特許第6816456号(P6816456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816456
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/66 20060101AFI20210107BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20210107BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20210107BHJP
   F16N 29/00 20060101ALI20210107BHJP
   F16N 13/00 20060101ALI20210107BHJP
   F16N 9/02 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   F16C33/66 Z
   F16C19/16
   F16C41/00
   F16N29/00 B
   F16N29/00 Z
   F16N13/00
   F16N9/02
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-220204(P2016-220204)
(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公開番号】特開2017-180819(P2017-180819A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2016-61322(P2016-61322)
(32)【優先日】2016年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 幹央
(72)【発明者】
【氏名】東山 佳路
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−037879(JP,A)
【文献】 特開2013−050193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/66
F16C 41/00−41/04
F16N 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体、及び、前記複数の転動体を保持する保持器を有し、前記内輪と前記外輪とのうちの一方が回転輪であって他方が固定輪となる軸受部と、
前記軸受部の軸方向隣りに設けられている給油ユニットと、を備え、
前記保持器は、前記固定輪の一部に潤滑油を介して摺接可能となるガイド部を有し、
前記給油ユニットは、前記固定輪の前記一部と前記ガイド部との間の摺接部で生じる振動を検出するための振動センサと、前記軸受部を構成する前記摺接部以外の部分の温度を検出するための温度センサと、前記軸受部に潤滑油を供給するためのポンプと、を有している、軸受装置。
【請求項2】
前記振動センサの検出信号のレベルと閾値とを比較すると共に、当該比較の結果、前記レベルが前記閾値を超えている場合に前記ポンプにより潤滑油を供給させるための制御信号を出力する制御部を有している、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記温度センサは、前記転動体の表面の温度を検出する、請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記振動センサの第一検出信号が第一の所定条件を満たすか否かを判定可能であり、かつ、前記温度センサの第二検出信号が第二の所定条件を満たすか否かを判定可能であると共に、前記第一の所定条件及び前記第二の所定条件のうちのいずれか一方を満たす場合に、前記ポンプにより潤滑油を供給させるための制御信号を出力する制御部を有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第一の所定条件と前記第二の所定条件とのうちの一方のみが満たされた場合、前記ポンプによる潤滑剤の吐出周期を所定値について小さくする制御を行い、前記第一の所定条件と前記第二の所定条件との双方が満たされた場合、前記吐出周期を前記所定値よりも更に短くする制御を行う、請求項4に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記保持器の前記ガイド部は、前記固定輪の軸方向一方側の前記一部において潤滑油を介して摺接可能であり、
前記給油ユニットは、前記軸受部の軸方向一方側において当該軸受部と隣接して設けられており、前記振動センサは、径方向について前記固定輪側に偏って設けられている、請求項1〜のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記固定輪は、前記転動体が転がり接触する軌道と、前記一部として当該軌道の軸方向一方側に位置する肩部とを有し、
前記給油ユニットは、前記固定輪の軸方向一方側の隣りに設けられ前記振動センサを搭載している環状の間座を有し、
