特許第6816951号(P6816951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816951
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】シェアハウス
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/04 20060101AFI20210107BHJP
【FI】
   E04H1/04 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-247185(P2015-247185)
(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公開番号】特開2017-110457(P2017-110457A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兼 憲一郎
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−088438(JP,A)
【文献】 特開2002−174039(JP,A)
【文献】 特開2010−255296(JP,A)
【文献】 特開2009−003626(JP,A)
【文献】 特開2000−210233(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0275673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02 − 1/04
E04H 1/12
E04H 3/00 − 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各居住者の個室をプライベート空間としながら、リビングおよび設備を共用するアパートメントとしてのシェアハウスであって、
屋外に通じる第1の出入口を有し、リビングおよびキッチンを含む、全居住者が使用可能なパブリック空間と、
前記パブリック空間に隣接し、かつ、前記パブリック空間との境界部に第2の出入口が配置された複数のセミパブリック空間とを備え、
前記各セミパブリック空間は、第3の出入口を有する複数の個室と、前記複数の個室に隣接し、前記複数の個室それぞれの居住者が共用するグループ共用部とを含み、
前記各グループ共用部には、リビングおよびキッチンがなく、前記第2の出入口に隣接する玄関部、前記玄関部と前記複数の個室との間に設けられた廊下、および、前記複数の個室それぞれの居住者の私物を収納する収納部が設けられ、
前記収納部は、前記玄関部に設けられたシューズクロークと、前記廊下に隣接する第4の出入口を有し、内部に歩行空間が設けられた収納室とを含む、シェアハウス。
【請求項2】
前記パブリック空間は、前記第1の出入口から前記第2の出入口に至る通路部と、当該通路部との境界部に第5の出入口を有する総合共用部とを含み、
前記総合共用部は、前記リビング、前記キッチン、ダイニング、および、全居住者の個人用品をストック可能なストックルームを含み、
前記キッチンまたは前記ダイニングは、前記ストックルームよりも前記第5の出入口に近い位置に設けられている、請求項1に記載のシェアハウス。
【請求項3】
前記総合共用部は、アウトドアリビングをさらに含む、請求項に記載のシェアハウス。
【請求項4】
前記第1〜第3の出入口には、開閉可能なドア部材が設けられており、
前記ドア部材は、共通の鍵で解錠可能な施錠手段を有している、請求項1〜のいずれかに記載のシェアハウス。
【請求項5】
前記個室の第3の出入口に設けられた前記ドア部材の施錠手段の施錠状況に基づいて、その個室に設けられた特定の電気機器の電源投入状態を制御する電源制御装置をさらに備える、請求項に記載のシェアハウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数人が居住するシェアハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
各居住者の個室をプライベート空間としながら、リビング、および、キッチンや浴室などの設備を共用するシェアハウスは、日本国内にも根付きつつある。一般的なシェアハウスでは、個室の出入口は全居住者で共用する空間(リビングなど)との境界部に設けられる。そのため、個室の出入口の扉に鍵が掛けられないような場合には、居住者のプライバシーを保護することは難しい。
