特許第6816673号(P6816673)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816673
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60K 13/02 20060101AFI20210107BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20210107BHJP
   F02M 35/04 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   B60K13/02 A
   B60K11/04 B
   F02M35/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-146976(P2017-146976)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-26053(P2019-26053A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 悦朗
(72)【発明者】
【氏名】中村 太樹
【審査官】 中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−157017(JP,U)
【文献】 特開平08−175155(JP,A)
【文献】 実開昭53−145045(JP,U)
【文献】 実開昭62−043931(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 13/02
B60K 11/04
F02M 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(3)に搭載したエンジン(E)と、前記エンジン(E)の冷却水を冷却するラジ
エータ(23)と、前記エンジン(E)への吸気を浄化するエアークリーナ(22)をボ
ンネット(5)内に装着するトラクタにおいて、
前記エアークリーナ(22)をラジエータ支持枠(20)に取り付けると共に、前記エ
アークリーナ(22)から前記ボンネット(5)上に向ける外吸気筒(16)を前記ラジ
エータ支持枠(20)で支持し、前記外吸気筒(16)に対してプレクリーナを収納する
プレクリーナケース(6)の吸気筒(7)を上方から嵌合して着脱可能に取り付けて構成し、
前記吸気筒(7)の下部を内外の差込内筒(7a)と差込外筒(7b)として構成し、
前記差込内筒(7a)と前記差込外筒(7b)の隙間に前記外吸気筒(16)を嵌合して一体に連結したことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
前記差込外筒(7b)と前記吸気筒(7)の上部を実質上同径とし、前記吸気筒(7)
の下部を加工して前記差込内筒(7a)としたことを特徴とする請求項に記載のトラク
タ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場で耕耘作業等を行うトラクタに関し、特にトラクタのプレクリーナ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタは前後四輪で走行する車体の前部に搭載したエンジンを覆ってボンネットを設け、その後部に作業者が搭乗して操縦操作を行う操縦席を設け、車体後部にロータリ作業機等を搭載する。
【0003】
トラクタに搭載したエンジンへの吸気を行うエアークリーナは、圃場作業で発生する塵埃を出来るだけ吸い込まないようにするために、特許文献1に記載の如く、ボンネットから上方に突出して設ける吸気筒上部のプレクリーナを介して吸気するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−299635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のトラクタでは、ボンネットから突出させる吸気筒を円環状弾性体であるグロメットで囲っているために、ボンネットを開いて行うエンジンのメンテナンス作業時にグロメットを取り外さなければならず、作業が面倒である。
【0006】
本発明は、従来のトラクタの上記課題に鑑みて、ボンネット上のプレクリーナを介してエアークリーナに外気導入を行うトラクタにおいて、プレクリーナの車体支持を簡単な構成で確実にすると共に、ボンネットを開く際にプレクリーナの取り外しが容易で、ボンネット内のエンジン等のメンテナンス作業を行い易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
