−2認識部位の突然変異によるものであることを検証するために、トランスフェクトされたT細胞からgDNAを回収し、TRC1−2認識部位遺伝子座をPCRにより増幅した。PCR産物を、Zero Blunt PCRクローニングキット(Thermo Fisher)を製造者の指示に従って使用して、pCR−平滑末端ベクターにクローニングした。個々のコロニーを拾い、ミニプレッププラスミドを配列決定した。図14は、TRC1−2認識配列で観察された、いくつかの代表的な欠失の配列を示す。観察された配列は、エンドヌクレアーゼによって生成されたDNA二本鎖切断の非相同末端結合修復から生じる欠失の典型的なものである。
【0317】
TRC1−2x.87EEに加えて、TRC1−2x.55、及びTRC1−2x.72を含む他のTRC1−2メガヌクレアーゼは、ヒトT細胞においてT細胞受容体をノックアウトすることができたが、TRC1−2x.87EEについて以前に観察されたノックアウトよりも程度は低かった(表5及び6)。TRC1−2x.72Q47Eは、メガヌクレアーゼの活性部位(アミノ酸47)に突然変異を有し、陰性対照として機能する。
【0318】
【表5】
【0319】
【表6】
【0320】
3.結論
これらの研究は、本発明に包含されるTRC1−2メガヌクレアーゼが、Jurkat細胞(不死化Tリンパ球細胞株)及びヒトドナーから得られたT細胞の両方において、TRC1−2認識配列を認識及び切断することができることを実証した。更に、これらの研究は、インデルの出現によって証明されるように、NHEJがメガヌクレアーゼ切断部位に生じることを実証した。更に、TRC1−2メガヌクレアーゼは、ドナーから得られたヒトT細胞上のT細胞受容体の細胞表面発現を低下させることが示された。
【0321】
実施例3;外因性核酸をヒトT細胞に導入するための組換えAAVベクター
【0322】
1.組換えAAVベクター
本研究において、2つの組換えAAVベクター(AAV405及びAAV406と呼ばれる)を、EagI制限部位を含む外因性核酸配列を相同組換えによりTRC1−2認識配列においてヒトT細胞のゲノムに導入するように設計した。各組換えAAVベクターは、細胞株に、複製を支持するのに必要な「ヘルパー」成分(例えばアデノウイルス)をコードする第1のプラスミド、cap及びrep遺伝子を含む第2のプラスミド、並びにウイルスにパッケージングされる介在DNA配列(例えば外因性核酸配列)を含むウイルス性逆位末端反復配列(ITR)を含む第3のプラスミドをトランスフェクトする三重トランスフェクションプロトコルを使用して調製される(Cots D、Bosch A、Chillon M(2013年)Curr.Gene Ther.13(5):370〜81頁を参照されたい)。図15は、外因性核酸配列をヌクレアーゼ切断部位で細胞ゲノムに導入するために組換えAAVベクターを使用するための一般的なアプローチを示す。
【0323】
図16に示すプラスミドを使用して、AAV405(配列番号107)を調製した。示されるように、AAV405プラスミドは、一般に、5’ITR、CMVエンハンサー及びプロモータ配列、5’相同アーム、EagI制限部位を含む核酸配列、SV40ポリ(A)シグナル配列、3’相同アーム、及び3’ITRを含む。図17に示すプラスミドを使用して、AAV406(配列番号108)を調製した。示されるように、AAV406プラスミドは、AAV405と同様の配列を含むが、5’相同アームの上流のCMVエンハンサー及びプロモータ配列を欠く。本AAV研究は、AAV形質導入効率の陽性対照として組み込まれた、GFPをコードするAAVベクター(GFP−AAV)の使用をさらに含んでいた。
【0324】
2.TRC1−2認識配列への外因性核酸配列の導入
TRC1−2メガヌクレアーゼによる二本鎖切断の発生後にAAV鋳型が相同組換え修復(homology directed repair)(HDR)に適しているかどうかを試験するために、ヒトT細胞を使用して一連の実験を行った。第1の実験では、TRC1−2RNAの電気穿孔のタイミング及び組換えAAVベクターの形質導入を決定した。ヒトCD3T細胞を、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で3日間刺激し、次いで、Amaxa 4D−Nucleofector(Lonza)を製造者の指示に従って使用して、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼをコードするmRNA(1μg)を電気穿孔した。トランスフェクションの2、4、又は8時間後に、細胞にGFP−AAV(1eのウイルスゲノム/細胞)を形質導入した。細胞を、形質導入の72時間後にGFP発現についてフローサイトメトリによって分析した。図18に示すように、トランスフェクションの2時間後に細胞を形質導入した場合、最も高い形質導入効率が観察された(GFP陽性細胞88%)。形質導入効率は、トランスフェクションと形質導入との間の時間が増加するにつれて有意に減少し、4時間でGFP陽性細胞78%及び8時間でGFP陽性細胞65%であった。
【0325】
トランスフェクションの2時間後に細胞を形質導入した場合、効率的なウイルス形質導入が起こったと判断したので、AAV405及びAAV406ベクターをヒトT細胞においてHDR鋳型として使用した。CD3T細胞を刺激し、上記のように1μgのTRC1−2x.87EEmRNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの2時間後に、細胞にAAV405又はAAV406(1eのウイルスゲノム/細胞)のいずれかを形質導入した。形質導入のみの対照として、細胞に(水を)擬似トランスフェクションし、AAV405又はAAV406(1eのウイルスゲノム/細胞)のいずれかを形質導入した。メガヌクレアーゼのみの対照のために、細胞にTRC1−2x.87EEをトランスフェクションし、次いでトランスフェクションの2時間後に(水を)擬似形質導入した。
【0326】
AAVベクターがHDR鋳型として機能するかどうかを決定するために、gDNAを細胞から回収し、AAVベクター中の相同領域を超える配列を認識するプライマーを使用して、PCRによりTRC1−2遺伝子座を増幅させた。相同領域の外側のPCRプライマーは、AAVベクターからではなく、T細胞ゲノムの増幅のみを可能にした。PCR産物を精製し、EagIで消化した。図19は、TRC1−2x.87EEをトランスフェクトされ、いずれかのAAVベクターを形質導入された細胞から増幅されたPCR産物の切断を示し(矢印を参照されたい)、TRC1−2認識配列へのEagI部位の挿入を示している。全ての対照細胞集団由来のPCR産物はEagIによって切断されず、EagI部位の挿入がTRC1−2メガヌクレアーゼによるDNA二本鎖切断の生成を必要とすることを実証している。
【0327】
ヒトT細胞へのEagI部位の挿入を更に明確にするために、バルクPCR産物からの個々の産物を調べた。上記実験から生成された未消化PCR産物を、Zero Blunt PCRクローニングキット(Thermo Fisher)を製造者の指示に従って使用してpCR−平滑ベクターにクローニングした。コロニーPCRを、M13フォワード及びリバースプライマーを使用して実施し(pCR平滑末端はインサートに隣接するM13フォワード及びリバースプライミング部位を含む)、TRC1−2x.87EE及びAAV405又はAAV406をトランスフェクトされた細胞由来のPCR産物の一部をゲル電気泳動により分析した(それぞれ図20A及び21A)。どちらの場合も、完全長PCR産物(約1600bp)、より小さいインサート、及びいくつかの空のプラスミド(約300bp)が混在している。このアッセイでは、完全長よりも小さいが空のプラスミドよりも大きいバンドは、しばしば、TRC1−2認識配列内に大きな欠失を含む配列である。平行して、PCR産物の別の部分をEagIで消化して、TRC1−2認識配列に挿入されたEagI認識部位を含むクローンのパーセントを決定した。図20B及び21Bは、いくつかのPCR産物がEagIで切断され(例えば、図20B、第2列、左から6レーン)、約700及び800bpの予想される断片を生成することを示す。これらのゲルから、EagI挿入が、AAV405及びAAV406についてそれぞれ約25%及び6%(空のベクターに対して調整)であると推定することができる。
【0328】
