(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816279
(24)【登録日】2020年12月25日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】超音波センサを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
G01S 15/10 20060101AFI20210107BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20210107BHJP
【FI】
G01S15/10
G01S15/931
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-528622(P2019-528622)
(86)(22)【出願日】2017年10月30日
(65)【公表番号】特表2020-502499(P2020-502499A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2017077787
(87)【国際公開番号】WO2018108379
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2019年7月24日
(31)【優先権主張番号】102016224928.2
(32)【優先日】2016年12月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シューマン,ミヒャエル
【審査官】
田中 純
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−184235(JP,A)
【文献】
特開2014−006234(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0182874(US,A1)
【文献】
特表平06−502924(JP,A)
【文献】
特開平09−113618(JP,A)
【文献】
特開平09−096674(JP,A)
【文献】
特開平01−021383(JP,A)
【文献】
実公昭52−025641(JP,Y1)
【文献】
特表2013−538344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52 − G01S 7/64
G01S 15/00 − G01S 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサ(1,2,3,4,5,6)を動作させるための方法であって、複数の測定サイクルが連続して実行され、各測定サイクルにおいて、
−前記超音波センサ(1,2,3,4,5,6)の電気音響的なコンバータが、励起パルスによって機械的な振動へ励起され、これにより、測定信号(10)が前記コンバータによって発出され、
−前記コンバータによってエコー信号(12)が受信され、
−該エコー信号に基づき物体情報が検出され、
前記励起パルスの周波数経過(20,21,22,23)が、時間的に連続して行われる2つの測定サイクルにおいて、少なくとも前記励起パルスの最後において区別される、前記方法において、
物体情報が、少なくとも2つの測定サイクルに基づき互いに比較され、異なる前記励起パルスによる外乱がそれぞれ異なる強さで際立って現れることから、該比較の結果に依存して、前記超音波センサ(1,2,3,4,5,6)の製造公差及び/又はブラケットへの前記超音波センサ(1,2,3,4,5,6)の取り付けにより生じ得る寄生振動により引き起こされる測定エラーである外乱が認識されることを特徴とする方法。
【請求項2】
2つの測定サイクル、特に2つの直接連続する測定サイクルの前記励起パルスの前記周波数経過(20,21,22,23)が、各励起パルスの継続時間の少なくとも最後の400μsの間に区別されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記励起パルスが、100〜3000μsの全体継続時間を有していることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記励起パルスの前記全体継続時間は1600μsであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1の測定サイクルの第1の励起パルスの継続時間が、第2の測定サイクルの第2の励起パルスの継続時間から区別されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第1の測定サイクルの第1の励起パルスの振幅が、第2の測定サイクルの第2の励起パルスの振幅から区別されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの励起パルスが、周波数変調された励起パルスとして構