特許第6816916号(P6816916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6816916透明導電積層体の製造方法及び透明導電積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816916
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】透明導電積層体の製造方法及び透明導電積層体
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20210107BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210107BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20210107BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210107BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20210107BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20210107BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   H01B13/00 503B
   B32B27/00 Z
   H01B5/14 A
   H05B33/14 A
   H05B33/26 Z
   H05B33/10
   H01L31/04 260
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-223264(P2016-223264)
(22)【出願日】2016年11月16日
(65)【公開番号】特開2018-81816(P2018-81816A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】原 務
(72)【発明者】
【氏名】武藤 豪志
(72)【発明者】
【氏名】永元 公市
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−070792(JP,A)
【文献】 特開2010−129379(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/157987(WO,A1)
【文献】 特開2014−216175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
B32B 27/00
H01B 5/14
H01L 31/0224
H01L 51/50
H05B 33/10
H05B 33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写基材の表面に開口部を有する補助電極層少なくとも透明樹脂層A及び透明樹脂層Bを積層した後、該転写基材を剥離することにより、転写基材の表面の平滑性が転写された、透明導電積層体の製造方法であって、次の(1)〜(3)の工程を含み、前記転写基材の表面自由エネルギーが10以上40mJ/m未満であ前記透明樹脂層Aが無機微粒子を含む、透明導電積層体の製造方法。
(1)転写基材の表面に補助電極層を形成する工程、
(2)該補助電極層の前記開口部の一部に前記透明樹脂層Aを形成し次いで該開口部を埋める前記透明樹脂層Bを形成する工程、
(3)該転写基材を剥離し、該転写基材の表面の平滑性を該補助電極層と該透明樹脂層とからなる面に転写する工程
【請求項2】
前記透明樹脂層上に、さらに透明ガスバリア層を積層させる工程を含む、請求項1に記載の透明導電積層体の製造方法。
【請求項3】
前記補助電極層を形成する工程は、前記転写基材の表面に、金属微粒子及び溶媒を含有する補助電極層形成用導電性組成物を印刷法により形成する工程であり、該転写基材の表面における、前記溶媒の接触角が35度以上70度以下である、請求項1又は2に記載の透明導電積層体の製造方法。
【請求項4】
前記補助電極層の線幅が0.1〜40μmであり、厚さが0.1〜10μmである、請求項1〜のいずれか1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
【請求項5】
前記転写基材の表面のJIS−B0601−2001で規定される算術平均粗さRaが2nm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
【請求項6】
前記転写基材の表面のJIS−B0601−2001で規定される最大断面高さRtが150nm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
【請求項7】
前記転写基材の表面の平滑性が転写された前記補助電極層の表面のJIS−B0601−2001で規定される算術平均粗さRaが20nm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
【請求項8】
前記転写基材の表面の平滑性が転写された前記透明樹脂層の表面のJIS−B0601−2001で規定される算術平均粗さRaが2nm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
【請求項9】
水蒸気透過率が、40℃×90%RHにおいて1.0g・m−2・day−1以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助電極層を有する透明導電積層体の製造方法及び透明導電積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンテッドエレクトロニクスの発展により、今後普及が期待される有機薄膜太陽電池や有機EL照明等をはじめとする、主として有機材料を用いた電子デバイスの大面積化、加えてフレキシブル化が進められている。これら電子デバイスの大面積化にともない、それらに利用される透明導電性フィルムの透明導電層に関して低抵抗化が求められており、この要求に対し、デバイス動作(集電又は電圧印加)時に透明導電層が一般に高い電気抵抗率を有する事から生じる、光電変換効率や発光効率等の電子デバイスの性能低下を抑制するために、透明導電層に補助電極層として、透明導電層より低い抵抗値を有する金属細線や金属ペーストのパターン層を設けた構造が用いられている。
【0003】
前記構造の補助電極層の形成においては、コスト、生産性の観点から、印刷法でパターン形成が行われることがある。しかしながら、補助電極層上に透明導電層を積層した場合、補助電極層の厚さに応じた段差が生じてしまい、該段差はさらに駆動層の導電部位にも影響を及ぼし、短絡等による不良の発生の要因となってしまっている。
この問題に対し、特許文献1では、転写基材上に補助電極層を形成し、次いで、補助電極層上及び開口部に透明樹脂層を形成し、さらに透明樹脂基材を形成した後、得られた積層体の転写基材部を剥離することにより、補助電極層と透明樹脂層とからなる面の平滑性を向上させる方法が開示されている。
また、印刷法でパターン形成を行う場合、例えば、スクリーン印刷法では、所望の寸法に設計された補助電極パターン形成用スクリーン版を介して行うため、形成面の表面状態(表面粗さ、濡れ性等)によって、補助電極層の線幅が幅広となり、精度の良いパターン形成ができず、透過率が大幅に低下してしまうという問題が生じることがある。
このような印刷法で細線パターンを形成する方法として、特許文献2では、基材上の面の表面エネルギーを40mJ/m以上に制御する等により、基材上に金、銀の微粒子等の導電性材料を含む線幅の一様なライン状液体を形成し、特定の乾燥方法により、導電体の細線パターンを形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−216175号公報
【特許文献2】特開2014−120353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、補助電極層をスクリーン印刷法で形成した場合、補助電極層の線幅が設計値に対し、幅広の線幅となっており、このため、得られた透明導電積層体の全光線透過率の低下がみられる。
また、特許文献2では、剥離性を付与した表面への精度の高いパターン形成については検討がなされていない。
