(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816928
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20210107BHJP
B60R 1/00 20060101ALI20210107BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20210107BHJP
【FI】
B60K35/00 A
B60K35/00 Z
B60R1/00 A
G09F9/00 362
G09F9/00 359
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-254603(P2016-254603)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-103921(P2018-103921A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】角谷 英俊
(72)【発明者】
【氏名】追久保 亘
(72)【発明者】
【氏名】高原 周
【審査官】
坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−329768(JP,A)
【文献】
特開2015−174643(JP,A)
【文献】
特開2014−189213(JP,A)
【文献】
特開2008−151992(JP,A)
【文献】
特開2010−179850(JP,A)
【文献】
特開2015−027852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00−37/06,
G09F 9/00,
B60R 1/00−1/12,9/00−11/06,
G02B 7/00,7/18−7/24,27/00−27/64,
B60Q 3/00−3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から撮像データを受け取り、車両の周囲の画像を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された画像を映し出す凹面鏡と、
前記凹面鏡で映し出された画像を車内空間側に向けて反射する平面鏡とを有し、
前記表示手段は、表示面が上方を向くようにAピラーの下方のダッシュボード上に配置され、前記凹面鏡が前記表示手段の画像を映し出すように前記表示手段の近傍に配置され、前記平面鏡は前記凹面鏡の画像を反射するように凹面鏡の光軸方向に配置され、
前記平面鏡は、前記凹面鏡で映し出された画像の虚像を車両の外部に生じさせる、車両用表示装置。
【請求項2】
前記平面鏡は、前記凹面鏡で映し出された画像を車内の運転席側に向けて反射する、請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記表示手段は、ダッシュボード上に水平に配置される、請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記平面鏡は、前記凹面鏡で映し出された画像の虚像を光学式サイドミラーが設置可能な位置に生じさせる、請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、車両の側部後方を撮像する複数の撮像カメラを含み、前記表示手段は、複数の撮像カメラにより撮像された画像を表示する複数の表示パネルを含む、請求項1ないし4いずれか1つに記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記複数の表示パネルは、前記ダッシュボード内に配置される、請求項5に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記凹面鏡および前記平面鏡は、位置または角度が調整可能である、請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項8】
車両用表示装置は、電子式サイドミラーを含む、請求項1ないし7いずれか1つに記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関し、特に電子式サイドミラーの表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学式サイドミラーに代わる技術として、車両の側部後方をカメラで撮像し、撮像した画像データを液晶ディスプレイ等の表示デバイスに表示する電子サイドミラーの開発が行われている。電子サイドミラーは、従来の光学的サイドミラーと異なり、必ずしも車外に設置する必要はなく、運転者のドア付近に表示デバイスを設置したり、運転者の正面のメータ類の一部に表示デバイスを設置したりすることも可能である。これにより、運転者は、少ない視線の移動で、表示デバイスに表示された撮像画像を介して車両の側部後方を視認することができる。また、電子式サイドミラーには、表示デバイスの撮像画像を光学ミラーを用いて投影するものもある。
【0003】
しかし、従来の光学的サイドミラーによる見え方と、電子式サイドミラーによる撮像画像またはその投影画像の見え方とでは、若干の相違がある。このような点に鑑み、特許文献1の車両用表示装置は、走行中の運転者の視点移動を考慮し、運転者への負担がより少なく、かつ、光学式サイドミラーとの違和感を軽減するために、凹面鏡等を用い、運転者の視点から結像された反射画像までの距離を延長する構成を開示している。また、特許文献2では、表示部に表示された画像を映すミラーを備えた車両用表示装置であって、運転者の視認位置に応じて運転者が視認できる視認範囲を変化させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−120080号公報