【0003】
一方で、近年、ソーシャルアパートメントのように、個室を鍵付きとし、各居住者のプライバシーを保ちつつ、人とのつながり(ソーシャルコミュニケーション)を重視したソーシャル型のシェアハウスも存在する。
【0004】
また、昔から存在する「寮」などの寄宿舎は、シェアハウスに似た部屋構成(間取り)を採用している。特開平6−88438号公報(特許文献1)に開示された寮は、建物の1F〜3Fの全体が、総合共用部分と複数のブロックとに区分されている。総合共用部分は、談話室、食堂、プレイルーム、総合玄関ホール等からなり、各ブロックは、各個人の宿泊室となる数個の個室と、入口を有する共用部分とで構成されている。各ブロックの共用部分は、居間と、浴室、炊事室等の生活設備室とで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−88438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような寄宿舎では、1ブロック内の各個室の使用者が、共用部分で生活を共にでき、そのブロック内の数名程度で家族的コミュニケーションを図ることができる。しかしながら、特許文献1の部屋構成では、ブロック内の居住者のうちの何人かは、食事や入浴など用事のあるとき、あるいは、意図的に居間で交流したい場合にしか、共用部分に出てこない可能性がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、近隣の個室の居住者同士が、より自然にコミュニケーションを図ることのできるシェアハウスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従うシェアハウスは、複数人が居住するシェアハウスであって、屋外に通じる第1の出入口を有し、全居住者が使用可能なパブリック空間と、パブリック空間に隣接し、かつ、パブリック空間との境界部に第2の出入口が配置された複数のセミパブリック空間とを備える。各セミパブリック空間は、第3の出入口を有する複数の個室と、複数の個室それぞれの居住者が共用するグループ共用部とを含み、グループ共用部には、複数の個室それぞれの居住者の私物を収納する収納部が設けられている。
【0009】
好ましくは、収納部は、第4の出入口を有する収納室を含む。
【0010】
また、収納部は、第2の出入口に隣接する玄関部に設けられたシューズクロークを含んでいてもよい。
【0011】
好ましくは、パブリック空間は、第1の出入口から第2の出入口に至る通路部と、当該通路部との境界部に第5の出入口を有する総合共用部とを含み、総合共用部は、キッチン、ダイニング、および、全居住者の個人用品をストック可能なストックルームを含む。この場合、キッチンまたはダイニングは、ストックルームよりも第5の出入口に近い位置に設けられていることが望ましい。
【0012】
総合共用部は、屋内リビングと、アウトドアリビングとをさらに含んでいてもよい。
【0013】
好ましくは、第1〜第3の出入口には、開閉可能なドア部材が設けられ、ドア部材は、共通の鍵で解錠可能な施錠手段を有している。
【0014】
さらに、シェアハウスは、個室の第3の出入口に設けられたドア部材の施錠手段の施錠状況に基づいて、その個室に設けられた特定の電気機器の電源投入状態を制御する電源制御装置をさらに備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パブリック空間とは別のセミパブリック空間には、複数の個室とともに、これら個室の居住者の私物を収納する収納室とが設けられる。したがって、セミパブリック空間に含まれる個室(近隣の個室)の居住者同士が、自然にコミュニケーションを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係るシェアハウスの構成を概念的に示す図である。
図2】本発明の実施の形態におけるパブリック空間の構成例を示す平面図である。
図3】本発明の実施の形態におけるセミパブリック空間の構成例を示す平面図である。
図4】本発明の実施の形態において、ある居住者が所持する鍵で通過できる出入口について、概念的に示す図である。
図5】本発明の実施の形態の変形例におけるパブリック空間の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
