特許第6816715号(P6816715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6816715-光ファイバ心線 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816715
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】光ファイバ心線
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20210107BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20210107BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20210107BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20210107BHJP
   C03C 25/1025 20180101ALI20210107BHJP
【FI】
   G02B6/44 331
   C08F290/06
   C08G18/67
   C08F2/50
   C03C25/1025
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-509068(P2017-509068)
(86)(22)【出願日】2016年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2016082947
(87)【国際公開番号】WO2017082200
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-219389(P2015-219389)
(32)【優先日】2015年11月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩口 矩章
(72)【発明者】
【氏名】飯田 益大
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆志
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−519917(JP,A)
【文献】 特開2014−118319(JP,A)
【文献】 特開2012−136426(JP,A)
【文献】 特開2004−354457(JP,A)
【文献】 特開2001−114535(JP,A)
【文献】 特開平05−271619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B
C03C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア及び該コアを覆うクラッドを有するガラスファイバと、前記ガラスファイバを覆う被覆樹脂層と、を備える光ファイバ心線であって、
前記被覆樹脂層が、プライマリ樹脂層とセカンダリ樹脂層とを有し、
前記プライマリ樹脂層が、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有する光ファイバ被覆用樹脂組成物の硬化物からなり、
前記オリゴマーが、平均分子量3000〜6000のポリオール化合物と、2,4−トリレンジイソシアネート又は2,6−トリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート化合物と、水酸基含有アクリレート化合物との反応生成物であり、
前記光重合開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンと、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとを質量比5:1〜1:1で含み、
前記樹脂組成物中の前記2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンの含有量が1.5〜2.5質量%であり、
30W蛍光灯から30cmの距離で、室温で30日蛍光を照射する前後でのイエローインデックス値の変化が30以下である、光ファイバ心線。
【請求項2】
前記モノマーが、N−ビニル化合物を含む、請求項1に記載の光ファイバ心線。
【請求項3】
前記プライマリ樹脂層のヤング率が、23℃で0.7MPa以下である、請求項1又は2に記載の光ファイバ心線。
【請求項4】
外径が210μm以下であり、前記プライマリ樹脂層のヤング率が23℃で0.5MPa以下であり、前記セカンダリ樹脂層のヤング率が23℃で800MPa以上である、請求項1又は2に記載の光ファイバ心線。
【請求項5】
前記セカンダリ樹脂層のヤング率が23℃で900MPa以上である、請求項4に記載の光ファイバ心線。
【請求項6】
前記セカンダリ樹脂層のヤング率が23℃で1000MPa以上である、請求項4に記載の光ファイバ心線。
【請求項7】