請求項1の発明は、
車体(3)に搭載したエンジン(E)と、前記エンジン(E)の冷却水を冷却するラジ
エータ(23)と、前記エンジン(E)への吸気を浄化するエアークリーナ(22)をボ
ンネット(5)内に装着するトラクタにおいて、
前記エアークリーナ(22)をラジエータ支持枠(20)に取り付けると共に、前記エ
アークリーナ(22)から前記ボンネット(5)上に向ける外吸気筒(16)を前記ラジ
エータ支持枠(20)で支持し、前記外吸気筒(16)に対してプレクリーナを収納する
プレクリーナケース(6)の吸気筒(7)を上方から嵌合して着脱可能に取り付けて構成し、
前記吸気筒(7)の下部を内外の差込内筒(7a)と差込外筒(7b)として構成し、
前記差込内筒(7a)と前記差込外筒(7b)の隙間に前記外吸気筒(16)を嵌合して一体に連結したことを特徴とするトラクタである。
請求項2の発明は、
前記差込外筒(7b)と前記吸気筒(7)の上部を実質上同径とし、前記吸気筒(7)
の下部を加工して前記差込内筒(7a)としたことを特徴とする請求項1に記載のトラク
タである。
本発明に関連する第1の発明は、車体(3)に搭載したエンジン(E)と、前記エンジン(E)の冷却水を冷却するラジエータ(23)と、前記エンジン(E)への吸気を浄化するエアークリーナ(22)をボンネット(5)内に装着するトラクタにおいて、
前記エアークリーナ(22)をラジエータ支持枠(20)に取り付けると共に、前記エ
アークリーナ(22)から前記ボンネット(5)上に向ける外吸気筒(16)を前記ラジ
エータ支持枠(20)で支持し、前記外吸気筒(16)に対してプレクリーナを収納する
プレクリーナケース(6)の吸気筒(7)を上方から嵌合して着脱可能に取り付けたこと
を特徴とするトラクタとする。
【0009】
本発明に関連する第2の発明は、前記吸気筒(7)の下部を内外の差込内筒(7a)と差込外筒(7b)として構成し、前記差込内筒(7a)と前記差込外筒(7b)の隙間に前記外吸気筒(16)を嵌合して一体に連結することを特徴とする本発明に関連する第1の発明のトラクタとする。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、前記差込外筒(7b)と前記吸気筒(7)の上部を実質上同径とし、前記吸気筒(7)の下部を加工して前記差込内筒(7a)としたことを特徴とする本発明に関連する第2の発明のトラクタとする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明で、ラジエータ支持枠20は、エンジンとは別に車体3に支持されてエ
ンジンの振動を受け難いが、そのラジエータ支持枠20にエアークリーナ22と外吸気筒
16を支持することで、部品構成を簡略化して製造コストを低減出来る。さらに、吸気筒7の差込内筒7aと差込外筒7bの間隙に外吸気筒16を嵌合することで連結が強固になって外吸気筒16の支持が安定し、プレクリーナケース6の吸気筒7がトラクタ作業中に外れる虞が無い。
請求項2の発明で、請求項1の発明の効果に加えて、ボンネット5から突出する吸気筒7のストレート形状で外観が良好になる。
本発明に関連する第1の発明で、ラジエータ支持枠20は、エンジンとは別に車体3に支持されてエンジンの振動を受け難いが、そのラジエータ支持枠20にエアークリーナ22と外吸気筒16を支持することで、部品構成を簡略化して製造コストを低減出来る。
【0012】
本発明に関連する第2の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、吸気筒7の差込内筒7aと差込外筒7bの間隙に外吸気筒16を嵌合することで連結が強固になって外吸気筒16の支持が安定し、プレクリーナケース6の吸気筒7がトラクタ作業中に外れる虞が無い。
【0013】
本発明に関連する第3の発明で、本発明に関連する第1或いは第2の発明の効果に加えて、ボンネット5から突出する吸気筒7のストレート形状で外観が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明実施形態のトラクタの正面斜視図である。
図2】プレクリーナケースの側面図である。
図3】プレクリーナケース取付部の斜視図である。
図4】キャビン内を左前方から見た斜視図である。
図5】外部油圧操作レバーの取付部斜視図である。
