(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816527
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】ガイド構造
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20210107BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
B60K11/04 K
B62D25/08 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-7288(P2017-7288)
(22)【出願日】2017年1月19日
(65)【公開番号】特開2018-114860(P2018-114860A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄大
【審査官】
中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−197636(JP,A)
【文献】
実開平04−122221(JP,U)
【文献】
特開2000−177406(JP,A)
【文献】
特開2007−015487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインタークーラの前方への空気の流れを作るガイド構造であって、
前記インタークーラの側方又は上方に位置し、かつ前記車両の前後方向において延伸しているブラケットと、
前記インタークーラの前方又は側方に位置し、かつエンジンにより加熱された空気が前記インタークーラの前方に流れる量を低減させる流量抑制部材と、
前記流量抑制部材を前記ブラケットに固定する複数の固定部材と、
を有し、
前記複数の固定部材が前記車両の前後方向において異なる位置に設けられており、
前記流量抑制部材は、スポンジであり、
前記複数の固定部材は、
前記スポンジに形成された穴の内径よりも大きな外径の頭部と、
前記穴を通過可能な軸部と、
を有し、
前記軸部の先端に、前記穴を通過可能な突起が形成されていることを特徴とするガイド構造。
【請求項2】
前記複数の固定部材が前記車両の前後方向において異なる位置、かつ前記車両の高さ方向において異なる位置に設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載のガイド構造。
【請求項3】
前記頭部が前記軸部と接する位置と、前記突起の前記頭部側の位置との距離が、前記スポンジの厚み以下であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のガイド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のインタークーラの前方への空気の流れを作るガイド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、ラジエータのエアガイド構造が設けられている。特許文献1には、熱交換器の前方にフレーム部材とシール部材とが設けられている構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−40197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、例えば、長方形状のシール部材が、車両の前後方向において同じ位置に位置する複数の固定部材によって車両の前後方向に延伸するブラケットに固定されていた。しかし、シール部材が車両の前後方向において同じ位置に位置する複数の固定部材によってブラケットに固定されている場合、車両前方からの走行風とシール部材の後方に位置するエンジンからの熱風によって、シール部材が複数の固定部材を結ぶ車両の高さ方向に延びる直線を中心にばたついてしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、シール部材のばたつきを抑制することができるガイド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、車両のインタークーラの前方への空気の流れを作るガイド構造であって、前記インタークーラの側方又は上方に位置し、かつ前記車両の前後方向において延伸しているブラケットと、前記インタークーラの前方又は側方に位置し、かつエンジンにより加熱された空気が前記インタークーラの前方に流れる量を低減させる流量抑制部材と、前記流量抑制部材を前記ブラケットに固定する複数の固定部材と、を有し、前記複数の固定部材が前記車両の前後方向において異なる位置に設けられていることを特徴とするガイド構造を提供する。
【0007】