本実施の形態に係るシェアハウスは、複数人が、リビング、および、キッチンや浴室などの設備を共用して居住する、比較的大規模の住宅である。
【0019】
(概略構造について)
はじめに、図1を参照して、本実施の形態に係るシェアハウス1の概略構造について説明する。
【0020】
シェアハウス1は、全居住者が使用可能なパブリック空間2と、所定数(複数)の居住者が使用可能な複数のセミパブリック空間3とで構成されている。
【0021】
パブリック空間2は、全居住者で共用する総合共用部21と、通路部22とで構成されている。総合共用部21は、少なくとも、キッチン、ダイニング、およびリビングを含む。通路部22は、廊下および階段を含む。通路部22は、総合共用部21と、複数のセミパブリック空間3とに隣接している。
【0022】
各セミパブリック空間3は、所定数(複数)の個室31と、グループ共用部32とで構成されている。このように、各セミパブリック空間3には、複数の個室31が、1ユニットとして配置されている。これにより、1ユニットに含まれる複数の個室31の居住者は、1つのグループを形成する。グループ共用部32は、セミパブリック空間3内の全ての個室31と、パブリック空間2の通路部22とに隣接している。
【0023】
図1に示されるように、屋外とパブリック空間2との境界部、パブリック空間2とセミパブリック空間3との境界部、セミパブリック空間3内のグループ共用部32と個室31との境界部に、それぞれ、出入口41〜43が設けられている。すなわち、各居住者は、出入口(第1の出入口)41を介して屋外からパブリック空間2、出入口(第2の出入口)42を介してパブリック空間2からセミパブリック空間3、出入口(第3の出入口)43を介してセミパブリック空間3のグループ共用部32から個室31、という経路で、屋外から自身の個室31に入室することができる。
【0024】
具体的には、出入口41は、シェアハウス1としての建物自体のエントランス(以下「建物エントランス」という)に位置している。出入口42は、通路部22とグループ共用部32との間の仕切壁に設けられている。出入口43は、グループ共用部32と各個室31との間の仕切壁に設けられている。これらの出入口41〜43には、それぞれ、開閉可能なドア部材41a,42a,43aが設けられている。
【0025】
また、パブリック空間2内の通路部22と総合共用部21との境界部(仕切壁)にも、開閉可能なドア部材44aを有する出入口(第5の出入口)44が設けられている。シェアハウス1に設けられるドア部材は、たとえば、開き扉および引き戸のいずれかであるものとするが、他種の戸であってもよい。
【0026】
なお、パブリック空間2の総合共用部21とセミパブリック空間3とは異なる階に配置されていてもよい。また、複数のセミパブリック空間3は、同一フロアに隣接して設けられていなくてもよく、階ごとに1つ設けられていてもよい。
【0027】
(パブリック空間の総合共用部の構成例)
図2を参照して、パブリック空間2の総合共用部21の構成例について説明する。
【0028】
総合共用部21は、キッチン51と、ダイニング52と、複数のリビング53,54と、ストックルーム55と、トイレ56とを含む。本実施の形態では、総合共用部21の出入口44が1つだけであり、これらの部屋空間は全て、広い一つの区画室の中に設けられている。
【0029】
総合共用部21において、ストックルーム55およびトイレ56は、各々、閉鎖された部屋空間(室)として配置されているが、他のキッチン51、ダイニング52、およびリビング53,54は、明確な仕切りなく、開放された空間となっている。
【0030】
キッチン51には、調理設備、大型冷蔵庫、調理器具の収納棚などが配置されている。キッチン51には、ダイニング52側を向く対面カウンター51aが設けられている。そのため、調理をする居住者と、対面カウンター51aに向かって座る居住者、あるいは、その周囲で寛ぐ居住者との交流が図り易くなっている。
【0031】
ダイニング52には、長さのある大型テーブル52aが設けられている。そのため、ダイニング52において、パーティー風に皆で楽しい夕食タイムを過ごすことができる。
【0032】
リビング53とリビング54とは、いずれも、居住者が自由に寛げる空間であるが、互いに異なる寛ぎ方ができるように構成されている。具体的には、リビング53には、比較的大型のソファやテーブルが配置されており、リビング53はラウンジスタイルの寛ぎ空間となっている。したがって、リビング53において、気の合う仲間とゆったりソファで語り合うことができる。これに対し、リビング54にはソファやテーブルといった大型の家具は配置されておらず、リビング54はローリビングスタイルの寛ぎ空間となっている。したがって、リビング54において、カーペットに直接座って寛ぐことができる。
