(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(D)架橋剤がキノキサリン類、チオウレア類、及びトリアジン類から選択される少なくとも一種の架橋剤であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の防振ゴム用組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゴム材料として期待される引張強度及び耐熱性を期待することができるエピクロルヒドリン系重合体を用いた、良好な防振特性を有するゴム材料、及びゴム材料のための組成物を提供することを課題とする。
【0008】
本発明者らは、エピクロルヒドリン系重合体、シリカ、シランカップリング剤、架橋剤を含有することを特徴とする組成物を架橋してなるエピクロルヒドリン系ゴム材料が、ゴム材料として期待される引張強度及び耐熱性を維持しつつ、防振性に優れることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、次に関する。
項1 (A)エピクロルヒドリン系重合体、(B)CTAB吸着比表面積が50〜150m
2/gであるシリカ、(C)シランカップリング剤、(D)架橋剤を含有することを特徴とする防振ゴム用組成物。
項2 (B)シリカがCTAB吸着比表面積が70〜150m
2/gである湿式法シリカであることを特徴とする項1に記載の防振ゴム用組成物。
項3 (B)シリカ100重量部に対して(C)シランカップリング剤を1〜20重量部含有することを特徴とする項1又は2に記載の防振ゴム用組成物。
項4 (C)シランカップリング剤は式(1)または(2)
X−Si−R
an(R
b)
3−n (1)
R
an(R
b)
3−nSi−X’−Si−R
a’m(R
b’)
3−m (2)
[式中、Xは、反応基であり、
X’は、1〜10個の硫黄原子を含んでいてよい炭化水素基であり、
R
a及びR
a’は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
R
b及びR
b’は、それぞれ独立して、反応基であり、
nおよびmは、それぞれ独立して、0、1または2である。]
で表される化合物から選択される少なくとも一種のカップリング剤であることを特徴とする項1〜3いずれかに記載の防振ゴム用組成物。
項5 (C)シランカップリング剤が、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、メタクリル系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、クロロアルキル系シランカップリング剤、及びポリスルフィド系シランカップリング剤から選択される少なくとも一種のカップリング剤であることを特徴とする項1〜3いずれかに記載の防振ゴム用組成物。
項6 (D)架橋剤がキノキサリン類、チオウレア類、及びトリアジン類から選択される少なくとも一種の架橋剤であることを特徴とする項1〜5いずれかに記載の防振ゴム用組成物。
項7(A)エピクロルヒドリン系重合体100重量部に対して、(B)シリカの含有量が10〜70重量部および(D)架橋剤の含有量が0.1〜10重量部含有することを特徴とする項1〜6いずれかに記載の防振ゴム用組成物。
項8 さらに(E)受酸剤を含有し、(E)受酸剤が金属化合物及び/又は無機マイクロポーラス・クリスタルであることを特徴とする項1〜7いずれかに記載の防振ゴム用組成物。
項9 項1〜8いずれかに記載するゴム用組成物を架橋してなる防振ゴム用材料。
項10 項9に記載する防振ゴム用材料の静動比が1.40以下である防振ゴム用材料。
項11 項9又は項10に記載する防振ゴム用材料からなる自動車用防振ゴム。
【発明の効果】
【0010】
本発明により得られたゴム材料は、エピクロルヒドリン系重合体を用いているために、
良好な引張強度及び耐熱性を期待することができる。従って、高温、例えば100℃以上に晒されるような自動車用防振ゴムに極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の防振ゴム用組成物及び防振ゴム用組成物を架橋してなる防振ゴム用材料について詳細に説明する。本発明の防振ゴム用組成物は(A)エピクロルヒドリン系重合体、(B)シリカ、(C)シランカップリング剤、(D)架橋剤を含有する。
【0012】
本発明の防振ゴム用組成物に用いられる(A)エピクロルヒドリン系重合体は、エピクロルヒドリン由来の構成単位を有する重合体であり、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、n−ブチレンオキサイド等のアルキレンオキシド類、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−グリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のグリシジル類に由来する構成単位を含んでいてもよい。具体的に例示すれば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等を挙げることができ、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体であることが好ましい。これら単独重合体、又は共重合体の分子量は特に制限されないが、通常ムーニー粘度表示でML
1+4(100℃)=30〜150程度である。これらの単独重合体又は共重合体を一種、又は二種以上併用して使用することができる。