前記セカンダリ樹脂層が、光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンと、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとを質量比1:10〜1:20で含有する樹脂組成物の硬化物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光ファイバ心線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線に関する。
本出願は、2015年11月9日出願の日本出願第2015−219389号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバ心線は、ガラスファイバを保護するための被覆樹脂層を有している。被覆樹脂層は、紫外線硬化型樹脂を硬化することで形成されるが、熱又は光により黄変することがある。これに対して、特許文献1には、黄変性に優れた紫外線硬化型樹脂からなる被覆樹脂層が形成された光ファイバ心線を提供することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−256609号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明の一実施形態による光ファイバ心線は、コア及び該コアを覆うクラッドを有するガラスファイバと、前記ガラスファイバを覆う被覆樹脂層と、を備え、被覆樹脂層が、プライマリ樹脂層とセカンダリ樹脂層とを有し、プライマリ樹脂層が、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有する光ファイバ被覆用樹脂組成物の硬化物からなり、オリゴマーが、平均分子量3000〜6000のポリオール化合物と、2,4−トリレンジイソシアネート又は2,6−トリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート化合物と、水酸基含有アクリレート化合物との反応生成物であり、光重合開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンと、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとを質量比5:1〜1:1で含み、樹脂組成物中の2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンの含有量が1.5〜2.5質量%であり、30W蛍光灯から30cmの距離で、室温で30日蛍光を照射する前後でのイエローインデックス値の変化が30以下である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本実施形態に係る光ファイバ心線の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
被覆樹脂層には、ガラスファイバを保護し、光ファイバの伝送損失(マイクロベントロス)を防ぐために十分な硬化性を有することが求められている。
【0007】
そこで、本開示は、十分な硬化性を有し、耐黄変性及び耐マイクロベントロス特性に優れる被覆樹脂層を備える光ファイバ心線を提供することを目的とする。
【0008】
[本開示の効果]
本開示によれば、十分な硬化性を有し、耐黄変性及び耐マイクロベントロス特性に優れる被覆樹脂層を備える光ファイバ心線を提供することができる。
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の一実施形態による光ファイバ心線は、コア及び該コアを覆うクラッドを有するガラスファイバと、ガラスファイバを覆う被覆樹脂層と、を備える光ファイバ心線であって、被覆樹脂層が、プライマリ樹脂層とセカンダリ樹脂層とを有し、プライマリ樹脂層が、後述する光ファイバ被覆用樹脂組成物の硬化物からなる。
【0010】
本実施形態の光ファイバ心線は、特定の光ファイバ被覆用樹脂組成物を用いて形成されたプライマリ樹脂層を有することで、耐マイクロベントロス特性に優れるものとなる。
【0011】
本実施形態に係る光ファイバ被覆用樹脂組成物は、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有し、オリゴマーが、平均分子量3000〜6000のポリオール化合物と、2,4−トリレンジイソシアネート又は2,6−トリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート化合物と、水酸基含有アクリレート化合物との反応生成物であり、光重合開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとを質量比5:1〜2:1で含み、樹脂組成物中の2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンの含有量が1.5〜2.5質量%である。
【0012】
本実施施形態に係る光ファイバ被覆用樹脂組成物は、オリゴマーとして、特定のオリゴマーを含有し、かつ、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン(以下、「TPO」と表記する。)と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(以下、「HCPK」と表記する。)とを特定の割合で含有することで十分な硬化性を有し、耐マイクロベントロス特性に優れる被覆樹脂層を形成することができる。