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの励起パルスが、特に、開始周波数と終了周波数の間の線形の周波数経過(20,21,22,23)によって変調され、前記開始周波数及び前記終了周波数が40〜60kHzの周波数範囲から選択されていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エコー信号が整合フィルタを用いてフィルタされるとともに、フィルタ結果に依存して、物体情報が検出されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの測定サイクルに基づく前記物体情報の前記比較の結果に依存して、検出された物体(9)が実際に存在するか、又は測定エラーが存在するかの確率が演算されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つの測定サイクルが実行されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
4以上の測定サイクルが設定されており、該測定サイクルのうち少なくとも1つが、一定の周波数を有する励起パルスを有していることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により動作される少なくとも1つの超音波センサ(1,2,3,4,5,6)を含む、特に原動機付き車両(8)のための距離測定装置。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により動作される複数の超音波センサ(1,2,3,4,5,6)を含む距離測定装置であって、前記超音波センサ(1,2,3,4,5,6)が、原動機付き車両(8)の車体部分(7)に直列に配置されている、前記距離測定装置において、
互いに隣り合って配置された超音波センサ(1,2,3,4,5,6)が時間的に重ならない測定サイクルを有するように、前記超音波センサ(1,2,3,4,5,6)が動作されることを特徴とする距離測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサを動作させるための方法と、本発明の方法により動作される少なくとも1つの超音波センサを有する距離測定装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波に基づく測定システムは、超音波センサの前方に位置する物体に対する距離を測定するために用いられる。用いられるセンサは、パルス/エコー方法に基づいている。この動作では、超音波センサが超音波パルスを発出し、物体により生じる超音波パルスの反射(エコー)が測定される。超音波センサと物体の間の距離は、測定されたエコー経過時間及び音速により演算される。このとき、超音波センサは、送信機及び受信機として機能する。公知の用途は、例えば、原動機付き車両用の、距離警告システム、駐車スペース検出装置及び駐車アシストである。
【0003】
特許文献1には、周囲を検出するためのこのような超音波に基づく測定システムが開示されている。ここでは、超音波を用いて距離測定を行うことができるように構成されている。2つの連続するパルスを区別することができるように、これらパルスは、周波数変調される。
【0004】
送信動作においては、超音波センサの変換要素が機械的な振動へ励起される。励起後、共鳴した、したがってその共鳴周波数で動作するコンバータにおいて、機械的な振動の振幅の急激な減衰段階が生じる。受信されるエコー振幅に比して本質的により大きな減衰振幅に基づき、この時間範囲ではエコーが検出されることがない。したがって、この減衰時間は、「デッドタイム」と呼ばれる。
【0005】
実際には、超音波センサでは、製造に起因して、又は例えば原動機付き車両における保持のためのブラケットへの取付により、そのほか、寄生振動に、したがってデッドタイムの延長に至ることがある。これにより、近傍測定限界、すなわち超音波センサ前方でできる限り近接して物体を測定する能力が低下し得る。
【0006】
複数の寄生振動が同時に発生すると、干渉により、誤ってエコーとして解釈され近傍範囲における物体形成に至る(誤検知)反響現象となることがある。
【0007】
ここで、近傍範囲は、コンバータのダイヤフラムの励起後の機械的な振動がエコーパルスの検出時にまだ完全に減衰していない、すなわち減衰過程がまだ完了していないほど短いエコーパルスの経過時間を反射物体がもたらす、特にセンサの周囲における範囲として規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007029959号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の基礎となる課題は、寄生振動の影響が低減され、その結果、超音波センサの改善された近傍測定性能が達成され、測定エラー(「誤検知」ともいう)の発生が特に近傍範囲において低減される、超音波センサを動作させるための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、寄生振動の特性が励起の種類、特に送信パルスの特性に依存し、寄生振動が所定の周波数範囲における周波数を有するという観察に基づくものである。
