特許第6816391号(P6816391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 味の素株式会社の特許一覧

特許6816391表面における凹凸が増強された成形挽肉加工食品
<>
  • 特許6816391-表面における凹凸が増強された成形挽肉加工食品 図000011
  • 特許6816391-表面における凹凸が増強された成形挽肉加工食品 図000012
  • 特許6816391-表面における凹凸が増強された成形挽肉加工食品 図000013
  • 特許6816391-表面における凹凸が増強された成形挽肉加工食品 図000014
  • 特許6816391-表面における凹凸が増強された成形挽肉加工食品 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816391
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】表面における凹凸が増強された成形挽肉加工食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/60 20160101AFI20210107BHJP
   A23J 3/00 20060101ALI20210107BHJP
   A23J 3/16 20060101ALI20210107BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20210107BHJP
【FI】
   A23L13/60 Z
   A23J3/00 505
   A23J3/16 501
   A23L35/00
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-130538(P2016-130538)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-86(P2018-86A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(72)【発明者】
【氏名】岩田 優子
(72)【発明者】
【氏名】水野 寛士
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−160666(JP,A)
【文献】 特開2017−147952(JP,A)
【文献】 特開2003−235461(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/051886(WO,A1)
【文献】 特開2012−039953(JP,A)
【文献】 特開平08−056582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
A23J 3/00−3/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆たん白を含有する成形挽肉加工食品であって、
当該大豆たん白の平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上10mm未満であり、
当該大豆たん白の水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜20重量%であり、
ハンバーグ、ミートボール、つくね、メンチカツ、ミートコロッケ、肉シュウマイ及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、成形挽肉加工食品。
【請求項2】
成形挽肉加工食品原料における挽肉と大豆たん白との重量比(挽肉:大豆たん白)が、1:0.01〜1.5である、請求項1記載の成形挽肉加工食品。
【請求項3】
挽肉の原料が、鶏肉、豚肉及び牛肉からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項1又は2記載の成形挽肉加工食品。
【請求項4】
ハンバーグである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形挽肉加工食品。
【請求項5】
冷凍品である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形挽肉加工食品。
【請求項6】
平均サイズが0.5mm以上10mm未満であり、水分量が1〜20重量%である大豆たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、成形挽肉加工食品の製造方法であって、
成形挽肉加工食品が、ハンバーグ、ミートボール、つくね、メンチカツ、ミートコロッケ、肉シュウマイ及び肉ギョーザからなる群より選択されるいずれかである、製造方法
【請求項7】
成形挽肉加工食品原料における挽肉と大豆たん白との重量比(挽肉:大豆たん白)が、1:0.01〜1.5である、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
挽肉の原料が、鶏肉、豚肉及び牛肉からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項6又は7記載の製造方法。
【請求項9】
成形挽肉加工食品がハンバーグである、請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
大豆たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物を成形し、得られた成形物を140〜300℃で加熱することを含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記加熱後の成形物を冷凍することを含む、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
