(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1〜
図4を参照して、
図1に示す第1実施形態の制振装置30を備える建設機械1について説明する。
【0010】
建設機械1は、建設作業などの作業を行う機械である。建設機械1は、例えば移動式のクレーンであり、例えばクローラクレーンであり、例えばホイールクレーンでもよい。建設機械1は、例えば移動式の基礎工事用機械でもよい。建設機械1は、下部走行体11と、ブーム13と、ガントリ15と、上部旋回体20と、を備える。
【0011】
下部走行体11は、建設機械1を走行させる。下部走行体11は、例えばクローラを備え、例えばホイールを備えてもよい。
【0012】
ブーム13は、上部旋回体20に起伏自在に取り付けられる。建設機械1がクレーンの場合、ブーム13は、吊荷を吊り上げる。建設機械1が基礎工事用機械の場合、ブーム13に、掘削装置が取り付けられる。ブーム13は、例えばラチス構造を有するラチスブームであり、例えば箱型の伸縮ブームでもよい。
【0013】
ガントリ15は、上部旋回体20に取り付けられ、起伏ロープを介してブーム13を支持する。ガントリ15は、コンプレッションメンバ15aと、テンションメンバ15bと、を備える。
【0014】
上部旋回体20は、下部走行体11に旋回自在に取り付けられる。上部旋回体20は、上部フレーム21と、運転室23と、制振装置30と、を備える。
【0015】
上部フレーム21は、下部走行体11に旋回自在に取り付けられ、長手方向を有し、前後方向Xに延びる。上部フレーム21には、運転室23などが取り付けられる。上部フレーム21の長手方向を前後方向Xとする。前後方向Xにおいて、制振装置30から運転室23に向かう側(または向き)を前側X1とし、その逆側を後側X2とする。前後方向Xに直交する水平方向を横方向Yとする。横方向Yは、上部フレーム21の幅方向である。前後方向Xおよび横方向Yに直交する方向を上下方向Zとする。上下方向Zにおいて、下部走行体11から上部旋回体20に向かう側を上側Z1とし、その逆側を下側Z2とする。上部フレーム21は、テンションメンバ取付部21tを備える。テンションメンバ取付部21tは、テンションメンバ15bが取り付けられる部分であり、上部フレーム21の後側端部21eの左右部分(横方向Y外側の両側部分)から上側Z1に突出する。上記「端部」は、端および端の近傍の部分を意味する(以下同様)。
【0016】
制振装置30は、動吸振器として機能することで、建設機械1の振動を抑制する装置である。制振装置30は、上部旋回体20の後側X2部分に設けられる。制振装置30は、ウエイト35と、支持復元手段40と、を備える。
【0017】
ウエイト35は、カウンタウエイトCWを構成し、カウンタウエイトCWの一部のみを構成してもよい。カウンタウエイトCWは、建設機械1の前後方向Xのつり合いをとるための、おもりである。ウエイト35は、制振装置30による制振のためのおもりと、建設機械1の前後方向Xのつり合いをとるためのおもりと、に兼用される。よってウエイト35が2つの用途に兼用されない場合に比べ、建設機械1の質量を抑制でき、建設機械1のコストを抑制できる。ウエイト35は、上部フレーム21よりも後側X2に配置される。
図2に示すように、ウエイト35の重心を、重心35gとする。ウエイト35は、複数の構成要素を備え、例えば上下方向Zに分解可能であり、例えば上下方向Zに2段に分解可能である。例えば、ウエイト35は、第1ウエイト36と、第2ウエイト37と、を備える。
【0018】
第1ウエイト36は、ウエイト35の下側Z2部分を構成する。第1ウエイト36の下端(下側Z2の端)の上下方向Z位置(上下方向Zにおける位置)は、上部フレーム21の後側端部21eにおける下端の上下方向Z位置よりも下側Z2に配置される。
【0019】
第2ウエイト37は、第1ウエイト36よりも上側Z1に配置され(載せられ)、第2ウエイト37に支持される。
【0020】
支持復元手段40は、ウエイト35の支持、および、ウエイト35の位置の復元を行う。支持復元手段40は、上部フレーム21に対してウエイト35を支持する。支持復元手段40は、上部フレーム21に対してウエイト35を上下方向Zに変位(相対変位)可能に支持する。支持復元手段40は、上部フレーム21に対してウエイト35を水平方向に変位可能に支持し、前後方向Xに変位可能に支持する。支持復元手段40は、上部フレーム21に対するウエイト35の位置を、定位置(下記)に復元させる。支持復元手段40は、上部フレーム側支持部51と、ウエイト側支持部53と、取付ピン55と、規制ピン57と、
