(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ヘッドチップは、走査手段に対する位置決めとして、ベースプレートに対して位置決めする必要がある。このため、ベースプレートのうち噴射孔プレートに対向する箇所(噴射孔ガード)から噴射孔プレートに向かって突出して噴射孔プレートに当接するリブを設ける技術が開発されている。ヘッドチップは、ベースプレートのリブに当接しつつ、ベースプレートのリブ以外の部分との間に配置された接着剤を介してベースプレートに固定されている。
【0007】
ここで、噴射孔プレートの材質とアクチュエータプレートの材質とが異なると、それぞれの熱変化による膨張変形量や収縮変形量も異なる。この変形量の違いにより、アクチュエータプレートに反りが生じる。アクチュエータプレートに反りが生じると、ヘッドチップとベースプレートとの間に介在する接着剤に応力がかかる。しかしながら、ベースプレートには、噴射孔プレートに当接するリブが設けられているので、ヘッドチップとベースプレートとに挟まれた接着剤は、リブによって伸縮変形が制限され、応力を逃がすことが困難となる。その結果、アクチュエータプレートの反りが規制されて、アクチュエータプレートも応力を逃がすことができず、アクチュエータプレートの応力が増加する。
【0008】
しかもアクチュエータプレートは、複数のチャネルが形成されているので変形に対して弱く(壊れやすく)なっている。特にアクチュエータプレートにおける噴射孔プレートから露出した部分、すなわち噴射孔プレートが接合されていない部分は、噴射孔プレートとの接合による補強がされていないので、特に変形に対して弱くなっている。このため、アクチュエータプレートの熱変化時の応力を逃すことができず応力が増加する場合には、アクチュエータプレートが損傷する可能性がある。
【0009】
そこで本発明は、被記録媒体に記録される文字や画像の品質を低下させることなく、アクチュエータプレートの損傷を防止できる液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体噴射ヘッドは、噴射孔が形成された噴射孔プレートと、前記噴射孔プレートの一面側に取り付けられ、前記噴射孔に連通する複数のチャネルを有し、前記噴射孔プレートから露出した露出領域が設けられたアクチュエータプレートと、前記噴射孔プレートの他面側から、前記噴射孔プレートおよび前記アクチュエータプレートを覆うように設けられ、前記噴射孔を露出させる開口部が形成された噴射孔ガードと、少なくとも前記露出領域を含む前記アクチュエータプレートと前記噴射孔ガードとの間に設けられ、前記アクチュエータプレートと前記噴射孔ガードとを接着する接着層と、を備え、前記噴射孔ガードは、前記露出領域に対向する箇所から前記開口部の内周縁に亘って連続し、前記接着層を挟んで前記アクチュエータプレートに対向する非当接部と、前記開口部を挟んで前記非当接部とは反対側に設けられ、前記噴射孔プレートと前記噴射孔ガードとの位置決めを行う位置決め部と、を有する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、アクチュエータプレートのうち噴射孔プレートから露出した露出領域と、噴射孔ガードと、の間に接着層が設けられているので、アクチュエータプレートが反る際に、噴射孔プレートに補強されず変形に対して弱い露出領域が噴射孔ガードに直接当接して損傷してしまうことを防止できる。
しかも、噴射孔ガードは、アクチュエータプレートの露出領域に対向する箇所から開口部の内周縁に亘って連続し、接着層を挟んでアクチュエータプレートに対向する非当接部を有するので、アクチュエータプレートが反る際に接着層にかかる応力を開口部の内周縁に向かって逃がすことができる。よって、アクチュエータプレートが反ることによって生じる露出領域の応力を、接着層を通じて逃がすことができ、アクチュエータプレートの露出領域が損傷してしまうことを防止できる。
さらに、噴射孔ガードは、開口部を挟んで非当接部とは反対側に設けられ、噴射孔プレートと噴射孔ガードとの位置決めを行う位置決め部を有する。これにより、非当接部とアクチュエータプレートとの間に設けられた接着層の伸縮変形の制限によるアクチュエータプレートの応力増加を防止しつつ、噴射孔ガードに対する噴射孔の位置を高精度に決定することができる。このため、被記録媒体に記録される文字や画像の品質の低下を防止できる。
以上により、被記録媒体に記録される文字や画像の品質を低下させることなく、アクチュエータプレートの損傷を防止できる。
【0012】
上記の液体噴射ヘッドにおいて、前記非当接部には、前記接着層を構成する材料の前記開口部内への流出を阻止する堰き止め部が設けられていることが望ましい。
【0013】
本発明によれば、アクチュエータプレートと噴射孔ガードとを接着する際に、接着層を構成する材料が開口部内へ流出することが堰き止め部により阻止されるため、開口部内に露出した噴射孔が接着層を構成する材料により塞がられることを防止できる。したがって、被記録媒体に記録される文字や画像の品質の低下を防止できる。
【0014】
上記の液体噴射ヘッドにおいて、前記堰き止め部は、前記噴射孔プレートに向かって突出する凸部である、ことが望ましい。
【0015】
本発明によれば、接着層を構成する材料の流動を凸部において規制することができる。したがって、接着層を構成する材料が開口部内へ流出することを阻止できる。
【0016】
上記の液体噴射ヘッドにおいて、前記堰き止め部は、前記噴射孔ガードに形成された凹部である、ことが望ましい。
【0017】
本発明によれば、流動する接着層を構成する材料を凹部内に溜めることができる。したがって、接着層を構成する材料が開口部内へ流出することを阻止できる。