【0006】
本発明は、上記問題を鑑み、寸法精度の高い補助電極層を形成することで、光学特性に優れ、かつ表面平滑性を有する透明導電積層体を、簡便で効率よく形成できる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、転写基材の表面自由エネルギーを特定の範囲にし、補助電極層を形成することにより、寸法精度の高い補助電極層が得られることで、光学特性に優れ、かつ表面平滑性を有する透明導電積層体を、簡便で効率よく製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(12)を提供するものである。
[1]転写基材の表面に補助電極層及び少なくとも1種の透明樹脂層を積層した後、該転写基材を剥離することにより、転写基材の表面の平滑性が転写された、透明導電積層体の製造方法であって、次の(1)〜(3)の工程を含み、前記転写基材の表面自由エネルギーが10以上40mJ/m未満である、透明導電積層体の製造方法。
(1)転写基材の表面に補助電極層を形成する工程、
(2)該補助電極層の開口部、又は、補助電極層上及び開口部に透明樹脂層を形成する工程、
(3)該転写基材を剥離し、該転写基材の表面の平滑性を該補助電極層と該透明樹脂層とからなる面に転写する工程
[2]前記透明樹脂層を形成する工程が、前記開口部の一部に耐熱性を有する透明樹脂層Aを形成し、次いで前記開口部を埋める透明樹脂層Bとを形成する工程を含む、上記[1]に記載の透明導電積層体の製造方法。
[3]前記透明樹脂層上に、さらに透明ガスバリア層を積層させる工程を含む、上記[1]又は[2]に記載の透明導電積層体の製造方法。
[4]前記補助電極層を形成する工程は、前記転写基材の表面に、金属微粒子及び溶媒を含有する補助電極層形成用導電性組成物を印刷法により形成する工程であり、該転写基材の表面における、前記溶媒の接触角が35度以上70度以下である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
[5]前記補助電極層の線幅が0.1〜40μmであり、厚さが0.1〜10μmである、上記[1]〜[4]のいずれかに1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
[6]前記転写基材の表面のJIS−B0601−2001で規定される算術平均粗さRaが2nm以下である、上記[1]〜[5]のいずれかに1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
[7]前記転写用基材の表面のJIS−B0601−2001で規定される最大断面高さRtが150nm以下である、上記[1]〜[6]のいずれかに1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
[8]前記転写基材の表面の平滑性が転写された前記補助電極層の表面のJIS−B0601−2001で規定される算術平均粗さRaが20nm以下である、上記[1]〜[7]のいずれかに1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
[9]前記転写基材の表面の平滑性が転写された前記透明樹脂層の表面のJIS−B0601−2001で規定される算術平均粗さRaが2nm以下である、上記[1]〜[7]のいずれかに1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
[10]水蒸気透過率が、40℃×90%RHにおいて1.0g・m−2・day−1以下である、上記[1]〜[9]のいずれかに1項に記載の透明導電積層体の製造方法。
[11]上記[1]〜[10]のいずれかに1項に記載の製造方法により製造された透明導電積層体。
[12]上記[11]に記載の透明導電積層体を有する太陽電池素子又は有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、寸法精度の高い補助電極層を形成することで、光学特性に優れ、かつ表面平滑性を有する透明導電積層体を、簡便で効率よく形成できる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の製造方法に従った工程の一例を工程順に示す説明図である。
図2】本発明の製造方法に従った工程の他の一例を工程順に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[透明導電積層体の製造方法]
本発明の透明導電積層体の製造方法は、転写基材の表面に補助電極層及び少なくとも1種の透明樹脂層を積層した後、該転写基材を剥離することにより、転写基材の表面の平滑性が転写された、透明導電積層体の製造方法であって、次の(1)〜(3)の工程を含み、前記転写基材の表面自由エネルギーが10以上40mJ/m未満である、透明導電積層体の製造方法である。
(1)転写基材の表面に補助電極層を形成する工程、
(2)該補助電極層の開口部、又は、補助電極層上及び開口部に透明樹脂層を形成する工程、
(3)該転写基材を剥離し、該転写基材の表面の平滑性を該補助電極層と該透明樹脂層とからなる面に転写する工程
本発明の製造方法について、図を用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明の製造方法に従った工程の一例を工程順に示す説明図を示し、(a)は基材上に剥離層を形成した後の転写基材の断面図であり、(b)は転写基材上に補助電極層を形成した後の断面図であり、(c)は補助電極層上及び開口部に透明樹脂層を形成した後の断面図であり、(d)は転写基材を剥離し、転写基材面の平滑性を補助電極層と透明樹脂層とからなる面に転写した後の断面図であり、(e)は透明導電積層体の断面図である。
同様に、図2は、本発明の製造方法に従った工程の他の一例を工程順に示す説明図を示し、(a)、(b)は図1の(a)、(b)と同じ断面図であり、(c)は耐熱性を有する透明樹脂層Aを補助電極層の開口部に形成した後の断面図であり、(d)はさらに、補助電極層と透明樹脂層Aとに透明樹脂層Bを形成した後の断面図であり、(e)は透明樹脂層Bに透明バリア層を有する積層体を形成する工程を示す断面図であり、(f)は透明バリア層を有する積層体を積層させた後の断面図であり、(g)は(f)で得られた積層体から、転写基材を剥離し、転写基材の表面の平滑性を補助電極層と透明樹脂層Aとからなる面側に転写した後の断面図である。
【0012】
(転写基材形成工程)
転写基材形成工程は、転写基材の支持体となる基材上に、剥離層を形成する工程であり、例えば、図1(a)においては、基材2a上に剥離層2bを形成することにより転写基材2を形成する工程である。
本発明に用いる転写基材は、支持体としての基材と該基材の面に形成した剥離層を含む。
【0013】
(基材)
基材としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ酢酸ビニルフィルム等を挙げることができるが、これらの中でポリエステルフィルムが好ましく、特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。基材の厚さは、10〜500μmが好ましく、より好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは30〜100μmである。この範囲であれば、補助電極層を形成する転写基材の支持体となる基材フィルムとして、機械的強度が確保できるため好ましい。
【0014】
(剥離層)
本発明に用いる剥離層は、シリコーン樹脂組成物又は紫外線硬化型剥離組成物を硬化した層(以下、「硬化層」ということがある。)とすることが好ましい。
【0015】
シリコーン樹脂組成物としては、特に制限されないが、光増感剤を含む付加反応型シリコーン樹脂組成物が挙げられる。付加反応型シリコーン樹脂組成物は、付加反応型シリコーン樹脂と架橋剤からなる主剤に、触媒(例えば白金系触媒)と光増感剤を加えたものであり、必要に応じて、付加反応抑制剤、剥離調整剤、密着向上剤等を加えてもよい。
