特許第6816135号(P6816135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6816135フィブリノーゲンに基づく改善された組織接着剤パッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816135
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】フィブリノーゲンに基づく改善された組織接着剤パッチ
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/26 20060101AFI20210107BHJP
   A61L 15/18 20060101ALI20210107BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20210107BHJP
   A61L 15/38 20060101ALI20210107BHJP
   A61L 15/62 20060101ALI20210107BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   A61L15/26 100
   A61L15/18 100
   A61L15/32 100
   A61L15/38 100
   A61L15/62 100
   A61L15/44 100
【請求項の数】22
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-521073(P2018-521073)
(86)(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公表番号】特表2018-531116(P2018-531116A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】IL2016051090
(87)【国際公開番号】WO2017068572
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年10月3日
(31)【優先権主張番号】62/243,158
(32)【優先日】2015年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518136224
【氏名又は名称】シーレーンチウム メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロウブ、オルガド
(72)【発明者】
【氏名】コーエン、イーラン
(72)【発明者】
【氏名】シュウォーツ、ヨータム
【審査官】 参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/174509(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102107018(CN,A)
【文献】 特開2014−057876(JP,A)
【文献】 特開2002−263183(JP,A)
【文献】 Journal of Biomedical Materials research part A,2007年,pp.503-511,DOI:10.1002/jbm.a.31300
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチであって、
生体適合性のポリエチレングリコール−カプロラクトン−ラクチド(PEG−CL−LA)トリブロックコポリマー(PECALA)から構成されるフィルムから作製される裏張り、および
前記生体適合性ポリマー裏張りに組み込まれる、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンとを含むフィブリノーゲンシーラント
を含み、
前記PECALAが、分子量が3000〜3500の間であるPEGと、34:2のCL:LA比とを含む、フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
【請求項2】
前記フィブリノーゲンシーラントが、約2mg/cmのフィブリノーゲンと、10IU/cmのトロンビンとを含む、請求項1に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
【請求項3】
前記フィブリノーゲンシーラントが、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンと、CaClとを含む、請求項1に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
【請求項4】
前記フィブリノーゲンシーラントが、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンと、CaClとからなる、請求項1に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
【請求項5】
前記フィブリノーゲンシーラントが、約2mg/cmのフィブリノーゲンと、約10IU/cmのトロンビンと、CaClとからなる、請求項4に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
【請求項6】
前記PECALAを特徴づける少なくとも1つのパラメーターが、前記パッチに所定の分解時間を提供するように選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
【請求項7】
前記少なくとも1つのパラメーターが、PEGの分子量、親水性成分対疎水性成分の比率、CL:LA比、および結晶化度からなる群から選択される、請求項6に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