未切断及びEagIにより消化されたPCR産物のゲル電気泳動からの観察を確認するために、各PCR産物の残りの部分を配列決定した。図22Aは、TRC1−2認識配列で観察されたいくつかの代表的な欠失及び挿入の配列を示す。これらの配列は、エンドヌクレアーゼによって生成されたDNA二本鎖切断の非相同末端結合修復から生じる配列に典型的なものである。EagIで切断されたPCR産物は全て、TRC1−2認識配列に挿入されたEagI部位を含んでいた(図22B)。
【0329】
3.AAV形質導入効率の向上
AAV形質導入をトランスフェクションの2時間後に実施した場合が、それより後に実施した場合よりも効率的であるという観察の観点から、トランスフェクションおよび形質導入のタイミングを最適化するための実験を行った。ヒトCD3T細胞を、抗CD3抗体及び抗CD28抗体で3日間刺激し、次いでAmaxa 4D−Nucleofector(Lonza)を製造者の指示に従って使用して、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼ(1μg)を電気穿孔した。トランスフェクションの直後又はトランスフェクションの2時間後に、細胞にGFP−AAV(1eのウイルスゲノム/細胞)を形質導入した。更に、未刺激細胞に、GFP−AAV(1eのウイルスゲノム/細胞)を形質導入した。形質導入の72時間後に、細胞をGFP発現についてフローサイトメトリによって分析した。図23は、トランスフェクションの2時間後に行ったGFP−AAV形質導入が90%のGFP陽性細胞をもたらしたが、トランスフェクション直後の形質導入は98%のGFP陽性細胞を生じたことを示す。休止T細胞はAAV形質導入を受け入れないと思われ、GFP陽性細胞は約0%であった。非形質導入細胞はまた、約0%のGFP陽性細胞を示した。
【0330】
4.概要
これらの研究は、AAVベクターを組換えメガヌクレアーゼと併せて使用して、相同組換えを介して、外因性核酸配列をTCRアルファ定常領域の切断部位に組み込むことができることを実証する。
【0331】
実施例4;ヒトT細胞においてキメラ抗原受容体をコードする外因性核酸を導入するための組換えAAVベクター
【0332】
1.組換えAAVベクター
本研究において、2つの組換えAAVベクター(AAV−CAR100及びAAV−CAR763と呼ばれる)を、キメラ抗原受容体をコードする外因性核酸配列を相同組換えによりTRC1−2認識配列においてヒトT細胞のゲノムに導入するように設計した。各組換えAAVベクターは、先に記載した三重トランスフェクションプロトコルを使用して調製した。
【0333】
AAV−CAR100(本明細書ではAAV408とも呼ぶ)は、図24に示すプラスミド(配列番号109)を使用して調製した。示されるように、AAV−CAR100(AAV408)は、自己相補的なAAVベクターを作製するために設計され、一般に、5’ITR、5’相同アーム、抗CD19キメラ抗原受容体をコードする核酸配列、SV40ポリ(A)シグナル配列、3’相同アーム、及び3’ITRを含む。図25(配列番号110)に示すプラスミドを使用してAAV−CAR763(本明細書ではAAV412とも呼ぶ)を調製した。示されるように、AAV−CAR763(AAV412)プラスミドは、一般に、AAV−CAR100(AAV408)と同じ配列を含むが、一本鎖AAVベクターを作製するために設計される。一本鎖AAVベクターはより大きなペイロードを収容することができるので、5’相同アーム及び3’相同アームは、AAV−CAR763(AAV412)においてAAV−CAR100(AAV408)よりも長い。本AAV研究は、AAV形質導入効率の陽性対照として組み込まれた、GFPをコードするAAVベクター(GFP−AAV)の使用を更に含む。
【0334】
2.TRC1−2認識配列へのキメラ抗原受容体配列の導入
キメラ抗原受容体配列をTCRアルファ定常領域遺伝子に挿入し、同時に内因性TCR受容体の細胞表面発現をノックアウトするための組換えAAVベクターの使用効率を決定するための研究を行う。
【0335】
形質導入効率を確認するために、ヒトCD3T細胞を得て、抗CD3及び抗CD28抗体で3日間刺激し、次いで、Amaxa 4D−Nucleofector(Lonza)を製造者の指示に従って使用して、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼをコードするmRNA(1μg)を電気穿孔した。細胞に、上記のようにトランスフェクションの直後にGFP−AAV(1eのウイルスゲノム/細胞)を形質導入する。細胞を、形質導入の72時間後に、GFP発現についてフローサイトメトリによって分析し、形質導入効率を決定する。
【0336】
AAV−CAR100(AAV408)及びAAV−CAR763(AAV412)ベクターは、抗CD19キメラ抗原受容体配列の挿入のためにヒトT細胞においてHDR鋳型として使用される。ヒトCD3T細胞を刺激し、上記のように1μgのTRC1−2x.87EEmRNAをトランスフェクトする。次いで、トランスフェクションの直後又はトランスフェクションの0〜8時間以内のいずれかに、細胞にAAV−CAR100(AAV408)又はAAV−CAR763(AAV412)(1eのウイルスゲノム/細胞)を形質導入する。形質導入のみの対照として、細胞に(水を)擬似トランスフェクションし、AAV−CAR100(AAV408)又はAAV−CAR763(AAV412)(1eのウイルスゲノム/細胞)のいずれかを形質導入した。メガヌクレアーゼのみの対照のために、細胞にTRC1−2x.87EEをコードするmRNAをトランスフェクションし、次いでトランスフェクションの直後に(水を)擬似形質導入する。
【0337】
キメラ抗原受容体配列の挿入は、TCRアルファ定常領域遺伝子中の切断部位の配列決定によって確認する。キメラ抗原受容体の細胞表面発現は、抗Fab又は抗CD19抗体を使用して、フローサイトメトリによって確認する。内因性T細胞受容体の細胞表面でのノックアウトは、前述のフローサイトメトリによって決定される。
【0338】
実施例5;キメラ抗原受容体の挿入及び発現
【0339】
1.キメラ抗原受容体配列のTRC1−2認識配列への挿入
本研究では、AAVが、キメラ抗原受容体配列をTCRアルファ定常領域遺伝子に挿入し、同時に内因性TCR受容体の細胞表面発現をノックアウトするために使用できるHDR鋳型を提供できるかどうかを試験する。第1の実験では、上記のようにヒトCD3T細胞(1e細胞)を刺激し、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼをコードするmRNA(2μg)を電気穿孔し、次いでAAV412(1eウイルスゲノム/細胞)を直ちに形質導入した。対照として、細胞に擬似電気穿孔し、次いでAAV412を形質導入するか、又はTRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔し、次いで擬似形質導入した。擬似電気穿孔し、擬似形質導入した細胞の更なる対照も含んでいた。
【0340】
AAV HDR鋳型がTRC1−2認識配列における二本鎖切断の修復に利用されたかどうかを決定するための、PCRに基づくアッセイを開発した。3組のプライマー対をPCR分析に使用した。第1のセットは、AAV412の相同アームを有する領域を増幅するように設計された。この第1プライマーセット(表7において「内部ホモログアーム/CAR領域」と称される)は相同領域内にあるので、ゲノムの非改変TRC1−2認識配列座(349bp)、AAV412ベクターインプット(2603bp)、又はCAR遺伝子が挿入されたTRC1−2認識配列(2603bp)のいずれかを増幅する。第2のプライマーセット(表7において「外側5’相同アーム」と称される)は、AAV412 HDR鋳型のCAR領域内にアニーリングする1つのプライマー、AAV412 HDR鋳型の5’相同アームの外側のヒトゲノムにアニーリングする1つのプライマーを含み、CAR遺伝子がTRC1−2認識配列内にうまく挿入された場合にのみ、1872bpの断片を増幅する。第3のプライマーセット(表7において「外側3’相同アーム」と称される)は、AAV412 HDR鋳型のCAR領域内にアニーリングする1つのプライマー、及びAAV412 HDR鋳型の3’相同アームの外側のヒトゲノムにアニーリングする1つのプライマーを含む。第2のプライマーセットと同様に、第3のプライマーセットは、CAR遺伝子がTRC1−2認識配列にうまく挿入された場合にのみ1107bpの断片を増幅する。まとめると、3つ全てのプライマーセットによるPCR産物は、CAR配列が細胞内に存在するかどうか(プライマーセット1)、及びそれがTRC1−2認識配列に挿入されているかどうか(プライマーセット2及び3)を示す。
