(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0008】
本発明の一実施形態では、CO
x還元リアクタで使用するための膜電極アセンブリ(MEA)が提供される。MEAは、還元触媒および第1のイオン伝導性ポリマーを含むカソード層と、酸化触媒および第2のイオン伝導性ポリマーを含むアノード層とを備える。アノード層とカソード層との間に第3のイオン伝導性ポリマーを含む高分子電解質膜が存在する。高分子電解質膜は、アノード層とカソード層との間のイオン伝達を提供する。また、カソード層と高分子電解質膜との間に第4のイオン伝導性ポリマーであるカソード緩衝剤を含むカソード緩衝層が存在する。イオン伝導性ポリマーには、アニオン伝導体、カチオン伝導体、カチオンおよびアニオン伝導体の3つのクラスがある。第1、第2、第3および第4のイオン伝導性ポリマーのうちの少なくとも二つは、異なるクラスのイオン伝導性ポリマーからのものである。
【0009】
一構成では、還元触媒が、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Sn、Zr、Nb、Mo、Au、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、Hg、Al、Si、In、Ga、Tl、Pb、Bi、Sb、Te、Sm、Tb、CeおよびNd、並びに、それらの組合せ、および/または他の任意の適切な還元触媒からなる群のなかから選択される。還元触媒は、炭素、ホウ素ドープダイヤモンド、フッ素ドープ酸化スズおよびそれらの組合せ、および/または他の任意の適切な還元触媒からなる群のなかから選択される伝導性担体粒子をさらに含むことができる。
【0010】
一構成では、カソード層が、10〜90重量%の第1のイオン伝導性ポリマーを含む。第1のイオン伝導性ポリマーは、アニオン伝導体である少なくとも1のイオン伝導性ポリマーを含むことができる。
【0011】
第1のイオン伝導性ポリマーは、負に荷電した可動イオンを輸送するように構成された1または複数の共有結合した正に荷電した官能基を含むことができる。第1のイオン伝導性ポリマーは、アミノ化テトラメチルポリフェニレン、ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)ベースの第4級アンモニウムポリマー、四級化ポリスルホン)、それらの混合物、および/または他の任意の適切なイオン伝導性ポリマーからなる群のなかから選択することができる。第1のイオン伝導性ポリマーは、重炭酸塩または水酸化物塩を可溶化するように構成することができる。
【0012】
第1のイオン伝導性ポリマーは、カチオンおよびアニオン伝導体である少なくとも1のイオン伝導性ポリマーを含むことができる。第1のイオン伝導性ポリマーは、カチオンおよびアニオンを輸送することができるポリエーテルと、カチオンおよびアニオンを輸送することができるポリエステルとから構成される群のなかから選択することができる。第1のイオン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリフッ化ビニリデンおよびポリウレタンからなる群のなかから選択することができる。
【0013】
一構成では、酸化触媒が、Ir、Pt、Ni、Ru、Pd、Auの金属および酸化物、並びにそれらの合金、IrRu、PtIr、Ni、NiFe、ステンレス鋼、およびそれらの組合せ、および/または他の任意の適切な金属または金属酸化物からなる群のなかから選択される。酸化触媒は、炭素、ホウ素ドープダイヤモンドおよびチタンからなる群のなかから選択される伝導性担体粒子をさらに含むことができる。
【0014】
一構成では、アノード層が、5〜95重量%の第2のイオン伝導性ポリマーを含む。第2のイオン伝導性ポリマーは、カチオン伝導体である少なくとも1のイオン伝導性ポリマーを含むことができる。
【0015】
第2のイオン伝導性ポリマーは、正に荷電した可動イオンを輸送するように構成された共有結合した負に荷電した官能基を含む1または複数のポリマーを含むことができる。第2のイオン伝導性ポリマーは、フッ化エタンスルホニル、2−[1−[ジフルオロ−[(トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]−1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ]−1,1,2,2,−テトラフルオロ−、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ−3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホン酸コポリマー、他のパーフルオロスルホン酸ポリマー、それらの混合物、および/または他の任意の適切なイオン伝導性ポリマーからなる群のなかから選択することができる。
【0016】
一構成では、第3のイオン伝導性ポリマーは、カチオン伝導体である少なくとも1のイオン伝導性ポリマーを含む。第3のイオン伝導性ポリマーは、正に荷電した可動イオンを輸送するように構成された1または複数の共有結合した負に荷電した官能基を含むことができる。第3のイオン伝導性ポリマーは、フッ化エタンスルホニル、2−[1−[ジフルオロ−[(トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]−1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ]−1,1,2,2,−テトラフルオロ−、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ−3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホン酸コポリマー、他のパーフルオロスルホン酸ポリマー、それらの混合物、および/または他の任意の適切なイオン伝導性ポリマーからなる群のなかから選択することができる。
【0017】
一構成では、カソード緩衝層が、0.01%〜95%(例えば、重量%、体積%、質量%などで、おおよそそれらの間)の気孔率を有する。しかしながら、他の構成では、カソード緩衝層が、任意の適切な気孔率(例えば、0.01〜95%、0.1〜95%、0.01〜75%、1〜95%、1〜90%など)を有することができる。