平均サイズが0.5mm以上10mm未満であり、水分量が1〜20重量%である大豆たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、加熱調理後の成形挽肉加工食品の表面における凹凸増強方法。
【請求項13】
大豆たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物を成形し、得られた成形物を140〜300℃で加熱することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記加熱後の成形物を冷凍することを含む、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形挽肉加工食品及びその製造方法に関し、詳細には、加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品及びその製造方法に関する。また本発明は、加熱調理後の成形挽肉加工食品の表面における凹凸増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンバーグ等の成形挽肉加工食品は、従来より消費者に人気の高い惣菜の一つであり、例えば、コンビニエンスストアや駅売店において販売される弁当類、ファミリーレストラン等をはじめとして、工業的に大量生産された成形挽肉加工食品が広く利用されている。
【0003】
工業的に生産された成形挽肉加工食品は、表面に起伏の少ないのっぺりとした外観のものが多いが、一般に成形挽肉加工食品は外観がゴツゴツとした手作り感のあるものの方が消費者に好まれる傾向があり、成形挽肉加工食品の表面の凹凸を増強できれば、商品価値、サービスの向上が期待できる。
【0004】
一方、植物性たん白を配合して畜肉加工食品を製造することは、従来より報告されている(特許文献1)。しかしながら、その目的は専ら、ジューシー感やかみごたえ等の食感の向上や、材料コストの抑制にあり、外観(特に、加熱調理後の表面の凹凸構造)を向上させ得ることは報告されていない。
また、食感が良く、ふっくらとして、肉本来の味を損なわない食肉加工品を製造するために、収縮率が異なるように裁断された2種以上の形状の肉塊を用いることが報告されている(特許文献2)。しかしながら、形状の異なる食肉を用いることにより外観(特に、加熱調理後の表面の凹凸構造)を向上させ得ることは報告されておらず、実際、形状の異なる食肉間では、収縮率の差が小さく、加熱調理後の表面の凹凸増強が確認されるまでには至らない。
また、凹凸による視覚的効果を菓子に付加するために、菓子の表面に粒状大豆蛋白の形状が現れるように配置することが報告されている(特許文献3)。しかしながら、食品表面に配置した後も形状が崩れることなく、そのまま形状が現れ得る硬さの植物性たん白を成形挽肉加工食品に応用した場合、成形挽肉加工食品に求められるふっくらとした柔らかい食感が損なわれることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/043384号
【特許文献2】特開2001−238642号公報
【特許文献3】特開2013−34425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、平均サイズが所定の範囲内である植物性たん白をその他の成形挽肉加工食品原料と混合して成形挽肉加工食品を製造することにより、当該成形挽肉加工食品の加熱調理後の表面における凹凸を増強し得ることを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
[1]植物性たん白を含有する成形挽肉加工食品であって、
当該植物性たん白の平均サイズが、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上10mm未満である、成形挽肉加工食品。
[2]成形挽肉加工食品原料における挽肉と植物性たん白との重量比(挽肉:植物性たん白)が、1:0.01〜1.5である、[1]記載の成形挽肉加工食品。
[3]植物性たん白の水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、1〜75重量%である、[1]又は[2]記載の成形挽肉加工食品。
[4]挽肉の原料が、鶏肉、豚肉及び牛肉からなる群より選択される少なくとも一つを含む、[1]〜[3]のいずれか一つに記載の成形挽肉加工食品。
[5]ハンバーグである、[1]〜[4]のいずれか一つに記載の成形挽肉加工食品。
【0009】
[6]平均サイズが0.5mm以上10mm未満である植物性たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、成形挽肉加工食品の製造方法。
[7]成形挽肉加工食品原料における挽肉と植物性たん白との重量比(挽肉:植物性たん白)が、1:0.01〜1.5である、[6]記載の製造方法。
[8]植物性たん白の水分量が、1〜75重量%である、[6]又は[7]記載の製造方法。
[9]挽肉の原料が、鶏肉、豚肉及び牛肉からなる群より選択される少なくとも一つを含む、[6]〜[8]のいずれか一つに記載の製造方法。
[10]成形挽肉加工食品がハンバーグである、[6]〜[9]のいずれか一つに記載の製造方法。
【0010】
[11]平均サイズが0.5mm以上10mm未満である植物性たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、加熱調理後の成形挽肉加工食品の表面における凹凸増強方法。
[12]成形挽肉加工食品原料における挽肉と植物性たん白との重量比(挽肉:植物性たん白)が、1:0.01〜1.5である、[11]記載の凹凸増強方法。
[13]植物性たん白の水分量が、1〜75重量%である、[11]又は[12]記載の凹凸増強方法。
[14]挽肉の原料が、鶏肉、豚肉及び牛肉からなる群より選択される少なくとも一つを含む、[11]〜[13]のいずれか一つに記載の凹凸増強方法。
[15]成形挽肉加工食品がハンバーグである、[11]〜[14]のいずれか一つに記載の凹凸増強方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品を提供できる。
