特許第6816923号(P6816923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6816923
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】異常検出装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20210107BHJP
   B66B 29/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
   B66B31/00 D
   B66B29/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-217126(P2019-217126)
(22)【出願日】2019年11月29日
【審査請求日】2019年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 暁則
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−269884(JP,A)
【文献】 特開平08−169679(JP,A)
【文献】 特開2013−049538(JP,A)
【文献】 特開2012−106808(JP,A)
【文献】 特開2009−091055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00− 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの下部に設けられたトラス内を、踏板の踏面が下方を向いている状態で走行している踏段のライザ面を撮像する撮像装置から撮像画像を取得する取得部と、
前記撮像画像と、異常の生じていない踏段のライザ面を撮像したライザ面基準画像とを比較して、前記撮像画像の撮像対象となった前記踏段に異常が生じているか否かを判定する判定部と、を備える、
異常検出装置。
【請求項2】
前記踏段は、前記トラス内において、前記踏面が下方を向いている状態で、上層階と下層階とを繋ぐ傾斜路と、前記傾斜路の下端から前記下層階に設けられた平坦路と、を走行し、
前記取得部は、
前記撮像装置のうちの第1の撮像装置から、前記傾斜路を走行する前記踏段のライザ面の第1の領域を撮像した第1の撮像画像を取得するとともに、前記撮像装置のうちの第2の撮像装置から、前記平坦路を走行する前記踏段のライザ面の、前記第1の領域とは異なる領域を含む第2の領域を撮像した第2の撮像画像を取得する、
請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記踏段は、前記トラス内において、前記踏面が下方を向いている状態と、前記踏面が上方を向いている状態との間で、前記踏段の向きを変えさせる折り返し路を更に走行し、
前記撮像装置のうちの第3の撮像装置は、前記折り返し路を走行する前記踏段の踏面を撮像し、
前記取得部は、
前記第3の撮像装置から、前記踏板の踏面を撮像した第3の撮像画像を取得し、
前記判定部は、
前記第3の撮像画像と、異常の生じていない踏板の踏面の踏面基準画像とを比較して、前記第3の撮像画像の撮像対象となった前記踏段に異常が生じているか否かを判定する、
請求項1または請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記トラスは、
前記傾斜路および前記平坦路に沿って配設される下枠部材と、
前記下枠部材と並行して配設される上枠部材と、
前記下枠部材と前記上枠部材との間に配設される支持梁と、を備え、
前記第1の撮像装置は、
前記傾斜路に配設される前記支持梁に、前記傾斜路の下方側に向けて設置される、
請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記トラスは、
前記傾斜路に沿う前記下枠部材と前記平坦路に沿う前記下枠部材とを接続する第1の接続部と、
前記傾斜路に沿う前記上枠部材と前記平坦路に沿う前記上枠部材とを接続する第2の接続部と、を備え、
前記第2の撮像装置は、
前記第1の接続部と前記第2の接続部との間に配設される前記支持梁に、前記平坦路側に向けて設置される、
請求項4に記載の異常検出装置。
【請求項6】
前記第1の撮像装置および前記第2の撮像装置は、
前記踏板の踏面が下方を向いている状態における前記踏段の車輪が、前記ライザ面のうちの撮像領域に重畳されない位置に設置されている、