【0018】
一構成では、第4のイオン伝導性ポリマーが、アニオン伝導体である少なくとも1のイオン伝導性ポリマーを含む。第4のイオン伝導性ポリマーは、負に荷電した可動イオンを輸送するように構成された1または複数の共有結合した正に荷電した官能基を含むことができる。第4のイオン伝導性ポリマーは、アミノ化テトラメチルポリフェニレン、ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)ベースの第4級アンモニウムポリマー、四級化ポリスルホン、それらの混合物、および/または他の任意の適切なイオン伝導性ポリマーからなる群のなかから選択することができる。
【0019】
一構成では、第1のイオン伝導性ポリマーおよび第4のイオン伝導性ポリマーが、同じクラスからのものである。一構成では、第2のイオン伝導性ポリマーおよび第3のイオン伝導性ポリマーが、同じクラスからのものである。
【0020】
一構成では、膜電極アセンブリが、アノード層と高分子電解質膜との間にアノード緩衝層をさらに含み、アノード緩衝層が、第5のイオン伝導性ポリマーを含む。
【0021】
膜電極アセンブリにおいて、第5のイオン伝導性ポリマーが、カチオン伝導体である少なくとも1のイオン伝導性ポリマーを含む。第5のイオン伝導性ポリマーは、正に荷電した可動イオンを輸送するように構成された1または複数の共有結合した負に荷電した官能基を含むことができる。
【0022】
第5のイオン伝導性ポリマーは、フッ化エタンスルホニル、2−[1−[ジフルオロ−[(トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]−1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ]−1,1,2,2,−テトラフルオロ−、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ−3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホン酸コポリマー、他のパーフルオロスルホン酸ポリマー、それらの混合物、および/または他の任意の適切なイオン伝導性ポリマーからなる群のなかから選択することができる。第2のイオン伝導性ポリマーおよび第5のイオン伝導性ポリマーは、同じクラスからのものであってもよい。
【0023】
一構成では、アノード緩衝層が、0.01%〜95%(例えば、重量%、体積%、質量%などで、おおよそそれらの間)の気孔率を有する。しかしながら、他の構成では、アノード緩衝層が、任意の適切な気孔率(例えば、0.01〜95%、0.1〜95%、0.01〜75%、1〜95%、1〜90%など)を有することができる。
【0024】
本発明の別の実施形態では、CO
x還元リアクタで使用するための膜電極アセンブリ(MEA)が提供される。MEAは、還元触媒および第1のイオン伝導性ポリマーを含むカソード層と、酸化触媒および第2のイオン伝導性ポリマーを含むアノード層とを有する。アノード層とカソード層との間には高分子電解質膜が存在する。高分子電解質膜は、第3のイオン伝導性ポリマーを含み、アノード層とカソード層との間のイオン伝達を提供する。イオン伝導性ポリマーには、アニオン伝導体、カチオン伝導体、およびカチオンおよびアニオン伝導体の3つのクラスがある。第1、第2および第3のイオン伝導性ポリマーのうちの少なくとも2つは、異なるクラスのイオン伝導性ポリマーからのものである。
【0025】
本発明の別の実施形態では、CO
x還元リアクタが提供される。リアクタは、本明細書に記載の膜電極アセンブリの何れかを含む少なくとも1の電気化学セルを有する。また、リアクタは、カソードに隣接するカソード支持構造を有し、カソード支持構造が、カソード極板と、少なくとも1のカソードガス拡散層と、少なくとも1の入口と、少なくとも1の出口とを含む。アノードに隣接するアノードセル支持構造も存在する。アノード支持構造は、アノード極板と、少なくとも1のアノードガス拡散層と、少なくとも1の入口と、少なくとも1の出口とを備える。
本発明のさらに別の実施形態では、CO
x還元リアクタを操作する方法が提供される。この方法は、反応生成物の生成をもたらす。このプロセスは、電気化学リアクタを提供するステップであって、電気化学リアクタが、膜電極アセンブリを含む少なくとも1の電気化学セルと、カソード極板、少なくとも1のカソードガス拡散層、少なくとも1の入口および少なくとも1の出口を含み、カソードに隣接するカソード支持構造と、アノード極板、少なくとも1のアノードガス拡散層、少なくとも1の入口および少なくとも1の出口を含み、アノードに隣接するアノードセル支持構造とを備える、ステップと;カソード極板およびアノード極板に直流電圧を印加するステップと;1または複数の酸化反応物をアノードに供給し、酸化反応を起こさせるステップと;1または複数の還元反応物をカソードに供給し、還元反応を起こさせるステップと;アノードから酸化反応生成物を回収するステップと;カソードから還元反応生成物を回収するステップとを含むことができる。
【0026】
酸化反応物は、水素、メタン、アンモニア、水またはそれらの組合せ、および/または他の任意の適切な酸化反応物からなる群のなかから選択することができる。一構成では、酸化反応物が水である。
【0027】
還元反応物は、二酸化炭素、一酸化炭素およびそれらの組合せ、および/または他の任意の適切な、および/または他の任意の適切な還元反応物からなる群のなかから選択することができる。一構成では、還元反応物が二酸化炭素である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
好ましい実施形態は、CO
x(CO
2、COまたはそれらの組合せ)を還元して有用な化学物質および燃料を生成するという文脈で例示されている。しかしながら、当業者であれば、本明細書中に開示の材料および方法は、還元反応が望ましい多くの他の状況、特に、様々な反応条件において様々な化学物質を生成することが重要である多くの他の状況において、適用されることを容易に理解するであろう。CO