【0011】
したがって、本発明は、励起の最後、好ましくは励起パルスの最後の400μsにおける周波数範囲が変化するように励起パターン(「コード」ともいう)が発出から発出まで変化するように、超音波センサを動作させるようになっている。
【0012】
それゆえ、超音波センサを動作させるための方法が提案され、複数の測定サイクルが連続して実行される。各測定サイクルでは、
−超音波センサの電気音響的なコンバータが、周波数変調された励起パルスによって機械的な振動へ励起され、これにより、測定信号がコンバータによって発出され、
−コンバータによってエコー信号が受信され、
−エコー信号に基づき物体情報が検出される。
【0013】
このとき、励起パルスの周波数経過は、本発明により、時間的に連続して行われる測定サイクルにおいて少なくとも周波数経過の最後で区別される。少なくとも2つの、好ましくは少なくとも4つの測定サイクルが行われる。
【0014】
本発明によれば、検出された物体情報は、少なくとも2つの測定サイクルに基づき互いに比較され、この比較の結果に依存して外乱が認識される。このとき、外乱とは、特に、ここでも製造公差及び/又はブラケットへのセンサの取付により生じ得る寄生振動により引き起こされる測定エラーと理解される。
【0015】
したがって、換言すれば、本発明により、距離を測定するための超音波センサが特別のコードで動作されるようになっている。各コードは所定の励起パターンに対応しており、各励起後、新たな励起について他の励起パターンあるいは他のコードが用いられるようになっている。
【0016】
このようにして、減衰現象に基づきデッドタイムが低減され得る。したがって、異なる励起パルス(コード)による潜在的な外乱がそれぞれ異なる強さで際立って現れる。同時に、現実の物体は、全ての励起パルス(コード)において安定的なエコーをもたらし、したがって一致する物体情報をもたらす。したがって、外乱は、信頼性をもって現実の物体と区別され得る。
【0017】
好ましくは、励起パルスは、各励起パルスの最後の400μs内で区別され、2つの測定サイクル、特に互いに直接連続する2つの測定サイクルの励起パルスの周波数経過は、各励起パルスの継続時間の少なくとも最後の400μsの間に区別される。このとき、励起パルスは、100〜3000μs、好ましくは1600μsの全体継続時間を有している。完全な測定サイクルは、例えば40msの全体継続時間を有することができる。
【0018】
好ましい実施形態では、第1の測定サイクルの第1の励起パルスの継続時間は、第2の測定サイクルの第2の励起パルスの継続時間とは区別され、第2の測定サイクルは、第1の測定サイクルに時間的につづくものである。このとき、第2の測定サイクルは、第1の測定サイクルに直接つづき得る。すなわち、第1の測定サイクルと第2の測定サイクルの間に別の信号は発出されないが、第1の測定サイクルと第2の測定サイクルの間に、励起がなされない合間が存在することが可能である。これに代えて、第2の測定サイクルが第1の測定サイクルに直接つづかず、第1の測定サイクルと第2の測定サイクルの間に別の励起がなされることが可能である。
【0019】
これに代えて、又はこれに加えて、第1の測定サイクルの第1の励起パルスの振幅が、第2の測定サイクルの第2の励起パルスの振幅から区別されることが可能である。これにより、発出される各信号の音圧が異なることが生じる。このとき、第2の測定サイクルは、第1の測定サイクルに直接つづき得る。すなわち、第1の測定サイクルと第2の測定サイクルの間に別の信号は発出されないが、第1の測定サイクルと第2の測定サイクルの間に、励起がなされない合間が存在することが可能である。これに代えて、第2の測定サイクルが第1の測定サイクルに直接つづかず、第1の測定サイクルと第2の測定サイクルの間に別の励起がなされることが可能である。
【0020】
励起パルスは、好ましくは周波数変調されたパルスとして構成されている。本発明の意味合いでは、周波数がパルス継続時間中に変化する各励起パルスが周波数変調された励起パルスとして理解され得る。このとき、周波数の定常的な、及び/又は非定常的な変化を設定することが可能である。これに代えて、又はこれに加えて、継続的に一定の励起周波数を有するパルスも用いることが可能である。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態では、各励起パルスは、特に線形の周波数経過によって、特に40〜60kHzの周波数範囲において変調される。これは、各励起パルスの周波数が、開始周波数から終了周波数に達するまで、恒常的に特に線形に上昇又は低下することを意味している。このような励起は、「チャープ」とも呼ばれる。このとき、開始周波数及び終了周波数は、好ましくは40〜60kHzの周波数範囲から選択される。
【0022】