請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項7】
前記第1の撮像装置および前記第2の撮像装置は、
前記踏板の踏面が下方を向いている状態における前記踏段の車輪の通過位置より高い位置に設置されている、
請求項2に記載の異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ等の乗客コンベアでは、間を詰めた状態で複数の踏段を無端状に連結し、レールにより案内しながら循環駆動させる。しかし、経年劣化により、踏段の踏板またはライザに欠損等の異常が生じてしまう場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1の技術では、欠落検出装置が、連続して配列される複数の踏段のそれぞれの車輪と接する検出部材を有し、車輪の無い部分を踏段そのものの欠落として検出する。また例えば、特許文献2の技術では、欠損検出装置が備える櫛歯状のブロックを踏板のクリートに噛み合わせることで、クリートの欠損を検出する。また例えば、特許文献3の技術では、踏段検出装置が荷重検出装置を備え、荷重により踏段の異常を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6079902号公報
【特許文献2】特開平7−137977号公報
【特許文献3】特開2011−6217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、踏段の欠落は検出できるが、踏板またはライザに生じた欠損等の詳細の状況を把握することはできない。また、特許文献2の技術では、ブロックとクリートとが噛み合うよう、高い精度で欠損検出装置を設置しなければならず、簡便に取り付けることが困難である。また、トラス内では踏段が左右に振れながら走行する。このため、欠損検出装置をトラス内の踏段に取り付けた場合、踏段のクリートと欠損検出装置のブロックとがぶつかり合ってしまい、クリートの欠損を精度よく検出できない恐れがある。また、特許文献3の技術では、特許文献1の技術と同様、踏段の欠落は検出できるが、踏板またはライザに生じた欠損等を検出することはできない。
【0006】
本実施形態が解決しようとする課題は、踏板またはライザの異常を検出することができる異常検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の異常検出装置は、乗客コンベアの下部に設けられたトラス内を、踏板の踏面が下方を向いている状態で走行している踏段のライザ面を撮像する撮像装置から撮像画像を取得する取得部と、前記撮像画像と、異常の生じていない踏段のライザ面を撮像したライザ面基準画像とを比較して、前記撮像画像の撮像対象となった前記踏段に異常が生じているか否かを判定する判定部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態にかかる異常検出システムの構成の一例をエスカレータの概略構成とともに示す図である。
図2図2は、実施形態にかかる異常検出システムが備える撮像装置のトラス内における配置の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態にかかる異常検出システムが備える踏段位置検出装置の構成の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態にかかる異常検出装置における異常検出処理の手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
(異常検出システムの構成例)
図1は、実施形態にかかる異常検出システム2の構成の一例をエスカレータ1の概略構成とともに示す図である。
【0011】
図1に示すように、乗客コンベアとしてのエスカレータ1は、下層階F1と上層階F2とに跨って架設され、例えば下層階F1から上層階F2へ向かって走行することで、下層階F1から上層階F2へと乗客を搬送する。ただし、エスカレータ1は、上層階F2から下層階F1へ向かって走行してもよい。
【0012】
エスカレータ1は、トラス10、スプロケット21,22、移動チェーン23、駆動装置24、複数の踏段30、ケーシング41、ガイド42、及び手摺ベルト43を備える。
【0013】