本発明は、成形挽肉加工食品や菓子類をはじめとする食品の素材として従来より利用されている植物性たん白を用いるものであるから、食品の安全性を損なうおそれがない。また植物性たん白は一般的に安価であるため、本発明は経済的見地からも意義が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1〜4及び比較例1の成形挽肉加工食品の加熱調理後における表面の凹凸の強さについての官能評価の結果を示すグラフである。縦軸は、各成形挽肉加工食品の官能評価の評点を示す。
図2】実施例1及び実施例5〜7の成形挽肉加工食品の加熱調理後における表面の凹凸の強さについての官能評価の結果を示すグラフである。縦軸は、各成形挽肉加工食品の官能評価の評点を示す。
図3】実施例1及び実施例8〜10の成形挽肉加工食品の加熱調理後における表面の凹凸の強さについての官能評価の結果を示すグラフである。縦軸は、各成形挽肉加工食品の官能評価の評点を示す。
図4】実施例11〜13の成形挽肉加工食品の加熱調理後における表面の凹凸の強さについての官能評価の結果を示すグラフである。縦軸は、各成形挽肉加工食品の官能評価の評点を示す。
図5】実施例1及び実施例14の成形挽肉加工食品の加熱調理後における表面の凹凸の強さについての官能評価の結果を示すグラフである。縦軸は、各成形挽肉加工食品の官能評価の評点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において「成形挽肉加工食品」とは、挽肉を原料の一つとし、当該挽肉の一部又は全部が成形処理されている加工食品を意味する。成形挽肉加工食品の具体例としては、ハンバーグ、ミートボール、ソーセージ、つくね、メンチカツ、ミートコロッケ、肉シュウマイ、肉ギョーザ等が挙げられる。本発明における成形挽肉加工食品は、未加熱であっても又は加熱調理されていてもよく、冷凍流通品及び冷蔵流通品のいずれも包含する概念である。また、成形挽肉加工食品には、レトルト処理されたレトルト品も包含される。
【0014】
本発明の成形挽肉加工食品において、その原料(本明細書において、成形挽肉加工食品の原料を「成形挽肉加工食品原料」とも称する)の一つとして用いられる挽肉は、成形挽肉加工食品に通常用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、鶏肉、豚肉、牛肉、馬肉、めん羊肉、山羊肉、家兎肉、鴨肉等の少なくとも一種の食用肉;鶏、豚、牛、馬、めん羊、山羊、家兎、鴨等の少なくとも一種の臓器又は可食部分等を原料とするものが好ましい。これらの挽肉原料は、一種単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において用いられる挽肉は、食用肉を原料に含むものが好ましく、鶏肉、豚肉及び牛肉からなる群より選択される少なくとも一つを原料に含むものがより好ましく、豚肉を原料に含むもの(例、豚挽肉)及び/又は牛肉を原料に含むもの(例、牛挽肉)が特に好ましい。本発明において用いられる挽肉の調製方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で適宜行えばよい。例えば、食用肉(例、鶏肉、豚肉、牛肉等)を、ミートチョッパーや肉挽き機等を用いてプレート目1〜20mm(好ましくは1〜10mm)で挽くこと等によって、挽肉を調製できる。
成形挽肉加工食品原料における挽肉の割合は、成形挽肉加工食品の種類や挽肉の種類等に応じて適宜調整すればよく特に制限されないが、食品の呈味を好適に保持し得ることから、成形挽肉加工食品原料に対して、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは25重量%以上であり、更に好ましくは35重量%以上であり、特に好ましくは50重量%以上である。また当該割合は、成形挽肉加工食品原料に対して、通常90重量%以下であり、原料コストを抑制し、且つ/又は挽肉の臭みを低減させ得ることから、好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは70重量%以下であり、特に好ましくは65重量%以下である。
【0015】
本発明の成形挽肉加工食品は、植物性たん白を含有することを特徴の一つとする。すなわち、本発明は、成形挽肉加工食品原料の一つとして植物性たん白を用いる。
本発明において「植物性たん白」とは、採油用の種実若しくはその脱脂物又は穀類の粉末に加工処理を施して、たん白質含有率を高めたものをいい、JAS(日本農林規格)に定義されるそれよりも広い概念を意味する。本明細書において、植物性たん白の製造に用いられる「採油用の種実若しくはその脱脂物又は穀類の粉末」を、便宜上「植物性たん白の主原料」又は単に「主原料」とも称する。
【0016】
本発明において用いられる植物性たん白の主原料(採油用の種実若しくはその脱脂物又は穀類の粉末)は特に制限されないが、具体例としては、大豆、脱脂大豆、小麦及び小麦グルテン等が挙げられ、好ましくは大豆、脱脂大豆である。本明細書において、大豆、脱脂大豆を主原料とする植物性たん白を「大豆たん白」とも称し、小麦、小麦グルテンを主原料とする植物性たん白を「小麦たん白」とも称する。
【0017】
本発明において用いられる植物性たん白は、主原料に由来するたん白質含有率(植物たん白質含有率)が50%を超えることが好ましい。ここで「植物たん白質含有率」は、無水物に換算した場合の値であり、JASに規定されるケルダール法又は燃焼法により測定される。
【0018】
本発明において用いられる植物性たん白は、主原料以外の原材料を用いるものであってよい。主原料以外の原材料の具体例としては、食用植物油脂、食塩、でん粉、砂糖類、香辛料、品質改良剤、乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料、調味料、並びに、動植物の抽出濃縮物及びたん白加水分解物等が挙げられる。
【0019】
