(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る電子管楽器100を示す図であり、
図1(a)は電子管楽器100の正面図であり、
図1(b)は電子管楽器100の側面図であり、
図2は電子管楽器100のブロック図であり、
図3はマウスピース部3の断面図である。
【0011】
なお、
図1(a)では、電子管楽器100の内部がわかるように管体部100aの一部を切り欠いた図示にしている。
【0012】
本実施形態では、電子管楽器100がサクソフォンである場合を例にして説明を行うが、本発明の電子管楽器100は、サクソフォン以外の電子管楽器(例えば、クラリネット等)であってもよい。
【0013】
電子管楽器100は、
図1に示すように、サクソフォンの形状に形成された管体部100aと、管体部100aの外面に配置された操作子1と、管体部100aの先端部側に設けられた発音部2と、管体部100aの基端部側に設けられたマウスピース部3と、を備えている。
【0014】
また、
図1(a)に示すように、電子管楽器100は、管体部100aの基端部側の内部に設けられた基板4を備えており、その基板4上には、CPU5(Central Processing Unit)、ROM6(Read Only Memory)、RAM7(Random Access Memory)及び音源部8等が設けられている。
【0015】
さらに、
図3に示すように、マウスピース部3は、マウスピース本体3aと、マウスピース本体3aに設けられた固定金具3bと、マウスピース本体3aに固定金具3bで取り付けられたリード部3cと、マウスピース本体3aの先端側に設けられたブレスセンサ10と、マウスピース本体3a内に設けられたボイスセンサ11と、リード部3cに設けられたタンセンサ12と、リード部3cに設けられたリップセンサ13と、を備えている。
【0016】
なお、リップセンサ13は、後述するようにリッププレッシャセンサ部13aとリップポジションセンサ部13bと、を含んでいる。
【0017】
また、電子管楽器100は、管体部100aの外面に設けられた表示部14(
図2参照)を備えている。
例えば、表示部14は、タッチセンサ付の液晶画面等を備え、各種の表示のみだけでなく、各種の設定操作を行うことができるようになっている。
【0018】
そして、各機能部(操作子1、CPU5、ROM6、RAM7、音源部8、ブレスセンサ10、ボイスセンサ11、タンセンサ12、リップセンサ13、表示部14等)は、バス15で接続されている。
【0019】
操作子1は、演奏者(ユーザ)が指で操作する操作部であり、音高を指定するための演奏キー、楽曲のキーに合わせて音高を変える機能及び音高の微調整を行う機能等を設定する設定キーを含む。
【0020】
発音部2は、後述する音源部8から入力された楽音信号に信号増幅等を施し、内蔵のスピーカーから楽音として出力する。
ただし、本実施形態では、電子管楽器100に発音部2を内蔵させているが、発音部2は内蔵型のものに限らず、電子管楽器100の外部出力ポート(図示せず)に接続される外付型のものであってもよい。
【0021】
CPU5は、電子管楽器100の各部を制御する制御部として機能し、ROM6から指定されたプログラムを読み出してRAM7に展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行する。
【0022】
ROM6は、読み取り専用の記憶部であり、電子管楽器100の各部を制御するためのプログラムや後述する曲データ(MIDIデータ)等が記憶されている。
RAM7は、読み書き可能な記憶部であり、各センサ(ブレスセンサ10、ボイスセンサ11、タンセンサ12及びリップセンサ13等)から取得されるデータ、プログラム及び曲データ等を一時的に格納するワークエリアとして機能する。
【0023】
音源部8は、操作子1での操作情報及び各センサで取得されるデータ等に基づいたCPU5の楽音の生成指示(楽音制御)に従い、楽音を生成して楽音信号を発音部2に出力する。
【0024】
マウスピース部3は、演奏者が演奏時に加える部分であり、各センサ(ブレスセンサ10、ボイスセンサ11、タンセンサ12及びリップセンサ13等)を備え、演奏者によるタン、息及び声等による演奏のための各種操作を検出する。
【0025】