【0013】
本実施形態の光ファイバ心線は、30W蛍光灯から30cmの距離で、室温で30日蛍光を照射する前後でのイエローインデックス値の変化が30以下である。
【0014】
上記光ファイバ被覆用樹脂組成物において、モノマーが、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。これにより、被覆樹脂層の硬化性を更に高めることができる。
【0015】
上記プライマリ樹脂層のヤング率は、23℃で0.7MPa以下であってもよい。これにより、耐マイクロベントロス特性を更に向上することができる。
【0016】
光ファイバ心線の外径は210μm以下であり、プライマリ樹脂層のヤング率は23℃で0.5MPa以下であり、セカンダリ樹脂層のヤング率は23℃で800MPa以上であってもよい。光ファイバ心線の外径は210μm以下であり、プライマリ樹脂層のヤング率は23℃で0.5MPa以下であり、セカンダリ樹脂層のヤング率は23℃で900MPa以上であってもよく、1000MPa以上であってもよい。これにより、被覆樹脂層を薄くして光ファイバ心線を細径とした場合も、マイクロベンドロスを抑えて光ファイバ心線の良好な伝送特性を実現することができる。
【0017】
上記セカンダリ樹脂層は、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとを質量比1:10〜1:20で含有する樹脂組成物の硬化物を含んでいてもよい。これにより、セカンダリ樹脂層の硬化性が向上し、耐マイクロベントロス特性により一層優れるものとなる。
【0018】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光ファイバ被覆用樹脂組成物、光ファイバ心線及びその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
(光ファイバ被覆用樹脂組成物)
本実施形態に係る光ファイバ被覆用樹脂組成物は、特定のオリゴマー、モノマー及び特定の光重合開始剤を含有する紫外線硬化性の樹脂組成物である。
【0020】
上記オリゴマーは、平均分子量(Mw)3000〜6000のポリオール化合物と、2,4−トリレンジイソシアネート又は2,6−トリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート化合物と、水酸基含有アクリレート化合物を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートである。
【0021】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオール等が挙げられる。ポリオール化合物のMwは3000〜6000であるが、3000〜5000であることが好ましい。ここで、ポリオール化合物のMwは、例えば、質量分析により測定することができる。
【0022】
ポリイソシアネート化合物は、2,4−トリレンジイソシアネート及び2,6−トリレンジイソシアネートのうち少なくとも一方を含んでいればよく、両方を含んでいてもよい。
【0023】
水酸基含有アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られたものを用いることができる。
【0024】
ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリル酸についても同様である。
【0025】
モノマーとしては、重合性基を1つ有する単官能モノマー、重合性基を2つ以上有する多官能モノマーを用いることができる。モノマーは、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
単官能モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン等のN−ビニル化合物;イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。中でも、N−ビニル化合物が、硬化速度を向上する点で好ましい。
【0027】
多官能モノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノール化合物のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加体ジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール化合物のグリシジルエーテルにジ(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
光重合開始剤は、TPOとHCPKとを質量比5:1〜1:1で含むが、質量比は3:1〜1.5:1であることが好ましい。樹脂組成物中のTPOの含有量は1.5〜2.5質量%である。
【0029】
上記樹脂組成物には、シランカップリング剤、酸化防止剤、光酸発生剤、光増感剤等が含まれていてもよい。
【0030】
(光ファイバ心線)