xを還元するために使用されるリアクタは、他の化合物を還元するために使用することもでき、そのような他の化合物は、N
2、SO
x、NO
x、酢酸、エチレン、O
2および他の任意の適切な還元可能な化合物またはそれらの組合せを含むが、それらに限定されるものではない。
【0030】
本明細書で言及された全ての刊行物は、本明細書に完全に記載されているかのように、すべての目的のためにその全体が引用により援用される。
【0031】
表1に、本出願全体で使用されるいくつかの略語を列挙する。
【0032】
「イオン伝導性ポリマー」という用語は、本明細書では、アニオンおよび/またはカチオンについて約1mS/cmよりも大きい比導電率を有する高分子電解質を説明するために使用される。「アニオン伝導体」という用語は、(僅かなカチオン伝導量が依然として存在するが)アニオンを主に伝導する約100ミクロンの厚さで約0.85を超えるアニオンの輸率を有するイオン伝導性ポリマーを指している。「カチオン伝導体」および/または「カチオン伝導性ポリマー」という用語は、カチオンを主に伝導し(例えば、付随的な量のアニオン伝導が依然として存在し)、約100ミクロンの厚さで約0.85を超えるカチオンの輸率を有するイオン伝導性ポリマーを指している。アニオンおよびカチオンをともに伝導すると記載されているイオン伝導性ポリマー(「カチオンおよびアニオン伝導体」)の場合、アニオンもカチオンも、約100ミクロンの厚さで、約0.85を上回る輸率または約0.15を下回る輸率を有していない。物質がイオン(アニオンおよび/またはカチオン)を伝導すると言うのは、物質がイオン伝導性物質であると言うことである。
【0033】
水和は、大部分のイオン伝導性ポリマーのイオン伝導に効果的である。CO
xまたはアノード供給物質の加湿は、液体水をMEAに供給してイオン伝導性ポリマーの水和を維持するために使用することができる。
【0034】
本発明の一実施形態では、新規な膜電極アセンブリを電気化学セルに使用するCO
x還元リアクタ(CRR)が開発されている。表2は、そのようなリアクタ中でCO
xから生成することができる有用な化学物質のいくつかの例を列挙している。
【0035】
膜電極アセンブリ
水素および酸素を生成する水電解に使用される従来の膜電極アセンブリ(MEA)100を
図1に示す。MEA100は、イオン伝導性ポリマー層160によって分離されたカソード120およびアノード140を備え、イオン伝導性ポリマー層が、イオンがカソード120とアノード140との間を移動するための経路を与えている。カソード120とアノード140はそれぞれ、イオン伝導性ポリマー、触媒粒子および電子伝導性触媒担体を含む。カソード120、アノード140およびイオン伝導性ポリマー層160中のイオン伝導性ポリマーは、すべてがカチオン伝導体であるか、またはすべてがアニオン伝導体である。
【0036】
従来のMEA100は、CRRでの使用には適していない。すべてのイオン伝導性ポリマーがカチオン伝導体である場合、環境が水還元に有利であり、望ましくない副反応で水素を生成する。水素の生成は、CO
x生成物の生成速度を低下させ、プロセスの全体的な効率を低下させる。すべてのイオン伝導性ポリマーがアニオン伝導体である場合には、CO
2はイオン伝導性ポリマー中の水酸化物アニオンと反応して、重炭酸アニオンを形成する。リアクタ内の電場は、重炭酸アニオンを、セルのカソード側からセルのアノード側へと移動させる。アノードでは、重炭酸アニオンがCO
2と水酸化物に再び分解し得る。この結果、セルのカソードからアノードへのCO
2の正味の移動が起こり、そこではそれは反応せず、アノード反応物および生成物によって希釈される。セルのアノード側にCO
2が失われることにより、プロセスの効率が低下する。
【0037】
本発明の一実施形態に係る、CRRで使用するための新規な膜電極アセンブリ(MEA)200を
図2に示す。MEA200は、イオン伝導性ポリマー層260によって分離されたカソード220およびアノード240を有し、イオン伝導性ポリマー層が、カソード220とアノード240との間を移動するイオンの経路を提供する。気体および流体の輸送を容易にし、反応に利用可能な触媒表面積を最大化するためには、一般に、MEAのカソード層およびアノード層が多孔質であることが特に有用である。
【0038】
カソード220は、還元触媒粒子と、還元触媒粒子を支持する電子伝導性担体粒子と、カソードイオン伝導性ポリマーとの混合物を含む。カソードにおけるカソードイオン伝導性ポリマーの量の選択にはトレードオフが存在する。十分なイオン伝導性を提供するには、十分なカソードイオン伝導性ポリマーを含むことが重要である。しかしながら、反応物および生成物がカソード中を容易に移動し、反応に利用可能な触媒表面積を最大にすることができるように、カソードが多孔質であることも重要である。様々な構成では、カソードイオン伝導性ポリマーが、カソード層中の材料の30〜70重量%、20〜80重量%、または10〜90重量%の何れかの範囲または他の適切な範囲で構成される。カソード中のイオン伝導性ポリマーの重量%は、カソード層の気孔率およびイオン伝導率がCO
x還元のために最も高い電流密度をもたらすように選択される。還元触媒粒子に使用できる材料の例には、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Au、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Ir、PtおよびHgのような遷移金属およびそれらの組合せ、および/または他の任意の適切な材料が含まれるが、それらに限定されるものではない。他の触媒材料には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド、アクチノイド、およびSn、Si、Ga、Pb、Al、Tl、Sb、Te、Bi、Sm、Tb、Ce、NdおよびInのような周期表において遷移金属の右側の金属、またはそれらの組合せ、および/または他の任意の適切な触媒材料が含まれる。触媒は、約1〜100nmのサイズ範囲のナノ粒子、または約0.2〜10nmのサイズ範囲の粒子、または約1〜1000nmのサイズ範囲の粒子、または他の任意の好適な範囲の粒子の形態であり得る。
【0039】