前記間座は、当該間座及び前記軸受部に軸方向の予圧が付与されると、前記肩部の軸方向一方側の側面に当接しかつ当該側面を押し付けるための接触面を有している、請求項1〜のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項8】
前記給油ユニットは、前記固定輪の隣りに設けられている金属製の間座を有し、
前記振動センサは、前記間座に設けられている金属製の取り付け部を介して当該間座に取り付けられている、請求項1〜のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項9】
前記温度センサは、赤外線センサである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受部と、この軸受部の軸方向隣りに設けられている給油ユニットとを備えている軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の工作機械では、加工効率及び生産性の向上のために主軸の高速化が要求されている。主軸が高速で回転すると、これを支持する軸受部において特に潤滑性が問題となる。そこで、軸受部の軸方向隣りに設けられている間座に、給油ユニットを組み込んだ軸受装置が提案されている(特許文献1参照)。この給油ユニットは、潤滑油を溜めるタンクや、このタンク内の潤滑油を内輪と外輪との間の環状空間に吐出するポンプ等を有している。
【0003】
特許文献1に記載の軸受装置が備えている給油ユニットは、タンク及びポンプの他に、温度センサ及び制御部(マイコン)を更に有しており、温度センサの検出信号が制御部に入力され、制御部がポンプを制御して軸受部に供給する潤滑油の量が調整される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−219078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軸受部において例えば潤滑油が消耗し貧潤滑状態になると温度が上昇することから、この温度上昇を温度センサによって検出することで軸受部における潤滑状態を検知することが可能となる。そして、前記特許文献1に記載の軸受装置によれば、制御部がポンプを制御することによって潤滑油の供給が行われ、温度上昇を抑えることが可能となる。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の軸受装置の場合、温度センサは、外輪間座に取り付けられた給油ユニットの制御部に含まれており、間座における温度を測定する構成となっている。このため、軸受部における温度変化を温度センサが的確かつ迅速に捉えきれないことがあり、軸受部において油切れが生じて温度が上昇しているにも関わらず、この検知が遅れることがある。すると、軸受部において焼き付き等の不具合が発生する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、軸受部において油切れに起因する焼き付き等の不具合の予防を行うことが可能となる軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の軸受装置は、内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体、及び、前記複数の転動体を保持する保持器を有し、前記内輪と前記外輪とのうちの一方が回転輪であって他方が固定輪となる軸受部と、前記軸受部の軸方向隣りに設けられている給油ユニットと、を備え、前記保持器は、前記固定輪の一部に潤滑油を介して摺接可能となるガイド部を有し、前記給油ユニットは、前記固定輪の振動を検出するための振動センサと、前記軸受部に潤滑油を供給するためのポンプと、を有している。
【0009】
この軸受装置は、保持器のガイド部が固定輪の一部に潤滑油を介して摺接することで、この保持器が固定輪によって位置決めされる構成となる。したがって、保持器のガイド部と固定輪の前記一部との間の摺接部で発熱が起こりやすい。そして、この摺接部における潤滑油が例えば消耗して油切れ(及びその兆候)が発生すると、保持器のガイド部と固定輪の前記一部との接触状態が変化し、この変化が固定輪の振動となって現れる。そこで、給油ユニットの振動センサがこの振動を検出する。以上より、固定輪の振動に基づいて油切れ(及びその兆候)を検知することができ、油切れに起因する焼き付き等の不具合の予防を行うことが可能となる。
【0010】
固定輪の前記一部に油切れが発生すると、固定輪にスパイク状の振動波形(ピーク波形)が生じることが、本発明の発明者によって確認された。そこで、軸受装置は、前記振動センサの検出信号のレベルと閾値とを比較すると共に、当該比較の結果、前記レベルが前記閾値を超えている場合に前記ポンプにより潤滑油を供給させるための制御信号を出力する制御部を有しているのが好ましい。これにより、油切れ(及びその兆候)を早い段階で検知することが可能となる。なお、例えば、ポンプが一定の周期で潤滑油を軸受部へ供給するように構成されている場合、この周期を短くするための信号を前記制御信号とすることができる。または、ポンプからの潤滑油の吐出量を増加させるための信号を前記制御信号としてもよい。
【0011】