図1は、本実施形態に係る光ファイバ心線1の一例を示す断面図である。図1に示されるように、本実施形態の光ファイバ心線1は、光伝送体であるガラスファイバ10及び被覆樹脂層20を備えている。
【0031】
ガラスファイバ10は、コア12及びクラッド14を有しており、ガラス製の部材、例えばSiOガラスからなる。ガラスファイバ10は、光ファイバ心線1に導入された光を伝送する。コア12は、例えばガラスファイバ10の中心軸線を含む領域に設けられている。コア12は、純SiOガラス、又は、それにGeO、フッ素元素等を含んでいてもよい。クラッド14は、コア12を囲む領域に設けられている。クラッド14は、コア12の屈折率より低い屈折率を有する。クラッド14は、純SiOガラスからなってもよいし、フッ素元素が添加されたSiOガラスからなってもよい。
【0032】
ガラスファイバ10の径は、通常、125μm程度である。被覆樹脂層20の総厚は60〜70μm程度であるが、それ以下であってもよい。被覆樹脂層の総厚は42.5μm以下が望ましく、32.5μm以上が望ましい。光ファイバ心線1の外径は、通常、245〜265μm程度であるが、245μm以下であってもよい。光ケーブルの多芯化の観点から、光ファイバ心線の外径は210μm以下であってもよい。光ファイバ心線に機械強度を持たせるために被覆樹脂層には一定の厚さが必要であるので、光ファイバ心線の外径は185μm以上が望ましい。光ファイバ心線を識別するためにインク層を有する場合、インク層を除いた光ファイバ心線の外径は、200μm以下が望ましく、180μm以上が望ましい。
【0033】
被覆樹脂層20は、ガラスファイバと接する第1の層であるプライマリ樹脂層22と、該第1の層と接する第2の層であるセカンダリ樹脂層24とを有している。プライマリ樹脂層とセカンダリ樹脂層の厚みは、1:1程度が望ましいが、プライマリ樹脂層の厚みの比率を高めることでマイクロベンド特性を向上し易くなる。
【0034】
プライマリ樹脂層22の厚さは、通常、17.5〜50μm程度であり、20〜40μmであってもよい。セカンダリ樹脂層24の厚さは、通常、15〜40μm程度であり、20〜40μmであってもよい。
【0035】
プライマリ樹脂層22は、上記本実施形態に係る光ファイバ被覆用樹脂組成物を紫外線により硬化させて形成することができる。すなわち、プライマリ樹脂層22は、本実施形態に係る光ファイバ被覆用樹脂組成物の硬化物を含む。
【0036】
セカンダリ樹脂層24は、例えば、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物(ただし、プライマリ樹脂層を形成する樹脂組成物とは異なる。)を硬化させて形成することができる。
【0037】
オリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。オリゴマーは、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び水酸基含有アクリレート化合物を反応させて得られるものが挙げられる。ポリオール化合物としては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオール等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。水酸基含有アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
モノマーとしては、重合性基を1つ有する単官能モノマー、重合性基を2以上有する多官能モノマーを用いることができる。モノマーは、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
単官能モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン等のN−ビニル化合物;イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。中でも、N−ビニル化合物が、硬化速度を向上する点で好ましい。
【0041】
多官能モノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノール化合物のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加体ジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール化合物のグリシジルエーテルにジ(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
光重合開始剤としては、公知のラジカル光重合開始剤の中から適宜選択して使用することができ、例えば、アシルホスフィンオキサイド系開始剤及びアセトフェノン系開始剤が挙げられる。
【0043】
アシルホスフィンオキサイド系開始剤としては、例えば、TPO、2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド及び2,4,4−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィノキサイドが挙げられる。