図4に示す復元部材取付ブラケット61と、第1復元部材63と、
図2に示すストッパ65と、を備える。
【0021】
上部フレーム側支持部51は、上部フレーム21に対してウエイト35を支持する。上部フレーム側支持部51は、上部フレーム21に固定される。上部フレーム側支持部51は、上部フレーム21の後側端部21eよりも後側X2に配置される。
図3に示すように、上部フレーム側支持部51は、上部フレーム21の後側端部21eの左右部分(横方向Y外側の両側部分)に設けられる。
図4に示すように、上部フレーム側支持部51は、本体部51aと、凹部51bと、規制ピン用ピン孔51cと、を備える。
【0022】
本体部51aは、例えば板状である。上部フレーム側支持部51は、例えばテンションメンバ取付部21tと一体的に形成され、例えばテンションメンバ取付部21tと別体でもよい。なお、テンションメンバ取付部21tは設けられなくてもよい。凹部51bは、本体部51aに形成され、取付ピン55を下側Z2から支持する。凹部51bは、上部フレーム21に対する取付ピン55の前後方向Xの移動を規制する。凹部51bは、下側Z2に向かって凹む形状であり、横方向Yから見てU字状(略U字状を含む)である。凹部51bの下側Z2部分は、横方向Yから見て円弧状であり、略半円弧状である。規制ピン用ピン孔51cは、本体部51aに形成され、規制ピン57が差し込まれるピン孔である。
【0023】
ウエイト側支持部53は、上部フレーム21に対してウエイト35を支持する。ウエイト側支持部53は、ウエイト35に固定される。ウエイト側支持部53は、第1ウエイト36に固定され、第1ウエイト36よりも上側Z1に突出する。
図3に示すように、ウエイト側支持部53は、上部フレーム側支持部51と対応する位置に配置され、重心35gの左右(重心35gよりも横方向Y外側の両側)に設けられる。
図4に示すように、ウエイト側支持部53は、本体部53aと、取付ピン用ピン孔53bと、規制ピン用ピン孔53cと、を備える。
【0024】
本体部53aは、板状である。
図3に示すように、例えば、本体部53aは、横方向Y片側に2枚(合計4枚)設けられ、上部フレーム側支持部51の本体部51aを挟むように配置される。
図4に示すように、取付ピン用ピン孔53bは、本体部53aに形成され、取付ピン55が差し込まれるピン孔である。規制ピン用ピン孔53cは、本体部53aに形成され、規制ピン57が差し込まれる(通される)ピン孔である。
【0025】
取付ピン55は、上部フレーム21にウエイト35を取り付けるためのピンである。取付ピン55は、上部フレーム21に対してウエイト35を、回転軸55aを中心に回転自在に支持する。取付ピン55は、回転軸55aを中心にウエイト35が振り子状に回転移動(回動)するように、ウエイト35を支持する。以下では、上部フレーム21に対してウエイト35が回転軸55aを中心として回転(回動、移動、変位)することを、単に「ウエイト35の回転」「ウエイト35が回転」などともいう。取付ピン55は、上部フレーム側支持部51の凹部51bに支持される。取付ピン55は、凹部51bに引っ掛けられ、凹部51bに固定されない。取付ピン55は、ウエイト側支持部53の取付ピン用ピン孔53bに差し込まれる。取付ピン55は、ウエイト側支持部53に固定され、その結果、ウエイト35と一体である。
【0026】
回転軸55aは、
図2に示すように、上部フレーム21に対するウエイト35の回転の中心軸である。回転軸55aは、取付ピン55の中心軸である。回転軸55aの方向は、水平方向であり、横方向Y(上部フレーム21の幅方向、左右水平方向)である。回転軸55aは、ウエイト35の重心35gからずれた位置に配置される。回転軸55aの前後方向X位置(前後方向Xにおける位置)は、重心35gの前後方向X位置と同じ位置、または、重心35gよりも前側X1の位置である。回転軸55aの上下方向Z位置(上下方向Zにおける位置)は、重心35gよりも上側Z1の位置である。回転軸55aを中心とするウエイト35の回転の向きには、回転方向R1と回転方向R2とがある。回転方向R1は、回転軸55aを中心としてウエイト35の下側Z2部分が前側X1に移動しようとする向き(
図2では反時計回り)である。回転方向R2は、回転方向R1の逆向き(
図2では時計回り)である。
【0027】
規制ピン57は、
