(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0013】
以下の説明において、樹脂組成物の「樹脂成分」とは、樹脂組成物に含まれる不揮発成分のうち、無機充填材を除いた成分をいう。
【0014】
[1.樹脂組成物の概要]
本発明の樹脂組成物は、(A)45℃で所定の範囲の粘度を有し、かつ、分子内にアルケン骨格を有するエポキシ樹脂、(B)無機充填材、及び、(C)硬化剤を含む。以下の説明において、(A)成分としての「45℃で所定の範囲の粘度を有し、かつ、分子内にアルケン骨格を有するエポキシ樹脂」を、「(A)エポキシ樹脂」ということがある。
【0015】
前記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を組み合わせて含むことにより、樹脂組成物は、圧縮成型性に優れ、且つ、線熱膨張係数が低く、反りを抑制でき、加熱及び冷却を繰り返しても高い密着性を発揮できる硬化物が得られるという、本発明の所望の効果を得ることができる。この樹脂組成物の硬化物は、その優れた特性を活かして、半導体チップパッケージの絶縁層及び封止材として好ましく用いることができる。
【0016】
また、前記の樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、(A)エポキシ樹脂以外の(D)エポキシ樹脂、(E)硬化促進剤、などが挙げられる。
【0017】
[2.(A)エポキシ樹脂]
(A)エポキシ樹脂は、45℃で所定の範囲の粘度を有する。(A)エポキシ樹脂の45℃での具体的な粘度は、通常20Pa・s以下、好ましくは15Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以下、特に好ましくは6.0Pa・s以下である。このような粘度を有する(A)エポキシ樹脂を用いることにより、樹脂組成物の圧縮成型性を改善できる。更に、このような粘度の(A)エポキシ樹脂を用いることにより、線熱膨張係数が低く、反りを抑制でき、且つ、加熱及び冷却を繰り返しても高い密着性を発揮できる硬化物を得ることができる。(A)エポキシ樹脂の45℃での粘度の下限は、特段の制限は無いが、例えば、1Pa・s以上、2Pa・s以上、3Pa・s以上などでありうる。
【0018】
(A)エポキシ樹脂の粘度は、実施例に記載の測定方法によって、測定できる。
【0019】
また、(A)エポキシ樹脂は、分子内にアルケン骨格を有する。ここで、アルケン骨格とは、下記式(1)で表される構造を示す。式(1)に示される炭素原子の結合手が結合する先の原子に制限は無いが、通常は、水素原子又は炭素原子である。このようにアルケン骨格を有する(A)エポキシ樹脂を用いることにより、通常、樹脂組成物の硬化物の誘電正接を低くできる。さらには、通常は、硬化物の絶縁性を向上させたり、吸湿性を低くしたりすることが可能である。
【0021】
(A)エポキシ樹脂は、その分子の主鎖にアルケン骨格を有していてもよく、その分子の側鎖にアルケン骨格を有していてもよく、その分子の主鎖及び側鎖の両方にアルケン骨格を有していてもよい。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、及び、硬化物の誘電正接を効果的に低くする観点から、その分子の側鎖にアルケン骨格を有することが好ましい。
【0022】
アルケン骨格を有する(A)エポキシ樹脂は、通常、アルケン骨格を有する構造単位をその分子内に含む。この構造単位としては、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、及び、硬化物の誘電正接を効果的に低くする観点から、アルケン骨格を有する2価の炭化水素基が好ましく、アルケン骨格を有する2価の脂肪族炭化水素基がより好ましく、アルケン骨格を有する2価の鎖状脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
【0023】
アルケン骨格を有する前記の構造単位の炭素原子数は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、及び、硬化物の誘電正接を効果的に低くする観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは4以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。
【0024】
特に、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、及び、硬化物の誘電正接を効果的に低くする観点から、アルケン骨格を有する前記の構造単位は、アルケニル基を含むことが好ましい。このアルケニル基の炭素原子数は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、及び、硬化物の誘電正接を効果的に低くする観点から、通常2以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。このようなアルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、などが挙げられる。
【0025】
アルケン骨格を有する前記の構造単位として、好ましい例としては、下記式(2)又は式(3)に示す構造単位が挙げられる。式(2)で表される構造単位、及び、式(3)で表される構造単位は、いずれも、ブタジエンの重合によって形成することができる。具体的には、式(2)で表される構造単位は、ブタジエンの1,2−付加重合によって形成できる構造単位である。また、式(3)で表される構造単位は、ブタジエンの1,4−付加重合によって形成できる構造単位である。この中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、及び、硬化物の誘電正接を効果的に低くする観点から、式(2)で表される構造単位が好ましい。
【0027】
(A)エポキシ樹脂の分子が含むアルケン骨格を有する前記の構造単位の数は、1個でもよく、2個以上でもよい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点、及び、硬化物の誘電正接を効果的に低くする観点から、(A)エポキシ樹脂は、アルケン骨格を有する前記の構造単位を繰り返し単位として分子内に2個以上含むことが好ましい。
【0028】
特に、(A)エポキシ樹脂は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、及び、硬化物の誘電正接を効果的に低くする観点から、分子内にポリブタジエン構造を有することが好ましい。ポリブタジエン構造とは、ブタジエンを重合して形成することができる構造をいう。ポリブタジエン構造の具体例としては、式(2)で表される構造単位、及び、式(3)で表される構造単位から選ばれる構造単位を1分子内に2個以上含む構造が挙げられる。中でも、(A)エポキシ樹脂は、式(2)で表される構造単位を1分子内に2個以上含むことが好ましい。
【0029】
さらには、(A)エポキシ樹脂の1分子当たり、式(2)で表される構造単位の数の方が、式(3)で表される構造単位の数よりも、多いことが好ましい。これにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、特に、樹脂組成物の圧縮成型性を効果的に高めることができ、また、加熱及び冷却を繰り返した場合の硬化物の密着性を効果的に高めることができる。
【0030】
また、(A)エポキシ樹脂は、通常、エポキシ基を有する。(A)エポキシ樹脂は、その分子の主鎖にエポキシ基を有していてもよく、その分子の側鎖にエポキシ基を有していてもよく、その分子の主鎖及び側鎖の両方にエポキシ基を有していてもよい。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、及び、硬化物の誘電正接を効果的に低くする観点から、その分子の側鎖にエポキシ基を有することが好ましい。
【0031】
(A)エポキシ樹脂は、アルケン骨格を有する前記の構造単位にエポキシ基を有していもよいが、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、及び、硬化物の誘電正接を効果的に低くする観点から、アルケン骨格を有する前記の構造単位とは別の構造単位にエポキシ基を有することが好ましい。
【0032】
エポキシ基を有する前記の構造単位の炭素原子数は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、及び、硬化物の誘電正接を効果的に低くする観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは4以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。
【0033】
エポキシ骨格を有する前記の構造単位として、好ましい例としては、下記式(4)又は式(5)に示す構造単位が挙げられる。式(4)で表される構造単位は、例えば、式(2)で表される構造単位を含むポリブタジエンをエポキシ化することによって形成できる。また、式(5)で表される構造単位は、例えば、式(3)で表される構造単位を含むポリブタジエンをエポキシ化することによって形成できる。この中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、及び、硬化物の誘電正接を効果的に低くする観点から、式(4)で表される構造単位が好ましい。
【0035】
さらには、(A)エポキシ樹脂の1分子当たり、式(4)で表される構造単位の数の方が、式(5)で表される構造単位の数よりも、多いことが好ましい。これにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、特に、樹脂組成物の圧縮成型性を効果的に高めることができ、また、加熱及び冷却を繰り返した場合の硬化物の密着性を効果的に高めることができる。
【0036】
(A)エポキシ樹脂は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、分子内に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。また、(A)エポキシ樹脂は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、分子内に芳香環を含まない脂肪族系のエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0037】
(A)エポキシ樹脂の分子構造の例を挙げると、例えば、式(6)に示すものが挙げられる。式(6)において、m及びnは、それぞれ独立に、自然数を表す。
【0039】
(A)エポキシ樹脂の具体例としては、前記式(6)で表される分子構造を有する日本曹達社製「JP400」が挙げられる。また、(A)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組合わせて用いてもよい。
【0040】
一般に、エポキシ樹脂は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とに分類できる。(A)エポキシ樹脂は、固体状エポキシ樹脂であってもよいが、液状エポキシ樹脂であることが好ましい。(A)エポキシ樹脂が液状エポキシ樹脂であることにより、樹脂組成物の圧縮成型性を効果的に高めることができ、また、加熱及び冷却を繰り返した場合の硬化物の密着性を効果的に高めることができる。
【0041】
