(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816397
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】タッチパネル付き表示装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
G06F3/041 660
G06F3/041 630
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-148378(P2016-148378)
(22)【出願日】2016年7月28日
(65)【公開番号】特開2018-18320(P2018-18320A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 朋子
(72)【発明者】
【氏名】金光 聡
(72)【発明者】
【氏名】橋田 裕功
(72)【発明者】
【氏名】伴井 香苗
(72)【発明者】
【氏名】原田 貴浩
【審査官】
田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/171102(WO,A1)
【文献】
特開2015−194993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて配置された複数の電極線の集合(ストライプ)、または閉空間からなる単位格子の集合体からなる網目状(メッシュ)であって容量検出部を規定する帯状電極と、
前記帯状電極間に配設される、導通性がない帯状の非電極部と、
自身の片面に、複数の前記帯状電極および前記非電極部を所定の配列方向に沿って配設する複数の基材フィルムと、
前記基材フィルムが取り付けられる表示装置と、を有し、
各前記基材フィルムは、互いの前記配列方向が揃った状態で切断ラインを介して複数継ぎ合わされており、
前記切断ラインは、前記非電極部に設けられ、隣接する前記基材フィルム同士が自己整合的に接合自在な形状を有し、
前記切断ラインの延伸方向は、前記表示装置の画素配列の方向と非平行である、タッチパネル付き表示装置。
【請求項2】
前記切断ラインは、直線内に間欠的に嵌合可能な形状の凹凸部を具備する請求項1記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項3】
前記切断ラインは、ジグザグ線である、請求項1または請求項2に記載のタッチパネル付き表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを継ぎ合わせて作製される大面積のタッチパネルとそのタッチパネルを使用した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置などのフラットパネルディスプレイの大型化に伴い、その画面から指などを用いて情報を入力可能とするためのタッチパネルにも、大型化が必要となっている。
【0003】
タッチパネルは、人の指や導体がタッチパネルの表面に接触したり、近接した時に、電気抵抗や静電容量の変化を測定することによって、その位置を検出することにより情報を入力する装置である。特に、その分解能の高さから、スマートフォンやタブレット端末で多用されている静電容量方式のタッチパネルは、20インチ以上の大型化には、解決しなければならない課題が多いとされている。
【0004】
その主な理由としては、サイズが大きくなると透明電極や配線等による静電容量が増大するため、人間の指等の外部導体の接触または接近による静電容量の変化が相対的に小さくなるためであり、またインピーダンスが高くなることで、ノイズの影響を受けやすくなるという問題がある。
【0005】
そのような問題を克服し、且つ大型化に対応できるようにするため、小型のタッチパネルを継ぎ合わせることで大型のタッチパネルを作製する方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、タッチパネルを構成するセンシング電極(観察者側)/ドライヴ電極(反観察者側)の形成されたセンサーフィルムがディスプレイの最外面(観察者側)に配置される場合、複数枚のセンサーフィルムを継ぎ合わせる境界線が目についてしまうだけでなく、継ぎ目部分が、表示装置の画素と干渉して目立ってしまう問題がある。
そのため、タッチパネルを継ぎ合わせる場合に、精度良く継ぎ合わせる必要がある。
【0007】
このような問題点を解決する技術として、例えば特許文献1には、複数個のパネルが、当該パネルの一部が互いに重なるように配置された表示装置が開示されている。この表示装置は、前記各パネルが、表示パネルと、前記表示パネル上に配置されたタッチパネルとを備え、隣接する前記パネルが、観察側に位置する前記表示パネルの表示領域と、観察側とは反対側に位置する前記タッチパネルの配線領域とが重なるように、配置されていることを特徴とする表示装置である。
【0008】
この技術は、大型の表示装置を複数の小型表示装置から構成する技術であって、小型表示装置は、それぞれ表示パネルとタッチパネルが積層された構成であり、そのタッチパネルの2辺の周縁部には、タッチパネルの電極の引き出し配線領域が形成されている。2つの小型表示装置を重ねる場合、一方の小型表示装置の引き出し配線領域と、もう一方の小型表示の表示領域を重ねて配置することにより、タッチパネルの継ぎ目を目立たなくしている。
【0009】
また、この技術は表示パネルも小型である場合に限定しており、大型の表示パネルを使用し、タッチパネルは小型のものを継ぎ合わせて使用することは想定していない。
