【発明の効果】
【0007】
例えば、この明細書中で記載される遠距離光学的な器具(「器具」)は、例えば小銃のような、銃器もしくは火器の上に組み付け可能な、もしくは、組み付けられるべき照準望遠鏡である。この器具は、特に、この器具を通して遠距離において観察される対象物の光学的な拡大に利用される。
この目的のために、器具は、対物レンズと接眼レンズとの間に配設された、光学的な、即ち、特に光学的に拡大する複数の要素を備えている。例えばレンズまたはプリズムであり得るこれら光学的な要素は、1つの光学的な通路を形成する。
【0008】
器具は、少なくとも1つのレチクル、即ち目標マーカーを備えている。レチクルは、この器具の、光学的な要素によって形成された光学的な通路内において配設されている。レチクルは、(光学的な通路の内側で)このレチクルの位置において調節可能であり、且つ、これに伴って、所与の射撃状況、即ち、特に所与の目標距離およびこれと関連する着弾予定地に調節可能である。
レチクルの位置調節は、特に水平及び/または垂直の位置、出発位置または基準位置に関しての、特にこのレチクルの水平及び/または垂直の位置調節と理解するべきである。
【0009】
レチクルの位置の調節のために、器具は、このレチクルに所属して設けられた、このレチクルの位置調節のための装置(位置調節装置)を備えている。位置調節装置は、少なくとも1つの、典型的に垂直または水平の、調整方向における、レチクルの位置の調節のために設備されている、少なくとも1つの調整装置を備えている。
調整装置が、1つの調整機構として形成されているか、または、少なくとも1つの調整機構を備えていることは可能である。
【0010】
以下において、器具の重要な構成要素が説明され、これら構成要素は、レチクルの位置の正確な検出を可能にする。
器具の構成要素の説明に基づいて以下で与えられるように、レチクルの位置の検出は、間接的にレチクルと運動連結された、このレチクルの位置調節のための操作者によって操作されるべき、回転可能に支承されている、操作要素の位置の検出を介して行われる。
操作要素が、調節タレットであることは可能である。もちろん、器具が、複数の操作要素もしくは調節タレットを備えることは可能である。その際、第1の調節タレットがレチクルの垂直の位置の位置調節に、および、第2の調節タレットがレチクルの水平の位置の位置調節に利用されることは可能である。レチクルの位置の検出の機能原理は、全ての調節タレットのために同一である。
【0011】
本発明の相応する構成要素の一部に、先ず第一に、磁界可能もしくは磁気的な第1の磁気要素、および、磁界可能もしくは磁気的な第2の磁気要素が数えられる。
第1の磁気要素及び/または第2の磁気要素が、通電可能な、電磁的な要素(電磁石)として、または、永久磁石的な要素(永久磁石)として形成されていることは可能であり、または、少なくとも1つのそのような物を備えていることは可能である。もちろん、同様に第1の磁気要素の1つのグループもしくは前記第2の磁気要素の1つのグループが設けられていることも可能である。
【0012】
第2の磁気要素は、直接的または間接的に、即ち少なくとも1つの構造部材もしくは構造部材群の間挿のもとで、レチクルと運動連結されている。この第2の磁気要素は、それに加えて、第1の磁気要素に対して相対的に運動可能に支承されている。第2の磁気要素の運動可能な支承は、レチクルとの運動連結から与えられる。
第1の磁気要素は、典型的に、リング状もしくはリング形状に形成されており;且つ、この第1の磁気要素が、それ故に、典型的にリング磁石である。第2の磁気要素は、典型的に、ロッド状もしくはロッド形状に形成されており;且つ、この第2の磁気要素が、それ故に、典型的にロッド磁石である。
両方の磁気要素の上記幾何学的形状を出発点として、ロッド形状の第2の磁気要素は、典型的に、この第2の磁気要素の長手方向軸が、(軸線方向に)第1の磁気要素内におけるリング形状の幾何学的形状によって与えられる(中央の)開口部と面一に並ぶように、リング形状の第1の磁気要素に対して相対的に整向されている。その際、両方の磁気要素の幾何学的形状は、更に、ロッド形状の第2の磁気要素が、(軸線方向に)リング形状の第1の磁気要素の(中央の)開口部を通って運動可能であるように、互いに適合されている。
【0013】
それぞれの磁気要素は、所定の磁気的な特性値、即ち、特に所定の磁界を有している。それぞれの磁気的な特性値は、第1の磁気要素と第2の磁気要素との間の相対的位置に依存して、変化可能である。
