特許第6816989号(P6816989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6816989
(24)【登録日】2020年12月28日
(45)【発行日】2021年1月20日
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/0968 20060101AFI20210107BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20210107BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20210107BHJP
   B60W 30/182 20200101ALI20210107BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20210107BHJP
【FI】
   G08G1/0968
   G08G1/16 A
   G01C21/26 A
   B60W30/182
   B60W40/06
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-150224(P2016-150224)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-18423(P2018-18423A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 洋和
(72)【発明者】
【氏名】平林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】入江 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】保田 直彦
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 悟
【審査官】 秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−095627(JP,A)
【文献】 特開2016−050901(JP,A)
【文献】 特開2011−158427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/0968
B60W 30/182
B60W 40/06
G01C 21/26
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転可能な移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、
道路及び交差点の態様に関する情報を含む地図情報及び前記地図情報の更新により前記道路及び交差点の態様に関する情報が変更されたエリアである更新エリアの情報を含む更新情報を取得する地図情報取得部と、
前記位置情報及び前記更新情報に基づいて、前記移動体が前記更新エリアに接近したか否かを判定する判定部と、
前記移動体が前記更新エリアに接近したと判定された場合に、前記移動体に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する信号出力部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記移動体と前記更新エリアとの間の距離が、所定の値又は前記移動体の走行速度に応じて算出された値である距離閾値以下であるか否かに基づいて、前記移動体が前記更新エリアに接近したか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記信号出力部は、前記移動体が前記更新エリアに接近したと判定された場合、前記更新エリアについての前記道路及び交差点の態様に関する情報の変更内容に応じて前記切替指示信号を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記信号出力部は、前記移動体が接近した前記更新エリアについての前記道路及び交差点の態様に関する情報の変更内容に基づいて、前記更新エリアにおける自動運転が困難であるか否かを判定し、困難であると判定した場合に、前記切替指示信号を出力することを特徴とする請求項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記信号出力部は、前記移動体が前記更新エリアを通過した場合に、手動運転から自動運転への切り替えを指示する信号を出力することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1に記載の制御装置。
【請求項6】
自動運転可能な移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、
道路及び交差点の態様に関する情報を含む地図情報と前記地図情報の更新により自動運転可能になったエリアと更新前から自動運転可能なエリアとの境界に関する境界情報とを取得する地図情報取得部と、