次に、具体的に、各センサ(ブレスセンサ10、ボイスセンサ11、タンセンサ12及びリップセンサ13等)について説明する。
なお、以下で説明する各センサの機能等は、主な機能等についての説明であり、他の機能を持たせる等を行ってもよいことに留意されたい。
【0026】
ブレスセンサ10は圧力センサを備えており、ブレスセンサ10によって、マウスピース本体3aの基端部側の息を吹き込む開口部3aaから吹き込まれる演奏者の息量・息圧等のブレス値の検出が行われる。
なお、ブレスセンサ10によって検出されるブレス値は、CPU5が楽音のノートオン/オフや楽音の音量等の設定を行うのに用いられる。
【0027】
また、ボイスセンサ11はマイクロフォンを備え、ボイスセンサ11によって、演奏者のグロウル演奏のための音声(グロウル波形)の検出が行われる。
なお、ボイスセンサ11によって検出された音声(グロウル波形)は、CPU5がグロウル波形データの合成比率を決定するのに用いられる。
【0028】
タンセンサ12は、リード部3cの最も基端部側(ティップ側)の位置に検出部12sが設けられた圧力センサ又は静電容量センサを備えており、タンセンサ12によってリード部3cの基端部側の位置へのタンの接触の有無の検出(タンギングの検出)が行われる。
なお、タンセンサ12によって検出されたタンの接触の有無は、CPU5が楽音のノートオン/オフの設定を行うのに用いられるとともに、タンの接触の有無とブレスセンサ10のブレス値の検出状態との双方の状態に応じて音高の設定を行うのに用いられる。
【0029】
リップセンサ13は、リード部3cの基端部側(ティップ側)から先端側(ヒール側)に向けて、複数の検出部13sが設けられた圧力センサ又は静電容量センサを備えており、リッププレッシャセンサ部13a及びリップポジションセンサ部13bとして機能する。
【0030】
具体的には、リップセンサ13は、複数の検出部13sのどの検出部13sでリップの接触が検出されるかに基づいてリップポジションを検出するリップポジションセンサ部13bとしての役割と、その接触しているリップの接触強さを検出するリッププレッシャセンサ部13aとしての役割と、を果たす。
【0031】
なお、複数の検出部13sでリップの接触が検出されている場合には、リップセンサ13からの出力に基づいて、CPU5が接触中心位置を求めることでリップポジションが求められる。
【0032】
例えば、リップセンサ13が圧力センサを有する場合には、圧力センサが検出する圧力の変化に基づいて、リップの接触強さ(リッププレッシャ)及びリップポジションの検出が行われる。
【0033】
また、リップセンサ13が静電容量センサを有する場合には、静電容量センサが検出する静電容量の変化に基づいて、リップの接触強さ(リッププレッシャ)及びリップポジションの検出が行われる。
【0034】
そして、リッププレッシャセンサ部13aとしてのリップセンサ13によるリップの接触強さ(リッププレッシャ)の検出結果及びリップポジションセンサ部13bとしてのリップセンサ13によるリップポジションの検出結果は、ビブラート演奏やサブトーン演奏を制御するために用いられる。
【0035】
具体的には、CPU5は、リップの接触強さ(リッププレッシャ)の変化状態に基づき、ビブラート演奏を検出してビブラートに対応した処理を行い、リップポジションの変化状態(位置及び接触面積等の変化状態)に基づき、サブトーン演奏を検出してサブトーンに対応した処理を行う。
【0036】
そして、電子管楽器100は、演奏者が通常のサクソフォンを演奏するときと同様の操作を行うことで演奏が行えるようになっているが、初心者に熟練者同様の演奏操作を求めるのは、難しいことから、本実施形態の電子管楽器100では、主に演奏者の息吹込操作だけで演奏が行えるものとしており、以下、具体的に説明する。
【0037】
先に少し触れたが、ROM6には、いわゆるMIDIデータと呼ばれる曲データが記憶されている。
曲データには、サクソフォンである電子管楽器100(以下、本楽器ともいう。)以外の楽器による伴奏等を本楽器の発音部2を利用して発音させるためのデータや本楽器を自動演奏させるためのデータ等が含まれている。
【0038】
したがって、この曲データを利用することで、全てを演奏者が演奏するのではなく、一部の演奏部分を自動演奏として、演奏者のレベルに応じた練習ができるようにしており、