第1の磁気要素および第2の磁気要素内において、従って、それぞれに、第1の磁気要素と第2の磁気要素との間の相対的位置に依存して変化可能な、磁気的な特性値、即ち、特に変化可能な磁場が形成可能であり、もしくは、形成されている。両方の磁気要素は、それ故に、互いに、ある程度の磁気的な相互作用の状態にある。磁気的な特性値が磁場であるである限りは、この磁場は、典型的に正弦波状もしくは正弦波形状の経過を示す。
第1の磁気要素に対して相対的な第2の磁気要素の運動により生じる第1の磁気要素と第2の磁気要素との間の相対的位置の変化は、以下において明らかなように、それぞれの磁気的な特性値、即ち特にそれぞれの磁場の検出可能な変化という結果となる。
【0014】
本発明の相応する構成要素の一部に、更に検出装置が数えられる。
ハードウェア及び/またはソフトウェア的に実行されるこの検出装置は、第1の磁気要素と第2の磁気要素との間の相対的位置に依存してそれぞれに生じる、この第1の磁気要素またはこの第2の磁気要素内において形成可能であるまたは形成されている磁気的な特性値の変化の検出のために設備されており、この磁気的な特性値が、言及されているように、特にそれぞれの磁気的な場である。
【0015】
検出装置が、第1の磁気要素に所属して設けられ得る、もしくは、所属して設けられた第1の検出要素と、第2の磁気要素に所属して設けられ得る、もしくは、所属して設けられた第2の検出要素とを備えていることは可能である。
第1の検出要素は、第1の磁気要素と第2の磁気要素との間の相対的位置に依存して生じる、第1の磁気要素内において形成可能である、または、形成されている磁気的な特性値の変化の検出のために設備されている。第2の検出要素は、第1の磁気要素と第2の磁気要素との間の相対的位置に依存して生じる、第2の磁気要素内において形成可能である、または、形成されている磁気的な特性値の変化の検出のために設備されている。
それぞれの磁気要素に対する、それぞれの検出要素の対応関係は、典型的に、(空間的に)隣接する配設から与えられ;且つ、第1の検出要素が、従って、典型的に第1の磁気要素に対して隣接し、第2の検出要素が、典型的に第2の磁気要素11に対して隣接して配設されている。検出要素が、例えばホールセンサーの様式における、例えば磁気的なセンサーであることは可能である。
【0016】
本発明の相応する構成要素の一部に、更に検出装置と通信する算出装置が数えられる。
ハードウェア及び/またはソフトウェア的に実行される算出装置は、検出装置によって検出された、第1の磁気要素及び/または第2の磁気要素の磁気的な特性値に基づいて、もしくは、検出装置によって検出された、第1の磁気要素及び/または第2の磁気要素の磁気的な特性値の変化に基づいて、レチクルの位置を表すレチクル位置情報の算出のために設備されている。
レチクル位置情報の算出は、典型的に、このレチクルと運動連結された、操作者によってこのレチクルの位置調節のために操作されるべき、回転可能に支承された操作要素の所定の位置もしくは位置変化に対する、第1の磁気要素及び/または第2の磁気要素の検出装置を用いて検出されたそれぞれの磁気的な特性値、もしくは、第1の磁気要素及び/または第2の磁気要素の検出された磁気的な特性値の場合によっては有り得る変化の、対応関係を介して行われる。
【0017】
算出装置が、検出装置によって検出された、第1の磁気要素の磁気的な特性値またはこの磁気的な特性値の変化に基づいて、角度位置情報を算出するため、および、この角度位置情報をレチクル位置情報の算出内へと算入するために設備されていることは可能である。この角度位置情報は、レチクルと運動連結された、操作者によってこのレチクルの位置調節のために操作されるべき、回転可能に支承された操作要素の、基準値に関連する角度位置(回転面内における)を表す。
第1の磁気要素の検出された磁気的な特性値、もしくは、この磁気的な特性値の変化は、それ故に、操作要素の角度位置(回転面内における)、もしくは、回転位置と関連付けられ、且つ、この操作要素の角度位置もしくは回転位置の算出のために使用される。第1の磁気要素の検出された磁気的な特性値は、それ故に、所与の回転面に関して、この回転面内における操作要素の円周状の位置に対する帰納的推理を許容する。
具体的に、角度位置情報を介して、例えば、−所定の回転面に関して−操作要素が、所定の回転方向における、例えば45°だけの行われた回転の後、例えば、(基準値もしくは基準位置に関して)45°だけ旋回された位置に存在することが提示され得る。
【0018】
