特許第6816871号(P6816871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816871
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】容器外周面の印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/40 20060101AFI20210107BHJP
   B41F 17/22 20060101ALI20210107BHJP
   B41F 17/20 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   B41M1/40 Z
   B41F17/22
   B41F17/20 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-156254(P2016-156254)
(22)【出願日】2016年8月9日
(65)【公開番号】特開2018-24135(P2018-24135A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】592246233
【氏名又は名称】株式会社トーホー
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 浩一
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−533678(JP,A)
【文献】 特開平02−277638(JP,A)
【文献】 特表2006−513063(JP,A)
【文献】 特開2008−105716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/40
B41F 17/20
B41F 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に保持されるテーパーを有する円筒容器素材の外周面に、所定の印刷領域を有する印刷画像を転写して印刷を施す容器外周面の印刷方法であって、
前記印刷領域の前記円筒容器素材の回転方向を第1方向、該第1方向と直行する方向を第2方向とした場合、少なくとも前記印刷画像の一部を前記第2方向で複数に分割し、前記印刷領域上において前記第1方向にずらして配置したことを特徴とする容器外周面の印刷方法。
【請求項2】
請求項1記載の容器外周面の印刷方法であって、前記印刷領域は、前記第2方向に分割され、前記第1方向にずらして配置された第1領域及び第2領域を有することを特徴とする容器外周面の印刷方法。
【請求項3】
請求項2記載の容器外周面の印刷方法であって、前記第1方向において、前記第1領域の先端位置と前記第2領域の先端位置間の距離は、前記容器素材の被印刷領域のテーパー中心位置における外周距離であることを特徴とする容器外周面の印刷方法。
【請求項4】
請求項2乃至請求項3のいずれか記載の容器外周面の印刷方法であって、前記印刷領域は、前記第1領域と前記第2領域の間に、前記第2方向に分割されない第3領域を有することを特徴とする容器外周面の印刷方法。
【請求項5】
請求項1乃至4記載のいずれか記載の容器外周面の印刷方法であって、少なくとも分割される印刷領域は、文字によって構成される品質情報領域であることを特徴とする容器外周面の印刷方法。
【請求項6】
請求項1記載の容器外周面の印刷方法であって、前記印刷画像は、単体の印刷版上に形成され、該印刷版から前記容器の外周に直接印刷されることを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーパーのある容器外周面に文字や画像を印刷する印刷方法及びその方法に用いる印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の外周面に商品名や内容表示などの文字や画像を印刷する際は、成型後、未だ白地の同容器を回転させ、同期して回転する、印刷画像が転写されたブランケットを押し付け、同容器の外周面に印刷を施すことが一般的に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−220688
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、アイスクリーム用のコーン容器やカップ容器などの食料品用容器は、下方の底部から上方の開口部に向かってテーパーが形成されている。このようなテーパーを有する外周面に印刷を行う場合は、テーパー面の上下方向における外周距離の相違から、より柔らかいシリコンなどの可撓性のあるブランケットが使われ、容器外周面への密着性を高めたうえで印刷画像を転写して印刷を行うことが行われている。
【0005】