前記位置情報と前記境界情報とに基づいて、前記移動体が前記境界に接近したか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、前記移動体に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する信号出力部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
制御手段を有する制御装置が実行する制御方法であって、
前記制御手段は、
道路及び交差点の態様に関する情報を含む地図情報及び前記地図情報の更新により前記道路及び交差点の態様に関する情報が変更されたエリアである更新エリアの情報を含む更新情報を取得するステップと、
移動体の位置情報及び前記更新情報に基づいて、前記移動体が前記更新エリアに接近したか否かの判定を行うステップと、
前記判定の結果に基づいて、前記移動体に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力するステップと、
を実行することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
道路及び交差点の態様に関する情報を含む地図情報及び前記地図情報の更新により前記道路及び交差点の態様に関する情報が変更されたエリアである更新エリアの情報を含む更新情報を取得するステップと、
移動体の位置情報及び前記更新情報に基づいて、前記移動体が前記更新エリアに接近したか否かを判定するステップと、
前記移動体が前記更新エリアに接近したと判定された場合に、前記移動体に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
道路及び交差点の態様に関する情報を含む地図情報及び前記地図情報の更新により前記道路及び交差点の態様に関する情報が変更されたエリアである更新エリアの情報を含む更新情報を取得するステップと、
移動体の位置情報及び前記更新情報に基づいて、前記移動体が前記更新エリアに接近したか否かを判定するステップと、
前記移動体が前記更新エリアに接近したと判定された場合に、前記移動体に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力するステップと、
を実行させるプログラムを記録することを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の運転モードの切り替えを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザの運転操作によらず、車両を自動的に走行させる自動運転制御が行われている。自動運転制御による走行(以下、自動運転走行と称する)では、例えば車両が先行車両との車間距離を一定に保ちつつ、先行車両を自動的に追従して走行を行う。
【0003】
このような自動運転走行に際し、地図情報と視界や風の影響等を考慮した追従条件とに基づいて、追従可能な候補車両から追従目標車両を設定する車両運転支援装置が考えられた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−31325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動運転走行では、先行車両との車間距離を保ちつつ、地図情報に基づいて走行を行う。地図情報は、道路や交差点の形状変更や新設に伴い、一定の頻度で更新される。
【0006】
最新の地図情報を有する車両は、地図情報に基づいて道路の形状等を把握しつつ、自動運転走行を行うことができる。一方、最新の地図情報を有しておらず更新前の地図情報のみを有する車両は、地図情報の更新によりデータが変更されたエリアを通過する際、センサやカメラ等により道路の形状等に関する情報を得て情報処理を行うことが必要となる。
【0007】
従って、例えば自車が最新の地図情報に基づいて自動運転走行を行い、先行車両が更新前の地図情報に基づいて自動運転走行を行っているような場合、データが変更されたエリアの付近で先行車両の速度が低下し、渋滞や車間距離の減少等、円滑な走行を妨げる事態が発生する虞がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題としては、地図情報の更新によりデータが変更されたエリアの付近を自動運転走行で通過する際、円滑な走行が妨げられる虞があるという問題が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、自動運転可能な移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、地図情報及び前記地図情報の更新によりデータが変更されたエリアである更新エリアの情報を含む更新情報を取得する地図情報取得部と、前記位置情報及び前記更新情報に基づいて、前記移動体が前記更新エリアに接近したか否かを判定する判定部と、前記移動体が前記更新エリアに接近したと判定された場合に、前記移動体に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する信号出力部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項7に記載の発明は、自動運転可能な移動体の位置情報を取得する位置情報取得部と、地図情報と前記地図