【課題を解決するための手段】
【0013】
静電的に帯電した繊維物を製造する方法が、少なくとも2つの個別のダイを含むオリフィス構成を使用して実行される。この方法は、好ましくは、正確に2つのダイを使用して実行されるが、特定の用途に応じて3以上のダイが使用されるものであってもよい。
【0014】
これらのダイを使用して、先行技術で既知のメルトブロー紡糸処理(メルト紡糸処理)、例えばSpun−Blown(登録商標)紡糸処理、が実行される。第1のダイは、常に、同心型オリフィス(例えば、バイアックス型オリフィス)を有する。第2のダイ(及び、存在する場合は第3のダイ並びにさらなる追加のダイ)については、線状に配列されたオリフィス(エクソン型)または同心型オリフィス(例えば、バイアックス型)を備えたダイが任意選択で使用される。
【0015】
メルトブロー紡糸処理(メルトブロー)の間、ポリマーの溶融物がダイのキャピラリー開口部を通じて押し出される。ポリマーは、キャピラリー開口部から射出されると、高速で流れるガス流(通常は、空気流)に捕捉される。射出されるポリマーはガス流によって引きずられ、関連するキャピラリー開口部/キャピラリーの直径よりも相当に小さい直径を有するポリマー繊維にまで引き出される。メルトブローでは、比較的長い糸長が生じ、すなわち、比較的長い繊維が生成される。しかし、スパンボンド処理と比較して、相当に多くの繊維の破断が生じる可能性がある。
【0016】
この方法を実行するには、第1のダイを用いて第1のポリマーの溶融物を押し出し、第1種の繊維を形成する。第2のダイを用いて、メルトブロー紡糸処理により第2のポリマーの溶融物を押し出し、第2種の繊維を形成する。必要な場合、第3のダイを用いて第3のポリマーを押し出し、第3種の繊維を形成する。さらなるダイを用いて、さらなる種類の繊維を形成するものであってもよい。
【0017】
本発明に従う繊維物は、収集装置によって、全種類の繊維から、但し少なくとも第1種の繊維と第2種の繊維から、整形される。処理パラメータは、第1種の繊維が、第2種の繊維よりも大きな平均直径を有
し、かつ第1種の繊維の平均繊維直径が10μmよりも大きくなるように選択される。
【0018】
本発明に従って、第1種の繊維は、収集装置による繊維物の整形の前にまたはその間に、少なくとも部分的に、第2種の繊維と混合される。加えて、少なくとも糸の形成及び/または引き出しの間に、第1種の繊維及び/または第2種の繊維は、極性液体(好ましくは、微細な液滴の形の水)を用いて処置される。
【0019】
本発明の方法は、層状構造を有する及び/または粗大繊維と微細繊維の比率が徐々に変化する(すなわち、連続的に変化する)繊維物の、単一の工程での製造を可能とするものである。加えて、繊維は、有効に静電的に帯電される。粗大繊維の生成には同心型オリフィス(例えば、バイアックス型)が使用されるため、粗大繊維は、仮にエクソン型のダイが使用された場合と比較して、さらに大きな直径を有し得る。
【0020】
このように、本発明のプリーツ加工可能な繊維物は、溶融紡糸処理によって生成された繊維からなる。これらの繊維は、第1のポリマーからなる第1種の繊維、及び、第2のポリマーからなる第2種の繊維から構成される。第1種の繊維の平均直径は、第2種の繊維の平均直径よりも大きい。繊維物の体積の少なくとも一部分において、第1種の繊維と第2種の繊維の比率は、繊維物の断面にわたって勾配を示す(徐々に変化する)。第1種の繊維及び/または第2種の繊維の少なくとも一部は、静電的に帯電している。
【0021】
この繊維物をフィルター材として使用することによって、高い濾過効率と高い粒子保持容量(エアフィルターの場合には、高いダスト保持容量)を示す改善されたフィルターの製造が可能となる。加えて、粗大繊維の直径は、例えばスパンボンド不織布のように、フィルター材(不織繊維材)を基材なしで使用することが可能となるために十分大きなサイズとなるように選択される。特に、0.2を超える性能指数が達成可能である。性能指数QFは、次式で定義される。
QF=(−ln(NaCl%透過率/100)/圧力損失[mmH
2O])
ここで、「NaCl%透過率」(非帯電フィルターの透過係数)の正確な値及び圧力損失の正確な値は、2%NaCl溶液を使用し、0.1m/sの通過流速で、TSI社製モデル8130フィルター試験装置を使用して測定されるものであってもよい。
【0022】
収集装置は、好ましくは、吸引手段を備えた輸送ベルトまたは輸送ドラムである。第1種の繊維及び第2種の繊維は、輸送ベルトまたは輸送ドラムの吸引手段によって吸引され、輸送ベルトまたは輸送ドラム上にともに堆積する。
【0023】
