(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車用ヘッドランプ、リアランプ、フォグランプ、ターンランプ、モーター、各種圧力センサー、圧力スイッチ等の自動車用電装部品、カメラ、ビデオ、携帯電話等の情報端末や電気剃刀、電動歯ブラシなどの家電用品、および、複写機内部のインクカートリッジ部材、または、屋外用途のランプ等、各種の機器筐体には通気孔が設けられることが多い。通気孔を設ける主な目的は、機器の内部と外部とを連通させることにより、機器の作動による機器筐体内の温度上昇に伴う内部圧力の過度な上昇を回避することにある。また、バッテリーケースには、電池作動時に発生するガスを排出させることを目的として、通気孔が設けられている。
【0003】
機器筐体に設けた通気孔から水、塵等が侵入することを防止するため、通気孔には通気フィルタが配置されることがある。通気フィルタとしては、ポリオレフィン樹脂またはフッ素樹脂の多孔質膜が用いられることが多い。特に、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)を延伸して微多孔構造を形成した多孔質膜は、撥水性と通気性に優れた通気フィルタとして知られている。しかしながら、使用環境によっては、通気フィルタには、皮脂、界面活性剤、オイル、インク等も接触する。撥水性に優れたPTFE延伸多孔質膜を通気フィルタとして用いたとしても、表面張力の低い液体の侵入を十分に防ぐことはできない。このため、通気フィルタには、その用途に応じ、フッ素含有重合体を含む処理剤を用いた撥油処理が行われている。
【0004】
直鎖状パーフルオロアルキル基(以下「Rf基」と表記する)を有するフッ素含有重合体が撥油性の付与に適していることは周知であり、Rf基を有するフッ素含有重合体は撥油処理の処理剤として利用されている。
【0005】
上記処理剤とともにその他の処理剤を用いて通気フィルタに撥油性を与えることも知られている。例えば、特許文献1には、Rf基を有するフッ素含有重合体とともに、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有するフッ素樹脂を含む処理剤により通気フィルタを処理することが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の通気フィルタは、撥油剤により被覆された表面を有する多孔質膜を備え、フィルタ表面における20μlのヘキサデカンまたはペンタデカンの転落角が60°以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明の通気フィルタに用いる多孔質膜としては、耐薬品性、耐溶剤性、防汚性、耐熱性等のフィルタ材料として好適な特性を有するポリテトラフルオロエチレン多孔質膜(以下、PTFE多孔質膜ともいう。)が挙げられる。PTFE多孔質膜について以下に説明するが、多孔質膜は、これに限定されず、フィルタ材料として採用できるものは含まれる。このような多孔質膜の材料としては、例えば、ポリオレフィン樹脂またはフッ素樹脂が好ましく、フッ素樹脂がより好ましく、PTFEが特に好ましい。PTFE多孔質膜としては、市販品(例えば、日東電工社製「TEMISH(登録商標)」シリーズ(例えば、NTF810A、NTF820A、NTF1125、NTF1128等)を用いることもできるが、以下に製造方法の一例を示す。
【0015】
(PTFE多孔質膜の作製)
まず、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を加えたペースト状の混和物を予備成形し、予備成形体を得る(工程A)。液状潤滑剤は、PTFEファインパウダーの表面を濡らすことができ、抽出や乾燥によって除去できるものであれば特に制限はない。液状潤滑剤としては、例えば、流動パラフィン、ナフサ、ホワイトオイル、トルエン、キシレン等の炭化水素;各種のアルコール、ケトン、エステル、フッ素系溶剤等が挙げられる。また、これらの2種以上の混合物を使用してもよい。液状潤滑剤の使用量は、PTFEファインパウダー100重量部に対して5〜50重量部程度が好ましい。予備成形は、液状潤滑剤が絞り出されない程度の圧力で行えばよい。PTFEファインパウダーとしては、市販品を用いることができる。市販のPTFEファインパウダーとしては、例えば、ダイキン工業製ポリフロンF−104、F−106、F−101HE;旭硝子製フルオンCD−123、CD−1、CD−145、XCD−809、CD−014、CD−126;三井・デュポンフロロケミカル製テフロン(登録商標)6−J、65−N、601−A等が挙げられる。