【0044】
アセトフェノン系開始剤としては、例えば、HCPK、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製、商品名「ダロキュア1173」)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製、商品名「イルガキュア369」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン及び1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンが挙げられる。
【0045】
セカンダリ樹脂層の硬化性を向上する観点から、光開始剤として、TPOとHCPKとを併用することが好ましい。この場合、TPOとHCPKとの質量比は、1:10〜1:20であるとより好ましい。
【0046】
プライマリ樹脂層22のヤング率は、23℃で1.0MPa以下であることが好ましく、0.8MPa以下であることがより好ましく、0.7MPa以下であることが更に好ましく、0.5MPa以下であることが特に好ましい。プライマリ樹脂層22のヤング率の下限値は、特に限定されないが0.1MPa程度である。セカンダリ樹脂層24のヤング率は、23℃で800MPa以上であることが好ましく、900MPa以上又は1000MPa以上であってもよい。セカンダリ樹脂層24のヤング率は、800〜1200MPaであることがより好ましい。
【0047】
ガラスファイバ10に被覆樹脂層20を形成する方法としては、従来、光ファイバ心線の製造に用いられている方法を適用することができる。
【0048】
例えば、プライマリ樹脂層形成用の樹脂組成物をクラッド14の周囲に塗布し、紫外線の照射によって硬化させてプライマリ樹脂層22を形成した後、セカンダリ樹脂層形成用の樹脂組成物をプライマリ樹脂層22の周囲に塗布し、紫外線の照射によって硬化させてセカンダリ樹脂層24を形成する方式(wet−on−dry方式)を用いてもよい。また、プライマリ樹脂層形成用の樹脂組成物をクラッド14の周囲に塗布した後、その周りにセカンダリ樹脂層形成用の樹脂組成物を塗布し、紫外線の照射によって同時に硬化させてプライマリ樹脂層22及びセカンダリ樹脂層24を形成する方式(wet−on−wet方式)を用いてもよい。
【0049】
なお、被覆樹脂層20を構成するセカンダリ樹脂層24の外周面には、光ファイバ心線を識別するためにインク層となる着色層を形成してもよい。セカンダリ樹脂層を着色層としてもよい。
【0050】
着色層は、光ファイバ心線の識別性を向上する観点から、顔料を含有することが好ましい。顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華等の着色顔料、γ−Fe、γ−Feとγ−Feの混晶、CrO、コバルトフェライト、コバルト被着酸化鉄、バリウムフェライト、Fe−Co、Fe−Co−Ni等の磁性粉、MIO、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、トリポリリン酸アルミニウム、亜鉛、アルミナ、ガラス、マイカ等の無機顔料が挙げられる。また、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料を用いることもできる。顔料には、各種表面改質や複合顔料化等の処理が施されていてもよい。
【0051】
(光ファイバテープ心線)
本実施形態の光ファイバ心線を用いて光ファイバテープ心線を作製することができる。光ファイバテープ心線は、並列配置された複数本の光ファイバ心線がテープ材により一体化されたものである。テープ材は、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等によって形成されている。
【実施例】
【0052】
次に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
[光ファイバ被覆用樹脂組成物の作製]
(オリゴマー)
表1に示す平均分子量(Mw)を有するポリプロピレングリコール(PPG)に、2,4−トリレンジイソシアネート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させることで、ウレタンアクリレートを準備した。
【0054】
【表1】
【0055】
(樹脂組成物A1)
オリゴマーとしてウレタンアクリレートaを85質量部、モノマーとしてポリエチレングリコールジアクリレートを3質量部及びノニルフェニルアクリレートを10質量部、光重合開始剤としてTPO(BASF社製、商品名「ルシリンTPO」)を1.50質量部及びHCPK(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)を0.30質量部混合して、樹脂組成物A1を調製した。
【0056】
(樹脂組成物A2)
オリゴマーとしてウレタンアクリレートaを85質量部、モノマーとしてポリエチレングリコールジアクリレートを2.5質量部及びノニルフェニルアクリレートを9質量部、光重合開始剤としてTPOを2.50質量部及びHCPKを1.25質量部混合して、樹脂組成物A2を調製した。
【0057】