カソードの伝導性担体粒子は、様々な形態の炭素粒子とすることができる。他の可能な伝導性担体粒子には、ホウ素ドープダイヤモンドまたはフッ素ドープ酸化スズが含まれる。一構成では、伝導性担体粒子がバルカンカーボンである。伝導性担体粒子は、ナノ粒子であってもよい。伝導性担体粒子のサイズ範囲は、約20nm〜1000nmまたは他の任意の適切な範囲である。伝導性担体粒子が、CRRが動作しているときにカソード220に存在する化学物質と適合し、還元的に安定であり、いずれの電気化学反応にも関与しないように高い水素生成過電圧を有することが、特に有用である。
【0040】
そのような伝導性担体粒子は、一般に、還元触媒粒子よりも大きく、各伝導性担体粒子は、多くの還元触媒粒子を担持することができる。
図3は、炭素粒子のような触媒担体粒子310上に担持された2種類の異なる触媒の可能な形態を示す概略図である。第1タイプの触媒粒子330および第2タイプの第2触媒粒子350が、触媒担体粒子310に付着している。様々な構成では、触媒担体粒子310に付着する触媒粒子が1種類のみであるか、または2種類以上である。
【0041】
図2を再び参照すると、アノード240は、酸化触媒とアノードイオン伝導性ポリマーとの混合物を含む。アノード中のイオン伝導性ポリマーの量の選択にはトレードオフがある。十分なイオン伝導性を提供するには、十分なアノードイオン伝導性ポリマーを含むことが重要である。しかしながら、反応物および生成物がアノード中を容易に移動し、反応に利用可能な触媒表面積を最大にすることができるように、アノードが多孔質であることも重要である。様々な構成では、アノード中のイオン伝導性ポリマーが、層の約50重量%を構成するか、または約5〜20重量%、10〜90重量%、20〜80重量%、25〜70重量%または任意の適切な範囲である。アノード240が、可逆的な水素電極に対して約1.2Vを超える電圧のような高電圧に耐えることができることが、特に有用である。反応に利用可能な触媒表面積を最大化し、気体および液体の輸送を容易にするためには、アノード240が多孔質であることが特に有用である。
【0042】
アノードおよびアノード触媒に供給される反応物に応じて、アノードで起こり得る様々な酸化反応が存在する。表3は、アノードで起こり得る酸化反応と、それらの反応を支持するいくつかの例示的な触媒を記載している。酸化触媒は、構造化されたメッシュの形態であってもよく、または粒子の形態であってもよい。酸化触媒が粒子の形態である場合、電子伝導性担体粒子によって粒子を支持することができる。伝導性担体粒子はナノ粒子であってもよい。伝導性担体粒子が、CRRが動作しているときにアノード240に存在する化学物質と適合性があり、それらがいずれの電気化学反応にも関与しないように酸化的に安定であることが、特に有用である。アノードでの電圧および反応物を考慮して伝導性担体粒子を選択することが、特に有用である。いくつかの構成では、伝導性担体粒子がチタンであり、それは高電圧に非常に適している。他の構成では、伝導性担体粒子が炭素であり、それは低電圧で最も有用となる可能性がある。一般に、そのような伝導性担体粒子は酸化触媒粒子よりも大きく、各伝導性担体粒子は多くの酸化触媒粒子を担持することができる。そのような構成の一例は、上述したように、
図3に示されている。一構成では、酸化触媒が酸化ルテニウムイリジウムである。酸化触媒に使用することができる他の材料の例としては、表3に示すものが挙げられるが、それらに限定されるものではない。それらの金属触媒の多くは、特に反応条件下において、酸化物の形態であり得ることを理解されたい。
【0044】
イオン交換層260は、3つの副層、すなわち、カソード緩衝層225、高分子電解質膜(PEM)265、および任意のアノード緩衝層245を含むことができる。イオン交換層のいくつかの層を多孔質とすることができるが、少なくとも1の層を非多孔質とすると、カソードの反応物および生成物がアノードに通過することができず、逆もまた同様となるため、有用である。
【0045】
高分子電解質膜265は、高いイオン伝導性(約1mS/cmよりも高いイオン伝導性)を有し、機械的に安定である。機械的安定性は、高い引張強さ、弾性率、破断伸びおよび引裂抵抗などの様々な方法で証明することができる。多くの市販の膜を高分子電解質膜265に用いることができる。その例には、種々のNafion(登録商標)配合物、GORE−SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA−Tech GmbH)、およびAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0046】
高分子電解質膜265がカチオン伝導体であり、プロトンを伝導しているときに、それはCRRの動作中に高濃度のプロトンを含み、一方で、カソード220は低濃度のプロトンが存在するときに最良に動作することに留意することが重要である。高濃度のプロトンから低濃度のプロトンへと遷移する領域を提供するために、高分子電解質膜265とカソード220との間にカソード緩衝層225を含むことが有用となる場合がある。一構成では、カソード緩衝層225が、カソード220内のイオン伝導性ポリマーと多くの同じ性質を有するイオン伝導性ポリマーである。カソード緩衝層225は、プロトン濃度が高い高分子電解質膜265から、プロトン濃度が低いカソード220までプロトン濃度が遷移する領域を提供する。カソード緩衝層225内では、高分子電解質膜265からのプロトンがカソード220からのアニオンに出会い、それらが互いに中和する。カソード緩衝層225は、高分子電解質膜265からの有害な数のプロトンがカソード220に到達せず、プロトン濃度を上昇させないようにするために役立つ。カソード220のプロトン濃度が高過ぎる場合、CO
xの還元は生じない。高いプロトン濃度は約10〜0.1モルの範囲であると考えられ、低濃度は約0.01モル未満であると考えられる。
【0047】
カソード緩衝層225は、単一のポリマーまたは複数のポリマーを含むことができる。カソード緩衝層225が複数のポリマーを含む場合、複数のポリマーを互いに混合することができ、または隣接する別々の層に配置することができる。カソード緩衝層225に使用できる材料の例には、FumaSep FAA−3、Sustainion(登録商標)、Tokuyamaアニオン交換膜材料、およびポリエチレンオキシド(PEO)などのポリエーテル系ポリマー、それらの混合物、および/または他の任意の適切なイオン伝導性ポリマーまたは材料が含まれるが、それらに限定されるものではない。カソード緩衝層の厚さは、プロトン濃度が低いことにより、CO