さらに、継ぎ目部分が、表示装置の画素と干渉する問題,継ぎ目ラインに沿った位置ずれについては考慮していない。
【0010】
特許文献1は、タッチパネルの装着される表示装置ごと継ぎ合わせて大画面化する「マルチディスプレイ」に係る技術であり、大サイズのディスプレイ画面に、前記サイズ未満の面積のタッチパネル用センサーフィルムを適用して大サイズのタッチパネルを構成する目的とは、技術思想が根本的に異なる。
【0011】
タッチパネルを構成するセンサーフィルムを継ぎ合わせる構成が開示された先行技術としては、特許文献2が公知である。
特許文献2は、第1の電極が複数配置された第1の透明基板と、
前記第1の透明基板に重ね合わせて結合され、前記第1の電極と交差するように第2の電極が複数配置された第2の透明基板と、
前記第1及び第2の電極間の静電容量を検出することにより、前記結合した第1及び第2の透明基板上の座標を検出する制御部とを備え、
前記第1の透明基板は、前記第1の電極が配置されない第1の継ぎ目領域と、前記第1の継ぎ目領域により分割され、前記第1の電極が複数配置された複数の領域とを有し、
前記第2の透明基板は、前記第2の電極が配置されない第2の継ぎ目領域と、前記第2の継ぎ目領域により分割され、前記第2の電極が複数配置された複数の領域とを有し、
前記結合した第1及び第2の透明基板において、前記第1の継ぎ目領域と、前記第2の継ぎ目領域とが、一部または全体で重なり合わないように、前記第1及び第2の継ぎ目領域を配置した入力装置である。(請求項1)
【0012】
特許文献2は、複数枚のセンサーフィルムを継ぎ合わせる際の「継ぎ目領域」の配置関係を考慮したに過ぎず、当然ながら、複数枚のセンサーフィルムの電極同士を連続させて電極線を延長することにより、複数枚→1枚の大画面のセンサーフィルムとする技術ではなく、独立した複数枚のセンサーフィルムの状態が維持される「マルチディスプレイ」での改良提案であり、特許文献1同様、継ぎ目の不可視化,ディスプレイの画素との関係については一切の考察が見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2013−45450号公報
【特許文献2】特開2015−194993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の事情に鑑み、大サイズのディスプレイ画面に、前記サイズ未満の面積のタッチパネル用センサーフィルムを複数枚継ぎ合わせて適用して大サイズのタッチパネルを構成する上で好適な手法を提供することを目的とする。
【0015】
またそのタッチパネルを使用して継ぎ合わせた境界である継ぎ目を目立たなくすることにより、視認性を向上させた表示装置を提供することを課題とする。
尚、本発明においては、タッチパネル/タッチセンサ,表示装置/ディスプレイ,大型/大画面/大サイズは、同義語として混在して用いることもある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決する手段として、本発明は、基材フィルムの片面に、一つの方向である配列方向に沿って一定の間隔を空けて並び、容量検出部を規定するノード要素となる複数の帯状電極を備え、
前記帯状電極は、間隔を空けて配置された複数の電極線の集合(ストライプ)、または閉空間からなる単位格子の集合体からなる網目状(メッシュ)であるタッチセンサ用電極
フィルムの継ぎ合せ方法であり、
複数の帯状電極の配列方向が等しい複数枚のフィルムを、互いの端部にある前記帯状電極の間で噛み合う断裁線で組み合わせてなり、
前記断裁線は、タッチセンサの積層対象である画像表示素子の画素配列に被らずに且つ画素配列方向とは非平行に一定の傾斜角度を維持する様に屈曲するジグザグ線であることを特徴とするタッチセンサ用電極フィルムの継ぎ合せ方法である。
【0017】
前記ジグザグ線は、継ぎ合せにより隣接することになる帯状電極間で、帯状電極の輪郭に応じた切断ラインであることが好適である。
すなわち、この場合の帯状電極は、一定幅の帯状ストライプ(直線)ではなく、広幅部/狭幅部を繰り返す形状(例えば、ダイヤモンドパターン)や、ストライプまたはメッシュから構成される一定幅のジグザグ形状であり、前記ジグザグ線は前記各種形状に沿った切断ラインとなる。(図示せず)
【0018】
前記断裁線は、直線内に間欠的に嵌合可能な形状の凹凸部を具備する切断ラインであっても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明のタッチパネルによれば、小型タッチパネルを継ぎ合わせた継ぎ目が、自己整合的に接合位置を調整可能な切断パターンによって形成されているため、容易にタッチパネルを接合してタッチパネルを大面積化することが可能である。
【0020】
また、本発明のタッチパネルを使用して作製した表示装置によれば、表示装置の画素配列の方向と、タッチパネルの切断ラインが延伸する方向と、を平行に配置しないことにより、両者による干渉を抑制し、切断ラインを目立たなくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のタッチパネルの構成例を示す概略説明図であって、2つの小型タッチパネルを接合した場合を例示している。
【
図2】本発明のタッチパネルの切断ラインの一例を拡大して示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<タッチパネル>
本発明のタッチパネルについて、
図1および2を用いて説明する。
本発明のタッチパネル20は、複数のタッチパネルの接合体からなる。
図1は、本発明のタッチパネル20が、2枚の小型タッチパネル10(10−1、10−2)からなる接合体である場合を例示している。
