特許第6816530号(P6816530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816530
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】タイヤ用支持中子の保持部材
(51)【国際特許分類】
   B60C 17/04 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
   B60C17/04 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-11517(P2017-11517)
(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公開番号】特開2018-118624(P2018-118624A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2020年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】浅野 智博
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−098801(JP,A)
【文献】 特開2018−118625(JP,A)
【文献】 特開平06−183225(JP,A)
【文献】 特開平10−119520(JP,A)
【文献】 特開昭58−122208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00− 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤが嵌合されるリムの外周面と前記空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子との間に配設されるゴム製の保持部材であって、前記中子の基端部を受容する凹部を外周面に備えた環状体からなり、該環状体の内周面に開口する内側通気穴と、前記環状体の前記凹部から外れた位置において前記環状体の外周面に開口する外側通気穴と、前記環状体の内部を貫通して前記内側通気穴と前記外側通気穴とを互いに連結する貫通孔とを有することを特徴とするタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項2】
前記内側通気穴の開口幅W1が3mm以上50mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項3】
前記内側通気穴の深さGが2mm以上30mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項4】
前記貫通孔の幅Whが前記貫通孔の高さHhに対して0.90≦Wh/Hh≦1.10の関係を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項5】
前記貫通孔の高さHhが前記環状体の前記凹部での厚さTに対して0.30≦Hh/T≦0.70の関係を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項6】
前記貫通孔が前記環状体の周方向に延びる周方向貫通孔と前記環状体の幅方向に延びる幅方向貫通孔とから構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項7】
前記幅方向貫通孔の幅W3が前記周方向貫通孔の幅W2に対して0.50≦W3/W2≦1.20の関係を満足することを特徴とする請求項6に記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤが嵌合されるリムの外周面と空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子との間に配設されるゴム製の保持部材に関し、更に詳しくは、中子に対する通気穴の加工を不要にすると共に、リムに配設されるバルブの位置の自由度を高めることを可能にし、更にはリムに対する中子の拘束性を改善することを可能にしたタイヤ用支持中子の保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
AGT(Automated Guideway Transit)やモノレールに代表される新交通システムの車両では、車輪に空気入りタイヤが装着されている。このような新交通システムにおいて、空気入りタイヤがパンクして車両が走行不能になると、他の車両が軌道を走行することができず、ダイヤが大幅に乱れることになる。このような不都合を回避するために、空気入りタイヤが嵌合されるリムの外周面には空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子が設置されており、空気入りタイヤがパンクした際にも中継地までの必要最小限の走行が可能になっている。
【0003】