図4から
図6に示すフローチャートを参照しながら具体的に説明する。
【0039】
図4は処理のメインルーチンを示すフローチャートであり、
図5は
図4のメインルーチン中のサブルーチンである表現練習のフローチャートであり、
図6は
図5の表現練習中のサブルーチンであるコンティニュアスデータのデータ値の補正データ値を作成する部分のフローチャートである。
【0040】
演奏者が「表現練習」、「ビブラート演奏お任せ」、「グロウル演奏お任せ」、「サブトーン演奏お任せ」及び「その他処理(例えば、伴奏だけお任せ)」等の演奏モードを選択し、どの曲を演奏するのかを設定して、演奏開始の操作が行われると、
図4に示すメインルーチンの処理が開始される。
【0041】
ステップS1では、CPU5は、演奏者が「表現練習」を選択したか否かを判定する。
そして、CPU5は、演奏者が「表現練習」を選択したと判定(ステップS1:Yes)すると、ステップS11に進み、CPU5は、後述する
図5に示すフローチャートの処理を実行する。
一方、CPU5は、演奏者が「表現練習」を選択していないと判定(ステップS1:No)すると、ステップS2に進む。
【0042】
ステップS2では、CPU5は、演奏者が「ビブラート演奏お任せ」を選択したのか否かを判定し、「ビブラート演奏お任せ」を選択したと判定(ステップS2:Yes)するとステップS21に進み、「表現練習」を選択していないと判定(ステップS2:No)するとステップS3に進む。
【0043】
ステップS21では、CPU5は、リップセンサ13のリッププレッシャセンサ部13aとしての機能を無効に設定し、ステップS22に進む。
つまり、CPU5は、ステップS21の処理として、リッププレッシャを発音処理に反映させない設定を行い、ステップS22に進む。
【0044】
ステップS22では、CPU5は「ビブラート演奏お任せ」に対応した処理を実行し、その処理が終了、つまり、演奏が終了すると全体の処理が終了する。
具体的には、CPU5は、演奏者が選曲した曲の曲データに基づいて、本楽器以外の他の楽器のパート(例えば、伴奏等)を自動演奏させる処理を音源部8に行わせ、発音部2は音源部8からの入力によって自動演奏に応じた音を発音することになる。
【0045】
なお、ステップS22では、CPU5は、上述の自動演奏が行えるように、選曲された曲の曲データ(MIDIデータ)をROM6から、例えば、ワークエリアとして機能するRAM7に読み込み取得する処理も実行する。
ただし、曲データ(MIDIデータ)は、例えば、USBメモリから取得、外部端末(電子管楽器100以外の機器)から取得、及び、ネット経由で取得する等、取得先はROM6に限定される必要はないので、必ずしも、あらかじめROM6に曲データが記憶されている必要はない。
【0046】
また、CPU5は、本楽器の演奏パートのうち、ビブラートに対応する部分の曲データに基づいて、自動演奏させる処理を音源部8に行わせ、発音部2は音源部8からの入力によって自動演奏に応じたビブラートの音を発音することになる。
なお、ビブラートに対応する部分の処理については、後ほど
図5及び
図6を参照して説明するブレス値を反映させる補正を行った処理になっていてもよい。
【0047】
さらに、CPU5は、本楽器の演奏パートのうち、ビブラートに対応する部分以外について、演奏者の操作(演奏)に従った処理を音源部8に行わせ、発音部2は音源部8からの入力によって演奏者の操作に従った音を発音することになる。
【0048】
ステップS3では、CPU5は、演奏者が「グロウル演奏お任せ」を選択したのか否かを判定し、「グロウル演奏お任せ」を選択したと判定(ステップS3:Yes)するとステップS31に進み、「グロウル演奏お任せ」を選択していないと判定(ステップS3:No)するとステップS4に進む。
【0049】
ステップS31では、CPU5は、ボイスセンサ11を無効に設定し、ステップS32に進む。
つまり、CPU5は、ステップS31の処理として、演奏者のボイスを発音処理に反映させない設定を行い、ステップS32に進む。
【0050】
ステップS32では、CPU5は「グロウル演奏お任せ」に対応した処理を実行し、その処理が終了、つまり、演奏が終了すると全体の処理が終了する。
【0051】