本発明において用いられる植物性たん白は、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、平均サイズが所定の範囲内であることが好ましい。平均サイズが所定の範囲内である植物性たん白をその他の成形挽肉加工食品原料と混合して得られる成形挽肉加工食品は、加熱調理後における表面の凹凸が増強され得る。
具体的には、本発明において用いられる植物性たん白の平均サイズは、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、0.5mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることが更に好ましく、3.5mm以上であることが一層好ましく、4mm以上であることがより一層好ましく、4.5mm以上であることが特に好ましい。当該平均サイズが0.5mm未満であると、加熱調理されても植物性たん白があまり収縮せず、表面の凹凸が十分に増強されない傾向がある。
また本発明において用いられる植物性たん白の平均サイズは、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、10mm未満であることが好ましく、9.5mm以下であることがより好ましく、8mm以下であることが更に好ましく、7.5mm以下であることが特に好ましい。当該平均サイズが10mmを超えると、挽肉と植物性たん白の食感や味の違いが目立ち、バランスの悪い食品となる傾向がある。
【0020】
本発明の成形挽肉加工食品において、加熱調理後に表面に増強された凹凸が生じ得るメカニズムは定かではないが、成形挽肉加工食品に含まれる挽肉は加熱調理により収縮するが、平均サイズが所定の範囲内である植物性たん白は、加熱調理されると挽肉とは異なる収縮率(収縮の程度)で収縮し、その結果、当該植物性たん白を含む成形挽肉加工食品は、加熱調理後に表面に増強された凹凸が生じると推定される。
【0021】
本発明において植物性たん白の「平均サイズ」は、JIS(日本工業規格)標準篩(例えば、目開き11.2mm、9.5mm、8.0mm、6.7mm、4.75mm、2.8mm、2.36mm、2.0mm、1.7mm、1.4mm、1.18mm、1.0mm、0.85mm、0.71mm及び0.5mm等のJIS標準篩)を用い、植物性たん白の重量に基づいて測定される。測定に使用するJIS標準篩は、測定サンプルのサイズに応じて適宜選択してよい。
具体的には、植物性たん白の「平均サイズ」は、下記(1)〜(4)の手順で測定される。
(1)目開きの大きい順に上からJIS標準篩を重ねて組み合わせ、その下に受器を設置した後、一番上の篩に測定サンプル(通常、約300g)を入れ、ふたをする。次いで、重ねた篩を両手で持ち、水平面内を一方向に、振幅約70mm、1分間に約60往復の割合で、1分間振動させる。
(2)振動後、各篩及び受器上に残った測定サンプルを回収し、各サイズ範囲(例えば、9.5mmを超え11.2mm以下、8.0mmを超え9.5mm以下、6.7mmを超え8.0mm以下等)に篩い分けされた測定サンプルの重量を、それぞれ秤量する。
(3)各サイズ範囲の測定サンプルについて、各サイズ範囲の中央値と当該範囲の測定サンプルの重量との積を算出する。
具体的な一例を挙げて説明すると、9.5mmを超え11.2mm以下のサイズの測定サンプルは、当該サイズ範囲の中央値10.35mm(=(9.5mm+11.2m)÷2)と当該サイズ範囲の測定サンプルの重量との積を算出し、8.0mmを超え9.5mm以下のサイズの測定サンプルは、当該サイズ範囲の中央値8.75mm(=(8.0mm+9.5mm)÷2)と当該サイズ範囲の測定サンプルの重量との積を算出する。
(4)上記(3)で算出した各サイズ範囲の中央値と当該範囲の測定サンプルの重量との積を全て合計し、得られた合計値を、回収した測定サンプルの総重量で除して算出される値を、植物性たん白の「平均サイズ」とする。
【0022】
本発明において用いられる植物性たん白の形状は、平均サイズが上述の所定の範囲内である固形の形状であれば特に制限されず、例えば、顆粒状、フレーク状、立方体状、直方体状、角錐状、円錐状、球状、板状等が挙げられる。
【0023】
本発明において用いられる植物性たん白は、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、水分量が75重量%以下であることが好ましく、65重量%以下であることがより好ましく、40重量%以下であることが更に好ましく、20重量%以下であることが特に好ましく、10重量%以下であることが最も好ましい。植物性たん白の水分量が、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際に75重量%以下であると、植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物が柔らかくなり過ぎず、十分な成形性を有し得る。また、混合時に植物性たん白がつぶれ難いため、加熱調理後における表面の凹凸が増強され易い。また本発明において用いられる植物性たん白は、その他の成形挽肉加工食品原料と混合される際、混合後に吸水し成形挽肉加工食品に含有された際に違和感のない食感とするため、水分量が1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることが特に好ましい。
本発明において植物性たん白の「水分量」は、JASに規定される植物性たん白の水分の測定方法に従って測定される。
植物性たん白の水分量は、植物性たん白に直接、水を加えること(所謂、水戻し)や、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で乾燥することによって適宜調整できる。
【0024】
本発明において用いられる植物性たん白の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で製造できる。またJAS規格に適合する市販品を用いてもよく、簡便であることから好ましい。