従来、この種のタイヤ用支持中子を備えた車輪において、リムの外周面と中子との間に緩衝材としてゴム製の環状体からなるタイヤ用支持中子の保持部材を配設することが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。このような保持部材をリムの外周面と中子との間に挿入することにより、通常走行時における異音の発生を防止すると共に、パンク走行時における振動の発生を低減することができる。
【0004】
ところが、リムの外周面にはエア充填用のバルブが連通しているため、リムの外周面と中子との間にゴム製の保持部材を配設した場合、その保持部材によりバルブが塞がれてエアの充填を行うことができなくなるという不都合がある。そのため、保持部材を構成する環状体にその環状体を貫通する通気経路を設ける一方で、金属製の中子に対して通気穴を加工することが必要である。しかしながら、金属製の中子に対して通気穴の加工する作業には手間が掛かり、しかも中子の強度低下を招く恐れがある。そのため、中子に対する通気穴の加工を無くすことが望まれている。
【0005】
また、エア充填用のバルブは一般的にリムのセンター部に配置されるため、環状体に形成される通気経路はリムのセンター部に対応する位置に配置され、その通気経路がバルブの端部(バルブゴム)を内包するように構成されている。しかしながら、このような構造を有するタイヤ用支持中子の保持部材は、エア充填用のバルブがリムのセンター部に配置される場合には有効であるが、バルブがリムのセンター部から外れた位置に配置される場合には適用することが難しく、これがバルブの位置を制約する要因になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭54−6205号公報
【特許文献2】実公昭64−322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、中子に対する通気穴の加工を不要にすると共に、リムに配設されるバルブの位置の自由度を高めることを可能にし、更にはリムに対する中子の拘束性を改善することを可能にしたタイヤ用支持中子の保持部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するための本発明のタイヤ用支持中子の保持部材は、空気入りタイヤが嵌合されるリムの外周面と前記空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子との間に配設されるゴム製の保持部材であって、前記中子の基端部を受容する凹部を外周面に備えた環状体からなり、該環状体の内周面に開口する内側通気穴と、前記環状体の前記凹部から外れた位置において前記環状体の外周面に開口する外側通気穴と、前記環状体の内部を貫通して前記内側通気穴と前記外側通気穴とを互いに連結する貫通孔とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、中子の基端部を受容する凹部を外周面に備えた環状体からなるタイヤ用支持中子の保持部材が、環状体の内周面に開口する内側通気穴と、環状体の凹部から外れた位置において環状体の外周面に開口する外側通気穴と、環状体の内部を貫通して内側通気穴と外側通気穴とを互いに連結する貫通孔とを有することにより、リムの外周面に連通するバルブと空気入りタイヤの内部空間との間に上述した内側通気穴と外側通気穴と貫通孔とからなる一連の通気経路が形成されるので、中子に対する通気穴の加工を不要にすることができる。また、内側通気穴と外側通気穴と貫通孔とを組み合わせた構造であるので、環状体の幅方向における内側通気穴の位置をバルブの位置に応じて変更することが可能となる。そのため、リムに配設されるバルブの位置の自由度を高めることができる。更に、上記環状体においては、リムに対して当接する部位には内側通気穴が開口するだけであり、中子に対して当接する部位には外側通気穴が存在しないので、リム及び中子に対する環状体の密着性を十分に確保することができる。その結果、本発明のタイヤ用支持中子の保持部材を使用した場合、ランフラット走行時におけるリムに対する中子の拘束性を改善することができる。
【0010】
本発明において、内側通気穴の開口幅W1は3mm以上50mm以下であることが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0011】
内側通気穴の深さGは2mm以上30mm以下であることが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0012】
貫通孔の幅Whは貫通孔の高さHhに対して0.90≦Wh/Hh≦1.10の関係を満足することが好ましい。これにより、貫通孔を潰れ難くして通気経路を十分に確保することができる。
【0013】
貫通孔の高さHhは環状体の凹部での厚さTに対して0.30≦Hh/T≦0.70の関係を満足することが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0014】
貫通孔は環状体の周方向に延びる周方向貫通孔と環状体の幅方向に延びる幅方向貫通孔とから構成されることが好ましい。これにより、バルブから注入される空気が周方向貫通孔及び幅方向貫通孔の中に拡散されるので、内圧充填時の通気性を十分に確保することができる。
【0015】
幅方向貫通孔の幅W3は周方向貫通孔の幅W2に対して0.50≦W3/W2≦1.20の関係を満足することが好ましい。これにより、内圧充填時の通気性と保持部材の耐久性とを両立させることができる。