図4に示すように、ウエイト35の回転を許容および規制するピンである。規制ピン57は、定位置(下記)に対するウエイト35の変位が所定の範囲内のときには、ウエイト35の回転を許容する。規制ピン57は、定位置に対するウエイト35の変位が所定の範囲外になろうとしたときには、ウエイト35の回転を規制する。例えば、規制ピン57は、上部フレーム21からウエイト35が外れるおそれのある位置に変位できないように、ウエイト35の回転を規制する。規制ピン57は、上部フレーム側支持部51の規制ピン用ピン孔51cと、ウエイト側支持部53の規制ピン用ピン孔53cと、に差し込まれる。規制ピン用ピン孔51cおよび規制ピン用ピン孔53cのうち一方のピン孔は、他方のピン孔よりも大きく、例えば直径が大きく、例えば長孔でもよい。
図4に示す例では、規制ピン用ピン孔53cの直径は、規制ピン用ピン孔51cの直径よりも小さい。
【0028】
復元部材取付ブラケット61は、第1復元部材63を上部フレーム21に取り付ける(固定する)ための部材である。例えば、復元部材取付ブラケット61は、上部フレーム21の後側X2端部の下側Z2端部(底部)に固定される。
【0029】
第1復元部材63は、ウエイト35を定位置に復元させる、復元機能(ばねの機能)を有する。第1復元部材63は、ウエイト35に当たることで、ウエイト35を定位置に復元させる。例えば、ウエイト35が定位置に対して前側X1に変位した場合、第1復元部材63は、ウエイト35を後側X2に押し、ウエイト35を定位置に復元させる。
【0030】
この第1復元部材63は、上部フレーム21に対するウエイト35の振動を減衰させる、減衰機能を有する。第1復元部材63は、ウエイト35に当たることで、上部フレーム21に対するウエイト35の振動を減衰させる。第1復元部材63が減衰機能を有することにより、上部フレーム21の振動数(加振力の振動数)と、上部フレーム21に対するウエイト35の振動の振動数(制振装置30の振動数)と、がずれた場合でも、建設機械1の振動を抑制する効果が発揮される。
【0031】
この第1復元部材63は、例えば下記の[配置a]〜[配置e]のように配置される。[配置a]第1復元部材63の少なくとも一部は、上部フレーム21よりも後側X2、かつ、ウエイト35よりも前側X1の領域Aに配置される。領域Aは、上部フレーム21の後側端部21eよりも後側X2、かつ、ウエイト35の前側X1端部よりも前側X1の領域である。[配置b]第1復元部材63の少なくとも一部は、回転軸55aよりも下側Z2に配置される。この配置により、第1復元部材63は、ウエイト35の振り子状の回転による変位を復元させる。[配置c]第1復元部材63の上側Z1端部は、上部フレーム21の後側端部21eの下側Z2端部(底部)よりも下側Z2に配置される。この配置により、第1復元部材63の配置スペースを確保しやすい。例えば、第1復元部材63の上側Z1端部の上下方向Z位置は、後側端部21eの下側Z2の端の上下方向Zと同じ位置、または、後側端部21eの下側Z2の端よりも下側Z2の位置である。[配置d]第1復元部材63の下側Z2端部の上下方向Z位置は、ウエイト35の下側Z2端部の上下方向Z位置とほぼ同じ位置に配置される。[配置e]
図3に示すように、例えば、第1復元部材63は、上部フレーム21の後側端部21eの横方向Y内側部分に配置され、例えば横方向Y中央に配置される。例えば、第1復元部材63は、上部フレーム21の後側端部21eの左右(横方向Y外側の両側)に配置されてもよい。
【0032】
この第1復元部材63は、弾性体である。
図4に示す第1復元部材63は、前後方向Xに伸縮し、前後方向Xの弾性力を発生させることで、復元機能を発揮する。第1復元部材63は、例えばゴムばねである。ゴムである第1復元部材63は、たわむことで、減衰機能を発揮する。
【0033】
ストッパ65は、
図2に示すように、ウエイト35に当たることで、ウエイト35の回転を規制する。ストッパ65は、ウエイト35が上部フレーム21に当たることを防ぐ。ストッパ65は、第1復元部材63(
図4参照)が縮みすぎることを防いでもよい。
図3に示すように、ストッパ65は、例えば上部フレーム21の後側端部21eの左右部分(横方向Y外側の両側部分)などに配置される。
【0034】
(定位置)
図2に示すように、ウエイト35が定位置に配置されている状態について説明する。この状態では、ウエイト35は、第1復元部材63に当たっている。このとき、回転方向R1のモーメントと回転方向R2のモーメントとが互いに吊り合った状態で、各モーメントがウエイト35に作用する。回転方向R1のモーメントは、ウエイト35の自重により生じる。回転方向R2のモーメントは、第1復元部材63の復元力(弾性力、ばね力)により生じる。
【0035】
(ウエイト35の回転時の作動)