更に、算出装置が、検出装置によって検出された第2の磁気要素の磁気的な特性値またはこの磁気的な特性値の変化に基づいて、回転面位置情報を算出するため、および、この回転面位置情報を前記レチクル位置情報の算出内へと算入するために装備されていることは可能である。この回転面位置情報は、レチクルと運動連結された、操作者によってこのレチクルの位置調節のために操作されるべき、回転可能に支承された操作要素の、基準値に関連する回転面位置を表す。
第2の磁気要素の検出された磁気的な特性値、もしくは、この磁気的な特性値の変化は、それ故に、操作要素の回転面もしくは旋回面と関連付けられ、且つ、この操作要素の回転面もしくは旋回面の算出のために使用される。第2の磁気要素の検出された磁気的な特性値は、それ故に、所与の円周状の位置に関して、操作要素の回転面に対する帰納的推理を許容する。
具体的に、回転面位置情報を介して、例えば、−所定の角度位置に関して−操作要素が、例えば、回転軸線を中心としてのこの操作要素の完全な回転の後に、(基準値もしくは基準回転面に関して)到達された、第2の回転面内において存在することが提示され得る。
【0019】
角度位置情報と回転面位置情報との、データ処理的な統合した観点を介して、どの回転面(垂直の位置)において、および、−まさにこの回転面の内側で−どの角度位置(円周状の位置)において、レチクルと運動連結された操作要素が存在するかの、正確な情報が把握可能である。
算出装置によって、レチクルとの操作要素の、所与のおよび周知の運動連結に基づいて、操作要素の位置からレチクルの位置を推論可能である。
【0020】
器具が、更に、検出装置及び/または算出装置と通信する記憶装置を備えていることは可能である。
この記憶装置内において、相関関係情報が保管されている。これら相関関係情報は、レチクルと運動連結された、操作者によってこのレチクルの位置調節のために操作されるべき、回転可能に支承された操作要素の、基準値に関する所定の角度位置との、第1の磁気要素の所定の磁気的な特性値の相関関係、並びに、レチクルと運動連結された、操作者によってこのレチクルの位置調節のために操作されるべき、回転可能に支承された操作要素の所定の回転面位置との、第2の磁気要素の所定の磁気的な特性値の相関関係を表わしている。
相応する相関関係情報は、データ的に、例えば、ルックアップテーブルの様式により存在可能である。
相応する相関関係情報によって、操作要素もしくはレチクルの正確な位置の算出のための、計算の手間暇は、簡略化可能である。同様に、相応する相関関係情報は、磁気要素の相互の(磁気的な)影響が例えば磁気要素の適当な(磁気的な)遮蔽の欠如によって(所望された程度において)排除され得ない場合に、合目的であり得る。これら相関関係情報は、同様にここでも、所定の角度位置もしくは回転面位置との、磁気要素のそれぞれの磁気的な特性値の相関関係を可能にする。
【0021】
器具が、出力装置を備えていることは可能であり、この出力装置が、算出されたレチクル位置情報、並びに、場合によっては更に別の情報の音響的及び/または光学的及び/または触覚的な出力のために設備されている。
音響的な情報の出力のための出力装置が、音響出力装置を、光学的な情報の出力のための出力装置が、例えばOLEDディスプレイの様式におけるディスプレイ装置を、触覚的な情報の出力のための出力装置が、振動装置を備えていることは可能である。光学的な情報の出力のための出力装置に、この出力装置が合目的に器具の光学的な通路内に統合されていることは適用される。従って、使用者は、器具の規定通りの操作の際、即ち光学的な通路の覗き見の際に、実際の、光学的に観察される、もしくは、拡大された対象物と並んで、同様に、出力装置、もしくは、この出力装置を介して光学的に出力された情報も認識可能である。
【0022】
以下で、本発明の記載された構成要素の、合目的な配設可能性を説明する:
【0023】
第2の磁気要素が、レチクルと運動連結された、位置調節装置の構造要素の上または内において配設または形成されていることは可能である。この構造要素は、レチクルの位置調節のための、位置調節装置に所属する調整装置もしくは調整機構である。
【0024】
調整装置もしくは調整機構は、典型的に、レチクルの位置調節のために協働する2つの構成要素を備えている。
【0025】
調整装置の第1の構成要素を、レチクルと運動連結された調整要素が形成することは可能である。前記構造要素は、その際、典型的に、直線状に運動可能に支承された調整要素として形成されている。調整要素が、シャフト状の、特に端面側の(自由な)端部を有する、レチクルに対して運動可能な調整部分を備えていることは可能である。