(A)エポキシ樹脂の数平均分子量Mnは、好ましくは2500以上、より好ましくは3000以上、特に好ましくは3200以上であり、好ましくは5500以下、より好ましくは5000以下、特に好ましくは4000以下である。(A)エポキシ樹脂の数平均分子量Mnが前記範囲の下限値以上であることにより、樹脂組成物の圧縮成型性を特に改善したり、樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数を効果的に低くしたり、反りを抑制する硬化物の能力を効果的に高めたり、加熱及び冷却による硬化物の剥離を効果的に抑制したりできる。また、(A)エポキシ樹脂の数平均分子量Mnが前記範囲の上限値以下であることにより、樹脂組成物の圧縮成型性を特に改善したり、樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数を効果的に低くしたり、樹脂組成物の硬化物の靱性を高めて、クラックの発生を効果的に抑制したりできる。
【0042】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量Mwは、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは5000〜60000、より好ましくは6000〜50000、さらに好ましくは7000〜20000である。
【0043】
樹脂の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。例えば、樹脂の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwは、測定装置として島津製作所社製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0044】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、さらにより好ましくは110〜1000である。(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量が前記の範囲にあることにより、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が高まり、表面粗さの小さい絶縁層を得ることができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定できる。
【0045】
(A)エポキシ樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−20℃以下、より好ましくは−30℃以下、特に好ましくは−40℃以下であり、好ましくは−90℃以上、より好ましくは−80℃以上、特に好ましくは−70℃以上である。(A)エポキシ樹脂が前記範囲のガラス転移温度を有することにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
【0046】
樹脂組成物における(A)エポキシ樹脂の量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9.5質量%以下、特に好ましくは9質量%以下である。また、通常、(A)エポキシ樹脂の量を前記の範囲に収めることにより、樹脂組成物の硬化物の誘電正接を低くすることができる。
【0047】
[3.(B)無機充填材]
樹脂組成物は、(B)成分として、無機充填材を含む。(B)無機充填材を用いることにより、樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数を小さくでき、また、反りを抑制することができる。
【0048】
(B)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。(B)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(B)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0049】
通常、(B)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。(B)無機充填材の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは8.0μm以下、特に好ましくは5.0μm以下である。(B)無機充填材の平均粒径が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。特に、(B)無機充填材の平均粒径が前記範囲の上限以下であることにより、樹脂組成物の圧縮成型性を効果的に高めることができ、フローマークが低減できる。また、加熱及び冷却を繰り返した場合の硬化物の密着性を効果的に高めることができる。また、(B)無機充填材の平均粒径が前記範囲にあることにより、通常は、樹脂組成物の硬化物で絶縁層を形成した場合に、絶縁層の表面粗度を低くできる。
【0050】
(B)無機充填材等の粒子の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により、測定できる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、粒子の粒径分布を体積基準で作成し、その粒径分布からメディアン径として平均粒径を測定できる。測定サンプルは、粒子を超音波により水等の溶剤中に分散させたものを好ましく使用できる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA−500」等を使用することができる。
【0051】
前記のような(B)無機充填材としては、例えば、龍森社製「MSS−6」、「AC−5V」;新日鉄住金マテリアルズ社製「SP60−05」、「SP507−05」;アドマテックス社製「YC100C」、「YA050C」、「YA050C−MJE」、「YA010C」;デンカ社製「UFP−30」、「SFP−130MC」、「FB−7SDC」、「FB−5SDC」、「FB−3SDC」;トクヤマ社製「シルフィルNSS−3N」、「シルフィルNSS−4N」、「シルフィルNSS−5N」;アドマテックス社製「SC2500SQ」、「SO−C4」、「SO−C2」、「SO−C1」、「FE9」等が挙げられる。
【0052】
(B)無機充填材は、適切な表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理されることにより、(B)無機充填材の耐湿性及び分散性を高めることができる。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0053】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM22」(ジメチルジメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM5783」(N−フェニル−3−アミノオクチルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM−4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)等が挙げられる。なかでも、窒素原子含有シランカップリング剤が好ましく、フェニル基を含有するアミノシラン系カップリング剤がより好ましく、N−フェニル−3−アミノアルキルトリメトキシシランが更に好ましく、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−フェニル−3−アミノオクチルトリメトキシシランがより好ましい。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0054】
表面処理剤による表面処理の程度は、(B)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価できる。(B)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、(B)無機充填材の分散性向上の観点から、好ましくは0.02mg/m
2以上、より好ましくは0.1mg/m
2以上、特に好ましくは0.2mg/m
2以上である。一方、樹脂組成物の溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、前記のカーボン量は、好ましくは1mg/m
2以下、より好ましくは0.8mg/m
2以下、特に好ましくは0.5mg/m
2以下である。
【0055】
(B)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の(B)無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(以下「MEK」と略称することがある。))により洗浄処理した後に、測定できる。具体的には、十分な量のメチルエチルケトンと、表面処理剤で表面処理された(B)無機充填材とを混合して、25℃で5分間、超音波洗浄する。その後、上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて、(B)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定できる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA−320V」を使用できる。
【0056】
樹脂組成物中の(B)無機充填材の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは86質量%以下である。(B)無機充填材の量が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、特に、樹脂組成物の線熱膨張係数を効果的に低くすることができる。
【0057】
[4.(C)硬化剤]
樹脂組成物は、(C)成分として、硬化剤を含む。(C)硬化剤は、通常、(A)エポキシ樹脂、(D)エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。(C)硬化剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0058】
(C)硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させることができる化合物を用いることができ、例えば、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点では、酸無水物系硬化剤及びフェノール系硬化剤が好ましい。
【0059】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’−4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0060】
フェノール系硬化剤としては、芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環等)に結合した水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する硬化剤が挙げられる。中でも、ベンゼン環に結合した水酸基を有する化合物が好ましい。また、耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤が好ましい。さらに、密着性の観点からは、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。特に、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点からは、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤が好ましい。