【0018】
上記の液体噴射ヘッドにおいて、前記位置決め部は、前記噴射孔プレートに向かって突出し、前記噴射孔プレートに当接する突出部である、ことが望ましい。
【0019】
本発明によれば、突出部は、噴射孔プレートに向かって突出し、噴射孔プレートに当接しているので、位置決め部として噴射孔プレートと噴射孔ガードとの位置決めを行うことができる。
【0020】
上記の液体噴射ヘッドにおいて、前記突出部は、前記開口部の内周縁に沿って延びるとともに、複数条設けられている、ことが望ましい。
【0021】
本発明によれば、突出部は、開口部の内周縁に沿って延びるので、接着層を構成する材料の流動を規制して開口部内へ流出することを阻止できる。また、突出部は、複数条設けられているので、各突出部の間に接着層を構成する材料を溜めることができ、接着層を構成する材料が開口部内に流出することをより確実に阻止できる。
【0022】
上記の液体噴射ヘッドにおいて、前記アクチュエータプレートを挟んで前記噴射孔プレートとは反対側に前記チャネルを閉塞するように設けられたカバープレートと、前記露出領域に取り付けられた回路基板と、を備え、前記複数のチャネルの延在方向の中央部で、前記チャネルと前記噴射孔とが連通されていることが望ましい。
【0023】
本発明によれば、いわゆるサイドシュートタイプのアクチュエータプレートに、上記構成を好適に用いることができる。
【0024】
本発明の液体噴射記録装置は、上記の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる搬送手段と、液体が収容された液体収容体と、前記液体噴射ヘッドと前記液体収容体との間で前記液体を循環させる液体循環手段と、を備えていることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、上述した液体噴射ヘッドを備えるので、被記録媒体に記録される文字や画像の品質を低下させることなく、アクチュエータプレートの損傷を防止可能な液体噴射記録装置を提供できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、アクチュエータプレートの露出領域と噴射孔ガードとの間に接着層が設けられているので、アクチュエータプレートが反る際に、露出領域が噴射孔ガードに直接当接して損傷してしまうことを防止できる。しかも、噴射孔ガードは、非当接部を有するので、アクチュエータプレートが反る際に接着層にかかる応力を開口部の内周縁に向かって逃がすことができる。よって、アクチュエータプレートが反ることによって生じる露出領域の応力を、接着層を通じて逃がすことができ、アクチュエータプレートの露出領域が損傷してしまうことを防止できる。さらに、噴射孔ガードは、開口部を挟んで非当接部とは反対側に設けられ、噴射孔プレートと噴射孔ガードとの位置決めを行う位置決め部を有するので、噴射孔ガードに対する噴射孔の位置を高精度に決定することができる。このため、被記録媒体に記録される文字や画像の品質の低下を防止できる。したがって、被記録媒体に記録される文字や画像の品質を低下させることなく、アクチュエータプレートの損傷を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(液体噴射記録装置)
図1は、第1実施形態の液体噴射記録装置の斜視図である。
図1に示すように、液体噴射記録装置1は、いわゆるインクジェットプリンタであって、紙等の被記録媒体Pを搬送する一対の搬送手段2,3と、インクが収容された液体収容体4と、被記録媒体Pにインク滴を噴射する液体噴射ヘッド5と、液体収容体4と液体噴射ヘッド5との間でインクを循環させる液体循環手段6と、液体噴射ヘッド5を被記録媒体Pの搬送方向(主走査方向)と直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段7と、を備えている。
【0029】
なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
また、以下の説明において、主走査方向をX方向、副走査方向をY方向、そしてX方向、およびY方向に共に直交する方向をZ方向として説明する。ここで、液体噴射記録装置1は、X方向、Y方向が水平方向となるように、且つZ方向が重力方向上下方向となるように載置して使用される。
【0030】
すなわち、液体噴射記録装置1を載置した状態では、被記録媒体P上を液体噴射ヘッド5が水平方向(X方向、Y方向)に沿って走査するように構成されている。また、この液体噴射ヘッド5から重力方向下方(Z方向下方)に向かってインク滴が噴射され、このインク滴が被記録媒体Pに着弾するように構成されている。
【0031】
搬送手段2は、Y方向に延設されたグリットローラ11と、グリットローラ11に平行に延設されたピンチローラ12と、グリットローラ11を軸回転させるモータ等の駆動機構(不図示)と、を備えている。
同様に、搬送手段3は、Y方向に延設されたグリットローラ13と、グリットローラ13に平行に延設されたピンチローラ14と、グリットローラ13を軸回転させる駆動機構(不図示)と、を備えている。
【0032】
液体収容体4は、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクの液体収容体4Y,4M,4C,4KがX方向に並んで設けられている。なお、液体収容体4は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類のインクが収容された液体収容体4Y,4M,4C,4Kに限られるものではなく、さらに多色のインクを収容したインクタンクを備えていてもよい。