【特許文献2】特開2016−040140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電子式サイドミラーは、
図6(A)に示すように、表示デバイス300を運転者のドアパネルに設置したり、
図6(B)に示すように、運転席の正面のインスツルメンツパネルの左右に表示デバイス300L、300Rを設置している。これらの表示デバイス300、300L、300Rには、
図6(C)に示すように、自車Mの側部後方を撮像した画像が表示される。
【0006】
しかしながら、このような電子式サイドミラーには、次のような課題がある。第1に、表示ディスプレイ300、300L、300Rに表示されたカメラの撮像画像では、奥行感に乏しく、後方車両や側部車両等の対象物との距離感を把握し難い。第2に、表示ディスプレイが車内に配置されることで、自車の車幅感覚や、自車と対象物との空間的距離感に違和感が生じてしまう。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、奥行感、車両の車幅感覚、自車と対象物との空間的距離感を改善した車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用表示装置は、車両の周囲を撮像する撮像手段と、前記撮像手段から撮像データを受け取り、車両の周囲の画像を表示する表示手段と、前記表示手段に表示された画像を映し出す凹面鏡と、前記凹面鏡で映し出された画像を車内空間側に向けて反射する平面鏡とを有する。
【0009】
好ましくは前記平面鏡は、前記凹面鏡で映し出された画像を車内の運転席側に向けて反射する。好ましくは前記平面鏡は、前記凹面鏡で映し出された画像の虚像を車両の外部に生じさせる。好ましくは前記平面鏡は、前記凹面鏡で映し出された画像の虚像を光学式サイドミラーが設置可能な位置に生じさせる。好ましくは前記撮像手段は、車両の側部後方を撮像する複数の撮像カメラを含み、前記表示手段は、複数の撮像カメラにより撮像された画像を表示する複数の表示パネルを含む。好ましくは前記複数の表示パネルは、車両のダッシュボード内に配置される。好ましくは前記凹面鏡および前記平面鏡は、位置または角度が調整可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表示手段に表示された画像を凹面鏡により映し出すことで、表示手段の表示画像に奥行感を持たせ、さらに平面鏡により凹面鏡で映された画像の虚像を車外に生成することで、従来の光学式サイドミラーと同等の奥行感、車幅感覚、および空間的距離感で撮像画像を自然なものとすることができる。これにより、運転者の認知負荷が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用表示装置の全体構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す撮像カメラの取付け例を示す平面図である。
【
図3】左右の側方カメラによる撮像例を示す図である。
【
図4】
図4(A)は、本発明の実施例に係る表示パネルの取付け例を示す上面図、
図4(B)は、本実施例の光学部材である凹面鏡と平面鏡との取付け位置を説明する上面図である。
【
図5】本発明の実施例による表示パネルが凹面鏡および平面鏡により光学的変換を説明する図である。
【
図6】従来の電子式サイドミラーの課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る車両用表示装置は、車両の周囲、特に車両の側部後方を撮像する撮像カメラと、撮像カメラにより撮像されたデータを表示する表示装置とを含み、いわゆる電子式サイドミラーを構成する。好ましい態様では、車両用表示装置はさらに、表示装置により表示される画像に奥行感や車幅感覚を持たせるため、表示装置の表示画像を光学的に変換する光学部品として少なくとも凹面鏡および平面鏡を含む。凹面鏡および平面鏡は、好ましくは運転者または利用者にとって、最適な画像を生成するように位置や角度が調整可能である。表示装置の表示画像を凹面鏡で反射させることでその画像に凹面鏡効果により奥行感を持たせ、さらに凹面鏡により反射された画像を平面鏡により車内空間側に反射させることで、凹面鏡に映し出された画像の虚像を車外に生成される。虚像の位置を好ましくは従来のサイドミラーが存在する位置にすることで、光学式のサイドミラーを同様に自然の感覚で撮像画像を見ることができる。
【実施例】
【0013】
次に、本発明の実施例に係る車両用表示装置の詳細について図面を参照して説明する。
図1は、本実施例に係る車両用表示装置の全体構成を示す図である。本実施例の車両用表示装置10は、車両の周辺を撮像するための1つまたは複数の撮像カメラ20A〜20Dと、撮像カメラから撮像データを受け取り、当該撮像データの画像処理を行う画像処理装置30と、画像処理装置30により処理された画像データを表示する表示装置40と、表示装置40により表示された画像を入射し、その画像を光学的変換する光学部材50とを含む。ここには、4つの撮像カメラ20A〜20Dを例示するが、電子サイドミラーは、少なくとも、車両の左側の側部後方を撮像する左側方カメラ20Cと、車両の右側の側部後方を撮像する右側方カメラ20Dとを備えれば十分であることに留意すべきである。前方カメラ20Aおよび後方カメラ20Dは、車両の前方や後方に存在する障害物等を検知し、それらとの衝突を避けるためなどに使用することができ、電子サイドミラーの構成に必須ではない。
【0014】
図2は、撮像カメラの設置例を示す平面図である。前方カメラ20Aおよび後方カメラ20Bは、それぞれ車両の前方および後方に取り付けられ、車両の前方および後方を撮像する。左側方カメラ20Cおよび右側方カメラ20Dは、おおよそ光学式のサイドミラーが取り付けられるであろう位置に取り付けられ、そこから車両の側部後方をそれぞれ視野角θで撮像する。左側方カメラ20Cおよび右側方カメラ20Dの撮像方向(光軸)は、任意に調整できることが望ましい。これにより、搭乗者毎に異なる視線位置または姿勢に視野角を対応することが可能になる。撮像カメラ20C、20Dは、例えば、