【0016】
本発明のタイヤ用支持中子の保持部材は、AGTやモノレールに代表される新交通システムの車両に装着される車輪に対して適用することが好ましいが、これに限定されるものではなく、タイヤ用支持中子を備えた種々の車輪に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪を示す子午線断面図である。
図2】本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を展開した状態を示す上面図である。
図3】本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を展開した状態を示す底面図である。
図4】本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を示す断面図である。
図5】環状体に形成された貫通孔を例示するものであり、(a),(b)はそれぞれ形状が異なる貫通孔を示す断面図である。
図6】本発明の他の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を示す断面図である。
図7】本発明の更に他の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を展開した状態を示す上面図である。
図8】本発明の更に他の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を展開した状態を示す上面図である。
図9】従来のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪を示す子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪を示し、図2図4はそのタイヤ用支持中子の保持部材を示すものである。
【0019】
図1に示すように、この車輪は、円環状をなすリム1と、リム1に取り付けられたバルブ2と、リム1に嵌合された空気入りタイヤ3と、空気入りタイヤ3の内圧低下時に該空気入りタイヤ3を内側から支持する円環状の中子4と、リム1の外周面と中子4との間に配設されたゴム製の保持部材5とを備えている。バルブ2はリム1のセンター部から外れた位置に配置されており、バルブ2の端部(バルブゴム)がリム1の外周面から僅かに突き出している。中子4は、リム1のセンター部で中子4の周方向に延長するウエブ41と、ウエブ41の内周側に連設された内側フランジ42と、ウエブ41の外周側に連設された外側フランジ43と、ウエブ41と内側フランジ42と外側フランジ43とで囲まれた領域において中子4の幅方向に延在する複数枚の補強板44とから構成されている。これら補強板44は中子4の周方向に沿って間欠的に配置されている。
【0020】
図2図4に示すように、保持部材5は、内周面50A及び外周面50Bを有する環状体50から構成されている。環状体50はリム1の外周面上に配置された状態で空気入りタイヤ3の両側のビード部に当接し、これらビード部の位置をリム1に対して固定するようになっている。環状体50の外周面50Bには、中子4の基端部(内側フランジ42)を受容する凹部51が環状体50の周方向に沿って形成されている。環状体50には、該環状体50の内周面50Aに開口する内側通気穴52と、環状体50の凹部51から外れた位置において環状体50の外周面50Bに開口する複数の外側通気穴53と、環状体50の内部を貫通して内側通気穴52と外側通気穴53とを互いに連結する貫通孔54とが形成されている。内側通気穴52はリム1のセンター部から外れた位置に配置されたバルブ2の端部を内包するように構成されている。また、貫通孔54は環状体50の周方向に延びる周方向貫通孔54Aと該周方向貫通孔54Aから分岐して環状体50の幅方向に延びる複数本の幅方向貫通孔54Bとから構成されている。なお、内側通気穴52、外側通気穴53及び貫通孔54を備えた環状体50は、例えば、環状体50を厚さ方向に複数の層に分割した状態で成形し、それら分割片を互いに貼り合せることで成形することができる。
【0021】
上述したタイヤ用支持中子の保持部材5を備えた車輪では、中子4の基端部を受容する凹部51を外周面50Bに備えた環状体50からなる保持部材5が、環状体50の内周面50Aに開口する内側通気穴52と、環状体50の凹部51から外れた位置において環状体50の外周面50Bに開口する外側通気穴53と、環状体50の内部を貫通して内側通気穴52と外側通気穴53とを互いに連結する貫通孔54とを有することにより、リム1の外周面に連通するバルブ2と空気入りタイヤ3の内部空間との間に内側通気穴52と外側通気穴53と貫通孔54とからなる一連の通気経路が形成される。そのため、中子4に対する通気穴の加工を不要にすることができる。また、内側通気穴52と外側通気穴53と貫通孔54とを組み合わせた構造であるので、環状体50の幅方向における内側通気穴52の位置をバルブ2の位置に応じて変更することが可能となる。そのため、リム1に配設されるバルブ2の位置の自由度を高めることができる。
【0022】