【請求項8】
前記所定の分解時間が最大でも2週間である、請求項6に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
【請求項9】
前記所定の分解時間が10日〜14日の間である、請求項6に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
【請求項10】
約200μmの厚さによって特徴づけられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
【請求項11】
前記フィブリノーゲンシーラントがさらに、少なくとも1つの添加剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組織接着剤パッチ。
【請求項12】
前記添加剤が、前記フィルムの接着半減期を延ばすための添加剤、医薬的に活性な薬剤、および鎮痛剤からなる群から選択される、請求項11に記載の組織接着剤パッチ。
【請求項13】
前記添加剤が、前記フィルムの接着半減期を延ばすためのプラスミン阻害剤である、請求項12に記載の組織接着剤パッチ。
【請求項14】
前記添加剤が、標的化放出または制御放出のための医薬活性な薬剤である、請求項12に記載の組織接着剤パッチ。
【請求項15】
フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチを製造するための方法であって、
ポリマーフィルムをPECALAから流し込み成形し、それにより、厚さによって特徴づけられるポリマーフィルムを作製すること、
前記ポリマーフィルムを軟化させること、
8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンとを含むフィブリノーゲンシーラントを前記ポリマーフィルムの少なくとも1つの表面に配置すること、および
前記ポリマーフィルムを、前記フィブリノーゲンシーラントの少なくとも一部が前記ポリマーフィルムの前記表面に組み込まれるまで押しつけること
を含み、
前記PECALAが、分子量が3000〜3500の間であるPEGと、34:2のCL:LA比とを含む、方法。
【請求項16】
フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチを調製するための方法であって、
真空の供給源とつながっている作業面を所定の温度に加熱すること、
前記真空を前記作業面に加えること、
PECALAの溶液を前記作業面に適用すること、
ポリマーブレードを前記作業面の上方の所定の高さに調節すること、
PECALAの前記溶液を、前記ポリマーブレードで前記作業面を覆って広げること、
前記溶媒を蒸発させ、それにより、厚さによって特徴づけられる非透過性の生体適合性ポリマーフィルムを作製すること、
前記作業面を、前記軟化温度を超えて加熱すること、
フィブリノーゲンシーラントを含む粉末を、前記ポリマーフィルムを覆って散布すること(ただし、前記フィブリノーゲンシーラントは、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンとを含む)、
前記ポリマーフィルムを覆って、前記粉末およびポリマーフィルムを覆う上部剥離シートを配置すること、
圧力を前記上部剥離シートに加え、その結果、少なくとも部分的に前記粉末を前記ポリマーフィルムの中に組み込むようにし、それにより、接着剤パッチ材のフィルムを形成すること、
前記上部剥離シートを接着剤パッチ材の前記フィルムから除くこと、
前記真空を開放すること、
前記作業面を室温に冷却すること、および
前記接着剤パッチ材を前記作業面から取り除くこと
を含み、
前記PECALAが、分子量が3000〜3500の間であるPEGと、34:2のCL:LA比とを含む、方法。
【請求項17】
前記フィブリノーゲンシーラントが、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンと、CaClとを含む、請求項15または16のどちらか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記厚さが約200μmである、請求項15または16のどちらか一項に記載の方法。
【請求項19】
身体部分の中への流体の漏出、または身体部分からの流体の漏出を処置することにおいて使用するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載される組織接着剤パッ
【請求項20】
前記身体部分が動脈または器官である、請求項19に記載の組織接着剤パッチ
【請求項21】
流体の前記漏出が、動脈出血、器官組織出血、胆汁吻合、脳脊髄液漏出、硬膜漏出、および、損傷した肺組織における空気漏出からなる群から選択される、請求項19に記載の組織接着剤パッチ
【請求項22】
前記処置が、組織接着剤パッチを、前記パッチを前記身体部分の表面に手で押しつけることによって適用することを含む、請求項19に記載の組織接着剤パッチ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は米国仮特許出願第62/243,158号(2015年10月19日出願;これはその全体が参照によって組み込まれる)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は一般には組織シーラント接着剤パッチに関する。具体的には、本発明は、フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチが、被覆産業から適合化された技術を使用して製造される改善されたパッチに関する。
【背景技術】
【0003】
創傷手当用品、組織被覆剤および組織接着剤が、血液および他の体液の漏出を阻止するために、または防止するために役立つデバイスの例である。これらの手当用品は、開放創を密封し、感染を防止するなどのために役立ち得る。文献において知られている多くのタイプの創傷手当用品および組織接着剤には、1つまたは複数の血液凝固剤(例えば、フィブリノーゲンなど)が組み込まれている。