付加反応型シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えば、熱硬化付加反応型シリコーン樹脂剥離剤として慣用されているものを用いることができる。この付加反応型シリコーン樹脂としては、例えば分子中に、官能基としてアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの中から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。上記の分子中に官能基としてアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの好ましいものとしては、ビニル基を官能基とするポリジメチルシロキサン、ヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0016】
架橋剤としては、例えば一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノシロキサン、具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等が挙げられる。架橋剤の使用量は、付加反応型シリコーン樹脂100質量部に対し、0.1〜100重量部が好ましく、より好ましくは0.3〜50質量部の範囲で選定される。
硬化膜の剥離特性を制御するシリコーン樹脂としては、例えば分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基及び水素原子を有しないポリオルガノシロキサンが挙げられ、具体的には、トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサン、ジメチルフェニルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0017】
触媒としては、通常、白金系化合物が用いられる。この白金系化合物の例としては、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、ロジウム触媒等が挙げられる。
【0018】
光増感剤としては、特に制限はなく、例えば、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、α−ジケトン類、α−ジケトンジアルキルアセタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
【0019】
付加反応抑制剤は、シリコーン樹脂組成物の室温における保存安定性を付与するために用いられる成分である。付加反応抑制剤としては、特に制限はなく、様々なものを使用することができる。例えば、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、テトラビニルシロキサン環状体、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
剥離調整剤としては特に制限はなく、様々なものを使用することができる。例えば,ケイ素原子に結合したアルケニル基及び水素原子を有しないポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
密着向上剤としては、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
紫外線硬化型剥離組成物としては、特に制限されないが、公知の紫外線硬化型剥離組成物でよく、市販品を用いることが出来る。具体的には、シリコーン系、フッ素系、アルキルペンダント系、長鎖アルキル系の紫外線硬化型剥離性組成物を挙げることができる。必要に応じて、上述した付加反応抑制剤、剥離調整剤、密着向上剤等を加えてもよい。
また、紫外線硬化型剥離性組成物はケイ素を表面に偏析させることが好ましい。
【0021】
本発明に用いる剥離層は、最表層にケイ素が2atom%以上存在していることが好ましく、5atom%以上存在していることがより好ましく、8atom%以上存在していることがさらに好ましい。通常、ケイ素の存在量の上限は30atom%である。
最表層にケイ素が2atom%以上存在していることで、好適に転写基材から剥離することができる。
【0022】
硬化層の形成方法としては、シリコーン樹脂組成物、又は紫外線硬化型剥離組成物と、所望により用いられる上述した添加剤成分とからなる塗工液を、前記の基材上に、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法等により塗工することができる。この際、塗工液の粘度調整の目的で、適当な有機溶剤を加えてもよい。有機溶剤としては、特に制限は無く、様々なものを用いることができる。例えばトルエン、ヘキサン等の炭化水素化合物をはじめ、酢酸エチル、メチルエチルケトン及び、これらの混合物等が用いられる。
【0023】
転写基材の表面における、金属微粒子を含む導電性組成物の溶媒の接触角が35度以上70度以下であることが好ましく、より好ましくは40度以上65度以下である。接触角がこの範囲にあると、所望のパターンを有するスクリーン版を介して、後述する導電性組成物からなるパターンが精度良く印刷できる。本発明でいう上記溶媒とは、主溶媒であり、導電性組成物中に溶媒が1種のみの場合は、該溶媒を意味し、導電性組成物中に2種以上溶媒を含む場合は、含有量(体積%)がもっとも多い溶媒を意味する。
本発明でいう接触角とは、具体的には、転写基材上に、溶媒の液滴を落としてインク液滴端部の接線と転写基材面とがなす角度(θ)を測定する静的接触角であり、例えば、協和界面科学社製DM−701を用いて、23℃、50%RH環境下で、測定しようとする液滴(2μl程度)をシリンジから転写基材上に乗せ、液滴端部の接線と転写基材面とがなす角度(θ)を測定することで求めることができる。
【0024】
本発明において、転写基材の表面における表面自由エネルギーは、10以上40mJ/m未満である。表面自由エネルギーが、10mJ/m未満であると、使用する導電性組成物の表面への濡れ性が低下し、転写基材の表面への密着性が低下し、パターンが表面に安定して形成されないおそれがある。表面自由エネルギーが、40mJ/m以上であると、使用する導電性組成物の表面への濡れ性が増大し、パターンの端部が広がり、線幅が増加してしまう。
転写基材の表面自由エネルギーは、11〜38mJ/mが好ましく、より好ましく12〜35mJ/m、さらに好ましくは13〜30mJ/mである。
表面自由エネルギーが、上記の範囲にあると、所定のパターンを有するスクリーン版を介して、導電性組成物からなるパターンが精度良く印刷できる。
【0025】
本発明において、転写基材の表面自由エネルギーは、以下のように算出した。
溶媒として水、ジヨードメタン、1−ブロモナフタレンを用い、転写基材表面に対する接触角を前述した方法で測定し、以下の北崎・畑理論により、表面自由エネルギーを算出した。
まず、表面自由エネルギーが、分散成分γ、極性成分γ、水素結合成分γからなると仮定する。この時、表面自由エネルギーγは、下記式(1)で表される。
γ=γ+γ+γ (1)
また、液体の表面自由エネルギーγ、固体の表面自由エネルギーγ,接触角θの関係は、下記式(2)で表される。
γ(1+cosθ)=2(γγ1/2+2(γγ1/2+2(γγ1/2
(2)
ここで、γの成分が既知の液体を3種類用いてそれぞれの接触角θを測定し、γ、γ,γに関する連立方程式を解くことによりγが求められる。
【0026】
前記転写基材の表面のJIS−B0601−2001で規定される算術平均粗さRaは、2nm以下が好ましく、より好ましく1.5nm以下、さらに好ましくは1.2nm以下である。算術平均粗さRaが上記の範囲にあると、転写基材を剥離した後の、補助電極層と透明樹脂層とからなる面のそれぞれの面の算術平均粗さRaを後述する範囲に抑制することができる。
また、前記転写用基材の表面のJIS−B0601−2001で規定される最大断面高さRtは、150nm以下が好ましく、より好ましく100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。最大断面高さRtが上記の範囲にあると、転写基材を剥離した後の、補助電極層と透明樹脂層とからなる面のそれぞれの面の最大断面高さRtを後述する範囲に抑制することができる。
【0027】
(補助電極層形成工程)
補助電極層形成工程は、転写基材上に、導電性物質からなるパターンを形成する工程であり、例えば、図1(b)においては、転写基材2上に導電性物質を所定のパターンに成膜し、補助電極層3を形成する工程である。
【0028】