更に、上記環状体50においては、リム1に対して当接する部位には内側通気穴52が開口するだけであり、中子4に対して当接する部位には外側通気穴53が存在しないので、リム1及び中子4に対する環状体50の密着性を十分に確保することができる。その結果、上述したタイヤ用支持中子の保持部材5を使用した場合、ランフラット走行時におけるリム1に対する中子4の拘束性を改善することができる。このことはタイヤ用支持中子の保持部材5の耐久性を高める上で有効である。
【0023】
また、上述したタイヤ用支持中子の保持部材5では、貫通孔54が環状体50の周方向に延びる周方向貫通孔54Aと環状体50の幅方向に延びる幅方向貫通孔54Bとから構成されているため、バルブ2から注入される空気は周方向貫通孔54A及び幅方向貫通孔54Bの中に拡散され、外側通気穴53を介して空気入りタイヤ3の内部空間に供給される。そのため、内圧充填時の通気性を十分に確保することができる。
【0024】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、図4に示すように、内側通気穴52の開口幅W1は3mm以上50mm以下、より好ましくは15mm以上40mm以下であると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。内側通気穴52の開口幅W1が小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。なお、内側通気穴52の開口幅W1はバルブゴムの直径よりも大きいことが必要である。
【0025】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、図4に示すように、内側通気穴52の深さGは2mm以上30mm以下、より好ましくは4mm以上10mm以下であると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。内側通気穴52の深さGが小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。なお、内側通気穴52の深さGはバルブゴムの高さよりも大きいことが必要である。
【0026】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、貫通孔54の断面形状は特に限定されるものではなく、図5(a)のような円形としたり、図5(b)のような四角形としたりすることができる。いずれにしても、図5(a),(b)に示すように、環状体50の幅方向に測定される貫通孔54の幅Whは環状体50の厚さ方向に測定される貫通孔54の高さHhに対して0.90≦Wh/Hh≦1.10の関係を満足すると良い。このように貫通孔54のアスペクト比を1:1に近付けることにより、貫通孔54を潰れ難くして通気経路を十分に確保することができる。比Wh/Hhが小さ過ぎると貫通孔54が環状体50の幅方向に潰れ易くなり、逆に大き過ぎると貫通孔54が環状体50の厚さ方向に潰れ易くなる。
【0027】
また、貫通孔54の高さHhは環状体5の凹部51での厚さTに対して0.30≦Hh/T≦0.70の関係、より好ましくは0.40≦Hh/T≦0.60の関係を満足すると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。比Hh/Tが小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。
【0028】
更に、貫通孔54が周方向貫通孔54Aと幅方向貫通孔54Bとから構成される場合、幅方向貫通孔54Bの幅W3は周方向貫通孔54Aの幅W2に対して0.50≦W3/W2≦1.20の関係を満足すると良い。これにより、内圧充填時の通気性と保持部材5の耐久性とを両立させることができる。比W3/W2が小さ過ぎると通気性が低下し、逆に大き過ぎると環状体50の周方向の一部が変形し易くなるため保持部材5の耐久性が低下する。
【0029】
図6は本発明の他の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を示すものである。図6において図1図4と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。図6に示すように、保持部材5を構成する環状体50には複数本の補強線材55が埋設されている。補強線材55としては、例えば、ナイロン繊維やアラミド繊維等からなる有機繊維コードの他、スチールコードを使用することができる。また、補強線材55は環状体50の周方向に沿って延在するように配置したり、環状体の幅方向に沿って延在するように配置したり、或いは、環状体50の周方向に対して傾斜するように配置したりすることができる。このような補強線材55を環状体50に埋設することにより、貫通孔54の形成に伴う強度低下を補償して保持部材5の耐久性を改善することができる。
【0030】