また、前記給油ユニットは、前記軸受部のうちの前記固定輪の前記一部と前記ガイド部との間の摺接部以外の部分の温度を検出するための温度センサを、更に有しているのが好ましい。軸受部において潤滑油が例えば消耗する等して減少すると軸受内部の温度が上昇する。そこで、温度センサによりこれを検出することで、潤滑油の減少を検知することが可能となる。そして、温度センサは、前記摺接部以外の部分の温度を検出するためのものであるため、前記振動センサと協働することで、軸受部における潤滑状態の検知の信頼性をより一層向上させることができる。
【0012】
また、給油ユニットが振動センサ及び温度センサの双方を備えている場合において、前記軸受装置は、前記振動センサの第一検出信号が第一の所定条件を満たすか否かを判定可能であり、かつ、前記温度センサの第二検出信号が第二の所定条件を満たすか否かを判定可能であると共に、前記第一の所定条件及び前記第二の所定条件のうちのいずれか一方を満たす場合に、前記ポンプにより潤滑油を供給させるための制御信号を出力する制御部を有しているのが好ましい。これにより、軸受部における潤滑状態の検知の信頼性をより一層向上させることができる。なお、例えば、ポンプが一定の周期で潤滑油を軸受部へ供給するように構成とされている場合、この周期を短くするための信号を前記制御信号とすることができる。または、ポンプからの潤滑油の吐出量を増加させるための信号を前記制御信号としてもよい。
【0013】
また、前記保持器の前記ガイド部は、前記固定輪の軸方向一方側の前記一部において潤滑油を介して摺接可能であり、前記給油ユニットは、前記軸受部の軸方向一方側において当該軸受部と隣接して設けられており、前記振動センサは、径方向について前記固定輪側に偏って設けられているのが好ましい。
この構成によれば、振動センサによる固定輪の振動検知の感度が高まる。
【0014】
また、前記固定輪は、前記転動体が転がり接触する軌道と、前記一部として当該軌道の軸方向一方側に位置する肩部とを有し、前記給油ユニットは、前記固定輪の軸方向一方側の隣りに設けられ前記振動センサを搭載している環状の間座を有し、前記間座は、当該間座及び前記軸受部に軸方向の予圧が付与されると、前記肩部の軸方向一方側の側面に当接しかつ当該側面を押し付けるための接触面を有しているのが好ましい。
この構成によれば、固定輪と間座とが別体であっても、予圧が付与されることで固定輪の振動が間座に正確に伝わり、振動センサによる固定輪の振動検知の感度が高まる。
【0015】
また、前記給油ユニットは、前記固定輪の隣りに設けられている金属製の間座を有し、前記振動センサは、前記間座に設けられている金属製の取り付け部を介して当該間座に取り付けられているのが好ましい。
前記のとおり振動センサは固定輪の振動を検出するが、金属は樹脂と比較して振動の減衰性が低いことから、前記の取り付け部の構成によれば、固定輪から振動センサに伝達される振動が減衰されにくくなり、振動センサによる検出精度を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、軸受部における潤滑状態の検知が可能となり、油切れに起因する焼き付き等の不具合の予防を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】軸受装置の実施の一形態を示す断面図である。
図2】給油ユニットを軸方向から見た図である。
図3】給油ユニットを説明するブロック図である。
図4】振動センサから出力された検出信号の時間変化を示すグラフである。
図5】軸受装置の断面図である。
図6】軸受装置の断面図である。
図7】ポンプの圧電素子(ピエゾ素子)に与える駆動電圧の説明図である。
図8】振動センサから出力された検出信号の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の軸受装置の実施の一形態を説明する。
図1は、本発明の軸受装置の実施の一形態を示す断面図である。図1に示す軸受装置10は、工作機械が有する主軸装置の主軸(軸7)を回転可能に支持するものであり、主軸装置の軸受ハウジング8内に収容されている。図1では、軸7及び軸受ハウジング8を2点鎖線で示している。なお、軸受装置10は工作機械以外においても適用可能である。また、以下の説明において、軸受装置10の中心線に平行な方向を軸方向と呼び、この軸方向に直交する方向を径方向と呼ぶ。
【0019】
軸受装置10は、軸受部20と給油ユニット40とを備えている。軸受部20は、内輪21、外輪22、複数の玉(転動体)23、及び、これら複数の玉23を保持する保持器24を有しており、玉軸受(転がり軸受)を構成している。更に、この軸受装置10は、円筒状である内輪間座17を備えている。
【0020】
給油ユニット40は、全体として円環状であり、軸受部20の軸方向隣りに設けられている。本実施形態の給油ユニット40は、軸受部20へ給油を行う機能を有していると共に、外輪間座としての機能も有している。給油ユニット40の構成及び機能については後に説明する。なお、図示しないが、外輪22の軸方向一方側の隣りに金属製である環状の外輪間座を設け、この外輪間座の径方向内側に給油ユニットが取り付けられていてもよい。
【0021】
本実施形態では、外輪22及び給油ユニット40が軸受ハウジング8に回転不能として取り付けられており、内輪21及び内輪間座17が軸7と共に回転する。したがって、外輪22が、回転しない固定輪となり、内輪21が、軸7と共に回転する回転輪となる。