【0341】
形質導入後4日目に、上記のPCRプライマー対を使用して細胞を分析した。簡潔には、約3000個の細胞を回収し、ペレット化し、溶解し、PCRを行って、CAR遺伝子がTRC1−2認識配列に挿入されたかどうかを決定した。PCR産物を、図26に示すアガロースゲルにおいて分離した(レーンの説明は表7に示す)。レーン1〜3は、TRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔し、擬似形質導入したサンプル由来のPCR産物である。
【0342】
予想通り、最初のプライマー対(「内部ホモログアーム/CAR領域」)は、非改変TRC1−2認識配列座を増幅し、レーン1に示される349bpのバンドを生成した。レーン2及び3は、CAR遺伝子がTRC1−2認識配列に挿入されている場合にのみ産物を生成するプライマー対に対応し、産物は示されていない。レーン7〜9は、擬似電気穿孔、及び擬似形質導入されたサンプルを表し、上述のTRC1〜2x.87EEmRNAのみの対照と同じバンドを示す。レーン4〜6は、TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、AAV412を形質導入されたサンプル由来のPCR産物を示す。レーン4は、第1のプライマー対(「内部ホモログ/CAR領域」)により生成された2つのバンドを示し、ゲノムの非改変TRC1−2認識配列座(349bp)及びAAV412ベクターインプット(2603bp)、又はCAR遺伝子が挿入されたTRC1−2認識配列(2603bp)の増幅を示す。レーン5及び6は、CAR核酸配列がTRC1−2x.87EE認識部位に挿入されている場合にのみ、産物を増幅するプライマー対によって生成される産物を示す。両方のバンドは予測されるサイズ(それぞれ1872及び1107bp)である。レーン10〜12は、擬似電気穿孔し、AAV412を形質導入したサンプルを表す。レーン10は、第1プライマー対(「内部ホモログ/CAR領域」)によって生成された2つのバンドを示し、ゲノムの非改変TRC1−2認識配列座(349bp)及びAAV412ベクターインプット(2603bp)の増幅を示す。レーン11及び12は、CAR遺伝子がTRC1−2認識配列に挿入されている場合にのみ産物を生成するプライマー対に対応し、産物は示されていない。レーン11及び12(相同アームの外側のプライマーを含む)にバンドが存在しないことは、レーン10の2603bpバンドがAAV412インプットの増幅から生成されたことを示す。
【0343】
まとめると、PCR分析は、TRC1−2x.87EEmRNA及びAAV412の両方が細胞中に存在する場合、CAR遺伝子がTRC1−2x.87EE認識部位に導入されることを明らかに実証している。従って、本発明者らは、AAV412がTRC1−2x.87EE認識配列にCAR遺伝子を挿入するのに使用できる適切なHDR鋳型を産生するのに役立つと結論する。
【0344】
第2の実験では、上記のようにヒトCD3T細胞を刺激し、TRC1−2x.87EEメガヌクレアーゼをコードするmRNAを電気穿孔した後、直ちに漸増量のAAV408(0μL、3.125μL、6.25μL、12.5μL、又は約25μL、これは約0、3.125e、6.250e、1.25e、及び2.5eウイルスゲノム/細胞に対応する)を形質導入した。対照として、細胞に擬似電気穿孔し、次に漸増量のAAV408を形質導入した。更なる対照には、擬似電気穿孔し、擬似形質導入した細胞、並びにTRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、次に擬似形質導入した細胞が含まれた。形質導入後4日目に、細胞を回収し、上記のように分析したが、CAR遺伝子がTRC1−2認識配列に挿入されている場合にのみ産物を増幅するプライマー対のみを使用した。図27に示すように、PCR産物をアガロースゲルにおいて分離した。図27Aは、CAR遺伝子がTRC1−2認識配列座に挿入されている場合にのみ、その遺伝子座の5’末端に産物を増幅する上記のプライマー対(「外側5’相同アーム」)を使用して生成されたPCR産物を示す。図27Bは、CAR遺伝子がTRC1−2認識配列座に挿入されている場合にのみ、その遺伝子座の3’末端に産物を増幅する上記のプライマー対(「外側3’相同アーム」)を使用して生成されたPCR産物を示す。レーンの説明は表8に示す。図27A及び27Bの両方のレーン1〜5は、擬似電気穿孔又は擬似電気穿孔し、次いで擬似形質導入したサンプルを表す。擬似電気穿孔した細胞においてPCR産物を見ることはできず、AAV408によって生成されたHDR鋳型が、TRC1−2x.87EEmRNAの不在下でTRC1−2認識配列にCAR遺伝子を挿入できないことを示している。レーン6は、TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、擬似形質導入したサンプルを表す。PCR産物を見ることはできず、TRC1−2認識配列にCAR遺伝子が挿入されていないことを示している。レーン7〜10は、TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、漸増量のAAV408を形質導入したサンプルを表す。各PCRの適切なサイズのバンドが明らかであり、これは、AAV408がTRC1−2認識配列の修復のためのHDRドナーを産生でき、CAR遺伝子の挿入をもたらし得ることを示している。
【0345】
【表7】
【0346】
【表8】
【0347】
上記のPCRベースのアッセイは、CAR遺伝子がTRC1−2認識配列に挿入されたかどうかを決定するのに有用であるが、効率に関する情報を与えない。CAR挿入の効率を決定するために、本発明者らは、デジタルPCRベースのアッセイを開発した(図28Aに概略を示す)。このアッセイでは、2つのプライマーセットを使用する。第1のセットは、無関係の遺伝子配列を増幅し、鋳型数を制御する参照配列を供給する。第2のセットは、CAR遺伝子がTRC1−2認識配列に挿入されている場合にのみ産物が増幅されるように、CAR遺伝子内にアニーリングする1つのプライマーと3’相同アームの外側にアニーリングする1つのプライマーからなる。VIC標識プローブは、第1のプライマーセットから生成されたアンプリコン内にアニーリングし、FAM標識プローブは、第2のプライマーセットによって生成されたアンプリコン内にアニーリングする。FAM標識プローブによって検出されたアンプリコンの数を、VIC標識プローブによって検出された参照配列アンプリコンの数で割ることにより、CAR遺伝子の挿入によって改変されたTRC1−2認識配列座のパーセントを正確に定量することが可能となる。
【0348】
図28Bは、擬似電気穿孔し、次いで形質導入したサンプル、TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、次いで擬似形質導入したサンプル、又はTRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、次いで漸増量のAAV408を形質導入したサンプルのいずれかについてのデジタルPCRの結果を示す。デジタルPCRは、形質導入の約1週間後に細胞から単離したゲノムDNAを用いて行った。図27に記載されたPCRからの観察と一致して、両方の対照サンプル(形質導入のみ、又は電気穿孔のみ)は、TRC1−2x.87EE認識配列に挿入されたCAR遺伝子が0%であったことが判明した。TRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔し、次いで漸増量のAAV408を形質導入したサンプルは、約1.5%〜7%を有することが判明した。アッセイは2つの異なる機器(商標QX200及びQS3D)で実施され、このデジタルPCRベースのアッセイの感度及び精度を実証する顕著な一致を示した。
【0349】
2.T細胞上の抗CD19キメラ抗原受容体の発現