ウエイト35が定位置に対して回転方向R1に回転した場合の、制振装置30の作動は次の通りである。この場合、第1復元部材63の圧縮力が増加する。その結果、回転方向R2のモーメントが増加する。すると、ウエイト35が、回転方向R2に回転し、定位置に復元する。
【0036】
ウエイト35が定位置に対して回転方向R2に回転した場合の、制振装置30の作動は次の通りである。この場合、第1復元部材63の圧縮力が減少する。その結果、回転方向R2のモーメントが減少する。一方、ウエイト35の自重による回転方向R1のモーメントは、ほぼ変わらない。すると、ウエイト35が、回転方向R1に回転し、定位置に復元する。
【0037】
回転軸55aを中心とするウエイト35の回転は、規制ピン57およびストッパ65により規制される。第1復元部材63は、ウエイト35が回転しているときにウエイト35に常に当たり、ウエイト35の回転に追従して伸縮する。なお、本実施形態では、ウエイト35と第1復元部材63とは連結されない。
【0038】
(上下方向Zの振動)
上部フレーム21が上下方向Zに振動した場合の作動は次の通りである。この場合、回転軸55aが上下方向Zに振動する。ここで、ウエイト35の重心35gと回転軸55aとが、上下方向Zに直交する方向にずれており、本実施形態では前後方向Xにずれている。よって、回転軸55aが上下方向Zに振動すると、ウエイト35は、回転軸55aを中心として振り子状に回転する。よって、上部フレーム21の上下方向Zの振動が、ウエイト35により打ち消される(吸収される)。また、このとき、ゴムばねである第1復元部材63がたわむことにより、上部フレーム21に対するウエイト35の振動が減衰される。よって、建設機械1の上下方向Zの振動が抑制される。
【0039】
(前後方向Xの振動)
上部フレーム21が前後方向Xに振動した場合の作動は次の通りである。この場合、回転軸55aが前後方向Xに振動する。ここで、ウエイト35の重心35gと回転軸55aとが前後方向Xに直交する方向にずれており、本実施形態では上下方向Zにずれている。よって、回転軸55aが前後方向Xに振動すると、ウエイト35は、回転軸55aを中心として振り子状に回転する。よって、上部フレーム21の前後方向Xの振動が、ウエイト35により打ち消される。また、このとき、ゴムばねである第1復元部材63がたわむことにより、上部フレーム21に対するウエイト35の振動が減衰される。よって、建設機械1の前後方向Xの振動が抑制される。
【0040】
(建設機械1の振動)
図1に示す建設機械1の走行時に、地面Gの凹凸などにより、上部旋回体20が「前屈み前後円弧状」に振動する。上記「前屈み前後円弧状」の振動は、下部走行体11の下側Z2端部かつ前側X1端部(転倒支点)を略中心とする、建設機械1の略回転運動による振動である。その結果、上部フレーム21が上下方向Zおよび前後方向Xに振動する。
【0041】
建設機械1が移動式クレーンの場合、吊荷を吊り上げた状態で走行する吊荷走行の際に、前屈み前後円弧状が大きくなりやすい。
【0042】
建設機械1が、バケットなどの掘削装置(図示なし)により地面Gを掘削する機械の場合、例えば次の問題がある。このような建設機械1では、ウインチ(図示なし)により、バケットをフリーフォールさせ、急激なブレーキをかけ、バケットを巻き上げる、という作業が繰り返される。その際に、上部旋回体20に作用する上下方向Zの荷重が変動する。また、下部走行体11と上部旋回体20との間に設けられる旋回座(図示なし)の隙間、および上部旋回体20を構成する構造物のたわみなどにより、上部旋回体20が前後方向X、上下方向Z、および前屈み前後円弧状に振動する問題がある。
【0043】
建設機械1に振動が生じる結果、建設機械1の操作性が悪化するおそれ、乗り心地が悪化するおそれ、強度が低下するおそれ、および、周辺住民などに不安を与えるおそれなどが生じ得る。一方、本実施形態では、制振装置30により建設機械1の振動を抑制できるので、振動による問題を抑制できる。
【0044】
(第1の発明の効果)
図1に示す建設機械1の制振装置30による効果は次の通りである。建設機械1は、下部走行体11と、上部フレーム21を有する上部旋回体20と、を備える。上部フレーム21は、下部走行体11に旋回可能に取り付けられ、前後方向Xに延びる。
図2に示すように、制振装置30は、ウエイト35と、支持復元手段40と、を備える。ウエイト35は、上部フレーム21よりも後側X2に配置され、カウンタウエイトCWを構成する。
【0045】
[構成1]支持復元手段40は、上部フレーム21に対してウエイト35を上下方向Zに変位可能に支持し、上部フレーム21に対するウエイト35の位置を定位置に復元させる。
【0046】