レチクルの位置調節は、それ故に、場合によっては適当な復帰要素、例えばばねによって形成された復帰力に抗して行われる、レチクルに対する調整部分の運動によって行われ得る。第2の磁気要素が、この調整部分の上または内において配設または形成されていることは可能である。
【0026】
調整装置の第2の構成要素を、既に述べた、操作者によって前記レチクルの位置調節のために操作されるべき、回転可能に支承された操作要素と回転不能に結合された、回転可能に支承された伝達要素が形成可能である。この伝達要素は、伝達要素の回転運動が、特にレチクルに対する、調整要素の直線状の運動に変換可能または変換されるように、調整要素と連結されている。
伝達要素と調整要素との間の連結が、伝達要素側のねじ山要素と調整要素側のねじ山要素との、機械的な協働作用によって形成されていることは可能である。
伝達要素側のねじ山要素は、典型的に、特に、中空円筒形の伝達要素部分の内側周囲の領域内において形成された雌ねじ部分である。調整要素側の相手方ねじ山要素は、典型的に、特に、調整要素部分の外側周囲の領域内において形成された雄ねじ部分である。
【0027】
第1の磁気要素が、位置調節装置の、回転不能に取り付けられた(gelagerten)部分の上または内において配設されていることは可能である。
特に、第1の磁気要素が、位置調節装置の、回転不能に取り付けられたアダプター要素の上または内において配設または形成されていることは可能である。このアダプター要素は、ケーシング部材の器具側の相手方アダプター要素における位置調節装置の固定のために設備されている。この固定は、特に(解離可能な)ねじ結合によって行われる。
【0028】
器具の1つまたは複数の部材から成るように構成されたケーシング部材−このケーシング部材の上または内において、もちろん、この器具の前記で述べられた構成要素の全てが配設または形成され得る−に、少なくとも1つの接続装置が配設または形成されていることは可能であり、この接続装置を介して、この器具と連結可能な、特に電子式の、少なくとも1つの機能構成要素が、この器具に接続可能である。
器具は、従って、特に必要に応じて、例えば目標距離測定装置(「レンジファインダー(Range Finder)」)のような、異なる、外部の機能構成要素と連結され得る。この接続装置が、適当な通信インターフェースを備えていることは可能であり、この通信インターフェースが、器具と機能構成要素との間のデータの、特に双方向性の伝送(送信及び/または受信)のために設備されている。
【0029】
相応する接続装置側の通信インターフェースに依存せずに、器具は、更に、通信装置を備えていることは可能である。
この通信装置は、少なくとも1つの外部の通信相手部に対する、特に無線式もしくは無線通信ベースの、場合によってはデータ的に暗号化された双方向性の、データ、例えば算出されたレチクル位置情報の伝送のために設備されている。この通信装置は、この目的のために、ハードウェア的及び/またはソフトウェア的の適合された、特に無線通信ベースの、双方向式のデータ伝送プロトコルを備えられており、これらデータ伝送プロトコルが、例えば、ブルートゥース、または、WLAN通信を可能にする。
この通信装置が、無線通信ベースの、ブルートゥース接続またはWLAN接続の形成のために設備されていることは可能である。外部の通信相手部が、更に別の装置、携帯電話機、スマートフォン、タブレットPC、ノートブックパソコン、または、イントラネットまたはインターネットのような、ローカルまたはグローバルなデータネットワークであることは可能である。
【0030】
もちろん、同様に通信装置も、器具のケーシング部材の上または内において配設または形成されていることは可能である。
同様に、しかしながら、前記通信装置、または、場合によっては更に別の通信装置が、器具の、前記ケーシング部材とは別個のケーシング部材内において配設または形成されていることは可能である。この場合、前記器具の前記ケーシング部材において、1つの相応する接続装置が配設または形成されており、この接続装置を介して、前記通信装置、または、場合によっては更に別の通信装置が、前記器具に接続可能である。
接続装置の更に上記された原理は、従って、同様に器具に対しての外部の通信装置の必要に応じての接続も可能にする。
【0031】
本発明を、図面内における実施例に基づいて詳しく説明する。