x還元活性が十分に高くなるように選択される。この十分さは、カソード緩衝層材料によって、異なることがある。一般に、カソード緩衝層の厚さは、約200nm〜100μm、300nm〜75μm、500nm〜50μm、または任意の適切な範囲である。
【0048】
カソード220、カソード緩衝層225、アノード240およびアノード緩衝層245の一部またはすべての層が多孔質であることが、有用である場合がある。いくつかの構成では、不活性充填剤粒子をそれらの層中のポリマーと組み合わせることによって多孔性が達成される。不活性充填剤粒子として適切な材料には、TiO
2、シリカ、PTFE、ジルコニアおよびアルミナが含まれるが、それらに限定されるものではない。様々な構成では、不活性充填剤粒子のサイズは、5nm〜500μm、10nm〜100μm、または任意の適切なサイズ範囲である。他の構成では、層が形成されるときに特定の処理方法を使用することによって多孔性が達成される。そのような処理方法の一例は、ナノサイズからマイクロサイズのチャネルを層に形成するレーザアブレーションである。レーザアブレーションは、追加的または代替的に、表面下アブレーションによって層の気孔率を達成することができる。表面下アブレーションは、層内のある地点にビームを集束させて、その地点の近傍の層材料を蒸発させることにより、層内に空隙を形成することができる。このプロセスを繰り返すことにより、層全体に空隙を形成することができ、層の気孔率を達成することができる。空隙の体積は、好ましくは、レーザ出力によって決定される(例えば、高いレーザ出力がより大きい空隙体積に対応する)が、追加的または代替的には、ビームの焦点サイズまたは任意の他の適切なレーザパラメータによって決定することができる。別の例は、層を機械的に穿孔して、層を貫通するチャネルを形成するというものである。気孔率は、層内において任意の適切な分布(例えば、均一、層を通じて増加する気孔率勾配、ランダムな気孔率勾配、層を通じて減少する気孔率勾配、周期的な気孔率など)を有することができる。
【0049】
いくつかのCRR反応では、重炭酸塩がカソード220で生成される。カソードからの重炭酸塩の移動を防止するために、カソード220とアノード240との間のどこかに重炭酸塩輸送を阻止するポリマーがあることが、有用である場合がある。重炭酸塩は、それが移動する際にいくらかのCO
2を取り込むことができ、それにより、カソードでの反応に利用可能なCO
2の量を減少させることができる。一構成では、高分子電解質膜265が、重炭酸塩輸送を阻止するポリマーを含む。そのようなポリマーの例には、Nafion(登録商標)配合物、GORE−SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA−Tech GmbH)、およびAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が含まれるが、それらに限定されるものではない。別の構成では、高分子電解質膜265とアノード240との間に、重炭酸塩の輸送を阻止するアノード緩衝層245が存在する。高分子電解質膜がアニオン伝導体である場合、または重炭酸塩輸送をブロックしない場合、重炭酸塩輸送を防止するための追加のアノード緩衝層が有用となる場合がある。重炭酸輸送を阻止するために使用できる材料には、Nafion(登録商標)配合物、GORE−SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA−Tech GmbH)、およびAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が含まれるが、それらに限定されるものではない。当然のことながら、重炭酸塩がCRRに存在しない場合、イオン交換層260が重炭酸塩ブロック機能を含むことは、特に望ましいわけではない。
【0050】
本発明の別の実施形態では、アノード緩衝層245が、高分子電解質膜265とアノード240との間でプロトン濃度が遷移する領域を提供する。高分子電解質膜265中のプロトン濃度は、その組成およびそれが伝導するイオンの両方に依存する。例えば、プロトンを伝導するNafion高分子電解質膜265は、高いプロトン濃度を有する。FumaSep FAA−3高分子電解質膜265は、プロトン濃度が低い。例えば、アノード240における所望のプロトン濃度が、高分子電解質膜265と3桁以上異なる場合、アノード緩衝層245は、高分子電解質膜265のプロトン濃度からアノードの所望のプロトン濃度への遷移を行うのに有用となることがある。アノード緩衝層245は、単一のポリマーまたは複数のポリマーを含むことができる。アノード緩衝層245が複数のポリマーを含む場合、複数のポリマーは互いに混合されてもよく、あるいは隣接する別々の層に配置されるものであってもよい。pH遷移のための領域を提供するのに有用な材料には、Nafion、FumaSep FAA−3、Sustainion(登録商標)、Tokuyamaアニオン交換ポリマー、およびポリエチレンオキシド(PEO)などのポリエーテル系ポリマー、それらの混合物、および/または他の任意の適切な材料が含まれるが、それらに限定されるものではない。高いプロトン濃度は約10〜0.1モルの範囲であると考えられ、低濃度は約0.01モル未満であると考えられる。イオン伝導性ポリマーは、それらが伝導するイオンのタイプに基づいて異なるクラスに置くことができる。これは先に詳細に述べた通りである。以下の表4には3クラスのイオン伝導性ポリマーが記載されている。本発明の一実施形態では、カソード220、アノード240、高分子電解質膜265、カソード緩衝層225およびアノード緩衝層245内のイオン伝導性ポリマーの少なくとも一つが、他の少なくとも一つとは異なるクラスからのものである。
【0052】