【0061】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、明和化成社製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、「MEH−8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;新日鉄住金化学社製の「SN−170」、「SN−180」、「SN−190」、「SN−475」、「SN−485」、「SN−495」、「SN−495V」、「SN−375」、「SN−395」;DIC社製の「TD−2090」、「TD−2090−60M」、「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−1356」、「LA−3018」、「LA−3018−50P」、「EXB−9500」、「HPC−9500」、「KA−1160」、「KA−1163」、「KA−1165」;群栄化学社製の「GDP−6115L」、「GDP−6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
【0062】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する硬化剤が挙げられる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0063】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0064】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0065】
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンチレン−フェニレンからなる2価の構造を表す。
【0066】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000」、「HPC−8000H」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000H−65TM」、「EXB−8000L」、「EXB−8000L−65TM」、「EXB−8150−65T」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱化学社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱化学社製)、「YLH1030」(三菱化学社製)、「YLH1048」(三菱化学社製);等が挙げられる。
【0067】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂);「ULL−950S」(多官能シアネートエステル樹脂);「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー);等が挙げられる。
【0068】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
【0069】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
【0070】
(C)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0071】
(A)エポキシ樹脂及び(D)エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(C)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、好ましくは2以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.6以下、特に好ましくは1.4以下である。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(C)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(C)硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合の(C)硬化剤の活性基数が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、更に通常は、樹脂組成物層の硬化物の耐熱性がより向上する。
【0072】
[5.(D)任意のエポキシ樹脂]
樹脂組成物は、任意の成分として、上述した(A)エポキシ樹脂以外の(D)エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
(D)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
樹脂組成物は、(D)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(D)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0074】
(D)エポキシ樹脂としては、液状エポキシ樹脂を用いてもよく、固体状エポキシ樹脂を用いてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いてもよい。中でも、樹脂組成物の圧縮成型性を向上させる観点から、(D)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0075】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0076】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂がより好ましい。
【0077】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA−850CRP」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YED−216D」(脂肪族エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP−3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);住友化学社製の「ELM−100H」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0079】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、及びナフチレンエーテル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0080】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−7200HH」、「HP−7200H」、「EXA−7311」、「EXA−7311−G3」、「EXA−7311−G4」、「EXA−7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG−100」、「CG−500」;三菱化学社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱化学社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(D)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:0.1〜1:15、より好ましくは1:0.3〜1:10、特に好ましくは1:0.6〜1:8である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲にあることにより、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、適度な粘着性がもたらされる。また、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0082】
(D)エポキシ樹脂の重量平均分子量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。
【0083】
(D)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量の範囲として説明したのと同じ範囲に収まることが好ましい。
【0084】
樹脂組成物が(D)エポキシ樹脂を含む場合、(D)エポキシ樹脂の量は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、より好ましくは200質量部以上、特に好ましくは500質量部以上であり、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは900質量部以下、特に好ましくは800質量部以下である。(D)エポキシ樹脂の量を前記の範囲に収めることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
【0085】
樹脂組成物が(D)エポキシ樹脂を含む場合、(D)エポキシ樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは16質量%以下、さらに好ましくは14質量%以下である。(D)エポキシ樹脂の量を前記範囲に収めることにより、樹脂組成物の硬化物の機械強度及び絶縁信頼性を高めることができる。
【0086】
[6.(E)硬化促進剤]
樹脂組成物は、任意の成分として、(E)硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤を用いることにより、樹脂組成物を硬化させる際に硬化を促進できる。
【0087】
(E)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤及び金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤及び金属系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0089】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられる。中でも、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
【0090】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。中でも、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
【0091】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱化学社製の「P200−H50」;四国化成社製「2E4MZ」;等が挙げられる。
【0092】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられる。中でも、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
【0093】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0094】
樹脂組成物が(E)硬化促進剤を含む場合、(E)硬化促進剤の量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、0.01質量%〜3質量%が好ましく、0.03質量%〜1.5質量%がより好ましく、0.05質量%〜1質量%がさらに好ましい。
【0095】
[7.(F)任意の添加剤]
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;熱可塑性樹脂;増粘剤;消泡剤;レベリング剤;密着性付与剤;着色剤;難燃剤;等の樹脂添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0096】
