(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816217
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】電気外科高周波装置を制御する方法及び装置、並びに高周波装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-104955(P2019-104955)
(22)【出願日】2019年6月5日
(62)【分割の表示】特願2016-541922(P2016-541922)の分割
【原出願日】2014年9月10日
(65)【公開番号】特開2019-162502(P2019-162502A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2019年6月28日
(31)【優先権主張番号】102013110172.0
(32)【優先日】2013年9月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】マザー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ライヒル,ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,アントーン
(72)【発明者】
【氏名】アイク,シュテファン
【審査官】
宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−261907(JP,A)
【文献】
特開2008−194303(JP,A)
【文献】
特開平08−229050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御装置(3)を有する電気外科高周波装置を制御する方法であって、前記高周波装置は、
電気外科器具(1)と、
高周波発生装置(2)であって、高周波電流を発生又は提供するものと、
入力装置(4)とを備え、
前記高周波発生装置(2)は、前記電気外科器具(1)に電気的に接続され、ユーザ側の起動により前記高周波電流を前記電気外科器具(1)に届けるものであって、前記方法は、
始めに、前記電子制御装置(3)が前記高周波発生装置(2)を起動ボタンによっても起動できないロック状態に設定する、ステップaと、
前記入力装置(4)がアプリケーションの選択を受信すると、前記電子制御装置(3)が前記電気外科器具(1)により実行されるべきアプリケーションを受信する、ステップbと、
前記ステップbの後、前記電子制御装置(3)が、前記高周波発生装置(2)を自動的に、前記高周波発生装置(2)が前記起動ボタンによって起動され得るアンロック状態に移行させる、ステップcと、
前記起動ボタンが起動指示を受信すると、選択された前記アプリケーションを実行するために、前記電子制御装置(3)が前記高周波発生装置(2)を起動する、ステップdと、
前記ステップdにおける、前記起動後に、前記電子制御装置(3)が前記高周波発生装置(2)を自動的に前記ロック状態に移行させる、ステップeと、
前記ステップbの後予め定められた期間、前記高周波発生装置(2)が起動されない場合、前記電子制御装置(3)が前記高周波発生装置(2)を前記ロック状態に自動的に移行する、ステップfとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電子制御装置(3)が前記ステップbにおける前記アプリケーションに関連するパラメータを受信するステップgを更に含み、
前記ステップdでは、前記電子制御装置(3)が前記高周波発生装置(2)を、前記ステップgでの前記パラメータにより、前記選択されたアプリケーションを実行するべく起動する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記高周波装置が起動された後、又はアプリケーションが実行された後に、前記電子制御装置(3)が前記高周波発生装置(2)を前記ステップaにおいて前記ロック状態とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記起動の直後、前記起動の完了時、又は前記起動の完了時後所定期間経過後に、前記電子