第1種の繊維及び第2種の繊維を含む繊維物は、一般に、2種類の繊維の混合が、例えば繊繊維を収集ベルトまたは収集ドラム上に堆積させることによって、繊維の収集の前及び/またはその間に生じるように、収集装置によって整形される。繊維物は、繊維の収集によって整形される。繊維物の完成品において、第1種の繊維は、少なくとも部分的に、第2種の繊維と混合される。但し、この部分は、事実上2つの(または、3つ以上のダイが使用されている場合、3つ以上の)別々の層が存在し、それらの層が非常に薄い混合領域によって結合されているだけである場合のように、小さいものであってもよい。
【0024】
好ましくは、処理パラメータ(例えば、第1のダイの紡糸方向と第2のダイの紡糸方向の間の角度または複数のダイと収集装置の互いに異なる空間的配置方法)は、製造された繊維物の少なくとも一部において、第1種の繊維と第2種の繊維の比率が徐々に変化するように選択される。この部分は、好ましくは、繊維物の体積の少なくとも50%、90%、または98%にわたって広がるものである。
【0025】
繊維物が、静電的に帯電したフィルター媒質のためのデプスフィルター材として使用することが意図された不織布である場合、勾配は、好ましくは、不織布のフィルター内での上流側と意図された面は粗大繊維の比率が微細繊維の比率よりも高く、清浄空気側として意図された面は微細繊維の比率が粗大繊維の比率よりも高くなるように、設計される。この構成を使用すれば、粗大粒子の大部分は、粗大繊維の領域内で早くも捕捉され、一方、微細粒子は、主として微細繊維の比率が比較的高い領域で捕捉される。これによって、微細繊維の比率が比較的高い領域に、粗大粒子による目詰まりがすぐに生じることはないことが保証される。繊維直径に大きな差がある境界面には蓄積が生じ、最終的に目詰まりの要因となる傾向があるが、繊維直径の分布が徐々に変化するため、このような境界面は回避される。この結果、構造中のほとんど全ての断面が濾過のために使用される。
【0026】
本発明に従う不織布がプリーツ付きフィルターの製造のために使用される場合、製造業者は、比較的薄く、但し比較的厚い従来製造されている不織布と同等の粒子捕捉能力またはダスト捕捉能力を有する不織布を、デプスフィルター材として選択することが可能となる。プリーツ付きフィルターの場合、プリーツの山折り部または谷折り部は、濾過には寄与しないか、または最小限の寄与しかない。したがって、本発明に従う薄い不織布から制作されたフィルターの濾過効果は、より厚い不織布から製作されたフィルターよいも良好である。これは、薄い不織布の場合、濾過に対して有効ではないプリーツの山折り部/谷折り部の表面積が、厚い不織布の場合よりも小さいからである。
【0027】
第1種の繊維、すなわち粗大繊維は、好ましくは、繊維直径の平均値
が15μmよりも大きいか、または25μmよりも大きいか、または50μmよりも大きくなるように紡糸される。繊維直径の平均値は、例えば
10μmから200μmnの範囲内、または
10μmから60μmの範囲内、または10μmから30μmの範囲内に存在するものであってもよい。繊維直径の平均値は、好ましくは、
10μmから60μmの範囲内にある。
【0028】
第2種の繊維、すなわち微細繊維は、好ましくは、繊維直径の平均値が11μmよりも小さいか、または5μmよりも小さいか、または3μmよりも小さくなるように押し出される。第2種の繊維のうち最も微細な繊維は、20nm程度の最小直径を有するものであってもよい。
【0029】
これらの2種類の繊維の平均直径は、繊維直径の全体の分布において2つの最頻値が明確に識別可能な程度に十分に離れているものである。この種の繊維分布は、「バイモーダル(二峰性)繊維分布」と呼ばれる。
【0030】
この種のバイモーダル繊維直径分布を得るために、500μmから850μmの範囲の直径を備えるオリフィスを有する第1のダイと、100μmから500μmの範囲の直径を備えるオリフィスを有する第2のダイが使用されるものであってもよい。
【0031】
本発明の方法を実行するために、第1種の繊維用の第1のポリマー及び第2種の繊維用の第2のポリマーとして、一般に、1000よりも低いか、または500よりも低いか、または300よりも低いメルトフローインデックス(以下、MFIともいう)を有するポリマーを選択することが有用であることが判明している。MFIは、可能な場合、ISO 1133に準拠して判別される。そうでない場合、MFIは、ASTM D1238に準拠して判別される。下表には、様々なポリマーに対するさらなる標準的な条件が挙げられている。上記の2つの標準にも、下表にも、対象のポリマーのMFIを判別するための標準パラメータが含まれない場合、DINペーパーバック「Thermoplastische Formmassen(熱可塑性成形材料)」のCAMPUSデータベース、または特定のポリマーの製造業者によって提供される仕様書等の既存の表を参照する必要がある。1つの同じポリマーのMFIを判別するために、しばしば複数のパラメータの組(特に、複数の試験温度及び/または試験負荷)が挙げられている。このような場合には、常に最高温度を備えるパラメータの組を選択する必要があり、さらに、最高温度に加えて、最大負荷を備えるパラメータの組を選択することができる。