情報の更新により自動運転可能になったエリアと更新前から自動運転可能なエリアとの境界に関する境界情報とを取得する地図情報取得部と、前記位置情報と前記境界情報とに基づいて、前記移動体が前記境界に接近したか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に応じて、前記移動体に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する信号出力部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項8に記載の発明は、制御手段を有する制御装置が実行する制御方法であって、前記制御手段は、地図情報及び前記地図情報の更新によりデータが変更されたエリアである更新エリアの情報を含む更新情報を取得するステップと、移動体の位置情報及び前記更新情報に基づいて、前記移動体が前記更新エリアに接近したか否かの判定を行うステップと、前記判定の結果に基づいて、前記移動体に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力するステップと、を実行することを特徴とする。
【0012】
請求項9に記載の発明は、コンピュータに、地図情報及び前記地図情報の更新によりデータが変更されたエリアである更新エリアの情報を含む更新情報を取得するステップと、移動体の位置情報及び前記更新情報に基づいて、前記移動体が前記更新エリアに接近したか否かを判定するステップと、前記移動体が前記更新エリアに接近したと判定された場合に、前記移動体に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力するステップと、を実行させることを特徴とする。
【0013】
請求項10に記載の発明は、コンピュータに、地図情報及び前記地図情報の更新によりデータが変更されたエリアである更新エリアの情報を含む更新情報を取得するステップと、移動体の位置情報及び前記更新情報に基づいて、前記移動体が前記更新エリアに接近したか否かを判定するステップと、前記移動体が前記更新エリアに接近したと判定された場合に、前記移動体に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力するステップと、を実行させるプログラムを記録することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】制御装置が実行する処理の動作ルーチンを示すフローチャートである。
図3】直線道路からカーブ道路への形状変更の例を示すイメージ図である。
図4】データの変更内容についての判定テーブルを示す図である。
図5】実施例2における処理の動作ルーチンを示すフローチャートである。
図6】地図情報の更新前から自動運転が可能なエリアと更新により可能となったエリア((a))及びその境界ラインを含むエリア((b))を模式的に示す図である。
図7】実施例3における処理の動作ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例1】
【0016】
制御装置10は、例えばドライバに運転経路の情報を提示するナビゲーション装置から構成され、自動運転制御による走行(以下、自動運転走行とも称する)が可能な移動体(例えば、車両)に搭載される。
【0017】
制御装置10は、制御部11、地図記憶部12、通信部13、位置情報取得部14、操作部15、表示部16及びセンサ17を有する。
【0018】
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成され、制御装置10の各部の制御を行う。
【0019】
地図記憶部12は、複数のエリアを含む地図情報を記憶する。この地図情報は、移動体が自動運転を行う際に必要な情報を含む高精度の地図データであり、通信ネットワークを介して接続された外部サーバ等の外部装置(図示せず)により定期的に更新される。また、地図記憶部12は、最新の地図情報の他、更新前の地図情報(すなわち、最新の地図情報よりもバージョンが古い地図情報)を記憶する。
【0020】
通信部13は、外部のサーバ装置(図示せず)と通信ネットワークを介して情報の送受信を行う。例えば、通信部13は、外部のサーバ装置から地図情報を取得して、地図記憶部12に供給する。
【0021】
位置情報取得部14は、GPS(Global Positioning System)センサから構成され、複数のGPS衛星から送信された電波を受信し、受信した電波に基づいて各GPS衛星からの距離を算出することにより、位置情報を取得する。上記の通り、制御装置10は車両に搭載されているため、位置情報取得部14が取得する位置情報は、制御装置10を搭載する車両(以下、自車と称する)の現在位置を示す位置情報となる。
【0022】
操作部15は、例えば表示部16の表示画面におけるタッチパネルや、ハードキーを有するコントローラから構成され、ユーザによる操作を受け付ける。操作部15は、ユーザによる操作に応じて、操作情報を制御部11に供給する。
【0023】
表示部16は、例えばタッチパネル機能を搭載した液晶画面から構成され、制御部11の制御に応じて、地図情報の画面表示を行う。
【0024】