上述した樹脂組成物は、必要に応じて、溶剤を含んでいてもよいが、溶剤を含まない無溶剤の樹脂組成物であることが好ましい。このように溶剤を含まなくても、(A)エポキシ樹脂を含む前記の樹脂組成物は、圧縮成型法を用いて成型する場合には流動化することができ、優れた圧縮成型性を実現できる。よって、この樹脂組成物は、無溶剤用樹脂組成物として用いることが可能である。
【0097】
[8.樹脂組成物の製造方法]
樹脂組成物は、例えば、配合成分を、回転ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌する方法によって製造できる。
【0098】
[9.樹脂組成物の特性]
上述した樹脂組成物は、圧縮成型性に優れる。よって、回路基板又は半導体チップ上に圧縮成型法により樹脂組成物層を形成する際に、樹脂組成物を隅々まで充填することが可能である。したがって、前記の樹脂組成物層を硬化させることにより、絶縁信頼性に優れた絶縁層及び封止信頼性に優れた封止層を得ることができる。
例えば、上述した樹脂組成物を、12インチシリコンウエハ上に、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、モールド圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成する。この場合、通常は、クラックの発生を抑制しながら、ウエハ端部まで、樹脂組成物を充填することができる。
【0099】
また、上述した樹脂組成物によれば、線熱膨張係数が低い硬化物を得ることができる。したがって、この樹脂組成物を用いることにより、線熱膨張係数が低い絶縁層及び封止層を得ることができる。
例えば、上述した樹脂組成物を用いて、実施例に記載の方法によって、評価用硬化物を製造し、その評価用硬化物の線熱膨張係数の測定を行う。この場合、得られる線熱膨張係数は、通常10ppm/℃以下、好ましくは9ppm/℃以下、より好ましくは8ppm/℃以下である。下限に特段の制限は無く、通常0ppm/℃、好ましくは1ppm/℃以上である。
【0100】
また、上述した樹脂組成物によれば、反りの抑制が可能な硬化物の層を得ることができる。したがって、この樹脂組成物を用いることにより、回路基板及び半導体チップパッケージの反りの抑制が可能な絶縁層及び封止層を得ることができる。
例えば、上述した樹脂組成物を用いて、実施例に記載の方法によって、12インチシリコンウエハ上に、樹脂組成物の硬化物層を形成して、試料基板を作製する。この場合、試料基板を35℃、260℃及び35℃の順で加熱及び冷却した際に、実施例に記載の方法で測定される反り量を、通常2mm未満にできる。
【0101】
また、上述した樹脂組成物によれば、加熱及び冷却を繰り返しても高い密着性を発揮できる硬化物を得ることができる。したがって、この樹脂組成物を用いることにより、温度変化による剥離を生じ難い絶縁層又は封止層を得ることができる。
例えば、実施例に記載の方法によって、樹脂組成物の硬化物層と、この硬化物層に埋め込まれたシリコンチップとを含む樹脂ウエハを製造する。この樹脂ウエハについて実施例に記載の方法によってサーマルサイクルテストを実施した場合、通常は、シリコンチップと硬化物層との界面でのデラミネーションの発生を抑制できる。
【0102】
本発明の樹脂組成物によって前記のように優れた利点が得られる仕組みを、本発明者は、下記のように推測する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記に説明する仕組みによって制限されるものでは無い。
上述した樹脂組成物は、低粘度の(A)エポキシ樹脂を含むので、圧縮成型時における流動性に優れる。そのため、樹脂組成物は小さい隙間にまで容易に進入できるので、優れた圧縮成型性が達成される。
また、樹脂組成物が含む(B)無機充填材は、樹脂成分に比べて、温度変化による膨張及び収縮の程度が小さい。さらに、(A)エポキシ樹脂は、樹脂組成物の硬化後において柔軟な可撓成分として機能できるので、温度変化による体積変化を吸収できる。よって、樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数を低くすることができる。
また、前記のように、(B)無機充填材は温度変化による膨張及び収縮の程度が小さいので、温度変化が生じても、当該温度変化によって生じる応力を小さくできる。また、(A)エポキシ樹脂が樹脂組成物の硬化後において柔軟な可撓成分として機能できるので、硬化物内に応力が生じても、その応力を(A)エポキシ樹脂が吸収できる。したがって、反りの原因となりうる応力の発生を抑制できるので、反りの抑制が可能である。
さらに、樹脂組成物が、上述したように流動性に優れるので、樹脂組成物の成型後の残留応力が残り難い。また、温度変化によって応力が生じても、前記のように(A)エポキシ樹脂がその応力を吸収できる。よって、樹脂組成物の硬化物では、応力集中が抑制されている。したがって、加熱及び冷却を繰り返しても、樹脂組成物の硬化物には温度変化による破壊が生じ難くなっているので、樹脂破壊によるデラミネーションの発生を抑制することができる。
【0103】
通常、前記の樹脂組成物の硬化物は、誘電正接が低い。したがって、この樹脂組成物を用いることにより、誘電正接の低い絶縁層を得ることができる。
例えば、実施例に記載の方法によって、樹脂組成物の硬化物層を製造する。この硬化物層について実施例に記載の測定方法で測定される誘電正接は、好ましくは0.007以下、より好ましくは0.006以下である。誘電正接の値の下限は、低いほど好ましく、例えば0.001以上でありうる。
【0104】
前記の樹脂組成物は、液状であってもよく、固体状であってもよいが、その成型時には液状であることが好ましい。例えば、常温(例えば、20℃)において液状の樹脂組成物は、特段の温度調整を行うことなく常温で圧縮成型法による成型を行ってもよく、適切な温度に加熱して圧縮成型法による成型を行ってもよい。また、常温において固体状の樹脂組成物は、通常、その温度をより高い温度(例えば、130℃)に調整することによって液状になれるので、加熱等の適切な温度調整によって圧縮成型法による成形が可能である。前記の樹脂組成物は、通常、溶剤を含まなくても適切な温度において液状になることができ、例えば、液状封止材として用いることが可能である。
【0105】
[10.樹脂組成物の用途]
上述した利点を活用して、前記の樹脂組成物の硬化物により、封止層及び絶縁層を形成することができる。よって、この樹脂組成物は、半導体封止用又は絶縁層用の樹脂組成物として用いることができる。
【0106】
例えば、前記の樹脂組成物は、半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの絶縁層用の樹脂組成物)、及び、回路基板(プリント配線板を含む。)の絶縁層を形成するための樹脂組成物(回路基板の絶縁層用の樹脂組成物)として、好適に使用することができる。
【0107】
また、例えば、前記の樹脂組成物は、半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)として、好適に使用することができる。
【0108】
前記の樹脂組成物の硬化物で形成された封止層又は絶縁層を適用できる半導体チップパッケージとしては、例えば、FC−CSP、MIS−BGAパッケージ、ETS−BGAパッケージ、Fan−out型WLP(Wafer Level Package)、Fan−in型WLP、Fan−out型PLP(Panel Level Package)、Fan−in型PLPが挙げられる。
【0109】
また、前記の樹脂組成物は、アンダーフィル材として用いてもよく、例えば、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUF(Molding Under Filling)の材料として用いてもよい。
【0110】
さらに、前記の樹脂組成物は、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が用いられる広範な用途に使用できる。
【0111】
[11.樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する。樹脂組成物層は、本発明の樹脂組成物を含む層であり、通常は、樹脂組成物で形成されている。
【0112】
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、又は、40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されず、例えば、1μm以上、5μm以上、10μm以上、等でありうる。
【0113】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0114】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル;ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。);ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー;環状ポリオレフィン;トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。);ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。);ポリエーテルケトン;ポリイミド;等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0115】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。中でも、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0116】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
【0117】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック社製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」等が挙げられる。また、離型層付き支持体としては、例えば、東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
【0118】
支持体の厚さは、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0119】
樹脂シートは、例えば、樹脂組成物を、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布して、製造することができる。また、必要に応じて、樹脂組成物を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを塗布して樹脂シートを製造してもよい。溶剤を用いることにより、粘度を調整して、塗布性を向上させることができる。樹脂ワニスを用いた場合、通常は、塗布後に樹脂ワニスを乾燥させて、樹脂組成物層を形成する。
【0120】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0121】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃〜150℃で3分〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0122】
樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。例えば、樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムの厚さは、例えば、1μm〜40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって樹脂シートは使用可能となる。また、樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。
【0123】
樹脂シートは、半導体チップパッケージの製造において絶縁層を形成するため(半導体チップパッケージの絶縁用樹脂シート)に好適に使用できる。例えば、樹脂シートは、回路基板の絶縁層を形成するため(回路基板の絶縁層用樹脂シート)に使用できる。このような基板を使ったパッケージの例としては、FC−CSP、MIS−BGAパッケージ、ETS−BGAパッケージが挙げられる。
【0124】
また、樹脂シートは、半導体チップを封止するため(半導体チップ封止用樹脂シート)に好適に使用することができる。適用可能な半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan−out型WLP、Fan−in型WLP、Fan−out型PLP、Fan−in型PLP等が挙げられる。
【0125】
また、樹脂シートを、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUFの材料に用いてもよい。
【0126】
さらに、樹脂シートは高い絶縁信頼性が要求される他の広範な用途に使用できる。例えば、樹脂シートは、プリント配線板等の回路基板の絶縁層を形成するために好適に使用することができる。
【0127】
[12.回路基板]
本発明の回路基板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。この回路基板は、例えば、下記の工程(1)及び工程(2)を含む製造方法によって、製造できる。
(1)基材上に、樹脂組成物層を形成する工程。
(2)樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程。
【0128】
工程(1)では、基材を用意する。基材としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板(ステンレスや冷間圧延鋼板(SPCC)など)、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。また、基材は、当該基材の一部として表面に銅箔等の金属層を有していてもよい。例えば、両方の表面に剥離可能な第一金属層及び第二金属層を有する基材を用いてもよい。このような基材を用いる場合、通常、回路配線として機能できる配線層としての導体層が、第二金属層の第一金属層とは反対側の面に形成される。このような金属層を有する基材としては、例えば、三井金属鉱業社製のキャリア銅箔付極薄銅箔「Micro Thin」が挙げられる。
【0129】
また、基材の一方又は両方の表面には、導体層が形成されていてもよい。以下の説明では、基材と、この基材表面に形成された導体層とを含む部材を、適宜「配線層付基材」ということがある。導体層に含まれる導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む材料が挙げられる。導体材料としては、単金属を用いてもよく、合金を用いてもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性の観点から、単金属としてのクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅;及び、合金としてのニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金;が好ましい。その中でも、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属;及び、ニッケル・クロム合金;がより好ましく、銅の単金属が特に好ましい。
【0130】
導体層は、例えば配線層として機能させるために、パターン加工されていてもよい。この際、導体層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは10/10μm以下、さらに好ましくは5/5μm以下、よりさらに好ましくは1/1μm以下、特に好ましくは0.5/0.5μm以上である。ピッチは、導体層の全体にわたって同一である必要はない。導体層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0131】
導体層の厚さは、回路基板のデザインによるが、好ましくは3μm〜35μm、より好ましくは5μm〜30μm、さらに好ましくは10μm〜20μm、特に好ましくは15μm〜20μmである。また、絶縁層の形成後に絶縁層を研磨又は研削し、導体層を露出させて導体層の層間接続を行う場合、層間接続を行う導体層と、層間接続を行わない導体層とは、厚さが異なっていることが好ましい。各導体層のうち、最も厚さがある導体層(導電性ピラー)の厚さは、回路基板のデザインによるが、好ましくは2μm以上100μm以下である。導体層の厚さは、例えば、後述するパターン形成を繰り返すことで、調整できる。また、層間接続される導体層は、凸型となっていてもよい。
【0132】
導体層は、例えば、基材上にドライフィルム(感光性レジストフィルム)を積層する工程、フォトマスクを用いてドライフィルムに対して所定の条件で露光及び現像を行ってパターンを形成してパターンドライフィルムを得る工程、現像したパターンドライフィルムをめっきマスクとして電解めっき法等のメッキ法によって導体層を形成する工程、及び、パターンドライフィルムを剥離する工程を含む方法によって、形成できる。ドライフィルムとしては、フォトレジスト組成物からなる感光性のドライフィルムを用いることができ、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の樹脂で形成されたドライフィルムを用いることができる。基材とドライフィルムとの積層条件は、後述する基材と樹脂シートとの積層の条件と同様でありうる。ドライフィルムの剥離は、例えば、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ性の剥離液を使用して実施することができる。必要に応じて、不要な配線パターンをエッチング等により除去してもよい。
【0133】
基材を用意した後で、基材上に、樹脂組成物層を形成する。基材の表面に導体層が形成されている場合、樹脂組成物層の形成は、導体層が樹脂組成物層に埋め込まれるように行うことが好ましい。
【0134】
樹脂組成物層の形成は、例えば、樹脂シートと基材とを積層することによって行われる。この積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを基材に加熱圧着することにより、基材に樹脂組成物層を貼り合わせることで、行うことができる。樹脂シートを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0135】
基材と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲である。加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaの範囲である。加熱圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力13hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0136】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。なお、積層と平滑化処理は、真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0137】
また、樹脂組成物層の形成は、例えば、圧縮成型法によって行うことができる。成型条件は、後述する半導体チップパッケージの封止層を形成する工程における樹脂組成物層の形成方法と同様な条件を採用してもよい。
【0138】
基材上に樹脂組成物層を形成した後、樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なるが、硬化温度は通常120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜220℃の範囲、より好ましくは170℃〜200℃の範囲)、硬化時間は5分間〜120分間の範囲(好ましくは10分間〜100分間、より好ましくは15分間〜90分間)である。
【0139】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間)、予備加熱してもよい。
【0140】
以上のようにして、絶縁層を有する回路基板を製造できる。また、回路基板の製造方法は、更に、任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、樹脂シートを用いて回路基板を製造した場合、回路基板の製造方法は、樹脂シートの支持体を剥離する工程を含んでいてもよい。支持体は、樹脂組成物層の熱硬化の前に剥離してもよく、樹脂組成物層の熱硬化の後に剥離してもよい。
【0141】
回路基板の製造方法は、例えば、絶縁層を形成した後で、その絶縁層の表面を研磨する工程を含んでいてもよい。研磨方法は特に限定されない。例えば、平面研削盤を用いて絶縁層の表面を研磨することができる。
【0142】
回路基板の製造方法は、例えば、導体層を層間接続する工程(3)を含んでいてもよい。この工程(3)では、絶縁層の一側に設けらえた導体層(例えば、基材表面に形成された導体層)を、前記導体層の他側にまで導通させる。この工程(3)は、絶縁層にビアホールを形成し、さらにビアホールが形成された位置を含む絶縁層上の適切な位置に導体層を形成して、層間接続を行うことを含んでいてもよい。また、工程(3)は、例えば、絶縁層の他側を研磨又は研削して、絶縁層の一側に形成された導体層を露出させて、層間接続を行うことを含んでいてもよい。
【0143】
ビアホールを用いて層間接続を行う場合、例えば、配線層付基材上に形成された絶縁層にビアホールを形成した後、絶縁層の基材とは反対側に導体層を形成して、相関接続を行う。ビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。中でも、レーザー照射が好ましい。このレーザー照射は、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等の任意の光源を用いた適切なレーザー加工機を用いて行うことができる。例えば、樹脂シートの支持体側にレーザー照射を行って、支持体及び絶縁層を貫通して、基材表面の導体層を露出させるビアホールを形成してもよい。
【0144】
レーザー照射は、選択されたレーザー加工機に応じた適切な工程により実施できる。ビアホールの形状は、特に限定されないが、一般的には円形又は略円形である。ビアホールの形状とは、ビアホールの延在方向でみたときの開口の輪郭の形状をいう。
【0145】
ビアホールの形成後、ビアホール内のスミアを除去する工程を行うことが好ましい。この工程は、デスミア工程と呼ばれることがある。例えば、絶縁層上への導体層の形成をめっき工程により行う場合には、ビアホールに対して、湿式のデスミア処理を行ってもよい。また、絶縁層上への導体層の形成をスパッタ工程により行う場合には、プラズマ処理工程などのドライデスミア工程を行ってもよい。さらに、デスミア工程によって、絶縁層に粗化処理が施されてもよい。
【0146】
また、絶縁層上に導体層を形成する前に、絶縁層に対して、粗化処理を行ってもよい。この粗化処理によれば、通常、ビアホール内を含めた絶縁層の表面が粗化される。粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