上記[構成1]により、ウエイト35が、上部フレーム21の上下方向Zの振動を抑制する動吸振器として作用する。よって、上部旋回体20の上下方向Zの振動を抑制できる。その結果、下部走行体11を備える建設機械1の振動を抑制できる。
【0047】
この効果の具体例は次の通りである。
図1に示すように、下部走行体11を備える建設機械1(移動式)では、走行時に、地面Gの凹凸などにより上下方向Zの振動が生じやすい。そのため、下部走行体11を備える建設機械1では、地面Gに固定される建設機械(固定式)に比べ、上下方向Zの振動を抑制することが重要である。そこで、本実施形態では、制振装置30により、上部旋回体20の上下方向Zの振動を抑制できる。
【0048】
(第2の発明の効果)
[構成2]
図2に示すように、支持復元手段40は、上部フレーム21に対してウエイト35を水平方向(前後方向Xおよび横方向Yの少なくともいずれか)に変位可能に支持する。
【0049】
上記[構成2]により、ウエイト35が、上部フレーム21の水平方向の振動を抑制する動吸振器として作用する。よって、建設機械1の水平方向の振動を抑制できる。
【0050】
(第3の発明の効果)
[構成3−1]支持復元手段40は、上部フレーム21に対してウエイト35を、回転軸55aを中心に回転自在に支持する。
[構成3−2]回転軸55aは、ウエイト35の重心35gからずれた位置に配置される。
【0051】
制振装置30は、上記[構成3−1]を備える。よって、例えば、上部フレーム21に対してウエイト35をスライド可能に支持する機構を設ける必要がある場合などに比べ、上部フレーム21に対してウエイト35を変位可能に支持するための構成を簡易に構成できる。また、制振装置30は、上記[構成3−2]を備える。よって、上部フレーム21が振動したとき、回転軸55aに対してウエイト35を変位させることができる。
【0052】
(第4の発明の効果)
[構成4]回転軸55aの方向は、上部フレーム21の幅方向(横方向Y)である。
【0053】
上記[構成4]により、回転軸55aを中心にウエイト35が前後方向Xに変位できる。よって、建設機械1の前後方向Xの振動を抑制できる。
【0054】
(第5の発明の効果)
[構成5]回転軸55aの前後方向X位置は、ウエイト35の重心35gの前後方向X位置と同じ位置、または、ウエイト35の重心35gよりも前側X1の位置である。
【0055】
上記[構成5]により、ウエイト35の重心35gよりも後側X2に回転軸55aが配置される場合に比べ、上部フレーム21に対して回転軸55aを支持する構造物(例えば上部フレーム側支持部51)の強度を高めやすい。よって、この構造物(上部フレーム側支持部51)の、たわみや揺れを抑制できる。よって、上部フレーム21に対してウエイト35が、意図した方向以外の方向に変位することを抑制できる。また、上記[構成5]では、回転軸55aを中心とするウエイト35の回転を規制するための部材(例えば第1復元部材63など)を、ウエイト35よりも後側X2に配置する必要がない。よって、
図1に示す下部走行体11に対する上部旋回体20の旋回中心から、上部旋回体20の後側X2端部までの距離(旋回半径)を小さくできる。その結果、建設機械1の寸法が大きくなることを抑制できる。
【0056】
(第6の発明の効果)
[構成6]
図4に示すように、支持復元手段40は、ウエイト35に当たることでウエイト35を定位置に復元させる第1復元部材63を備える。第1復元部材63は、上部フレーム21よりも後側X2かつウエイト35よりも前側X1に配置される。
【0057】
上記[構成6]により、例えば第1復元部材63をウエイト35よりも後側X2に配置する場合などに比べ、第1復元部材63の設置スペースを確保しやすい。また、上記[構成6]により、例えば第1復元部材63をウエイト35よりも後側X2に配置する場合などに比べ、第1復元部材63を上部フレーム21の近くに配置できる。よって、上部フレーム21に対して第1復元部材63を支持する構造物(例えば復元部材取付ブラケット61)の強度を確保しやすい。また、上記[構成6]では、第1復元部材63を、ウエイト35よりも後側X2に配置する必要がないので、旋回半径を小さくできる。その結果、建設機械1(
図1参照)の寸法が大きくなることを抑制できる。
【0058】
(第7の発明の効果)
[構成7]
図2に示すように、回転軸55aは、ウエイト35の重心35gよりも前側X1かつ上側Z1に配置される。第1復元部材63は、回転軸55aよりも下側Z2に配置される。
【0059】