補助電極層の形成方法としては、転写基材上に、パターンが形成されていない補助電極層を設けた後、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法、または、スクリーン印刷法、ロータリースクリーン印刷法、スクリーンオフセット印刷法、インクジェット法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法等により直接補助電極層のパターンを形成する方法等が挙げられる。
パターンが形成されていない補助電極層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法(物理気相成長法)、もしくは熱CVD法、ALD法(原子層蒸着法)等のCVD法(化学気相成長法)等のドライプロセス、又はディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティングや電着等のウェットプロセス、銀塩法等が挙げられ、補助電極層の材料に応じて適宜選択される。
本発明では、補助電極層を形成する工程は、転写基材の表面に、金属微粒子及び溶媒を含有する補助電極層形成用の導電性組成物を印刷法により形成する工程であることが好ましい。直接補助電極層のパターンを簡便に形成できる観点から、前述したインクジェット法、スクリーン印刷法により形成することが好ましく、低コストでかつ簡便で効率よく形成できる観点からスクリーン印刷法で形成することがより好ましい。
【0029】
本発明において、補助電極層のパターンを形成するための材料は、特に制限されないが、補助電極層のパターンを形成する場合は、導電性微粒子を含む導電性組成物(以下、「導電ペースト」ということがある。)を用いることができる。
【0030】
導電ペーストとしては、通常、バインダーを含む溶媒中、又は溶媒中に、金属微粒子、カーボン微粒子、酸化ルテニウム微粒子等の導電性微粒子を分散させたものを用いることができる。この導電ペーストを印刷し、硬化することにより、補助電極層が得られる。
【0031】
バインダーを使用する場合は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、合成ゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0032】
上記溶媒としては、選択した印刷手法への適性があれば、特に限定されるものではないが、例えば、セロソルブ系溶剤(エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等)、カルビトール系溶剤(エチルカルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等)、高級脂肪酸エステル系(ジオクチルフタレート、ジブチルコハク酸イソブチルエステル、アジピン酸イソブチルエステル、セパシン酸ジブチル、セパシン酸ジ−2エチルヘキシル等)、高級アルコール系溶剤(メチルヘキサノール、オレイルアルコール、トリメチルヘキサノール、トリメチルブタノール、テトラメチルノナノール、2−ペンチルノナノール、2−ノニールノナノール、2−ヘキシルデカノール等)、高級脂肪酸系(カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸等)、芳香族炭化水素系(ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ジイソプロピルナフタレン等)が挙げられる。
【0033】
上記金属微粒子の材質としては、高い導電性を得る観点から、銀、銅、金等が好ましく、価格の面からは銀、銅、ニッケル、鉄、コバルト等が好ましい。また、耐食性や耐薬品性の面からは、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム等が好ましい。カーボン微粒子は、導電性の面では金属微粒子に比べて劣っているが、低価格であり、耐食性及び耐薬品性に優れている。また、酸化ルテニウム(RuO)微粒子は、カーボン微粒子に比べて高価ではあるが、優れた耐食性を有する導電性物質であるため、補助電極層として使用できる。
【0034】
補助電極層は、単層であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造としては、同種の材料からなる層を積層した多層構造であってもよく、少なくとも2種類以上の材料からなる層を積層した多層構造であってもよい。
多層構造としては、異種の材料からなる層を積層した2層構造であることがより好ましい。このような多層構造としては、例えば、最初に銀のパターン層を形成させ、その上から銅のパターン層を形成させると、銀の高導電性を保持しながら耐食性が改善されるため好ましい。
【0035】
本発明の補助電極層のパターンとしては、特に限定されず、所望の電子デバイス等の要求に適宜合致するよう設計されるが、格子状、ハニカム状、櫛歯状、帯状(ストライプ状)、直線状、曲線状、波線状(サイン曲線等)、多角形状の網目状、円形状の網目状、楕円状の網目状、不定形等が挙げられる。これらの中でも、格子状、ハニカム状、櫛歯状のものが好ましい。
【0036】
補助電極層の線幅は、0.1〜40μmが好ましく、より好ましくは1〜35μm、さらに好ましくは5〜30μmである。線幅がこの範囲にあれば、開口率が広く、全光線透過率が向上し好ましい。
補助電極層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5nm〜10μm、さらに好ましくは1〜5μmである。
補助電極層の線幅及び厚さがこの範囲にあると、安定した低抵抗の透明導電積層体が得られるため、好ましい。
補助電極層のパターンの開口部(補助電極層が形成されてない部分)の開口率としては、透明性の観点から、80%以上100%未満であることが好ましく、より好ましくは90%以上100%未満であり、さらに好ましくは95%以上100%未満である。なお、開口率とは、開口部を含む補助電極層のパターンが形成されている全領域の面積に対する、開口部の総面積の割合である。
【0037】
転写基材の表面の平滑性が転写された前記補助電極層の表面のJIS−B0601−2001で規定される算術平均粗さRaは、20nm以下が好ましく、より好ましくは16nm以下である。算術平均粗さRaが上記範囲にあると、例えば、本発明の透明導電積層体に透明導電層を積層した場合、透明導電層の積層後の透明導電層の表面粗さを好ましい範囲に抑え、デバイス内における電極間での短絡によるデバイス特性の不良の発生、及びデバイス寿命の低下を抑制することができる。
【0038】
(透明樹脂層形成工程)
透明樹脂層形成工程は、補助電極層上及び開口部に透明樹脂層を積層する工程であり、例えば、図1(c)においては、透明樹脂を含む透明樹脂組成物を、補助電極層3からなるパターン上及び開口部4上に成膜して、透明樹脂層5を形成する工程である。
また、前記透明樹脂層を形成する工程が、前記開口部の一部に耐熱性を有する透明樹脂層A(以下、「耐熱層」ということがある。)を形成し、次いで前記開口部を埋める透明樹脂層Bとを形成する工程を含むことが好ましい。例えば、図2(c)においては、透明樹脂及び無機微粒子を含む透明樹脂組成物を開口部14に成膜し、耐熱性を有する透明樹脂層A15aを形成する工程であり、(d)においては、透明樹脂を含む透明樹脂組成物を、補助電極層13からなるパターン上、及び開口部14の透明樹脂層A15a上に成膜して、透明樹脂層B15bを形成する工程である。
【0039】
透明樹脂組成物は、特に制限はなく、様々なものを用いることができる。透明樹脂層としての透明樹脂層Bを形成する場合は、例えば、エネルギー線硬化型樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂等が挙げられる。ここで、エネルギー線硬化型樹脂とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線等を照射することにより、架橋、硬化する重合性化合物を意味する。
通常、透明樹脂層Bは、上記透明樹脂組成物から形成される。
【0040】
エネルギー線硬化型化合物としては、ラジカル重合型とカチオン重合型があり、例えば、光重合性プレポリマーと光重合性モノマーの両方、またはいずれか一方を挙げることができる。
【0041】