【0022】
内輪21は、軸7に外嵌する円筒状の部材であり、その外周に軌道(以下、内輪軌道25という。)が形成されている。本実施形態では、内輪21と内輪間座17とは別体であるが、図示しないが、これらは一体(一体不可分)であってもよい。
外輪22は、軸受ハウジング8の内周面に固定される円筒状の部材であり、その内周に軌道(以下、外輪軌道26という。)が形成されている。
前記のとおり(図示しないが)、給油ユニット40が、環状の外輪間座の径方向内側において、この外輪間座とは別体として取り付けられている構成である場合、この外輪間座と外輪22とが一体(一体不可分)であってもよい。
【0023】
玉23は、内輪21と外輪22との間に介在しており、内輪軌道25及び外輪軌道26を転動する。保持器24は、環状であり、周方向に沿ってポケット27が複数形成されている。玉23及び保持器24は、内輪21と外輪22との間に形成されている環状空間11に設けられている。
【0024】
保持器24は、全体として環状であり、玉23の軸方向一方側の環状部28aと、玉23の軸方向他方側の環状部28bと、これら環状部28a,28bを連結している複数の柱部29とを有している。環状部28a,28bの間であって周方向で隣り合う柱部29,29の間がポケット27となり、各ポケット27に一つの玉23が収容されている。この構成により、保持器24は、複数の玉23を周方向に間隔をあけて保持することができる。
【0025】
この保持器24では、軸方向一方側(給油ユニット40側)の環状部28aが外輪22の肩部30と潤滑油を介して摺接可能となっている。これにより、保持器24は外輪22によって径方向についての位置決めがされる。つまり、この軸受部20では、保持器24が外輪案内(軌道輪案内)される軸受となっている。本実施形態の場合、環状部28aの外周面が、肩部30の内周面30aと摺接可能となるガイド面31となる。以上より、保持器24は、固定輪である外輪22の一部(肩部30)に潤滑油を介して摺接可能となるガイド面31を有する構成となる。以下において、保持器24のガイド面31と外輪22の肩部30との間を摺接部15と呼ぶ。なお、保持器24は、樹脂製(例えば、フェノール樹脂製)であり、内輪21及び外輪22は、軸受鋼等の鋼製である。玉23は、軸受鋼等の鋼製であってもよく、セラミックスであってもよい。
【0026】
図2は、給油ユニット40を軸方向から見た図(図1のA矢視の図)である。給油ユニット40は、全体として円環形状を有している。本実施形態の給油ユニット40は、環状の本体部41、タンク42、ポンプ43、振動センサ55、温度センサ50、制御部44、及び、電源部45を備えている。
【0027】
本体部41は、例えば金属製の環状部材であり、予圧を受ける外輪間座として機能する。つまり、この外輪間座(本体部41)及び外輪22に軸方向の予圧が付与される。図5に示すように、この予圧のために外輪間座(本体部41)及び外輪22に軸方向一方側から他方側へ向かう軸方向荷重(矢印F1)が付与され、外輪間座(本体部41)が外輪22を軸方向に押した状態となる。
【0028】
図2に示すように、本体部41は、ポンプ43及びセンサ55,50等を収容(保持)するフレームとしての機能も有している。つまり、本体部41には中空空間が形成されており、この中空空間にタンク42、ポンプ43、振動センサ55、温度センサ50、制御部44、及び、電源部45が設けられる。これにより、本体部41、タンク42、ポンプ43、振動センサ55、温度センサ50、制御部44、及び、電源部45を含む給油ユニット40は、一体として構成される。なお、振動センサ55、温度センサ50及び制御部44については、単一の基板46上に設けることができる。
また、本体部41は、図示しないが、金属製であり与圧を受ける外輪間座として機能する外筒部材と、この外筒部材の内周側に取り付けられている樹脂製の内筒部材とを有して構成されており、この内筒部材に前記中空空間が形成されていてもよい。ただし、この場合、振動センサ55は、金属製である取り付け部61(図6参照)を介して前記外筒部材に固定される構成とするのが好ましい。
【0029】
図2において、タンク42は、潤滑油を溜めるものであり、潤滑油をポンプ43へ供給させるためにポンプ43と流路を通じて繋がっている。タンク42内には、潤滑油を保持する保持体(例えば、フエルトやスポンジ)が設けられていてもよい。
ポンプ43は、ポンプ内部に圧電素子43aを有しており、この圧電素子43aが動作することでポンプ43の内部空間の容積を変化させ、この内部空間の潤滑油をノズル43bから環状空間11(図1参照)に噴出させることができる。これにより、ポンプ43は、軸受部20に潤滑油を供給することができる。なお、ポンプ43の1回の動作で、数ピコリットル〜数ナノリットルの潤滑油が噴出される。
電源部45は、ポンプ43、振動センサ55、及び、温度センサ50へ動作用の電力を供給する。
【0030】
振動センサ55は、加速度センサであり、固定輪である外輪22の振動を検出する。本実施形態では、振動センサ55は、基板46上に設けられており、この基板46が本体部41に固定されていることから、外輪22の振動を、本体部41及び基板46を通じて検出する構成となる。外輪22と本体部41とは軸方向の予圧によって密に接していることから、外輪22と本体部41とが別体であっても、外輪22の振動を振動センサ55は検出することが可能となる。