しかしながら、密着性を高めると、テーパーにより外周径が大きい容器上方でブランケットが広がってしまい、文字がかすれたり、画像の場合であっても濃淡ができて斑が生じてしまう場合がある。この原因は、印刷画像が転写された、弾性のあるブランケットが容器素材のテーパー面に接触すると、荷重中心線から離れた位置では移動距離が大きくなり、容器素材の移動と印刷面の移動との同期が上手く取れずに、ブランケットの変形が大きくなってしまうからである。
【0006】
図5に、従来の印刷版による印刷領域が容器素材の回転方向に対して直交方向において単一である容器の印刷状況を示す写真である。同図に示すように、文字を印刷する場合には、印刷端部Zにおいて不鮮明となり、読みにくくなる場合があった。
【0007】
本発明は、同課題を解決するための構成であって、容器上下方向に対応する印刷領域を複数に分割し、これを分離させて印刷版上に配置することにより、印刷が滲み(にじみ)、または斑(まだら)ができにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の代表的な構成は、回転可能に保持されるテーパーを有する円筒容器素材の外周面に、所定の印刷領域を有する印刷版を接触、回転させて印刷を施す容器外周面の印刷方法であって、前記印刷領域の前記円筒容器素材の回転方向を第1方向、該第1方向と直行する方向を第2方向とした場合、少なくとも前記印刷画像の一部を前記第2方向で複数に分割し、前記印刷領域上において前記第1方向にずらして配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷領域を分割して印刷することで、容器のテーパー状の外周面に印刷を施す場合であっても、滲みや斑を生じることなく鮮明な印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に用いられる、容器素材に印刷を施す装置の構造図である。
図2】本実施形態に用いられる、印刷作業に使用される容器素材の説明図である。
図3】印刷画像の構成図である。
図4】本実施形態の印刷方法による、印刷済容器を示す写真である。
図5】従来例の印刷方法による、印刷済容器を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について以下に説明する。本実施形態は、アイスクリーム用カップ容器の印刷工程において本件発明の方法を使用した印刷工程である。
【0012】
図1に容器素材に印刷を施す装置の構造図を示す。同図に示すように、本実施形態の印刷は、後述するように印刷画像12が形成される転写機1と、転輪器1の外周縁11に対抗するように配置される容器保持転輪2によってなされる。
【0013】
転写機1は、その外周縁11には、ゴム版である複数のブランケット13が取り付けられ、回転軸14を中心に所定速度で回転する。ブランケット13が所定位置に至ると、色毎に別れた、複数の画像形成機15A乃至15Fの印刷版15A1乃至15F1によってブランケット13上に印刷画像12が形成される。各ブランケット13上に形成されるこの印刷画像12は、転写機1の回転方向Rの先端側から第1印刷領域12A、第3印刷領域12C、第2印刷領域12Bによって構成される。
【0014】
容器保持転輪2は、回転軸21aを中心に回動する回転体21と、回転体21の同外周に等間隔に配置され、容器素材3を内側から保持する複数の容器ホルダ22を有し、この容器ホルダ22自体が回動軸23によって独立して自由回転する構造となっている。
【0015】
この容器保持転輪2は容器ホルダ22の配置される間隔毎に間欠的に回動する。容器ホルダ22が所定の回動位置に到達して所定時間停止すると、図示しない供給により容器素材3が容器ホルダ22の外側にはめ込まれ、容器素材供給が行われる。
【0016】
そして、容器保持転輪2がさらに所定角度回動すると容器ホルダ22にはめ込まれた容器素材3の外周面3cが転輪器1の外周縁11に対向する。容器保持転輪2が停止した状態で、容器素材3が転輪器1のブランケット13に接触すると、その回転に連れ回し、容器ホルダ22の回動軸23を中心として所定角度回転する。この間に、転写機1のブランケット13と容器素材3の外周面とが互いに圧接し、第1印刷領域12A、第3印刷領域12C、第2印刷領域12Bの順で印刷画像12が容器素材3の外周面3cに転写され、印刷を完了する。
【0017】
容器素材3の外周面3cへの印刷が終了するタイミングで、容器保持転輪2がさらに間欠回動し、所定位置に至ると、図示しない排出手段によって容器が容器保持転輪2から外へ排出される。この後、印刷済みの容器は、それぞれ不図示のUV乾燥機により印刷を乾かし、集積スタッカーでスタックして梱包し、食品工場へ出荷される。
【0018】
図2は、印刷作業に使用される容器素材を説明する。同図(A)は印刷前の容器素材3の側面図であり、同図(B)は印刷済容器3Pの斜視図である。
【0019】
図2(A)に示すように、容器素材3は、スチロール樹脂等の合成樹脂製の無地の素材であって、開口部3aの直径が底部3bの直径より大きいテーパー形状を有する。開口部3aは、その縁部が外側に折り返されて円弧状となっており、それより下方の外周面3cに、転写機1の外周面11が当接して印刷が施される被印刷領域3dが形成される。