いくつかのクラスAイオン伝導性ポリマーは、2259−60(Pall RAI)、Tokuyama CoのAHA、fumasep(登録商標)FAA−3(fumatech GbbH)、Sustainion(登録商標)、SolvayのMorgane ADP、またはTosohのTosflex(登録商標)SF−17アニオン交換膜材料などの商品名で知られている。いくつかのクラスCイオン伝導性ポリマーは、Nafion(登録商標)(DuPont(商標))の種々の配合物、GORE−SELECT(登録商標)(Gore)、fumapem(登録商標)(fumatech GmbH)およびAquivion(登録商標)PFSA(Solvay)のような商品名で知られている。
【0053】
図4には、本発明の別の実施形態に係る、CRRで使用するための新規な膜電極アセンブリ(MEA)400が示されている。MEA400は、カソード420、アノード440およびイオン伝導性ポリマー層460を有する。イオン伝導性ポリマー層460は、イオン伝導性ポリマー膜465およびカソード緩衝層425を含む。アノード440およびイオン伝導性ポリマー膜465は、カチオン伝導体であるイオン伝導性ポリマーを含み、イオン伝導性ポリマー膜465は、多量の重炭酸塩がアノード440に到達することを許容しないため、ここではアノード緩衝層は使用されていない。
【0054】
図5には、本発明のさらに別の実施形態に係る、CRRで使用するための新規な膜電極アセンブリ(MEA)500が示されている。MEA500は、カソード520、アノード540およびイオン伝導性ポリマー膜560を有する。この構成では、イオン伝導性ポリマー膜560中の高プロトン濃度からカソード層中の低プロトン濃度への遷移は、カソード層520とイオン伝導性ポリマー膜560との界面で達成されるため、これらの2つの層間に追加の緩衝層は使用されていない。緩衝層なしでプロトン濃度の差を達成する能力は、カソード層520およびイオン伝導性ポリマー膜560に使用されるイオン伝導性ポリマーの種類、およびイオン伝導性ポリマーがそれら層の界面で混ざる方法に依存する。
【0055】
別の特定の例では、膜電極アセンブリが、還元触媒および第1のアニオン伝導性ポリマー(例えば、Sustainion、FumaSep FAA−3、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含むカソード層と、酸化触媒および第1のカチオン伝導性ポリマー(例えば、PFSAポリマー)を含むアノード層と、第2のカチオン伝導性ポリマーを含む膜層であって、カソード層とアノード層との間に配置されて、カソード層とアノード層とを導電的に接続する膜層と、第2のアニオン伝導性ポリマー(例えば、Sustainion、FumaSep FAA−3、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含むカソード緩衝層であって、カソード層と膜層との間に配置され、カソード層と膜層とを導電的に接続するカソード緩衝層とを含む。この例では、カソード緩衝層が、約1〜90体積%の気孔率を有することができるが、追加的または代替的には、任意の適切な気孔率(例えば、気孔が存在しないことを含む)を有することができる。他の例では、カソード層が、任意の適切な気孔率(例えば、0.01〜95%、0.1〜95%、0.01〜75%、1〜95%、1〜90%など)を有することができる。
【0056】
関連する例では、膜電極アセンブリが、第3のカチオン伝導性ポリマーを含むアノード緩衝層を含み、アノード緩衝層が、膜層とアノード層との間に配置され、膜層とアノード層とを導電的に接続する。アノード緩衝層は、好ましくは、約1〜90体積%の気孔率を有するが、追加的または代替的には、任意の適切な気孔率(例えば、気孔が存在しないことを含む)を有することができる。しかしながら、他の構成および例では、アノード緩衝層が、任意の適切な気孔率(例えば、0.01〜95%、0.1〜95%、0.01〜75%、1〜95%、1〜90%など)を有することができる。
【0057】
別の特定の例では、膜電極アセンブリが、還元触媒および第1のアニオン伝導性ポリマー(例えば、Sustainion、FumaSep FAA−3、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含むカソード層と、酸化触媒および第1のカチオン伝導性ポリマーを含むアノード層と、第2のアニオン伝導性ポリマー(例えば、Sustainion、FumaSep FAA−3、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含む膜層であって、カソード層とアノード層との間に配置され、カソード層とアノード層とを導電的に接続する膜層と、第2のカチオン伝導性ポリマーを含むアノード緩衝層であって、アノード層と膜層との間に配置され、アノード層と膜層とを導電的に接続するアノード緩衝層とを含む。
【0058】
関連する例では、膜電極アセンブリが、第3のアニオン伝導性ポリマーを含むカソード緩衝層を含むことができ、カソード緩衝層が、カソード層と膜層との間に配置され、カソード層と膜層とを導電的に接続する。第3のアニオン伝導性ポリマーは、第1および/または第2のアニオン伝導性ポリマーと同じであっても、異なっていてもよい。カソード緩衝層は、好ましくは約1〜90体積%の気孔率を有するが、追加的または代替的には、任意の適切な気孔率(例えば、気孔が存在しないことを含む)を有することができる。しかしながら、他の構成および例では、カソード緩衝層が、任意の適切な気孔率(例えば、0.01〜95%、0.1〜95%、0.01〜75%、1〜95%、1〜90%など)を有することができる。
【0059】
上述した例および他の例および変形例(例えば、カソード緩衝層、アノード緩衝層、膜層、カソード層、アノード層、他の適切な層など)の気孔率は、好ましくは均一な分布を有するが、追加的または代替的には、任意の適切な分布(例えば、ランダムな分布、層を通じてまたは横断して増加する気孔サイズの勾配、層を通じてまたは横断して減少する気孔サイズの勾配など)を有することができる。気孔は、不活性充填材粒子(例えば、ダイヤモンド粒子、ホウ素ドープダイヤモンド粒子、ポリ二フッ化ジフルオリド/PVDF粒子、ポリテトラフルオロエチレン/PTFE粒子など)のような任意の適切な機構、およびポリマー層内に実質的に非反応性の領域を形成する他の任意の適切な機構によって形成することができる。不活性充填剤粒子は、最小約10ナノメートルおよび最大約200ナノメートルのような任意の適切なサイズ、および/または他の任意の適切な寸法または寸法の分布を有することができる。