ラジカル重合型の光重合性プレポリマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等が挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。さらに、ポリオールアクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。これらの光重合性プレポリマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
一方、カチオン重合型の光重合性プレポリマーとしては、エポキシ系樹脂が通常使用される。このエポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール樹脂やノボラック樹脂等の多価フェノール類をエピクロルヒドリン等でエポキシ化した化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物等で酸化して得られた化合物等が挙げられる。
【0043】
また、ラジカル重合型の光重合性モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレートが挙げられる。これらの光重合性モノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記ラジカル重合型の光重合性プレポリマーと併用してもよい。なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味し、他の類似用語も同様である。
【0044】
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、特に制限されるものではなく、様々な樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、エネルギー線硬化型樹脂と併用してもよい。
【0045】
熱可塑性樹脂としては、導電層との密着性や耐湿熱性の点等から、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリサルフォン系樹脂等が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物等のアルコール成分の中から選ばれる少なくとも1種と、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びその酸無水物等のカルボン酸成分の中から選ばれる少なくとも1種とを縮重合させて得られた重合体等を挙げることができる。
【0047】
ポリウレタン樹脂としては、水酸基含有化合物とポリイソシアナート化合物の反応物、例えば、ハードセグメントとして短鎖グリコールや短鎖エーテルとイソシアナート化合物との反応で得られるポリウレタンと、ソフトセグメントとして長鎖グリコールや長鎖エーテルとイソシアナート化合物の反応で得られるポリウレタンの直鎖状のマルチブロックコポリマーを挙げることができる。また、ウレタンプレポリマーとポリイソシアナート化合物の反応物(硬化物)であってもよい。
【0048】
ポリエステルウレタン系樹脂としては、前記のアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られた、末端にヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールに、各種のポリイソシアナート化合物を反応させて得られた重合体等を挙げることができる。
【0049】
さらに、アクリル系樹脂としては、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中から選ばれる少なくとも1種の単量体の重合体、又は前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと他の共重合可能な単量体との共重合体等を挙げることができる。
【0050】
エネルギー線硬化型化合物がラジカル重合型の場合は、光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル等を用いることができる。また、エネルギー線硬化型化合物がカチオン重合型の場合は、例えば、芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオン等のオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート等の陰イオンとからなる化合物が挙げられる。光重合開始剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、前記エネルギー線硬化型化合物100質量部に対して、通常0.2〜10質量部の範囲で選ばれる。
【0051】
本発明の透明導電積層体の製造において、前記開口部の一部に耐熱性を有する透明樹脂層A形成工程を含むことが好ましい。透明樹脂層A形成工程は、前述した通りである。
【0052】
本発明に用いる透明樹脂層Aは、無機微粒子を含む透明樹脂組成物から形成される。具体的には、以下のエネルギー線硬化型組成物を硬化してなるものである。
エネルギー線硬化型組成物は、(i)エネルギー線硬化型化合物、(ii)無機微粒子、(iii)光重合開始剤を含む。該エネルギー線感応型組成物に対して、エネルギー線を照射することで、架橋、硬化し、耐熱層を得ることができる。
また、該組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を含むことができる。
【0053】
(i)エネルギー線硬化型化合物
エネルギー線硬化型化合物としては、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーが好ましく、多官能性(メタ)アクリレート系モノマーがより好ましい。上記、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、前述した透明樹脂層Bで挙げたものと同様のものが適宜使用できる。
【0054】
(ii)無機微粒子
本発明に用いる無機微粒子は、特に制限されないが、透明導電積層体の全光線透過率の低下等、該透明導電積層体の基本的な特性を損なわない範囲で選択され、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、炭酸カルシウム微粒子が挙げられる。該無機微粒子の中でも、(i)エネルギー線硬化型化合物と強固な結合を形成する観点から、該エネルギー線硬化型化合物と反応することができる重合性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子が好ましい。
重合性不飽和基を有する有機化合物で表面修飾されたシリカ微粒子は、シリカ微粒子の表面のシラノール基に、該シラノール基と反応し得る官能基を有する重合性不飽和基含有有機化合物を反応させることにより、得ることができる。
なお、本発明において、無機微粒子の表面を修飾する重合性不飽和基を有する有機化合物は、(ii)無機微粒子の構成要素として含まれるものであり、上記の(i)エネルギー線硬化型化合物とは区別される。
【0055】
前記シラノール基と反応し得る官能基を有する重合性不飽和基含有有機化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物等が好ましい。
【0056】
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rはハロゲン原子又は下記式で示される基である。)
【0057】
【化2】
【0058】
このような有機化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸2−イソシアナートエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2,3−イミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル酸及びその誘導体が挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
前記無機微粒子を含む透明樹脂層A全体積中の該無機微粒子の含有量は、好ましくは20〜70体積%、より好ましくは30〜65体積%、さらに好ましくは30〜60体積%である。無機微粒子の含有量がこの範囲であると、例えば、透明導電層の積層時の熱履歴による透明導電層の表面粗さの増加の抑制、樹脂硬化時の硬化収縮由来の、補助電極層、耐熱層、透明樹脂層Bから構成される複合層の補助電極層と耐熱層とからなる表面の表面粗さの増加が抑制できる。無機微粒子としては、前述したとおり、シリカ微粒子が好ましい。