図6】ミッションケース上面を左前方から見た斜視図である。
図7】油圧バルブの斜視図である。
図8】トラクタ後部の三点リンク連結部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。なお、実施例の説明においては、機体の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後退方向を後というが、本発明の構成を限定するものでは無い。
【0016】
図1に示すように、トラクタは、左右の前輪1,1と左右の後輪2,2で走行する車体3上に、作業者が搭乗するキャビン4とボンネット5で覆われたエンジンEを設け、キャビン4内には操縦席24やハンドル等の操縦装置を設けている。さらに、車体3上に、ボンネット5で覆われたエンジンEやラジエータ23や油圧ポンプやミッションケース40の一部を設けている。車体3の後部(ミッションケース40後部)に作業機を装着する左右ヒッチ42L,42Rを設けている。左右の後輪2,2は、上部をキャビン4内に入り込む強固なフェンダ52で覆っている。後輪2は、重い鋳物製ディスクで幅広タイヤとして牽引力を強くすると良い。
【0017】
ボンネット5の前右側にプレクリーナを内装するプレクリーナケース6を吸気管7で立設し、ボンネット5の後部側でエンジンEの右側面にエンジンEの排気を排出する排気菅8を連結して上方に向けて立設している。
【0018】
キャビン4の左右側部には取手15を付けたサイドドア9,9と昇降ステップ11,11を設け、前窓13の上部左右にサイドミラー10,10を設け、前窓13の上部左右に前方を照らす作業灯14,14を設けている。符号12は燃料の給油キャップである。
【0019】
図2図3は、プレクリーナを内装するプレクリーナケース6の取付支持部を示し、ボンネット5内でエンジンEを車体3に搭載し、エンジンの前側でラジエータ23をラジエータ支持枠20で車体3に支持している。エアークリーナ22の吸気口22aに通じる内吸気筒17と上部に起立する外吸気筒16を設けた吸気ブラケット18を、ボルト19でラジエータ支持枠20とエアクリーナ22を連結するエアクリーナ支持ブラケット22bに取り付けている。符号22cは、エアクリーナ22とエンジンEを連結する連結パイプである。
【0020】
即ち、吸気ブラケット18の下側に内吸気筒17を構成し、吸気ブラケット18の上側に外吸気筒16を構成しているが、外吸気筒16の中心は、内吸気筒17の中心に対して右側に約1cm程度偏位している。これは、ボンネット5の設計変更を不要とするためである。プレクリーナケース6を設けない型式のボンネット5の上部には、冷却風取り込み用の孔が開けられていて網が取り付けられている。この網の部分に孔を開けるのみの構成で、プレクリーナケース6を取り付け可能に構成したので、ボンネット5の設計変更が不要となる。前記偏位が構成されていても、吸入空気量は約80%程度を確保できるため、問題は無い。
【0021】
吸気筒7は、上部にプレクリーナケース6の筒部を外嵌してバンド21で締めつけて取り付け、下部を小径に絞った差込内筒7aとし、その外に吸気筒7と同じ外径の差込外筒7bを上部で吸気筒7に密着溶接している。前記吸気筒7の下部を絞り加工して前記差込内筒7aとしたので、部品点数の増加を抑制でき、と差込外筒7bの外径が吸気筒7の外径より大きくなるのを防止できる。
【0022】
差込内筒7aと差込外筒7bの隙間に外吸気筒16が入るように差し込んで吸気筒7を支持するので、固定具を設けなくても安定して保持され、ボンネット5を開く場合には、工具を使用せずに吸気筒7を速やかに上方に抜き外すことで、プレクリーナケース6がメンテナンスの邪魔にならない。
【0023】
即ち、外吸気筒16の内外にそれぞれ差込内筒7aと差込外筒7bが存在し、さらに、外吸気筒16と差込内筒7aとの隙間、及び外吸気筒16と差込外筒7bとの隙間は、極めて短い寸法にして密着に近い状態に構成しているので、プレクリーナケース6は振動せず、圃場での作業時にも安定している。前記外吸気筒16の差し込み代が長すぎると抜き差しがしにくくなるので、差し込み代は約5cm程度に構成した。
【0024】
操縦席24に着座した状態での前方視認性を確保するため、プレクリーナケース6を比較的高い位置に構成した。ボンネット5の上面から約25cmに配置した。また、プレクリーナケース6を安定させるため、部品点数を少なくして重量を軽くした。
【0025】