【0031】
この振動センサ55は、図6に示すように、外輪間座として機能する本体部41に取り付け部61を介して固定されているのが好ましい。本実施形態の取り付け部61は、本体部41と別部材である金属製の治具であり、小ねじ(図示せず)によってこの治具(取り付け部61)は本体部41に固定されている。そして、振動センサ55(振動センサ55の基板)は小ねじ(図示せず)によって治具(取り付け部61)に固定されている。なお、取り付け部61は、別部品でなく、本体部41の一部であってもよい。
【0032】
この図6に示す形態では、給油ユニット40は、外輪22の隣りに設けられている本体部41を間座(外輪間座)として有しており、この本体部41に取り付け部61が設けられている。そして、振動センサ55は、この取り付け部61を介して本体部41に取り付けられている。そして、取り付け部61及び本体部41は金属製(鋼製)であり、また、外輪22も金属製(鋼製)である。この図6に示す形態によれば、前記のとおり振動センサ55は外輪22の振動を検出するが、金属は樹脂と比較して振動の減衰性が低いことから、外輪22から振動センサ55に伝達される振動が減衰されにくくなり、振動センサ55による検出精度を高めることが可能となる。
【0033】
図1及び図2において、温度センサ50は、赤外線センサ(放射温度計)である。ここで玉23は、内輪軌道25及び外輪軌道26それぞれに対して転がり接触し、また、保持器24のポケット27と摺接する。このため、玉23は温度が上昇しやすい。そこで、本実施形態では(図1参照)、玉23が通過する領域に、温度センサ50の検出領域を設定しており、温度センサ50は、検出領域を通過する玉23の表面の温度(平均温度)を計測する。このように、温度センサ50は、前記摺接部15以外の部分の温度を検出する。つまり、温度センサ50と振動センサ55とで検知対象が異なっている。
【0034】
図3は、給油ユニット40を説明するブロック図である。制御部44は、プログラミングされたマイコンや演算回路等を含む基板回路により構成されており、振動センサ55及び温度センサ50から出力される検出信号を取得する。制御部44は、振動センサ55の出力(検出信号)を増幅する増幅器44aと、増幅させた信号に基づいて判定処理を行う第一の判定回路部44bとを有している。更に、制御部44は、温度センサ50の出力(検出信号)を増幅する増幅器44cと、温度勾配の演算や判定処理を行う第二の判定回路部44dとを有している。
【0035】
また、制御部44は、ポンプ43に対して制御信号を与える。制御部44は、前記制御信号として、ポンプ43の圧電素子43a(図2参照)に対して駆動電力を与える(所定の電圧を印加する)。本実施形態のポンプ43は制御信号(駆動電圧)を受けると一定量(微量)の潤滑油を吐出する構成であり、制御部44は、ポンプ43に対して制御信号を周期的に出力する。この周期は、通常時(潤滑良好状態)では一定に設定されているが、後に説明するが、所定の条件を満たすと変更される。
【0036】
以上の構成を備えている給油ユニット40により、軸受部20において(図1参照)、外輪22の肩部30と保持器24の環状部28aとの間の前記摺接部15の他、玉23と内輪軌道25及び外輪軌道26との間、及び、玉23と保持器24のポケット27との間における焼き付き等の不具合を未然に防ぐことが可能となる。以下、そのために制御部44が行う制御について説明する。
【0037】
図4は、振動センサ55から出力された検出信号(第一検出信号)の時間変化を示すグラフである。振動センサ55は前記のとおり加速度センサであることから、第一検出信号として加速度(加速度波高値)が取得される。前記摺接部15において潤滑油による膜が形成されている状態(潤滑良好状態)では、第一検出信号として得られる加速度のレベルは小さい、つまり、外輪22の振動は小さい(図4の時刻t1まで)。しかし、摺接部15において潤滑油の膜が途切れた場合、第一検出信号として得られる加速度のレベルが高くなる(時刻t1)。このように摺接部15において油切れが発生すると外輪22にスパイク状の振動波形(ピーク波形)が生じる。これは、摺接部15に適切な油膜が形成されている場合、外輪22の肩部30と保持器24のガイド面31との間にはすべりが生じており、外輪22はほとんど振動しない。しかし、摺接部15において油膜が途切れると(油切れが生じると)肩部30にガイド面31が直接的に干渉(衝突)し、外輪22に比較的大きな振動が生じるためであると推測される。そこで、この振動が振動センサ55によって検出される。
【0038】
軸受部20が回転すると、制御部44の前記第一の判定回路部44b(図3参照)は、振動センサ55の第一検出信号(加速度信号)を刻々と取得し、第一検出信号のレベルと既定の閾値αとを比較する処理を行う。このレベルが閾値αを超えている場合(以下、これを第一条件という)、制御部44は、ポンプ43による潤滑油の吐出周期を短くするための制御信号を出力する。例えば、前記比較の結果、前記第一条件を満たしている場合、その後、制御部44はポンプ43に制御信号を出力し、ポンプ43から潤滑油を吐出させる。さらに、制御部44はポンプ43に出力する制御信号の周期を短くする。これにより、油切れを解消する。前記比較の処理は、制御部44が例えばコンパレータの機能を有することで実現可能である。