CARの挿入が分子レベルで起こったかどうかを決定することに加えて、AAV408をHDR鋳型として使用してTRC1−2認識配列にCAR遺伝子を挿入した細胞における抗CD19キメラ抗原受容体の発現レベルを決定しようと努めた。更に、CARのTRC1−2x.87EE認識配列への挿入がT細胞受容体のノックアウトをもたらす効率を調べた。上記並びに図27及び28で分析したサンプルも、フローサイトメトリによってCAR及びCD3の発現について分析した。形質導入の約4日後、細胞を抗CD19CAR(抗Fab−Alexa647)又はCD3(CD3−BB515)を認識する抗体で標識し、フローサイトメトリによって分析した。図29Aは、Y軸に抗CAR標識を示し、X軸に抗CD3標識を示すフローサイトメトリプロットを示す。擬似電気穿孔及び擬似形質導入した細胞(MOI−0)は、圧倒的にCD3/CARであった(右下の象限、98.7%)。擬似電気穿孔し、次に漸増量のAAV408を形質導入した細胞は、対照細胞と本質的に同一と思われ、CD3/CAR集団は98.8%、99、99%、及び99.1%であった。従って、本発明者らは、AAV408ウイルス単独では検出可能なレベルのCAR発現を駆動しておらず、T細胞受容体の発現を破壊することもできないと結論する。
【0350】
図29Bは、TRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔した後、擬似形質導入したサンプル、又はTRC1−2x.87EEを電気穿孔した後、漸増量のAAV408を形質導入した細胞のフローサイトメトリプロットを示す。電気穿孔し、次いで擬似形質導入した細胞は、47.1%のCD3細胞を示し、T細胞受容体複合体の効率的なノックアウトを示す。抗CD19CARで標識したバックグラウンドは非常に低く、CD3集団で0.6%、CD3集団で0.78%であった。TRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔し、次いで漸増量のAAV408を形質導入したサンプルは、CD3集団において2.09%〜5.9%の範囲のCAR標識を示した。また、CD3集団におけるCAR標識のわずかな増加もあり、1.08%から1.91%に及ぶ。本発明者らは、CD3集団におけるCAR細胞の増加の原因を特定しなかったが、CARが非発現T細胞受容体対立遺伝子に挿入された可能性がある(T細胞受容体アルファ鎖の1つの対立遺伝子のみが発現され、T細胞受容体複合体へ組み込まれている)。
【0351】
これらのデータは、上記の定量的デジタルPCRベースのアッセイとよく相関していた。例えば、AAV408の最高MOI(2.5eウイルスゲノム/細胞)において、デジタルPCRアッセイは約6%のCAR挿入を示し、フローサイトメトリアッセイは5.9%のCAR/CD3細胞を示した。CAR/CD3集団を考慮に入れると、このデータは、フローサイトメトリアッセイが示す約7.8%CARはデジタルPCRによる6%と比較していまだ全く同等である。
【0352】
実施例6;更なるAAVベクターの特徴付け
【0353】
1.キメラ抗原受容体配列のTRC1−2認識配列への挿入
AAVベクターがCAR遺伝子をTRC1−2x.87EE認識配列に挿入するのに適したHDR鋳型を提供できることを示したので、本発明者らはAAVベクターの構成を最適化しようと努めた。本発明者らは、TRC1−2認識配列座及びAAV ITRに対する短い相同領域に隣接する、JeTプロモータによって駆動されるCAR遺伝子発現カセットを含む自己相補的AAVゲノムを作製するために使用できるベクターを作製した。このベクターはAAV421(図30;配列番号123)と呼ばれる。自己相補的AAVのパッケージング能力が限られているため、短い相同アームが必要であった。更に、長い相同アーム及びAAV ITRに隣接する、CMVプロモータによって駆動されるCAR遺伝子発現カセットを含む一本鎖AAVゲノムを作製するために使用できるベクターを作製した。このベクターはAAV422(図31;配列番号124)と呼ばれる。一本鎖AAVゲノムはより大きなカーゴ容量を有するので、自己相補的ベクターよりも長い相同アームを利用することができた。
【0354】
AAV421及びAAV422がCAR遺伝子のTRC1−2認識配列への挿入を標的とするのに有用であるかどうかを試験するために、上記と同様のいくつかの実験をヒトCD3T細胞で行った。第1の実験では、ヒトCD3T細胞(1e細胞)に擬似電気穿孔し、次いで漸増量のAAV421若しくは422を形質導入するか、又はTRC1−2x.87EEmRNA(2μg)を電気穿孔し、次いで漸増量のAAV421又はAAV422を形質導入するかのいずれかを行った。前述のAAV408による実験は、MOIが高いほどより効率的なCAR挿入をもたらすことを示唆したので、AAV422 MOIは、上記の実験よりこの実験においてAAV421より有意に高かった(およそMOIは1.25e、2.5e、5e、及び1eウイルスゲノム/細胞であった)。AAV421ウイルスストックは、前述の実験より有意に高い力価を可能にするほど十分に濃縮されていなかった。対照として、細胞を電気穿孔(擬似又はTRC1〜2x.87EEmRNAで)し、次いで擬似形質導入した。この実験の追加成分として、「大規模」条件を実施し、10e細胞(典型的な実験よりも10倍多い)にTRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、次いでAAV422(2.5eウイルスゲノム/細胞)を形質導入した)。最後に、本発明者らはまた、第1のウイルスストックと比較するために、AAV421の第2のウイルスストックを試験した。
【0355】
CAR遺伝子の挿入は、CAR遺伝子がTRC1−2x.87EE認識配列に挿入されている場合にのみ産物を増幅するプライマー対を使用して、上記のようにPCRによって決定した。PCRを、図32A及び32Bに示されるアガロースゲルによって分離した(レーンの説明は、表9及び10に示す)。図32Aのサンプル1には擬似電気穿孔し、次いで擬似形質導入し、サンプル2〜5には擬似電気穿孔し、次いでAAV421を形質導入した。ゲルは、これらのサンプルが全てPCR産物を生成せず、TRC1−2x.87EEmRNAの不在下で、AAV421がCAR遺伝子のTRC1−2認識配列への挿入を駆動できないことを示している。更に、TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、次いで擬似形質導入した対照サンプル(サンプル6)は、PCR産物を示さなかった。図32Aのサンプル7〜10には、TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、次に漸増量のAAV421を形質導入した。ゲルは、5’及び3’相同アームの両方を越えて伸長した産物のPCRバンドを示し(各サンプル番号の下の2つのバンド)、CAR遺伝子のTRC1−2認識配列への組み込みを実証している。最後に、図32Aにおいて、レーン11及び12は、それぞれ1e又は10e細胞/サンプルのいずれかで開始した、TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、次いでAAV422を形質導入されたサンプルを表す。両方のPCRバンド(相同アームが長いことを考慮して異なるプライマーが使用されたため、最初のセットのほうがより大きい)の存在は、CAR遺伝子のTRC1−2認識配列への挿入が成功したことを示す。
【0356】
図32Bのサンプル1には擬似電気穿孔し、次いで擬似形質導入し、サンプル2〜5には擬似電気穿孔し、次いで漸増量のAAV422を形質導入した。(表10)。ゲルは、これらのサンプルが全てPCR産物を生成せず、TRC1−2x.87EEmRNAの不在下で、AAV422がCAR遺伝子のTRC1−2認識配列への挿入を駆動できないことを示している。図32Bのサンプル7〜10には、TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、次に漸増量のAAV422を形質導入した。ゲルは、5’及び3’相同アームの両方を越えて伸長した産物のPCRバンドを示し、CAR遺伝子のTRC1−2認識配列への組み込みを実証している。最後に、サンプル11は、TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、次いで図32Aに示されるサンプルとは異なるウイルスストック由来のAAV421を形質導入したサンプルを表す。バンドの存在は、CAR遺伝子のTRC1−2認識配列への挿入を示し、異なるウイルスストック間の再現性を裏付けている。まとめると、図32は、AAV421及びAAV422の両方が、CAR遺伝子をTRC1−2認識配列に挿入するのに適したHDR鋳型を生成できることを明確に実証している。