図4は、キャビン4の内部斜視図で、操縦席24の右側側部にステップフロアー25から立設する主変速レバー26と副変速レバー27を設け、右フェンダ52に取り付けた右サイドパネル28に、作業機高さ調節レバー29と自動昇降スイッチ30と外部油圧操作レバー31を設けている。自動昇降スイッチ30は作業機に加わる負荷が増大すると自動で作業機を上昇させて負荷を低減させる機能で、ダイヤルによって上昇幅を調整出来る。作業機の負荷は、三点リンクの上リンクと取付ブラケットをトーションバーで連結し、トーションバーの捩れによる前後の動きを角度センサで検出し、一定以上の角度で油圧バルブ37に上昇信号を出力する。自動昇降が不要の場合は、上リンクと取付ブラケットをピンで連結してトーションバーの捩れを抑制する。
【0026】
外部油圧操作レバー31の隣に二列のガイド溝を設けているが、このガイド溝に第二、第三の外部油圧出力レバーを追加することが可能である。
【0027】
図5は、外部油圧操作レバー31の取付を示す斜視図で、右サイドパネル28内の右フェンダ52に取り付けるレバーブラケット35の軸支部32に設けるレバー軸33に外部油圧操作レバー31を軸支し、外部油圧操作レバー31のワイヤ取付部31dに油圧バルブ37のスプールに連結する油圧操作ワイヤ34を連結している。油圧操作ワイヤ34は防水性のプッシュケーブルで、ワイヤ受35bに取り付ける調節ナット36でインナーワイヤに対するアウタワイヤの位置を調節して外部油圧操作レバー31と油圧バルブ37の連動を調節する。
【0028】
レバーブラケット35は、外部油圧操作レバー31aの他に第二と第三の外部油圧出力レバー31b、31cを並んで追加出来る幅を有している。第一外部油圧操作レバー31aと第三外部油圧操作レバー31cは外向きに曲げ、第二外部油圧操作レバー31bは真っ直ぐとして操作し易くすると良い。第三外部油圧操作レバー31cの取り付け構成は、第二と第三の外部油圧出力レバー31b、31cと同じ構成であるので、詳細構成を省略している。
【0029】
図6は、ミッションケース40の後部側の斜視図で、左右の後輪2を装着する後輪フランジ43を一体的に組み付けたミッションケース40の後部に作業機を装着する三点リンクを取り付ける左右ヒッチ42L,42Rを設け、その上部に枢支する左右リフトアーム41L,41Rを構成している。左リフトアーム41Lと左ヒッチ42Lとの間に昇降シリンダ39を取り付け、ミッションケース40の後上部に取り付けるバルブブラケット51に設ける油圧バルブ37と昇降シリンダ39を保護コイルを巻いた油圧ホース38で連結している。油圧バルブ37はミッションケース40内の油圧ポンプからの圧油の流れを制御するものである。
【0030】
昇降シリンダ39の上昇力が不足する場合には、右リフトアーム41Rと右ヒッチ42Rの間に第二の昇降シリンダを追加し、さらに、第三の昇降シリンダを追加することもある。第二の昇降シリンダと第三の昇降シリンダは、昇降シリンダ39のシリンダケースからアダプタで分岐して、石などの飛散部から保護する保護スプリング付きの油圧ホースで連結する。第二の昇降シリンダと第三の昇降シリンダは、ロッドを左リフトアーム41Lに枢支し、シリンダ側を左ヒッチ42Lにピンで差し込むようにすると良い。また、第二の昇降シリンダと第三の昇降シリンダの油圧回路は昇降シリンダ39と並列な油圧回路とする。
【0031】
図7は、油圧バルブ37の斜視図で、側面視L字状のバルブアーム46をバルブブラケット51に設ける枢支ピン47に軸支し、バルブアーム46の一端側の長穴に油圧バルブ37のスプール48に連結する連結ピン49をスナップピン50で連結して。バルブアーム46の他端に連結する油圧操作ワイヤ34が引かれるとスプール48がスライドして昇降シリンダ39の伸縮作動を制御する。
【0032】
図8は、左右リフトアーム41L,41Rと三点リンクの左右下リンク44L,44Rを長さ調節可能な左右連結ロッド45L,45Rで連結して、左右リフトアーム41R,41Lの昇降回動で三点リンクに連結する作業機を昇降する。左右リフトアーム41L,41Rは厚みを作業機の重量に応じて変更し、左右連結ロッド45L,45Rは作業機の重量に応じてロッド径を変更する。左右連結ロッド45L,45Rを回転防止パイプ付きとしても良い。
【符号の説明】
【0033】
E エンジン
3 車体
5 ボンネット
6 プレクリーナケース
7 吸気筒
7a 差込内筒
7b 差込外筒
16 外吸気筒
20 ラジエータ支持枠
22 エアークリーナ
23 ラジエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8