様々な方法が、医療用途のために好適であるポリマーフィルムを調製するためにこの技術分野において知られている。例えば、欧州特許出願第0334998号には、微孔性の膜様ポリマーフィルムを調製するための方法であって、粘度が0.07Pa・s〜0.5Pa・sである水相を、水には可溶性であるが、塩化メチレンには可溶性でない増粘剤の使用によって形成すること、水相を、熱可塑性ポリマーを形成するフィルムの、粘度が0.1Pa・s〜1Pa・sである5%〜15%の塩化メチレン溶液において乳化すること、ポリマー溶液を支持体材料の上に広げて、支持体を被覆すること、塩化メチレンを被覆された支持体から蒸発させること、および、水を除くことを含む方法が開示される。
【0004】
数多く例が、血液凝固剤を含有する組織シーラント組成物の文献において知られている。米国特許第5631011号には、フィブリンまたはフィブリノーゲンと、生分解性かつ生体適合性であるポリマーとを含む組織処置組成物が開示される。この組成物は、組織(例えば、切断され、縫合された血管など)を結びつけるための接着剤として作用する。米国特許第6699844号には、ヒアルロン酸の誘導体もまた含有するフィブリン含有組織シーラントが開示される。米国特許第6162241号には、効果的な量の止血剤が、組織からの血液の流れを医学的に許容され得る期間で止めるために組み込まれている、架橋可能な基を含む生体適合性かつ生分解性のヒドロゲル組織シーラントを含む止血用組織シーラントが開示される。米国特許第6056970号には、止血性化合物と、生体吸収性ポリマーとを含む、既知の製紙技術によって製造される組成物が開示される。
【0005】
様々な方法がまた、医薬的に効果的な薬剤(例えば、止血剤など)をポリマーマトリックスから放出することができる組成物を調製するためにこの技術分野では知られている。例えば、欧州特許出願第1093824号には、色素が組み込まれる生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチドなど)が開示されており、この場合、ポリマーが分解するにつれ、色素が放出される。PCT特許出願公開第99/21908号には、医薬剤(例えば、抗ガン薬物など)の遅延放出のための組成物であって、医薬剤が、処置される組織に注入される生分解性ポリマー、または塗布される生分解性ポリマーに組み込まれる組成物が開示される。これらにおいて開示される生分解性ポリマーは、とりわけ、Aブロックが水不溶性ポリマー(例えば、ポリカプロラクトンまたはポリカプロラクトン−ラクチドコポリマー)であり、Bブロックが水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)であるA−B−Aトリブロックコポリマーを含む。米国特許第6194005号には、粉末化された医薬的に効果的な薬剤が、温かい脂質マトリックスに噴霧され、それにより、脂質マトリックスが薬剤を覆う方法が開示される。米国特許第6579537号には、とりわけ、ポリアルキレングリコールを使用してフィブリノーゲン組成物を製造するための方法が開示される。その基本的方法は、フィブリノーゲンおよびフィブロネクチンの溶液を製造し、フィブリノーゲンおよびフィブロネクチンを、ポリアルキレングリコールおよびアミノ酸を加えることによって沈殿させることを含む。米国特許出願公開第2012/0121532号には、乾燥状態にある安定な止血剤組成物を調製するための方法が開示される。乾燥状態の止血剤が様々な割合で乾燥状態のポリマー成分と混合され、その結果、適切な希釈剤(例えば、水)が加えられると、止血剤が組み込まれるポリマーマトリックス(例えば、ヒドロゲル)が、される。
【0006】
当分野ではまた、止血剤(例えば、トロンビンなど)を組み込む非繊維性のポリマーフィルムまたは被覆剤も知られている。例えば、米国特許出願公開第2007/0059346号には、ニトログリセリンと、場合により、他の治療剤とを含有するフィルムが開示され、この場合、フィルムは、患者の口の中で溶解し得る水溶性ポリマーから構成される。
【0007】
フィブリノーゲンを組み込む止血用創傷手当用品もまた、当分野では知られている。米国特許第7189410号には、裏張り層と、フィブリノーゲンを含有する止血剤成分層とを含む層状のフィブリンシーラント包帯であって、フィブリノーゲンが、包帯が創傷に適用されたときには血餅を生成するように作用する、層状のフィブリンシーラント包帯が開示される。とりわけ米国特許第6054122号を含む一連の特許には、閉塞性裏張りと、裏張りの創傷面側表面における接着剤層と、乾燥状態の止血性材料(フィブリノーゲン、トロンビン、ならびに、必要に応じてCa2+および/または第XIII因子)の層とを含むフィブリンシーラント包帯が開示される。乾燥状態の材料は接着剤層に粘着しており、しかし、接着剤層には組み込まれておらず、使用時に露出する。米国特許出願公開第2006/0155235号には、柔軟な裏張り要素と、粉末化された止血性物質と、柔軟なフィルム要素とを含む止血用圧迫包帯が開示される。この包帯では、止血性物質は自由粉末として留まる。使用直前に、柔軟なフィルム要素が剥がされ、これにより、粉末が現れ、その後、この粉末が直接に創傷部に置かれる。米国特許出願公開第2012/0070485号には、フィブリンのナノ繊維網目状物を含むパッチが開示される。
【0008】
本発明者らは最近、PCT特許出願公開第2014/017509号(以降、‘509号;これは本明細書によりその全体が参照によって組み込まれる)において、フィブリンシーラントがポリマーフィルムに組み込まれる、フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチを開示している。当分野において知られているものとは対照的に、‘509号において開示される様々なパッチは網目状物成分または織物成分をどのようなものであっても有しておらず、かつ、フィブリンシーラントを、当該パッチを組織に貼り付けるためにだけ使用しており、ただし、組織を密封することがポリマーフィルムによって成し遂げられる。したがって、これらのパッチは、材料における著しい節約、および、使用が著しく容易であることをもたらしている。