制振装置30は、上記[構成7]を備える。よって、上部フレーム21に対してウエイト35に、下側Z2または前側X1の力がかかると、ウエイト35の下側Z2部分が前側X1に移動する向き(回転方向R1)に、ウエイト35が回転する。すると、第1復元部材63が、ウエイト35の回転を規制し、ウエイト35を定位置に復元させる。また、上部フレーム21に対してウエイト35に、上側Z1または後側X2の力がかかると、ウエイト35の下側Z2部分が後側X2に移動しようとする向き(回転方向R2)に、ウエイト35が回転する。すると、ウエイト35の自重が、ウエイト35の回転を規制し、ウエイト35を定位置に復元させる(振り子の作用)。したがって、前後方向Xおよび上下方向Zの、ウエイト35の移動の規制および定位置への復元を行うための構成を簡素にできる。具体的には例えば、横方向Yから見て1か所の回転軸55aと、横方向Yから見て1カ所の第1復元部材63を設けることで、ウエイト35の移動の規制および定位置への復元が可能となる。よって、制振装置30の部品点数を削減でき、コストを抑制できる。
【0060】
(第8の発明の効果)
[構成8]回転軸55aは、ウエイト35の重心35gよりも上側Z1に配置される。
【0061】
上記[構成8]により、ウエイト35の自重を利用して、ウエイト35の位置を定位置に復元させることができる(振り子の作用)。よって、ウエイト35の位置を定位置に復元させるための構成を簡易な構成にできる。例えば、第1復元部材63を小さくでき、例えば、第1復元部材63を省略することができる(図示なし)。よって、制振装置30の部品点数を削減でき、コストを抑制できる。
【0062】
(第2実施形態)
図5〜
図8を参照して、第2実施形態の制振装置130について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、制振装置130のうち、第1実施形態との共通点については、第1実施形態と同一の符号を付し、説明を省略した。制振装置130は、ウエイト136と、支持復元手段140と、を備える。
【0063】
ウエイト136は、カウンタウエイトCWを構成し、第1実施形態の第2ウエイト37(
図2参照)に相当する。
【0064】
支持復元手段140は、下部ウエイト146と、取付ピン155と、固定ピン157と、第2復元部材163と、を備える。
【0065】
下部ウエイト146は、カウンタウエイトCWを構成する。下部ウエイト146は、第1実施形態の第1ウエイト36と同様の位置に配置される。下部ウエイト146は、第1実施形態の第1ウエイト36(
図2参照)とは異なり、上部フレーム21に対して固定される。下部ウエイト146の上面(上側Z1の面)は、支持面146aを備える。支持面146aは、上部フレーム21に対してウエイト136の自重を、ウエイト136よりも下側Z2から支持する。
【0066】
取付ピン155および固定ピン157は、次のように構成される。第1実施形態では、
図2に示す取付ピン55は、上部フレーム21に対するウエイト35の回転軸55aを構成した。また、規制ピン57は、回転軸55aを中心とするウエイト35の回転を所定の範囲内で許容した。一方、本実施形態では、
図5に示す取付ピン155および固定ピン157は、上部フレーム21に対して下部ウエイト146を固定するためのピンである。
【0067】
第2復元部材163は、ウエイト136を定位置に復元させる、復元機能を有する。第2復元部材163は、下部ウエイト146に対するウエイト136の振動を減衰させる、減衰機能を有する。第2復元部材163は、支持面146aとウエイト136との間に配置される。第2復元部材163は、支持面146aに対してウエイト136が、前後方向X、横方向Y、および上下方向Zのすべての方向に変位可能となるように、ウエイト136を支持する。第2復元部材163は、複数設けられ、
図6に示す例では3個設けられ、ウエイト136を3か所で支持する。例えば、第2復元部材163は、支持面146a(
図5参照)の左右部分(横方向Y外側の両端部)と、支持面146aの横方向Y中央部の例えば後側X2部分と、に配置される。なお、第2復元部材163の数は、3でなくてもよく、2以下でもよく、4以上でもよい。第2復元部材163は、例えば柱状であり、例えば円柱状であり、例えば角柱状などでもよい。
【0068】
この第2復元部材163の上下方向Zのばね定数は、第2復元部材163の水平方向のばね定数よりも大きい。このばね定数の条件により、
図7に示す支持面146aに対してウエイト35が傾くことが抑制される。