具体的には、CPU5は、演奏者が選曲した曲の曲データに基づいて、本楽器以外の他の楽器のパート(例えば、伴奏等)を自動演奏させる処理を音源部8に行わせ、発音部2は音源部8からの入力によって自動演奏に応じた音を発音することになる。
なお、ステップS32では、CPU5は、上述の自動演奏が行えるように、選曲された曲の曲データ(MIDIデータ)をROM6から、例えば、ワークエリアとして機能するRAM7に読み込み取得する処理も実行する。
【0052】
また、CPU5は、本楽器の演奏パートのうち、グロウルに対応する部分について曲データに基づいて、自動演奏させる処理を音源部8に行わせ、発音部2は音源部8からの入力によって自動演奏に応じたグロウルの音を発音することになる。
なお、グロウルに対応する部分の処理については、後ほど
図5及び
図6を参照して説明するブレス値を反映させる補正を行った処理になっていてもよい。
【0053】
さらに、CPU5は、本楽器の演奏パートのうち、グロウルに対応する部分以外について、演奏者の操作(演奏)に従った処理を音源部8に行わせ、発音部2は音源部8からの入力によって演奏者の操作に従った音を発音することになる。
【0054】
ステップS4では、CPU5は、演奏者が「サブトーン演奏お任せ」を選択したのか否かを判定し、「サブトーン演奏お任せ」を選択したと判定(ステップS4:Yes)するとステップS41に進み、「サブトーン演奏お任せ」を選択していないと判定(ステップS4:No)するとステップS5に進む。
【0055】
ステップS41では、CPU5は、リップセンサ13のリップポジションセンサ部13bとしての機能を無効に設定し、ステップS42に進む。
つまり、CPU5は、ステップS41の処理として、リップポジションを発音処理に反映させない設定を行い、ステップS42に進む。
【0056】
ステップS42では、CPU5は「サブトーン演奏お任せ」に対応した処理を実行し、その処理が終了、つまり、演奏が終了すると全体の処理が終了する。
【0057】
具体的には、CPU5は、演奏者が選曲した曲の曲データに基づいて、本楽器以外の他の楽器のパート(例えば、伴奏等)を自動演奏させる処理を音源部8に行わせ、発音部2は音源部8からの入力によって自動演奏に応じた音を発音することになる。
なお、ステップS42では、CPU5は、上述の自動演奏が行えるように、選曲された曲の曲データ(MIDIデータ)をROM6から、例えば、ワークエリアとして機能するRAM7に読み込み取得する処理も実行する。
【0058】
また、CPU5は、本楽器の演奏パートのうち、サブトーンに対応する部分について曲データに基づいて、自動演奏させる処理を音源部8に行わせ、発音部2は音源部8からの入力によって自動演奏に応じたサブトーンの音を発音することになる。
なお、サブトーンに対応する部分の処理については、後ほど
図5及び
図6を参照して説明するブレス値を反映させる補正を行った処理になっていてもよい。
【0059】
さらに、CPU5は、本楽器の演奏パートのうち、サブトーンに対応する部分以外について、演奏者の操作(演奏)に従った処理を音源部8に行わせ、発音部2は音源部8からの入力によって演奏者の操作に従った音を発音することになる。
【0060】
ステップS5では、CPU5は、その他の処理を実行し、その処理が終了すると全体の処理が終了する。
その他の処理としては、例えば、本楽器の演奏パート以外は自動演奏させるといった処理等が考えられる。
【0061】
この場合、CPU5は、演奏者が選曲した曲の曲データに基づいて、本楽器以外の他の楽器のパート(例えば、伴奏等)を自動演奏させる処理を音源部8に行わせ、発音部2は音源部8からの入力によって自動演奏に応じた音を発音することになる。
なお、ステップS5では、CPU5は、上述の自動演奏が行えるように、選曲された曲の曲データ(MIDIデータ)をROM6から、例えば、ワークエリアとして機能するRAM7に読み込み取得する処理も実行する。
【0062】
また、CPU5は、演奏者の操作(演奏)に従った処理を音源部8に行わせ、発音部2は音源部8からの入力によって演奏者の操作に従った音を発音することになる。
【0063】
一方、ステップS1がYesの判定となり、ステップS11に進むと、CPU5は、
図5の表現練習のフローチャートの処理を実行することになる。