【0013】
(A)エピクロルヒドリン系重合体としては、耐熱性の点で、エピクロルヒドリンに基づく重合単位を10mol%以上含有することが好ましく、20mol%以上含有することがより好ましく、25mol%以上含有することが特に好ましい。エピクロルヒドリンに基づく重合単位については、塩素含有量等より算出することができる。塩素含有量はJIS K7229に記載の方法に従い、電位差滴定法によって求めることができる。
【0014】
エピクロルヒドリンーエチレンオキサイド共重合体の場合、それら共重合割合は、エピクロルヒドリンは10mol%〜95mol%であることが好ましく、20mol%〜75mol%であることがより好ましく、25mol%〜65mol%であることが特に好ましい。エチレンオキサイドは5mol%〜90mol%であることが好ましく、25mol%〜80mol%であることがより好ましく、35mol%〜75mol%であることが特に好ましい。
【0015】
エピクロルヒドリンーエチレンオキサイドーアリルグリシジルエーテル三元共重合体の場合、それら共重合割合は、エピクロルヒドリンは10mol%〜95mol%であることが好ましく、20mol%〜75mol%であることがより好ましく、25mol%〜65mol%であることが特に好ましい。エチレンオキサイドは4mol%〜89mol%であることが好ましく、24mol%〜79mol%であることがより好ましく、34mol%〜74mol%であることが特に好ましい。アリルグリシジルエーテルは1mol%〜10mol%であることが好ましく、1mol%〜8mol%であることがより好ましく、1mol%〜7mol%であることが特に好ましい。
【0016】
エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体の共重合組成については、塩素含有量、ヨウ素価により求められる。
塩素含有量はJIS K7229に記載の方法に従い、電位差滴定法によって測定する。得られた塩素含有量からエピクロルヒドリンに基づく構成単位のモル分率を算出する。
ヨウ素価はJIS K6235に準じた方法で測定する。得られたヨウ素価からアリルグリシジルエーテルに基づく構成単位のモル分率を算出する。
エチレンオキサイドに基づく構成単位のモル分率は、エピクロルヒドリンに基づく構成単位のモル分率、アリルグリシジルエーテルに基づく構成単位のモル分率より算出する。
【0017】
本発明の防振ゴム用組成物に用いられるシリカはCTAB吸着比表面積が50〜150m
2/gであり、70〜150m
2/gであることが好ましく、75〜145m
2/gであることがより好ましい。
【0018】
CTAB吸着比表面積は、シリカ表面に対するCTABの吸着量から算出したシリカの比表面積(m
2/g)である。シリカのCTAB吸着比表面積はJISK6430に準じて測定することができる。またCTABとは臭化n-ヘキサドデシルトリメチルアンモニウムのことを指す。
シリカのCTAB吸着比表面積の測定方法は次のとおりである。
CTAB標準液(0.0151mol/L)を調製し、これをシリカ試料に添加する。攪拌下で懸濁液を生成させ、シリカ表面にCTABを吸着させる。液相の分離後、非吸着のCTABを濁り滴定によって求める。シリカ表面に対するCTAB1分子当たりの吸着断面積を0.35nm
2としてCTABの吸着量から、比表面積を算出する。
【0019】
本発明の防振ゴム用組成物に用いられる(B)シリカの種類は、特に限定されず、例えば、湿式法シリカ(含水ケイ酸)、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等である。湿式法シリカが好ましい。湿式法シリカとは、ケイ酸ナトリウム水溶液をまたはアルカリ土類金属ケイ酸塩を、酸分解する等により製造される含水ケイ酸の微粒子で、二酸化ケイ素を主体としたゴム用充填材である。
【0020】
本発明の防振ゴム用組成物において、(B)シリカの含有量は(A)エピクロルヒドリン系重合体100重量部に対して、10〜70重量部であってよい。15〜50重量部であることが好ましく、17.5〜27.5重量部であることがより好ましく、20〜30重量部であることが特に好ましい。(B)シリカの含有量が10重量部〜70重量部であると架橋が十分であり、コンパウンド粘度が適切であり、加工性が良好である。
【0021】
本発明の防振ゴム用組成物において、(C)シランカップリング剤は、1分子中に反応性の異なる2種類の官能基を有する有機珪素化合物である。(C)シランカップリング剤は式(1)または(2)
X−Si−R
an(R
b)
3−n (1)
R
an(R
b)
3−nSi−X’−Si−R
a’m(R
b’)
3−m (2)
[式中、Xは、反応基であり、
X’は、1〜10個の硫黄原子を含んでいてよい炭化水素基であり、
R
a及びR
a’は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
R
b及びR
b’は、それぞれ独立して、反応基であり、
nおよびmは、それぞれ独立して、0、1または2である。]
で表される化合物である。
Xは、有機質材料と化学結合する反応基である。Xの例は、ビニル基、ビニル基含有アルキル基、エポキシ基、エポキシ基含有アルキル基、グリシドキシ基含有アルキル基、メタクリル基、メタクリル基含有アルキル基、メタクリロキシ基、メタクリロキシ基含有アルキル基、アクリル基、アクリル基含有アルキル基、アクリロキシ基、アクリロキシ基含有アルキル基、アミノ基、アミノ基含有アルキル基、メルカプト基、メルカプト基含有アルキル基、及びクロロアルキル基であるが、これらに限定されるものではない。Xに含まれるアルキル基の炭素数は1〜12であってよい。X’の例は炭素数1〜20のポリスルフィド含有炭化水素基、例えばポリスルフィド含有アルキレン基(−R