トラス10は、下層階F1と上層階F2とに跨って架設されている。トラス10の側面および下面は、鋼板によって覆われている。トラス10の上部構成は、ケーシング41内に収容されている。トラス10の両端部上面は、それぞれ乗降板11a,11bによって覆われている。
【0014】
スプロケット21,22は、対をなして下層階F1と上層階F2とのトラス10内部に配置される。スプロケット21,22はそれぞれ、エスカレータ1の幅方向に平行な軸P1,P2を中心に回転可能に配置されている。
【0015】
駆動装置24はスプロケット22を駆動させる。駆動装置24は、スプロケット22の近傍に配置され、駆動チェーン25によってスプロケット22と連結されている。
【0016】
移動チェーン23は、スプロケット21,22に懸架されている。移動チェーン23には、複数の踏段30が互いに隙間を詰めた状態で連結されている。スプロケット22が駆動装置24によって駆動されると、移動チェーン23に連結された複数の踏段30と共に、移動チェーン23がスプロケット21,22間を周回する。複数の踏段30は、トラス10内では、踏板31の踏面を下方に向けて上下反転した状態で移動する。複数の踏段30は、トラス10の上方から露出した状態では、踏板31の踏面を上方に向けた正規の姿勢で下層階F1と上層階F2との間を移動する。
【0017】
踏段30は、乗客を乗せる踏面を有する踏板31と、踏板31の乗降側の端部から下方へと延びるライザ32とを備える。踏板31は長方形の平板状である。ライザ32は、外側に向かって湾曲する曲面状であってよい。踏板31の他端部とライザ32の下端とは、踏段30の幅方向両端部において、ブラケット33により接続されている。ブラケット33は、踏板31及びライザ32の双方の面に対して斜めに延びる。
【0018】
それぞれのブラケット33の踏板31側の接続端には車輪34が設けられている。それぞれのブラケット33のライザ32側の接続端には車輪35が設けられている。つまり、踏段30の幅方向の両端部には、一対の車輪34と一対の車輪35とが設けられている。これらの車輪34,35は、踏段30の走行経路に沿って設けられるガイドレール(不図示)上を回転移動する。
【0019】
ケーシング41は、トラス10に沿って設けられ、トラス10の上部構成および手摺ベルト43の下半分を収容する。ガイド42は、ケーシング41に配設されている。ケーシング41及びガイド42は、エスカレータ1の幅方向の両端部に設けられる。
【0020】
手摺ベルト43は、移動可能にガイド42に支持される。手摺ベルト43は、図示しないチェーン及びスプロケット等を介してスプロケット22に連結されている。これにより、駆動装置24によってスプロケット22が駆動されると、踏段30が下層階F1と上層階F2との間を移動するとともに、手摺ベルト43は、上半分がケーシング41から露出した状態で、踏段30と同期してガイド42に沿って移動する。
【0021】
異常検出システム2は、踏段30の踏板31またはライザ32に生じた欠損等の異常を検出する。異常検出システム2は、撮像装置50、踏段位置検出装置60、入力装置71、表示装置72、及び異常検出装置100を備える。
【0022】
撮像装置50は、踏板31の踏面、またはライザ32の表面、つまり、ライザ面を撮像可能なカメラ等である。撮像装置50は、例えばトラス10内に複数設けられ、トラス10内を走行する踏段30の踏板31の踏面またはライザ面を所定周期で撮像する。撮像装置50のトラス10内における詳細の配置については後述する。
【0023】
踏段位置検出装置60は、基準となる踏段30の位置を検出する。踏段位置検出装置60の詳細の構成については後述する。
【0024】
異常検出装置100は、通常の形式の双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU(中央演算処理装置)、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory)、及びCPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)を少なくとも有するマイクロコンピュータを備える。異常検出装置100は、例えばROMの記憶する制御プログラム等が実行されることにより、機能概念的に、信号取得部111、踏段特定部112、判定部113、発報部114、操作受付部115、及び表示制御部116を有する制御部110、並びに記憶部120を備える。
【0025】