本実施形態の表現練習は、演奏者の息吹込操作によって演奏することができる演奏モードとしており、演奏を行うにあたって、操作子1による演奏者の操作を不要とし、操作子1で操作する必要のある部分は、CPU5が曲データ(MIDIデータ)に従って処理を音源部8に行わせるようになっている。
【0064】
また、表現練習では、演奏者が初心者である場合に対応して、曲データ(MIDIデータ)から取得した演奏データ値(以下、単にデータ値ともいう。)に基づいて、息吹込操作に伴う演奏(例えば、ビブラート演奏、グロウル演奏及びサブトーン演奏)における奏法にしたがった自動演奏するものとしている。
ただし、完全な自動演奏ではなく、演奏者の息吹込操作の状態(ブレスセンサ10から取得したブレス値)に応じて、CPU5が曲データ(MIDIデータ)から取得した基本ブレス値とブレスセンサ10から取得したブレス値との比較等を行い、それら基本ブレス値とブレス値とに基づいて、演奏者の息吹込操作(息遣い)による表現力がビブラート演奏、グロウル演奏及びサブトーン演奏等に反映されるように、演奏データ値(データ値)を補正し、その補正した補正データ値に応じた音波形データを音源部8に出力する出力処理を行うものとしており、以下、具体的に説明する。
【0065】
ステップT1では、CPU5は、演奏者によって選曲された曲データ(MIDIデータ)をROM6から、例えば、ワークエリアとして機能するRAM7に読み込み取得する処理を実行する。
【0066】
ステップT2では、CPU5は、取得した曲データ(MIDIデータ)に基づいて、本楽器以外の他の楽器のパート(例えば、伴奏等)を自動演奏させる処理を音源部8に行わせ、発音部2から他の楽器等に対応した伴奏の発音を開始させる。
なお、この伴奏に関する部分については、以下のフローに記載していないが、以下で説明する本楽器の演奏の進行に応じて、それに対応した伴奏が発音される。
【0067】
ステップT3では、CPU5は、ブレスセンサ10から取得するブレス値があらかじめ与えられている閾値以上であるのか否かを判定する。
そして、ブレス値が閾値以上であれば、演奏者が演奏を開始したものとしてステップT4の処理に進み、ブレス値が閾値未満であれば、演奏開始前であるものとしてステップT10に進む。
【0068】
後述するが、ステップT10は、演奏を終了する終了指示又は曲データが終了かを判定し、そのどちらでもない場合(ステップT10:No)、再び、ステップT3に進むことになる。
【0069】
したがって、ステップT2からステップT3に進み、ステップT3の判定がNoとなる場合には、演奏者の終了指示の操作又は演奏開始に伴う演奏者のマウスピース部3への息の吹き込み開始のいずれかが起きるのを待つ、監視ループに入ることになる。
【0070】
ステップT4では、ブレス値及び曲データ(MIDI)のノートオンデータに基づき、CPU5は、対応する処理を音源部8に行わせ、音源部8からの入力によって本楽器の発音を発音部2に発音させる。
そして、このノートオンによる発音が行われると、続いて、このノートオンから次のノートオンまでの間の連続的に時間変化する制御データである曲データ(MIDIデータ)のコンティニュアスデータに基づいて発音が継続されることになるが、本実施形態では、以下で説明するようにステップT5からステップT8を繰り返すループ処理とすることで、コンティニュアスデータのデータ値を、逐次、ブレス値に基づいて補正し、演奏者の息吹込操作の状態(ブレスセンサ10から取得したブレス値)に応じた表現力を反映させるようにしている。
【0071】
ステップT5では、CPU5は
図6のフローチャートに示す処理を実行することになる。
【0072】
ステップU1では、CPU5は、ブレスセンサ10から取得したブレス値が曲データに設けられている基本ブレス値以上であるか否かを判定し、ブレス値が基本ブレス値以上と判定(ステップU1:Yes)するとステップU2に進み、ブレス値が基本ブレス値未満と判定(ステップU1:No)するとステップU3に進む。
【0073】
ステップU2では、CPU5は、例えば、曲データのコンティニュアスデータの演奏データ値(データ値)がビブラート奏法にしたがったデータ値である場合、データ値に対してビブラートの深さを深くする補正値の算出を行う。
また、CPU5は、データ値がグロウル奏法にしたがったデータ値である場合、グロウル波形の合成比を大きくする補正値の算出を行う。