c−Sx−R
c−)であるが、これらに限定されるものではない。−R
c−は炭素数1〜9のアルキレン基、xは2〜6の整数であるが、限定されるものではない。R
a及びR
a’の例は、炭素数1〜12の炭化水素基、例えばアルキル基であるが、これらに限定されるものではない。R
b及びR
b’は、ガラスや金属などの無機質材料と化学結合する反応基である。R
b及びR
b’の例は、炭素数1〜6のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基であるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明の防振ゴム用組成物において、(C)シランカップリング剤は、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、メタクリル系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、クロロアルキル系シランカップリング剤、及びポリスルフィド系シランカップリング剤が挙げられ、ポリスルフィド系シランカップリング剤であることが好ましい。(C)シランカップリング剤は一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0023】
ビニル系シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン等が例示される。
エポキシ系シランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
メタクリル系シランカップリング剤としては、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等が例示される。
アクリル系シランカップリング剤としては、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等が例示される。
アミノ系シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
メルカプト系シランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
クロロアルキル系シランカップリング剤としては3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
ポリスルフィド系シランカップリング剤としては下記一般式
で表される化合物を例示することができ、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(略称TESPD)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(略称TESPT)が好ましい。具体的には、「カブラス2A」、「カブラス2B」、「カブラス4」(以上、大阪ソーダ社製)、「Si75」、「Si69」(デグサ社製)、「A−1289」(GEシリコーン社製)、「KBE−846」(信越化学社製)等が挙げられる。
(R
1−O)
3−YR
1Y−Si−R
2−Sx−R
2−Si−R
1Y(O−R
1)
3−Y (3)
(但し、上記一般式(3)においてR
1は炭素数1〜5の一価の炭化水素基、R
2は炭素数1〜9の二価の炭化水素基、xは2〜6、Yは0または1の整数である。)
【0024】
本発明の防振ゴム用組成物において、(C)シランカップリング剤の含有量は、(B)シリカ100重量部に対して、例えば0.5〜25重量部であってよく、1〜20重量部であることが好ましく、2〜17重量部であることがより好ましく、3〜15重量部であることが特に好ましい。(C)シランカップリング剤の含有量が1重量部未満であると架橋物の強度が少なく、また20重量部を超えると経済的ではない。
【0025】
本発明の防振ゴム用組成物において、(D)架橋剤としては、エピクロルヒドリン系ゴムを架橋できるものであれば特に限定されないが、塩素原子の反応性を利用する公知の架橋剤、即ちポリアミン類、チオウレア類、チアジアゾール類、トリアジン類、キノキサリン類、ビスフェノール類等が、また、側鎖二重結合の反応性を利用する公知の架橋剤、例えば、有機過酸化物、硫黄、モルホリンポリスルフィド類、チウラムポリスルフィド類等を例示することができ、チオウレア類、キノキサリン類、トリアジン類であることが好ましく、2−メルカプトイミダゾリン(エチレンチオウレア)、6−メチルキノキサリン−2 ,3−ジチオカーボネート、トリメルカプト−S− トリアジンであることが特に好ましい。(D)架橋剤は一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
ポリアミン類としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p -フェニレンジアミン、クメンジアミン、N,N'−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメート等が挙げられる。
チオウレア類としては、2−メルカプトイミダゾリン、1,3−ジエチルチオウレア、1,3−ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等が挙げられる。