【0023】
個々の小型タッチパネル10は、支持体である基材フィルム6の一方の面に、格子状導体からなる複数の縦ストライプ状電極が平行且つ等間隔に配置されて、タッチパネル10の帯状電極が構成されている(図示せず)。
図2は、
図1における継ぎ合せライン(断裁線)3−1近傍を、帯状電極1を含めて示す拡大平面図である。
帯状電極1は、並列した複数の電極線の集合(ストライプ)、または閉空間からなる単位格子の集合体からなる網目状(メッシュ)から構成される。
【0024】
本出願人は、第1・第2電極が重なり合って組み合わせられることにより、全体として平面視で矩形を構成単位とするメッシュ(網目)が構成されるように、合成されたメッシュパターンを分解して設計した各種パターンを提案している。
第1・第2電極は、「センシング電極」「ドライヴ電極」と称されることもあり、それ
ぞれがx方向に延びる列電極,y方向に延びる行電極として、それらの組み合わせによる直交座標を規定することになる。
異なる基材フィルムの片面にそれぞれ第1・第2電極が形成されてなる2枚のセンサーフィルムを重ね合わせてタッチセンサーフィルムとする場合(GFFと称される)の形態であっても、同一の基材フィルムの表裏面それぞれに第1・第2電極が形成されてなる1枚のセンサーフィルムによりタッチセンサーフィルムとする場合(GF2と称される)の形態であっても、本発明は適用可能である。
各帯状電極を構成する電極線は、
図2に例示する網目状(メッシュ)に限るものではなく、並列したストライプが帯状電極の長手方向(電流の流れる方向)に延びる電線であっても良い。
また、第1・第2電極の組み合わせによりメッシュパターンが合成される場合に限らず、第1・第2電極それぞれがメッシュパターンであり、組み合わせにより新たなメッシュパターンが構成される場合であっても良い。(例えば、第1・第2電極が、共に同一サイズ,正方形の単位メッシュから成るパターンの場合、単位メッシュを2次元的に半ピッチずつずらした場合、組み合わせにより構成される新たなメッシュパターンは、単位メッシュの一辺が1/2,サイズが1/4の正方形からなる単位メッシュとなる。)
【0025】
図2における隣接する縦方向(x方向)に延びる列電極となる帯状電極1(以下、縦ストライプ状電極1と称することもある)のそれぞれの間は、格子状導体の交点から隣接する交点に延伸する導体が断線しているため、導通性が無い浮きパターン領域2(非電極部)となっている。
【0026】
本発明のタッチパネル20を構成する、隣接する小型タッチパネル10−1、10−2の境界にある浮きパターン領域2には、縦ストライプ状電極1が延伸する方向に沿って自己整合的に接合位置を目合わせ可能な切断ライン3−1が形成されている(
図1参照)。
【0027】
(切断ラインの形状)
本発明のタッチパネル20に形成されている切断ライン3−1の形状は、縦ストライプ状電極1が延伸する方向に沿って自己整合的に接合位置を目合わせ可能な形状で形成されていれば良い。
【0028】
具体的には、切断ライン3−1の形状が、例えば
図2に例示したようなジグザグ形状であれば、自己整合的に接合位置の目合わせが可能となる。また、図示していないが、嵌合可能な形状であっても、自己整合的に接合位置の目合わせが可能となる。
【0029】
まず基材フィルム6の表裏面に格子状導体のパターンを形成する。これはパターン幅が数μm程度である場合は、銅やアルミニウムなどの金属薄膜を形成後、フォトリソグラフィ法によりパターニングすることにより実施可能である。パターン幅が数十μm以上の場合には、オフセット印刷法などの印刷法を使用して、導体インキを印刷する事によって、形成可能である。以上のようにして、基材フィルム6の両面に互いに直交する関係の縦ストライプ状電極1と浮きパターン領域2を形成する。
【0030】
次に、小型タッチパネルの接合部である切断ライン3−1を形成する。形成する位置は、小型タッチパネル10−1と10−2の接合する側の辺にある浮きパターン領域2に、切断ライン3−1を形成する。
【0031】
この様にして製造した2枚の小型タッチパネルを切断ライン3−1で接合して、自己整合的に目合わせして位置を合わせた状態で、任意の固定方法を使用して固定することによって、小型タッチパネル2枚の接合体として、大型のタッチパネルを製造することが可能である。
【0032】
以上、説明の都合で、2枚の小型タッチパネルを使用した接合体を使用して大型のタッチパネルを製造する方法について説明したが、2枚に限定する必要はなく、同様の方法にて更に多くの小型タッチパネルを使用したタッチパネルを製造することができる。
【0033】
<表示装置>
次に、本発明のタッチパネルを使用した表示装置について説明する。本発明のタッチパネルは、複数の小型タッチパネルを接合して製造したタッチパネルであるため、幾つかの切断ラインを備えている。この切断ラインが、表示装置の画素配列の方向と平行に配置されると、光学的な干渉を起こす虞がある。そのため、干渉を起こさず、切断ラインを目立たせなくするためには、本発明のタッチパネルに形成された切断ラインと、表示装置の画素配列の方向を、平行に配置しないことが必要である。任意の角度だけ平行からずらした状態で、表示装置に取り付けることによって、本発明のタッチパネルを使用した表示装置を製造することができる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・縦ストライプ状電極(帯状電極)
2・・・浮きパターン領域
3−1・・・切断ライン(断裁線)
6・・・基材フィルム
10−1、10−2・・・小型タッチパネル
20・・・タッチパネル