本発明の特に好ましい実施形態では、受信されるエコー信号は、整合フィルタ(最適フィルタ又は相関フィルタともいう)を用いてフィルタされる。これにより、有利には、公知のように励起パルスの既知の信号形状がフィルタの選択時に用いられることで信号雑音比が改善され、フィルタ結果に依存して物体情報がより良い精度で検出される。
【0023】
本発明の特に好ましい実施形態では、少なくとも2つの測定サイクルに基づく物体情報の比較の結果に依存して、検出された物体が実際に存在するか、又は測定エラーが存在するかの確率が演算される。これにより、測定エラー(「誤検知」)の意味合いでのセンサ製造及び/又はセンサ保持に起因する外乱の抑制を特に近傍範囲において効果的に達成することが可能である。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態では、超音波センサの動作において少なくとも4つの測定サイクルが設定されており、これら測定サイクルのうち1つが一定の周波数を有する励起パルスを有している。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、上述の方法の1つにより動作される少なくとも1つの超音波センサを含む、特に原動機付き車両のための距離測定装置が設けられている。
【0026】
特に、上述のように構成された方法により動作される複数の超音波センサを含む距離測定装置が設けられており、超音波センサは、原動機付き車両の車体部分に直列に配置されている。このとき、互いに隣り合って配置された超音波センサが時間的に重ならない測定サイクルを有するように超音波センサが動作される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一形態による複数の超音波センサを有する距離測定装置を概略的に示す図である。
【
図2】励起パルスについての可能な周波数経過の4つのグラフを示す図である。
【
図3】本発明の一形態による複数の超音波センサを有する距離測定装置の様々な超音波センサについての測定サイクルの順序を有する表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施例の以下の説明では、同一の要素が同一の符号で示されており、場合によっては、これら要素の繰り返しの説明は省略する。各図は、本発明の対象を概略的にのみ図示している。
【0029】
図1には、原動機付き車両8のリヤ部がバンパー7と共に概略的に平面図で示されており、バンパーには、超音波センサ1,2,3,4,5,6、が直列に配置されている。超音波センサ1,2,3,4,5,6は、原動機付き車両8の周囲を検出するための距離測定装置の一部である。さらに、超音波センサを用いて検出されるべき物体9が原動機付き車両8の周辺に図示されている。この物体は、例えば、バケット、道路標識又は街灯のような交通障害物及び別の車両であり得る。
【0030】
各超音波センサ1,2,3,4,5,6は電気音響的なコンバータを備えており、このコンバータは、周波数変調された励起パルスによって機械的な振動へ励起され、これにより、測定信号10がコンバータによって発出される。本発明は、超音波センサが原動機付き車両8のリヤ部に配置されていることに限定されていない。これに代えて、又はこれに加えて、別の超音波センサを例えば車両のフロント部の範囲及び/又は原動機付き車両8の側部に配置することが可能である。
【0031】
超音波センサ3に関連して、例えば、発出された測定信号10の発出円すい(発出範囲)と、発出方向を示唆する方向矢印11とが図示されている。発出円すいが物体9へ当たることが見て取れ、その結果、測定信号10は、部分的に物体9から超音波センサ3の方向へ向けて第2の発出円すい(エコー)12において反射される。
【0032】
超音波センサ3は反射を感知し、送信パルスの発出と反射の受信の間で経過する時間全体が特定される。既知の信号速度、例えば約343m/sの空気中での音速において、経過した時間に基づき超音波センサ3から物体9の距離を演算することができる。
【0033】
他の超音波センサ1,2,4,5,6についても同様の測定原理が当てはまる。超音波センサ3では、製造に起因して、又はバンパー7における各超音波センサの固定により、例えば適当なブラケットにより寄生振動することとなり得る。当該振動により、超音波センサ3の非常に近傍にある物体9は、事情によってはもはや信頼性をもって認識され得ない。なぜなら、電気音響的なコンバータの振動が、反射した測定信号12が超音波センサ3に到達する時点で、寄生振動によりまだ十分な規模で消失していないためである。これにより、近傍測定限界、すなわち各超音波センサのできる限り近接して物体9を測定する能力が低下する。複数の寄生振動が同時に生じ、干渉効果によって、物体9が存在しないにもかかわらず、誤ってエコーとして解釈される、いわゆる反響現象に至る(「誤検知」(false positive))こともあり得る。このような寄生振動が距離測定に非常に有効であるように、超音波センサの電気音響的なコンバータを励起する励起パルスの形状に依存する。