【0039】
前記のように、ポンプ43に対して制御信号が出力される条件を、前記比較の結果、一回でも第一検出信号のレベルが閾値αを越えた場合としてもよいが(図4参照)、それ以外に図8に示すように、第一検出信号のレベルが閾値αを越えた回数が複数回である場合としてもよい。この場合、制御部44はカウンタの機能を有する。つまり、図8では、第一検出信号のレベルが閾値αを一回超えても(時刻t1)制御部44は制御信号を出力せず、二回(複数回)検出すると(時刻t2)、その後、制御信号を出力するようにしてもよい。これにより、仮にノイズによって第一検出信号のレベルが閾値αを一回超えても、制御信号は出力されない。これにより、貧潤滑状態の検出の確実性が高まる。
【0040】
このように、制御部44は、振動センサ55の検出信号のレベルと閾値αとを比較すると共に、この比較の結果、前記レベルが閾値αを超えている場合に、ポンプ43により潤滑油を供給させるための制御信号を出力することができる。
【0041】
以上のように、振動センサ55の第一検出信号のみでポンプ43の制御を行ってもよいが、本実施形態では、温度センサ50の第二検出信号も更に用いてポンプ43の制御が行われる。すなわち、制御部44の第二の判定回路部44d(図3参照)は、温度センサ50の検出信号(第二検出信号)、つまり温度信号についても刻々と取得し、この検出信号に基づく温度の時間変化(つまり、温度勾配)のレベルと既定の閾値とを比較する処理を行う。そして、このレベルが既定の閾値を超えている場合(以下、第二条件という)、制御部44は、ポンプ43による潤滑油の吐出周期を短くするための制御信号を出力することができる。
【0042】
本実施形態では、制御部44は、前記第一条件と前記第二条件との二つの条件を場合分けして用い、ポンプ43により潤滑油を供給させるための制御信号を出力するように構成されている。つまり、第一条件と第二条件とのうちの一方のみが満たされた場合、前記吐出周期を所定値について小さくする制御が行われ、第一条件と第二条件との双方が満たされた場合、前記吐出周期を前記所定値よりも更に短くする制御が行われる。具体的に説明すると、第一条件及び第二条件を共に満たさない場合、つまり、通常時(潤滑良好状態)では、ポンプ43を1Hzで動作させるが、第一条件と第二条件とのうちの一方のみが満たされた場合、ポンプ43を10Hzで動作させ、そして、第一条件と第二条件との双方が満たされた場合、ポンプ43を100Hzで動作させる。
【0043】
なお、軸受部20において油切れが生じている場合、温度センサ50により検出される温度が急激な上昇傾向となるよりも先に、前記のような(図4参照)スパイク状の加速度波高値が現れる場合が多い。したがって、第一条件が満たされた場合、前記吐出周期を所定値について小さくする制御が行われ、更に、その後、第二条件が満たされた場合、前記吐出周期を前記所定値よりも更に短くする制御が行われる。
【0044】
以上より、本実施形態の軸受装置10では(図1参照)、保持器24のガイド面31が外輪22の肩部30に潤滑油を介して摺接することで、この保持器24が外輪22によって位置決めされる構成となっている。したがって、保持器24のガイド面31と外輪22の肩部30との間の摺接部15で発熱が起こりやすい。そして、この摺接部15における潤滑油が例えば消耗して油切れ(及びその兆候)が発生すると、ガイド面31と肩部30との接触状態が変化し、この変化が外輪22の振動となって現れる。そこで、振動センサ55がこの振動を検出する。これにより、外輪22の振動に基づいて軸受部20(摺接部15)における油切れ(及びその兆候)を検知することができる。つまり、振動センサ55によって軸受部20における潤滑状態の検知が可能となる。
【0045】
また、前記摺接部15において油切れが発生した場合において、仮に、この摺接部15の温度上昇を検知するにしても、保持器24のガイド面31と肩部30との隙間は極小さいことから、直接的にその検知は困難である。つまり、ガイド面31と肩部30との間の温度を直接的に温度センサによって検知することが困難であるため、これらの間で発生した熱が伝わった保持器24の軸方向側面の温度を温度センサが検知することになる。しかし、この場合、摺接部15での油切れ(これに起因する温度上昇)を間接的に検出することになるため、その応答性、正確性に欠けるおそれがある。
そこで、本実施形態では、油切れによって生じるガイド面31と肩部30との接触状態の変化に起因する振動を振動センサ55によって検出している。このため、検知の応答性、正確性が高く、油切れ(及びその兆候)の検知、つまり、軸受部20における潤滑状態の検知の信頼性を向上させることが可能となる。
【0046】
前記のとおり、軸受部20において油切れの場合に温度が急激な上昇傾向となるよりも先に、図4に示すようなスパイク状の加速度波高値が現れるという知見に基づいて、本実施形態では、この波高値を振動センサ55によって検出している。このため、油切れ(及びその兆候)を早い段階で検知することが可能となる。
【0047】