(樹脂組成物A3)
オリゴマーをウレタンアクリレートbに変更した以外は樹脂組成物A1と同様にして、樹脂組成物A3を調製した。
【0058】
(樹脂組成物A4)
オリゴマーをウレタンアクリレートcに変更した以外は樹脂組成物A1と同様にして、樹脂組成物A4を調製した。
【0059】
(樹脂組成物A5)
オリゴマーとしてウレタンアクリレートaを85質量部、モノマーとしてポリエチレングリコールジアクリレートを3質量部及びN−ビニルカプロラクタムを2質量部、ノニルフェニル(メタ)アクリレートを8質量部、光重合開始剤としてTPOを1.50質量部及びHCPKを0.30質量部混合して、樹脂組成物A5を調製した。
【0060】
(樹脂組成物A6)
オリゴマーとしてウレタンアクリレートaを85質量部、モノマーとしてポリエチレングリコールジアクリレートを3質量部及びノニルフェニルアクリレートを10質量部、光重合開始剤としてTPOを1.80質量部混合して、樹脂組成物A6を調製した。
【0061】
(樹脂組成物A7)
オリゴマーとしてウレタンアクリレートaを85質量部、モノマーとしてポリエチレングリコールジアクリレートを3質量部及びノニルフェニルアクリレートを8.5質量部、光重合開始剤としてTPOを1.50質量部及びHCPKを2.00質量部混合して、樹脂組成物A7を調製した。
【0062】
(樹脂組成物A8)
オリゴマーをウレタンアクリレートdに変更した以外は樹脂組成物A1と同様にして、樹脂組成物A8を調製した。
【0063】
(樹脂組成物A9)
オリゴマーをウレタンアクリレートeに変更した以外は樹脂組成物A1と同様にして、樹脂組成物A9を調製した。
【0064】
(樹脂組成物B1)
オリゴマーとしてウレタンアクリレートdを60質量部、モノマーとしてアクリル酸イソボルニルを15質量部、トリプロピレングリコールジアクリレートを14質量部及びエポキシ(メタ)アクリレートを7.8質量部、光重合開始剤としてTPOを0.20質量部及びHCPKを3.00質量部混合して、樹脂組成物B1を調製した。
【0065】
(樹脂組成物B2)
オリゴマーとしてウレタンアクリレートdを60質量部、モノマーとしてアクリル酸イソボルニルを15質量部、トリプロピレングリコールジアクリレートを15質量部及びエポキシ(メタ)アクリレートを7.8質量部、光重合開始剤としてTPOを0.20質量部及びHCPKを2.00質量部混合して、樹脂組成物B2を調製した。
【0066】
(樹脂組成物B3)
オリゴマーとしてウレタンアクリレートdを60質量部、モノマーとしてアクリル酸イソボルニルを15質量部、トリプロピレングリコールジアクリレートを15質量部及びエポキシ(メタ)アクリレートを7.9質量部、光重合開始剤としてTPOを0.10質量部及びHCPKを2.00質量部混合して、樹脂組成物B3を調製した。
【0067】
(樹脂組成物B4)
樹脂組成物B1に含まれるウレタンアクリレートの分子量を調整し、ヤング率800MPaのセカンダリ樹脂層を形成するための樹脂組成物B4を調製した。
【0068】
(樹脂組成物B5)
樹脂組成物B1に含まれるウレタンアクリレートの分子量を調整し、ヤング率900MPaのセカンダリ樹脂層を形成するための樹脂組成物B5を調製した。
【0069】
[光ファイバ心線]
(実施例1)
コア及びクラッドから構成される直径125μmのガラスファイバの外周に、樹脂組成物A1を用いて厚さ35μmのプライマリ樹脂層を形成し、更にその外周に樹脂組成物B1を用いて厚さ30μmのセカンダリ樹脂層を形成して、直径245μmの光ファイバ心線を得た。なお、線速は1500m/分とした。
【0070】
(実施例2)
樹脂組成物A2を用いてプライマリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ心線を得た。
【0071】
(実施例3)
樹脂組成物A3を用いてプライマリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ心線を得た。
【0072】
(実施例4)
樹脂組成物A4を用いてプライマリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ心線を得た。
【0073】
(実施例5)
樹脂組成物A5を用いてプライマリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ心線を得た。
【0074】
(実施例6)
樹脂組成物B2を用いてセカンダリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ心線を得た。
【0075】
(実施例7)
樹脂組成物B3を用いてセカンダリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ心線を得た。
【0076】
(実施例8)
コア及びクラッドから構成される直径125μmのガラスファイバの外周に、樹脂組成物A4を用いて厚さ17.5μmのプライマリ樹脂層を形成し、更にその外周に樹脂組成物B4を用いて厚さ17.5μmのセカンダリ樹脂層を形成して、直径195μmの光ファイバ心線を得た。なお、線速は1500m/分とした。
【0077】
(実施例9)