【0147】
ビアホールを形成後、絶縁層上に導体層を形成する。ビアホールが形成された位置に導体層を形成することで、新たに形成された導体層と基材表面の導体層とが導通して、層間接続が行われる。導体層の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成する。また、樹脂シートにおける支持体が金属箔である場合、サブトラクティブ法により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。形成される導体層の材料は、単金属でもよく、合金でもよい。また、この導体層は、単層構造を有していてもよく、異なる種類の材料の層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。
【0148】
ここで、絶縁層上に導体層を形成する実施形態の例を、詳細に説明する。絶縁層の表面に、無電解めっきにより、めっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応して、めっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成する。その際、電解めっき層の形成とともに、ビアホールを電解めっきにより埋め込んで、フィルドビアを形成してもよい。電解めっき層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成する。なお、導体層を形成する際、マスクパターンの形成に用いるドライフィルムは、上記ドライフィルムと同様である。
【0149】
導体層は、線状の配線のみならず、例えば外部端子が搭載され得る電極パッド(ランド)も含み得る。また、導体層は、電極パッドのみから構成されていてもよい。
【0150】
また、導体層は、めっきシード層の形成後、マスクパターンを用いずに電解めっき層及びフィルドビアを形成し、その後、エッチングによるパターニングを行うことによって形成してもよい。
【0151】
絶縁層の研磨又は研削によって層間接続を行う場合、例えば、配線層付基材上に形成された絶縁層を研磨又は研削して、基材上に形成された導体層を、絶縁層の基材とは反対側に露出させる。絶縁層の研磨方法及び研削方法としては、基材表面の導体層を露出させることができる任意の方法を用いることができる。中でも、研磨又は切削によって、絶縁層の層平面に対して平行な研磨面又は研削面が得られる方法が好ましい。例えば、化学機械研磨装置による化学機械研磨方法、バフ等の機械研磨方法、砥石回転による平面研削方法、等が挙げられる。また、絶縁層の研磨又は研削によって層間接続を行う場合、ビアホールを用いて層間接続を行う場合と同じく、スミア除去工程、粗化処理を行う工程、絶縁層上に導体層を形成する工程を行ってもよい。また、基材表面の全ての導体層を露出させる必要はなく、その一部を露出させてもよい。
【0152】
回路基板の製造方法は、例えば、基材を除去する工程(4)を含んでいてもよい。基材を除去することにより、絶縁層と、この絶縁層に埋め込まれた導体層とを有する回路基板が得られる。この工程(4)は、例えば、剥離可能な第一金属層及び第二金属層を有する基材を用いた場合に、行うことができる。以下、好適な例を説明する。第一金属層及び第二金属層を有する基材の前記第二金属層の表面に、導体層を形成する。さらに、導体層が樹脂組成物層に埋め込まれるように、第二金属層上に樹脂組成物層を形成し、熱硬化させて、絶縁層を得る。その後、必要に応じて層間接続を行った後で、基材の第二金属層以外の部分を剥離する。そして、第二金属層を、例えば塩化銅水溶液などのエッチング液でエッチングして、除去する。これにより、基材の除去が行われる。この際、必要に応じて、導体層を保護フィルムで保護した状態で、基材の除去を行ってもよい。
【0153】
他の実施形態において、回路基板は、プリプレグを用いて製造することができる。プリプレグは、例えばホットメルト法、ソルベント法等の方法により、シート状繊維基材に樹脂組成物を含浸させたものである。シート状繊維基材としては、例えば、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等が挙げられる。また、薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは900μm以下、より好ましくは800μm以下、さらに好ましくは700μm以下、特に好ましくは600μm以下であり、また、好ましくは1μm以上、1.5μm以上、2μm以上である。このプリプレグの厚さは、上述の樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲でありうる。このようなプリプレグを用いた回路基板の製造方法は、基本的に、樹脂シートを用いる場合と同様である。
【0154】
[13.半導体チップパッケージ]
本発明の第一実施形態に係る半導体チップパッケージは、上述した回路基板と、この回路基板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、回路基板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0155】
回路基板と半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極と回路基板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップと回路基板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0156】
接合方法の例としては、半導体チップを回路基板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃〜240℃の範囲(好ましくは130℃〜200℃の範囲、より好ましくは140℃〜180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間〜60秒間の範囲(好ましくは5秒間〜30秒間)である。
【0157】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップを回路基板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃〜300℃の範囲としてもよい。
【0158】
半導体チップを回路基板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した樹脂組成物を用いてもよく、また、上述した樹脂シートを用いてもよい。
【0159】
本発明の第二実施形態に係る半導体チップパッケージは、半導体チップと、この半導体チップを封止する前記樹脂組成物の硬化物とを含む。このような半導体チップパッケージでは、通常、樹脂組成物の硬化物は封止層として機能する。第二実施形態に係る半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan−out型WLPが挙げられる。
【0160】
図1は、本発明の第二実施形態に係る半導体チップパッケージの一例としてのFan−out型WLPを模式的に示す断面図である。Fan−out型WLPとしての半導体チップパッケージ100は、例えば、
図1に示すように、半導体チップ110;半導体チップ110の周囲を覆うように形成された封止層120;半導体チップ110の封止層120とは反対側の面に設けられた、絶縁層としての再配線形成層130;導体層としての再配線層140;ソルダーレジスト層150;及び、バンプ160を備える。
【0161】
このような半導体チップパッケージの製造方法は、
(A)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(B)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(C)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(D)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(E)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、
(F)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程、並びに、
(G)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
を含む。また、前記の半導体チップパッケージの製造方法は、
(H)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程
を含んでいてもよい。以下、この製造方法について詳細に説明する。
【0162】
(工程(A))
工程(A)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程である。基材と仮固定フィルムとの積層条件は、回路基板の製造方法における基材と樹脂シートとの積層条件と同様でありうる。
【0163】
基材としては、例えば、シリコンウェハー;ガラスウェハー;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR−4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;などが挙げられる。
【0164】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0165】
(工程(B))
工程(B)は、半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体パッケージの生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0166】
(工程(C))
工程(C)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、上述した樹脂組成物の硬化物によって形成する。封止層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を熱硬化させて封止層を形成する工程とを含む方法で形成する。
【0167】
樹脂組成物の優れた圧縮成型性を活用して、樹脂組成物層の形成は、圧縮成型法によって行うことが好ましい。圧縮成型法では、通常、半導体チップ及び樹脂組成物を型に配置し、その型内で樹脂組成物に圧力及び必要に応じて熱を加えて、半導体チップを覆う樹脂組成物層を形成する。
圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしうる。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。また、前記のように仮固定フィルム上に仮固定された半導体チップに、樹脂組成物を塗布する。樹脂組成物を塗布された半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に、下型に取り付ける。その後、上型と下型とを型締めして、樹脂組成物に熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
また、圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしてもよい。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。下型に、樹脂組成物を載せる。また、上型に、半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に取り付ける。その後、下型に載った樹脂組成物が上型に取り付けられた半導体チップに接するように上型と下型とを型締めし、熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0168】