そして、軸受部20において潤滑油が例えば消耗する等して減少すると軸受内部の温度が上昇する。そこで、温度センサ50によりこれを検出することで、潤滑油の減少を検知している。また、温度センサ50は、前記摺接部15以外の部分(玉23)の温度を検出するためのものであるため、振動センサ55と協働することで、軸受部20における潤滑状態の検知の信頼性をより一層向上させることができる。
【0048】
このように、給油ユニット40は振動センサ55及び温度センサ50の双方を備えていることから、制御部44は、振動センサ55の第一検出信号が前記第一条件(第一の所定条件)を満たすか否かを判定可能であり、そして、温度センサ50の第二検出信号が前記第二条件(第二の所定条件)を満たすか否かを判定する。そして、制御部44は、前記第一条件及び前記第二条件のうちのいずれか一方を満たす場合に、ポンプ43により潤滑油を供給させるための制御信号を出力する。本実施形態では、前記制御信号として、ポンプ43からの潤滑油の吐出周期を短くするための信号を出力する。以上のように、軸受部20における潤滑状態の検知を二重化することができ、検知の信頼性をより一層向上させることができる。
【0049】
異常の実施形態では、制御部44は、制御信号として、ポンプ43の圧電素子43a(図2参照)に対して駆動電力を与えることができ(所定の電圧を印加することができ)、更に、振動センサ55(及び/又は温度センサ50)の検出結果に応じて、制御部44は、この駆動電圧を与える周期を変更する(短くする)場合について説明したが、これ以外の制御を制御部44は行ってもよい。すなわち、制御部44は、制御信号として、ポンプ43の圧電素子43a(図2参照)に対して駆動電力を与える(所定の電圧を印加する)点では、前記実施形態と同じであるが、更に、振動センサ55(及び/又は温度センサ50)の検出結果に応じて(つまり、前記第一条件及び/又は前記第二条件を満たすと)、制御部44は前記駆動電圧の大きさを変更する制御を行うように構成してもよい。つまり、圧電素子43aに与える駆動電圧P(図7参照)を大きくすることで、圧電素子43aの変位量(動作量)が増加する。なお、図7では、変更前の駆動電圧波形を破線で示し、変更後の駆動電圧波形を実線で示している。このように圧電素子43aの変位量を増加させることにより、ポンプ43の内部空間の容積変化を大きくさせることができ、一回の潤滑油の吐出量を増やすことができる。この結果、駆動電圧を与える周期を短くする場合と同様に、所定時間における潤滑油の供給量を増加させることができる。
【0050】
また、この場合においても、制御部44は、前記第一条件と前記第二条件との二つの条件を場合分けして用い、ポンプ43により潤滑油を供給させるための制御信号を出力してもよい。つまり、第一条件と第二条件とのうちの一方のみが満たされた場合、圧電素子43aに与える駆動電圧を大きくさせる制御信号を出力し、第一条件と第二条件との双方が満たされた場合、前記駆動電圧を更に大きくさせる制御信号を出力する制御が行われるようにしてもよい。
【0051】
また、このようにポンプ43からの一回の潤滑油の吐出量を増やすための他の手段として、振動センサ55(及び/又は温度センサ50)の検出結果に応じて、制御部44は、吐出するための潤滑油の温度を上昇させる制御を行ってもよい。これを実現するために、例えば、タンク42(図2参照)にヒータ(図示せず)を設ければよい。すなわち、振動センサ55(及び/又は温度センサ50)の検出結果に応じて(つまり、前記第一条件及び/又は前記第二条件を満たすと)、制御部44は、前記ヒータを動作させる制御信号を出力する制御(つまり前記ヒータに電流を流す制御)を行う。ヒータによって潤滑油の温度が上昇すると潤滑油の粘性は低下することから、ポンプ43の駆動力が一定であっても、吐出量が増加する。これにより、所定時間における潤滑油の供給量を増加させることができる。なお、その後は、ヒータの作動を停止させ、自然冷却により、吐出量は元の状態に復帰する。
【0052】
また、本実施形態の軸受部20では、前記のとおり(図1及び図6参照)、保持器24のガイド面31が、外輪22の軸方向一方側の肩部30において潤滑油を介して摺接可能となっている。そして、この肩部30が存在している軸受部20の軸方向一方側において給油ユニット40はこの軸受部20と隣接して設けられており、また、振動センサ55は、径方向について外輪22側に偏って設けられている。つまり、振動センサ55は、軸方向に関しては保持器24が接触する肩部30側の位置に設けられており、径方向に関しては内輪21よりも外輪22に近い位置に設けられている。このため、振動センサ55による外輪22の振動検知の感度を高めることができる。
【0053】
図5は、軸受装置10の断面図(図1と異なる断面における図)である。前記のとおり、軸受装置10は軸方向の予圧が付与されて用いられており、図5においてこの予圧を付与するための力の方向を矢印F1、F2で示している。つまり、給油ユニット40の本体部41が軸受部20の外輪22を軸方向一方側から他方側に向かって押すと共に、軸受部20の内輪21を軸方向他方側から一方側に向かって押すことで、軸受部20に軸方向の予圧が付与される。
【0054】