【0033】
ストックルーム55は、全居住者分の個人用品(たとえば調味料やグッズ)をストック可能である。具体的には、ストックルーム55は、全居住者それぞれに割り当てられた多数の収納スペースを含む。各収納スペースは、たとえば、引き出しや扉付きのボックスとして形成される。
【0034】
このように、総合共用部21には複数のリビング53,54が設けられているため、1つの大きなリビングが設けられている場合よりも、比較的少人数で趣味について語り合うなど、交流を深めることができる。つまり、各居住者は、総合共用部21のなかにも、自分の居心地の良い居場所を見付けることができる。そのため、ダイニング52での食事が終わった後も、総合共用部21において、異なるグループの居住者(他のセミパブリック空間3に属する居住者)とも、コミュニケーションを図ることができる。
【0035】
(セミパブリック空間の構成例)
図3を参照して、セミパブリック空間3の構成例について説明する。図3の例では、各セミパブリック空間3は、4つの個室31を含んでいる。この場合、セミパブリック空間3を使用する居住者は、4人である。なお、セミパブリック空間3内の個室31の個数は、複数(2個以上)であればよく、全て同じでなくてもよい。
【0036】
各個室31には、ベッド31a、デスク31b、小型冷蔵庫31c、収納スペース31dが設けられている。各個室31は、日常生活を送るための基本設備(キッチン、トイレ、浴室など)はなく、たとえば寝室のように、主に睡眠をとる際に利用する部屋である。4つの個室31の大きさ(面積)は、全て同じでなくてもよい。
【0037】
グループ共用部32は、玄関部61と、トイレ62と、洗濯室63と、浴室64と、洗面室65と、ミニシンク66とを含む。グループ共用部32に、浴室64やトイレ62といった衛生室が設けられているため、居住者は、パブリック空間2でなく、セミパブリック空間3において入浴等を済ますことができる。なお、パブリック空間2の総合共用部21にも浴室が設けられていてもよい。
【0038】
また、パブリック空間2に広いキッチン51が設けられているが、グループ共用部32にもミニシンク66が設けられることで、シェアハウス1によれば、短時間で軽食を済ませたい場合にも対応することができる。
【0039】
このように、グループ共用部32において、グループ単位で共用可能な設備が設けられているため、グループ内において親密なコミュニケーションを図ることができる。しかしながら、グループ共用部32には、基本的にリビングは設けられておらず、食事や団欒はパブリック空間2において行われるため、衛生目的や軽食目的が無ければ、グループ共用部32で過ごす時間は極めて短くなってしまう。そうすると、せっかく、パブリック空間2とプライベート空間(個室31)との間の中間領域となるグループ共用部32を設けても、グループ内での交流は希薄なものとなってしまう可能性もある。
【0040】
そこで、本実施の形態では、グループ共用部32に収納室67を設けることで、グループ共用部32での交流の機会を増やすこととしている。収納室67は、複数の個室31それぞれを使用する居住者の私物を収納することのできる部屋である。つまり、収納室67は、グループ共用部32の廊下68に隣接する出入口(第4の出入口)45を有している。本実施の形態では、出入口45にも、開閉可能なドア部材45aが設けられているが、ドア部材45aは無くてもよい。
【0041】
収納室67は、たとえば、グループの人数分の収納棚67aと、収納棚67aに面する歩行空間67bとを有している。個室31内にも収納スペース31dがあるが、収納スペース31dには貴重品や手元に置いておきたい私物を収納し、他の多くの私物(衣服や鞄など)を、グループ共用部32の収納室67の収納棚67aに収納することができる。
【0042】
このように、グループ共用部32に収納室67が設けられる場合、グループの居住者は、身支度の度に収納室67へ行くことになる。そのため、収納室67において、世間話や服選びの相談など、グループ内で会話をする機会を増やすことができる。その結果、本実施の形態によれば、セミパブリック空間3に含まれる個室31の居住者同士が、自然にコミュニケーションを図ることができる。
【0043】