【0357】
【表9】
【0358】
【表10】
【0359】
2.AAV421を使用したT細胞上の抗CD19キメラ抗原受容体の発現
ここでは、AAV421を用いてCAR遺伝子をTRC1−2認識配列に挿入した細胞における、抗CD19キメラ抗原受容体の発現レベルを決定するよう努めた。上記及び図32Aで分析したサンプルも、フローサイトメトリによってCAR及びCD3の発現について分析した。形質導入の約4日後、細胞を抗CD19CAR又はCD3を認識する抗体で標識し、フローサイトメトリによって分析した。図33Aは、擬似電気穿孔し、AAV421を形質導入した細胞と、擬似電気穿孔し、擬似形質導入した対照細胞とについてのフローサイトメトリプロットを示す。擬似電気穿孔および擬似形質導入した細胞(MOI−0)は、圧倒的にCD3/CARであった(右下の象限、98.8%)。擬似電気穿孔し、次に漸増量のAAV421を形質導入した細胞は、対照細胞と本質的に同一と思われ、CD3/CAR集団は98.8%、98.6%、98.8%、及び97.9%であった。従って、本発明者らは、AAV421ウイルス単独では検出可能なレベルのCAR発現を駆動しておらず、T細胞受容体の発現を破壊することもできないと結論づける。
【0360】
図33Bは、TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔した後、擬似形質導入したサンプル、又はTRC1−2x.87EEを電気穿孔した後、漸増量のAAV421を形質導入した細胞のフローサイトメトリプロットを示す。電気穿孔し、次いで擬似形質導入した細胞は、56.7%のCD3細胞を示し、T細胞受容体複合体の効率的なノックアウトを示す。抗CD19CARで標識したバックグラウンドは非常に低く、CD3集団で0.48%、CD3集団で0.36%であった。TRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔し、次いで漸増量のAAV412を形質導入したサンプルは、CD3集団において4.99%〜13.4%の範囲の有意な量のCAR標識を示した。また、CD3集団におけるCAR標識のわずかな増加もあり、1.27%から3.95%に及ぶ。上記のように、CAR遺伝子が非発現T細胞受容体対立遺伝子に挿入されている可能性がある。また、AAV408を用いた実験とは対照的に、CAR集団はより高い平均蛍光強度で、より良好に定義され、JeFプロモータがeF1αコアプロモータよりも高い発現を駆動することが示唆された。
【0361】
AAV421をTRC1−x.87EEと併せて使用するCAR遺伝子の挿入を評価する一方で、本発明者らはCD3/CAR集団を優先的に増殖及び濃縮させる方法を決定しようと努めた。上記及び図33に示す実験から、本発明者らは、TRC1−2x.87EEmRNA(2μg)を電気穿孔し、次いでAAV421(3.13eウイルスゲノム/細胞)を形質導入した細胞を使用した。対照試料は、上記及び図33に示す実験から採取した、擬似電気穿孔及び擬似形質導入、擬似電気穿孔及びAAV421の形質導入、又はTRC1−2x.87EEの電気穿孔及び擬似形質導入を行ったものであった。対照の濃縮及び増殖プロセスとして、これらの細胞を、IL−7及びIL−15(いずれも10ng/mL)を補充した完全成長培地において6日間インキュベートした。次いで、細胞を抗CD19CAR及びCD3に対する抗体で標識し、フローサイトメトリによって分析した(図34A)。擬似電気穿孔し、擬似形質導入した細胞は、CD3/CAR象限において低レベルのバックグラウンド染色を示した(0.13%)。CD3/CAR集団は、擬似電気穿孔し、次いでAAVを形質導入したサンプル、又はTRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、次いで擬似形質導入したサンプルにおいて本質的に同じであった(それぞれ0.16%及び0.55%)。TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、擬似形質導入した細胞は53.2%のCD3/CAR集団を有し、図33Bに示されたこの実験の最初の部分で染色された量に非常に近い(56.7%)。TRC1−2x.87EEを電気穿孔し、AAVを形質導入した細胞は12.6%のCD3/CAR細胞を示し、図33に示されるこれらの細胞の元の標識とほぼ同一であり(13.4%)、IL−7とIL−15の混合物が、特異的CD3/CAR細胞集団を濃縮又は増殖させるには不十分であることを実証した。
【0362】
次に、上記の4つのサンプルを、細胞表面上にCD19を提示するIM−9細胞と共にインキュベートすることにより、抗原特異的様式でCD3/CAR集団を濃縮しようと努めた。IM−9細胞をマイトマイシンCで前処理することによって不活性化し、1:1の比でサンプルと共に、IL−7及びIL−15(10ng/mL)の存在下で6日間インキュベートした。次いで、細胞を、CD3及び抗CD19CARに対する抗体で標識し、フローサイトメトリによって分析した(図34B)。擬似電気穿孔し、擬似形質導入した細胞は、CD3/CAR象限において低レベルのバックグラウンド染色を示した(0.2%)。CD3/CAR集団は、擬似電気穿孔し、次いでAAVを形質導入したサンプルにおいて同じであり(0.2%)、TRC1−2x.87EEを電気穿孔し、擬似形質導入した細胞においてわずかに高かった(1.24%)。TRC1−2x.87EE単独対照のCD3/CAR細胞の増加は、CAR核酸がシステムに導入されていないため、バックグラウンドと見なされる。TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、擬似形質導入した細胞は、42.5%のCD3/CAR集団を有し、増殖前(56.7%、図33)より有意に低く、CD細胞がこのシステムにおいて増殖優位性を有し得ることを示唆している。しかし、TRC1−2x.87EEを電気穿孔し、AAVを形質導入した細胞は、49.9%のCD3/CAR細胞を示し、図33に示すこれらの細胞の元の標識(13.4%)と比較して劇的に増加し、IL−7及びIL−15の存在下におけるこのサンプルとIM−9細胞とのインキュベーションが、CD3/CAR集団を濃縮及び増殖させるのに非常に有効であることを実証している。CD3/CAR集団もまた同じ条件下で増殖させ、擬似電気穿孔/AAV形質導入サンプル及びTRC1−2x.87EE電気穿孔/AV形質導入サンプルは、それぞれ2.53%及び15.3%のCD3/CARを示す。
【0363】
TRC1−2x.87EEを電気穿孔し、次いでAAV421を形質導入した細胞では、CD3−集団の24.2%が増殖前にCARであった(図33B)。IL−7及びIL−15を補充した培地中でのインキュベーション後、CD3細胞の25.3%がCARであり(図34A)、遺伝子ノックイン対遺伝子ノックアウトの比率は変化しなかったことが示された。しかし、IL−7及びIL−15に加えてIM−9細胞と共にインキュベートした後、CD3細胞の80%以上(80.35%、図34B)がCARであり、IM−9細胞とのインキュベーションが抗原特異的濃縮をもたらすことを実証している。
【0364】
マイトマイシン(mitocmyin)Cは細胞を非常に強力に活性化し、IM−9細胞は混合培養物中で長く生き残れないので、IM−9細胞の2回目の注入は更にCD3/CAR細胞の濃縮を増加させる可能性があると推論した。上記及び図34Bに示す細胞のいくつかを、IL−7及びIL−15を含有する培地において新鮮なIM−9細胞(マイトマイシン(mitocmycin)Cで前処理)と混合し、更に6日間インキュベートした。次いで、細胞をCD3及び抗CD19CARについて染色し、フローサイトメトリによって分析した(図34C)。対照サンプルのいずれかにおけるCD3/CAR細胞のパーセンテージは、IM−9細胞についての第1ラウンドの濃縮と比較して本質的に変わらなかった。
【0365】
しかし、TRC1−2x.87EEを電気穿孔し、AAV421を形質導入した細胞は、CD3/CAR細胞の有意な濃縮を示し、49.9%(IM−9細胞とのインキュベーションの第1ラウンド後、図34B)から65.7%であった(図34C)に増加した。重要なことに、CD3集団の93.75%はCARであり、更なる抗原特異的増殖を示している。