【0009】
理想的には、組織接着剤パッチは、密封される組織からの出血または体液の漏出を止めるために十分に長く損なわれないままであろうし、しかし、組織過敏を最小限にするために、その後では迅速に分解または崩壊するであろう。‘509号において開示されるパッチは2週間以上にわたって損なわれないままであり、この期間は、数日程度での分解時間が好ましいと思われるいくつかの用途のために必要であるよりも長い。したがって、‘509号において開示されるパッチの利点を保持し、しかし、より速い分解時間を有する改善された組織接着剤パッチは、長年にわたって求められているものであり、しかし、今までに満たされていないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5631011号
【特許文献2】米国特許第6699844号
【特許文献3】米国特許第6162241号
【特許文献4】米国特許第6056970号
【特許文献5】米国特許第6194005号
【特許文献6】米国特許第6579537号
【特許文献7】米国特許出願公開第2012/0121532号
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0059346号
【特許文献9】米国特許第7189410号
【特許文献10】米国特許第6054122号
【特許文献11】米国特許出願公開第2006/0155235号
【特許文献12】米国特許出願公開第2012/0070485号
【特許文献13】PCT特許出願公開第2014/017509号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明において開示される組織接着剤パッチは、この必要性を満たすために設計される。具体的には、本発明者らは、驚くべきことに、フィルムの半減期を決定する非常に重要なパラメーターが、当該ポリマーフィルムを構成する生体適合性ポリマーの親水性成分対疎水性成分の比率であること、そして、パッチの分解時間がこの比率の影響を受けやすい関数であることを発見した。
【0012】
したがって、フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチであって、生体適合性のポリエチレングリコール−カプロラクトン−ラクチド(PEG−CL−LA)トリブロックコポリマー(PECALA)から構成されるフィルムから作製される裏張りと、生体適合性ポリマー裏張りに組み込まれるフィブリノーゲンシーラントとを含み、フィブリノーゲンシーラントが、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンとを含む、フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチを開示することが、本発明の目的である。本発明の好ましい実施形態において、フィブリノーゲンシーラントは、約2mg/cmのフィブリノーゲンと、10IU/cmのトロンビンとを含む。本発明のより好ましい実施形態において、フィブリノーゲンシーラントは、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンと、CaClとを含む。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、フィブリノーゲンシーラントは、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンと、CaClとからなる。本発明のいくつかの特に好ましい実施形態において、フィブリノーゲンシーラントは、約2mg/cmのフィブリノーゲンと、約10IU/cmのトロンビンと、CaClとからなる。
【0013】
PECALAが、分子量が3000〜3500の間であるPEGと、34:2のCL:LA比とを含む、上記のいずれかにおいて定義されるようなフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチを開示することが、本発明のさらなる目的である。
【0014】
PECALAを特徴づける少なくとも1つのパラメーターが、パッチに所定の分解時間を与えるように選択される、上記のいずれかにおいて定義されるようなフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチを開示することが、本発明のさらなる目的である。本発明のいくつかの実施形態において、少なくとも1つのパラメーターが、PEGの分子量、親水性成分対疎水性成分の比率、CL:LA比、および結晶化度からなる群から選択される。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、所定の分解時間は最大でも2週間である。本発明のいくつかの特に好ましい実施形態において、所定の分解時間は10日〜14日の間である。
【0015】
厚さが130nm〜170nmの間であることを特徴とする、上記のいずれかにおいて定義されるようなフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチを開示することが、本発明のさらなる目的である。
【0016】
フィブリノーゲンシーラントがさらに、少なくとも1つの添加剤を含む、上記のいずれかにおいて定義されるようなフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチを開示することが、本発明のさらなる目的である。本発明のいくつかの実施形態において、添加剤が、フィルムの接着半減期を延ばすための添加剤、医薬活性な薬剤、および鎮痛剤からなる群から選択される。本発明のいくつかの実施形態において、添加剤は、フィルムの接着半減期を延ばすためのプラスミン阻害剤である。本発明のいくつかの実施形態において、添加剤は、標的化放出または制御放出のための医薬活性な薬剤である。