【0025】
成形挽肉加工食品原料における植物性たん白の割合は、成形挽肉加工食品の種類や挽肉の量等に応じて適宜調整すればよく特に制限されないが、成形挽肉加工食品原料に対して、好ましくは37重量%未満であり、より好ましくは35重量%以下であり、特に好ましくは33重量%以下である。成形挽肉加工食品原料における植物性たん白の割合が、成形挽肉加工食品原料に対して37重量%未満であると、植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物が十分な結着性を有し得る。また当該割合は、加熱調理後における表面の凹凸を効果的に増強し得ることから、成形挽肉加工食品原料に対して、好ましくは3重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上であり、更に好ましくは7重量%以上であり、特に好ましくは9重量%以上である。
【0026】
成形挽肉加工食品原料における挽肉と植物性たん白との重量比(挽肉:植物性たん白)は、植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物が十分な結着性を有し得ることから、好ましくは1:0.01〜1.5であり、より好ましくは1:0.03〜1.3であり、更に好ましくは1:0.05〜1.25であり、特に好ましくは1:0.07〜1.2である。
【0027】
本発明は成形挽肉加工食品原料として、挽肉及び植物性たん白に加え、その他の食品素材を適宜用いてよい。その他の食品素材は、成形挽肉加工食品に通常用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、玉ねぎ、ねぎ、にら、キャベツ、白菜、バレイショ、果実、きのこ類、種実等の野菜類;食塩、味噌、マヨネーズ、塩麹、グラニュー糖、醸造酢、ウスターソース、しょうゆ、トマトピューレ、トマトペースト、動植物の抽出濃縮物、みりん、グルタミン酸ナトリウム、核酸系調味料、タンパク加水分解物、酵母エキス等の調味料;こしょう(例、ホワイトペッパー等)、唐がらし、マスタード、パプリカ、ナツメグ等の香辛料;澱粉、小麦粉、コーンスターチ等の澱粉類;ローカストビーンガム、グァーガム、ジュランガム、タマリンドガム、アラビアガム、アルギン酸、キサンタンガム、こんにゃく粉、寒天、ゼラチン、やまいもの粘質物等のガム類;パン粉、麩、卵(例、全卵、卵黄、卵白等)、豆腐等が挙げられる。これらのその他の食品素材は、一種単独で使用してよく、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明は成形挽肉加工食品原料として、水が用いられ得る。成形挽肉加工食品原料として水が用いられる場合、成形挽肉加工食品原料における水の割合は、成形挽肉加工食品原料に対して、通常20重量%以下であり、工業生産時に十分な成形性が得られることから、好ましくは18重量%以下であり、より好ましくは15重量%以下である。また当該割合は、工業生産時に十分な成形性が得られ、原料コストを抑制し得、且つ/又はジューシー感を向上させ得ることから、成形挽肉加工食品原料に対して、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上であり、特に好ましくは10重量%以上である。
【0029】
本発明の成形挽肉加工食品の製造方法は、上述の植物性たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含むこと以外は、特に制限されず、成形挽肉加工食品の種類等に応じて、自体公知の方法又はそれに準ずる方法を適宜用いることができる。例えば、本発明の成形挽肉加工食品は、植物性たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合し、得られた混合物を成形すること等によって製造できる。
【0030】
植物性たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合する方法は特に制限されず、例えば、食品製造に通常用いられるミキサーやニーダー等を用いて撹拌すること等によって混合できる。撹拌条件(例、撹拌速度、撹拌時間等)は特に制限されないが、撹拌速度は、通常10〜50rpmであり、撹拌時間は、通常10秒間〜15分間である。混合の順序は特に制限されないが、例えば、植物性たん白以外の成形挽肉加工食品原料を全て混合した後、そこに植物性たん白を加えて混合してよく、あるいは、植物性たん白以外の成形挽肉加工食品原料の1種又は2種以上の混合物に、植物性たん白を加えて混合した後、残りの成形挽肉加工食品原料を加えて混合してもよい。成形挽肉加工食品原料に水が含まれる場合、当該水は植物性たん白と直接に混合せずに、それら以外の成形挽肉加工食品原料と混合し、得られた混合物を植物性たん白と混合することが好ましい。あるいは、水及び植物性たん白以外の成形挽肉加工食品原料を混合し、得られた混合物に水と植物性たん白を加え、直ぐに混合開始することが好ましい。
【0031】
植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物の成形方法は特に制限されず、例えば、得られる成形物が単層構造となるように成形してよく、又は二層以上の多層構造となるように成形してもよい。得られる成形物が二層以上の多層構造となるように成形する場合、各層は、植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物を含むものであってよいが、当該混合物以外の食品素材(例、卵、チーズ、ソース類、ペースト類、肉類;パン粉、シリアル、クラッカー粉、アーモンドスライス、あられ、湯葉、春雨、そうめん、クルトン等の衣用材料等)からなる層や、当該食品素材を含む層であってもよい。
【0032】
植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物を、二層以上の多層構造となるように成形する場合、当該多層構造の最外層は、植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物を含むことが好ましい。