【0366】
3.AAV422を使用したT細胞上の抗CD19キメラ抗原受容体の発現
本発明者らは、AAV422を使用してHDR鋳型を提供する細胞(上記、PCR結果は図32Bに示す)からの抗CD19CARの発現も調べた。形質導入の約4日後、細胞を抗CD19CAR又はCD3を認識する抗体で標識し、フローサイトメトリによって分析した。図35Aは、擬似電気穿孔し、漸増量のAAV422を形質導入した細胞と、擬似電気穿孔し、擬似形質導入した対照細胞とについてのフローサイトメトリプロットを示す。擬似電気穿孔および擬似形質導入した細胞(MOI−0)は、圧倒的にCD3/CARであった(右下の象限、98.8%)。擬似電気穿孔し、次いで漸増量のAAV422を形質導入した細胞は、対照細胞と本質的に同一と思われ、CD3/CAR集団は98.6%、98.6%、98.9%、及び98.4%であった。従って、本発明者らは、AAV422ベクター単独では検出可能なレベルのCAR発現を駆動しておらず、T細胞受容体の発現を破壊することもできない。
【0367】
図35Bは、TRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔した後、擬似形質導入したサンプル、又はTRC1−2x.87EEを電気穿孔した後、漸増量のAAV422を形質導入した細胞のフローサイトメトリプロットを示す。電気穿孔し、次いで擬似形質導入した細胞は、59.3%のCD3細胞を示し、T細胞受容体複合体の効率的なノックアウトを示す。抗CD19CARで標識したバックグラウンドは非常に低く、CD3集団で1.47%、CD3集団で0.52%であった。TRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔し、次いで漸増量のAAV422を形質導入したサンプルは、CD3集団において14.7%〜20.3%の範囲の有意な量のCAR標識を示した。また、CD3集団におけるCAR標識のわずかな増加もあり、2.3%から2.7%に及ぶ。
【0368】
驚くべきことに、本発明者らはAAV422の存在下でT細胞受容体ノックアウト効率の顕著な増加を観察した。漸増AAV422による全体のCD3ノックアウト効率は、TRC1−2x.87EEの電気穿孔単独では59.3%であったのに対し、71.6%、74.9%、77.8%、及び74.4%であった。対照的に、漸増AAV421による全体のCD3ノックアウト効率は、TRC1−2x.87EEの電気穿孔単独では57.18%であったのに対し、56.99%、56.62%、57.4%、及び55.4%であった(図33B)。従って、一本鎖AAVゲノムの存在下でのTRC1−2x.87EEの電気穿孔は、TRC1−2x.87EEヌクレアーゼの全体的なノックアウト効率の増加をもたらすが、自己相補的AAVゲノムの存在下ではもたらさないと思われる。この増加のために、CARであるCD3細胞のパーセントは、CD3/CAR細胞の数がより多いにもかかわらず、AAV421及びAAV422で形質導入された細胞間で有意に異ならない。AAV421を使用したCARのCD3細胞の最も高いパーセントは24.18%であり、(MOI=3.13eウイルスゲノム/細胞)、これと比較してAAV422によるものは26.48%(MOI=1eウイルスゲノム/細胞)であった。この観察は、AAV421とAAV422との間のMOIの大きな差を考慮すると特に興味深い。
【0369】
この実験からの細胞を使用してIM−9細胞を利用してCD3/CAR細胞を特異的に濃縮する構想を試験した。この場合もまた、パネル全体を試験するのではなく、本発明者らは、擬似電気穿孔し、次いでAAV422を形質導入した細胞、又はTRC1−2x.87EEを電気穿孔し、次いでAAV422(2.5eウイルスゲノム細胞)を形質導入した細胞のいずれかの濃縮のみを、新しい実験において試みた。図36Aは、形質導入後およそ4日目のフローサイトメトリプロットを示す。擬似電気穿孔/形質導入細胞は、0.13%のCD3/CAR細胞のバックグラウンド染色を示した。これと比較して、TRC1−2x.87EEを電気穿孔し、AAV422を形質導入した細胞は、4.44%のCD3/CAR細胞を示した。細胞を、上記のようにIL−7及びIL−15の存在下でIM−9細胞(マイトマイシンで前処理)と6日間インキュベートし、次いでフローサイトメトリによって分析した。図36Bは、IM−9細胞とのインキュベーションが、AAV422形質導入細胞中のCD3/CAR集団を35.8%まで劇的に増加したことを示す。CAR細胞は、濃縮前の6.69%と比較して、全CD3集団の45.2%を構成する(図36A)。上記のように、本発明者らはまた、IM−9細胞の第2の添加により更に濃縮した(図36C)。IM−9細胞を用いた2回のインキュベーションの結果、65.1%のCD3/CAR細胞が得られた。CAR細胞は全CD3集団の78.25%を構成し、CD3/CAR細胞の有意な抗原依存性濃縮を示している。
【0370】
これらのデータは、上記のデータと併せて、TRC1−2認識配列に挿入された抗CD19CAR遺伝子を有していた細胞を、IL−7及びIL−15の存在下でIM−9細胞とインキュベーションすることによりうまく濃縮することができ、わずか12日の培養で90%超がCARであるCD3集団をもたらし得ることを明確に実証している。
【0371】
4.一本鎖AAVベクターを使用した場合に観察されるノックアウト効率の増加
本研究では、一本鎖AAVベクターがTRC1−2x.87EEヌクレアーゼのノックアウト効率を増加させるという観察を追跡した。第1の実験では、細胞にTRC1−2x.87EE(2μg)を電気穿孔し、擬似形質導入又は漸増量のAAV412(6.25e、1.25e、2.5e、又は5eウイルスゲノム/細胞)の形質導入のいずれかを行った。形質導入後4日目に、細胞をCD3に対する抗体で標識し、フローサイトメトリによって分析した(図37A)。擬似形質導入細胞では、20.7%がCD3であり、これと比較して漸増AAV412を形質導入した細胞では21.6%、23.7%、25.5%、及び25%であり、TRC1−2x.87EEのノックアウト効率はAAV412の存在下で最大23%高い(25.5%を20.7%と比較)。
【0372】
このノックアウト効率の増加がヌクレアーゼ特異的であるかどうかを決定するために、更なる実験において、細胞に、β2−ミクログロブリン遺伝子を標的とするヌクレアーゼをコードするmRNA(2μg)を電気穿孔し、擬似形質導入又は漸増量のAAV412の形質導入のいずれかを行った。形質導入後4日目に、細胞をβ2−ミクログロブリンについて染色し、フローサイトメトリによって分析した(図37B)。擬似形質導入細胞では、β2−ミクログロブリンノックアウト効率は64.5%であり、漸増量のAAV412を形質導入した細胞では68.6%、70.7%、77.2%、及び82.5%に増加し、ノックアウト効率は最大27.9%上昇した(82.5%を64.5%と比較)。
【0373】
平行した実験では、細胞にTRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、擬似形質導入又はAAV422(AAV412と同じMOIを使用)を形質導入のいずれかを行った。細胞をCD3に対する抗体で標識し、細胞をフローサイトメトリによって分析した(図37C)。擬似形質導入細胞は62.2%のT細胞受容体ノックアウトを示し、漸増量のAAVによるものは、T細胞受容体ノックアウト頻度は72.6%、75.5%、78.3%、及び75.1%に増加した。ここで、AAV422の存在は、TRC1−2x.87EEのノックアウト効率を25.8%増加させている(78.3%を62.2%と比較)。2つの異なるヌクレアーゼおよび2つの異なるAAVベクターを使用して、これらの3つの実験の間で、ノックアウト効率のパーセント増加がほぼ同一であることは特筆すべきである。まとめると、これらのデータは、一本鎖AAVベクターによる細胞の形質導入が、ヌクレアーゼ又はAAVカーゴとは無関係に、本発明者らのヌクレアーゼのノックアウト効率を増加させることを強く示している。
【0374】
5.抗CD19キメラ抗原受容体を発現するT細胞の活性