【0033】
図2は、第1実施形態の液体噴射ヘッドおよび液体循環手段の概略構成図である。
図2に示すように、液体循環手段6は、液体噴射ヘッド5にインクを供給する液体供給管21、および液体噴射ヘッド5からインクを排出する液体排出管22を有する循環流路23と、液体供給管21に接続された加圧ポンプ24と、液体排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備えている。なお、液体供給管21および液体排出管22は、液体噴射ヘッド5を支持する走査手段7の動作に対応可能な可撓性を有するフレキシブルホースからなる。
【0034】
加圧ポンプ24は、液体供給管21内を加圧し、液体供給管21を介して液体噴射ヘッド5にインクを送り出している。これにより、液体噴射ヘッド5に対して液体供給管21側は正圧となっている。
吸引ポンプ25は、液体排出管22内を減圧し、液体噴射ヘッド5からインクを吸引している。これにより、液体噴射ヘッド5に対して液体排出管22側は負圧となっている。そして、インクは、加圧ポンプ24および吸引ポンプ25の駆動により、液体噴射ヘッド5と液体収容体4との間を、循環流路23を介して循環可能となっている。
【0035】
図1に戻り、走査手段7は、Y方向に延設された一対のガイドレール31,32と、一対のガイドレール31,32に移動可能に支持されたキャリッジ33と、キャリッジ33をY方向に移動させる駆動機構34と、を備えている。駆動機構34は、一対のガイドレール31,32の間に配設された一対のプーリ35,36と、一対のプーリ35,36間に巻回された無端ベルト37と、一方のプーリ35を回転駆動させる駆動モータ38と、を備えている。
【0036】
一対のプーリ35,36は、一対のガイドレール31,32の両端部間にそれぞれ配設されている。無端ベルト37は、一対のガイドレール31,32間に配設されている。この無端ベルト37にキャリッジ33が連結されている。キャリッジ33には、複数の液体噴射ヘッド5として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクの液体噴射ヘッド5Y,5M,5C,5KがY方向に並んで搭載される。なお、上記搬送手段2,3および走査手段7により、液体噴射ヘッド5と被記録媒体Pとを相対的に移動させる移動機構を構成している。
【0037】
(液体噴射ヘッド)
次に、液体噴射ヘッド5について詳述する。なお、液体噴射ヘッド5Y,5M,5C,5Kは、供給されるインクの色以外は何れも同一の構成からなるため、以下の説明ではまとめて液体噴射ヘッド5として説明する。
【0038】
図3は、第1実施形態の液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
図4は、第1実施形態の液体噴射ヘッドの説明図であって、液体噴射ヘッドを組み立てた状態における
図3のIV−IV線に沿う断面に相当する図である。なお、
図3では、後述する接着層55の図示を省略している。
図3および
図4に示すように、液体噴射ヘッド5は、後述する吐出チャネル61におけるチャネル延在方向(Y方向)の中央部からインクを吐出する、いわゆるサイドシュートタイプである。この種のサイドシュートタイプの液体噴射ヘッド5は、この液体噴射ヘッド5と液体収容体4との間でインクを循環させる循環式である。
【0039】
液体噴射ヘッド5は、ノズルプレート51(噴射孔プレート)、アクチュエータプレート52、カバープレート53および流路プレート54を含むヘッドチップ50と、ヘッドチップ50に接続された回路基板80と、ヘッドチップ50を支持して液体噴射ヘッド5をキャリッジ33に固定するベースプレート100と、ヘッドチップ50とベースプレート100とを接着する接着層55と、を主に備えている。
ヘッドチップ50は、ノズルプレート51、アクチュエータプレート52、カバープレート53および流路プレート54がこの順で接着剤等によりZ方向に積層された構成とされている。なお、以下の説明では、上記Z方向のうち、流路プレート54側を上方、ノズルプレート51側を下方として説明する。
【0040】
(アクチュエータプレート)
図3に示すように、アクチュエータプレート52は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料によりX方向に長い長方形の板状に形成されたプレートである。アクチュエータプレート52は、その分極方向が厚さ方向(Z方向)に沿って一方向に設定された、いわゆるモノポール基板である。アクチュエータプレート52には、X方向に並んで形成された複数のチャネル61,62からなるチャネル列(
図3中矢印で示す第1チャネル列63、第2チャネル列64、第3チャネル列65および第4チャネル列66)がY方向に4列配設されている。
【0041】
第2チャネル列64と第3チャネル列65との間には、アクチュエータプレート52の上面USから下面LSに貫通する第1開口H1が形成される。なお、各チャネル列63〜66の基本的構成は同一であるので、以下の説明では、主に第1チャネル列63について説明し、第2〜第4チャネル列64〜66における第1チャネル列63と対応する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
複数のチャネル61,62は、インクが充填される吐出チャネル61と、インクが充填されない非吐出チャネル62と、により構成されている。吐出チャネル61および非吐出チャネル62は、X方向で交互に並んで配列されている。