【0060】
COx還元リアクタ(CRR)
図6は、本発明の一実施形態に係るCO
x還元リアクタ(CRR)605の主要な構成要素を示す概略図である。
【0061】
CRR605は、
図2を参照して先に述べたような膜電極アセンブリ600を有する。膜電極アセンブリ600は、イオン交換層660によって分離されたカソード620およびアノード640を有する。イオン交換層660は、3つの副層、すなわち、カソード緩衝層625、高分子電解質膜665および任意のアノード緩衝層645を含むことができる。さらに、CRR605は、カソード620に隣接するカソード支持構造622と、アノード640に隣接するアノード支持構造642とを有する。
【0062】
本発明の一実施形態では、カソード620が、表4のクラスAに記載されるようなイオン伝導性ポリマーを含み、アノード640が、表4のクラスCに記載されるようなイオン伝導性ポリマーを含み、高分子電解質膜665が、表4のクラスCとして記載されるようなイオン伝導性ポリマーを含む。一構成では、カソード緩衝層625が、少なくとも2のイオン伝導性ポリマー、すなわち、表4のクラスAに記載されたものと、クラスBに記載されたものとを含む。
【0063】
本発明の別の実施形態では、カソード620が、クラスAに記載されるようなイオン伝導性ポリマーと、クラスBに記載されるようなイオン伝導性ポリマーとの両方を含み、アノード640が、クラスCに記載されるようなイオン伝導性ポリマーを含み、高分子電解質膜665が、クラスAに記載されるようなイオン伝導性ポリマーを含み、カソード緩衝層625が、クラスAに記載されるようなイオン伝導性ポリマーと、クラスBに記載されるようなイオン伝導性ポリマーとの両方を含み、アノード緩衝層645が、クラスCに記載されるようなイオン伝導性ポリマーを含む。イオン伝導性ポリマーの他の組合せも可能である。
【0064】
カソード支持構造622は、通常は黒鉛製のカソード極板624を有し、これに電圧を印加することができる。カソード極板624の内側面に切り込まれた蛇行チャネルのような流れ場チャネルが存在し得る。カソード極板624の内側面に隣接するカソードガス拡散層626も存在する。いくつかの構成では、2以上のカソードガス拡散層(図示省略)が存在する。カソードガス拡散層626は、膜電極アセンブリ600の内外へのガスの流れを促進する。カソードガス拡散層626の一例は、カーボン微細孔層を有するカーボン紙である。
【0065】
アノード支持構造642は、通常は金属製のアノード極板644を有し、これに電圧を印加することができる。アノード極板644の内側面に切り込まれた蛇行チャネルのような流れ場チャネルが存在し得る。アノード極板644の内側面に隣接するアノードガス拡散層646も存在する。いくつかの構成では、2以上のアノードガス拡散層(図示省略)が存在する。アノードガス拡散層646は、膜電極アセンブリ600の内外へのガスの流れを促進する。アノードガス拡散層646の一例は、チタンメッシュまたはチタンフェルトである。いくつかの構成では、ガス拡散層626,646は微細孔性である。
【0066】
また、支持構造622,642に関連する入口および出口(図示省略)も存在し、それにより膜電極アセンブリ600に反応物および生成物をそれぞれ流すことができる。セルからの反応物および生成物の漏出を防止する様々なガスケット(図示省略)も存在する。
【0067】
本発明の一実施形態では、カソード極板624およびアノード極板642を介して膜電極アセンブリ600に直流(DC)電圧が印加される。水はアノード640に供給され、酸化触媒上で酸化されて分子酸素(O
2)を形成し、プロトン(H
+)と電子(e
−)を放出する。プロトンはイオン交換層660を通りカソード620に向かって移動する。電子は外部回路(図示省略)を通って流れる。本発明の一実施形態において、この反応は以下のように記載される:
2H
2O−−−4H
++4e
−+O
2
【0068】
本発明の他の実施形態では、他の反応物をアノード640に供給することができ、他の反応を生じさせることができる。それらのいくつかは、表3に記載されている。
【0069】
図7に、本発明の一実施形態に係るCRR705リアクタを通る反応物、生成物、イオンおよび電子の流れを示す。
【0070】
CRR705は、
図2を参照して説明した膜電極アセンブリ700を有する。膜電極アセンブリ700は、イオン交換層760によって分離されたカソード720およびアノード740を有する。イオン交換層760は、3つの副層、すなわち、カソード緩衝層725、高分子電解質膜765および任意のアノード緩衝層745を含むことができる。さらに、CRR705は、カソード720に隣接するカソード支持構造722と、アノード740に隣接するアノード支持構造742とを有する。
【0071】
カソード支持構造722は、通常は黒鉛製のカソード極板724を有し、これに電圧を印加することができる。カソード極板724の内側面に切り込まれた蛇行チャネルのような流れ場チャネルが存在し得る。カソード極板724の内側面に隣接するカソードガス拡散層726も存在する。いくつかの構成では、2以上のカソードガス拡散層(図示省略)が存在する。カソードガス拡散層726は、膜電極アセンブリ700の内外へのガスの流れを促進する。カソードガス拡散層726の一例は、カーボン微細孔層を有するカーボン紙である。
【0072】
アノード支持構造742は、通常は金属製のアノード極板744を有し、これに電圧を印加することができる。アノード極板744の内側面に切り込まれた蛇行チャネルのような流れ場チャネルが存在し得る。アノード極板744の内側面に隣接するアノードガス拡散層746も存在する。いくつかの構成では、2以上のアノードガス拡散層(図示省略)が存在する。アノードガス拡散層746は、膜電極アセンブリ700の内外へのガスの流れを促進する。アノードガス拡散層746の一例は、チタンメッシュまたはチタンフェルトである。いくつかの構成では、ガス拡散層726,746は微細孔性である。
【0073】