【0034】
この問題に対処するために、超音波センサ3は、連続する複数の測定サイクルが実行されるように動作される。各測定サイクルでは、先行した測定サイクルとは異なる、電気音響的なコンバータを励起するための励起パルスが用いられる。特に、励起パルスは、それぞれ最後の400μsの間において異なる。
【0035】
特に、周波数変調された励起パルス(コード)は、いわゆる「線形のFMチャープ」として形成された励起パターンとして選択される。これは、励起周波数が励起パルスの間に開始周波数から目標周波数まで線形に変化することを意味している。しかし、本発明は、周波数変調のこのような種類に限定されておらず、例えば励起パルスの間に増大し、再び低下する周波数のような他の励起パターンも考えられる。さらに、例えば、少なくとも部分的に一定の周波数経過も用いることが可能である。これについて、当業者にとって更なる多様な構成可能性が知られている。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、周波数変調の周波数範囲が励起の最後に、好ましくは励起パルスの最後の400μsに変更されるように、各超音波センサ1,2,3,4,5,6について、発出から発出まで励起パターン(励起パルス、コード)が変更されるように構成されている。
【0037】
周波数変調された励起パルスについての例示的な励起パターンは、
図2a)〜
図2d)にグラフ20〜23で示されている。ここで、それぞれ、時間(μsの単位)に対して周波数(kHzの単位)で記入されている。
【0038】
例示的な実施形態では、以下のことが設定されている。
−第1のサイクルにおいて、励起パルスが1.6ms(=1600μs)の時間での54kHzから45kHzへの線形のチャープとして構成されている。これは、最後の400μsの周波数範囲が47.25kHzから45kHzまでの線形の周波数経過に対応していることを意味している((
図2c)におけるグラフ22参照)。励起パルスのこの形状は、以下において符号C3で示される。
−第2のサイクルにおいては、励起パルスが1.6msの時間での43.5kHzから52.5kHzへの線形のチャープである。これは、最後の400μsの周波数範囲が50.25kHzから52.5kHzまでの線形の周波数経過に対応していることを意味している((
図2d)におけるグラフ23参照)。励起パルスのこの形状は、以下において符号C4で示される。
−第3のサイクルにおいては、励起パルスが0.4msの時間での60kHzから52kHzへの線形のチャープである。これは、最後の400μsの周波数範囲が60kHzから52kHzまでの線形の周波数経過に対応していることを意味している((
図2b)におけるグラフ21参照)。励起パルスのこの形状は、以下において符号C2で示される。
−もう1つのサイクルにおいては、170μsの時間において48kHzの励起パルスの一定の周波数が設定されている((
図2a)におけるグラフ20参照)。励起パルスのこの形状は、以下において符号C1で示される。
【0039】
これらサイクルは、各超音波センサにおいて所定の順序で実行されることができ、ある超音波センサでは、それぞれ時間的に連続するサイクルが本発明により区別される。
【0040】
超音波センサ1,2,3,4,5,6の作動の時間的な経過についての可能な例が
図3に表で図示されている。ここで、表の行は、測定サイクルについて提供される時間インターバルを示している。このような時間インターバルにおいては、電気音響的なコンバータの励起と、また反射した超音波信号の受信及び物体情報の特定が行われる。これら時間インターバルは、それぞれ同一の長さを有することができるが、異なる長さに設定されることも可能である。
【0041】
表の列は、それぞれ超音波センサ1,2,3,4,5,6を示している。
【0042】
したがって、この例では、超音波センサ1は、距離測定装置の作動の開始時に第1の時間インターバルにおいて、その第1の測定サイクルに合わせてC3の形状の励起パルスによって作動され、したがって、超音波センサ1の電気音響的なコンバータは、対応する励起パルスで負荷を受け、対応する測定信号を発出する。同時に、超音波センサ5はC4の形状の励起パルスによって作動される。超音波センサ1,5は互いに対して比較的大きな空間的な距離を有しているという事実により、同時の動作が可能である。なぜなら、互いの干渉の確率が超音波センサ1,5の空間的な距離により低減されているためである。特に、超音波センサ1,5は、互いに隣り合って配置されていない。
【0043】
第1の時間インターバルに時間的につづいて、第2の時間インターバルでは、超音波センサ2,6がそれぞれC1の形状の励起パルスで作動される。超音波センサ2,6についても、超音波センサ2,6の互いに対して比較的大きな空間的な距離により、同時の動作が可能であることが当てはまる。なぜなら、互いに対する干渉の確率が低減されているためである。
【0044】