図3に示すように、自車Mの後方を走行する他車Aや側方を走行する他車Bを撮像する。
【0015】
撮像カメラ20A〜20Dにより撮像されたデータは、画像処理装置30へ提供される。画像処理装置30は、撮像データを表示装置40へ表示することを可能にするため、撮像データに必要な処理(例えば、トリミング、輝度や色彩の調整等)を施す。画像処理装置30は、処理した画像データを表示装置40に出力し、表示装置40は、受け取った画像データを表示する。
【0016】
図1には、1つの表示装置40が示されているが、実際には、表示装置40は、1つまたは複数の表示部を備えることができる。例えば、電子式サイドミラーのための表示装置であれば、表示装置40は、左側方カメラ20Cによって撮像された画像を表示するための左側表示パネルと、右側方カメラ20Dによって撮像された画像を表示するための右側表示パネルとを含む。これら表示パネルは、例えば、液晶パネルまたは有機ELパネル等から構成される。以下、電子式サイドミラーのための左側表示パネルおよび右側表示パネルを総称して表示パネル40Aと称する。表示パネル40Aには、
図6(C)に示したような車両の側部後方を撮像した画像が表示される。
【0017】
図4(A)は、表示パネルの取付け位置を示す上面図である。同図に示すように、表示パネル40Aは、例えば、車内のダッシュボード60上、特に、Aピラー下部にほぼ水平に配置され、すなわち、表示パネルの表示面は、ダッシュボードとの接触面と反対側に天井方向に向くように配置される。但し、表示パネル40Aは、これ以外の位置に取り付けられるものであってもよく、例えば、
図6(A)に示すようにドアパネルに配置されたり、
図6(B)に示す様にメータ周辺に配置されることを妨げるものではない。
【0018】
本実施例の車両用表示装置10はさらに、表示パネル40Aに表示された画像を光学的に変換するための光学部材50を含む。好ましくは光学部材50は、表示パネル40Aの表示画像を入射し、これを一定方向に反射するように位置決めされた凹面鏡52と、凹面鏡52により反射された画像を車内空間の例えば運転者U側に向けて反射する平面鏡54とを含む。
【0019】
図4(B)は、表示パネル40A、凹面鏡52および平面鏡54の位置関係を示す上面図である。凹面鏡52は、表示パネル40Aに表示された画像を映し出すことができるような位置に、例えば、表示パネル40Aの近傍に配置される。また、好ましくは凹面鏡52は、その光軸の角度が調整可能に取り付けられる。調整手段は、例えば、ボールジョイント等の公知の手段を用いることができる。凹面鏡52の光軸が表示パネル40Aの表示面に向けて幾分傾斜されれば、凹面鏡52による画像は幾分下方に反射され、光軸が表示パネル40Aの表示面から離れる方向に幾分傾斜されれば、凹面鏡52による画像は幾分上方に反射され、凹面鏡52の光軸が表示面と平行であれば、凹面鏡52による画像は水平方向に反射される。凹面鏡52は、楕円状または球面状の反射面を有し、その凹面鏡効果により表示パネル40Aに表示された画像を奥行感があるように映し出す。凹面鏡52の曲率は任意であるが、その曲率が大きくなれば、凹面鏡効果が大きくなるが、反面、画像の歪みも大きくなる。
【0020】
平面鏡54は、凹面鏡52の画像を反射することができるように凹面鏡52の光軸方向に配置される。好ましくは、平面鏡54は、凹面鏡52に映された画像の虚像Xが車外に生成されるような位置および角度に配置される。さらに好ましくは、凹面鏡52の虚像Xが、従来の光学式サイドミラーが設置される位置近傍に生じるように位置および角度が調整される。平面鏡54もまた、ボールジョイント等の公知の調整手段によりその角度が調整可能であることが望ましい。
図4(B)に示すように、凹面鏡52に映しだされた画像とその虚像Xとは、平面鏡54に関して線対称である。
【0021】
図5(A)、(B)は、光学部材50による表示パネル40Aの画像の光学的変換を模式的に説明する図である。
図5(A)に示すような立体的な位置関係に表示パネル40A、凹面鏡52および平面鏡54が配置され、凹面鏡52の画像の鏡像Xが平面鏡54の向こう側に生成される。
図5(B)は、表示パネル40Aの画像が変換される例を示している。表示パネル40Aの表示画像が凹面鏡効果により奥行感をもって凹面鏡52に映し出され、さらに凹面鏡52に映し出された画像が平面鏡54により反射される。平面鏡52の位置および角度を適宜調整することで、運転者Uは、車両のサイドウィンドウ越しの従来の光学式サイドミラーが設置されるであろう位置近傍に、凹面鏡52に映しだされた画像の虚像Xを見ることができる。凹面鏡52の画像は、奥行感を与えられた画像であり、つまり虚像Xは、奥行感のある画像である。さらに虚像Xの位置が従来の光学式サイドミラーが設置される位置近傍であるため、運転者Uは、従来と同様の光学式サイドミラーと同様に、自然な車幅感覚および空間的距離感で撮像画像を見ることができる。なお、上記実施例では、運転席側の表示パネルと光学部材との関係について説明したが、助手席側の表示パネルと光学部材についても同様に構成される。
【0022】
このように本実施例によれば、表示パネル40Aに表示された画像を凹面鏡52および平面鏡54を用いて奥行感、車幅感覚、および空間的距離感のある画像に変換することができ、従来の電子式サイドミラーの視認性を改善することができる。
【0023】
上記実施例では、光学部材50として凹面鏡52および平面鏡54を用いる例を示したが、これと同様の光学的作用を生じさせる他の光学部材をさらに用いても良い。例えば、画像の倍率を調整するためのレンズや、光路長あるいは光学的方向を変化させるために他のプリズムやミラーを利用することも可能である。
【0024】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0025】
10:車両用表示装置 20:カメラ
30:画像処理装置 40:表示装置
50:光学部材 52:凹面鏡
54:平面鏡