そこで、本実施形態の軸受装置10では、前記のとおり、外輪22は、玉23が転がり接触する外輪軌道26と、この外輪軌道26の軸方向一方側に位置する肩部30とを有しており、給油ユニット40は、この外輪22の軸方向一方側の隣りに設けられている本体部41を間座として有している。そして、この間座(本体部41)に振動センサ55が搭載されている。図6に示す形態の場合、間座(本体部41)に設けられている取り付け部61に振動センサ55が搭載されている。間座(本体部41)は、軸方向他方側に接触面33(図2図5、及び図6参照)を有しており、この接触面33は、間座(本体部41)及び軸受部20に軸方向の予圧が付与されると、肩部30の軸方向一方側の側面32に面で当接し、かつ、この側面32を押し付けるための面となっている。この構成により、外輪22と間座(本体部41)とが別体であるが、予圧が付与されることで外輪22の振動が間座(本体部41)に正確に伝わり、振動センサ55による外輪22の振動検知の感度が高まる。
【0055】
以上、本実施形態の軸受装置10によれば、軸受部20における潤滑状態の検知が可能となり、また、この検知の信頼性を向上させて軸受部20における焼き付き等の不具合の予防を有効に行うことが可能となる。
【0056】
また、本実施形態の軸受装置10(図1参照)では、給油ユニット40が有する小さなスペースにタンク42(図2参照)が組み込まれていることから、このタンク42の容量は制限される。それにも関わらず潤滑油の消費が多くなると、タンク42への潤滑油の補充を頻繁に行う必要が生じ、潤滑油を補充するメンテナンス毎に装置(工作機械)の停止が必要となって、運転効率(生産効率)が低下してしまう。
しかし、本実施形態の軸受装置10によれば、外輪22において発生するスパイク状の波形(図4図8参照)を振動センサ55により検出すると、これを油切れ(又はその兆候)と捉え、ポンプ43から多くの給油を行う。したがって、不要に給油が行われないため、潤滑油の消費を低減することが可能となる。このため、タンク42への潤滑油を補充するメンテナンスを頻繁に行う必要が無くなり、フリーメンテナンスに近い稼働が可能となる場合もある。
【0057】
また、前記のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の軸受装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
【0058】
例えば、保持器24は、図示する形態以外であってもよく、外輪22の内周面の一部に対して潤滑油を介して摺接可能であればよく、図1に示す形態では外輪22に摺接するガイド部は面(ガイド面31)であるが、凸部であってもよい。また、保持器24が摺接する対象は、外輪22の内周面のうち、肩部30の内周面30a以外の面であってもよく、外輪軌道26の一部(ただし、玉23との接触点を除く一部)としてもよい。また、図示しないが、保持器24は、玉23の軸方向一方側(給油ユニット40側)にのみ環状部28aが設けられている構成(いわゆる冠型保持器)であってもよい。
【0059】
また、前記実施形態では、外輪22を固定輪としており、外輪22が保持器24の径方向についての位置決めを行う構成として説明したが、反対であってもよい。つまり、内輪21を固定輪とし、内輪21が保持器24の径方向についての位置決めを行うように構成してもよい。この場合、振動センサ55は内輪21の振動を検知する。すなわち、軸受部20では、内輪21と外輪22とのうちの一方が回転輪であって他方が固定輪となっていればよい。そして、保持器24は、固定輪の一部に潤滑油を介して摺接可能となるガイド部を有しており、振動センサ55は、この固定輪の振動を検出する構成とすればよい。
【0060】
また、図1に示す軸受部20はアンギュラ玉軸受であるが、軸受の形式はこれに限らず、深溝玉軸受であってもよく、また、軸受部20は、転動体としてころを有している円すいころ軸受や円筒ころ軸受等であってよい。
【0061】
前記実施形態では、制御部44及び電源部45が給油ユニット40に含まれる場合について説明したが、これらは給油ユニット40の外部、つまり、軸受装置10の外部に設置されていてもよい。この場合、給油ユニット40と外部とが信号線や電力線を通じて接続される。
【0062】
前記実施形態では、一定の周期でポンプの吐出が行われる形態を前提にして説明したが、これに限らない。つまり、ポンプからの吐出が周期的に行われなくても、振動センサ又は温度センサの検出結果から、軸受内部において潤滑油が必要となる状況であると判断されると、その都度、ポンプから吐出が行われるように構成してもよく、前記検出結果に応じてポンプによる潤滑油の吐出頻度を高めるように構成してもよい。また、前記検出結果に応じて一回のポンプ動作による潤滑油の吐出量が多くなるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10:軸受装置 15:摺接部 20:軸受部
21:内輪 22:外輪 23:玉(転動体)
24:保持器 25:内輪軌道 26:外輪軌道
30:肩部 31:ガイド面(ガイド部) 32:側面
33:接触面 40:給油ユニット 41:本体部(間座)
43:ポンプ 44:制御部 50:温度センサ
55:振動センサ 61:取り付け部 α:閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8