センサ17は、加速度センサや角速度センサから構成され、加速度及び角速度を検出する。これにより、制御装置10を搭載する自車の加速度及び角速度が検出される。
【0025】
制御部11は、地図記憶部12に記憶されている最新の地図情報及び更新前の地図情報を読み出し、これらに基づいて更新情報を取得する。更新情報は、地図情報が更新された日時に関する情報や、地図情報の更新によってデータが変更されたエリアである更新エリアに関する情報を含む。ここで、「地図情報の更新によってデータが変更された」とは、道路及び交差点の態様(例えば、位置、形状及び法的な制限等)に関するデータが変更されたことを指し、建物の名称の変更等、道路及び交差点の態様に関係しないデータの変更を含まない。また、「更新エリアに関する情報」は、更新エリアの位置及びデータの変更内容についての情報を含む。制御部11は、例えば更新前の地図情報と更新後の地図情報とを比較し、地図情報の更新によりデータが変更されたエリアを抽出することによって、更新情報を取得する。
【0026】
また、制御部11は、更新情報及び自車の位置情報に基づいて、更新エリアに自車が接近したか否かを判定する。更新エリアに接近したか否かの判定は、自車と更新エリアとの間の距離が距離閾値以下であるか否かを判定することによって行う。距離閾値は、例えば所定の距離値(例えば、500m)や自車の走行速度に応じて算出された値によって定まる。自車が更新エリアに接近したと判定された場合、制御部11は、自車に対し、自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。
【0027】
また、制御部11は、自車のドライバが自動運転から手動運転に切り替えて運転を開始した後、自車が更新エリアから離れたか否かを判定する。更新エリアから離れたか否かの判定は、自車と更新エリアとの間の距離が距離閾値よりも大であるか否かを判定することによって行う。自車が更新エリアから離れたと判定した場合、制御部11は、自車に対し、手動運転から自動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。
【0028】
すなわち、制御部11は、地図情報及び更新情報を取得する地図情報取得部としての機能、更新エリアに自車が接近したか否か及び更新エリアから離れたか否かを判定する判定部としての機能、及び切替指示信号を出力する信号出力部としての機能を有する。
【0029】
なお、制御装置10を搭載する車両(自車)は、例えばCPUを搭載しており、制御装置10からの切替指示信号に応じて、運転モードを自動運転及び手動運転に切り替える。
【0030】
次に、制御装置10が実行する判定処理及び切替指示処理の各処理動作について、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
制御部11は、自車が自動運転制御による走行中であるか否かを判定する(ステップS101)。自動運転制御による走行中ではないと判定すると、処理を終了する。
【0032】
自動運転制御による走行中であると判定すると、制御部11は、地図情報記憶部12から最新の地図情報と更新前の地図情報とを読み出し、これらを比較して更新エリアに関する情報を抽出することにより、更新情報を取得する(ステップS102)。
【0033】
制御部11は、位置情報取得部14が取得した自車の位置情報及びステップS102で取得した更新情報に基づいて、自車が更新エリアに接近しているかどうかを判定する(ステップS103)。
【0034】
自車が更新エリアに接近していると判定すると、制御部11は、自車に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する(ステップS104)。
【0035】
制御部11は、位置情報に基づいて、自車が更新エリアから離れたかどうかを判定する(ステップS105)。
【0036】
自車が更新エリアから離れたと判定すると、制御部11は、自車に手動運転から自動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する(ステップS106)。
【0037】
以上の処理動作により、制御部11は、地図情報の更新により情報が更新された更新エリアに自車が接近した場合に、自車に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。自車のCPUは、切替指示信号に応じて、運転モードを自動運転から手動運転に切り替える。これにより、自車のドライバは手動運転により先行車両を追い越す、経路を変更する等の運転操作を行うことができる。
【0038】
従って、本実施例の制御装置10によれば、更新エリアにおいて先行車両の速度が低下した場合であっても、先行車両に追従する状態を解除して走行することができるため、渋滞や車間距離の減少等の円滑な走行を妨げる事態を避けて走行することが可能となる。
【実施例2】
【0039】
本実施例の制御装置は、実施例1の制御装置10と実質的に同じ構成を有し、制御部11が実行する接近判定処理及び切替指示処理の各処理動作において実施例1と異なる。
【0040】
制御部11は、地図記憶部12に記憶されている最新の地図情報及び更新前の地図情報に基づいて、地図情報の更新によってデータが変更されたエリア(更新エリア)に関する情報を含む更新情報を取得する。