制御装置(3)が前記高周波発生装置(2)を自動的に前記ロック状態に移行することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記高周波発生装置(2)に接続される器具(1)がそれ自身にデータレコードを保持していなければ、前記電子制御装置(3)が前記接続される器具(1)を自動的に識別し、かつ預けられたデータレコードに関連付けることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ステップeにおいて前記電子制御装置(3)が前記高周波発生装置(2)が前記ロック状態に移行することが抑制するか、及び/又は、前記電子制御装置(3)が前記ステップeを前記器具(1)の交換後に限って自動的に実行するか、に関する指示を前記データレコードが含んでいることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
所定時間又は所定回数前記高周波発生装置(2)を起動する起動装置が操作されると、前記電子制御装置(3)が前記ロック状態を取り消すことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ロック状態にある前記高周波発生装置(2、3、4、5)を起動することが試みられると、前記電子制御装置(3)がエラーメッセージ又は表示メッセージを出力することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
高周波発生装置又は電流源(2)および電気外科器具(1)を備える外科高周波装置の電子制御装置(3)であって、
前記制御装置(3)は、制御対象としての、前記高周波発生装置又は前記電流源(2)に接続されるのに適合しており、
入力装置(4)又は前記入力装置(4)用のポートであって、選択された前記高周波装置で使用される特定のタイプのアプリケーションが事前調整済みで起動可能であるものと、
現在起動しているアプリケーションを表示するための、出力装置(5)又は前記出力装置(5)用のポートと、
アプリケーションに係る処置サイクルのスタート前に毎回、前記選択されたアプリケーションが再びユーザ側で起動されている場合のみ、前記制御装置(3)が前記高周波発生装置/電流源(2)に許可信号をそれを介して出力し、かつ
アプリケーションタイプの選択後予め定められた期間、当該アプリケーションが前記入力装置(4)により起動されない場合、前記高周波発生装置(2)をロック状態へ切り替える、制御ポート(3a)とを備える、電子制御装置(3)。
【請求項10】
電気外科高周波装置であって、
電気外科器具(1)と、
高周波電流を発生する高周波発生装置(2)とを備え、
前記高周波発生装置(2)は、前記電気外科器具(1)に電気的に接続され、ユーザ側の起動により、前記高周波電流を前記電気外科器具(1)へ届け、
前記高周波発生装置(2)は、請求項1から8のいずれかに記載の方法を実行すべく配設される電気外科高周波装置。
【請求項11】
各種複数の器具が前記高周波発生装置(2)に接続可能であることを特徴とする請求項10に記載の電気外科高周波装置。
【請求項12】
ユーザ側において、アプリケーション又はプロセスパラメータを選択するための、前記入力装置(4)が、キーボード、キー群、スライダー、トグルスイッチ、ディスプレイスクリーン、ロータリーノブ、又は、音声指示/認識システムとして、実現されることを特徴とする請求項10又は11に記載の電気外科高周波装置。
【請求項13】
前記入力装置(4)が前記高周波発生装置(2)上、及び/又は、前記電気外科器具(1)上、或いは前記電気外科器具(1)の部品上に、配置されることを特徴とする請求項12に記載の電気外科高周波装置。
【請求項14】
電気外科高周波装置の電子制御装置(3)からなるコンピュータにより読み取り可能なコンピュータプログラムであって、
前記高周波装置は、
電気外科器具(1)と、
高周波発生装置(2)であって、高周波電流を発生又は提供するものと、
入力装置(4)とを備え、
前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータに、
前記高周波発生装置(2)を起動ボタンの起動指示によっても起動できないロック状態に設定する、第1手順aと、