また、シェアハウス1においては、典型的には、パブリック空間2内を土足、セミパブリック空間3内を裸足やスリッパで歩くため、各セミパブリック空間3の玄関部61には、居住者用のシューズクローク61aが設けられている。
【0044】
シューズクローク61aは、グループ内の居住者の私物の一つとして、靴を収納可能である。シューズクローク61aもまた、グループの人数分の収納棚と、収納棚に面する歩行空間とを有する。したがって、収納室67だけでなくシューズクローク61aにおいても、グループ内の居住者と顔を合わす機会を増やすことができる。
【0045】
さらに、たとえば浴室64前の脱衣所、あるいは、洗面室65にも、普段、その場所で使用する私物を収納するミニロッカーが設けられていてもよい。ミニロッカーは、グループの人数に応じて区画された収納棚の一種である。
【0046】
このように、本実施の形態では、収納部として、収納室67、シューズクローク61a、および、収納棚が設けられ、これらが、セミパブリック空間3の居住者によりシェアされる。したがって、セミパブリック空間3のグループ内での交流を促進することができる。
【0047】
(セキュリティについて)
シェアハウス1は、建物エントランスの出入口41のドア部材41a、セミパブリック空間3の出入口42のドア部材42a、および個室31の出入口43のドア部材43aは、全て、施錠手段を有している。また、総合共用部21の出入口44のドア部材44aも施錠手段を有していてもよい。これらのドア部材41a,42a,43a,44aは、たとえば電子ロックドアである。この場合、施錠手段は、解錠後、一定時間経過した場合に自動で施錠するロック機構を有している。
【0048】
このように、個室31のドア部材43aに施錠手段が設けられるため、個室31をセキュリティ性の高い完全個室とすることができる。また、パブリック空間2から個室31に至るまでの経路上に位置するドア部材42aにも施錠手段が設けられているため、セミパブリック空間3の収納室67が出入り自由であったとしても、他のセミパブリック空間3の居住者は入れないため、安心である。
【0049】
ここで、ドア部材41a〜44aの施錠手段は、居住者ごとに与えられる1つの鍵によって、解錠可能であることが望ましい。図4は、ある居住者が所持する鍵46で通過できる出入口について、概念的に示す図である。鍵46を所持する居住者は、グループAに属するある個室31の使用者であるものとする。
【0050】
図4に示されるように、居住者は、鍵46によって、建物エントランスのドア部材41aを解錠し、出入口41を介してパブリック空間2へ進むことができる。さらに、鍵46によって、パブリック空間2内のドア部材44aを解錠し、出入口44を介して総合共用部21に入室することができる。
【0051】
また、その鍵46で、グループAのセミパブリック空間3の出入口42のドア部材42aを解錠することができる。一方、鍵46で、他のグループ(たとえばグループB)のセミパブリック空間3の出入口42のドア部材42aを解錠することはできない。
【0052】
また、鍵46によって、居住者自身の個室31のドア部材43aを解錠できるが、同じグループA内であっても、他の居住者の個室31のドア部材43aを解錠することはできない。
【0053】
このように、本実施の形態によると、各居住者は、1つの鍵を所持するだけで、総合共用部21、セミパブリック空間3、および個室31に入室できるため、セキュリティ性と利便性とを両立することができる。
【0054】
なお、施錠手段は、たとえばカードキーなどの鍵46によって解錠可能であることとしたが、指紋等、人体の一部を用いた人物認証によって解錠可能であってもよい。あるいは、各居住者が保持する携帯端末(たとえばスマートフォン)との通信によって、解錠可能であってもよい。
【0055】
(電源および照明制御について)
本実施の形態のシェアハウス1は、個室31内の特定の電気機器の電源投入状態(オン状態/オフ状態)を制御する電源制御装置(図示せず)を備えている。特定の電気機器は、エアコン(空気調和機)および照明装置の少なくとも一方を含む。
【0056】
電源制御装置は、個室31のドア部材43aの施錠状況に基づいて、特定の電気機器の電源投入状態を制御する。より具体的には、電源制御装置は、鍵46による個室31の解錠および施錠状況を示す、施錠情報を記憶する記憶手段を有している。電源制御装置は、記憶手段に記憶された施錠情報に基づいて、個室31への退室が検知された場合、特定の電気機器の電源をオフする。