さらに、CPU5は、データ値がサブトーン奏法にしたがったデータ値である場合、サブトーン波形の合成比を大きくする補正値の算出を行う。
【0074】
具体的には、ROM6等に変換テーブル又は補正値を算出するための関数が設けられており、基本ブレス値とブレス値とに基づき、CPU5は、変換テーブル又は関数に従って補正値を求める。
【0075】
例えば、CPU5は、基本ブレス値とブレス値との差分や基本ブレス値に対してブレス値が何%大きいかといった指標(以下、差分や%等で表される指標を単に「差」と記載する場合がある。)に基づき、曲データのコンティニュアスデータのデータ値に対してどの程度の補正を行うのかという補正値を変換テーブル又は関数に従って求める。
【0076】
本実施形態では、補正値を求めるための変換テーブル又は関数として、基本ブレス値とブレス値の差が小さいときには、少なめの補正値となるようにし、ある一定以上差が大きくなると一気に補正値が大きくなるようにしている。
つまり、曲データのデータ値に対する補正が、変換テーブル又は関数に基づく非線形な補正となるようにしている。
【0077】
これは、ある一定以上差がない領域で、ビブラート、グロウル及びサブトーンの変化が基本ブレス値とブレス値の差の増加に応じて同じ程度の増加量で線形的に増加するようにすると、楽音として違和感があるものとなるため、基本ブレス値とブレス値の差が小さいときには、少なめの補正値となるようにしている。
つまり、基本ブレス値とブレス値の差の増加に応じて補正値も増加させるが、その増加の傾斜を小さなものとしている。
【0078】
一方、十分に大きなブレス値のとき(ある一定以上差があるとき)には、ビブラート、グロウル及びサブトーンも爆発するように発音されるほうが自然であるので、それに対応してある一定以上差が大きくなると一気に補正値が大きくなるようにしている。
【0079】
ステップU3では、CPU5は、例えば、曲データのコンティニュアスデータの演奏データ値(データ値)がビブラート奏法にしたがったデータ値である場合、ビブラートの深さを浅くする補正値の算出を行う。
また、CPU5は、データ値がグロウル奏法にしたがったデータ値である場合、グロウル波形の合成比を小さくする補正値の算出を行う。
さらに、CPU5は、データ値がサブトーン奏法にしたがったデータ値である場合、サブトーン波形の合成比を小さくする補正値の算出を行う。
【0080】
具体的には、ステップU3で行われる補正値の算出も、CPU5は、ステップU2と同様に変換テーブル又は補正値を算出するための関数に従って行うものとしており、その理由は、ステップU2で説明したのと同様に、非線形な補正とすることで楽音として不自然なものとならないようにするためである。
【0081】
ステップU4では、CPU5は、ステップU2又はステップU3で算出された補正値に基づいて、曲データのコンティニュアスデータのデータ値に対する補正を行った補正データ値を作成する。
【0082】
ビブラートであれば、曲データのビブラートに対応したデータ値(例えば、ベンドデータのデータ値又はモジュレーションデータのデータ値)を補正値に基づいて補正する。
つまり、CPU5は、ブレス値が基本ブレス値より大きい場合、ビブラートに対応したデータ値に対してビブラートの深さが深くなる補正を行った補正データ値を取得し、ブレス値が基本ブレス値未満の場合、ビブラートに対応したデータ値に対してビブラートの深さを浅くする補正を行った補正データ値を取得する。
【0083】
なお、ブレス値が基本ブレス値と一致している場合には、補正データ値が曲データのビブラートに対応したデータ値そのものになるように補正値が設定される。
例えば、補正データ値が曲データのビブラートに対応したデータ値に補正値を乗算する場合には補正値が1となるようにすればよく、補正値を加算する場合には補正値が0となるようにすればよい。
【0084】
グロウルであれば、曲データのグロウル波形の合成比に対応したデータ値を補正値に基づいて補正する。
つまり、CPU5は、ブレス値が基本ブレス値より大きい場合、グロウル波形の合成比に対応したデータ値に対して合成比を大きくする補正を行った補正データ値を取得し、ブレス値が基本ブレス値未満の場合、グロウル波形の合成比に対応したデータ値に対して合成比を小さくする補正を行った補正データ値を取得する。