記憶部120は、正常時データ121及び異常踏段データ122を記憶する。正常時データ121には、欠損等の異常の生じていない正常時の踏段30の踏板31の踏面の撮像画像である踏面基準画像、および欠損等の異常の生じていない正常時のライザ面の撮像画像であるライザ面基準画像が格納されている。異常踏段データ122には、異常検出装置100により、異常と判定された踏段30の情報が格納される。
【0026】
信号取得部111は、撮像装置50が撮像した踏段30の撮像画像の信号を取得する。また、信号取得部111は、踏段位置検出装置60が検出した基準となる踏段30の位置情報の信号を取得する。
【0027】
踏段特定部112は、信号取得部111が踏段位置検出装置60から取得した、基準となる踏段30の位置情報に基づき、撮像装置50が撮像した画像が、基準となる踏段30から何番目の踏段30であるかを特定する。つまり、踏段特定部112は、撮像装置50が撮像した画像と、撮像対象となった踏段30とを対応付ける。
【0028】
判定部113は、信号取得部111が撮像装置50から取得した撮像画像と、記憶部120の正常時データ121に格納される正常時の踏段30の撮像画像とを比較して、撮像装置50による撮像の対象となった踏段30の踏板31またはライザ32に欠損等の異常が生じていないかどうかを判定する。画像比較による異常判定には、一般的な画像処理技術を用いることができる。
【0029】
一例として、判定部113は、例えば撮像装置50から取得した撮像画像と、正常時の踏段30の基準画像とを二値化して、2つの画像の輝度の差が所定値以上であれば、撮像装置50の撮像対象となった踏段30に欠損等の異常が生じていると判定する。
【0030】
判定部113は、所定の踏段30に異常があると判定した場合には、その踏段30を撮像した画像と、その踏段30を特定する情報、つまり、基準となる踏段30から何番目の踏段30であるかの情報と、を紐付けて、記憶部120の異常踏段データ122に格納する。
【0031】
発報部114は、判定部113により所定の踏段30に対して異常判定がなされると、その旨を発報する。発報の形態としては、例えば、エスカレータの監視センタ及び保守管理者の携帯端末等の少なくともいずれかに、踏段30に異常が発生したことを報知してもよい。または、エスカレータ1の乗客に注意を促すアナウンスをエスカレータ1の周囲に流してもよい。また例えば、2つの画像の輝度の差に対する閾値を複数設け、輝度差の大小に応じて、異なる対応をするようにしてもよい。この場合、例えば輝度差が最大の閾値を超えた場合には、エスカレータ1の運転を停止してもよい。
【0032】
操作受付部115は、後述する入力装置71から入力された各種操作を受け付ける。例えば、保守管理者等は、発報部114からの報知を受けて、エスカレータ1の点検および保守を行おうとする場合等に、異常と判定された踏段30の情報を表示装置72に表示させる指示を入力装置71から入力することができる。操作受付部115は、保守管理者等による入力装置71からの指示を受け付ける。
【0033】
表示制御部116は、操作受付部115が受け付けた各種入力内容にしたがって、表示装置72に所定の情報等を表示させる。例えば、表示制御部116は、保守管理者等が入力装置71から入力した指示にしたがって、記憶部120の異常踏段データ122を参照し、異常と判定された踏段30の情報を表示装置72に表示させる。
【0034】
入力装置71は、保守管理者等が各種入力を行うことができるキーボード、マウス等である。入力装置71は、表示装置72と一体的に構成されるタッチパネル等であってもよい。入力装置71は、保守管理者等が立ち入り可能な保守エリア内などに配置される。
【0035】
表示装置72は、液晶パネル、有機EL(Electro−Luminescence)パネル等である。表示装置72は、保守管理者等が立ち入り可能な保守エリア内などに配置される。ただし、異常検出システム2は、表示装置72に替えて、あるいは加えて、異常と判定された踏段30の情報を出力可能なプリンタ、スピーカ等の出力装置を備えていてもよい。
【0036】
(撮像装置の配置例)
次に、図2を用いて、実施形態の異常検出システム2が備える撮像装置50のトラス10内における配置例について説明する。図2は、実施形態にかかる異常検出システム2が備える撮像装置50のトラス10内における配置の一例を示す図である。
【0037】