【0057】
シェアハウス1においては、パブリック空間2の電気料金だけでなく、個室31を含むセミパブリック空間3の電気料金も含めた全体の電気料金を、共益費で対応することが想定される。したがって、上述のような電源制御装置を設けることで、省エネルギー化を図れるだけでなく、共益費を抑制することが可能となる。
【0058】
一方で、特定の電気機器の電源投入は、自動ではなく、居住者からの指示に応じて行なわれることが望ましい。個室31への入室が検知される度に電気機器の電源をオンすると、必要ない場合にまで電気機器を作動させる必要があり、不経済であるからである。
【0059】
また、各セミパブリック空間3の玄関部61や廊下68には、人感センサ等により人が検知された場合にのみ、対応するエリアの照明をオン/オフする照明制御装置(図示せず)が設けられていてもよい。同様に、パブリック空間2の総合共用部21においても、エリア(キッチン51、ダイニング52、リビング53、リビング54、ストックルーム55、トイレ56)ごとに人の有無を検知し、人が検知された場合にのみ、各エリアの照明をオン/オフする照明制御装置(図示せず)が設けられていてもよい。
【0060】
さらに、パブリック空間2の総合共用部21に設置されたエアコンについても、設定時刻(たとえば午前1時と午前10時)になった場合に強制的に電源をオフするように、タイマー設定可能としてもよい。これにより、総合共用部21のエアコンの消し忘れによる電気料金の上昇を抑えることができる。なお、エアコンの電源をオフする時刻は、各エリアの利用状況に応じて設定および変更が可能であることが望ましい。
【0061】
(変形例)
上記実施の形態では、図2に示されるように総合共用部21が1個所にまとめて設けられた例を示したが、パブリック空間2において、総合共用部21は複数個所に分散して設けられていてもよい。
【0062】
図5は、本実施の形態の変形例におけるパブリック空間2Aの構成例を示す平面図である。パブリック空間2Aは、第1の総合共用部211と第2の総合共用部212とを含む。第1の総合共用部211は、キッチン51、ダイニング52、ストックルーム55を有している。第2の総合共用部212は、ソファが設けられたリビング53の他に、たとえばイベントスペース57を有している。イベントスペース57は、ヨガやカフェワークショップなどにも活用できる部屋空間である。
【0063】
第1の総合共用部211と第2の総合共用部212は、同じフロアに設けられているが、間に通路部22を挟んでいる。この場合、総合共用部211,212それぞれに、ドア部材44aを有する出入口44が設けられる。このように、主に食事をとるための区画室と、共通の趣味で交流したり、主に寛ぐための区画室とが別になっている。したがって、シェアハウス1に様々な生活パターン(たとえば、夜勤、早朝出勤など)の居住者が居住する場合であっても、各居住者は、それぞれの総合共用部211,212において、自分のペースで快適に過ごすことができる。
【0064】
本変形例では、第1の総合共用部211が、アウトドアリビング58を有している。なお、上述のリビング53(または54)は、アウトドアリビング58との対比において、屋内リビングと称してもよい。
【0065】
アウトドアリビング58は、外壁71を挟んで、キッチン51およびダイニング52に隣接するように設けられている。第1の総合共用部211が1階に設けられている場合、アウトドアリビング58は、たとえばテラスによって実現される。
【0066】
外壁71には、床面レベルから天井レベルまで上下方向に延在する窓71aが設けられており、窓71aを介してアウトドアリビング58に出入りすることができる。これにより、春や秋など、良い気候の際には、第1の総合共用部211の屋内空間からアウトドアリビング58へ出て、屋外(半屋外空間)で交流することもできる。したがって、本変形例によれば、様々な種類の居場所を提供することができる。
【0067】
また、アウトドアリビング58は、シェアハウス1の玄関アプローチ10の側方に設けられている。玄関アプローチ10は、建物エントランスに位置する出入口41へと繋がる屋外空間である。したがって、居住者は、玄関アプローチ10を通過する際に、アウトドアリビング58で団欒している居住者と会話することもでき、居住者同士が、より自然にコミュニケーションを図ることが可能となっている。
【0068】