前記入力装置(4)がアプリケーションの選択を受信すると、前記電気外科器具(1)により実行されるべきアプリケーションを受信する、第2手順bと、
前記第2手順bの後、前記高周波発生装置(2)が自動的に、前記高周波発生装置(2)が前記起動ボタンの起動指示によって起動され得るアンロック状態に移行する、第3手順cと、
前記起動ボタンが起動指示を受信すると、選択された前記アプリケーションを実行するために、前記高周波発生装置(2)が起動する、第4手順dと、
前記第4手順dにおける、ユーザ側の起動後に、前記高周波発生装置(2)が自動的に前記ロック状態に移行する、第5手順eと、
前記第2手順bの後予め定められた期間、前記高周波発生装置(2)が起動されない場合、前記高周波発生装置(2)は前記ロック状態に自動的に移行する、第6手順fとを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気外科高周波装置を制御する方法及び装置と、それと同様に、電気外科器具と、高周波電流を発生する高周波発生装置とを備える電気外科高周波装置とに、関するものである。
【背景技術】
【0002】
外科高周波装置は、周知である。
このものは、高周波外科の一部として、切断したり、凝固したりというような標準的な
処置から離れて、更なる分野(中空臓器を閉じたり、生物学的組織を接続したり、或いは、腫瘍除去等の状況)において、
処置が増加している。
そのような行為において、電気外科器具は、処理すべき組織に高周波電流を流し、それにより、組織が改変されることになる。
これら特殊な
処置を行う間、高周波の伝達は、外科医によるのではなく、該器具が電気的に接続される高周波発生装置によって、自動的に制御され、計測され、そして終了される。
【0003】
常に種類が増加している前記
処置の状況において、電気外科器具が、異種組織(小腸、大腸、直腸、胃、食道)のために様々に
処置されるべきならば、組織層の数又は異なる
処置型(切除、吻合)を変えるために、関連する高周波発生装置/電流源の事前調整を行い得ることが絶対に必要となり、それにより、各
処置に応じて、特定或いは特別の、プロセス設定が可能となる。
あるプロセスパラメータが誤って設定されると、満足できない結果や、さらには、患者への損傷さえあり得る、状況を生じかねない。
この点が、装置の起動の前に、いかなる時も全てのパラメータが正しく調整されていることを保証できねばならないということの理由となる。
【0004】
即ち、該器具に高周波電流を供給するという、高周波起動の考え方は、高周波装置の中心的な項目であり、従来技術から公知である。
電気外科器具上、及び/又は、同器具の高周波発生装置上の、様々な安全機能により、ユーザの該当する操作なしに、高周波は起動しないようになっている。
【0005】
特許文献1(米国特許第5035695号公報)により、手動制御時に、器具の安全な操作を可能とするロック機能を含み、電子焼灼を行う方法及び器具は、公知である。
手動で操作可能なスライドを用いることにより、器具の電極が、器具内に収納される休止位置から、器具から突出する焼灼位置へと移動できる。
ここで、該休止位置にあるとすると、ロックアウトスイッチは、自動的に電極を高周波電流源/高周波発生装置から切断する。
電極が休止位置にあると、スライドは、追加的に、電極を手動起動するための起動スイッチ群の機械的ロック手段に相当する。しかるに、起動スイッチ群は、焼灼位置にあるスライドにより解放され、手動操作可能となる。
発生装置の設定を考慮せずに、ユーザにより、手動で器具のロックや解放が実行されるのは、不利益である。
【0006】
特許文献2(欧州特許出願EP2168517A1号公報)により、組織を凝固及び切断する、手動の電気外科クランプを有するハンドスイッチを手動ロックする、システム及び方法は、公知である。
該クランプは、組織を凝固するための電流が供給されるべき、2つの互いに移動可能な、ジョーを備える。
起動させるには、クランプのユーザにより、ハンドスイッチが選択的かつ手動で操作されなければならない。
更に、ハンドスイッチの操作が可能な第1位置から、ハンドスイッチの操作及びクランプの起動が不可能な第2位置へ向けて、ロックアウトスイッチは、また該クランプのユーザにより、手動で操作されねばならない。