図8に示すように、第2復元部材163は、弾性体163aと、鋼板163bと、台座163cと、を備える。第2復元部材163は、弾性体163aと鋼板163bとが上下方向Zに積層された、積層構造を備える。第2復元部材163が積層構造を備えることにより、積層構造を備えない場合に比べ、第2復元部材163の上下方向Zのばね定数と、第2復元部材163の水平方向のばね定数との差が大きくなる。
【0069】
弾性体163aは、上下方向Zおよび水平方向(横方向Yおよび前後方向X)の弾性力を発生させる。弾性体163aは、ゴムばねであり、複数設けられる。鋼板163bは、上下方向Zに並ぶ弾性体163aどうしの間に配置される。鋼板163bは、複数枚設けられ、弾性体163aに接着される。台座163cは、第2復元部材163の上側Z1端部および下側Z2端部に配置される。台座163cは、ウエイト136および下部ウエイト146に、例えばボルトなどの締結部材により固定される。
【0070】
(定位置)
図5に示すように、ウエイト136が定位置に配置されている状態について説明する。この状態では、ウエイト136が自重により第2復元部材163を下側Z2に押す力と、第2復元部材163が復元力(弾性力、ばね力)によりウエイト136を上側Z1に押す力と、が吊り合う。
【0071】
(上下方向Zの振動)
上部フレーム21が上下方向Zに振動した場合の作動は次の通りである。この場合、上部フレーム21の上下方向Zの振動は、下部ウエイト146および第2復元部材163を介して、ウエイト136に伝わる。そして、ウエイト136は、上部フレーム21に対して(下部ウエイト146に対して)、上下方向Zに変位する。よって、上部フレーム21の上下方向Zの振動が、ウエイト136により打ち消される(吸収される)。また、このとき、ゴムばねである弾性体163a(
図8参照)がたわむことにより、上部フレーム21に対するウエイト136の上下方向Zの振動が減衰される。よって、建設機械1の上下方向Zの振動が抑制される。
【0072】
(前後方向X、横方向Yの振動)
上部フレーム21が横方向Yに振動した場合の作動は次の通りである。この場合、上部フレーム21が上下方向Zに振動した場合と同様に、ウエイト136は、上部フレーム21に対して(下部ウエイト146に対して)横方向Yに変位する。よって、上部フレーム21の横方向Yの振動が、ウエイト136により打ち消される。ここで、第2復元部材163の横方向Yのばね定数は、上下方向Zのばね定数よりも小さい。よって、上部フレーム21に対してウエイト136が横方向Yに変位しやすい(上下方向Zと比べた場合)。よって、上部フレーム21の横方向Yの振動がより抑制される。また、このとき、ゴムばねである弾性体163a(
図8参照)がたわむことにより、上部フレーム21に対するウエイト136の横方向Yの振動が減衰される。よって、建設機械1の横方向Yの振動が抑制される。上部フレーム21が前後方向Xに振動した場合も、上部フレーム21が横方向Yに振動した場合と同様に、建設機械1の前後方向Xの振動が抑制される。
【0073】
(ウエイト136の大きさ)
ウエイト136の質量が大きいほど、制振装置130による振動抑制効果が大きくなる。一方、ウエイト136の質量が小さいほど、第2復元部材163の必要強度を小さくでき、第2復元部材163を小さくでき、コストを抑制できる。
【0074】
(建設機械1の振動)
第1実施形態と同様に、
図1に示す建設機械1には、走行時や作業時に、上下方向Zおよび前後方向Xの振動が発生する。また、建設機械1が例えば荷役作業を行うときなどには、上部旋回体20が、下部走行体11に対して左右への旋回を繰り返す。下部走行体11に対する上部旋回体20の、旋回の起動時、旋回の停止時、および旋回方向の切り替え時に、上部旋回体20に旋回方向の振動が発生する。その結果、上部旋回体20に横方向Yの振動が発生する。本実施形態では、制振装置130により建設機械1の、前後方向X、横方向Y、および上下方向Zの振動を抑制できる。
【0075】
(第9の発明の効果)
図5に示す制振装置130による効果は次の通りである。支持復元手段140は、支持面146aと、第2復元部材163と、を備える。
【0076】
[構成9−1]支持面146aは、上部フレーム21に対してウエイト136の自重をウエイト136よりも下側Z2から支持する。
[構成9−2]第2復元部材163は、支持面146aとウエイト136との間に配置され、ウエイト136を定位置に復元させる。
【0077】
上記[構成9−1]および[構成9−2]により、支持面146aは、第2復元部材163を介したウエイト136の自重の支持を、下側Z2から行う。よって、ウエイト136よりも前後方向X外側または横方向Y外側から、ウエイト136の自重の支持を行う場合に比べ、この支持を行うための構造物の強度を確保しやすい。上記[構成9−2]では、第2復元部材163は、支持面146aとウエイト136との間に配置されるので、第2復元部材163の配置スペースを確保しやすい。よって、建設機械1の寸法を抑制できる。