【0017】
フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチを製造するための方法であって、ポリマーフィルムをPECALAから流し込み成形し、それにより、厚さによって特徴づけられるポリマーフィルムを作製すること、ポリマーフィルムを軟化させること、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンとを含むフィブリノーゲンシーラントをポリマーフィルムの少なくとも1つの表面に配置すること、および、ポリマーフィルムを、フィブリノーゲンシーラントの少なくとも一部がポリマーフィルムの表面に組み込まれるまで押しつけることを含む方法を開示することが、本発明のさらなる目的である。
【0018】
フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチを調製するための方法であって、真空の供給源とつながっている作業面を所定の温度に加熱すること、真空を作業面に加えること、PECALAの溶液を作業面に適用すること、ポリマーブレードを作業面の上方の所定の高さに調節すること、PECALAの溶液を、ポリマーブレードで作業面を覆って広げること、溶媒を蒸発させ、それにより、厚さによって特徴づけられる非透過性の生体適合性ポリマーフィルムを作製すること、作業面を、軟化温度を超えて加熱すること、フィブリノーゲンシーラントを含む粉末を、ポリマーフィルムを覆って散布すること(ただし、フィブリノーゲンシーラントは、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンとを含む)、ポリマーフィルムを覆って、粉末およびポリマーフィルムを覆う上部剥離シートを配置すること、圧力を上部剥離シートに加え、その結果、少なくとも部分的に粉末をポリマーフィルムの中に組み込むようにし、それにより、接着剤パッチ材のフィルムを形成すること、上部剥離シートを接着剤パッチ材のフィルムから除くこと、真空を開放すること、作業面を室温に冷却すること、および、接着剤パッチ材を作業面から取り除くことを含む方法を開示することが、本発明のさらなる目的である。
【0019】
フィブリノーゲンシーラントが、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンと、CaClとを含む、上記のいずれかにおいて定義されるような方法を開示することが、本発明のさらなる目的である。
【0020】
厚さが130nm〜170nmの間である、上記のいずれかにおいて定義されるような方法を開示することが、本発明のさらなる目的である。
【0021】
身体部分の中への流体の漏出、または身体部分からの流体の漏出を処置する方法であって、上記のいずれかにおいて定義されるような組織接着剤パッチを身体部分に適用し、それにより、組織接着剤パッチが身体部分に接着することを生じさせ、それにより、身体部分を密封することを含む方法を開示することが、本発明のさらなる目的である。本方法のいくつかの実施形態において、身体部分は動脈または器官である。本発明のいくつかの実施形態において、流体の漏出は、動脈出血、器官組織出血、胆汁吻合、脳脊髄液漏出、硬膜漏出、および、損傷した肺組織における空気漏出からなる群から選択される。本方法のいくつかの実施形態において、組織接着剤パッチを適用する工程は、パッチを身体部分の表面に手で押しつけることを含む。
【0022】
身体部分の中への流体の漏出、または身体部分からの流体の漏出を処置することにおける、上記のいずれかにおいて定義されるような組織接着剤パッチの使用を開示することが、本発明のさらなる目的である。本発明のいくつかの実施形態において、上記のいずれかにおいて定義されるような組織接着剤パッチは、動脈もしくは器官の中への流体の漏出、または、動脈もしくは器官からの流体の漏出を処置することにおいて使用される。本発明のいくつかの実施形態において、流体の漏出は、動脈出血、器官組織出血、胆汁吻合、脳脊髄液漏出、硬膜漏出、および、損傷した肺組織における空気漏出からなる群から選択される。本発明のいくつかの好ましい実施形態において、処置は、組織接着剤パッチを、パッチを身体部分の表面に手で押しつけることによって適用することを含む。
【0023】
次に、本発明が、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のパッチの不良態様が、当分野において知られているパッチの不良態様と対比される。
図2】本発明のパッチの接着強度をフィブリンシーラントの濃度の関数として例示するグラフを示す。
図3】ポリマーフィルムの異なる配合物を用いて作製される本発明のパッチの分解時間を例示するグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
下記の説明では、本発明の様々な局面が記載されるであろう。説明のために、具体的な詳細が、本発明の完全な理解を提供するために示される。本発明の本質的性質に影響を及ぼすことなく細部において異なる本発明の他の実施形態が存在することが、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、図面において例示され、また、明細書において記載されるものによって限定されるのではなく、添付された請求項において示されている通りであるにすぎず、ただし、適正な範囲は請求項の最も広い解釈によって決定される。
【0026】
下記の略語が本出願の全体にわたって使用される。
【0027】
「PEG」は、ポリエチレングリコールを示すために使用される。
【0028】