他の実施の形態では、ハンドスイッチ及びロックアウトスイッチの両方が、電気的に閉じられ、それにより、クランプの起動を可能としなければならない。
発生装置への何らのフィードバックなしに、器具の手動ロック及び手動解放がユーザにより同様になされなければならないという点は、不利益である。
【0007】
特許文献3(国際公開WO2009/149799A1号公報)により、生物学的組織を、凝固及び/又は切断するための外科装置は、公知である。
このものは、高周波電流が印加される2つのジョー部分を有する双極性クランプと、起動回路と、高周波発生装置とを備える。
クランプへの高周波電流の供給は、起動スイッチにより、制御可能である。
操作エラーに対する保護を行うため、この装置は、該ジョー部分が凝固に不適な位置にあると想定されると、クランプへの電流供給を遮断する安全手段を備える。
このものは、単にクランプの意図しない起動を防止するというに過ぎない。
【0008】
最後に、特許文献4(米国特許第4655215号公報)は、単極性の電気外科メスであって、選択的な切断又は凝固プロセスの手動制御を含むものを開示する。それには、特定の操作モード群が注意深く抑制され得るオプションが具備されている。
該メスは、ユーザにより、3つの異なる位置に移動可能なスライドスイッチを備え、それにより、起動スイッチがロックされたり、解放されたりすることが可能である。
第1位置では、起動スイッチがブロックされる。
第2位置では、このものは、該メスの刃に、凝固電流又はゼロ電流のいずれかが供給されるように、動作することになっている。
第3位置では、起動スイッチが解放され、それにより、該メスの刃には、凝固電流か、切断電流か、或いは、ゼロ電流かの、いずれかが供給されることになる。
このように、該手動制御によると、あらゆる凝固電流、又は切断電流は、外科医による該当する解除操作後に限り、届けられ得るという点が、保証されるものである。
ここで、上記プロセスが誤った設定に対する安全機能とリンクすることなく、該起動/設定が該メスのユーザにより手動でなされるという点は、不利益である。
【0009】
当初記述したように、高周波装置が多数の異なる
アプリケーション中で使用されると想定されるならば、多岐にわたり、かつ広範囲の選択プロセスパラメータが必要となる。
しかしながら、装置又はプロセスに係る高周波起動に先立ち、即ち、器具に高周波電流を供給するよりも前に、装置のユーザにより、入力又は該当するプロセスパラメータのモニタがなされねばならず、それにより状況次第で、発生装置の誤設定が回避されることが保証されなければならない。
【0010】
公知の解決策では、高周波器具又は装置が、固定的な、プロセスパラメータ及び/又はフローにより、操作される。
しかしながら、該当する
アプリケーションに依存して、単一の又は複数の該パラメータ(例えば、高周波エネルギのレベルおよび進行等)は、変化し得るものであって、この変化に適応できねばならず、それにより、一方では、成功裏に
選択された処置がなされねばならず、他方では、組織への更なる損傷が回避されねばならない。
【0011】
高周波発生装置上における、高周波プロセスの強度を設定できるようにした装置も知られている。
このものは、オペレータが、高周波エネルギの出力を(わずかだけ)上昇側又は下降側に訂正できるようにする。
プロセスパラメータの変更後、新設定が行われる迄の間、後続する全ての起動は、当該パラメータ群により実行されることになる。
順次実行されるべき
アプリケーションの条件又は要件は、前の
アプリケーションから変わり得るにもかかわらず、プロセスパラメータを、手動で/視覚的にチェックしたり、それに応じて調整したりすることを、失念する危険がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5035695号公報
【特許文献2】欧州特許出願EP2168517A1号公報
【特許文献3】国際公開WO2009/149799A1号公報
【特許文献4】米国特許第4655215号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述された従来技術に基づき、本発明は、電気外科高周波装置及び高周波装置を制御する方法及び装置であって、それぞれ必要となる装置設定が、高周波装置の起動に先立ち正しく行われる点が保証されるものを提供する、という目的を基礎とする。