【0016】
PTFEファインパウダーと液状潤滑剤との混合比は、特に限定されないが、通常、PTFEファインパウダー100重量部に対して、液状潤滑剤が5〜35重量部程度である。形成されるPTFE成形体におけるPTFE同士の結着をより弱める観点からは、PTFEファインパウダー100重量部に対して、液状潤滑剤を20〜30重量部程度とすることが好ましい。
【0017】
次に、上記予備成形工程Aで得られた予備成形体を、ペースト押出または圧延によってシート状に成形し、PTFE成形体を得る(工程B)。押出成形には、押出シリンダーと、当該シリンダーに接続された押出ダイスとを備える押出成形機を用いればよい。押出成形の条件は、特に限定されず、シートを成形する際に採用される公知の範囲で適宜採用し得る。
【0018】
得られたPTFE成形体を、延伸処理する(工程C)。延伸処理することによって本発明の通気フィルタに用いるPTFE多孔質膜を得ることができる。延伸は、一軸延伸であってもよく、二軸延伸であってもよい。例えば、PTFE成形体をPTFEの融点以下の温度で逐次二軸延伸してもよい。逐次二軸延伸の場合、長手方向(MD)の延伸は、PTFEの融点以上の温度で行うことが好ましい。幅方向(TD)の延伸は、通常40〜400℃であり、高通気性を得るため、および延伸時の破断を防ぐために、100〜300℃がより好ましい。MDの延伸倍率は、40〜200倍が好ましく、60〜160倍がより好ましい。MDの延伸倍率が、40倍未満の場合、最終的に得られるPTFE多孔質膜中に見られるフィブリル長さが短くなり、平均孔径が小さくなって高い通気性が得られ難くなるおそれがある。また、200倍を超えて高くなりすぎると、シート状成形体の破断が起こり、PTFE多孔質膜を得ることができない。TDの延伸倍率は、3〜40倍が好ましい。延伸処理には、公知の延伸装置を使用できる。PTFE成形体の延伸は、加熱あるいは抽出等の手法により、液状潤滑剤を除去してから行うことが好ましい。
【0019】
工業的には、工程数が少ない方が好ましいが、上記の長手方向および幅方向への延伸を複数回に分けて行ってもよい。また、最初に長手方向に延伸すれば、その後の長手方向または幅方向への延伸順序や組み合わせは特に制限されない。
【0020】
以上の工程により、PTFE多孔質膜が得られる。
【0021】
本発明に用いる多孔質膜(好適にはPTFE多孔質膜)は、典型的にはフィブリルおよびノードから構成された特徴的な微多孔構造を有しており、それ自体が優れた撥液性を示す。本発明に用いる多孔質膜は、PTFEの融点以上の温度で焼成した焼成品であっても、この焼成を実施しない未焼成品であってもよい。
【0022】
多孔質膜の平均孔径は、特に限定されないが、0.005〜10μmが好ましく、0.01〜5μmがより好ましく、0.1〜3μmがさらに好ましい。平均孔径が小さすぎると通気フィルタの通気性が低下することがある。平均孔径が大きすぎると異物のリークが発生する場合がある。「平均孔径」は、ASTM(米国試験材料協会)F316−86の規定に準拠して測定でき、例えばこの規定に準拠した自動測定が可能な市販の測定装置(Porous Material社製のPerm-Porometer等)を用いて測定できる。また、多孔質膜の厚さは、5〜5000μmが好ましく、10〜1000μmがより好ましく、10〜500μmが特に好ましい。膜厚が小さすぎると、膜の強度が不足したり、通気筐体の内外の差圧により通気フィルタの変形が過大となったりするおそれがある。膜厚が大きすぎると、通気フィルタの通気性が低下することがある。
【0023】
多孔質膜の気孔率は、特に限定されないが、オイルまたはペンタデカンが付着する環境下においても良好な通気性を保持できる点から、65〜95%が好ましく、70〜90%がより好ましい。本明細書において、多孔質膜の気孔率は、多孔質膜の体積および重量からかさ密度を求め、PTFE樹脂の真密度を2.28g/cm