チアジアゾール類としては、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−5−チオベンゾエート等が挙げられる。
トリアジン類としては、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン等が挙げられる。
キノキサリン類としては、2,3−ジメルカプトキノキサリン、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8− ジメチルキノキサリン−2,3−ジチカーボネート等が挙げられる。
ビスフェノール類としてはビスフェノールAF、ビスフェノールS 等が挙げられる。
有機過酸化物としては、tert− ブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
モルホリンポリスルフィド類としては、モルホリンジスルフィドが挙げられる。
チウラムポリスルフィド類としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等が挙げられる。
【0027】
本発明の防振ゴム用組成物において、(D)架橋剤の含有量は、(A)エピクロルヒドリン系重合体100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、0.3〜5重量部であることが特に好ましい。(D)架橋剤の含有量が0.1重量部未満では架橋が不十分となり、10重量部を超えると架橋物が剛直になりすぎて、エピクロルヒドリン系ゴム組成物を架橋して得られる架橋物として通常期待される物性が得られなくなる恐れがある。
【0028】
本発明の防振ゴム用組成物において、架橋剤に応じて公知の(E)受酸剤を使用でき、金属化合物及び/又は無機マイクロポーラス・クリスタルが用いられる。
【0029】
金属化合物は金属の酸化物もしくは水酸化物、または金属の塩であってよい。金属化合物としては、周期表第II族(2族および12族 金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表第IV族(4族および14族)の非鉛系金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等の金属化合物が挙げられる。
【0030】
前記、金属化合物の具体例としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸ナトリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、ステアリン酸錫、塩基性亜リン酸錫、等を挙げることができる。特に好ましい受酸剤としては酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、消石灰、生石灰が挙げられる。
【0031】
無機マイクロポーラス・クリスタルとは、結晶性の多孔体を意味し、無定型の多孔体、例えばシリカゲル、アルミナ等とは明瞭に区別できるものである。このような無機マイクロポーラス・クリスタルの例としては、ゼオライト類、アルミナホスフェート型モレキュラーシーブ、層状ケイ酸塩、ハイドロタロサイト類、チタン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。特に好ましい受酸剤としては、ハイドロタルサイト類が挙げられる。
【0032】
ゼオライト類は、天然ゼオライトの外、A型、X型、Y型の合成ゼオライト、ソーダライト類、天然ないしは合成モルデナイト、ZSM−5などの各種ゼオライト及びこれらの金属置換体であり、これらは単独で用いても2種以上の組み合わせで用いても良い。また金属置換体の金属はナトリウムであることが多い。ゼオライト類としては酸受容能が大きいものが好ましく、A型ゼオライトが好ましい。
【0033】
前記ハイドロタルサイト類は下記一般式(4)
Mg
XZn
YAl
Z(OH)
(2(X+Y)+3Z−2)CO
3・wH
2O (4)
[式中、xとy はそれぞれx+y=1〜10の関係を有する0〜10の実数、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数をそれぞれ示す]で表わされる。
ハイドロタルサイト類の具体例として、Mg
4.5Al
2(OH)
13CO
3・3.5H
2O、Mg
4.5Al
2(OH)
13CO
3、Mg
4Al
2(OH)
12CO
3・3.5H
2O、Mg
5Al
2(OH)
14CO
3・4H
2O、Mg
3Al
2(OH)
10CO
3・1.7H
2O、Mg
3ZnAl
2(OH)
12CO
3・3.5H
2O、Mg
3ZnAl
2(OH)
12CO
3、Mg
4.3Al
2(OH)
12.6CO
3・3.5H
2O等を挙げることができる。
【0034】
本発明の防振ゴム用組成物において、(E)受酸剤の含有量は、(A)エピクロルヒドリン系重合体100重量部に対して、0.2〜50重量部であることが好ましく、1〜20重量部であることが特に好ましい。(E)受酸剤の含有量が0.2重量部未満では架橋が不十分となり、50重量部を超えると架橋物が剛直になりすぎて、エピクロルヒドリン系ゴム組成物を架橋して得られる架橋物として通常期待される物性が得られなくなる恐れがある。
【0035】