【0033】
植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物の成形は、手作業でも行い得るが、工業的には、例えば市販の全自動包餡機等を使用して行うことが好ましい。
【0034】
本発明の成形挽肉加工食品は、上述する通り、二層以上の多層構造を有するものであってよいが、一態様として、本発明の成形挽肉加工食品が、内層と、これを包む外層とからなる二層構造である場合、外層における挽肉の量と内層における挽肉の量との重量比(外層:内層)は、好ましくは1:0〜2であり、より好ましくは1:0.1〜1.5である。またその場合、外層における植物性たん白の量と内層における植物性たん白の量との重量(外層:内層)は、好ましくは1:0〜2であり、より好ましくは1:0.1〜1.5である。
【0035】
植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物を成形することによって得られる成形物は、成形挽肉加工食品の所望の流通形態等に応じて、更に加熱処理、冷凍処理等に供してもよい。従って、本発明の成形挽肉加工食品は、未加熱であっても又は加熱されていてもよく、あるいは、それらの冷凍品(冷凍食品)等であってもよい。
【0036】
植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物を成形することによって得られる成形物を加熱する場合、加熱方法は特に制限されず、自体公知の方法(例えば、焼成、油ちょう、ボイル、蒸し、過熱水蒸気加熱等)で加熱できる。加熱温度及び加熱時間等の各条件は、原料の種類、加熱方法等に応じて適宜調整し得るが、加熱温度は通常50〜300℃であり、加熱時間は通常30秒間〜3時間である。
【0037】
植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合物を成形することによって得られる成形物を冷凍する場合、冷凍条件(例えば、冷凍温度等)は、適宜調整すればよいが、冷凍温度は通常−10℃以下であり、好ましくは−15℃以下である。冷凍処理に供される成形物は、加熱されたものであっても、未加熱のものであってもよい。冷凍処理によって得られる冷凍品(冷凍食品)の解凍方法は特に制限されず、冷凍食品分野における公知の解凍方法(例えば、電子レンジ加熱、オーブン加熱、過熱水蒸気加熱、自然解凍等)を適宜用い得る。
【0038】
本発明の成形挽肉加工食品は、好ましくはハンバーグ(未加熱ハンバーグ及び加熱済ハンバーグ、並びにそれらの冷凍品を含む)、つくね(未加熱つくね及び加熱済つくね、並びにそれらの冷凍品を含む)及びミートボール(未加熱ミートボール及び加熱済ミートボール、並びにそれらの冷凍品を含む)からなる群より選択されるいずれか一つであり、より好ましくはハンバーグである。
【0039】
本発明の成形挽肉加工食品は、加熱調理後における表面の凹凸が増強されていることを特徴の一つとする。ここで「加熱調理後」とは、成形挽肉加工食品が加熱処理(例えば、焼成、油ちょう、ボイル、蒸し、過熱水蒸気加熱等)に供されることによって喫食に適した状態になった後を意味する。
また本発明において、加熱調理後の成形挽肉加工食品の表面における凹凸の「強さ」とは、当該凹凸の頻度や凹凸の大きさ(凹部の底面から凸部の頂点までの長さ)から総合的に評価される特性であって、専門パネルによる官能評価によって評価できる。
【0040】
本発明は、上述の植物性たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合することを含む、加熱調理後の成形挽肉加工食品の表面における凹凸増強方法(以下、単に「本発明の凹凸増強方法」と称する場合がある)も提供する。
【0041】
本発明の凹凸増強方法における「成形挽肉加工食品」は、本発明の成形挽肉加工食品と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0042】
本発明の凹凸増強方法において用いられる「植物性たん白」は、本発明の成形挽肉加工食品に用いられるものと同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。本発明の凹凸増強方法において、植物性たん白と混合する「その他の成形挽肉加工食品原料」には、本発明の成形挽肉加工食品に用いられる挽肉、また所望により、本発明の成形挽肉加工食品に関する説明において「その他の食品素材」として例示されるものと同様のものを用いることができ、それらの好ましい態様も同様である。
【0043】
本発明の凹凸増強方法において、成形挽肉加工食品原料における挽肉及び植物性たん白の割合、並びに、成形挽肉加工食品原料における挽肉と植物性たん白との重量比は、本発明の成形挽肉加工食品に関する説明において示される割合、重量比と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0044】
本発明の凹凸増強方法において、植物性たん白を、その他の成形挽肉加工食品原料と混合する方法は特に制限されず、例えば、本発明の成形挽肉加工食品に関する説明において示される方法と同様に行えばよく、好ましい態様も同様である。
【0045】
本発明の凹凸増強方法によれば、加熱調理後の成形挽肉加工食品の表面における凹凸を増強し得る。
表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品は、鉄板等で焼成する場合に鉄板に張り付きにくくなることや、表面の焼き色に濃淡が付くことにより色味においても手作り感が向上すること等も期待できる。
【0046】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
以下の試験例において、植物性たん白には、各種サイズの市販の大豆たん白(不二製油株式会社製、水分量:7重量%(カタログ値))を使用した。