【0014】
右目的は、次の方法部分により達成される。即ち、本方法は、電気外科高周波装置を制御する方法であって、該高周波装置は、電気外科器具と、高周波発生装置/電流源であって、高周波電流を発生/提供するものとを備え、該高周波発生装置は、該電気外科器具に電気的に接続され、ユーザ側の起動により該高周波電流を該器具に届けるものであって、
本方法は、
始めに、該高周波発生装置が、該高周波発生装置をユーザによって起動できないロック状態
とする、ステップaと、
該電気外科器具により実行されるべき
アプリケーションを受信する、ステップbと、
該ステップb
の後、該高周波発生装置
は自動的に、該高周波発生装置が該ユーザにより起動され得るアンロック状態に移行する、ステップcと、
該高周波装置及び/又はそれに接続される該電気外科器具が
選択されたアプリケーションを実行するため
に起動可能な、ステップdと、
該ステップd
における起動後に、該高周波発生装置が自動的に該ロック状態に移行する、ステップeとを含む。
【0015】
さらに、目的は、次の装置部分によって達成される。即ち、本装置は、(電流源/高周波発生装置と、電気外科器具とを備える、)外科高周波装置の(ための)電子制御装置であって、該制御装置は、制御対象としての、該高周波発生装置/該電流源に接続されるのに適合しており、入力装置/該入力装置用のポートであって、
選択された(該高周波装置で使用される特定のタイプ)の
アプリケーションが(事前調整済みで)起動可能であるか、又は、ユーザ側において(事前調整済みで)起動されるものと、現在起動し/選択されている
アプリケーション及び/又は組織タイプを表示するための、出力装置又は該出力装置用のポートと、
アプリケーション(処置サイクル)のスタート前に毎回、
選択されたアプリケーションが再びユーザ側で起動されている場合のみ、該制御装置が該高周波発生装置/電流源に許可信号をそれを介して出力する、制御ポートとを備える。
【0016】
さらに、目的は、次の装置部分によって達成される。即ち、本装置は、電気外科高周波装置であって、電気外科器具と、高周波電流を発生/供給する高周波発生装置/電流源とを備え、該高周波発生装置は、該電気外科器具に電気的に接続され、ユーザ側の起動により、該高周波電流を該器具へ届け、該高周波発生装置は、次のように配設される、即ち、
該高周波発生装置がユーザ側で起動できないロック状態にあり、
少なくとも、ユーザ側において、該電気外科器具で実行されるべき
アプリケーションが設定されることにより、自動的にアンロック状態へ移行し、該アンロック状態において、該高周波発生装置はユーザ側において起動可能であるか又は起動され、
該電気外科高周波装置に接続される該電気外科器具へのユーザ側の起動(処理サイクルの完了)後に、自動的にロック状態へ移行する。
【0017】
本発明に係る高周波装置は、特に、本発明に係る方法を実行するためにアレンジされ、且つ適するものである。
該器具は、双極性又は単極性のいずれの種類でも良い。
【0018】
とりわけ、本発明は、各
アプリケーションのためのプロセスパラメータがそれぞれ正しく設定されることを常時保証しながら、多数の異なる
アプリケーションを単一の高周波装置を用いて実行できるという利益をもたらすものである。
当該
アプリケーションの例は、腸の封止、切除或いは吻合を含む。
本発明は、さらに異なる組織種類(小腸、大腸、直腸、胃、食道)への
アプリケーションを可能とし、それと同時に、異なる数の組織層への
アプリケーションを可能とする。
【0019】
本発明によれば、もはや外科医の手動操作に全くよらずに、高周波計測は、自動的に制御され、必要とあれば、高周波発生装置により終了される。
外科医又はユーザは、好ましくは高周波発生装置上において、予備的設定を行うのみであり、そうして該装置は、該予備的設定に基づき、例えばデータベースからの選択により、それぞれの
アプリケーションに特有のプロセスパラメータの設定を自動的に調整するものである。
本発明によれば、高周波発生装置を起動可能とするために、ユーザが、絶対不可避的に、まず(又、改めて行う都度)実施されるべき
アプリケーションを選択しなければならない。
誤ったプロセスパラメータ或いは誤った