3として、{1−(重量[g]/(厚さ[cm]×面積[cm
2]×真密度[2.28g/cm
3]))}×100(%)の式から求めた。
【0024】
本発明の通気フィルタは、多孔質膜の少なくとも片面を粗面化処理する工程Dと、次いで、少なくとも粗面化処理した面を含む表面に撥油処理を行う工程Eとを有する製造方法によって製造できる。前記製造方法において、粗面化処理工程Dの後に、撥油処理工程Eを行うことが重要である。
【0025】
(粗面化処理工程D)
多孔質膜の表面に粗面化処理を施す。粗面化処理は、多孔質膜の表面に、凹凸形状を形成できるものであれば、特に制限されるものではないが、凹凸高さが0.5μm以上、より好ましくは1.0μmを超えるものが望ましい。凹凸高さの上限は特に限定されず、2.0μm未満であってもよい。前記凹凸高さはSEMで測定できる。粗面化処理方法としては、例えば、スパッタエッチング処理、イオンビーム処理、レーザーエッチング処理、サンドブラスト処理、サンドペーパー等による処理等を用いることができる。中でも、鋭い突起状の凹凸を形成できることから、スパッタエッチング処理、イオンビーム処理等が好ましい。
【0026】
上記粗面化処理のうち、スパッタエッチング処理は一般に、ガスに由来するエネルギー粒子を対象物の一方の表面に衝突させて、対象物の一方の表面に存在する分子または原子を放出させる方法である。具体的には、まず多孔質膜をチャンバ内に配置し、次いでチャンバ内を減圧状態とした後、チャンバ内に雰囲気ガスを導入しながら高周波電圧を印加することによって、多孔質膜の表面をエッチングする。
【0027】
スパッタエッチングの雰囲気ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスや、窒素や酸素等が挙げられる。中でも、入手が容易なアルゴンや酸素を用いることが好ましく、エッチング効率にも優れ、オイル付着後の通気度がより高い点から、酸素が特に好ましい。
【0028】
スパッタエッチングにおいて高周波電圧の周波数は、例えば、1〜100MHzであり、好ましくは5〜50MHzである。また、チャンバ内の圧力は、特に限定されないが、例えば、0.05〜200Paであり、好ましくは0.5〜100Paである。
【0029】
スパッタエッチングを行う際のエネルギー量(単位面積あたりの電力と処理時間との積)は、1〜1000J/cm
2が好ましく、オイル付着後の通気度がより高い点から、31〜500J/cm
2がより好ましく、40〜400J/cm
2がさらに好ましく、50〜300J/cm
2が特に好ましく、55〜200J/cm
2が最も好ましい。
【0030】
(撥油処理工程E)
次に、粗面化処理を施した多孔質膜に撥油処理を施す。具体的には、撥油処理剤溶液を多孔質膜に塗布して乾燥させる。撥油処理剤溶液を塗布する方法は、特に制限されず、例えば、スプレー法、スピンコート法、ディッピング法、ロールコーター法等を用いることができる。例えば、ディッピング法によって塗布する場合、多孔質膜を撥油処理剤溶液に浸漬する条件は、本発明の効果を奏する限り特に制限されない。浸漬温度としては、特に限定されないが、5〜35℃程度が好ましい。浸漬時間としては、特に限定されないが、2〜60秒程度が好ましい。
【0031】
撥油処理剤溶液における撥油処理剤濃度は、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜5.0重量%がより好ましい。
【0032】
撥油処理剤としては、特に限定されないが、フッ素系撥油処理剤が好ましい。フッ素系撥油処理剤としては、例えば、フッ素含有側鎖を有するアクリル系ポリマー、フッ素含有側鎖を有するウレタンポリマー、およびフッ素含有側鎖を有するシリコーン系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。このようなフッ素系撥油処理剤としては、市販品を使用可能である。例えば、ダイキン社製「ユニダイン(登録商標)」シリーズ;信越化学社製X−70−029C、X−70−043;AGCセイミケミカル社製「エスエフコート(登録商標)」シリーズ(例えば、SIF−200)等を使用すればよい。また、シリコーン系ポリマーのフッ素系撥油処理剤としては、例えば、信越化学社製KP−801M等がある。
【0033】