【0078】
(第10の発明の効果)
[構成10]制振装置130は、カウンタウエイトCWを構成する下部ウエイト146を備える。下部ウエイト146の上面は、支持面146aを有する。
【0079】
上記[構成10]により、第2復元部材163(上記[構成9−2]参照)は、カウンタウエイトCWの間に配置される。このカウンタウエイトCWは、従来の建設機械が通常備える物である。よって、従来の建設機械のカウンタウエイトCWに第2復元部材163を設置する際、制振装置130以外の上部旋回体20の構成要素(上部フレーム21など)に影響を与えることなく、第2復元部材163を設置しやすい。よって、従来の建設機械に対して、第2復元部材163を設置すること(後付け)が、容易である。
【0080】
上記[構成10]により次の効果が得られる場合がある。カウンタウエイトCWは、上下方向Zに分解可能(積み上げ式)であることが多い。カウンタウエイトCWが積み上げ式の場合は、カウンタウエイトCWの間に第2復元部材163を容易に設置でき、第2復元部材163を設置するためのコストを抑制できる。
【0081】
(第11の発明の効果)
[構成11]
図8に示すように、第2復元部材163は、弾性体163aを有する。第2復元部材163の上下方向Zのばね定数は、第2復元部材163の水平方向のばね定数よりも大きい。
【0082】
上記[構成11]により、
図7に示す下部ウエイト146に対してウエイト136が傾くことを抑制できる。
【0083】
(変形例)
第1実施形態の構成要素と、第2実施形態の構成要素と、が組み合わされてもよい。例えば、
図2に示す第1ウエイト36と第2ウエイト37との間に、
図5に示す第2復元部材163が設けられてもよい。
【0084】
上記実施形態の構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。構成要素の配置や形状は変更されてもよい。固定や接続は、直接的でも間接的でもよい。
【0085】
図2に示す上部フレーム21に対してウエイト35が変位可能な方向は、上記実施形態では上下方向Zおよび水平方向であったが、上下方向Zのみでもよい。制振装置30による振動抑制の効果が得られる振動の方向は、上下方向Zのみでもよい。
【0086】
ウエイト35の重心35gが、回転軸55aの真下に配置された状態を、ウエイト35の定位置としてもよい。この場合、第1復元部材63は設けられなくてもよい。この場合、ウエイト35は、ウエイト35の自重により、回転軸55aを中心に振り子状に回転することで、定位置に復元できる。第1復元部材63が設けられない場合は、制振装置30のコストを抑制できる。
【0087】
ウエイト35は、上下方向Zに分けられなくてもよく、3段以上に分けられてもよい。
【0088】
回転軸55aの位置は変更されてもよい。回転軸55aの前後方向X位置は、ウエイト35の重心35gの前後方向X位置よりも後側X2でもよい。回転軸55aの上下方向Z位置は、ウエイト35の重心35gの上下方向Z位置よりも下側Z2でもよい。
【0089】
図4に示す第1復元部材63は、次のように変形されてもよい。[変形例1]弾性部材である第1復元部材63は、金属ばねでもよい。金属ばねである第1復元部材63は、例えば、コイルばね、または皿ばねなどでもよい。第1復元部材63が金属ばねである場合は、第1復元部材63がゴムばねである場合に比べ、第1復元部材63を、軽量、コンパクト、および安価なものにでき、大型の第1復元部材63でも容易に製作できる。[変形例2]第1復元部材63は、例えばダンパーでもよく、例えば油圧ダンパーでもよい。この場合、ウエイト35の加振力の振動数(上部フレーム21の振動数)に影響を受けることなく、制振装置30は制振効果を発揮できる。[変形例3]第1復元部材63は、例えばシリンダ(流体圧シリンダ)でもよく、例えば油圧シリンダでもよい。この場合、シリンダと、例えばガスばねとして機能するアキュムレータと、を組み合わせることで、シリンダに、復元機能を持たせることができる。また、シリンダと、絞りと、を組み合わせることで、シリンダに減衰機能を持たせることができる。この絞りは、例えば絞り弁でもよく、例えば配管抵抗による配管絞りでもよい。[変形例4]第1復元部材63は、ウエイト35と連結されてもよい。
【0090】
図3に示す第1復元部材63の数は、2以上でもよい。ストッパ65の数は、1でもよく、3以上でもよい。