吐出チャネル61は、アクチュエータプレート52の上面USから下面LSに貫通する。吐出チャネル61は、上面USから下面LSに向かって突出するように形成されている。一方、非吐出チャネル62は、下面LSから上面USに向かって突出するように形成されている。
【0043】
ここで、第1チャネル列63に含まれる吐出チャネル61および非吐出チャネル62を第1吐出チャネル61aおよび第1非吐出チャネル62aとする。また、第2チャネル列64に含まれる吐出チャネル61および非吐出チャネル62を第2吐出チャネル61bおよび第2非吐出チャネル62bとする。さらに、第3チャネル列65に含まれる吐出チャネル61および非吐出チャネル62を第3吐出チャネル61cおよび第3非吐出チャネル62cとする。そして、第4チャネル列66に含まれる吐出チャネル61および非吐出チャネル62を第4吐出チャネル61dおよび第4非吐出チャネル62dとする。
【0044】
図3および
図4に示すように、隣接する第1チャネル列63および第2チャネル列64において、Y方向一方側の第1チャネル列63に含まれる第1吐出チャネル61aの第2チャネル列64側の端部と、Y方向他方側の第2チャネル列64に含まれる第2非吐出チャネル62bの第1チャネル列63側の端部は離間し、且つZ方向において重なる。また、第1チャネル列63に含まれる第1非吐出チャネル62aのY方向一方側の端部は、浅溝でアクチュエータプレート52のY方向一方側の側面に至るまで溝深さが一定となるように形成される。
【0045】
第2チャネル列64に含まれる第2非吐出チャネル62bのY方向他方側の端部は、浅溝で第1開口H1の側面に至るまでストレートに形成される。各浅溝は、下面LSからの深さがアクチュエータプレート52の厚さの1/2よりも深く設定されている。隣接する第3チャネル列65および第4チャネル列66についても、第1チャネル列63および第2チャネル列64と同様である。
【0046】
吐出チャネル61および非吐出チャネル62を上記のように形成することにより、第1チャネル列63および第2チャネル列64のY方向の幅と、第3チャネル列65および第4チャネル列66のY方向の幅を短縮することができる。
【0047】
第1チャネル列63に含まれる第1吐出チャネル61aは、X方向にピッチLで配列されている。第2〜第4チャネル列64〜66のそれぞれに含まれる各吐出チャネル61b〜61dも、X方向においてそれぞれピッチLで配列されている。そして、第1吐出チャネル61aと第2吐出チャネル61bは、X方向に1/2ピッチLずれている。
一方、第3吐出チャネル61cと第4吐出チャネル61dは、第1吐出チャネル61aと第2吐出チャネル61bとの関係と同様に、X方向に1/2ピッチLずれている。そして、第2吐出チャネル61bと第3吐出チャネル61cは、X方向に1/4ピッチLずれている。この結果、各吐出チャネル61a〜61dは、X方向について1/4ピッチLで配列し、チャネル列が単独の場合と比べ記録密度を4倍とすることができる。
【0048】
アクチュエータプレート52の下面LSには、Y方向の長さの短い吐出チャネル61a〜61dとY方向の長さの長い非吐出チャネル62a〜62dがX方向に交互に配列し、各チャネル列63〜66を構成している。これにより、アクチュエータプレート52に形成されている第1開口H1は、アクチュエータプレート52のY方向中央に位置している。
【0049】
図4に示すように、吐出チャネル61a〜61dおよび非吐出チャネル62a〜62dのX方向の両側面には、駆動電極68が形成されている。駆動電極68は、下面LSからのZ方向における寸法がアクチュエータプレート52の厚さの1/2程度に設定されている。
【0050】
アクチュエータプレート52の下面LSには、各チャネル列63〜66にそれぞれ対応して端子電極69が形成されている。
第1チャネル列63に関し、端子電極69は、アクチュエータプレート52のY方向に面する側面近傍に形成されている。端子電極69は、第1吐出チャネル61aの両側面の駆動電極68(
図4参照)と電気的に接続する共通端子電極と、第1吐出チャネル61aを挟む2つの第1非吐出チャネル62aの側面の駆動電極68と電気的に接続する個別端子電極(何れも不図示)と、を含む。
なお、個別端子電極は、アクチュエータプレート52のY方向に面する側面に沿って形成されている。一方、共通端子電極は、個別端子電極よりも第1吐出チャネル61a側に形成されている。
【0051】
第2チャネル列64に関し、端子電極69は、第1開口H1の側面近傍に形成されている。端子電極69は、第2吐出チャネル61bの両側面の駆動電極68(
図4参照)と電気的に接続する共通端子電極と、第2吐出チャネル61bを挟む2つの第2非吐出チャネル62bの側面の駆動電極68と電気的に接続する個別端子電極(何れも不図示)と、を含む。
なお、ここでの個別端子電極は、第1開口H1に沿って形成されている。一方、共通端子電極は、個別端子電極よりも第2吐出チャネル61b側に形成されている。また、第3チャネル列65および第4チャネル列66に関する端子電極69についても同様の構成を備えている。
【0052】
アクチュエータプレート52の下面LSには、ノズルプレート51から露出した露出領域52aが4箇所に設けられている。4箇所の露出領域52aは、アクチュエータプレート52の下面LSにおける、端子電極69が形成された各チャネル列63〜66に対応する領域である。具体的には、露出領域52aは、アクチュエータプレート52の下面LSのうち、Y方向両端部と、第1開口H1を挟んだY方向両側の端部と、に設けられている。
【0053】
(カバープレート)
図3および