【0060】
透明樹脂層Aの厚さは、耐熱層形成に用いる材料、補助電極層の材料、厚さ等により適宜選択されるが、通常100nm〜100μm、好ましくは500nm〜50μm、さらに好ましくは0.8〜5μmである。透明樹脂層Aの厚さがこの範囲であると、例えば、透明導電層積層時の、透明導電積層体由来の透明導電層の表面粗さの増加を抑制することができる。
【0061】
透明樹脂層の形成方法としては、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、ドクターブレード、マイヤーバーコーティング等が挙げられる。
エネルギー放射線を照射する方法としては、例えば、紫外線や電子線等が挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等で得られ、光量は、通常100〜500mJ/cmであり、一方電子線は、電子線加速器等によって得られ、照射量は、通常150〜350kVである。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、光重合開始剤を添加することなく、硬化膜を得ることができる。
【0062】
透明樹脂組成物の粘度は、100〜10000mPa・secが好ましく、より好ましくは100〜500mPa・secである。
透明樹脂層Bの厚さは、10〜200μmが好ましく、より好ましくは20〜50μmである。
また、透明樹脂層の乾燥収縮率は、1%以下が好ましく、より好ましくは0.2%以下である。さらに、透明樹脂層の硬化収縮率は、1%以下が好ましく、より好ましくは0.2%以下である。
透明樹脂層の乾燥収縮率は、乾燥前後の透明樹脂層の比重をJIS K7112に記載の水中置換法により測定し、次式により算出する。
[(乾燥後の比重−乾燥前の比重)/乾燥後の比重]×100(%)
透明樹脂層の硬化収縮率は、硬化前後の透明樹脂層の比重をJIS K7112に記載の水中置換法により測定し、次式により算出する。
[(硬化後の比重−硬化前の比重)/硬化後の比重]×100(%)
【0063】
転写基材の表面の平滑性が転写された透明樹脂層の表面のJIS−B0601−2001で規定される算術平均粗さRaは2nm以下であることが好ましく、より好ましくは1.8nm以下、さらに好ましくは1.5nm以下である。算術平均粗さRaが上記範囲にあると、例えば、本発明の透明導電積層体に透明導電層を積層した場合、透明導電層の積層後の透明導電層の表面粗さを好ましい範囲に抑え、デバイス内における電極間での短絡によるデバイス特性の不良の発生、及びデバイス寿命の低下を抑制することができる。
補助電極層と透明樹脂層とからなる面と、転写基材との剥離力は、20〜300mN/50mm以下が好ましく、より好ましくは50〜100mN/50mmである。
剥離力の測定は、JIS−Z0237に準拠し、透明導電性積層体を巾50mm、長さ200mmに裁断し、引っ張り試験機を用いて、透明導電性積層体を固定し、転写基材を25℃50%RHの環境下で、0.3m/minの速度で180°方向に剥がし、その時の剥離に要する力(剥離力)を測定する。
【0064】
(透明ガスバリア層積層工程)
本発明の透明導電積層体の製造において、さらに透明ガスバリア層積層工程を含むことが好ましい。透明ガスバリア層積層工程は、透明樹脂層上に透明ガスバリア層を積層する工程であり、例えば、図2(e)においては、予め準備した透明ガスバリア積層体16を補助電極層、透明樹脂層A及び透明樹脂層Bから構成される複合層15上に形成する工程である。
前記透明ガスバリア積層体16は、透明樹脂基材16a上にプライマー層16bを形成した後、透明ガスバリア層16cを積層する工程を経ることにより形成される。
【0065】
透明ガスバリア層は、透明樹脂基材17aを透過した大気中の水蒸気を抑制し、結果として、複合層15への水蒸気透過を防ぐ機能を有する。本発明においては、前記透明樹脂基材上に積層した時に、該透明ガスバリア層を有さない該透明樹脂基材面側からの40℃、90%RHの高湿条件下における水蒸気透過率が1.0g・m−2・day−1以下であることが好ましく、より好ましくは1.0×10−2g・m−2・day−1以下であり、さらに好ましくは5.0×10−4g・m−2・day−1以下であり、特に好ましくは1.0×10−4g・m−2・day−1以下である。水蒸気透過率がこのような範囲にあり、かつ複合層の水蒸気透過率を所定の値に維持することにより、例えば、本発明の透明導電積層体に、透明導電層を積層し、透明導電性フィルムとした時に、透明導電層が水分により劣化することなく、表面抵抗率を維持できる。また、電子デバイスの透光性電極として用いた時に、それらデバイス内部の活性層等の経時的な劣化を抑制することができ、デバイスの長寿命化に繋げることができる。
【0066】
透明ガスバリア層としては、無機化合物の蒸着膜や金属の蒸着膜等の無機蒸着膜;高
分子化合物を含む層(以下、「高分子層」ということがある。)にイオン注入等の改質処理を施して得られる層;等が挙げられる。
無機化合物の蒸着膜の原料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化チタン等の無機窒化物;無機炭化物;無機硫化物;酸化窒化珪素等の無機酸化窒化物;無機酸化炭化物;無機窒化炭化物;無機酸化窒化炭化物等が挙げられる。
金属の蒸着膜の原料としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、及びスズ等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、ガスバリア性の観点から、無機酸化物、無機窒化物又は金属を原料とする無機蒸着膜が好ましく、さらに、透明性の観点から、無機酸化物又は無機窒化物を原料とする無機蒸着膜が好ましい。また、無機化合物の蒸着膜、またはポリシラザン系化合物を含む層に改質処理を施して形成された酸素、窒素、珪素を主構成原子として有する層からなる酸窒化珪素層が、層間密着性、ガスバリア性、及び耐折り曲げ性を有する観点から、好ましく用いられる。
高分子層に用いる高分子化合物としては、ポリオルガノシロキサン、ポリシラザン系化合物等の珪素含有高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフエニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。これらの高分子化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
これらの中でも、より優れたガスバリア性をことから高分子化合物としては、珪素含有高分子化合物が好ましい。珪素含有高分子化合物としては、ポリシラザン系化合物、ポリカルボシラン系化合物、ポリシラン系化合物、及びポリオルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、優れたガスバリア性を有する透明ガスバリア層を形成できる観点から、ポリシラザン系化合物が好ましい。
【0067】
透明ガスバリア層は、例えば、ポリシラザン化合物含有層に、プラズマイオン注入処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、熱処理等を施すことにより形成できる。プラズマイオン注入処理により注入されるイオンとしては、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトン等が挙げられる。
プラズマイオン注入処理の具体的な処理方法としては、外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ポリシラザン化合物含有層に対して注入する方法、または、外部電界を用いることなく、ガスバリア層形成用材料からなる層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ポリシラザン化合物含有層に注入する方法が挙げられる。
プラズマ処理は、ポリシラザン化合物含有層をプラズマ中に晒して、含ケイ素ポリマーを含有する層を改質する方法である。例えば、特開2012−106421号公報に記載の方法に従って、プラズマ処理を行うことができる。紫外線照射処理は、ポリシラザン化合物含有層に紫外線を照射して含ケイ素ポリマーを含有する層を改質する方法である。例えば、特開2013−226757号公報に記載の方法に従って、紫外線改質処理を行うことができる。