【0041】
また、制御部11は、更新情報及び自車の位置情報に基づいて、更新エリアに自車が接近したか否かを判定する。更新エリアに接近したか否かの判定は、自車と更新エリアとの間の距離が距離閾値以下であるか否かを判定することによって行う。
【0042】
また、制御部11は、自車が更新エリアに接近したと判定した場合、その更新エリアにおけるデータの変更内容が所定の条件に当てはまるものであるか否かを判定する。そして、更新エリアにおけるデータの変更内容が所定の条件に当てはまると判定された場合、制御部11は、自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。
【0043】
この所定の条件は、更新後における自動運転の容易性に基づいて定められている。例えば、図3に示すように、道路の形状が直線からカーブに変更された場合、道路の形状がカーブである旨の地図情報を有しない車両は、センサやカメラ等により道路の形状等に関する情報を得て自動運転を行う必要がある。そして、カーブ形状の道路は自動運転の難易度が高く、センサやカメラ等による情報取得及び情報処理に時間がかかるため、仮に先行車両が最新の地図情報を有していない場合、速度が低下する可能性が高い。従って、制御部11は、直線道路からカーブ道路への変更が行われた更新エリアに自車が接近した場合、自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。
【0044】
一方、これとは逆にカーブ道路から直線道路への変更が行われた場合、直線道路では自動運転が容易であるため、センサやカメラ等による情報取得及び情報処理に時間がかからず、仮に先行車両が最新の地図情報を有しない場合であっても、速度が低下する可能性は低い。従って、制御部11は、自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力しない。
【0045】
図4は、制御部11が切替指示信号を出力するか否かを決定するための判定基準となる、更新エリアにおけるデータの変更内容についての条件(所定の条件)を示す判定テーブルJTである。
【0046】
上記の通り、データの変更内容が直進道路からカーブ道路への変更の場合、自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。同様に、データの変更内容が高速道路の新設、直進道路の新設、カーブ道路の新設及び車線の追加である場合、最新の地図情報を有しない車両にとって自動運転が困難となり、速度が低下する可能性が高いため、制御部11は、自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。
【0047】
一方、データの変更内容がカーブ道路から直進道路への変更の場合、自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力しない。
【0048】
次に、本実施例の制御装置10が実行する判定処理及び切替指示処理の各処理動作について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0049】
制御部11は、自車が現在自動運転制御による走行中であるか否かを判定する(ステップS201)。自動運転制御による走行中ではないと判定すると、処理を終了する。
【0050】
自動運転制御による走行中であると判定すると、制御部11は、地図情報記憶部12から最新の地図情報と更新前の地図情報とを読み出し、更新情報を取得する(ステップS202)。
【0051】
制御部11は、位置情報取得部14が取得した自車の位置情報及びステップS202で取得した更新情報に基づいて、自車が更新エリアに接近しているかどうかを判定する(ステップS203)。
【0052】
自車が更新エリアに接近していると判定すると、制御部11は、更新エリアにおけるデータの変更内容が判定テーブルJTに示される所定の判定条件に当てはまるか否かを判定する(ステップS204)。
【0053】
当てはまると判定すると、制御部11は、自車に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する(ステップS205)。
【0054】
制御部11は、位置情報に基づいて、自車が更新エリアから離れたかどうかを判定する(ステップS206)。
【0055】
自車が更新エリアから離れたと判定すると、制御部11は、自車に手動運転から自動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する(ステップS207)。
【0056】
以上のように、本実施例の制御装置10において、制御部11は、地図情報の更新によりデータが変更された更新エリアに自車が接近したか否かを判定する。接近したと判定された場合、制御部11は、さらに更新エリアにおけるデータの変更内容が所定の条件に当てはまるか否かを判定し、当てはまると判定された場合に、自車に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。
【0057】