図4に示すように、カバープレート53は、各チャネル列63〜66を閉塞するように、アクチュエータプレート52の上面USに接着された板状とされている。カバープレート53には、Y方向中央に形成される第2開口H2と、第1、第2入口側共通インク室90a,90bと、第1〜第4出口側共通インク室91a〜91dと、が形成されている。第2開口H2および各入口側共通インク室90a,90b,91a〜91dは、カバープレート53をX方向に沿って延びるスリットとされている。
【0054】
第1入口側共通インク室90aは、第1チャネル列63に含まれる第1吐出チャネル61aの第2チャネル列64側の端部と、第2チャネル列64に含まれる第2吐出チャネル61bの第1チャネル列63側の端部と、に連通している。また、第1出口側共通インク室91aは、第1吐出チャネル61aの他の端部に連通している。さらに、第2出口側共通インク室91bは、第2吐出チャネル61bの他の端部に連通している。
【0055】
一方、第2入口側共通インク室90bは、第3チャネル列65に含まれる第3吐出チャネル61cの第4チャネル列66側の端部と、第4チャネル列66に含まれる第4吐出チャネル61dの第3チャネル列65側の端部と、に連通している。また、第3出口側共通インク室91cは、第3吐出チャネル61cの他の端部に連通している。さらに、第4出口側共通インク室91dは、第4吐出チャネル61dの他の端部に連通している。
【0056】
(流路プレート)
図4に詳示するように、流路プレート54は、カバープレート53のアクチュエータプレート52とは反対側の主面に接合される。流路プレート54は、供給流路95と排出流路96と第3開口H3と、を備えている。第3開口H3は、流路プレート54をX方向に沿って延びるスリットとされている。供給流路95は、液体循環手段6の液体供給管21(
図2参照)に連通すると共に、カバープレート53の各入口側共通インク室90a,90bに連通している。排出流路96は、液体循環手段6の液体排出管22(
図2参照)に連通していると共に、第1〜第4出口側共通インク室91a〜91dに連通している。つまり、供給流路95からアクチュエータプレート52にインクを供給し、排出流路96からインクを排出する。
【0057】
(ノズルプレート)
図3および
図4に示すように、ノズルプレート51は、厚みが50μm程度のポリイミド等の板状部材(シート材)により、アクチュエータプレート52の形状に対応するようにX方向に長い長方形の板状に形成されたプレートである。ノズルプレート51は、アクチュエータプレート52の下面LSに対して接着等により取り付けられている。ノズルプレート51は、吐出チャネル61に連通する複数のノズル孔71(噴射孔)がX方向に配列するノズル列(
図3中矢印で示す第1〜第4ノズル列72〜75)を有している。なお、ノズルプレート51は、ポリイミド以外の樹脂材料や金属材料等により形成されていてもよい。
【0058】
また、ノズルプレート51は、Y方向における幅が、アクチュエータプレート52のY方向における幅よりも狭くなっている。これにより、ノズルプレート51は、アクチュエータプレート52の下面LSにおける、端子電極69が形成された各チャネル列63〜66に対応する4つの端子形成領域を、上述した露出領域52aとして露出させている。
【0059】
(回路基板)
アクチュエータプレート52の下面LSの露出領域52aには、それぞれ回路基板80の上面が取り付けられている。各回路基板80は、フレキシブルプリント基板であって、それぞれ不図示のACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電膜)を介した熱圧着により、アクチュエータプレート52に接合されている。
回路基板80の熱圧着は、例えば160℃〜200℃程度で行われる。4つの回路基板80のうち、第1開口H1の側面に沿う露出領域52aに取り付けられた回路基板80は、第1〜第3開口H1〜H3を通して上方に引き出されている。なお、アクチュエータプレート52と回路基板80との接合は、導電性接着剤等を用いて行ってもよい。
【0060】
(ベースプレート)
図5は、
図3のV部拡大図である。
図3から
図5に示すように、ベースプレート100は、例えばステンレス等の金属により形成されたものである。ベースプレート100は、ノズルプレート51の下方からヘッドチップ50を覆うように形成されている。具体的には、ベースプレート100は、ノズルプレート51の下面側から、ノズルプレート51およびアクチュエータプレート52を覆うように設けられた板状のノズルガード101(噴射孔ガード)と、ノズルガード101の外周部から立ち上がる周壁部102と、が例えば接着や溶着等によって一体化されたものである。
【0061】
ノズルガード101は、アクチュエータプレート52の形状に対応するようにX方向に長い長方形の板状に形成されたプレートである。ノズルガード101は、接着剤により構成された接着層55を介して、ヘッドチップ50の下面に取り付けられている。すなわち、ノズルガード101は、ノズルプレート51の下面、およびアクチュエータプレート52の下面LSの露出領域52aに対して接着剤により取り付けられている。ノズルガード101の上面(ノズルプレート51側の面)には、周壁部102が立設されている箇所と、X方向両側のボルト座配置面101aとを除いた大部分に、段差を介して窪み101bが形成されている。ボルト座配置面101aには、後述の各ボルト座107,108が立設される。
【0062】
窪み101bには、ノズルプレート51の第1〜第4ノズル列72〜75に対応する箇所に、第1〜第4ノズル列72〜75の各ノズル孔71を下方に露出させる開口部103がそれぞれ形成されている。各開口部103は、それぞれX方向に長い長円形状に形成されている。