これらの中でも、ポリシラザン化合物含有層の表面を荒らすことなく、その内部まで効率よく改質し、よりガスバリア性に優れるガスバリア層を形成できることから、イオン注入処理が好ましい。
【0068】
透明ガスバリア層の積層方法としては、特に制限されないが、製造が簡便にできることから、ラミネート法が好ましい。
【0069】
透明ガスバリア層は、1層であっても2層以上積層されていてもよい。また、2層以上積層される場合は、それらが同じであっても異なっていてもよい。
透明ガスバリア層の膜厚は、20nm〜50μmであることが好ましく、より好ましくは、30nm〜1μm、さらに好ましくは40〜500nmである。透明ガスバリア層の膜厚がこの範囲にあると、優れたガスバリア性や密着性が得られるとともに、柔軟性と、被膜強度とを両立させることができる。
【0070】
本発明に用いる透明樹脂基材は、特に限定されず、使用するデバイス等に応じて、適宜選択すればよく、例えば、柔軟性及び可視光域で高い透過率を有するものであれば特に限定されず、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等が挙げられる。これらの中で、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート等が挙げられる。また、シクロオレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。このような透明樹脂フィルム基材の中で、コスト、耐熱性の観点から、二軸延伸されたポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。
透明樹脂基材の厚みは、10〜500μmであることが好ましく、より好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは25〜100μmである。この範囲であれば、透明樹脂基材としての機械強度、透明性が確保できる。
【0071】
透明樹脂基材の上に透明ガスバリア層を形成する場合、プライマー層としては、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ゴム系等のプライマー層を適宜用いることができる。プライマー層の厚さは、通常、0.1〜10μmであり、好ましくは0.5〜5μmである。プライマー層の厚さが、上記の範囲にあると、透明樹脂基材の凹凸をカバーすることで、透明樹脂基材由来の欠陥を減少させ、透明ガスバリア層のガスバリア性能が向上すると共に、透明樹脂基材と透明ガスバリア層間の密着力が向上し、後述する転写基材面の表面平滑性転写工程において、転写基材側から円滑に剥離することができる。
【0072】
(転写基材面の表面平滑性転写工程)
転写基材面の転写工程は、転写基材と、補助電極層と透明樹脂層とからなる面を剥離する工程であり、例えば、図1(d)において、転写基材2と、補助電極層3と透明樹脂層5とからなる面を、剥離することにより、転写基材面の平滑性を補助電極層3と透明樹脂層5とからなる面に転写して、表面粗さが小さく、段差の小さい、補助電極層と透明樹脂層からなる面を形成する工程である。また、例えば、図2(g)においては、転写基材12と、補助電極層13と透明樹脂層15aとからなる面を、剥離することにより、転写基材12の平滑性を補助電極層13と透明樹脂層15aとからなる面に転写して、表面粗さが小さく、段差の小さい、補助電極層13と透明樹脂層15aとからなる面を形成する工程である。
転写基材と、補助電極層と透明樹脂層からなる面の剥離方法は、特に制限はなく、公知の方法で行うことができる。
【0073】
[透明導電積層体]
本発明の製造方法に従って製造された透明導電積層体は、寸法精度の高い補助電極層を形成することで、光学特性に優れ、かつ表面平滑性を有する透明導電積層体である。例えば、透明導電積層体上に透明導電層を積層し、透明導電性積層体とした場合に、表面抵抗率を低減でき、しかも、駆動層の電極等との電気的な短絡の発生がない。従って、大面積化を必要とする太陽電池素子又は有機エレクトロルミネッセンス素子等に適用することが好ましい。
【0074】
透明導電積層体の厚みは、10〜300μmであることが好ましく、より好ましくは10〜200μmであり、さらに好ましくは20〜150μmである。この範囲であれば、透明導電積層体上に透明導電層を積層し、透明導電性積層体とした場合に、フレキシブル性を有しつつ、高い透過率、低い表面抵抗率を付与することができる。
透明導電積層体の開口部の全光線透過率(T)は、80〜96%であることが好ましく、より好ましくは90〜96%であり、さらに好ましくは92〜96%である。
補助電極を含む透明導電積層体の全光線透過率(T)は、80〜95%であることが好ましく、より好ましくは83〜95%であり、さらに好ましくは85〜95%である。
透明導電積層体の開口部の全光線透過率(T)に対する、補助電極を含む透明導電積層体の全光線透過率(T)の比T/Tは、表面抵抗率の増加等により電気特性を損なわなければ、1に近づくほど良く、0.93〜0.99であることが好ましく、より好ましくは0.96〜0.99であり、さらに好ましくは0.97〜0.99である。
なお、補助電極を同一パターンで印刷した場合、補助電極の線幅が細くなるほど1に近づくことを意味している。
【実施例】
【0075】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0076】
実施例、比較例で作製した、転写基材、補助電極層、透明樹脂層及び透明導電積層体等の評価は、以下の方法で行った。
(a)接触角
自動接触角計(協和界面科学社製、型名:DM−701)を用いて、23℃、50%RH環境下で、転写基材の表面の接触角を測定した。
(b)表面自由エネルギー
前述した北崎・畑理論により、表面自由エネルギーを算出した。
(c)補助電極の線幅
デジタル顕微鏡(キーエンス社製、型名:VHX−5000)を用い、得られた像から求めた。
(d)補助電極の厚さ
触針式表面形状測定装置(Veeco社製、製品名:Dektak150)を用い、補助電極の厚さを測定した。
(e)元素組成
転写基材の表面の剥離層に関し、XPS(アルバックファイ社製、製品名:Quantum2000)を用い、C1s,O1s,Si2pに由来するピークを測定し、最表層の元素組成を算出した。
(f)表面粗さ(算術平均粗さ,最大断面高さ)
光干渉式表面粗さ計(Veeco社製、製品名:Wyko NT1100)を用い、透明導電積層体の転写面の補助電極部(取出し電極部)と透明樹脂部のそれぞれの、視野90μm×120μmにおける、算術平均粗さRaをJIS−B0601−2001に従って測定した。同様に、転写基材について、測定範囲90μm×120μmにおける、算術平均粗さRa、及び最大断面高さRtをJIS−B0601−2001に従って測定した。
なお、転写基材の表面の算術平均粗さRa,最大断面高さRtは、補助電極形成前の測定値とした。
(g)全光線透過率
濁度計(日本電色工業社製、製品名:HAZE METER NDH5000)を用い、JIS−K−7631−1に従って、補助電極を含む透明導電積層体の全光線透過率(T)を測定した。さらに、補助電極を含まない透明導電積層体の開口部の全光線透過率(T)を測定した。ここで、T/Tは、表面抵抗率の増加等により電気特性を損なわなければ、1に近づくほど良く、また、補助電極を同一パターンで印刷した場合、補助電極の線幅が細くなるほど1に近づくことを意味している。
(h)水蒸気透過率(WVTR)の評価
水蒸気透過率計(Mocon社製、装置名:AQUATRAN)を用い、JIS−K7129に従い、40℃90%RHにおける透明ガスバリア層を有する透明導電性積層体の水蒸気透過率(g・m−2・day−1)を測定した。
【0077】
(実施例1)
(1)透明導電積層体の作製
金属細線からなる補助電極を印刷するための金属ペースト(導電性組成物)として、主溶媒がブチルカルビトールである銀ペースト(三ツ星ベルト社製、商品名:低温焼成導電ペーストMDot(登録商標)、銀固形分:40体積%)、及び線幅30μm、ピッチ1,200μmのハニカム構造を有するスクリーン印刷版を用いて、スクリーン印刷機(マイクロ・テック社製、型名:MT−320TV)にて転写基材上に補助電極を印刷により形成した。印刷後、70℃で1分間の仮乾燥を行なったのち、コンベア式熱風/IR焼成炉にて、150℃で10分間焼成を行った。得られた補助電極の線幅、厚さの評価結果を表1に示す。