図7及び図8は本発明の更に他の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を示すものである。図7及び図8において図1図4と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。図7においては、内側通気穴52と外側通気穴53とを互いに連結する貫通孔54が1本の周方向貫通孔54Aと1本の幅方向貫通孔54Bとから構成されている。一方、図8においては、内側通気穴52と外側通気穴53とを互いに連結する貫通孔54が1本の幅方向貫通孔54Bだけで構成されている。このように貫通孔54は内側通気穴52と外側通気穴53とを互いに連結する限りにおいて種々の構造を採用することができる。
【0031】
以下、本発明との対比のために、従来のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪について説明する。図9は従来のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪を示すものである。図9に示すように、従来の車輪では、バルブ2はリム1のセンター部に配置されている。これに対して、保持部材5を構成する環状体50のセンター部には該環状体50を貫通する通気経路52Xが環状体50の周方向に沿って形成されている。また、中子4のウエブ41の近傍には通気穴45が形成されている。
【0032】
このように従来の車輪では、リム1のセンター部に配置されたバルブ2に対応するために、保持部材5を構成する環状体50のセンター部に通気経路52Xを形成する一方で、中子4に対してドリル加工等により通気穴45を形成しているが、金属製の中子4に対して通気穴45を加工する作業には手間が掛かり、しかも中子4の強度低下を招く恐れがある。また、環状体50のセンター部に通気経路52Xを形成した構造では、バルブ2の位置がリム1のセンター部に制限されることになる。これに対して、本発明では上述のような不都合を解消することが可能である。
【実施例】
【0033】
円環状をなすリムと、リムに取り付けられたバルブと、リムに嵌合された空気入りタイヤ(タイヤサイズ:315/70R20)と、空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子と、リムの外周面と中子との間に配設されたゴム製の保持部材を備えた車輪において、中子及び保持部材の構成を種々異ならせた従来例及び実施例1〜11の車輪を製作した。
【0034】
従来例においては、リムのセンター部にバルブを配置し、保持部材を構成する環状体の外周面に中子の基端部を受容する凹部を形成し、環状体のセンター部に該環状体を貫通する通気経路を該環状体の周方向に沿って形成する一方で、中子のウエブ近傍に通気穴を加工した。なお、通気経路の溝幅は45mmとし、その溝深さは20mmとした。
【0035】
実施例1〜11においては、リムのセンター部から外れた位置にバルブを配置し、保持部材を構成する環状体の外周面に中子の基端部を受容する凹部を形成し、環状体に対して、該環状体の内周面に開口する内側通気穴と、環状体の凹部から外れた位置において環状体の外周面に開口する外側通気穴と、環状体の内部を貫通して内側通気穴と外側通気穴とを互いに連結する貫通孔とを形成した。内側通気穴の開口幅W1、内側通気穴の深さG、貫通孔の高さHhに対する貫通孔の幅Whの比Wh/Hh、周方向貫通孔の幅W2に対する幅方向貫通孔の幅W3の比W3/W2、環状体の凹部での厚さTに対する貫通孔の高さHhの比Hh/Tは表1のように設定した。その一方で、中子には通気穴を形成しなかった。
【0036】
上述した従来例及び実施例1〜11の車輪について、中子穴開け加工の要否及びバルブ位置の自由度を判定すると共に、下記の評価方法により、通気性及び中子拘束性を評価した。その結果を表1に併せて示す。
【0037】
通気性:
リムのバルブを介して空気を0kPaの状態から900kPaに到達するまで充填し、その充填に要した時間を計測した。評価結果は、計測値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど通気性が良好であることを意味する。
【0038】
中子拘束性:
上記車輪を室内ドラム試験機に装着し、バルブを解放した状態で、荷重4000kgf、速度15km/hの条件で60分間走行した後、中子の周方向の位置ずれ量を計測した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど中子拘束性が良好であることを意味する。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示すように、実施例1〜11のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪では、中子に対する通気穴の加工が不要であると共に、バルブ位置の自由度が高いという利点がある。しかも、実施例1〜11のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪では、通気性を十分に確保しながらリムに対する中子の拘束性を良好に維持することができた。
【符号の説明】
【0041】
1 リム
2 バルブ
3 空気入りタイヤ
4 中子
5 保持部材
50 環状体
50A 内周面
50B 外周面
51 凹部
52 内側通気穴
53 外側通気穴
54 貫通孔
54A 周方向貫通孔
54B 幅方向貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9