アプリケーションに基づく高周波発生装置の起動(それは、患者に損傷を及ぼす結果となり得るのであるが)は、有利なことに防止され得る。なぜなら、ユーザ側において、(
アプリケーション−即ち、特定の処理サイクルに先立つ都度)、再び、装置の設定、或いは、
アプリケーションの選択がなされている場合に限り、起動が可能となるからである。
さらに有利なことには、誤った装置設定による動作結果を招来し得る、装置設定又は
アプリケーション選択の失念を防止することもできる。
【0020】
本願の意味するところの
アプリケーションとは、本発明に係る、方法又は高周波装置が使用されるか、又は使用が想定される、特定種の外科
アプリケーションの意として解されねばならない。
電流強度、電圧、周波数、振幅、振幅波形、電流の持続時間、強度、これらと同様に、その進行具合、切断点/完了基準などの、特定のパラメータ群は、各
アプリケーションとリンクするものである。
これらのプロセスパラメータ群は、正しく調整され、各
アプリケーションのために使用されねばならず、それによって、満足のいく結果を保証でき、且つ、患者の損傷を回避することが可能となる。
各
アプリケーションは、例えばデータベース中に、関連付けられた、対応プロセスパラメータ群を有する。
かかるデータベースは、装置内又は器具中の記憶素子上に置かれても良い。
【0021】
発生装置が起動された後、処置サイクルの完了(即ち、電気外科器具の終動)後に、該装置は、自動的にロック状態へ復帰し、再びユーザが
アプリケーションを選択するまで、この状態に留まることになる。
その時にのみ、高周波発生装置は再びアンロックされ得る。
このように、装置設定は失念されないという点が保証される。
本発明の一実施の形態によれば、方法のステップdにおけるユーザの起動により、又はそのせいで、高周波発生装置は、自動的にロック状態に復帰する。
本発明の他の実施の形態によれば、
アプリケーションの設定後予め定められた期間にわたり起動がなければ、高周波発生装置が再びロック状態に自動的に復帰するという、用意がなされる。
さらに、直近の高周波
アプリケーション完了後所定期間が経過した後に、自動ロック動作、即ち、(方法のステップeにおける)高周波発生装置のロック状態への復帰が、発生するようにしても良い。
また、同様のパラメータ設定を伴う後続する起動要求群がある識別回数(例えば、「2」)だけあるときに、該発生装置はロック状態に復帰しても良い。
【0022】
ここに述べる安全手段は、さまざまな設計態様を成す本発明の有利な実施の形態群に基づき実装され得る。該手段は、ユーザ側の
アプリケーション入力後のみに限り、高周波発生装置の起動を可能とし、それにより、高周波電流を電気外科器具へ供給することが可能となる。しからざる場合は、高周波発生装置はロックされることとなる。
各
アプリケーションの設定及び選択は、高周波発生装置上でなし得る。右行為は、(例えば、タッチスクリーン上の、又はそれ以外の、装置メニュー)上において、高周波発生装置の表示スクリーン上のキーを押し下げること、音声指示又は音声認識、(例えば、起動群間に配置されるべきニュートラルポジションを有する)ロータリーノブ、電気外科器具そのもの上(例えば、起動群間に配置されるべきニュートラルポジションを有する)ロータリーノブや、該器具上のキー群等々により、なし得る。
ある実施の形態では、
アプリケーションを選択するためのロータリーノブが追加的に押し下げられてもよく、それにより、選択された高周波プロセスが開始されたり、名宛てされた
アプリケーションが確認され得るようにしても良い。
【0023】
ある実施の形態によれば、例えば、起動ボタンを押し下げることにより、
アプリケーションの選択と起動とが同時に行われた場合にのみ、ユーザ側の高周波発生装置の起動が可能になるようにしても良い。
本発明の特別な形態によれば、選択された
アプリケーションが、装置により告知される。
この点は、装置設定が外科医自身によってはなされず、手術スタッフにより成された場合に意味を持つようにしても良く、また有利なことには、高周波発生装置の起動に先立ち、外科医に選択された
アプリケーションの正しさを、彼自身で納得し得るようにしても良い。
更なる提案によれば、同一又は類似のパラメータ群により複数の