また、ノズルガード101の窪み101bは、アクチュエータプレート52の露出領域52aに対向する箇所から開口部103に亘って連続する非当接部111と、ノズルプレート51とノズルガード101との位置決めを行う位置決め部104と、を有する。
【0063】
非当接部111は、ノズルガード101におけるアクチュエータプレート52の露出領域52aに対向する部分と開口部103との間の部分である。非当接部111は、接着層55を挟んでアクチュエータプレート52に対向している。非当接部111は、ヘッドチップ50に対して当接しないように形成されている。
【0064】
位置決め部104は、開口部103を挟んで非当接部111とは反対側に設けられている。位置決め部104は、窪み101bの底面からノズルプレート51に向かって上方に突出し、ノズルプレート51に当接する突出部105である。突出部105は、開口部103の内周縁に沿って連続的に延びるリブ状に形成されている。具体的に、突出部105は、各開口部103の内周縁のうちY方向に分割された半分の領域に形成されている。突出部105は、複数条(本実施形態では2条)設けられている。各突出部105は、間隔をあけて配置されている。各突出部105の突出高さは同一に設定されている。また、各突出部105の突出高さは、これらの先端とボルト座配置面101aとが同一平面上に位置する高さに設定されている。そして、各突出部105の先端がノズルプレート51に当接している。この際、各突出部105の間に形成される溝部106は、余剰接着剤の溜まり部として機能する。
【0065】
ノズルガード101の外周部から立ち上がる周壁部102には、4隅の内周面側(ボルト座配置面101a上)に、角ボルト座107が設けられている。また、各ボルト座配置面101aのY方向中央には、周壁部102から突出するように、それぞれ中央ボルト座108が設けられている。これらボルト座107,108は、略四角柱状に形成されている。各ボルト座107,108には、それぞれZ方向に貫通する貫通孔107a,108aが形成されている。各貫通孔107a,108aには、不図示のボルトが挿通される。そして、このボルトを介してノズルガード101がキャリッジ33(
図1参照)に取り付けられている不図示の取り付け部材に締結固定される。
【0066】
また、一対の中央ボルト座108には、対向する面からX方向に突出するX方向位置決めダボ109が、それぞれ一体成形されている。これら2つのX方向位置決めダボ109間の長さは、アクチュエータプレート52のX方向の長さとほぼ同一か、または若干長い程度に設定されている。このため、ノズルガード101内に収納されたアクチュエータプレート52は、X方向位置決めダボ109によって、ノズルガード101に対するX方向の位置決めが行われる。
【0067】
また、X方向位置決めダボ109は、先端の位置が、窪み101bのほぼ周縁上、つまり、ボルト座配置面101aと窪み101bとのほぼ境界線上に位置するように形成されている。このため、ノズルガード101内に収納されたアクチュエータプレート52は、X方向両端の側辺が、X方向から見て窪み101bの周縁とほぼ重なった状態になる。
【0068】
さらに、周壁部102のY方向両側の内側面には、4隅の角ボルト座107の近傍に、それぞれY方向位置決めダボ110が一体成形されている。Y方向位置決めダボ110の位置について詳述すると、Y方向位置決めダボ110は、角ボルト座107側の側面の位置が、Y方向からみてX方向位置決めダボ109の先端の位置とほぼ同じ位置になるように配置されている。
【0069】
Y方向で対向するY方向位置決めダボ110間の長さは、アクチュエータプレート52のY方向の長さとほぼ同一か、または若干長い程度に設定されている。このため、ノズルガード101内に収納されたアクチュエータプレート52は、Y方向位置決めダボ110によって、ノズルガード101に対するY方向の位置決めが行われる。
【0070】
(接着層)
図4に示すように、接着層55は、少なくとも露出領域52aを含むアクチュエータプレート52とノズルガード101との間に設けられ、アクチュエータプレート52とノズルガード101とを接着している。具体的に、接着層55は、アクチュエータプレート52の露出領域52aとノズルガード101との間、およびノズルプレート51とノズルガード101との間に設けられている。なお、図示の例では、非当接部111とヘッドチップ50との間に位置する接着層55は、露出領域52aに対応する位置から開口部103に向かって開口部103の内周縁よりも手前まで延びているが、開口部103の内周縁まで延びていてもよい。ただし、接着層55を構成する接着剤の開口部103内への流出を防止するという点で、図示するように、接着層55は開口部103の内周縁よりも手前まで延びる構成が好ましい。
【0071】
(液体噴射記録装置の動作)
次に、液体噴射記録装置1を利用して、被記録媒体Pに文字や図形等を記録する場合について説明する。
なお、初期状態として、
図1に示す4つの液体収容体4にはそれぞれ異なる色のインクが十分に封入されているものとする。また、液体収容体4内のインクが液体循環手段6を介して液体噴射ヘッド5内に充填された状態となっているものとする。
【0072】
このような初期状態のもと、液体噴射記録装置1を作動させると、搬送手段2,3のグリットローラ11,13が回転することで、これらグリットローラ11,13およびピンチローラ12,14間に被記録媒体Pを搬送方向(X方向)に向けて搬送する。また、これと同時に駆動モータ38がプーリ35,36を回転させて無端ベルト37を動かす。これにより、キャリッジ33がガイドレール31,32にガイドされながらY方向に往復移動する。