撥油処理剤溶液に使用する溶媒には、フッ素系側鎖に親和性の高いフッ素系の溶媒が好ましい。前記したフッ素系側鎖に親和性の高いフッ素系の溶媒は、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、信越化学社製FSシンナー、住友スリーエム社製フロリナート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
撥油処理剤溶液の塗布後の乾燥は、特に限定されず、自然乾燥(風乾)させてもよく、加熱乾燥がオイル付着後の通気性に優れることから、40〜120℃の加熱乾燥が好ましく、50〜110℃の加熱乾燥がより好ましい。
【0035】
撥油処理は、通気フィルタの全体的に施されていることが好ましいが、粗面化処理を施した側の片面のみに施されていてもよい。
【0036】
本発明の通気フィルタは、撥油剤により被覆された表面を有する多孔質膜を備えていればよく、前記多孔質膜以外に、当該多孔質膜を補強するための通気性支持体との積層体を備えていてもよい。通気性支持体を用いると、差圧による通気フィルタの変形を抑制できる。通気性支持体は、単層であってもよく、2以上の層の積層体であってもよい。ただし、撥油性の発現のために、通気フィルタの少なくとも一方の主面は、撥油剤により被覆された多孔質膜の表面により構成される。
【0037】
通気性支持体としては、超高分子量ポリエチレン多孔質膜、不織布、織布、ネット、メッシュ、スポンジ、フォーム、金属多孔質膜、金属メッシュ等を用いることができる。強度、弾性、通気性、作業性および容器への溶着性等の観点から、通気性支持体としては、不織布および超高分子量ポリエチレン多孔質膜が好ましい。
【0038】
多孔質膜と通気性支持体とは、単に重ね合わせるだけでもよく、接着剤、ホットメルト樹脂等の接着層を用いて接着してもよく、加熱溶着、超音波溶着、振動溶着等により溶着してもよい。
【0039】
本発明の撥油剤により被覆された表面を有する多孔質膜を備える通気フィルタのフィルタ表面における20μlのヘキサデカンまたはペンタデカンの転落角としては、60°以下であり、55°未満が好ましい。転落角の測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
【0040】
本発明の通気フィルタとしては、後記する実施例のように、自動車用ATFオイルまたはペンタデカンを付着させた後において、JIS P 8117:2009(ガーレー法)に基づいて測定した通気度が65.0秒/100cc以下であることが好ましく、45.0秒/100cc以下であることがより好ましく、30.0秒/100cc以下であることがさらに好ましい。また、本発明の通気フィルタとしては、後記する実施例のように、通気フィルタ表面にATFオイルまたはペンタデカンを付着させ、通気フィルタを90度傾けて1分間放置してATFオイルまたはペンタデカンを自然落下させたのちのJIS P 8117:2009(ガーレー法)に基づいて測定した通気度が、ATFオイルまたはペンタデカンを付着させる前の通気度に比較して400%以上悪化しないものが好ましく、300%以上悪化しないものがより好ましく、100%以上悪化しないものがさらに好ましい。
【0041】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
【実施例】
【0042】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0043】
[実施例1]
PTFE多孔質膜として、日東電工社製のフッ素樹脂多孔質フィルム「TEMISH(登録商標) 型番:NTF810A」(厚さ310μm、平均孔径0.5μm、気孔率76%)を用いた。PTFE多孔質膜に、粗面化処理工程Dとして、雰囲気ガスに酸素ガスを用い、75J/cm
2のエネルギー量でスパッタエッチング処理を行った。撥油処理剤として信越化学社製X−70−043を用い、これを濃度3.0重量%となるように信越化学社製FSシンナーで希釈し、撥油処理剤溶液を調製した。この撥油処理剤溶液に、粗面化処理を施したPTFE多孔質膜を約3秒間浸漬し、ゆっくり引き上げて室温で放置して乾燥させた(撥油処理工程E)。得られた撥油剤により被覆された表面を有するPTFE多孔質膜を通気フィルタとした。