【0020】
図2(B)に示すように、印刷済容器3Pの被印刷領域3dには、印刷版12の第1領域12A、第2領域12B、第3領域12Cのそれぞれによって文字情報3bA、3bBと、画像情報3bCとが印刷される。ここで、文字情報とは、食品の消費期限、生産者情報、さらに容器に詰められる使用食材のアレルギー情報などであり、また、画像情報とは商品名などの商品ラベルである。
【0021】
図3に印刷版12による印刷画像の構成図を説明する。同図(A)は本実施形態の印刷画像の構成であり、同図(B)及び(C)は他のバリエーションの説明図である。
【0022】
図3(A)に示すように、本実施形態の印刷画像12は、転写機1の回転方向Rに平行な方向を第1方向(X)、同方向に直交する方向を第2方向(Y)とした場合、第2方向(Y)で容器素材3のテーパー面3b上の被印刷領域3cを2つに分割した第1領域12A、第2領域12Bとを第1方向(X)で重ならないように配置する。そして、これら第1領域12A、第2領域12Bの間に、第2方向(Y)に分割しない第3領域12Cが配置する。
【0023】
一方、回転方向Rと平行する第1方向(X)において、第1領域12Aの上流側の先端位置12X、第2領域12Bの上流側の先端位置12Yとの距離Vは、容器素材3の被印刷領域3cのテーパー中心位置における周縁距離に設定することで、第1領域12A、第2領域12Bの印刷が第1方向(X)でずれてしまうことはない。なお、第1領域12Aと第2領域12Bの第2方向(Y)における位置関係は、図3(A)と異なり、第2領域12Bを上に、第1領域12Aを下に配置することでもよい。
【0024】
図3(B)は第2方向(Y)を2つに分割した第1領域16A、第2領域16Bのみからなる印刷画像16の例であり、図3(C)は第2方向(Y)を3つに分割した第1領域17A、第2領域17B、第3領域17Cからなる印刷画像17を示す。
【0025】
なお、これらのバリエーションの場合でも、第1方向(X)において、各領域の先端位置16Xと16Y、17Xと17Y、17Yと17Zとの距離は、同様に容器素材3の印刷領域3cのテーパー中心位置における外周距離Vに設定することが望ましい。
【0026】
図4は本実施形態により印刷された容器本体の写真である。同図は、カップ容器ではなく、アイスリーム用のコーン容器であるが、上記図1乃至図3で説明した方法と同様な印刷方法で行っている。
【0027】
同図において、文字情報3bA、3bBが印刷されているが、それぞれ、分割された第1領域、第2領域によって印刷されたものである。従来例を示す図5と比較すれば明確なように、本実施形態によって印刷された容器は、特に文字情報に関して、鮮明になっていることがわかる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の印刷版を使用した印刷方法によれば、容器素材外周のテーパー面に印刷する場合であっても、滲み(にじみ)や斑(まだら)を生じさせることなく、鮮明な印刷を施すことができる。特に、印刷対象が文字情報である場合には、判読不明な、または不正確な情報となってしまうことを防止することができる。
【0029】
特に、分割した第1領域と第2領域の先端位置間の距離を、容器素材のテーパー中心位置における外周距離に設定することで、第1領域と第2領域との端部が揃い、両者が一体となった印刷を施すことができる。
【0030】
なお、図3に示す、印刷版のバリエーションは、これらに限られることなく、第2方向に分割された複数の領域及び分割されない領域を多用に組み合わせることができる。さらに、本実施形態はアイスクリームなどの食品容器について説明したが、これに限ることなく、テーパー状の外周を有する容器であれば、医薬品や塗料など多様な容器の印刷に応用することができる。
【0031】
本実施形態は、転写機上に形成された印刷版の印刷画像を、被印刷対象に転写して印刷する工程を説明したが、本発明は、印刷画像が刻印された印刷版そのものを、直接、被印刷対象に印刷する工程にも応用することができる。また、容器素材は、スチロール系樹脂のほか、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂製のものに対しても本実施形態の印刷方法を使用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 転写機
11 外周面
12 印刷画像
12A、12B、12C 印刷領域
13 ブランケット
15A乃至F 画像形成装置
15A1乃至15F1 印刷版
16 印刷画像
16A、16B 印刷領域
17 印刷画像
17A、17B、17C 印刷領域
2 容器保持転輪
21 回転体
22 容器ホルダ
23 回転軸
3 容器素材
3a 開口部
3b 底部
3c 外周面(テーパー面)
3P 印刷済容器
V 被印刷領域のテーパー中心位置における容器素材の外周距離
図1
図2
図3
図4
図5