自車のCPUは、切替指示信号に応じて、運転モードを自動運転から手動運転に切り替える。これにより、自車のドライバは、先行車両を追い越す、経路を変更する等の運転操作を行うことができる。従って、渋滞や車間距離の減少等の円滑な走行を妨げる事態を避けて走行することが可能となる。
【0058】
本実施例の制御装置10では、地図情報の更新においてデータが変更されたエリアのうち、そのデータの変更内容が先行車両の速度低下を招くような変更内容である更新エリアに近づいた場合、自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。一方、更新エリアにおけるデータの変更内容が先行車両の速度低下を招く可能性の低いものである場合には、自車は自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力しない。
【0059】
従って、本実施例の制御装置10によれば、先行車両の速度低下の可能性が低い更新エリアの付近では自動運転走行を継続させ、先行車両の速度低下の可能性が高い更新エリアの付近では自動運転から手動運転への切り替えさせることにより、できるだけ自動運転を継続させつつ、渋滞や車間距離の減少等の円滑な走行を妨げる事態を避けて走行することが可能となる。
【実施例3】
【0060】
本実施例の制御装置は、実施例1の制御装置10と実質的に同じ構成を有し、制御部11が実行する接近判定処理及び切替指示処理の各処理動作において実施例1と異なる。
【0061】
制御部11は、地図記憶部12から、最新の地図情報及び更新前の地図情報を取得する。これらの地図情報は、各エリアについての自動運転の可否に関する情報を含む。制御部11は、最新の地図情報及び更新前の地図情報に基づいて、地図情報の更新によって自動運転の可否に関する情報が更新され、自動運転が出来ないエリアから自動運転が可能なエリアへと変更されたエリアの情報を取得する。そして、制御部11は、地図情報の更新によって自動運転が可能に情報変更されたエリアと地図情報の更新前から自動運転が可能であったエリアとの境界である境界ラインの情報を取得する。また、制御部11は、境界ラインから所定距離の範囲に含まれるエリアを境界エリアとして設定する。
【0062】
例えば、制御部11は、図6(a)に示すような、地図情報の更新前から自動運転が可能であった第1エリア(図中、「APA」で示す)及び地図情報の更新によって自動運転が可能になった第2エリア(図中、「NPA」で示す)の情報を取得する。そして、制御部11は、第1エリア及び第2エリアの境界である境界ラインの情報を境界情報として取得する。
【0063】
また、制御部11は、図6(b)に「BA1」及び「BA2」として示すエリアを境界エリアとして設定する。境界エリアには、地図情報の更新前から自動運転が可能なエリアで且つ境界ラインから所定距離の範囲にあるエリア(図中、「BA1」で示す)と、地図情報の更新によって自動運転が可能になったエリアで且つ境界ラインから所定距離の範囲にあるエリア(図中、「BA2」で示す)とが含まれる。
【0064】
地図情報の更新前から自動運転が可能であったエリアと地図情報の更新により自動運転が可能になったエリアとの境界ラインに近いエリアでは、地図情報が更新されていない先行車両の速度低下により、渋滞や車間距離の減少等、円滑な走行を妨げる事態が起こる可能性がある。そこで、制御部11は、自車が境界ラインに接近したか否か(すなわち、境界エリアに進入したか否か)を判定し、接近したと判定した場合には、自車に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。
【0065】
また、制御部11は、自車のドライバが自動運転から手動運転に切り替えて運転を開始した後、自車が境界ラインから離れたか否か(すなわち、境界エリアから抜けたか否か)を判定する。自車が境界ラインから離れたと判定した場合、制御部11は、自車に手動運転から自動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。
【0066】
すなわち、制御部11は、地図情報及び地図情報の更新により自動運転可能になったエリアと更新前から自動運転可能なエリアとの境界ラインに関する境界情報を取得する地図情報取得部としての機能、境界ラインに自車が接近したか否かを判定する判定部としての機能、及び切替指示信号を出力する信号出力部としての機能を有する。
【0067】
次に、本実施例の制御装置10が実行する判定処理及び切替指示処理の各処理動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0068】
制御部11は、自車が自動運転制御による走行中であるか否かを判定する(ステップS301)。自動運転制御による走行中ではないと判定すると、処理を終了する。
【0069】
自動運転制御による走行中であると判定すると、制御部11は、地図情報記憶部12から最新の地図情報と更新前の地図情報とを読み出し、境界ライン情報を取得する(ステップS302)。
【0070】
制御部11は、位置情報取得部14が取得した自車の位置情報及びステップS302で取得した境界ライン情報に基づいて、自車が境界ラインに接近しているかどうか(すなわち、境界エリアに自車が進入したか否か)を判定する(ステップS303)。
【0071】