アプリケーションを行い得る特別のオペレーションモードの間、オペレータの意図的な決定(例えば、起動装置を長時間操作すること、或いは、起動装置を素早く二重又は多重に操作すること)により、安全方法が無効にされても良い。
【0024】
本発明の一形態によれば、述べられた安全性は、ある種の器具にのみ使用されても良い。
有利なことには、器具は、高周波装置に接続される間中、自動的に識別されても良い。
安全手段は、高周波装置の器具メモリに保持されるパラメータ中に置かれる場合にのみ、リンクされる。
この点に関し、可能な
アプリケーション群に関するデータは、同様に、器具メモリ内に置かれても良い。
【発明の効果】
【0025】
要するに、本発明は本質的に、電気外科高周波装置を制御する装置及び方法に係り、右装置は、特に、電気外科器具1と、高周波電流を生成する高周波発生装置2とを備え、高周波発生装置2は、その起動が不可能なロック状態にあり、実行されるべき
アプリケーションが高周波発生装置2へのユーザ側の起動に先立って強制的に選択されねばならず、それにより、高周波発生装置2がアンロックされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の好ましい典型的な実施の形態によるプロセス起動の流れを示す概要図である。
【
図2】本発明の好ましい典型的な該実施の形態による高周波起動に関連するプログラムフローチャートの概要図である。
【
図4】本発明を適用できる高周波装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の更なる特徴及び利点は、図面を参照しながら、以下特に好ましい典型的な実施の形態を以下記述することにより明らかとなる。
【0028】
まず、本発明を具備する高周波装置が、
図4の助けを借りつつ、概略記述される。
従って、高周波装置は、任意に交換可能な、既知構造からなるタイプの、電気外科器具1を備える。該器具1は、例えば、互いに相対的に移動可能な2本のシザーズ枝と、高周波電流を選択的に該シザーズ枝(或いは、その上に配置される電極)に印加するための操作キー群を有するハンドルとを備える、バイポーラ鉗子等である。
【0029】
そのような器具1は、電気導体ケーブル(の束)を介し、電流源(例えば、高周波発生装置又は、該器具1に高周波電流を供給する高周波出力段2)に接続される。
さらに、キーボードのような入力装置
4と、ディスプレイ/モニ
タのような出力装置
5とが、設けられる。
しかしながら、モニタとして、所謂タッチスクリーン(組み合わせ入出力装置)を実装することも可能である。
最後に、コントロールユニット3は、電流源/発生装置2に接続される。必要とあれば、コントロールユニット3は、目的とする
アプリケーション−即ち、特定の高周波電流を提供するための、特定の前提条件に基づいて電流源/発生装置2を起動し、そしてそれを制御するものである。
入力装置4及び出力装置5は、このコントロールユニット3に接続される。
また、入力装置4及び出力装置5は、コントロールユニット3内に統合されても良い。
一般に、要素群2、3、4及び5は、装置(例えば、発生装置)内に設置される。
【0030】
図1〜
図3の助けを借りながら、以下に説明されるように、入力装置
4を介して、コントロールユニット3は、予め保存され、選択可能な(該当する動作パラメータ群を備える)
アプリケーション群のうちの1つにセットされ得る。
そうして、選択された
アプリケーションは、出力装置
5に表示されることになる。
コントロールユニット3は、選択された
アプリケーションに関連するパラメータの機能として、本発明による特定の処理フローに基づき、高周波発生装置2を操作する。
図1は、そのようなプロセス起動の流れを示す概略図である。
【0031】
第1ステップにて、ユーザ側において選択変数が入力される。
この入力は、例えば、いくつかの可能な
アプリケーション群中から特定の
アプリケーションを選択すること、又は、あるプロセスパラメータ群を選択することを含み得る。
高周波発生装置2の自動ロックが取り消され、それにより、同装置がユーザの側において、起動できたり、又は起動されたりするのは、該各選択変数、又は該各
アプリケーションが(強制的な手段として)入力される場合に限られる。
【0032】
さて、第2ステップにて、即ち、該各