本発明の防振ゴム用組成物には、本発明の効果を損なわない限り、上記以外の配合剤、例えば、滑剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、難燃剤、架橋促進剤、架橋遅延剤等を任意に配合できる。さらに本発明の特性が失われない範囲で、当該技術分野で通常行われている、ゴム、樹脂等のブレンドを行うことも可能である。
【0036】
本発明による防振ゴム用組成物を製造するには、従来ポリマー加工の分野において用いられている任意の混合手段、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を用いることができる。
【0037】
本発明の架橋物は、本発明の防振ゴム用組成物を通常100〜200℃ に加熱することで得られる。架橋処理において、加熱を一段階または二段階で行ってよい。加熱を二段階に分けて行う架橋処理が好ましい。架橋時間は温度により異なるが、通常0.5〜300分の間である。架橋成型の方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線或いはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
【0038】
本発明のゴム材料は、静的ばね定数(Ks)と動的ばね定数(Kd)との比で表される静動比(Kd/Ks)が1.40以下であることが好ましく、より好ましくは1.36以下である。また、鉄道車両用防振ゴム、産業機械用防振ゴム、建築用免震ゴム、免震ゴム支承等の防振、免震ゴムに好適に用いることができ、特にエンジンマウント等の耐熱性を必要とする自動車用防振ゴムの構成部材として有用である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの記載に限定されるものではない。
【0040】
物性の測定方法は次の通りである。
・シリカのCTAB吸着比表面積 JISK6430:2008準拠、
CTAB標準液(0.0151mol/L)30mLを、ふるいを通過したシリカ試料1gに添加する。23〜27℃で、35分間、攪拌下で懸濁液を生成させ、シリカ表面にCTABを吸着させる。CTAB溶液からシリカを遠心沈降機、シリンジ、又はメンブランフィルタを用いて分離する。分離された液相をスルホこはく酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム)溶液(0.00389mol/L)を用いて滴定して非吸着のCTABを求める。シリカ表面に対するCTAB1分子当たりの吸着断面積を0.35nm
2としてCTABの吸着量から、比表面積を算出する。
・引張応力 JIS K6251:2010準拠、
・引張強さ JIS K6251:2010準拠、
・伸び JIS K6251:2010準拠、
・硬さ JIS K6253:2012準拠、
・耐熱老化試験前後における変化率 JIS K6257:2010準拠、
・静的ばね定数 6385:2012準拠、
・動的ばね定数 6385:2012準拠。
【0041】
実施例1〜2および比較例1
表1に示す配合で各材料をニーダーおよびオープンロールで混練し、厚さ2〜2.5mmの未架橋ゴムシートを作製した。また、引張特性、耐熱性の評価のために得られた未架橋ゴムシートを170℃で15分プレス架橋し、2mm厚の一次架橋物を得た。さらにこれをエア・オーブンで150℃で2時間加熱し、二次架橋物を得た。得られた二次架橋物を用い、JIS K6251に準じて引張試験を、JIS K6257促進老化試験A−2法に準じて耐熱老化試験を行った。動特性は(株)鷺ノ宮製作所製ダイナミックサーボで測定を行った。測定条件は、静的ばね定数は試験片を0〜3mmに圧縮する際の1〜2mm区間の静的荷重と変位の比で、動的ばね定数は試験片のプリセット圧縮率が5%、ひずみ振幅が±0.1%、周波数が100Hzのときの動荷重と変位の比である。
【0042】
各試験方法より得られた試験結果を表2に示す。各表中M
300は引張試験に定める300%伸び時の引張応力、Tbは引張試験に定める引張強さ、Ebは引張試験に定める伸び、HsはJIS K6253の硬さ試験に定める硬さをそれぞれ意味する。また、ΔTb、ΔEb、ΔHsは其々耐熱老化試験前後における、引張強さの変化率、伸びの変化率、硬度の差(基準は耐熱老化試験前)を示すものである。
【0043】
【表1】
*1 大阪ソーダ株式会社製「エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体:エピクロマーCG−105」
*2 日本シリカ株式会社製「ニップシールER」(CTAB吸着比表面積80m
2/g)
*3 DSL.ジャパン株式会社製「カープレックス#67」(CTAB吸着比表面積140m
2/g)
*4 日本シリカ株式会社製「ニップシールVN3」(CTAB吸着比表面積160m
2/g)
*5 大阪ソーダ株式会社製「シランカップリング剤:カブラス2」化合物名: ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド
【0044】
【表2】
【0045】
本発明に記載された特定のCTAB吸着比表面積であるシリカを用いた組成物を架橋してなる防振ゴム用材料である実施例1、2は低い静動比(Kd/Ks)を示し、本発明に記載された特定のCTAB吸着比表面積ではないシリカを用いた組成物を架橋してなる防振ゴム用材料である比較例1においてはシリカの配合部数が同じであっても静動比(Kd/Ks)の数値が高いことがわかった。
また、実施例1、2に記載された防振ゴム用材料は、低い静動比だけではなく、一般的にゴム材料としては期待される常態物性を有し、耐熱性にも優れていることが示された。