【0044】
[実施例2]
スパッタエッチング処理のエネルギー量を50J/cm
2とした以外は、実施例1と同様にしてPTFE多孔質膜を得て、通気フィルタとした。
【0045】
[実施例3]
スパッタエッチング処理のエネルギー量を25J/cm
2とした以外は、実施例1と同様にしてPTFE多孔質膜を得て、通気フィルタとした。
【0046】
[比較例1]
PTFE多孔質膜として、日東電工社製のフッ素樹脂多孔質フィルム「TEMISH(登録商標)NTF810A」(厚さ310μm、平均孔径0.5μm、気孔率76%)をそのまま用いて、粗面化処理と撥油処理を行わず、撥油性のない通気フィルタとした。
【0047】
[比較例2]
スパッタエッチング処理を行わず、すなわち粗面化処理を施さずに、撥油処理を行った以外は、実施例1と同様にして得られたPTFE多孔質膜を通気フィルタとした。
【0048】
[比較例3]
エネルギー量75J/cm
2で粗面化処理を行い、撥油処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして得られたPTFE多孔質膜を通気フィルタとした。
【0049】
[実施例4]
スパッタエッチング処理のエネルギー量を200J/cm
2とした以外は、実施例1と同様にしてPTFE多孔質膜を得て、通気フィルタとした。
【0050】
[比較例4]
エネルギー量200J/cm
2で粗面化処理を行い、撥油処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして得られたPTFE多孔質膜を通気フィルタとした。
【0051】
[試験]
以上のようにして得られた実施例1〜4および比較例1〜4の通気フィルタについて転落角の測定と、通気度の測定を実施した。
【0052】
通気度の測定は、JIS P 8117:2009(ガーレー法)に基づいて測定した。まず得られた通気フィルタの通気度を測定した。次に、通気フィルタの表面(実施例1〜4および比較例3、4では粗面化処理を施した面)に自動車用ATFオイル(商品名:ATF220、モービル社製)または複写機用のインクと同等の表面張力を有する、ペンタデカンを付着させ、通気フィルタを90°傾けて1分間放置してATFオイルまたはペンタデカンを自然落下させた後、通気度を測定した。
【0053】
転落角の測定は、接触角測定装置(dataphysics社製 Contact Angle System OCA20)を用い、通気フィルタの表面(実施例1〜4および比較例3、4では粗面化処理を施した面)にヘキサデカンまたはペンタデカンを20μl滴下し、通気フィルタを徐々に傾けていき、ヘキサデカンまたはペンタデカンの液滴が滑り始める時の傾きの角度を測定した。
【0054】
上記の試験の結果を下記表1、2に示す。また、実施例1および比較例2の通気フィルタを用いて、ATFオイルを自然落下させた際の写真を
図1および
図2に示す。さらに、実施例1、比較例1および実施例4において、粗面化処理を行った後のPTFE多孔質膜の断面のSEM画像(10000倍)を
図3および
図4、5に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
PTFE多孔質膜に粗面化処理および撥油処理を施した実施例1〜4の通気フィルタは、ヘキサデカンまたはペンタデカン転落角が60°以下であり、オイルまたはペンタデカン付着後の通気度の劣化が少なく、オイルやインクと同等の表面張力を有する液体が付着する環境下においても、孔が目詰まりすることなく、良好な通気性を維持できることを示した。これに対し、撥油処理を施していない比較例1、3、4の通気フィルタはヘキサデカンやペンタデカンが浸透してしまい、また粗面化処理を施していない比較例1、2の通気フィルタはヘキサデカンまたはペンタデカンの転落角が60°以上であった。これら比較例1〜4の通気フィルタは、オイルまたはペンタデカン付着後の通気度が大幅に悪化してしまい、通気性を維持できなかった。また、
図3の写真から、粗面化処理によってPTFE多孔質膜の表面に、凹凸形状が形成されており、凹凸高さが約1.5μm程度であることが確認された。一方、
図4の写真から、粗面化処理をしていない比較例1のPTFE多孔質膜表面は、平滑であり、凹凸は形成されていなかった。