アプリケーションが選択された(及び入力された)後で、ユーザ側の指示(例えば、外科器具が動作状態となり、高周波発生装置2が起動され、要求がある場合)により、高周波プロセス(処置サイクル)が開始される。
第3ステップにて、高周波プロセス(処置サイクル)が実行される。即ち、(選択された
アプリケーションに関連する動作パラメータに)該当する高周波電流が器具1に供給される状態において、ユーザ選択の
アプリケーションが実行される。
第3ステップ後、即ち、電気外科器具1の終動時、
アプリケーション(処置サイクル)が完了した後、許可信号がコントロールユニット3によって無効にされ、それ故、
アプリケーションを選択し、かつ、そのため再び許可信号を生成しない限り、ユーザ側の起動が不可能なロック状態に、高周波発生装置2は自動的に戻る。
【0033】
図2は、高周波起動のための典型的なプログラムフローチャートを示す。
装置がスタートアップした後、”parameter input”という名の論理変数に、「false(偽)」という値が代入される。
これにより、当分の間、高周波発生装置2がロックされ、(例えば、該器具1を操作しても)ユーザにより、該装置(2)をアンロックとしたり、或いは、起動したりすることができなくなる。
【0034】
続いて、ユーザ側において、起動要求があるか否かが決定される。
もし起動要求がない(false)がならば、プログラムは無限ループ内にとどまり、起動要求があるかいなかをチェックし続けることになる。
この決定が「真」(true)という結果になれば、ルーチンは次決定に移る。
【0035】
次決定では、選択変数入力(即ち、ユーザによる
アプリケーションの選択)が、入力装置によりなされたかどうかの検証が行われる。
その決定が「偽」(false)という結果になれば、ユーザに選択された
アプリケーションは存在せず、エラーメッセージが出力され、ルーチンは、”parameter input”又は”selection input”という名の変数に「偽」という値が代入される初期状態に戻る。
その結果が「真」(true)という結果になれば、高周波発生装置2のロックが解除され、選択された
アプリケーションに該当する動作パラメータがセットされ、(例えば、器具1に対する)ユーザ側の起動の後に、ルーチンは、選択された高周波プロセスを実行可能となる。
【0036】
高周波プロセスを実行/完了し終わると、”parameter input”という名の論理変数が自動的に(false)の値にリセットされ、ルーチンは初期状態に戻ることになる。
【0037】
最後に、
図3は、本発明による高周波起動の状態を概略的に示す図である。
装置のスタートアップが終わると、「ブロックされた」又は「ロックされた」状態が自動的に優勢となる。
これは、高周波発生装置2が、ユーザ側の起動が行えない、ロック状態にあることを意味する。
この状態において、例えば、対応する起動ボタンを押し下げることにより、ユーザが起動指示を行うと、高周波装置は、自動的にエラーメッセージを発行する。
起動は、行なわれない。
【0038】
ユーザにより実行されるべき
アプリケーションを選択すべく、ブロックされた(つまり、ロックされた)状態におけるパラメータ入力があると、システムは、解放された或いはロックされていない状態へ自動的に移行する。
この状態において、例えば、起動ボタンを押し下げることにより、ユーザは、起動を(一度)行なうことができ、起動が行われる。即ち、高周波発生装置2は活性となり、選択された
アプリケーションに該当する高周波電流を器具に供給し、
アプリケーションの完了後に、再びロックされることになる。
【0039】
最後に、様々な方法により、本発明の主題は、改変されたり、補足されたりすることができるという点が、明記されなければならない。
【0040】
即ち、
アプリケーションを選択するという強制的なプロセスは、各処置サイクルに先だって毎回繰り返されねばならぬものではなく、ある個数のサイクル群の後にだけ行われれば足りるということが考えられる。
かかる偏りは、全ての選択可能な
アプリケーションに関するものであっても良いし、特定の選択可能な
アプリケーションにのみ関するものであっても良い。
さらに、処置サイクルが未だ開始されていなくとも、
アプリケーションの選択後、特定の時間間隔が終了したら、再び許可信号を取り消すタイマのような、付加的な安全機能があっても良い。