植物性たん白の平均サイズは、JIS標準篩を用い、下記(1)〜(4)の手順で測定した。
(1)目開き11.2mm、9.5mm、8.0mm、6.7mm、4.75mm、2.8mm、2.36mm、2.0mm、1.7mm、1.4mm、1.18mm、1.0mm、0.85mm、0.71mm及び0.5mmのJIS標準篩を、目開きの大きい順に上から重ねて組み合わせ、その下に受器を設置した後、一番上の篩に測定サンプル(約300g)を入れ、ふたをした。次いで、重ねた篩を両手で持ち、水平面内を一方向に、振幅約70mm、1分間に約60往復の割合で、1分間振動させた。
(2)振動後、各篩及び受器上に残った測定サンプルを回収し、各サイズ範囲に篩い分けされた測定サンプルの重量を、それぞれ秤量した。
(3)各サイズ範囲の測定サンプルについて、各サイズ範囲の中央値と当該範囲の測定サンプルの重量との積を算出した。
(4)上記(3)で算出した各サイズ範囲の中央値と当該範囲の測定サンプルの重量との積を全て合計し、得られた合計値を、回収した測定サンプルの総重量で除して算出される値を、植物性たん白の平均サイズとした。
【0048】
[試験例1]
(実施例1)
表1に示される原料のうち植物性たん白以外の原料を、料理用ミキサー(株式会社エフ・エム・アイ製「キッチンエード」)を用いて30〜40rpmで4分間混合した後、表2の実施例1の植物性たん白(平均サイズ:5.2mm)を表1に示される配合割合で加え、30秒間混合した。得られた混合物100gを楕円形に成形し、1個当たりの重量が100gである成形挽肉加工食品(未加熱ハンバーグ)を2個調製した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
(実施例2)
表2の実施例1の植物性たん白に代えて、実施例2の植物性たん白(平均サイズ:3.4mm)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0052】
(実施例3)
表2の実施例1の植物性たん白に代えて、実施例2の植物性たん白(平均サイズ:6.3mm)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0053】
(実施例4)
表2の実施例1の植物性たん白に代えて、実施例2の植物性たん白(平均サイズ:2.1mm)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0054】
(比較例1)
表2の実施例1の植物性たん白に代えて、比較例1の植物性たん白(平均サイズ:0.25mm未満)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0055】
(コントロール)
牛挽肉の配合割合を46.3重量%とし、植物性たん白を用いなかったこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0056】
(ハンバーグの加熱調理及び冷凍処理)
実施例1〜4、比較例1及びコントロールの成形挽肉加工食品は、両面を140℃のホットプレートで焼成し(片面5分間)、180℃のオーブンで6分間加熱した後、−30℃で冷却して凍結させた。
【0057】
(表面の凹凸の評価)
実施例1〜4及び比較例1の成形挽肉加工食品の加熱調理後における表面の凹凸の強さについて、5名の専門パネルにより官能評価を行った。
【0058】
官能評価は、各専門パネルが、表面の凹凸の強さについて、下記の評価基準に基づいて評点付けし、5名の専門パネルの平均点を算出することにより行った。評点付けは、上面、側面及び底面の凹凸の強さを総合的に判断して行い、また割れている部分は評価に入れなかった。
【0059】
4点:コントロールの成形挽肉加工食品に比べ、極めて強い
3点:コントロールの成形挽肉加工食品に比べ、かなり強い
2点:コントロールの成形挽肉加工食品に比べ、強い
1点:コントロールの成形挽肉加工食品に比べ、やや強い
0点:コントロールの成形挽肉加工食品と同等
−1点:コントロールの成形挽肉加工食品に比べ、やや弱い
−2点:コントロールの成形挽肉加工食品に比べ、弱い
−3点:コントロールの成形挽肉加工食品に比べ、かなり弱い
−4点:コントロールの成形挽肉加工食品に比べ、極めて弱い
【0060】
結果を表3及び図1に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3及び図1に示される結果から明らかなように、実施例1〜4の成形挽肉加工食品は、いずれも加熱調理後における表面の凹凸が強かった。中でも、実施例1及び3の成形挽肉加工食品は、加熱調理後における表面の凹凸が顕著に強かった。
【0063】
[試験例2]
(実施例5)
牛挽肉の配合割合を41.7重量%とし、植物性たん白の配合割合を4.6重量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0064】
(実施例6)
牛挽肉の配合割合を27.8重量%とし、植物性たん白の配合割合を18.5重量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0065】
(実施例7)
牛挽肉の配合割合を18.5重量%とし、植物性たん白の配合割合を27.8重量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0066】
実施例1、実施例5〜7における牛挽肉、挽肉全体(牛挽肉及び豚挽肉)及植物性たん白の配合割合(重量%)、並びに挽肉と植物性たん白との重量比(挽肉:植物性たん白)を、表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
(ハンバーグの加熱調理及び冷凍処理)
実施例5〜7の成形挽肉加工食品は、両面を140℃のホットプレートで焼成し(片面5分間)、180℃のオーブンで6分間加熱した後、−30℃で冷却して凍結させた。
【0069】
(表面の凹凸の評価)