ここで用いた転写基材は、PET(東洋紡社製、商品名:コスモシャイン(登録商標)A4100、厚さ:100μm)の未処理面に紫外線硬化型剥離剤(日立化成社製,型番:TA37−400A)を乾燥後の厚さが50nmとなるよう、バーコート法により均一に塗工し、高圧水銀灯を用いで照射(積算光量:200mJ/cm)して得られたシリコーン系剥離層を有するものとした。前記転写基材の表面における、前記銀ペーストの主溶媒であるブチルカルビトールの接触角、表面自由エネルギー、算術平均粗さRa、最大断面高さRt、及びシリコーン系剥離層の最表層における元素組成の評価結果を表1に示す。
補助電極を印刷した転写基材に、無機微粒子を含む紫外線硬化系アクリル樹脂組成物A(JSR社製、オプスターZ7530)をバーコートにて塗布し、70℃で2分間乾燥して透明樹脂層A(耐熱層)を得た。この耐熱層上に紫外線硬化系アクリル樹脂組成物B(東亜合成社製、UVX−6125)をバーコートにて塗布し、透明樹脂層Bを設け、転写基材/補助電極/耐熱層/透明樹脂層の積層体を得た。この積層体と後述する透明ガスバリア層を有する透明樹脂基材の、該透明樹脂基材と接する面とは反対側の透明ガスバリア層側の面とをラミネートし、透明ガスバリア層を有する透明樹脂基材側から紫外線照射をし、透明樹脂層Aとしての耐熱層及び透明樹脂層Bを硬化させた(硬化後の耐熱層の厚さ:1μm;硬化後の透明樹脂層Bの厚さ:30μm)。最後に、透明樹脂層Aと補助電極とからなる面側から転写基材を剥離することで、透明樹脂基材上に、透明ガスバリア層を介し、開口部を有する補助電極層、透明樹脂層Aとしての耐熱層、及び透明樹脂層Bとからなる複合層が積層された透明導電積層体を作製した。
得られた透明導電積層体の全光線透過率T、補助電極を含まない透明導電積層体の全光線透過率(T)に対する全光線透過率Tの比(T/T)、補助電極層及び透明樹脂層の算術平均粗さRa、及び水蒸気透過率(WVTR)の評価結果を表1に示す。
【0078】
(2)透明ガスバリア層の作製
透明樹脂基材(帝人デュポンフィルム社製、PENQ65HWA、厚さ:100μm)に、下記のプライマー層形成用溶液をバーコート法により塗布し、70℃で、1分間加熱乾燥した後、紫外線照射ライン(Fusion UV Systems JAPAN社製、高圧水銀灯;積算光量100mJ/cm、ピーク強度1.466W、ライン速度20m/分、パス回数2回)を用いて紫外線照射を行い、厚さ1μmのプライマー層を形成した。得られたプライマー層上に、ペルヒドロポリシラザン含有液(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、AZNL110A−20)をスピンコート法により塗布し、得られた塗膜を120℃で2分間加熱することにより、厚さ200nmのペルヒドロポリシラザン層を形成した。さらに、得られたペルヒドロポリシラザン層に、下記の条件により、アルゴン(Ar)をプラズマイオン注入し、プラズマイオン注入したペルヒドロポリシラザン層(以下、「無機層A」ということがある。)を形成した。
次いで、無機層A上に、ペルヒドロポリシラザン層の厚さを150nmとしたこと以外は無機層Aと同様に酸窒化珪素層(無機層B)を形成し、透明ガスバリア層を積層した。
さらに、このガスバリア層面にアクリル基含有シランカップリング剤(信越シリコーン社製、KBM−5103)を5質量%含むCHOH/HO(比率90質量%/10質量%)溶液を1500rpm、30秒の条件でスピンコートし、80℃30秒乾燥させた後、23℃50%RH環境下で24時間保管した。
(プライマー層形成用溶液)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学社製、商品名:A−DPH)20質量部をメチルイソブチルケトン100質量部に溶解させた後、光重合性開始剤(BASF社製、商品名:Irgacure127)を、固形分に対して3質量%となるように添加して、プライマー層形成用溶液を調製した。
プラズマイオン注入は、下記の装置を用い、以下の注入条件で行った。
(プラズマイオン注入装置)
RF電源:型番号「RF56000」、日本電子社製
高電圧パルス電源:「PV−3−HSHV−0835」、栗田製作所社製
〈プラズマイオン注入条件〉
・プラズマ生成ガス:Ar
・ガス流量:100sccm
・Duty比:0.5%
・繰り返し周波数:1000Hz
・印加電圧:−8kV
・RF電源:周波数 13.56MHz、印加電力 1000 W
・チャンバー内圧:0.2Pa
・パルス幅:5sec
・処理時間(イオン注入時間):200sec
・搬送速度:0.2m/min
【0079】
(実施例2)
PET(東洋紡社製、商品名:コスモシャイン(登録商標)A4100、厚さ:100μm)の未処理面に、下記の塗工液を、乾燥後の厚さが100nmとなるようバーコート法により均一に塗工し、50℃の熱風循環式乾燥機にて20秒間加熱処理した後、ただちにフュージョンHバルブ240W/cm、一灯取付のコンベア式紫外線照射機(熱線カットフィルターはハンディフュージョンタイプを使用)を用い、コンベアスピード40m/分の条件で紫外線照射し、シリコーン樹脂組成物を硬化させ、シリコーン系剥離層を形成することにより、転写基材を作製した。
実施例1において、転写基材を上記とした以外は、実施例1と同様に、透明導電積層体を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(塗工液)
ビニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンと架橋剤(メチルハイドロジェンポリシロキサン)からなる主剤を主成分とした付加反応型シリコーン樹脂剥離剤(東レ・ダウコーニング社製、SRX−211)100質量部に、白金系触媒(東レ・ダウコーニング社製,SRX−212)を2質量部加えた付加反応型シリコーン樹脂組成物の、主剤100質量部当たり、光増感材のアセトフェノン1質量部を添加し、トルエンを主成分とする有機溶剤で希釈して、固形分濃度1質量%の塗工液を調製した。
【0080】
(比較例1)
実施例1において、転写基材として、PET(東洋紡社製、商品名:コスモシャイン(登録商標)A4100、厚さ:100μm)の未処理面をそのまま用いた以外は、実施例1と同様に、透明導電積層体を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(比較例2)
実施例1において、転写基材として、PET(東洋紡社製、商品名:コスモシャイン(登録商標)A4100、厚さ:100μm)の未処理面ではなく、易接着層が形成されている面としたこと以外は、実施例1と同様に、透明導電積層体を作製し、同様の評価を行った。結果を表1に示す。ここで、補助電極のスクリーン印刷面を易接着層としたため、転写基材を剥離することが出来ず、結果的に透明導電積層体を形成するに至らなかった。
【0082】
【表1】
【0083】
表1から明らかなように、転写基材の表面自由エネルギーを特定の範囲にすることで、補助電極層の線幅精度が向上し、線幅精度の悪い比較例1に比べ、全光線透過率が高く維持できることがわかった。また、補助電極層と透明樹脂層からなる面のそれぞれの表面粗さ(算術平均粗さRa)を低く抑えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の透明導電積層体を用いると、補助電極層の線幅精度が優れ、透明導電層の形成側の補助電極層及び透明樹脂層の表面が極めて平滑であるため、例えば、透明導電層を形成し透明導電性積層体とした場合、全光線透過率が高く維持され、表面抵抗率が低く、デバイスの駆動層等との電極間での電気的短絡が抑制される。
従って、低コストで、大面積化を必要とする太陽電池素子や有機エレクトロルミネッセンス素子等のデバイスに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0085】
1:透明導電積層体
2:転写基材
2a:基材
2b:剥離層
3:補助電極層
4:開口部
5:透明樹脂層
11:透明導電積層体
12:転写基材
12a:基材
12b:剥離層
13:補助電極層
14:開口部
15:複合層
15a:透明樹脂層A(耐熱層)
15b:透明樹脂層B
16:透明ガスバリア積層体
16a:透明樹脂基材
16b:プライマー層
16c:ガスバリア層
図1
図2