成型条件は、樹脂組成物の組成により異なり、良好な封止が達成されるように適切な条件を採用できる。例えば、成型時の型の温度は、樹脂組成物が優れた圧縮成型性を発揮できる温度が好ましく、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、成形時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、特に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは5分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0169】
樹脂組成物層の形成は、樹脂シートと半導体チップとを積層することによって行ってもよい。例えば、樹脂シートの樹脂組成物層と半導体チップとを加熱圧着することにより、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成することができる。樹脂シートと半導体チップとの積層は、通常、基材の代わりに半導体チップを用いて、回路基板の製造方法における樹脂シートと基材との積層と同様にして行うことができる。
【0170】
半導体チップ上に樹脂組成物層を形成した後で、この樹脂組成物層を熱硬化させて、半導体チップを覆う封止層を得る。これにより、樹脂組成物の硬化物による半導体チップの封止が行われる。樹脂組成物層の熱硬化条件は、回路基板の製造方法における樹脂組成物層の熱硬化条件と同じ条件を採用してもよい。さらに、樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。この予備加熱処理の処理条件は、回路基板の製造方法における予備加熱処理と同じ条件を採用してもよい。
【0171】
(工程(D))
工程(D)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0172】
仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100℃〜250℃で1秒間〜90秒間又は5分間〜15分間である。また、紫外線を照射して仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm
2〜1000mJ/cm
2である。
【0173】
(工程(E))
工程(E)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程である。
【0174】
再配線形成層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。また、この熱硬化性樹脂として、本発明の樹脂組成物を用いてもよい。
【0175】
再配線形成層を形成した後、半導体チップと再配線層とを層間接続するために、再配線形成層にビアホールを形成してもよい。
【0176】
再配線形成層の材料が感光性樹脂である場合のビアホールの形成方法では、通常、再配線形成層の表面に、マスクパターンを通して活性エネルギー線を照射して、照射部の再配線形成層を光硬化させる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量及び照射時間は、感光性樹脂に応じて適切に設定できる。露光方法としては、例えば、マスクパターンを再配線形成層に密着させて露光する接触露光法、マスクパターンを再配線形成層に密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法、などが挙げられる。
【0177】
再配線形成層を光硬化させた後で、再配線形成層を現像し、未露光部を除去して、ビアホールを形成する。現像は、ウェット現像、ドライ現像のいずれを行ってもよい。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング方式、スクラッピング方式等が挙げられ、解像性の観点から、パドル方式が好適である。
【0178】
再配線形成層の材料が熱硬化性樹脂である場合のビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。中でも、レーザー照射が好ましい。レーザー照射は、炭酸ガスレーザー、UV−YAGレーザー、エキシマレーザー等の光源を用いる適切なレーザー加工機を用いて行うことができる。
【0179】
ビアホールの形状は、特に限定されないが、一般的には円形(略円形)とされる。ビアホールのトップ径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下であり、好ましくは3μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。ここで、ビアホールのトップ径とは、再配線形成層の表面でのビアホールの開口の直径をいう。
【0180】
(工程(F))
工程(F)は、再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程である。再配線形成層上に再配線層を形成する方法は、回路基板の製造方法における絶縁層上への導体層の形成方法と同様でありうる。また、工程(E)及び工程(F)を繰り返し行い、再配線層及び再配線形成層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0181】
(工程(G))
工程(G)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。また、熱硬化性樹脂として、本発明の樹脂組成物を用いてもよい。
【0182】
また、工程(G)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。また、バンピング加工におけるビアホールの形成は、工程(E)と同様に行うことができる。
【0183】
(工程(H))
半導体チップパッケージの製造方法は、工程(A)〜(G)以外に、工程(H)を含んでいてもよい。工程(H)は、複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程である。半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングする方法は特に限定されない。
【0184】
本発明の第三実施形態に係る半導体チップパッケージは、例えば
図1に一例を示すような半導体チップパッケージ100において、再配線形成層130又はソルダーレジスト層150を、本発明の樹脂組成物の硬化物で形成した半導体チップパッケージである。
【0185】
[14.半導体装置]
上述した半導体チップパッケージが実装される半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例】
【0186】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
【0187】
[エポキシ樹脂の粘度の測定方法]
以下の実施例及び比較例において、エポキシ樹脂の粘度は、E型粘度計(東機産業社製「RE−25U」、1°34’×R24のコーンロータを使用)を用いて、45℃、1rpmの条件で測定した。
【0188】
[実施例1]
液状ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP−400」、エポキシ当量230、数平均分子量Mn=3500、45℃における粘度5.5Pa・s、ガラス転移温度−62℃)2部、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ(平均粒径3.5μm、比表面積3.7m
2/g)90部、酸無水物硬化剤(新日本理化社製「HNA−100」、酸無水物当量179)10部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP−3980S」、エポキシ当量115)3部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱化学社製「630」、エポキシ当量95)7部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−850CRP」、エポキシ当量173)3部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「2E4MZ」)0.1部をミキサーで混合して、樹脂組成物を得た。
【0189】
[実施例2]
酸無水物硬化剤(新日本理化社製「HNA−100」)10部の代わりに、クレゾールノボラック型硬化剤(DIC社製「KA−1160」、フェノール性水酸基当量117)5部を用いた。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0190】
[実施例3]
酸無水物硬化剤(新日本理化社製「HNA−100」)10部の代わりに、液状ノボラック型フェノール硬化剤(明和化成社製「MEH−8000H」、フェノール性水酸基当量141)5部を用いた。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0191】
[実施例4]
グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱化学社製「630」)の量を、7部から8部に変更した。
また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−850CRP」)3部の代わりに、脂肪族エポキシ樹脂(三菱化学社製「YED−216D」、エポキシ当量120)2部を用いた。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0192】
[実施例5]
酸無水物硬化剤(新日本理化社製「HNA−100」)10部の代わりに、液状ノボラック型フェノール硬化剤(明和化成社製「MEH−8000H」、フェノール性水酸基当量141)5部を用いた。
また、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱化学社製「630」)7部の代わりに、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(住友化学社製「ELM−100H」、エポキシ当量106)7部を用いた。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0193】
[比較例1]
液状ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP−400」)2部の代わりに、ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP−200」、エポキシ当量210〜240、数平均分子量Mn=2200、45℃における粘度100Pa・s)2部を用いた。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0194】
[比較例2]
液状ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP−400」)2部の代わりに、ポリブタジエンエポキシ樹脂(ダイセル社製「PB−3600」、エポキシ当量193、数平均分子量Mn=5900、45℃における粘度45Pa・s)2部を用いた。
また、酸無水物硬化剤(新日本理化社製「HNA−100」)10部の代わりに、クレゾールノボラック型硬化剤(DIC社製「KA−1160」、フェノール性水酸基当量117)5部を用いた。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0195】