「CL」は、カプロラクトンを示すために使用される。
【0029】
「LA」は、ラクチドを示すために使用される。
【0030】
「PECALA」は、ポリエチレングリコール(PEG)成分、カプロラクトン(CL)成分およびラクチド(LA)成分を含むトリブロックコポリマーを使用するために使用される。用語PECALAに2つの数字が続くとき、最初の数字は親水性(PEG)繰り返しユニット対疎水性(CLおよびLA)繰り返しユニットの比率を示しており、2番目の数字はトリブロック側面あたりのラクチドユニットの数を示している。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「約」は、数量に適用されるとき、名目値の±25%の範囲を示す。
【0032】
本明細書中で使用される場合、組織に付着させられるポリマーフィルムまたは止血用パッチに関して、用語「分解する」および用語「分解」は、当該ポリマーフィルムまたは止血用パッチがより小さな部分に壊れることを示す。
【0033】
‘509号において、本発明者らは、ポリマーフィルムを組織に付着させるように作用するフィブリノーゲン成分を含有し、かつ、フィブリノーゲン成分ではなく、むしろ、ポリマーフィルム自体が、組織を密封するように作用する様々な止血用パッチを開示した。当分野において知られている止血用のパッチおよび手当用品とは対照的に、これらのパッチは、網目状物成分または織物成分、織布または不織布、あるいは、製紙技術において知られている技術によって作製される材料を含んでいない。むしろ、これらのパッチは、当分野において知られている多層の止血用手当用品とは対照的に、フィブリノーゲンおよびトロンビンが組み込まれるポリマーフィルムのただ1つの層を含む(だが、さらなる層が取り扱いまたは貯蔵の容易さのために加えられる実施形態は、本発明の範囲から除外されない)。さらに、フィブリノーゲンシーラント成分が、ただ1つの一体化されたユニットを形成するためにポリマーフィルムに物理的に組み込まれており、このことは、血液凝固剤が自由粉末として存在する当分野において知られているそのような止血用のパッチおよび手当用品とは対照的である。
【0034】
‘509号において開示されるパッチは一般には、当該パッチが組織に貼り付けられた後、数週間の期間にわたってその機械的完全性を保持する。しかしながら、いくつかの用途のために、パッチは理想的には、より速い時間スケールで分解するであろう。例えば、出血の場合には、パッチは、数日以上にわたって所定位置に留まる必要はないかもしれない。理想的には、パッチは、必要な処置を完了するためにちょうど十分に長くその機械的完全性を保持するであろうし、また、その後、当該パッチと患者の身体との間における好ましくない相互作用の可能性を最小限にするために、その後では数日以内に分解するであろう。
【0035】
本発明者らは、驚くべきことに、PECALAに基づくパッチについて、いくつかのパラメーターが、所望の分解時間を設定するために変更され得ること、および、分解時間が2週間程度であるパッチが容易に製造され得ることを発見した。1つの重要なパラメーターが、トリブロックコポリマーの成分の比率(例えば、CL:LA比、または、疎水性成分対親水性成分の比率)である。一般には、PEGユニットあたりのCLユニットが多いほど、分解時間が長くなり、一方、PEGユニットあたりのCAユニットが多いほど、分解時間が短くなる(下記の実施例を参照のこと)。分解時間はまた、ポリマーの結晶化度によっても明らかに制御される;理論によってとらわれることを望まないが、少量のLAにより、CLが結晶化することが妨げられ、しかし、LAの割合が高すぎると、LA自体が結晶化することになり、このことは分解時間を変化させるようである。使用されるPEGの分子量もまた、分解時間に影響を及ぼし得る。したがって、PECALAの成分の相対量を適切に制御することによって、分解時間を所望の長さに微調整することが可能である。
【0036】
本発明の典型的な実施形態は、3000〜3500の間でのMWのPEGと、34:2のCL:LA比(すなわち、PEGあたり4個のLAユニットおよび68個のCLユニット)を含むPECALAフィルムであって、フィブリノーゲン(8mg/cm以下、好ましくは約2mg/cm)およびトロンビン(20IU/cm以下、好ましくは約10mg/cm)を含むフィブリノーゲンシーラントが組み込まれているPECALAフィルムを含む。好ましい実施形態において、フィブリノーゲンシーラントはまた、CaClを含む。フィブリノーゲンシーラントはまた、様々な添加剤を含む場合があり、例えば、フィルムの接着半減期を延ばすための添加剤、医薬活性な薬剤、および鎮痛剤などを含む場合がある。
【0037】
いくつかの実施形態において、パッチの厚さが約200μmである。好ましい実施形態において、パッチは約1桁薄い(典型的には130nm〜170nm)。
【0038】
上記パッチは、当分野において知られているどのような方法に従ってでも調製される場合がある。例えば、上記パッチは、‘509号において開示される方法によって調製することができる。この方法では、PECALAフィルムが、揮発性有機溶媒におけるPECALAの溶液から所与の表面(例えば、ガラススライドなど)の上で流し込み成形される。その後、フィルムはその軟化点に加熱され、フィブリノーゲン、トロンビンおよびCaClを含有する粉末化されたフィブリンシーラント混合物が軟化させたポリマーフィルムの表面に散布される。典型的な実施形態において、フィブリンシーラント混合物は25nm〜75nmの粒子サイズに微粉化されている。その後、シーラント混合物は軟化させたポリマーフィルムの表面に押しつけられ、室温に冷却される。その後、フィルムは必要に応じて、当該フィルムが調製された表面から当該フィルムを取り除くことを助けるために、冷凍庫(典型的には約−20℃での冷凍庫)に入れられる。余分な粉末が振とうによってパッチから除かれ、その後、パッチが、当該パッチが調製された表面から取り除かれる。