コア及びクラッドから構成される直径125μmのガラスファイバの外周に、樹脂組成物A4を用いて厚さ20μmのプライマリ樹脂層を形成し、更にその外周に樹脂組成物B4を用いて厚さ15μmのセカンダリ樹脂層を形成して、直径195μmの光ファイバ心線を得た。なお、線速は1500m/分とした。
【0078】
(実施例10)
コア及びクラッドから構成される直径125μmのガラスファイバの外周に、樹脂組成物A4を用いて厚さ17.5μmのプライマリ樹脂層を形成し、更にその外周に樹脂組成物B5を用いて厚さ17.5μmのセカンダリ樹脂層を形成して、直径195μmの光ファイバ心線を得た。なお、線速は1500m/分とした。
【0079】
(比較例1)
樹脂組成物A6を用いてプライマリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ心線を得た。
【0080】
(比較例2)
樹脂組成物A7を用いてプライマリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ心線を得た。
【0081】
(比較例3)
樹脂組成物A8を用いてプライマリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ心線を得た。
【0082】
(比較例4)
樹脂組成物A9を用いてプライマリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ心線を得た。
【0083】
[評価]
作製した光ファイバ心線を以下のようにして評価した。評価結果を表2に示す。
【0084】
(硬化性)
プライマリ樹脂層及びセカンダリ樹脂層の硬化性を、未硬化成分を抽出することで確認した。まず、長さ1mの光ファイバ心線からセカンダリ樹脂層を削り取り、削り取ったセカンダリ樹脂層をメチルエチルケトンに60℃で17時間浸し、抽出された抽出物のうち分子量1000以下の物質の量をガスクロマトグラフ質量分析計で求め、これを削り取ったセカンダリ樹脂層の重量で除して、分子量1000を超える成分の割合を求めた。次いで、残ったプライマリ樹脂層からガラスファイバを引き抜いて、プライマリ樹脂層を取り出して、上記セカンダリ樹脂層と同様に操作して、分子量1000を超える成分の割合を求めた。
【0085】
(剥がれ)
長さ10mの光ファイバ心線を、断面V字型の溝に入れ、長さ10mのアクリル樹脂板を光ファイバ心線の上に載置し、更にアクリル樹脂板の上に2kgの重りを1分間載せた。その後、光ファイバ心線を取り出して、顕微鏡で断面を観察して、プライマリ樹脂層のガラスファイバからの剥がれの有無を観察した。
【0086】
(ヤング率)
光ファイバ心線のプライマリ樹脂層の常温(23℃)におけるヤング率をPullout Modulus(POM)法により測定した。光ファイバ心線の2箇所を2つのチャック装置で固定し、2つのチャック装置の間の被覆樹脂層部分を除去した。次いで、一方のチャック装置を固定し、他方のチャック装置を固定したチャック装置の反対方向に緩やかに移動させた。光ファイバ心線における移動させるチャック装置に挟まれている部分の長さをL、チャックの移動量をZ、プライマリ樹脂層の外径をDp、ガラスファイバの外径をDf、プライマリ樹脂層のポアソン比をn、チャック装置の移動時の荷重をWとした場合、下記の式からプライマリ樹脂層のヤング率(POM値)を求めた。
ヤング率(MPa)=((1+n)W/πLZ)×ln(Dp/Df)
なお、セカンダリ樹脂層の23℃におけるヤング率は、光ファイバ心線からガラス部分を抜き取り、被覆樹脂層を引っ張り試験機にかけて測定した。
【0087】
(黄変性)
黄変性は、以下のようにして測定した。まず、長さ5cmの光ファイバ心線40本を幅方向に配列して簾状の光ファイバ板を2枚作製し、光ファイバ心線の長手方向がほぼ直角となるように積ね、イエローインデックス(YI)値を分光式色差計SE−2000(日本電色工業(株)社製)により測定した。次いで、2枚の光ファイバ板のそれぞれに対し、配列面に蛍光灯が照射されるように、30W蛍光灯下30cmの距離に光ファイバ板を配置し、室温で30日間静置した後、光ファイバ板を蛍光灯照射を受けた面が上向きになるように、かつ、光ファイバ心線長手方向がほぼ直角となるように積ね、YI値を測定した。そして、蛍光灯照射前後でのYIの変化量ΔYIを算出し、ΔY1が30以下の場合をOK、ΔY1が30を超える場合をNGと判定した。
【0088】
(マイクロベント特性)
サンドペーパーを巻いた280mm径のボビンに光ファイバ心線を巻き付けた時の1550nm波長における伝導損失の値から、サンドペーパーのない280mm径のボビンに光ファイバ心線を巻き付けた時の1550nm波長における伝導損失の値を引いた差Δα1について、以下の基準で評価した。
Δα1<0.3dB/km:A
0.3≦Δα1<0.5dB/km:B
Δα1>0.5dB/km:C
【0089】
【表2】
【0090】
実施例で作製した光ファイバ心線では、被覆樹脂層が十分な硬化性を有し、かつ、耐黄変性及び耐マイクロベント特性に優れることが確認できた。
【符号の説明】
【0091】
1…光ファイバ心線、10…ガラスファイバ、12…コア、14…クラッド、20…被覆樹脂層、22…プライマリ樹脂層、24…セカンダリ樹脂層。
図1