【0032】
【表1】
【0033】
ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアミド(PA)、またはこれらのポリマーの混合物は、第1のポリマーとして有利に使用することができる。第2のポリマーとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、またはこれらのポリマーの混合物を使用することが好ましい。
【0034】
特に強くかつ長期間持続する静電帯電は、第1のポリマー及び/または第2のポリマーとして遊離基を結合可能な少なくとも1つの添加剤(すなわち、いわゆる遊離基捕捉剤)を含むポリマーを使用することによって達成されるものであってもよい。遊離基捕捉剤として、例えば、立体障害アミン(HALS:Hinderd Amine Light Stabilizer,ヒンダードアミン系光安定剤)のグループに属する物質(例えば、Chimasorb(登録商標) 944の商品名で知られるアミン)を使用することができる。HALSの代わりに、ピペラジンのグループに属する物質またはオキサゾリドンのグループに属する物質を使用することもできる。
【0035】
内部スリップ剤(マイグレーション補助剤)として作用し得る少なくとも1つの添加剤(例えば、ステアラミドのグループに属する物質)を含む第1のポリマー及び/または第2のポリマーを使用することが有効であることも明らかとなった。エチレンジステアラミド(一般的に、エチレンビス(ステアラミド)(EBS)として、またCrodamide(登録商標) EBSの商品名で知られる)は、特に好適であることが明らかとなった。
【0036】
遊離基捕捉材として作用し得る上述した添加剤のうちの少なくとも1つを含み、同時に内部スリップ剤として作用し得る上述した添加剤のうちの少なくとも1つを含むポリマーを使用することが好ましい。これらの添加剤は、ポリプロピレンとの組合せにおいて特に有効であることが観察された。
【0037】
遊離基捕捉剤として作用する物質は、静電荷を比較的長期にわたって結合することが可能である。内部スリップ剤の効果は、それがポリマー溶融物内に含まれている場合、長期間電荷を結合可能な物質がポリマーの表面に容易に移動可能となることである。静電的帯電は常に表面で発生するため、これらの物質の静電荷を結合するために利用可能な割合が増大する。対象となる物質は、(ポリマー繊維の)ポリマーの内部にある場合には、実際の効果を有しない。
【0038】
少なくとも1つのさらなる添加剤を含む第1のポリマー及び/または第2のポリマーが使用されるものであってもよい。この添加剤は、強誘電セラミックス材(例えば、チタン酸バリウム)のようなさらなる静電荷を(例えば、物理的に)結合可能なものである。あるいは、第1のポリマー及び/または第2のポリマーは、対象の繊維上にすでに存在している電荷が再放電されることを防ぐ(すなわち、既存の電荷を実際的に保護する)さらなる添加剤を含むものであってもよい。この目的のために、フルオロケミカル(例えば、フッ素含有オキサゾリドン、フッ素含有ピペラジン、全フッ素置換アルコールのステアレートエステル)を有利に使用することができる。
【0039】
フィルターをさらに改善するために、超微細繊維(すなわち、1μmよりも小さい平均繊維直径を備える繊維)が第1種の繊維及び/または第2種の繊維に追加されるものであってもよい。代わりにまたは加えて、第1種の繊維及び/または第2種の繊維にステープル繊維(短繊維)が、例えばランドウェバー(Rando Webber)によって、追加されるものであってもよく、または、活性炭の粒子のような粒子が、例えば散布槽または散布シュートによって、追加されるものであってもよい。
【0040】
本発明に従う方法において、これらの追加は、収集装置での繊維物の整形の前及び/またはその間に実行される。超微細繊維は、通常、完成品の繊維/粒子として追加されるのではなく、別体の紡糸ユニット(例えば、溶液ブロー紡糸ユニット)によって追加される。溶液ブロー紡糸ユニットは、超微細繊維をそれが追加される直前に生成する。
【0041】
本発明は、以下において実施形態に基づいてさらに詳細に説明される。