なお、第2の総合共用部212にも、同様に、アウトドアリビングが設けられてもよい。さらに、いずれかの総合共用部が建物の2階以上に設けられる場合には、アウトドアリビングは、ベランダ(バルコニーを含む)によって実現されてもよい。あるいは、アウトドアリビングは、建物の屋上に設けられてもよい。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態(および変形例)に係るシェアハウス1は、グループ単位で使用可能な複数のセミパブリック空間3を備え、その中に個室31が含まれる。これにより、各居住者は、一般的なシェアハウスよりも安心して生活することができる。また、シェアハウス1によれば、仲の良い仲間で入居する、という新しい生活スタイルを実現することも可能である。また、単身者だけでなく、親子ファミリーやDINKS層の入居も可能となる。
【0070】
あるいは、セミパブリック空間3を男女グループ別に設けてもよい。その場合、セミパブリック空間3のグループ共用部32に配置する設備を、男女で異ならせてもよい。たとえば、女性グループ用の洗面室65は、パウダールームとして使用できるようにカウンターを設け、男性グループ用の洗面室65よりも広い空間としてもよい。また、女性グループ用の浴室64には、スチームサウナ等の機能を有する高機能バスルームが設けられてもよい。一方、男性グループ用の浴室64は、シャワーブースであってもよい。
【0071】
また、シェアハウス1は、居住者を、個室31の外へ仕向けるように構成されている。すなわち、複数の居住者の私物を収納するための収納部(収納室67など)がシェアされることで、必然的に、個室31から出る機会が増える。また、収納部は、セミパブリック空間3に設けられているため、少人数での交流を深めることができる。したがって、セミパブリック空間3内の近隣の居住者が全くの他人であったとしても、気負うことなく自然にコミュニケーションを図ることが可能である。
【0072】
なお、収納部には、収納室67、シューズクローク61a、および、収納棚が含まれることとしたが、少なくとも収納室67が設けられていればよい。あるいは、収納室67に限られず、これらのうち少なくとも1つが含まれていればよい。
【0073】
さらに、セミパブリック空間2内には、キッチンがなく、パブリック空間2の総合共用部21にキッチン51が設けられているため、食事の際にはパブリック空間2へ足を運ぶ習慣ができる。
【0074】
また、本実施の形態では、キッチン51またはダイニング52が、出入口44に近い位置に設けられている。キッチン51およびダイニング52において、他者とのコミュニケーションの大半が取られるため、このような配置とすることで、居住者が総合共用部21へ出向く動機付けとなり得る。なお、リビング53等、他の寛ぎ空間も出入口44に近い位置に設けられていてもよいが、キッチン51またはダイニング52は、少なくとも、ストックルーム55よりも出入口44に近い位置に設けられていればよい。
【0075】
また、総合共用部21のストックルーム55には、全居住者の個人用品をストックすることができる。そのため、ストックルーム55において、異なるグループの居住者とも顔を合わす機会が増え、交流範囲を自然と広げることができる。
【0076】
また、総合共用部21は、アウトドアリビング58を含めて複数エリアにリビング等の寛ぎ空間を設けている。そのため、総合共用部21内においても、気の合う者同士が、小集団で交流を図ることができる。
【0077】
また、総合共用部21あるいはグループ共用部32に、個人ではなかなか手が届かない高級家電等を設置することで、居住者の満足度を高めることもできる。たとえば、総合共用部21に、大型テレビまたはプロジェクタが設けられたシアタールームが配置されていてもよい。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1 シェアハウス、2,2A パブリック空間、3 セミパブリック空間、10 玄関アプローチ、21,211,212 総合共用部、22 通路部、31 個室、32 グループ共用部、41〜45 出入口、41a,42a,43a,44a,45a ドア部材、46 鍵、51 キッチン、52 ダイニング、53,54 (屋内)リビング、55 ストックルーム、56,62 トイレ、57 イベントスペース、58 アウトドアリビング、61 玄関部、61a シューズクローク、63 洗濯室、64 浴室、65 洗面室、66 ミニシンク、67 収納室、68 廊下、71 外壁。
図1
図2
図3
図4
図5