なお、ブレス値が基本ブレス値と一致している場合には、ビブラートのときと同様に、補正データ値が曲データのグロウル波形の合成比に対応したデータ値そのものになるように補正値が設定される。
【0085】
サブトーンであれば、曲データのサブトーン波形の合成比に対応したデータ値を補正値に基づいて補正する。
つまり、CPU5は、ブレス値が基本ブレス値より大きい場合、サブトーン波形の合成比に対応したデータ値に対して合成比を大きくする補正を行った補正データ値を取得し、ブレス値が基本ブレス値未満の場合、サブトーン波形の合成比に対応したデータ値に対して合成比を小さくする補正を行った補正データ値を取得する。
なお、ブレス値が基本ブレス値と一致している場合には、ビブラートのときと同様に、補正データ値が曲データのサブトーン波形の合成比に対応したデータ値そのものになるように補正値が設定される。
【0086】
そして、ステップU4で、上記のような補正データ値の作成が行われると、
図6に示すフローチャートの処理が終了し、
図5のフローチャートの処理に戻る。
【0087】
ステップT6では、CPU5は、補正データ値に基づく処理を音源部8に行わせ、音源部8からの入力によって補正データ値に基づく発音を発音部2に発音させる。
【0088】
なお、グロウル演奏のためのグロウル波形はボイスセンサ11で取得した演奏者のボイスに基づいて生成されるグロウル波形でもよく、曲データ(MIDIデータ)に持たせておいたデータ(指定された音高の音波形データに対してグロウルデータをミックスするミックス比を調整するデータ)に基づいて生成されるグロウル波形でもよい。
同様に、サブトーン波形も曲データ(MIDIデータ)に持たせておいたデータ(サブトーンの出力量を調整するデータ)に基づいて生成されるサブトーン波形でもよい。
【0089】
上記のように、CPU5が、あらかじめ与えられる曲データ(MIDIデータ)の基本ブレス値とブレスセンサ10から取得するブレス値とに基づき、曲データ(MIDIデータ)のデータ値に対して補正を行った補正データ値を取得する補正データ値取得処理と、補正データ値に基づき、発音部2に発音させる発音処理と、を行うことで、演奏者の息吹込操作(息遣い)に伴う表現力が反映された演奏になる。
【0090】
ステップT7では、CPU5は、曲データ(MIDIデータ)のノートオンのタイミング(操作子1を操作して音を変えるタイミング)か否かを判定し、ノートオンのタイミングであると判定(ステップT7:Yes)するとステップT4に戻り、先ほど説明したステップT4の処理が再び実行されることになる。
一方、CPU5がノートオンのタイミングでないと判定(ステップT7:No)すると、ステップT8に進むことになる。
【0091】
ステップT8では、CPU5は、ブレス値が閾値未満になったか否かを判定し、ブレス値が閾値未満になっていないと判定(ステップT8:No)するとステップT5に戻り、先ほど説明したステップT5の処理が再び実行される。
【0092】
つまり、コンティニュアスデータのデータ値を補正する処理が再び行われるため、連続的に時間変化するように発音される音自体が、演奏者の息吹込操作に応じた変化を伴ったものとなり、演奏者の表現力が反映されたものとなる。
【0093】
一方、CPU5は、ブレス値が閾値未満になっていると判定(ステップT8:Yes)するとステップT9に進む。
【0094】
ステップT9では、マウスピース部3への演奏者の息の吹き込みがなくなったことに伴う発音の停止を行うために、CPU5は、それに対応する処理を音源部8に行わせ、音源部8からの入力によって本楽器の発音を発音部2に消音させる。
【0095】
ステップT10では、先に触れたように、CPU5は、演奏者による演奏終了の終了指示又は曲データ終了かを判定し、終了指示又は曲データ終了のいずれでもないと判定(ステップT10:No)すると、ステップT8でブレス値が閾値未満になったのは息継ぎのタイミングであったことによるため、再び、ステップT3に戻り、演奏者による次の息の吹き込み開始を監視する監視ループの状態になる。
【0096】
一方、CPU5は、終了指示又は曲データ終了のいずれかと判定(ステップT10:Yes)と、
図4のフローチャートの処理に戻り、全体の処理が終了することになる。
【0097】