自車が境界ラインに接近していると判定すると、制御部11は、自車に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する(ステップS304)。
【0072】
制御部11は、位置情報に基づいて、自車が境界ラインから離れたかどうか(すなわち、自車が境界エリアを抜けたか否か)を判定する(ステップS305)。
【0073】
自車が境界ラインから離れたと判定すると、制御部11は、自車に手動運転から自動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する(ステップS306)。
【0074】
以上の処理動作により、制御部11は、地図情報の更新によって自動運転が可能に情報変更されたエリアと地図情報の更新前から自動運転が可能であったエリアとの境界ラインに自車が接近した場合に、自車に自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。
【0075】
自車のCPUは、切替指示信号に応じて、運転モードを自動運転から手動運転に切り替える。これにより、自車のドライバは、先行車両を追い越す、経路を変更する等の運転操作を行うことができる。従って、渋滞や車間距離の減少等の円滑な走行を妨げる事態を避けて走行することが可能となる。
【0076】
本実施例の制御装置10によれば、自動運転が従来から可能であったエリアと新しく自動運転が可能になったエリアとの境界ラインに近いエリアでは、自動運転から手動運転に切り替え、先行車両に追従する状態を解除して走行することができるため、境界ライン付近において生じる可能性がある渋滞や車間距離の減少等を避けて走行することが可能となる。
【0077】
なお、本発明の実施形態は、上記実施例で示したものに限られない。例えば、上記実施例では、制御部11が、更新前の地図情報と更新後の地図情報とを比較することによって、更新エリアの位置及びデータの変更内容に関する情報を含む更新情報を取得する例について説明した。しかし、地図情報の更新の前後において変化したデータのみを示す差分データが地図情報とは別に存在する場合には、当該差分データを取得することによって更新エリアに関する情報を取得しても良い。また、通信部13が更新情報を外部のサーバ装置(図示せず)から通信ネットワークを介して取得することにより、更新エリアに関する情報を取得しても良い。
【0078】
また、上記実施例1及び実施例2では、自車が更新エリアに接近しているか否かを判定するための基準となる距離閾値が、所定の距離値や自車の走行速度に応じて算出された値によって定まる例について説明した。しかし、距離閾値の定め方はこれに限られず、例えばユーザが任意に設定した距離を距離閾値としても良い。
【0079】
また、上記実施例3では、エリア単位での自動運転の可否を示す情報が地図情報に含まれている例について説明した。しかし、地図情報には、道路リンク(道路区間)毎に自動運転の可否を示す情報が示されていても良い。例えば、制御装置10は、地図情報の更新前から自動運転可能な道路リンクと地図情報の更新により自動運転可能になった道路リンクとの境目に位置するノード(交差点)の付近を境界エリアとして設定し、自車が境界エリア内の道路リンクに進入した場合に、自動運転から手動運転への切り替えを指示する切替指示信号を出力する。
【0080】
また、上記実施例では、制御装置10が切替指示信号を自車に出力し、自車のCPUがこれに応じて自動運転及び手動運転の切り替えを行う構成について説明した。しかし、切替指示信号の出力の態様はこれに限られない。例えば、自動運転及び手動運転の切り替えを指示するメッセージを表示部16に表示させ、自車のドライバに自動運転から手動運転への運転モードの切り替えを促す構成であっても良い。
【0081】
また、上記実施例では、地図記憶部12が最新の地図情報及び更新前の地図情報を記憶する例について説明した。しかし、通信部13が外部のサーバ装置(図示せず)から通信ネットワークを介して最新の地図情報及び更新前の地図情報を随時取得する構成であっても良い。
【0082】
また、上記実施例では、制御装置10がナビゲーション装置から構成され、自動運転走行を行う車両に搭載される例について説明した。しかし、制御装置10の形態はこれに限られず、例えばスマートフォン等の端末装置であっても良い。また、切替指示信号を通信ネットワークを介して送信するサーバ装置等から構成されていても良い。
【0083】
また、上記実施例では、制御部11が、地図情報及び更新情報を取得する地図情報取得部としての機能、更新エリア又は境界ラインに自車が接近したか否かを判定する判定部としての機能、及び切替指示信号を出力する信号出力部としての機能を有する例について説明した。しかし、地図情報取得部、判定部、信号出力部を夫々別個に設ける構成であっても良い。
【0084】
また、上記各実施例で説明した一連の処理は、例えばROMなどの記録媒体に格納されたプログラムに従ったコンピュータ処理により行うことができる。
【符号の説明】
【0085】
10 制御装置
11 制御部
12 地図記憶部
13 通信部
14 位置情報取得部
15 操作部
16 表示部
17 センサ
図1
図2
図3
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図5
図6
図7