また、前記複数の固定部材が前記車両の前後方向において異なる位置、かつ前記車両の高さ方向において異なる位置に設けられていてもよい。また、前記流量抑制部材は、スポンジであり、前記複数の固定部材は、前記スポンジに形成された穴の内径よりも大きな外径の頭部と、前記穴を通過可能な軸部と、を有し、前記軸部の先端に、前記穴を通過可能な突起が形成されていてもよい。また、前記頭部が前記軸部と接する位置と、前記突起の前記頭部側の位置との距離が、前記スポンジの厚み以下であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガイド構造において、シール部材のばたつきを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るガイド構造が車両に設けられている状態の構成を示す。
【
図3】
図2におけるガイド構造をXの向きから見た構成を示す。
【
図4】
図2におけるガイド構造のY−Y線断面図における固定部材の付近の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本実施形態>
[ガイド構造7の周辺構成]
図1は、本実施形態に係るガイド構造7が車両に設けられている状態の構成を示す図である。
図2は、本実施形態に係るガイド構造7の構成を示す図である。
図3は、
図2におけるガイド構造7をXの向きから見た構成を示す図である。
図4は、
図2におけるガイド構造7のY−Y線断面図における固定部材の付近の構成を示す図である。
車両は、サイドメンバ1、クロスメンバ2、エンジン3、ファン4、ラジエータ5、インタークーラ6、及びガイド構造7を有する。
【0011】
サイドメンバ1は、車両の前後方向に延伸する部材である。サイドメンバ1は、金属製で、断面がコ字形状を有する。複数のサイドメンバ1は、互いに平行である。クロスメンバ2は、複数のサイドメンバ1の間に複数のサイドメンバ1と直交して設けられている部材である。クロスメンバ2は、金属製で、断面がコ字形状を有する。エンジン3は、例えば、車両用のディーゼルエンジンである。エンジン3は、エンジン3の下部に設けられているクロスメンバ2に固定されている。
【0012】
ファン4は、エンジン3を冷却するための装置である。ファン4は、エンジン3の前方側に設けられている。ファン4は、エンジン3に軸を介して連結されており、エンジン3から動力を受けて回転駆動される電動ファンである。ファン4は、車両が走行しているときに作動する。
【0013】
ファン4は、ファン4の前方側から空気を吸い込み、ファン4の後方側に空気を送風する。具体的には、ファン4は、ラジエータ5及びインタークーラ6よりも前方側の空気を吸引して後方側のエンジン3に向かって排気する。ファン4は、ファン4が吸引した空気をエンジン3側へ排気することで、エンジン3を冷却することができる。
【0014】
ラジエータ5は、エンジン3の冷却水を冷却するための装置である。ラジエータ5は、ファン4の前方側に設けられている。冷却水は、ラジエータ5とエンジン3との間で循環している。ラジエータ5は、エンジン3を通過する際に加熱された冷却水を冷却する。ラジエータ5は、前方から流入した空気(例えば、車両が前方に走行しているときに生じる走行風)と、エンジン3を通過した冷却水とを熱交換することで、冷却水を冷却する。ラジエータ5は、ブラケットを用いてラジエータ5の下部付近に設けられているクロスメンバ2に固定されている。
【0015】
インタークーラ6は、ターボチャージャから循環してきた空気を冷却するための装置である。インタークーラ6は、ラジエータ5の前方側に設けられている。インタークーラ6は、前方から流入した空気(例えば、走行風)と、ターボチャージャから循環してきた空気とを熱交換することで、ターボチャージャから循環してきた空気を冷却する。
【0016】
[ガイド構造7の詳細構成]
ガイド構造7は、インタークーラ6の冷却効果を向上させるための構造である。具体的には、ガイド構造7は、車両のインタークーラの前方への空気の流れを作るガイド構造であって、エンジン3によって加熱された空気がインタークーラ6の前方に流れ込むことを防ぐためのガイド構造である。
【0017】
ガイド構造7は、ブラケット71、流量抑制部材72、及び固定部材73を有する。ブラケット71は、金属製で、インタークーラ6の側方又は上方に位置し、かつ車両の前後方向において延伸している。具体的には、
図1から
図3に示されるように、ブラケット71の車両の前後方向における後方側の端部は、例えばリベットによってラジエータ5の側面に固定されている。また、ブラケット71の車両前後方向における前方側の端部は、インタークーラ6の前面よりも前方に位置する。ブラケット71は、例えば、インタークーラ6の車両の車幅方向における側面の外側に位置する。
【0018】
流量抑制部材72は、インタークーラ6の前方又は側方に位置し、かつエンジン3により加熱された空気がインタークーラ6の前方に流れる量を低減させる部材である。流量抑制部材72は、長方形状を有する板状の部材である。流量抑制部材72は、車両の前後方向及び車両の上下方向において延伸している。流量抑制部材72は、例えばスポンジである。流量抑制部材72は、ユーザが周辺部品の組付け作業時に手がぶつかったとしても手が保護されるように、ブラケット71よりも柔らかい材質で形成されている。
【0019】