図2に示すように、移動チェーン23に連結される踏段30は、トラス10内外において、傾斜路R1と、平坦路R2と、折り返し路R3とを走行する。トラス10内外において、上下に配置される傾斜路R1は、互いに並行に延び、上層階F2と下層階F1とを繋ぐ。トラス10内外において、上下に配置される平坦路R2は、互いに並行に延び、傾斜路R1の下端から下層階F1に設けられる。折り返し路R3は、平坦路R2の端部に位置し、トラス10内外の上下の平坦路R2を接続する。
【0038】
トラス10は、トラス10の下端部に位置する下枠部材11と、トラス10の上端部に位置し、ケーシング41内に収容される上枠部材12とを備える。下枠部材11は、上下に並行に延びる傾斜路R1及び平坦路R2のうち、下側の傾斜路R1及び平坦路R2に沿って配設される。傾斜路R1に沿う下枠部材11と平坦路R2に沿う下枠部材11とは接続部11jにより接続される。上枠部材12は、上下に並行に延びる傾斜路R1及び平坦路R2のうち、上側の傾斜路R1及び平坦路R2に沿って配設される。傾斜路R1に沿う上枠部材12と平坦路R2に沿う上枠部材12とは接続部12jにより接続される。
【0039】
トラス10は、また、下枠部材11と上枠部材12との間に配設される支持梁13と、支持梁13間に配設される中間梁14とを備える。支持梁13は、下枠部材11及び上枠部材12に対して略直交しており、下枠部材11と上枠部材12とを支持する。中間梁14は、支持梁13間に、下枠部材11及び上枠部材12に対して斜めに配置され、下枠部材11と上枠部材12とを補助的に支持する。
【0040】
複数の撮像装置51〜53は、それぞれ例えばトラス10の支持梁13に設置される。
【0041】
撮像装置51は、例えば傾斜路R1に配設される支持梁13に、傾斜路R1の下方側に向けて設置される。つまり、撮像装置51は、傾斜路R1に沿う下枠部材11及び上枠部材12間に配設される支持梁13の、下方に向いた面に設置される。これにより、撮像装置51は、踏板31の踏面を下方に向けて上下反転した状態で、下側の傾斜路R1を走行する踏段30のライザ面の略全体を撮像することができる。
【0042】
撮像装置52は、例えば下枠部材11の接続部11jと上枠部材12の接続部12jとの間に配設される支持梁13に、下側の平坦路R2側に向けて設置される。つまり、撮像装置52は、接続部11j,12j間に配設される支持梁13の、平坦路R2側である下方に向いた面に設置される。これにより、撮像装置52は、踏板31の踏面を下方に向けて上下反転した状態で、下側の平坦路R2を走行する踏段30のライザ面の主に上部側を撮像することができる。
【0043】
なお、踏段30が上下反転した状態では、踏段30の車輪35は上方を向いている。撮像装置51,52は、この車輪35とライザ32とが重ならない画角で設置されることが好ましい。つまり、撮像装置51,52は、車輪35がライザ面のうちの撮像領域に重畳されない位置に設置されることが好ましい。また、踏段30が上下反転した状態で、踏段30の車輪35は最も高い位置を通過する。撮像装置51,52は、この車輪35の通過位置よりも高い位置に設置されることが好ましい。
【0044】
撮像装置53は、例えば折り返し路R3の更に外側に配設される支持梁13に、折り返し路R3側に向けて設置される。つまり、撮像装置53は、下側の平坦路R2に沿う下枠部材11の折り返し路R3よりも突出した延伸端と、上側の平坦路R2に沿う上枠部材12の折り返し路R3よりも突出した延伸端と、の間に配設される支持梁13の、折り返し路R3側に向いた面に設置される。これにより、撮像装置53は、上下反転状態と、踏板31の踏面を上方に向けた正規の姿勢との間で向きを変えながら、折り返し路R3を走行する踏段30の踏板31の踏面のほぼ全体を撮像することができる。
【0045】
なお、撮像装置53は、折り返し路R3外側の支持梁13の上枠部材12寄りに、下方に向けて配置されることが好ましい。
【0046】
これらの撮像装置51〜53は、自身の画角内を通過する踏段30の踏板31の踏面またはライザ面を所定周期で撮像する。撮像装置51〜53による撮像の周期は任意である。撮像装置51〜53は、例えば踏段30ごとに1回ずつ、または複数回ずつ画像を撮像してもよいし、例えば複数の踏段30ごとに1回ずつ、または複数回ずつ画像を撮像してもよい。または、撮像装置51〜53は、各々の踏段30がスプロケット21,22間を1周するごとに、または複数周するごとに、撮像対象の踏段30を変えながら画像を撮像してもよい。
【0047】
また、それぞれの撮像装置51〜53による撮像のタイミングは異なっていても一緒であってもよい。例えば、所定の踏段30が撮像装置51〜53の下方を通過する間に、その踏段30のライザ面の画像を撮像装置51,52で撮像し、同じ踏段30の踏板31の踏面の画像を撮像装置53で撮像するようにしてもよい。