【0039】
本発明者らは近年、上記パッチを製造するための第2のプロセスを開発している。この方法では、特別に変更されたドローダウンコーターが使用され、下記の工程が含まれる:(a)真空の供給源とつながっている作業面を所定の温度に加熱する工程、(b)真空を作業面に加える工程、(c)溶液を作業面に適用する工程(ただし、溶液は、溶媒に溶解される、軟化温度によって特徴づけられる生体適合性ポリマーを含む)、(d)ポリマーブレードを作業面の上方の所定の高さに調節する工程、(e)溶液を、ポリマーブレードで作業面を覆って広げる工程、(f)溶媒を蒸発させ、それにより、非透過性の生体適合性ポリマーフィルムを作製する工程、(g)作業面を、軟化温度を超えて加熱する工程、(h)フィブリノーゲンシーラントを含む粉末を、ポリマーフィルムを覆って散布する工程、(i)ポリマーフィルムを覆って、粉末およびポリマーフィルムを覆う上部剥離シートを配置する工程、(j)圧力を上部剥離シートに加え、その結果、少なくとも部分的に粉末をポリマーフィルムの中に組み込むようにし、それにより、接着剤パッチ材のフィルムを形成する工程、(k)上部剥離シートを接着剤パッチ材のフィルムから除く工程、(l)真空を開放する工程、(m)作業面を室温に冷却する工程、および、(n)接着剤パッチ材を作業面から取り除く工程。
【0040】
上記パッチの典型的な実施形態において、約5N〜7Nの力が、当該パッチを組織から剥がすために必要とされる。次に、図1が参照される。図1には、本発明のパッチの不良態様が例示される。図1Aは、当分野において知られているタイプの、フィブリンが埋め込まれた網目状物を例示する。剥離力が加えられたとき、網目状物が組織から剥がされ、フィブリンの残留物のみが網目状物の上に残り、組織断片の証拠が網目状物の表面に何ら認められない。この挙動は、当分野において知られている止血用パッチが凝集破壊を受けること、すなわち、接着剤自体がその構造的完全性を失い、断片化し、壊れることを示している。
【0041】
対照的に、図1Bに示されるように、剥離力が本発明のパッチに加えられたときには、組織の断片がフィルム上に留まることを伴って、フィルムが剥離する。このことは、接着剤ではなく、むしろ、組織自体が機械的不具合を受けたことを示している。すなわち、当分野において知られている止血用パッチとは対照的に、本発明のパッチは接着破壊を接着剤と下地との間での境界に沿って受ける。したがって、本発明は、密封能に対する主な寄与が、フィブリンのかなり弱い内部強度ではなく、むしろ、ポリマーフィルムの接着強度から生じるパッチを含む。
【0042】
次に、図2が参照される。図2には、本発明のパッチの接着強度をフィブリンシーラントの濃度の関数として示すグラフが示される。図から理解され得るように、接着強度が本質的には、存在するフィブリンの量とは無関係である。したがって、本発明のパッチは、当分野において知られているパッチで使用されるよりも有意に少ないフィブリンシーラントを用いて効果的である。本発明の好ましい実施形態において、フィブリンシーラントは、約2mg/cmのフィブリンと、10IU/cmのトロンビンとを含む。
【実施例】
【0043】
下記の実施例は、当業者が本発明を行うこと、および使用することを助けるために本発明の好ましい実施形態の例示を提供しており、いかなる点においても限定であるようには意図されない。
【0044】
本発明の一連の止血用パッチを、異なるPECALA配合物を用いて調製した。PECALAを標準的な文献手順に従って調製した。パッチの分解時間を、少なくとも5つの独立したサンプルについて測定した。実験の結果が表1にまとめられ、図3にグラフにより例示される。
【表1】
【0045】
表において、CL:LA比はPEGユニットの数に対して示される。すなわち、n:mのCL:LA比は、ポリマーにおけるそれぞれのPEGユニットについて、2n個のCLユニットと、2m個のLAユニットとが存在したことを示している。
【0046】
表から理解され得るように、一般に、分解時間は、PEGの分子量が増大するにつれて、CL:LA比が低下するにつれて、PEGユニットあたりのCLユニットが増大するにつれて、また、PEGユニットあたりのLAユニットが減少するにつれて減少する傾向があった。分解時間がその上、ポリマーの結晶化度の関数でもあるように見えるので、これらの一般則は、ある範囲内でのみ有効である。例えば、LAユニットあたりのCLユニットの数を増大させると、ポリマーの結晶化度が増大することになるであろう。
本発明に包含され得る諸態様は、以下のとおり要約される。
[態様1]
フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチであって、
生体適合性のポリエチレングリコール−カプロラクトン−ラクチド(PEG−CL−LA)トリブロックコポリマー(PECALA)から構成されるフィルムから作製される裏張り、および
前記生体適合性ポリマー裏張りに組み込まれるフィブリノーゲンシーラント
を含み、
前記フィブリノーゲンシーラントが、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンとを含む、フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
[態様2]
前記フィブリノーゲンシーラントが、約2mg/cmのフィブリノーゲンと、10IU/cmのトロンビンとを含む、上記態様1に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
[態様3]
前記フィブリノーゲンシーラントが、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンと、CaClとを含む、上記態様1に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
[態様4]