[比較例3]
液状ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP−400」)を使用しなかった。
また、酸無水物硬化剤(新日本理化社製「HNA−100」、酸無水物当量179)10部の代わりに、クレゾールノボラック型硬化剤(DIC社製「KA−1160」、フェノール性水酸基当量117)5部を用いた。
さらに、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP−3980S」、エポキシ当量115)の量を、3部から5部に変更した。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を得た。
【0196】
[樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数(CTE)の測定]
(評価用硬化物の作製)
片面に離型処理を施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「501010」、厚さ38μm、240mm角)を用意した。このポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理を施されていない未処理面に、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(松下電工社製「R5715ES」、厚さ0.7mm、255mm角)を重ね、四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した。これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板を含む固定PETフィルムを得た。
【0197】
実施例及び比較例で製造した樹脂組成物にメチルエチルケトンを加えて希釈し、当該樹脂組成物の粘度を4000mPa・sに調整した。また、支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL−5」)で表面に離型処理を施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚さ38μm、軟化点130℃)を用意した。この支持体上に、前記のように粘度調整された樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが100μmとなるように、ダイコーターを用いて塗布した。塗布された樹脂組成物層を、80℃〜120℃(平均100℃)で10分間乾燥し、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
【0198】
各樹脂シート(樹脂組成物層の厚さ100μm)を、200mm角の正方形に切り取った。切り取った樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製の2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が固定PETフィルムのポリエチレンテレフタレートフィルム側の面(即ち、離型処理を施された面)の中央に接するようにラミネートし、複層試料を得た。前記のラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより、実施した。
【0199】
次いで、得られた複層試料を、100℃のオーブンに投入して30分間加熱し、その後、175℃のオーブンに移し替えて30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。その後、複層試料を室温雰囲気下に取り出し、支持体を剥離した後、190℃のオーブンに投入して90分間加熱して、樹脂組成物層を更に熱硬化させた。得られた複層試料は、樹脂組成物層が硬化した硬化物層、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板をこの順で含んでいた。
【0200】
前記の熱硬化の後、ポリイミド接着テープを剥がし、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板を取り外し、更にポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がして、シート状の樹脂組成物の硬化物を得た。得られた硬化物を、「評価用硬化物」と称することがある。
【0201】
(CTE測定)
前記の評価用硬化物を、幅5mm、長さ15mmに切断して、試験片を得た。この試験片について、熱機械分析装置(リガク社製「Thermo Plus TMA8310」)を用いて、引張加重法にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片を前記熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて、連続して2回測定を行った。そして、2回目の測定において、25℃から150℃までの範囲における平面方向の線熱膨張係数(ppm/℃)を算出した。
【0202】
[反り量の測定]
12インチシリコンウエハ上に、実施例及び比較例で製造した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。その後、180℃で90分加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。これにより、シリコンウエハと樹脂組成物の硬化物層とを含む試料基板を得た。
【0203】
シャドウモアレ測定装置(Akorometrix社製「ThermoireAXP」)を用いて、前記の試料基板を35℃、260℃及び35℃の順で加熱及び冷却した際の反り量を測定した。測定は、電子情報技術産業協会規格のJEITA EDX−7311−24に準拠して行った。具体的には、測定領域の基板面の全データの最小二乗法によって算出した仮想平面を基準面として、その基準面から垂直方向の最小値と最大値との差を反り量として求めた。反り量が2mm未満を「○」、2mm以上を「×」と判定した。
【0204】
[密着性の評価]
12インチシリコンウエハに、常温時に粘着性を有し且つ加熱時に容易に剥離できる熱剥離シート(Thermal release tape;日東電工社製「リバアルファ」)を貼り付けた。この熱剥離シート上に、1cm角シリコンチップ(厚さ400μm)を、等間隔に100個置いた。続いて、シリコンチップを置かれた熱剥離シート上に、実施例及び比較例で製造した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、シリコンチップが埋め込まれた層厚さ500μmの樹脂組成物層を形成した。180℃で加熱して熱剥離シートを剥離可能な状態にして、熱剥離シート及びシリコンウエハを除去した。その後、樹脂組成物層を180℃で90分加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。これにより、樹脂組成物の硬化物層と、この硬化物層に埋め込まれたシリコンチップとを含む樹脂ウエハを得た。
【0205】
その後、樹脂ウエハのサーマルサイクルテストを実施した。このサーマルサイクルテストは、−55℃への冷却と125℃への加熱とを1サイクルとして、前記の冷却及び加熱を1000サイクル繰り返す試験である。サーマルサイクルテスト後に樹脂ウエハを観察し、シリコンチップと硬化物層との界面でデラミネーションを生じた場合を「×」、デラミネーションを生じなかった場合を「○」と判定した。また、樹脂組成物の圧縮成型後に樹脂組成物層の表面にクラックが発生した場合は「クラック」と判定した。
【0206】
[圧縮成型性の評価]
12インチシリコンウエハ上に、実施例及び比較例で製造した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。その後、樹脂組成物層を観察し、ウエハ端部まで樹脂組成物を充填できた場合を「○」、未充填が発生した場合を「×」、圧縮成型後に樹脂組成物層の表面にクラックが発生した場合を「クラック」と判定した。
【0207】
[誘電正接の測定方法]
表面に離型処理を施されたSUS板上に、実施例及び比較例で製造した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。SUS板を剥がし、樹脂組成物層を180℃90分の加熱により熱硬化させて、樹脂組成物の硬化物層を得た。この硬化物層を、長さ80mm、幅2mmに切り出して、誘電正接測定用の評価サンプルを得た。この評価サンプルについて、分析装置(アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製「HP8362B」)を用いた空洞共振摂動法により、測定温度23℃、測定周波数5.8GHzで誘電正接を測定した。
【0208】
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
JP400:液状ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP−400」、エポキシ当量230、数平均分子量Mn=3500、45℃における粘度5.5Pa・s)。
JP200:ポリブタジエンエポキシ樹脂(日本曹達社製「JP−200」、エポキシ当量210〜240、数平均分子量Mn=2200、45℃における粘度100Pa・s)。
PB3600:ポリブタジエンエポキシ樹脂(ダイセル社製「PB−3600」、エポキシ当量193、数平均分子量Mn=5900、45℃における粘度45Pa・s)。
HNA−100:酸無水物硬化剤(新日本理化社製「HNA−100」、酸無水物当量179)。
KA−1160:クレゾールノボラック型硬化剤(DIC社製「KA−1160」、フェノール性水酸基当量117)。
MEH−8000H:液状ノボラック型フェノール硬化剤(明和化成社製「MEH−8000H」、フェノール性水酸基当量141)。
EP−3980S:グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP−3980S」、エポキシ当量115)。液状
YED−216D:脂肪族エポキシ樹脂(三菱化学社製「YED−216D」、エポキシ当量120)。液状
630:グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱化学社製「630」、エポキシ当量95)。液状
EXA−850CRP:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−850CRP」、エポキシ当量173)。液状
ELM−100H:グリシジルアミン型エポキシ樹脂(住友化学社製「ELM−100H」、エポキシ当量106)。
2E4MZ:イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「2E4MZ」)。
【0209】
【表1】
【0210】
[検討]
表1から分かるように、実施例に係る樹脂組成物は、圧縮成型性に優れる。また、実施例に係る樹脂組成物の硬化物は、線熱膨張係数が低く、反りを抑制でき、且つ、加熱及び冷却を繰り返しても高い密着性に優れる。よって、本発明により、線熱膨張係数が低く、反りを抑制でき、加熱及び冷却を繰り返しても高い密着性が得られる硬化物を得ることができ、且つ、圧縮成型性に優れる樹脂組成物層を実現できることが確認された。
また、分子内にアルケン骨格を有するエポキシ樹脂を用いていない比較例3と実施例とを対比することにより、分子内にアルケン骨格を有するエポキシ樹脂を用いた本発明の樹脂組成物によれば、通常、誘電正接が低い硬化物が得られることが確認された。
また、実施例1〜5において、(D)成分〜(E)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。