【0048】
また、図2に示す撮像装置50の配置は一例であって、撮像装置50の個数および配置は任意である。例えば、傾斜路R1にライザ32を撮像する複数の撮像装置を配置してもよく、折り返し路R3に踏板31の踏面を撮像する複数の撮像装置を配置してもよい。あるいは、ライザ面または踏板31の踏面のいずれかを撮像する撮像装置を1つだけ配置してもよい。
【0049】
(踏段位置検出装置の構成例)
次に、図3を用いて、実施形態の異常検出システム2が備える踏段位置検出装置60の構成例について説明する。図3は、実施形態にかかる異常検出システム2が備える踏段位置検出装置60の構成の一例を示す図である。
【0050】
図3に示すように、踏段位置検出装置60は、基準板61、基準点スイッチ62、及びスイッチ支持部63を備える。基準点スイッチ62及びスイッチ支持部63は、例えばトラス10内に配置される。
【0051】
基準板61は、位置検出の基準となる基準踏段30sのブラケット33に、ブラケット33から突出するように設けられる。
【0052】
基準点スイッチ62は、枠の一辺が開放された形(U字形)をしている。基準点スイッチ62のU字構造の内側を基準踏段30sに設けられた基準板61が通過することで、基準点スイッチ62により基準踏段30sが検出される。
【0053】
スイッチ支持部63の一端は、各々の踏段30の車輪34,35が回転移動するガイドレール23rの下面に接続される。スイッチ支持部63の他端には、基準点スイッチ62がU字構造の開放端を、上方の踏段30が通過する側に向けて取り付けられている。これにより、基準踏段30sが基準点スイッチ62の上方を通過すると、基準踏段30sの基準板61が基準点スイッチ62のU字構造の内側を通過する。
【0054】
また、上述のスプロケット22には図示しないパルス発生器が設けられている。パルス発生器は、各々の踏段30の移動速度に応じた所定間隔でパルスを発生させる。このパルス数をカウントすることで、基準点スイッチ62により検出された後の基準踏段30sの移動距離を算出できる。なお、このパルス発生器を踏段位置検出装置60に含めてもよい。
【0055】
上述の踏段特定部112は、踏段位置検出装置60からの基準踏段30sの検出情報およびパルス発生器によるパルスのカウント数に基づき、撮像装置50の撮像対象となった踏段30を特定する。つまり、基準点スイッチ62により基準踏段30sが検出されると、そのとき、基準踏段30sから数えて何番目の踏段30が、それぞれの撮像装置51〜53の撮像位置にあるかが判る。また、基準点スイッチ62により基準踏段30sが検出されてから所定カウント後に、それぞれの撮像装置51〜53の撮像位置に位置する踏段30を特定することもできる。
【0056】
(異常検出装置の処理例)
次に、図4を用いて、実施形態の異常検出装置100の処理例について説明する。図4は、実施形態にかかる異常検出装置100における異常検出処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0057】
図4に示すように、異常検出装置100の制御部110が備える信号取得部111は、撮像装置50が撮像した踏段30の撮像画像および踏段位置検出装置60が検出した基準踏段30sの位置情報を取得する(ステップS101)。
【0058】
より具体的には、信号取得部111は、撮像装置51,52が撮像した踏段30のライザ面の撮像画像を取得する。また、信号取得部111は、撮像装置53が撮像した踏板31の踏面の撮像画像を取得する。
【0059】
また、信号取得部111は、踏段位置検出装置60の基準点スイッチ62による基準踏段30sの検出情報を取得する。また、信号取得部111は、基準踏段30sが検出されてからのパルスのカウント数の信号をパルス発生器から取得する。
【0060】
踏段特定部112は、それぞれの撮像装置51〜53が撮像した画像と、そのとき撮像対象となった踏段30とを対応付ける(ステップS102)。
【0061】
より具体的には、踏段特定部112は、基準踏段30sの検出情報および基準踏段30sが検出されてからのパルスのカウント数に基づき、撮像装置51が画像を撮像した時点における基準踏段30sの位置を特定し、更に、そのとき撮像装置51の撮像位置にあった踏段30を特定する。
【0062】
また、踏段特定部112は、同様にして、撮像装置52が画像を撮像した時点において、撮像装置52の撮像位置にあった踏段30を特定する。