上記の実験は、細胞にTRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、直後に細胞にAAV421を形質導入することによるCAR T細胞の生成、及びCD19発現IM−9細胞と共培養することによって、これらの細胞をCD3/CAR集団に関して濃縮できることを明確に実証している。次に、これらのCAR T細胞の標的細胞に対する活性を調べた。第1の実験では、上記及び図34Cに示す細胞を、CD19Raji細胞又はCD19−U937細胞のいずれかが標的集団であるIFN−γELISPOTアッセイに用いた。図38Aに示すように、抗CD19CAR T細胞をU937細胞と共にインキュベートした場合、それらは標的:エフェクター比にかかわらずIFN−γを分泌しなかった。しかし、CAR T細胞をRaji細胞と共にインキュベートすると、高レベルのIFN−γ分泌が用量依存的に起こり、IFN−γの分泌が抗原特異的であることが示された。
【0375】
これらのCAR T細胞を、ルシフェラーゼ標識Raji細胞を標的とする細胞死滅アッセイにも使用した。簡潔には、CAR T細胞をルシフェラーゼ標識Raji細胞と共に10:1の比でインキュベートした。いくつかの時点で、細胞を洗浄し、溶解して、何個の細胞が残っているかの尺度としてルシフェラーゼ活性を測定した。対照細胞は、5500任意単位を超えるルシフェラーゼ活性を示した(図38B)。2時間、3時間、4時間、及び5時間の共インキュベーションにより、ルシフェラーゼ活性はそれぞれ4598、3292、2750、及び1932任意単位まで減少した。従って、共インキュベーションの5時間以内に、ルシフェラーゼ活性は約65%低下し、CAR T細胞の強力な細胞溶解活性を示した。
【0376】
まとめると、これらのデータは、本明細書に記載の方法に従って作製した抗CD19CAR T細胞がCD19細胞を死滅させるために有効であることを実証している。
【0377】
実施例7;線形化プラスミドDNA
【0378】
1.線形化プラスミドDNAからのキメラ抗原受容体の発現
AAVによって生成されるHDR鋳型は線形DNA分子であるので、任意の供給源由来の線形DNAが、CAR遺伝子をTRC1−2認識配列に挿入するのに適したHDR鋳型であり得ると仮定した。これを試験するために、本発明者らは、TRC1−2認識配列座に相同である相同アームに隣接する抗CD19CAR遺伝子を含むいくつかのプラスミドを作製した。いくつかのプラスミドでは異なるプロモータが使用され、相同アームは、自己相補的なAAVベクターを模倣する「短い」(5’相同アームで200bp及び3’相同アームで180bp)又は一本鎖AAVベクターを模倣する「長い」(5’相同アームで985bp及び3’相同アームで763bp)のいずれかであった。短い相同アームを有するプラスミドは「pDS」と名付け、長い相同アームを有するものは「pDI」と名付けた。更にいくつかのプラスミドは、CAR遺伝子の上流にイントロンを含んでいた。
【0379】
CARドナープラスミドをベクター骨格の制限部位において線形化し、ゲル精製した。ヒトCD3T細胞に、線形化されたCARドナープラスミド単独(精製された線状化プラスミドの濃度に応じて500ng〜1000ngの量が変化する)を電気穿孔するか、又はTRC 1−2.87EEmRNA(2μg)と共電気穿孔した。対照として、細胞に擬似電気穿孔又はTRC1−2x.87EE単独の電気穿孔を行った。図39のグラフには、全ての電気穿孔ンの説明を表示している。電気穿孔の約4日後、細胞を、CD3及び抗CD19CARに対する抗体で標識し、フローサイトメトリによって分析した(図39)。図39Aは、0.15%のバックグラウンドCD3/CAR染色を示す。バックグラウンドCD3/CAR染色は4.31%で異常に高かったことに留意すべきである。図39Bは、TRC1−2x.87EEmRNA単独を電気穿孔した細胞を示し、60.8%のCD3ノックアウトを実証している。図39C及び39Dは、TRC1−2x.87EEmRNAと、EF1αコアプロモータ及びHTLVエンハンサーを有する長い相同アームベクター又はEF1αコアプロモータを有する短い相同アームベクター(エンハンサーを有さない)のいずれかとを、共電気穿孔したサンプルを示す。興味深いことに、EF1αコアプロモータのみを有する線形化CARドナーは、2.38%のCD3/CAR集団を生成したが、EF1αコアプロモータ及びHTLVエンハンサーを有するベクターは、有意なパーセンテージのCD3/CAR細胞を生成しなかった。TRC1−2x.87EEmRNAの不在下でこれらの2つのベクターを電気穿孔した細胞は、CD3/CAR集団の有意な増加を示さなかった(図39E及び39F)。TRC1−2x.87EEの存在下でのEF1αコアプロモータベクターによるCD3/CAR集団の増加は、線形化プラスミドがTRC1−2認識配列における二本鎖切断を修復するためのHDR鋳型として機能できることを示唆した。
【0380】
図39G及び39Hは、両方ともCARの発現を駆動するMNDプロモータを含む2つの長い相同アーム構築物を示す。図39Gに示すこれらの構築物の1つは、CAR遺伝子の5’末端にイントロンも含む。驚くべきことに、MNDプロモータ及びイントロンを有する長い相同アームプラスミドは、有意なCAR発現を示したが(図39G、4.14%のCD3/CAR)、一方、イントロンレス構築物(図39H)は、TRC1−2x.87EEmRNAを共電気穿孔した場合に検出可能なCAR発現を示さなかった。MNDプロモータを有するが、イントロンを有さない短い相同アームプラスミドもTRC1−2x.87EEmRNAを用いて試験して、CAR発現は実証されなかった(図39I)。MNDプロモータ含有構築物はいずれもTRC1−2x.87EEmRNAの不在下ではいずれのCAR細胞も生成しなかった(図39J、39K、及び39L)。
【0381】
最後にこの実験では、CARの発現を駆動するJeTプロモータを含んだ短い相同アーム構築物及びCARの発現を駆動するCMVプロモータを有する「長い」相同性アーム構築物を試験した。単独では、これらの線形化プラスミドのいずれも有意なCAR細胞をもたらさなかった(図39O及び39P)。細胞にTRC1−2x.87EEmRNAを共電気穿孔した場合、JeT含有構築物は2.69%のCD3/CAR細胞を示し、CMV含有構築物は2.7%のCD3/CAR細胞を生じた。
【0382】
図39に示すフロープロットは、相同アームに隣接する、CARをコードする線形化プラスミドDNAが、TRC1−2x.87EEによって引き起こされるDNA切断を修復するためのHDR鋳型として機能し、CAR核酸の挿入をもたらすことを明確に実証している。プロモータ強度がCARの発現において重要な役割を果たし、遺伝子中にイントロンが存在する場合、いくつかのプロモータがより効率的な発現を駆動することは明らかである。
【0383】
線形化DNA構築物を使用したCARの挿入がTRC1−2認識配列座に特異的であることを確認するために、本発明者らはCAR内および相同アームの外側に位置するプライマーを使用して上記のように細胞を分析した(図40、表11)。サンプル1及び2は、擬似電気穿孔又はTRC1−2x.87EEをコードするmRNAのみの電気穿孔のいずれかを行った細胞由来のPCR産物である。上記の結果と一致して、PCRバンドは存在せず、TRC1−2認識部位におけるCAR遺伝子の欠落を示す。サンプル3、4、及び5は、TRC1−2x.87EE及び線形化CAR相同プラスミドを共電気穿孔した細胞に由来する(サンプル名は図40のものである)。各サンプルは、CAR遺伝子発現カセットのTRC1−2認識部位への挿入を示す予測サイズの2つのPCRバンドを示す。サンプル6、7、及び8は、サンプル3、4、及び5と同じ線形化CAR相同プラスミドを電気穿孔したが、TRC1−2x.87EEmRNAは含まない細胞に由来する。予想どおり、PCRバンドは存在しない。サンプル9及び10は、擬似電気穿孔又はTRC1−2x.87EEをコードするmRNAのみの電気穿孔のいずれかを行った細胞由来のPCR産物であり、PCRバンドは示していない。サンプル11、12、13、及び14は、TRC1−2x.87EE及び線形化CAR相同プラスミドを共電気穿孔した細胞に由来する(サンプル名は図40のものである)。各サンプルは、CAR遺伝子のTRC1−2認識部位への挿入を示す予測サイズの2つのPCRバンドを示す。試料15、16、17、及び18は、サンプル11、12、13、及び14と同じ線形化CAR相同プラスミドを電気穿孔したが、TRC1−2x.87EEmRNAは含まない細胞に由来する。予想どおり、PCRバンドは存在しない。
【0384】
図39及び40は、TRC1−2x.87EEをコードするmRNA及び線形化CAR相同プラスミドをヒトCD3T細胞に共電気穿孔することが、CAR遺伝子をTRC1−2認識配列に挿入する有効な方法であることを明確に実証している。