そしてこの間に、各液体噴射ヘッド5より4色のインクを被記録媒体Pに適宜吐出させることで、文字や画像等の記録を行うことができる。
【0073】
ここで、各液体噴射ヘッド5の動作について、以下に詳細に説明する。
本実施形態のようなサイドシュートタイプのうち、循環式の液体噴射ヘッド5では、まず
図2に示す加圧ポンプ24および吸引ポンプ25を作動させることで、循環流路23内にインクを流通させる。この場合、液体供給管21を流通するインクは、供給流路95を介して各入口側共通インク室90a,90bを通り、各チャネル列63〜66の吐出チャネル61内に供給される。
【0074】
また、各吐出チャネル61内のインクは、各出口側共通インク室91a〜91d内に流入し、その後液体排出管22に排出される。液体排出管22に排出されたインクは、液体収容体4に戻された後、再び液体供給管21に供給される。これにより、液体噴射ヘッド5と液体収容体4との間でインクを循環させる。
【0075】
そして、キャリッジ33(
図1参照)によって往復移動が開始されると、不図示の制御手段は回路基板80を介して駆動電極68に駆動電圧を印加する。すると、吐出チャネル61を画成する駆動壁(アクチュエータプレート52)に厚み滑り変形が生じ、吐出チャネル61内の容積が変化する。これにより、吐出チャネル61の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。この結果、液滴状のインクがノズル孔71を通って外部に吐出されることで、被記録媒体Pに文字や画像等が記録される。
【0076】
ここで、ヘッドチップ50を構成するノズルプレート51とアクチュエータプレート52は、互いの材質が異なっている。このため、各々熱変化による膨張変形量や収縮変形量の違いから温度変化時にアクチュエータプレート52に反りが生じる。特に、アクチュエータプレート52の露出領域52aは、アクチュエータプレート52の端部に位置しているので反りによる変位量が大きくなる。
【0077】
本実施形態によれば、アクチュエータプレート52の露出領域52aと、ノズルガード101と、の間に接着層55が設けられているので、アクチュエータプレート52が反る際に、ノズルプレート51に補強されず変形に対して弱い露出領域52aがノズルガード101に直接当接して損傷してしまうことを防止できる。
しかも、ノズルガード101は、アクチュエータプレート52の露出領域52aに対向する箇所から開口部103の内周縁に亘って連続し、接着層55を挟んでアクチュエータプレート52に対向する非当接部111を有するので、アクチュエータプレート52が反る際に接着層55にかかる応力を開口部103の内周縁に向かって逃がすことができる。よって、アクチュエータプレート52が反ることによって生じる露出領域52aの応力を、接着層55を通じて逃がすことができ、アクチュエータプレート52の露出領域52aが損傷してしまうことを防止できる。
【0078】
さらに、ノズルガード101は、開口部103を挟んで非当接部111とは反対側に設けられ、ノズルプレート51とノズルガード101との位置決めを行う位置決め部104を有する。これにより、非当接部111とアクチュエータプレート52との間に設けられた接着層55の伸縮変形の制限によるアクチュエータプレート51の応力増加を防止しつつ、ノズルガード101に対するノズル孔71の位置を高精度に決定することができる。このため、被記録媒体Pに記録される文字や画像の品質の低下を防止できる。
以上により、被記録媒体Pに記録される文字や画像の品質を低下させることなく、アクチュエータプレート52の損傷を防止できる。
【0079】
また、突出部105は、ノズルプレート51に向かって突出し、ノズルプレート51に当接しているので、位置決め部104としてノズルプレート51とノズルガード101との位置決めを行うことができる。
【0080】
また、突出部105は、開口部103の内周縁に沿って延びるので、接着層55を構成する材料の流動を規制して開口部103内へ流出することを阻止できる。また、突出部105は、複数条設けられているので、各突出部105の間に接着層55を構成する材料を溜めることができ、接着層55を構成する材料が開口部103内に流出することをより確実に阻止できる。
【0081】
[第2実施形態]
次に第2実施形態の液体噴射ヘッドについて説明する。
図6は、第2実施形態の液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
図7は、第2実施形態の液体噴射ヘッドの説明図であって、液体噴射ヘッドを組み立てた状態における
図6のVII−VII線に沿う断面に相当する図である。
図8は、
図6のVIII部拡大図である。
図6から
図8に示す第2実施形態では、ノズルガード201の非当接部111に堰き止め部212が設けられている点で、
図3から
図5に示す第1実施形態と異なっている。なお、
図3から
図5に示す第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する(以下の実施形態についても同様)。
【0082】
図6から
図8に示すように、ベースプレート200は、ノズルガード201と、周壁部102と、が一体化したものである。ノズルガード201の非当接部111には、接着層55の開口部103内への流出を阻止する堰き止め部212が設けられている。堰き止め部212は、ノズルプレート51に向かって上方に突出する凸部213である。凸部213は、開口部103の内周縁に沿って延びるリブ状に形成されている。具体的に、凸部213は、開口部103の内周縁のうち、突出部105が形成されていない範囲全体に沿って延びている。凸部213は、複数条(本実施形態では2条)設けられている。各凸部213は、間隔をあけて配置されている。各凸部213の突出高さは、同一に設定されるとともに、突出部105の突出高さよりも低くなっている。これにより、凸部213は、ノズルプレート51に対して離間している。