【0063】
また、踏段特定部112は、同様にして、撮像装置53が画像を撮像した時点において、撮像装置53の撮像位置にあった踏段30を特定する。
【0064】
判定部113は、それぞれの撮像装置51〜53が撮像した画像と、正常な踏段30の基準画像とを比較する(ステップS103)。
【0065】
より具体的には、判定部113は、撮像装置51が撮像した踏段30のライザ面の撮像画像を二値化する。また、判定部113は、記憶部120の正常時データ121を参照し、正常な踏段30のライザ面の基準画像を二値化する。そして、判定部113は、二値化した両画像の輝度を比較する。
【0066】
また、判定部113は、記憶部120の正常時データ121を参照し、撮像装置52が撮像した踏段30のライザ面の二値化した撮像画像と、正常な踏段30のライザ面の二値化した基準画像との輝度を比較する。
【0067】
また、判定部113は、記憶部120の正常時データ121を参照し、撮像装置53が撮像した踏板31の踏面の二値化した撮像画像と、正常な踏板31の踏面の二値化した基準画像との輝度を比較する。
【0068】
判定部113は、それぞれの撮像装置51〜53により撮像され、二値化された撮像画像の輝度と、正常な踏段30の二値化された基準画像の輝度との差が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0069】
判定部113は、同じ1つの踏段30について、正常時の基準画像に対する撮像装置51の撮像画像の輝度差と、正常時の基準画像に対する撮像装置52の撮像画像の輝度差とが共に所定値以上であった場合には(ステップS104:Yes)、その踏段30のライザ32に異常があると判定する(ステップS106)。
【0070】
判定部113は、所定の踏段30について、正常時の基準画像に対する撮像装置53の撮像画像の輝度差が所定値以上であった場合には(ステップS104:Yes)、その踏段30の踏板31に異常があると判定する(ステップS106)。
【0071】
つまり、判定部113は、同じ1つの踏段30について、ライザ面および踏板31の踏面の正常な踏段30に対する輝度差の少なくともいずれかが所定値以上であった場合には(ステップS104:Yes)、その踏段30は異常であると判定する(ステップS106)。
【0072】
判定部113は、ライザ32または踏板31の少なくともいずれかが異常であると判定した場合には、その踏段30の異常を示す撮像画像に、その踏段30の基準踏段30sからの位置を紐付けて、記憶部120の異常踏段データ122に格納する(ステップS107)。
【0073】
発報部114は、判定部113がいずれかの踏段30に異常があると判定すると、異常のある踏段30が検出された旨を発報する(ステップS108)。
【0074】
発報部114は、踏段30の異常を保守管理者の携帯端末等に発報してもよい。発報部114は、踏段30の異常をエスカレータ1の乗客へのアナウンスという形で発報してもよい。その他、発報部114による踏段30の異常を報知する手段は様々な形態を取り得る。
【0075】
その後、操作受付部115が保守管理者等による入力装置71からの入力指示を受け付けて、表示制御部116が、異常と判定された踏段30の情報を表示装置72に表示させてもよい。
【0076】
判定部113は、同じ1つの踏段30について、正常時の基準画像に対する撮像装置51の撮像画像の輝度差と、正常時の基準画像に対する撮像装置52の撮像画像の輝度差との少なくともいずれかが所定値未満であった場合には(ステップS104:No)、その踏段30のライザ32は正常であると判定する(ステップS105)。
【0077】
判定部113は、所定の踏段30について、正常時の基準画像に対する撮像装置53の撮像画像の輝度差が所定値未満であった場合には(ステップS104:No)、その踏段30の踏板31は正常であると判定する(ステップS105)。
【0078】
つまり、判定部113は、ライザ面および踏板31の踏面の正常な踏段30に対する輝度差が共に所定値未満であった場合には(ステップS104:No)、その踏段30は正常であると判定する(ステップS105)。
【0079】
以上により、実施形態の異常検出装置100における処理が終了する。
【0080】
実施形態の異常検出システム2によれば、判定部113が、撮像装置50が撮像したトラス10内を走行する踏段30の撮像画像に基づき踏段30の異常を判定する。これにより、例えば踏板31またはライザ32の欠損を検出することができる。