流量抑制部材72は、ブラケット71の前方端付近に固定されている。流量抑制部材72とブラケット71とが固定されている位置は、インタークーラ6の前面よりも前方である。
図3に示されるように、ブラケット71の後方の部分は、車両の前後方向と同じ向きに延伸している。また、ブラケット71の前方端付近の部分は、ブラケット71の後方の部分と、所定の角度で傾斜している。流量抑制部材72は、ブラケット71の前方端付近の部分の側面に沿って固定されており、車両の前後方向と所定の角度で傾斜している。流量抑制部材72の前方端は、流量抑制部材72の後方端よりも車両の車幅方向において外側に位置する。
【0020】
複数の固定部材73は、流量抑制部材72をブラケット71に固定する部材である。複数の固定部材73は、車両の前後方向において異なる位置に設けられている。具体的には、
図2に示されるように、複数の固定部材73は車両の前後方向において異なる位置、かつ車両の高さ方向において異なる位置に設けられている。固定部材73は、例えば、
図2に示されるように、2つである。一方の固定部材73は、ブラケット71の前方かつ下端付近に位置する。そして、他方の固定部材73は、当該一方の固定部材73に対して車両の前後方向における後方で、かつ車両の高さ方向における上方に位置する。
【0021】
このように、ガイド構造7は、車両の前後方向において異なる位置に位置する複数の固定部材73を有する。この結果、ガイド構造7は、複数の固定部材73が車両の前後方向において同じ位置に位置する場合に比べて、流量抑制部材72が走行風やエンジン3によって加熱された空気を受けることによって、複数の固定部材73を結ぶ直線を起点として車両の車幅方向において振れることによりばたつくことを抑制することができる。
【0022】
図4に示されるように、固定部材73は、頭部730、軸部731、及び突起732を有する。固定部材73は、例えば樹脂製である。頭部730は、ブラケット71及び流量抑制部材72に形成された穴の内径よりも大きな外径を有する。頭部730は、例えば円形状を有する。軸部731は、ブラケット71及び流量抑制部材72に形成された穴を通過可能な部分である。軸部731は、例えば円柱形状を有する。
【0023】
突起732は、軸部731の先端に、ブラケット71及び流量抑制部材72に形成された穴を通過可能に形成されている部分である。突起732は、例えば、円錐台形状を有する。突起732の外径は、ブラケット71及び流量抑制部材72に形成された穴の内径よりも大きい。
【0024】
また、頭部730が軸部731と接する位置と、突起732の頭部730側の位置との距離は、例えば、流量抑制部材72の厚み以下である。固定部材73が、ブラケット71及び流量抑制部材72に形成された穴に押し込まれて挿入されていることにより、流量抑制部材72は、ブラケット71に固定されている。この結果、ガイド構造7は、スポンジ製の流量抑制部材72を強く締め付けることで破損させることなく、ブラケット71に固定することができる。
【0025】
また、本実施形態においては、複数の固定部材73は、2つであるとしたが、複数の固定部材73の数は任意である。また、複数の固定部材73のうち、一方の固定部材73は、ブラケット71の前方かつ下端付近に位置し、他方の固定部材73は、当該一方の固定部材73に対して後方で、かつ上方に位置するとしたが、一方の固定部材73は、ブラケット71の先端部における前方かつ上端付近に位置し、他方の固定部材73は、当該一方の固定部材73に対して後方で、かつ下方に位置していてもよい。
【0026】
また、ブラケット71の前方端付近の部分と流量抑制部材72は、車両の前後方向と所定の角度で傾斜しているとしたが、ブラケット71と流量抑制部材72は、車両の前後方向と同じ方向に延伸していてもよい。
【0027】
[本実施形態に係るガイド構造7による効果]
本実施形態に係るガイド構造7は、インタークーラ6の側方又は上方に位置し、かつ車両の前後方向において延伸しているブラケット71と、インタークーラ6の前方又は側方に位置し、かつエンジン3により加熱された空気がインタークーラ6の前方に流れる量を低減させる流量抑制部材72と、流量抑制部材72をブラケット71に固定する複数の固定部材73と、を有する。そして、複数の固定部材73は車両の前後方向において異なる位置に設けられている。
【0028】
本実施形態に係るガイド構造7は、このように複数の固定部材73が車両の前後方向において異なる位置に設けられている。この結果、ガイド構造7は、複数の固定部材73が車両の前後方向において同じ位置に設けられている場合よりも、流量抑制部材72をブラケット71に強固に固定することができ、かつ流量抑制部材72が走行風やエンジン3からの熱風によってばたつくことを抑制することができる。
【0029】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0030】
1・・・サイドメンバ
2・・・クロスメンバ
3・・・エンジン
4・・・ファン
5・・・ラジエータ
6・・・インタークーラ
7・・・ガイド構造
71・・・ブラケット
72・・・流量抑制部材
73・・・固定部材
730・・・頭部
731・・・軸部
732・・・突起