【0083】
このように本実施形態では、非当接部111に、接着層55の開口部103内への流出を阻止する堰き止め部212として、ノズルプレート51に向かって突出する凸部213が設けられている。これにより、アクチュエータプレート52とノズルガード201とを接着する際に、接着層55を構成する接着剤の流動を凸部213において規制して、接着剤が開口部103内へ流出することを阻止できる。このため、開口部103内に露出したノズル孔71が接着剤により塞がれることを防止できる。したがって、被記録媒体Pに記録される文字や画像の品質の低下を防止できる。
【0084】
なお、本実施形態では、凸部213は複数条設けられているが、これに限定されず、1条のみ設けられていてもよい。ただし、各凸部213の間に接着剤を溜めることができるという点で、凸部213が複数条設けられていることが好ましい。
【0085】
[第3実施形態]
次に第3実施形態の液体噴射ヘッドについて説明する。
図9は、第3実施形態の液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
図10は、第3実施形態の液体噴射ヘッドの説明図であって、液体噴射ヘッドを組み立てた状態における
図9のX−X線に沿う断面に相当する図である。
図11は、
図9のXI部拡大図である。
図6から
図8に示す第2実施形態では、ノズルガード201の非当接部111に設けられた堰き止め部212が凸部213である。これに対して、
図9から
図11に示す第3実施形態では、ノズルガード301の非当接部111に設けられた堰き止め部312が凹部313である点で、第2実施形態と異なっている。
【0086】
図9から
図11に示すように、ベースプレート300は、ノズルガード301と、周壁部102と、が一体化したものである。ノズルガード301の非当接部111には、接着層55の開口部103内への流出を阻止する堰き止め部312が設けられている。堰き止め部312は、非当接部111に形成された凹部313である。凹部313は、開口部103の内周縁に沿って延びる溝状に形成されている。具体的に、凹部313は、開口部103の内周縁のうち、突出部105が形成されていない範囲全体に沿って延びている。
【0087】
このように本実施形態では、非当接部111に、接着層55の開口部103内への流出を阻止する堰き止め部312として凹部313が形成されている。これにより、アクチュエータプレート52とノズルガード301とを接着する際に、流動する接着層55を構成する接着剤を凹部313に溜めて、接着剤が開口部103内へ流出することを阻止できる。このため、開口部103内に露出したノズル孔71が接着剤により塞がれることを防止できる。したがって、被記録媒体Pに記録される文字や画像の品質の低下を防止できる。
【0088】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態においては、液体噴射記録装置1の一例として、いわゆるインクジェットプリンタを挙げて説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
また、上記実施形態では、液体噴射ヘッド5が複数搭載された複数色用の液体噴射記録装置1について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、液体噴射ヘッド5が一つの単色用としてもよい。
【0089】
また、上記各実施形態では、位置決め部104は、複数条設けられたリブ状の突出部105であるが、これに限定されず、リブ状の突出部は1条のみ設けられていてもよい。また、突出部の形状は連続的に延びるリブ状に限定されず、断片的に設けられていてもよい。ただし、接着層55を構成する接着剤の流出を阻止するという点で、突出部は連続的に延びるリブ状に形成されていることが好ましい。
【0090】
また、上記実施形態では、液体噴射ヘッド5は、いわゆるサイドシュートタイプである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、チャネルの長手方向一端に設けられたノズル孔からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプの液体噴射ヘッドにも、本実施形態のベースプレート100の構成を適用することが可能である。
【0091】
また、上記実施形態では、分極方向が厚さ方向に一方向のアクチュエータプレート52を用いた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものでなはなく、例えば、分極方向が異なる2枚の圧電体を積層した、いわゆるシェブロン方式のアクチュエータプレートを用いてもよい。
【0092】
また、上記実施形態においては、ノズル列72〜75が4列並んだ4列タイプのインクジェットヘッドについて説明したが、これに限定されず、ノズル列は何列設けられていてもよい。
また、上記実施形態においては、アクチュエータプレートにおける噴射孔プレートから露出した露出領域がアクチュエータプレートの長手方向(X方向)に沿って延びているが、これに限定されない。アクチュエータプレートの露出領域は、アクチュエータプレートの長手方向両端部に設けられて、アクチュエータプレートの短手方向(Y方向)に沿って延びていてもよい。
【0093】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。