また、支持構造722,742に関連する入口および出口も設けることができ、それにより膜電極アセンブリ700に反応物および生成物をそれぞれ流すことができる。セルからの反応物および生成物の漏出を防止する様々なガスケットも設けることができる。
【0074】
CO
xはカソード720に供給することができ、プロトンおよび電子の存在下でCO
x還元触媒上で還元することができる。CO
xは、0psig〜1000psigの圧力または他の任意の適切な範囲の圧力でカソード720に供給することができる。CO
xは、他のガスの混合物とともに、100%未満の濃度で、または他の適切なパーセンテージでカソード720に供給することができる。いくつかの構成では、CO
xの濃度は、約0.5%程度の低さ、5%程度の低さ、または20%程度の低さ、または任意の他の適切なパーセンテージとすることができる。
【0075】
本発明の一実施形態では、約10%〜100%の未反応CO
xが、カソード720に隣接する出口で集められて、還元反応生成物から分離され、その後、カソード720に隣接する入口に再循環される。本発明の一実施形態では、アノード740における酸化生成物は、0psig〜1500psigの圧力に圧縮される。
【0076】
本発明の一実施形態では、複数のCRR(
図6に示すものなど)が電気化学スタック内に配置され、一緒に操作される。スタックの個々の電気化学セルを構成するCRRは、電気的に直列または並列に接続することができる。反応物は個々のCRRに供給され、その後、反応生成物が回収される。
【0077】
図8には、リアクタへの主要な入力および出力が示されている。CO
x、アノード供給物質および電気がリアクタに供給される。CO
x還元生成物および任意の未反応CO
xがリアクタから出る。未反応CO
xは、還元生成物から分離して、リアクタの入力側に再循環させることができる。アノード酸化生成物および任意の未反応アノード供給物質は、別々の流れでリアクタから出る。未反応アノード供給物質は、リアクタの入力側に再循環させることができる。
【0078】
CRRのカソードにおける種々の触媒は、CO
x還元反応から様々な生成物または生成物の混合物を生じさせる。カソードで起こり得るCO
x還元反応の例は、以下のようになる:
【0079】
本発明の別の実施形態では、本発明の上記実施形態で説明したCO
x還元リアクタを操作する方法が提供される。この方法は、カソード極板およびアノード極板に直流電圧を印加するステップと、酸化反応物をアノードに供給して酸化反応を生じさせるステップと、還元反応物をカソードに供給して還元反応を生じさせるステップと、アノードから酸化反応生成物を回収するステップと、カソードから還元反応生成物を回収するステップとを含む。
【0080】
一構成では、DC電圧は−1.2Vより大きい。様々な構成では、酸化反応物を、水素、メタン、アンモニア、水またはそれらの組合せ、および/または他の任意の適切な酸化反応物の何れかとすることができる。一構成では、酸化反応物が水である。様々な構成では、還元反応物を、二酸化炭素、一酸化炭素およびそれらの組合せ、および/または他の任意の適切な還元反応物の何れかとすることができる。一構成では、還元反応物が二酸化炭素である。
【0081】
別の特定の例では、CO
X還元リアクタが、還元触媒および第1のアニオン伝導性ポリマー(例えば、FumaSep FAA−3、Sustainion、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含むカソード層を含む膜電極アセンブリを含む。また、リアクタは、酸化触媒および第1のカチオン伝導性ポリマー(例えば、Nafion324、Nafion350、Nafion417、Nafion424、Nafion438、Nafion450、Nafion521、Nafion551、他のNafion配合物、Aquivion、GORE−SELECT、Flemion、PSFAなど)を含むアノード層も備える。また、リアクタは、第2のカチオン伝導性ポリマーを含む膜層も含み、膜層が、カソード層とアノード層との間に配置され、カソード層とアノード層とを導電的に接続する。また、リアクタは、カソード層に結合されたカソードマニホルドと、アノード層に結合されたアノードマニホールドとを含む。この例では、カソードマニホルドが、カソード層に隣接するカソード支持構造を含むことができ、カソード支持構造が、カソード極板と、カソード極板とカソード層との間に配置されたカソードガス拡散層と、カソードガス拡散層に流体接続された第1の入口と、カソードガス拡散層に流体接続された第1の出口とを有する。また、この例では、アノードマニホールドが、アノード層に隣接するアノード支持構造を含むことができ、アノード支持構造が、アノード極板と、アノード極板とアノード層との間に配置されたアノードガス拡散層と、アノードガス拡散層に流体接続された第2の入口と、アノードガス拡散層に流体接続された第2の出口とを含む。関連する例では、リアクタの膜電極アセンブリが、第2のアニオン伝導性ポリマー(例えば、FumaSep FAA−3、Sustainion、Tokuyamaアニオン交換ポリマー)を含むカソード緩衝層を含み、カソード緩衝層が、カソード層と膜層との間に配置され、カソード層と膜層とを導電的に接続する。この例の緩衝層(例えば、カソード緩衝層、アノードカソード層)は、約1〜90体積%の気孔率を有することができるが、代わりに任意の適切な気孔率(例えば、気孔が存在しないことを含む)を有することができる。しかしながら、他の構成および例では、緩衝層が、任意の適切な気孔率(例えば、0.01〜95%、0.1〜95%、0.01〜75%、1〜95%、1〜90%など)を有することができる。関連する例では、膜電極アセンブリの第1および第2のアニオン伝導性ポリマーが、同じアニオン伝導性ポリマー(例えば、同一のポリマー配合物を含むもの)であってもよい。
【0082】
本発明は、新規の原理を適用して、必要とされる特別な構成要素を構築および使用することに関連する情報を当業者に提供するために、本明細書に非常に詳細に記載されている。しかしながら、本発明は、異なる装置、材料およびデバイスによって実施することができ、本発明の範囲から逸脱することなく、装置および操作手順に関して、様々な変更を加えることができることを理解されたい。