前記フィブリノーゲンシーラントが、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンと、CaClとからなる、上記態様1に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
[態様5]
前記フィブリノーゲンシーラントが、約2mg/cmのフィブリノーゲンと、約10IU/cmのトロンビンと、CaClとからなる、上記態様4に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
[態様6]
前記PECALAが、分子量が3000〜3500の間であるPEGと、34:2のCL:LA比とを含む、上記態様1〜5のいずれか一項に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤剤パッチ。
[態様7]
前記PECALAを特徴づける少なくとも1つのパラメーターが、前記パッチに所定の分解時間を提供するように選択される、上記態様1〜5のいずれか一項に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
[態様8]
前記少なくとも1つのパラメーターが、PEGの分子量、親水性成分対疎水性成分の比率、CL:LA比、および結晶化度からなる群から選択される、上記態様7に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
[態様9]
前記所定の分解時間が最大でも2週間である、上記態様7に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
[態様10]
前記所定の分解時間が10日〜14日の間である、上記態様7に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
[態様11]
130nm〜170nmの間の厚さによって特徴づけられる、上記態様1〜5のいずれか一項に記載のフィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチ。
[態様12]
前記フィブリノーゲンシーラントがさらに、少なくとも1つの添加剤を含む、上記態様1〜5のいずれか一項に記載の組織接着剤パッチ。
[態様13]
前記添加剤が、前記フィルムの接着半減期を延ばすための添加剤、医薬活性な薬剤、および鎮痛剤からなる群から選択される、上記態様12に記載の組織接着剤パッチ。
[態様14]
前記添加剤が、前記フィルムの接着半減期を延ばすためのプラスミン阻害剤である、上記態様13に記載の組織接着剤パッチ。
[態様15]
前記添加剤が、標的化放出または制御放出のための医薬活性な薬剤である、上記態様13に記載の組織接着剤パッチ。
[態様16]
フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチを製造するための方法であって、
ポリマーフィルムをPECALAから流し込み成形し、それにより、厚さによって特徴づけられるポリマーフィルムを作製すること、
前記ポリマーフィルムを軟化させること、
8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンとを含むフィブリノーゲンシーラントを前記ポリマーフィルムの少なくとも1つの表面に配置すること、および
前記ポリマーフィルムを、前記フィブリノーゲンシーラントの少なくとも一部が前記ポリマーフィルムの前記表面に組み込まれるまで押しつけること
を含む方法。
[態様17]
フィブリノーゲンに基づく組織接着剤パッチを調製するための方法であって、
真空の供給源とつながっている作業面を所定の温度に加熱すること、
前記真空を前記作業面に加えること、
PECALAの溶液を前記作業面に適用すること、
ポリマーブレードを前記作業面の上方の所定の高さに調節すること、
PECALAの前記溶液を、前記ポリマーブレードで前記作業面を覆って広げること、
前記溶媒を蒸発させ、それにより、厚さによって特徴づけられる非透過性の生体適合性ポリマーフィルムを作製すること、
前記作業面を、前記軟化温度を超えて加熱すること、
フィブリノーゲンシーラントを含む粉末を、前記ポリマーフィルムを覆って散布すること(ただし、前記フィブリノーゲンシーラントは、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンとを含む)、
前記ポリマーフィルムを覆って、前記粉末およびポリマーフィルムを覆う上部剥離シートを配置すること、
圧力を前記上部剥離シートに加え、その結果、少なくとも部分的に前記粉末を前記ポリマーフィルムの中に組み込むようにし、それにより、接着剤パッチ材のフィルムを形成すること、
前記上部剥離シートを接着剤パッチ材の前記フィルムから除くこと、
前記真空を開放すること、
前記作業面を室温に冷却すること、および
前記接着剤パッチ材を前記作業面から取り除くこと
を含む方法。
[態様18]
前記フィブリノーゲンシーラントが、8mg/cm未満のフィブリノーゲンと、20IU/cm未満のトロンビンと、CaClとを含む、上記態様16または17のどちらか一項に記載の方法。
[態様19]
前記厚さが130nm〜170nmの間である、上記態様16または17のどちらか一項に記載の方法。
[態様20]
身体部分の中への流体の漏出、または身体部分からの流体の漏出を処置することにおける、上記態様1〜5のいずれか一項に記載される組織接着剤パッチの使用。
[態様21]
前記身体部分が動脈または器官である、上記態様20に記載の使用。
[態様22]
流体の前記漏出が、動脈出血、器官組織出血、胆汁吻合、脳脊髄液漏出、硬膜漏出、および、損傷した肺組織における空気漏出からなる群から選択される、上記態様20に記載の使用。
[態様23]
前記処置が、組織接着剤パッチを、前記パッチを前記身体部分の表面に手で押しつけることによって適用することを含む、上記態様20に記載の使用。
図1A
図1B
図2
図3