【0081】
実施形態の異常検出システム2によれば、撮像装置51,52が踏段30のライザ面を撮像し、撮像装置53が踏板31の踏面を撮像する。このように、複数の撮像装置51〜53により踏段30の異なる部位を撮像することで、異常判定の精度を向上させることができる。
【0082】
実施形態の異常検出システム2によれば、撮像装置51が傾斜路R1を走行する踏段30のライザ面を撮像し、撮像装置52が平坦路R2を走行する踏段30のライザ面を撮像する。このように、複数の撮像装置51,52で異なる角度からライザ面の撮像画像を撮像することで、ライザ32の略全面を撮像することができる。
【0083】
実施形態の異常検出システム2によれば、撮像装置51〜53は、それぞれ所定位置に配設される支持梁13に設置される。これにより、これらの撮像装置51〜53は、上枠部材12の下側に位置することになり、上から滴下する水滴または潤滑油によって汚染され難くなる。
【0084】
実施形態の異常検出システム2によれば、撮像装置51,52は、所定位置に配設される支持梁13の下方に向いた面に設置される。撮像装置53は、支持梁13の上枠部材12寄りに、下方に向けて設置される。これにより、これらの撮像装置51〜53のレンズ面が、上から滴下する水滴または潤滑油によって汚染され難くなる。
【0085】
実施形態の異常検出システム2によれば、撮像装置51,52は、踏段30が上下反転した状態で上方を向いた踏段30の車輪35と、ライザ32とが重ならない画角で設置されている。これにより、車輪35等に妨げられるのを抑制して、ライザ32の略全面を撮像することができる。
【0086】
実施形態の異常検出システム2によれば、撮像装置51,52は、踏段30が上下反転した状態で上方を向いた踏段30の車輪35の通過位置よりも高い位置に設置されている。これにより、撮像装置51,52が、トラス10内での踏段30の走行を妨げてしまうのを抑制することができる。
【0087】
実施形態の異常検出システム2によれば、判定部113は、撮像装置51,52が撮像した双方の画像とも、正常時の基準画像の輝度の差が所定値以上であった場合に、ライザ32に異常が生じたものと判定する。これにより、誤検出を抑制することができる。
【0088】
実施形態の異常検出システム2によれば、判定部113は、異常と判定された踏段30の撮像画像および踏段30を特定する情報を記憶部120の異常踏段データ122に格納する。これにより、異常と判定された踏段30の情報を適切に管理し、エスカレータ1の状態履歴等を残すことができる。
【0089】
実施形態の異常検出システム2によれば、操作受付部115が保守管理者等による入力装置71からの指示を受け付けると、表示制御部116が異常と判定された踏段30の情報を表示装置72に表示させる。これにより、保守管理者等が、エスカレータ1の状態を把握し、異常と判定された踏段30を素早く特定することができる。よって、エスカレータ1のダウンタイムを短縮することができる。
【0090】
なお、上述の実施形態では、エスカレータ1に関する異常検出を例にとり説明したが、乗客コンベアは、例えば動く歩道のような水平型エスカレータ等であってもよい。
【0091】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1…エスカレータ、2…異常検出システム、30…踏段、31…踏板、32…ライザ、33…ブラケット、34,35…車輪、50(51〜53)…撮像装置、60…踏段位置検出装置、71…入力装置、72…表示装置、100…異常検出装置、110…制御部、111…信号取得部、112…踏段特定部、113…判定部、114…発報部、115…操作受付部、116…表示制御部、120…記憶部、121…正常時データ、122…異常踏段データ。
【要約】      (修正有)
【課題】踏板またはライザの異常を検出すること。
【解決手段】異常検出装置100は、乗客コンベアの下部に設けられたトラス10内を、踏板30の踏面が下方を向いている状態で走行している踏段30のライザ面を撮像する撮像装置50から撮像画像を取得する取得部と、撮像画像と、異常の生じていない踏段30のライザ面を撮像したライザ面基準画像とを比較して、撮像画像の撮像対象となった踏段30に異常が生じているか否かを判定する判定部113と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4