実施例1及び実施例5〜7の成形挽肉加工食品の加熱調理後における表面の凹凸の強さについて、5名の専門パネルにより官能評価を行った。官能評価は試験例1と同様の方法で行った。結果を表5及び図2に示す。
【0070】
【表5】
【0071】
表5及び図2に示される結果から明らかなように、実施例1及び実施例5〜7の成形挽肉加工食品は、いずれも加熱調理後における表面の凹凸が強かった。植物性たん白の配合割合が増加するほど、表面の凹凸が強くなる傾向が見られた。
【0072】
[試験例3]
(実施例8)
植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合前において植物性たん白に0.5重量倍の水を加え、植物性たん白の水分量を約38重量%とし、牛挽肉の配合割合を32.4重量%とし、植物性たん白の配合割合を13.9重量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0073】
(実施例9)
植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合前において植物性たん白に1.5重量倍の水を加え、植物性たん白の水分量を約63重量%とし、牛挽肉の配合割合を23.1重量%とし、植物性たん白の配合割合を23.1重量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0074】
(実施例10)
植物性たん白とその他の成形挽肉加工食品原料との混合前において植物性たん白に2.5重量倍の水を加え、植物性たん白の水分量を約73重量%とし、牛挽肉の配合割合を13.9重量%とし、植物性たん白の配合割合を32.4重量%としたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0075】
実施例1、実施例8〜10における牛挽肉、挽肉全体(牛挽肉及び豚挽肉)及び植物性たん白の配合割合(重量%)、並びに、他の成形挽肉加工食品原料と混合した際の植物性たん白の水分量(重量%)及び平均サイズ(mm)を、表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】
(ハンバーグの加熱調理及び冷凍処理)
実施例8〜10の成形挽肉加工食品は、両面を140℃のホットプレートで焼成し(片面5分間)、180℃のオーブンで6分間加熱した後、−30℃で冷却して凍結させた。
【0078】
(表面の凹凸の評価)
実施例1及び実施例8〜10の成形挽肉加工食品の加熱調理後における表面の凹凸の強さについて、5名の専門パネルにより官能評価を行った。官能評価は試験例1と同様の方法で行った。結果を表7及び図3に示す。
【0079】
【表7】
【0080】
表7及び図3に示される結果から明らかなように、実施例1及び実施例8〜10の成形挽肉加工食品は、いずれも加熱調理後における表面の凹凸が強かった。植物性たん白の水分量が増加するほど、表面の凹凸が弱くなる傾向が見られた。
【0081】
[試験例4]
(実施例11)
牛挽肉の配合割合を50.9重量%とし、豚挽肉を用いなかったこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0082】
(実施例12)
豚挽肉の配合割合を50.9重量%とし、牛挽肉を用いなかったこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0083】
(実施例13)
牛挽肉及び豚挽肉に代えて、鶏挽肉を配合割合50.9重量%で用いたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0084】
(ハンバーグの加熱調理及び冷凍処理)
実施例11〜13の成形挽肉加工食品は、両面を140℃のホットプレートで焼成し(片面5分間)、180℃のオーブンで6分間加熱した後、−30℃で冷却して凍結させた。
【0085】
(表面の凹凸の評価)
実施例11〜13の成形挽肉加工食品の加熱調理後における表面の凹凸の強さについて、5名の専門パネルにより官能評価を行った。官能評価は試験例1と同様の方法で行った。結果を表8及び図4に示す。
【0086】
【表8】
【0087】
表8及び図4に示される結果から明らかなように、実施例11〜13の成形挽肉加工食品は、いずれも加熱調理後における表面の凹凸が強かった。挽肉の原料として牛肉を用いた成形挽肉加工食品(実施例11)及び豚肉を用いた成形挽肉加工食品(実施例12)は、鶏肉を用いた成形挽肉加工食品(実施例13)に比べて表面の凹凸が強く、中でも牛肉を用いた成形挽肉加工食品(実施例11)は、表面の凹凸が最も強かった。
【0088】
[試験例5]
(実施例14)
成形挽肉加工食品原料の混合物100gを、外層用50gと内層用50gとに分け、外層用混合物で内層用混合物を包み、楕円形に成形したこと以外は、上記実施例1と同様の手順で成形挽肉加工食品を2個調製した。
【0089】
(ハンバーグの加熱調理及び冷凍処理)
実施例13の成形挽肉加工食品は、両面を140℃のホットプレートで焼成し(片面5分間)、180℃のオーブンで6分間加熱した後、−30℃で冷却して凍結させた。
【0090】
(表面の凹凸の評価)
実施例1及び実施例14の成形挽肉加工食品の加熱調理後における表面の凹凸の強さについて、5名の専門パネルにより官能評価を行った。官能評価は試験例1と同様の方法で行った。結果を表9及び図5に示す。
【0091】
【表9】
【0092】
表9及び図5に示される結果から明らかなように、実施例1及び実施例14の成形挽肉加工食品は、いずれも加熱調理後における表面の凹凸が強かった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、加熱調理後の表面の凹凸が増強された成形挽肉加工食品を提供できる。
本発明は、成形挽肉加工食品や菓子類をはじめとする食品の素材として従来より利用されている植物性たん白を用いるものであるから、食品の安全性を損なうおそれがない。また植物性たん白は一般的に安価であるため、本発明は経済的見地からも意義が高いものである。
図1
図2
図3
図4
図5