以上のように、本実施形態の電子管楽器100は、演奏者の息吹込操作(息遣い)による表現力の練習において、一部の演奏(例えば、ビブラート演奏、グロウル演奏及びサブトーン演奏)が自動演奏とされていても、完全な自動演奏ではなく、演奏者の息吹込操作(息遣い)による表現力を反映したものとなっているため、表現力を習得するのに適したものになっている。
【0098】
また、そのように演奏者の表現力が反映されるため、吹き方次第で単なるお手本どおりの演奏ではなく、個性的な憧れのミュージシャンのような演奏も可能であり、演奏者にとって色々な楽しみ方ができるものになっている。
【0099】
以上、具体的な実施形態に基づき本発明の電子管楽器100について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲には、本発明の目的が達成される範囲での様々な変形や改良などが含まれるものであり、そのことは当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0100】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
<請求項1>
息吹込操作に応じたブレス値を検出するブレスセンサと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
曲データから取得した基本ブレス値と、前記ブレスセンサから取得した前記ブレス値とに基づいて、息吹込操作に伴う演奏における奏法にしたがった演奏データ値であって、前記曲データから取得した演奏データ値を補正した補正データ値に応じた音波形データを出力する出力処理、
を実行することを特徴とする電子管楽器。
<請求項2>
前記制御部は、
前記演奏データ値がビブラート奏法にしたがった演奏データ値である場合、前記ブレス値が前記基本ブレス値より大きい場合に前記演奏データ値に対してビブラートの深さを深くする補正を行った前記補正データ値を取得し、前記ブレス値が前記基本ブレス値未満の場合に前記演奏データ値に対してビブラートの深さを浅くする補正を行った前記補正データ値を取得する補正データ値取得処理、
を実行し、
前記出力処理は、前記補正データ値取得処理により取得された前記補正データ値に応じた前記音波形データを出力することを特徴とする請求項1に記載の電子管楽器。
<請求項3>
前記補正データ値取得処理は、
前記演奏データ値がグロウル奏法にしたがった演奏データ値である場合、前記ブレス値が前記基本ブレス値より大きい場合に前記演奏データ値に対してグロウル波形の合成比を大きくする補正を行った前記補正データ値を取得し、前記ブレス値が前記基本ブレス値未満の場合に前記演奏データ値に対してグロウル波形の合成比を小さくする補正を行った前記補正データ値を取得することを特徴とする請求項2に記載の電子管楽器。
<請求項4>
前記補正データ値取得処理は、
前記演奏データ値がサブトーン奏法にしたがった演奏データ値である場合、前記ブレス値が前記基本ブレス値より大きい場合に前記演奏データ値に対してサブトーン波形の合成比を大きくする補正を行った前記補正データ値を取得し、前記ブレス値が前記基本ブレス値未満の場合に前記演奏データ値に対してサブトーン波形の合成比を小さくする補正を行った前記補正データ値を取得する請求項2又は請求項3に記載の電子管楽器。
<請求項5>
前記演奏データ値に対する前記補正は、変換テーブル又は関数に基づく非線形な補正であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子管楽器。
<請求項6>
息吹込操作に応じたブレス値を検出するブレスセンサを備えた電子管楽器の制御方法であって、
曲データから取得した基本ブレス値と、前記ブレスセンサから取得した前記ブレス値とに基づいて、息吹込操作に伴う演奏における奏法にしたがった演奏データ値であって、前記曲データから取得した演奏データ値を補正した補正データ値に応じた音波形データを出力する出力処理を実行する制御方法。
<請求項7>
息吹込操作に応じたブレス値を検出するブレスセンサと制御部を備えた電子管楽器用のプログラムであって、
前記制御部に対して、曲データから取得した基本ブレス値と、前記ブレスセンサから取得した前記ブレス値とに基づいて、息吹込操作に伴う演奏における奏法にしたがった演奏データ値であって、前記曲データから取得した演奏データ値を補正した補正データ値に応じた音波形データを出力する出力処理を少なくとも実行させるプログラム。