【0385】
【表11】
【0386】
実施例8;更なるAAVベクターの特徴付け
【0387】
1.JeTプロモータ及び長い相同アームを有するAAVの使用
まとめると、上記のデータは、JeTプロモータを利用するベクターが、CARの高い一貫した発現を駆動し、相同アームが長いほど遺伝子挿入効率を上昇させ得ることを示す。本発明者らは、長い相同アーム及び抗CD19CARの発現を駆動するJeTプロモータを有する一本鎖AAV(本明細書ではAAV423)を作製するために使用される、図41に示すベクター(配列番号125)を設計し、作製した。ヒトCD3T細胞にTRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔し、漸増量のAAV423を形質導入した。上記のデータが、MOIが高いほど挿入効率を上昇させ得ることを示唆したので、本発明者らは1.875eから1.5eの範囲の力価を使用した。対照として、細胞に、TRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔し、次いで擬似形質導入するか、又は擬似電気穿孔し、次いで漸増量のAAV423を形質導入した。形質導入の約6日後、細胞をCD3又は抗CD19CARを認識する抗体で標識し、フローサイトメトリによって分析した。図42に示されるように、擬似電気穿孔し、次いで漸増量のAAV423を形質導入した細胞は、圧倒的にCD3/CAR(96.6%〜98.5%の範囲)である。TRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔し、擬似形質導入した細胞は、CD3が39%であり、T細胞受容体の効率的なノックアウトを示した。これらの細胞において、バックグラウンドCAR染色は非常に低かった(約2%)。TRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔し、次いで漸増量のAAV423を形質導入した細胞は、CD3のノックアウトと併せて劇的なCAR染色を示した。CD3/CAR集団は21.6%から22.7%の範囲であり、一方CD3/CAR集団は約2%であった。上記のように、一本鎖AAVの存在は、TRC1−2認識部位での全体の遺伝子改変効率を増加させ、総CD3−集団は、対照細胞における41.44%から電気穿孔し後、次いで漸増量のAV423を形質導入した細胞における57.6%、59.2%、58.7%、及び56.1%に増加した。CARであるCD3細胞のパーセントは、37.5%から39.9%の範囲であり、上記のデータと比較して挿入効率の劇的な増加を示した。
【0388】
AAV423を使用したCARの挿入がTRC1−2認識配列座に特異的であることを確認するために、本発明者らはCAR内及び相同アームの外側に位置するプライマーを使用して上記のように細胞を分析した(図43、表12)。
【0389】
【表12】
【0390】
サンプル1及び2は、擬似電気穿孔した細胞由来のPCR産物である。上記の結果と一致して、PCRバンドは存在せず、TRC1−2認識部位におけるCAR遺伝子の欠落を示す。サンプル3〜6は、擬似電気穿孔し、次いで漸増量のAAV423を形質導入した細胞に由来する。上記の結果と一致して、PCRバンドは存在していない。サンプル7は、TRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔し、次いで擬似形質導入した細胞に由来し、PCRバンドを示さない。サンプル8〜11は、TRC1−2x.87EEをコードするmRNAを電気穿孔し、次いで漸増量のAAV423を形質導入した細胞に由来し、CARがTRC1−2認識配列に挿入された場合に予想されるPCRバンドを示している。
【0391】
切断後にCAR配列をTRC1−2認識部位に挿入するAAV423の能力を考えると、ATRC1−2認識部位に組み込まれて、抗CD19CARをコードすることができる線形化DNA鋳型をT細胞にトランスフェクトすることができるように、AV423プラスミド(図41)が1種の制限酵素による消化で線形化され、1又は複数の制限酵素による消化で細胞に送達され得ることがさらに想定される。
【0392】
実施例9;抗CD19 TCR−陰性CAR T細胞のインビボ有効性
【0393】
1.播種性B細胞リンパ腫のマウスモデル
遺伝子編集抗CD19CAR T細胞の有効性を、播種性B細胞リンパ腫のマウスモデルにおいて評価した。上記のように活性化T細胞にTRC1−2x.87EEmRNAを電気穿孔し、次にJeTプロモータにより駆動され、相同アームに隣接する抗CD19CAR発現カセットを含むAAV6ベクターを形質導入した。IL−2(10ng/mL)と共に5日間培養した後、細胞表面のCD3及び抗CD19CAR発現について、細胞を、以前に記載したようにフローサイトメトリによって分析した(図44A)。CD3−細胞を、抗CD3磁気ビーズを使用してCD3細胞を枯渇させることにより濃縮した。次いで枯渇した細胞をIL−15(10ng/mL)及びIL−21(10ng/mL)中で3日間培養し、CD3及び抗CD19CARの細胞表面発現について再分析した(図44B)。CD3集団の単離は非常に効率的であり、CD3細胞の枯渇後にフローサイトメトリによって測定して99.9%の純度を得た(図44B)。精製されたCD3−集団は、56%のCD4及び44%のCD8細胞を含み(図44C)、CD62L及びCD45ROに対する染色によって決定される、セントラルメモリー、移行性メモリーの表現型を主に有していた(図44D)。
【0394】
Raji播種性リンパ腫モデルを利用する研究は、Charles River Laboratories International Inc.(Morrisville、NC、USA)によって実施された。ホタルルシフェラーゼ(ffLuc)44を安定に発現するCD19Raji細胞を、2.0×10細胞/マウスの用量で、1日目に5〜6週齢の雌NSGマウスに静脈注射した。4日目に、PBS、又は同じ健康なドナーPBMCから調製された遺伝子編集された対照TCR KO T細胞を含有するPBS、又は同じドナーから調製されたCAR T細胞の表示の用量を含有するPBSを、マウスに静脈注射した。表示の日に、生存マウスにルシフェリン基質(150mg/kg生理食塩水)を腹腔内注射し、麻酔し、7分後にIVIS SpectrumCT(Perkin Elmer、Waltham、MA)を使用してルシフェラーゼ活性を測定した。Living Imageソフトウェア4.5.1(Perkin Elmer、Waltham、MA)を使用してデータを分析し、エクスポートした。発光信号強度は、p/秒/cm/srの輝度で表される。
【0395】
2.結果
図45に示すように、CD19Raji細胞の成長は、8日目までに全てのマウスにおいて低レベルが明らかであり、11日目までに未処置及びTCR−対照群で有意に増加した。対照群では、有意な腫瘍成長が15日目まで観察され、18日目又は19日目までに全ての対照群を安楽死させた。対照的に、抗CD19CAR T細胞で処置したマウスの群は全て、11日目までに腫瘍成長の兆候を示さず、低用量群の単一のマウスを除いて、試験の29日まで依然として腫瘍が生じないままであった。腫瘍再成長は、36日目あたりで低用量コホートにおいて3匹のマウスで観察された。3匹のうちの1匹は42日目に死亡したが、画像化によりこの動物では低レベルの腫瘍しか認められなかったため、死亡が腫瘍関連であるとは考えにくい。
【0396】
3.結論
これらの結果は、遺伝子編集されたCD3−CAR T細胞によるCD19腫瘍細胞のインビボクリアランスの明確な証拠を提供し、同種異系CAR T細胞療法のためのこのプラットフォームの更なる前臨床開発を支援する。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29-1】
図29-2】
図30
図31
図32A
図32B
図33-1】
図33-2】
図34-1】
図34-2】
図34-3】
図35-1】
図35-2】
図36
図37-1】
図37-2】
図37-3】
図38
図39-1】
図39-2】
図39-3】
図40
図41
図42-1】
図42-2】
図43
図44
図45
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]