時間的につづく第3の時間インターバルでは、超音波センサ4のみがC3の形状の励起パルスによって作動される。
【0045】
時間的につづく第4の時間インターバルでは、超音波センサ3のみがC1の形状の励起パルスによって作動される。
【0046】
時間的につづく第5の時間インターバルでは、超音波センサ1,5がそれぞれC1の形状の励起パルスによって作動される。
【0047】
時間的につづく第6の時間インターバルでは、超音波センサ2がC4の形状の励起パルスによって作動され、超音波センサ6がC3の形状の励起パルスで作動される。
【0048】
時間的につづく第7の時間インターバルでは、超音波センサ4のみがC1の形状の励起パルスによって作動される。
【0049】
時間的につづく第8の時間インターバルでは、超音波センサ3のみがC3の形状の励起パルスによって作動される。
【0050】
時間的につづく第9の時間インターバルでは、超音波センサ1がC4の形状の励起パルスによって作動され、超音波センサ5がC3の形状の励起パルスで作動される。
【0051】
時間的につづく第10の時間インターバルでは、超音波センサ2,6がそれぞれC2の形状の励起パルスによって作動される。
【0052】
時間的につづく第11の時間インターバルでは、超音波センサ4のみがC4の形状の励起パルスによって作動される。
【0053】
時間的につづく第12の時間インターバルでは、超音波センサ3のみがC2の形状の励起パルスによって作動される。
【0054】
時間的につづく第13の時間インターバルでは、超音波センサ1,5がそれぞれC2の形状の励起パルスによって作動される。
【0055】
時間的につづく第14の時間インターバルでは、超音波センサ2がC3の形状の励起パルスによって作動され、超音波センサ6がC4の形状の励起パルスで作動される。
【0056】
時間的につづく第15の時間インターバルでは、超音波センサ4のみがC2の形状の励起パルスによって作動される。
【0057】
時間的につづく第16の時間インターバルでは、超音波センサ3のみがC4の形状の励起パルスによって作動される。
【0058】
その後、測定動作を完了することができるか、又は
図3に図示されたパターンを繰り返すことができるか、又は距離測定装置を他のパターンで動作させることが可能である。
【0059】
超音波センサ1,2,3,4,5,の個々の超音波センサを考察すると、
図3による表から、各超音波センサが発出から発出まで(したがって時間的に連続した各センサの測定サイクルにおいて)別々に見てその励起パターンを変化させることが明らかである。したがって、例えば、第1の時間インターバルにおいて、超音波センサ1によって測定が実行される。したがって、第1の時間インターバルは、超音波センサ1の第1の測定サイクルに相当する。この第1の測定サイクルでは、超音波センサ1の電気音響的なコンバータが、C3の形状を有する周波数変調された励起パルスによって機械的な振動へ励起される。測定サイクルの終了後、超音波センサ1は、第5の時間インターバルにおいて超音波センサ1の第2の測定サイクルが実行されるまでパッシブのままである。この第2の測定サイクルでは、超音波センサ1の電気音響的なコンバータが、C1の形状を有する周波数変調された励起パルスによって機械的な振動へ励起される。超音波センサ1の第3の測定サイクルは、第9の時間インターバルにおいて行われる。超音波センサ1の第4の測定サイクルは、第13の時間インターバルにおいて行われる。これにより、周波数変調された励起パルスの周波数経過は、各測定サイクルにおいて区別される。このことは、他の全ての超音波センサ2〜6についても当てはまる。
【0060】
同様に、隣り合って配置されたセンサは同時に動作されないことが明らかである。
【0061】
例えば1つ又は複数の整合フィルタによってフィルタされた、各測定サイクルからの受信データには、潜在的な外乱が、各測定サイクルにおいて異なる強さで明確に現れるか、又はいくつかの励起パターンでは全く存在しない。これに対して、現実の物体9は、用いられる全ての励起パターン(コード)において安定的なエコーをもたらすものである。したがって、外乱は、例えば、用いられる各コードあるいは複数のコードが物体の認識につながるかどうかをチェックする、後続設置された適当なアルゴリズムによって実際の物体(「真陽性」(true positives))から分離されることが可能である。例えば、物体/エコー可能性は、コード確認の数に関連付けることが可能であり、したがって、複数の測定サイクルに基づき、検出された物体が実際に存在するか、又は例えば、いくつの、及びどの励起パターンにおいて物体が検出されたかを特定することで測定エラーが存在するかの確率が演算される。
【符号の説明】
【0062】
1 超音波センサ
2 超音波センサ
3 超音波センサ
4 超音波センサ
5 超音波センサ
6 超音波センサ
7 バンパー、車体部分
8 原動機付き車両
9 物体
10 測定信号
11 方向矢印
12 エコー信号
20 励起パルスの周波数経過
21 励起パルスの周波数経過
22 励起パルスの周波数経過
23 励起パルスの周波数経過